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日本の企業システム 第五巻 企業と環境 79-81頁
アメリカの法律事務所は数千人の弁護士を擁する巨大なものも
あれば、一人あるいは数人の小規模事務所もある。ロー・スクー
ルを出て実習生として多少実務経験を積んでから、こうした法律
事務所に職を得る者は多い。もちろん企業の法務部、検事・判事、
あるいは政府関係の法実務の仕事を選ぶ者もいるが、多くは弁護
士として法律事務所に入る。
六~七年は、まず経験豊かな先輩の下で「アソシエート」とし
て文字どおりOJTで仕事を学ぶ。この間の給与は勤続年数とと
もに一律に上昇するという完全な年功制である。つまり能力差は
ほとんど給与には反映されない。ところが六~七年後に、利潤分
配にあずかる「パートナー」へと昇進して、その事務所に残れる
か否かの選別(up-or-out)が行われる。その際、それ
までの六~七年間のアソシエートとしての仕事ぶりが判定の材料
になる。
意外なことに一九七〇年代初頭までは、アメリカのほとんどの
法律事務所のパートナーの利潤分配(給与)は年功ベースで決定
されていた。ところが七〇年代に入ると、アメリカ社会の訴訟件
数は非常な率で増加した。それとともに、その需要に応えるべく
多くの法律事務所が他社からできる限り有能な弁護士を引き抜き
はじめたのである。こうした引抜きへの対抗策として、パートナ
ーの給与をパフォーマンス・べース(productivity
baseとも呼ばれる)のいわゆる「能力給」・「成果給」に
シフトする動きが出はじめた。「能力のありそうな」人材を給与
の高さで引き留めでおこうというわけである。