08/10/21 21:06:05
―その日、宇宙が光る―
《フッ、アレがブラックエンペラーか。口ほどにも無さそうだ》
ダルタイル帝国少佐、ロイ・カクサイは静かに嘲笑った。ロイは森林の茂みにモビルスーツを忍ばせると、一呼吸してからコンパクト手鏡を覗いた。
容姿端麗、成績優秀、抜群の運動神経。(CV:子安武人)
一見完璧と思われるロイだが、彼には一つ悩みがあった。若ハゲである。
彼の頭部は齢二十歳にして完全に後退しており、通販で売っているハゲ隠しの粉をまぶすとまるでゴマおはぎのように痛々しい。
毛根は砂漠のように渇きに渇き、血流を促進させるスプレーでは焼け石に水だった。
彼は生き残ったよりすぐりの毛根たちを丁寧に七三分けにする。
するとどうだろう―。
強力なミステリーサークルの完成である。およそブルーアイズホワイトドラゴンより強い。
しかし、彼の強さを形容するにはもう一つ秘密がある。
それは、彼の専用モビルスーツがコンドル・グリードという名前なのだが、彼の部下が機体にモウコンデル・グイット(毛根出る・グイッと)と機体をもじったイタズラ書きをしたのだ。
また、つい今し方出陣際にも「少佐のピカじゃなかった…メガ粒子砲は無敵です」と部下に激励された。
ロイは燃えていた。給料が入ったら今度こそ植毛しようと―。
自分の頭がハゲているのを部下に悟られないようにと―。(もうバレバレなのだが)
そのためには手柄がいる。
なぁに、ブラックエンペラーなど容易いさと自分に言い聞かせた。
ロイはモビルスーツのフットペダルを踏み込むとビームサーベルを抜き、ブラックエンペラーの動力部目掛けて斬りかかった。
『ピポポ…?!』
ブラックエンペラーは虚を衝かれた格好となり、役十倍馬身の違う小型なモビルスーツに尻餅をつかされた。
ブラックエンペラーは反撃でファンネルを射出するが、ビームが虚空に消えていくだけで反撃するロイの追撃を受けた。
「どこを狙っている!ウドの大木め!」
ブラックエンペラーは躍起になって照準を追うが、それがロックされること無くモビルスーツが瞬時に逃げる。
ブラックエンペラーが弱いのではなく、ロイが強すぎるのだ。