09/01/02 12:27:27
かちゃ…かちゃ
「む~…」
パチン、パチン
「ん~?」
コリコリ…コリコリ
「ん…ぅ」
時計の時針が1回転もしたころ、ついに少女の無言の行が限界を迎えた。
「つまーんな~い!!」
「?」
「『?』とかじゃなくって、せめて『どうした?』くらい言えー!!」
「どうした?」
「言われる前に言えー!!」
目の前の籠から蜜柑を手に取り、両手で投げつける赤毛の少女…それを器用に避ける黒髪の少年。
快晴の新年、日当たりもよく温かな室内には陽光もほどよく差し込み、蜜柑は光を弾いて赤く飛び交う。
「はぁ…はぁ…」
「どうした?」
それでも変わらずポーカーフェイスの男に、蜜柑も投げ尽くした少女は突っ伏した赤髪の下から怨みがましい視線を向ける…
「つまんない、の。」
「どうしてだ。」
「せっかくのお正月休みなんだし、旅行なんて我が儘は言わないけど、どっか一緒にお出かけしよ…」
「だが、正月でどこの甘味処も休みだし、開いているところは大混雑だ。」
「冷静だね、刹那ぁ」
「冷静な判断がガンダムマイスターには必要だ。」
話は終わった、と言いたげに目線を手先に移す少年…その手元には。
「あーあ。あたしもなんか買ってこればよかったかなぁ」
玩具屋で購入してきたガンダム福袋…その中身のうっすら埃を被ったがらく…ゲフン、在庫品。
それを彼は修行僧のような面もちで組み立てていた。
(俺が…ガンダムだ…)
少女の目線の中、テレビではタレントが新年早々、笑い顔を浮かべて画面を占拠し、
目の前では刹那…愛しい人、が真剣にガンプラに熱中する。