14/05/16 20:55:06.14 OHgRFCCE0
運動量を相殺する魔法が数百メートル先で次々に発動しているのだ。
その様子を肉眼で見ながら、達也は銃弾が敵艦隊のすぐ上空に到達したのを心眼で識った。
達也は右手を前に突き出し、西を指差し、その掌を力強く開いた。
銃弾が、エネルギーに分解された。
質量分解魔法「マテリアル・バースト」が、初めて実践に用いられた瞬間だった。
水平線の向こうに、閃光が生じた。
空を覆う雲が白く光を反射する。
日没時間には程遠いのに、西の水平線が眩く輝いた。
爆音が轟いた。遠雷と聞き間違える者は、この場にはいない。
誘爆する間もなく、全ての燃料と爆薬が一斉に爆ぜた音だ。
砲撃が途絶えた。
不気味な鳴動が伝わる。
「津波だ!退避!」
風間が叫び、いきなり力なく崩れ落ちた桜井を慌てて抱きかかえ、走り出した。
バイクに跨った真田が、飛ぶ様に駆ける風間の隣に並ぶ。
タンデムシートには達也は跨っていた。
風間が桜井を抱えたままジャンプした。
曲芸じみた身のこなしでハンドルの上に立つ。いや、これは曲芸以上だろう。
軍用バイクはその大馬力にものを言わせて、明らかに店員オーバーの重量を乗せながら力強く疾走した。
水平線の向こう側に生じた嵐が収まり、波が引いて行くのを脇目に、達也は高台の地面に膝をついていた。