01/12/25 23:47
『ああ、堂々の自衛隊 PKO従軍奮戦記』宮嶋茂樹・著、構成・勝谷誠彦
p.182 カンボジア環境問題―地雷の上の「環境問題」
さすがに自由を愛する方々である。一行はてんでんばらばらに行動され、
まったく統制が取れていない。太田三佐が声を嗄らして説明しようとするが、
その周りには人が寄りつかぬ。人だかりがしているのは、代表の辻元清美さんの周りである。
無視されつつ頑張っていた太田三佐が、質疑応答を始めると、ようやく人びとが
集まってきた。イスラエル兵に銃を突きつけられたガザ地区のパレスチナ人の
ように、その目は敵意に輝いている。いまなおこんなに戦意旺盛な同胞がいるのかと、私は感心する。
その表情そのままに、敵意あふれる声で質問が飛んだ。
「この山では一日どれだけの土砂を採るのですか?」
太田三佐が丁寧に数字を答える。質問者はしてやったりと声を励ます。
「それだけ採って、環境への影響は?」
「は?」
さしもの三佐も目をぱちくりさせている。
「ですから、雨が降って、土砂が水田に流れ込むなどにより、環境への悪影響があるでしょう。
それは調査してるんですか」
それは異様な光景だった。背後の兵舎には、汗とドロにまみれ、基地にすら帰ることが
できぬトティエ駐屯の将兵が、埃まみれで死んだようになっている。
自分たちの利益のためにやっているのではない。カンボジアの人びとのためにやって
いるのである。その前で、化粧の白い顔を曝した同じ日本人の一行が、「環境への影響は」
と尋ねる光景。超現実主義の映画を観ているようで、私はかすかな吐き気すら感じた。