17/08/11 15:20:32.07 0.net
389ページのなかなかに分厚い本を、一気に読んだ。
読みながら、何度も「これは日本のことじゃないのか?」と頭がクラクラした。
弱者への侮蔑。自己責任という言葉が覆い隠す制度の欠陥や政策の転換。不安定化する一方の雇用。
失われる製造業などの働く場。荒廃する地方。
低所得者が生活保護受給者をバッシングし、削られていくばかりの社会保障費。
貧しい人々を野生動物のように観察し、さらし者にするメディア。公務員バッシング。潰される労働組合。
あらゆる社会問題を「家族の崩壊」のせいにする政党。富む者は富み続け、持たざる者は更に貧困に追いやられていく社会。
そして移民に向けられる悪意。30年間にわたる新自由主義政策の残酷すぎる「結果」。
これらはすべて、イギリスのことである。EU離脱が国民投票で決まったのが2016年。
一方、今年6月の総選挙では労働党が大勝し、与党・保守党の議席が過半数割れを起こすという「大番狂わせ」が起きた。
人々の不満や怒りが労働党の追い風となったわけだが、一体イギリスで何が起きているのか、
それを教えてくれるのが『CHAVS チャヴ 弱者を敵視する社会』(オーウェン・ジョーンズ/海と月社)だ。
本のタイトルとなっている「チャヴ」とは何か。
それは「急激に増加する粗野な下流階層」。
「偽物のバーバリーなどを身につけた無職の若者を中心とする下流階級」というのがそのイメージで、
多くがスーパーのレジ係やファストフード店員、清掃員として働いているという。
読みながら、「チャヴ」とされた人々に向けられる悪意に苦しくなりつつも、どこか既視感を覚えた。
03年には「我々の村や町を占拠しつつある、イギリスのがさつな下流階級」という宣伝文句のウェブサイト
「チャヴスカム」(スカムは人間のクズという意味)が開設。
「くそみたいな公営住宅に住むくそ人間」といった書き込みもあれば、
チャヴを見分けるための「職業リスト」がついた本まで出版されている。
フィットネスジムには「チャヴ撃退術」なるクラスまであり、そんな「チャヴ・ヘイト」
は特権階級の若者の間でも流行っているというのだ。以下、本書からの引用である。
「オックスフォードなどの大学では、中流階級の学生が、労働者階級の戯画をまねた扮装で
『チャヴ・ボップ』ダンスパーティーを開く。
その扮装者のなかには、イギリスで最高の特権階級に属するウィリアム王子の姿もあった。
サンドハースト王立陸軍士官学校で開かれた、チャヴがテーマの仮装パーティーで、ウィリアム王子はだぶだぶの服に
『金ピカのアクセサリー』、そして必須の『斜にかぶった野球帽』という恰好だった」
決して人種差別や同性愛者差別をしない人々が、堂々と繰り広げる「チャヴ・ヘイト」。
そんなチャヴに対するイメージは、セックスや10代での出産、生活保護、無職、アルコール、
ドラッグ、暴力、怠惰といったものばかりが強調され、偏見に満ちている。
が、彼ら「白人労働者階級」は人種差別主義者の集まりなのだから、彼らを嫌っても許されるというロジックが成り立っているというのだ。
そうして「チャヴ」には、優生思想剥き出しの発言が政治家からも向けられる。
ある保守党議員は、「生活保護を受けている家庭で二人目―あるいは三人目でもかまわないが―
の子どもが生まれたら強制的に不妊手術をするという提案にますます説得力が出てきている」と発言。
そんな発言には多くの支持が集まり、
「水道水に不妊薬を混ぜ、親になるのに『ふさわしい』人だけに解毒薬を与える」という案まで出る始末だ。
URLリンク(www.huffingtonpost.jp)