09/02/16 18:26:51
とつぜんですが、妄想劇場『南の島の美少女』―。
南の島には娯楽が少ない。本といえば雑貨屋で週遅れの雑誌を売っているぐらいだし、
映画はレンタルビデオで借りるものだ。テレビも地上波は届かない。
南の島の美少女の家にBSアンテナがついたのはごく最近のことだ。最初はNHK衛星だけだったが、
ビデオを入れなくてもテレビが映るというのは新鮮な驚きだった。
南の島の美少女はアニメが好きだったから、衛星アニメ劇場は毎日欠かさず視た。島で唯一のビデオレンタルショップは小さいので、
アニメといえばディズニーか宮崎アニメしかおいていない。いままで視たことのないテレビアニメに、南の島の美少女は夢中になった。
アニメ専門のAT-Xと言うチャンネルがある事を網元の娘からきいた南の島の美少女は、両親にせがんで加入してもらおうとした。
しかし、父親は昔気質の漁師だ。テレビはNHKがいちばん信用できる、CSなんぞ贅沢の極みととりあわない。
半年に渡る説得ののち、父親はようやく折れた。南の島の美少女の頬を伝わる熱いものが決め手となった。
機械に詳しい近所のケンにいちゃんがデコーダーをセットしてくれたあと、南の島の美少女は高まる期待に胸を躍らせながら番組表をチェックした。
そして、タイミングよく今日から新しいアニメ番組が始まることを知る。
新番組の名は『星界の紋章』。
はじめはなんだかよくわからなかったが、回を重ねるごとに、南の島の美少女は魅入られていき、原作も読みたくなった。
だが、悲しいかな、南の島には本屋がない。南の島の美少女は本土への連絡船に乗った。ひとりで島の外へ出るのは生まれてはじめてのことだった。
手にはお小遣いとメモがしっかりと握られている。メモには、オープニングでクレジットされる原作者と出版社の名前が記されていた。