種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-15at SHAR
種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-15 - 暇つぶし2ch57:通常の名無しさんの3倍
08/04/17 21:56:42
>>56

W-D:新機動戦記ガンダムWの登場人物がC.E.世界に来てしまいました
エンドレスデスティニー:新機動戦記ガンダムWの登場人物がC.E.世界に来てしまいました

58:通常の名無しさんの3倍
08/04/17 22:01:19
>>56
まあまず読んでみて
「あ、面白そー」
だと思えたなら続けて読む、というのが妥当ですね。俺もそうでしたし。

>>57
それじゃあ同じですよ!?

59:通常の名無しさんの3倍
08/04/17 22:10:24
でも基本的に全部未完だから、続きが読みたくなる人にはお勧め出来ないよな。


60:通常の名無しさんの3倍
08/04/17 23:33:58
>>57-59
あーこれ全部未完だったのか。
うぃ、情報サンクス。やっぱ基本的に
登場人物が飛ばされました系なのね。

61:通常の名無しさんの3倍
08/04/17 23:41:37
G-UNITなんてマイナー作品でここまでやってきて
完結させようとさせてる作者さんスゴス

62:通常の名無しさんの3倍
08/04/18 01:11:11
俺もここの作品見るまではG-UNIT馬鹿にしてたな
いやぶっちゃけ今でも結構馬鹿にしてるが、ここの作品は好きだ
まあ種死を糞だと断定しつつも、二次創作は一通り読むのと似たようなものか

63:通常の名無しさんの3倍
08/04/18 02:00:22
のびてるから投下されたのかと思った。

64:通常の名無しさんの3倍
08/04/18 10:10:15
G-UNITってあれはW本編とEWの間だっけ?
それともW本編中だっけか。場合によっては盛り込みたいと思って今調べてるが
結構設定とかかけ離れてる?

65:通常の名無しさんの3倍
08/04/18 13:07:18
丁度OZが優しいレディ・アンを使って宇宙進出を始めた頃に話が始まり、
世界国家軍とホワイトファングの最終決戦終了時にG-UNIT側の決戦も終わる。
一部キャラクターは漫画版EWにも出演。

66:通常の名無しさんの3倍
08/04/18 14:06:50
>>65
おお、サンクス。
あら、本編と丸被りって事は00の外伝みたいな感じなのかね。
うむ。こりゃ、設定を盛り込むのは諦めざる終えないか。

しかし、AC史も何か国が独立したり制圧されたり、リリーナが代表になったり激しいが
CE史と比べるとまともに見えるから困るorz

67:通常の名無しさんの3倍
08/04/18 15:03:27
>>66
その口振りはここで何か書くってこと?

68:通常の名無しさんの3倍
08/04/18 15:19:12
>>67
書くって言うか書いてる。今、書き溜め中で5話位完成したら投下始めようと思ってる。
まぁ、まだ、三話位しか完成してなくて、すぐに投下出来そうにも無いのですまないorz

69:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/04/18 17:58:59
>>68
wktkしながら待ってます。

4月になると途端に仕事が忙しくなります。
GW前ともなるとGW進行なんてのがあったりして、軽く死ねます。
まあ、そんなのは遅れている言い訳にはなりませんが。

というわけで、投下します。

70:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/04/18 18:00:08
 世界統一国家軍が手始めに前線に投入した兵力は、4800機の機動兵器の内、
モビルスーツ1000機、戦闘用支援艦載機200機の計1200機である。ムウは全ての
兵力を一度に投入するつもりなど更々無く、兵力を大きく4つの部隊へと分散さ
せた。それでもインフィニットジャスティスが持つ機動兵力に4倍以上の差を付
けているのだが、アスランもまたビルゴ全機を前線に投入してはいない。
「五十機はウルカヌスの護衛に残せ。どこに伏兵がいるかもわからん」
 思わぬ所から核攻撃隊やデストロイの奇襲を受ける可能性もあるし、本陣を
手薄には出来ない。こうしてインフィニットジャスティス側は250機のビルゴ
Ⅱを主力部隊として前線に送り込んだ。
 ビルゴの操作はウルカヌスからでも行えるが、サトーの下で鍛え上げられた
一部兵士が、十機のトーラスに乗って指揮を執ることにもなっている。本来な
らばイザークやディアッカが務めるべき役目であったのだが、彼らは最終決戦
前にその命を散らしている。
 既にアスランの機体、ジャスティスの改修は終わっており、出撃しようと思
えば出来るのだが、サトーは待機するべきだと言った。
「総大将自ら出撃されるのは勝利の時です。それまでご自重願います」
 アスランは頷くと、ウルカヌスのスクリーンに映る戦場を見つめている。い
よいよ両軍の主力機動兵器が激突しようとしているのだ。
「機動兵力はあちらの方が圧倒的に上だが……さて、どう転ぶかな」
 一つの部隊だけでも4倍の差があり、全体で見れば16倍。本来なら、まともな
勝負になるわけがない。ファントムペイン艦隊とオーブ海軍の戦闘よりも悲惨
な戦力差である。
「敵の部隊を突き崩し、地球へと突入する。俺達の目的はそれだけだ」
 アスランは立ちあがった。スクリーンを見つめながら、片手を上げる。
「最初の一撃は敵にくれてやれ」
 その言葉に司令部に詰める兵士たちが驚きの声を上げた。サトーもまた、驚
いて顔でアスランを見る。
「奴らの砲火ではビルゴは倒せない。ならば、敵の攻撃を受けきって反撃をし、
奴らに精神的な絶望感を与えてやるんだ」
 不敵な笑みで笑うアスランの姿に、背筋が寒くなるのを感じた兵士の数は決
して少なくなかった。それはまるで、氷像のような笑みだった。
 スクリーンの中で、世界統一国家軍の機動兵器がビルゴに向かって殺到を始
めた。ビームライフルの銃口が光り輝き、千条を超えるビームの閃光がビルゴ
へと放たれた。
 まさにそれは、『怒濤』の一撃だった。
「全弾直撃確認!」
 ガーティー・ルーの艦橋において、索敵士官が声を上げて報告する。すぐに
モビルスーツにて待機しているムウにも知らせられるが、彼は小さく呟いただ
けだった。
「……来るぞ」
 その瞬間、4倍の数を超す砲火を放った世界統一国家軍の主力部隊に、4倍を
遙かに超える威力の砲火が浴びせかけられた。


         第67話「激震なる宇宙」



71:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/04/18 18:00:59
「こちらの方が数は上だ。一機で敵に挑もうとせず、集団戦法を駆使しろ。相
手は無人機、卑怯も糞もないぞ!」
 戦闘が開始されて1時間40分が経過しようとしている。圧倒的な数を誇る世界
統一国家軍は、両軍の首脳部が予想したとおりに苦戦をしていた。何十発、何
百発ものビームを弾き飛ばし、ほぼ無傷に近い状態のビルゴ。未だに一機も撃
墜できないままに、世界統一国家軍の第一部隊は押されつつあった。
 ビームサーベルで斬りかかろうとも、プラネイトディファンサーの鉄壁の前
に阻まれ、一太刀浴びせることも出来ない。実体弾による砲撃も行われている
が、プラネイトディファンサーを突破できても、ビルゴの装甲はガンダニュウ
ム合金が使われているため傷つけることも困難だった。
 しかもビルゴの機動力はウィンダムやダガーのそれを凌駕している。無人機
故にパイロットへの不可を考えなくていいため、常識外れの加速度を見せつけ
るのだ。並のパイロットでは攻撃を当てることすら難しい。
「無茶だけはするな。機体が損傷したものは自己の判断で後退しろ」
 ムウの命令は彼の良心がそうさせるものではなかった。単純に一機一兵も無
駄に出来ないという理由がそこにあり、圧倒的とはいえ撃墜されればされるだ
け兵力は減るのだ。無駄遣いだけは避けなければならない。
 戦いは始まったばかりだが、世界統一国家軍は未だに敵の一機も撃墜できて
いない。アスランは初撃を全て受けきるという余裕まで見せつけ、敵軍を圧迫
している。全く、見事な戦術だ。
『閣下、第一部隊の行動がそろそろ限界に達します』
 ムウの機体に、イアンからの通信が入った。
「戦闘開始からどれぐらい経っている?」
『およそ1時間50分』
「行動限界時間は2時間か……よし、そろそろ始めるか」
 前線で戦闘を続ける部隊の攻撃が、突然弱まり始めた。
 アスランは敵の策略かと思案したが、突如敵が後退を始めたのだ。
「馬鹿な、後退だと?」
 確かにそれなりの損害を与えているとは思うが、戦えなくなったわけではな
いはずだ。後退するにしても、少し早すぎるのではないか。
「いかがなさいますか? 追撃を」
「いや、ここは退かせたほうが良い。こちらも一旦部隊を下げて整備と補給を
……」
 言いかけたとき、索敵士官の声がそれを遮った。新たな機体群が確認された
というのだ。
「敵機が後退した方角とは全く別の方向から、敵の第二部隊が突入してきまし
た! 数、およそ1200機!」
「早いな。さすがエンデミュオンの鷹が指揮をするだけのことはある」
 アスランがポツリと呟き、敵の展開速度を素直に褒めた。
「敵の狙いは何でしょうか? こちらに付けいる隙を与えないつもりなのか…
…」
「違うな。サトー、どうやら敵はそれなりに優秀だよ。こちらに勝つための唯
一の作戦取ってきたらしい」
「唯一の作戦? そんなものがあるのですか」

72:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/04/18 18:02:05
 無敵のビルゴを持ち、常に戦闘を圧倒しているインフィニットジャスティス
が抱える、ただ一つの弱点。
 それは…………
「消耗戦だ」

 アスランの読み通り、ムウはインフィニットジャスティスに対し兵力差と物
量差を利用した大規模な消耗戦を仕掛けた。4800機の機動兵力4つの部隊に分
け、二時間ごとに交互に攻撃を行う。第一部隊が後退すると、入れ替わるよう
に第二部隊が現れ攻撃が開始される。さらに第二部隊も後退すれば今度は第三、
第四と続くのだ。しかも、一度後方宙域まで後退した部隊は順次母艦へと帰投
して機体の応急修理などの整備や、エネルギー・弾薬等の補給、パイロットに
食事を取らせるなどして出来る限りの回復を務める。そうすれば、第四部隊が
後退した後も再び第一、第二部隊と出撃することが可能なはずだ。
 この世に絶対や無限などという言葉は存在しない。如何にビルゴⅡが圧倒的
な性能と威力を誇る機動兵器であっても、無制限に戦闘することも出来なけれ
ば、活動限界はある。エネルギーが切れれば動けなくなるし、その時間がウィ
ンダムやダガーなどのバッテリー機より長いだけに過ぎない。
 ムウは長時間の戦闘を敵に対して強いることで相手を消耗させ、戦闘力を殺
ぎ取り、奪い取ってしまおうと考えたのだ。相手に後退する隙を与えない連続
攻撃は、確かに数で劣るインフィニットジャスティスには効果的であった。
「局地的な戦闘では我が方が圧倒しているのに、それでも優勢を確信できない
とは……!」
 サトーが苦々しげに叫ぶが、アスランは対照的に冷静であった。彼は世界統
一国家軍が取るべき作戦は、これしかないと事前に察知していたのだ。それが
当たっただけの話であり、動揺すべき場面ではない。
「敵の第二部隊が後退! 別方向から、第三部隊が突入を開始してきました!」
 ウィンダムやダガーなど、何機が束になって掛かろうともビルゴを倒すこと
など出来はしない。それでも過度に密集したビームエネルギーの前に、徐々に
ではあるが押されつつもある。百発近いビームの閃光が、数機のビルゴに降り
注ぐのだ。数の暴力とはまさにこの事だろう。
「砲火を一点に集中しろ。確実に一機、それだけ考えて戦え。俺たちのほうが
数は多いんだ。十分、可能なはずだぞ!」
 ムウの激昂は兵士の士気を高め、彼らは果敢にビルゴへと攻撃を仕掛ける。
ビルゴを取り囲むように数十機のウィンダムが四方八方からビームライフルを
撃ち放つ。プラネイトディファンサーで攻撃を弾き飛ばしながら、天頂方向へ
と逃げるビルゴ。そこに砲撃戦仕様のダガーが、実体弾の雨を降らせる。爆発
がビルゴを包み込み、更なるビームの砲火が襲いかかる。
 火力の集中は、確実にビルゴを蝕んでいく。ビルゴは攻撃を避け、防ぐこと
に機体性能を使うあまりに反撃が滞り始めていた。
「やるな。数の使い方を良く分かっている。ビルゴの動きを封じ始めているぞ」
「閣下、このままでは……いっそ、私が出撃をしましょうか?」
「まあまて、まだ慌てるような局面じゃない」  
 アスランはどっかりと指揮座に腰を下ろすと、スクリーンに映る戦局を見て、
呟いた。
「敵が次に後退をするとき、それが反撃の瞬間だ」



73:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/04/18 18:03:11
 その頃、月面ダイダロス基地においても小規模であるが戦闘が行われていた。
「ナイトハルト装填、敵艦隊右翼に叩き付けろ!」
 ザフト軍艦ミネルバが、基地に奇襲を仕掛けてきたのだ。これを阻止すべく
展開したのは、十数隻の戦艦と五十機を超えるモビルスーツ部隊。それは、ミ
ネルバと同じザフト製のもの。アスラン・ザラの考えに賛同し、あるいはアス
ラン・ザラの行いに打算を見つけ、彼の下に集った反逆者たち。
 同じザフト軍同士の戦闘が、行われているのだ。
「このスピードは!」
 グフの一機が、眼前に迫るモビルスーツに対して右手の4連装ビームガンを撃
ち放つ。近距離戦闘ではビームライフルよりも使い勝手が良いとされる武装で
あるが、大剣を構えながら突っ込んでくる敵機の勢いを止めることは出来なか
った。
「ならば、接近戦を」
 テンペストビームソードを引き抜き、高出力ビームを発生させるグフ。並の
モビルスーツであれば、容易に斬り裂くことが出来る。加えてパイロットはエ
ース級ではなかったが、決して弱くはない、死地と死闘を生き抜いてきた戦士
であった。
 だが…………
「でぇやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 デスティニーガンダムが振り下ろした、大剣アロンダイトの一撃は、テンペ
ストの刀身ごとグフの機体を斬り砕いた。武器の破壊力、一撃が必殺となりう
るパワーがそこにある。
「時間がないんだ! お前ら、まとめてかかってこい!」
 ビームライフルを連射し、敵機を威嚇するシン。挑発的な物言いは、もちろ
んわざとだ。殊更派手に暴れ回ることで、こちらの狙いを敵に気付かせない、
それがシンの役目だった。
「次はどいつだ!」
 アロンダイトを逆手に持ち、戦場を飛び回るデスティニー。ザクがビーム突
撃銃で応戦するも、そんなことはお構いなしといわんばかりにデスティニーは
進撃を続ける。
 一機、また一機とデスティニーの斬撃に斬り倒され、あるいはビームの閃光
に貫かれる。
「これ以上の蛮行を許すな! 砲戦仕様のザクに迎撃させろ!」
 オルトロス高エネルギー長射程ビーム砲を構えたガナーザクウォーリアーが、
デスティニーを撃ち落とそうと砲撃体勢にはいるが、その頭上をビームの雨が
襲った。
「敵がシンだけだと思ったら大間違いだ」
 レジェンド、レイ・ザ・バレルである。レイは機体のドラグーンを切り離し
て敵部隊に攻撃するが、まだ不慣れなせいか若干動きは鈍い。もっとも、量産
機程度ならばわけなく倒せるが。
 猛虎の強さを見せつける二機に対し、乱雑な応戦を繰り返しても無意味と悟
った敵の指揮官は全機を密集させ、集中砲火に攻撃法を切り替えた。ビームラ
イフルやビーム砲の連続砲撃にさすがのシンとレイも押されてしまう。
「そっちが密集するってなら!」
 シンはデスティニーの高エネルギービーム砲を発射し、密集した敵機に穴を
空けた。さらにレイがドラグーンを飛ばし、砲撃で混乱した敵部隊の動きをさ
らに攪乱した。ドラグーンは巨竜の体内に入り込んだ寄生虫のように敵機の中
をのたうち回り、食い破った。

74:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/04/18 18:04:04
 二人の連係攻撃を前に、モビルスーツ部隊はほぼ壊滅といった状態になった。
「よし、後はルナマリアが……」
『シン、少し良いか』
 戦況をチェックしていたレイが、シンに通信を送ってきた。
「どうしたんだよ?」
『敵モビルスーツの数が足りない。五十二機配属されているはずが、四十九機
しかいない』
「後退したか、出撃してないだけじゃないのか?」
 もしくは情報に誤差が生じたか。
『そうだといいんだが……シン、敵は決して無能じゃない。もし敵が、レクイ
エムに通じるルートに護衛の期待を配置していたら』
「―! ルナ!」

 モビルスーツとの戦闘をシンとレイに任せ、ルナマリアはひたすらに別ルー
トを通っていた。ブラストシルエット装備のインパルスで、レクイエムを破壊
するという重要な任務が彼女にはあった。
「第三セクション通過、後少し」
 ここまで敵の待ち伏せや、防衛システムによる攻撃も受けなかった。逆にそ
れが若干不気味にも思えるが、順調に越したことはない。
「シンもレイも頑張ってる。それに、メイリンも」
 ミネルバへと『帰投』したルナマリアの妹、メイリン・ホークは重傷のため
すぐに医務室送りになった。ルナマリアは姉として付き添ったのだが、メイリ
ンは薄らぐ意識の中でミーアからの伝言を伝えると、譫言のように呟き続けた。
「ごめんね、お姉ちゃん……」と。
 メイリンとアスランの間に、一体何があったのかはわからない。どういう関
係だったのかも、まだ聞いてはいない。もしかしたら、二人の関係についてだ
けいえば、アスランは何も悪くないのかも知れない。
 でも、それでも―
「私の妹をあんな目に合わせた奴を、姉として許せるもんですか!」
 決着を付けるのはシンに任せるが、自分もせめて一発は殴りたい。そんなこ
とを考えながら進むルナマリアとインパルスであるが、レーダーが眼前に敵機
の反応を捕らえた。
「敵……モビルスーツが三機!?」
 進行方向、レクイエムの制御システムへと通じる扉の前に三機のザクが立ち
塞がっていた。ガナーウィザードを装備し、オルトロス高エネルギー長射程ビ
ーム砲を構えている。
 ルナマリアは軽く息を呑むと、敵機に向けて通信を送った。
「そこをどいて!」
 返信など期待してはなかったが、敵のパイロット、恐らくこの場の指揮官で
あろう男は律儀にも回線を繋いできた。
『それは出来ない』
「あんたたち、自分が何を守っているかわかってるの?」
『これが何であろうとも、我々はアスラン・ザラの命令を受けた。それに従う
だけだ』
「馬鹿げてる! プラントを撃って、今もプラントに標準が合わさってる兵器
を、ザフトが守るだなんて……あんたたちにはプライドや羞恥心ってものがな
いの!?」

75:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/04/18 18:05:06
 着地し、ケルベロスを構えるインパルス。どかないのならば実力で排除する。
ルナマリアは動作によってそれを表現した。
『我々は悪だ。国を裏切り、軍を裏切り、テロリストの配下になった……しか
し!』
 指揮官は声を張り上げ、オルトロスを突きつけた。
『これで戦争が、長きに渡る戦いに終止符が打たれるのなら、我らの小さき自
尊心や羞恥心など、塵に等しい!』
 その言葉に、ルナマリアは唇を噛みしめ叫んだ。
「くだらない……くだらない見栄なんて張ってんじゃないわよ!!!」
 ケルベロスとオルトロスが火を噴いたのは、ほぼ同時だった。


 世界統一国家軍とインフィニットジャスティスの戦闘は、統一国家軍の第三
部隊とビルゴⅡが激しい攻防戦を繰り広げる段階に達していた。第三部隊は火
力を中心としたモビルスーツで構成されているものの、やはりビルゴの持つ防
御を敗れずにいた。
 アスランは大軍を有する敵に対して、徹底的な局地戦を行った。元々少ない
兵力を一点に集中させ、敵を切り崩しに掛かったのである。その為、第三部隊
は致命傷こそ少ないものの、大小様々な傷を抱えることになってしまい、何よ
り部隊として混乱を来し始めていた。
「まずいな……少し早いが第三部隊を後退させ、第四部隊を突入させろ」
 第三部隊がそれまでの部隊以上に混乱していることを知ったムウは、即座に
後退を許可した。そして第四部隊を突入させようとしたのであるが、それこそ
がアスランの狙いであった。
「戦法、戦術などは所詮バリエーションとパターンに過ぎない。パターンさえ
わかってしまえば、いくらでも対処の仕様はある」
 ビルゴⅡの内、オプションとしてビームキャノンを装備した機体のみを集め
た即席の砲戦部隊を作らせたアスランは、接近しつつある敵の第四部隊に砲撃
を開始した。
「敵の第四部隊を近づけるなよ! この隙に、残ったビルゴで第三部隊の殲滅
に掛かる!」
 威力だけは強い砲火が撃ち込まれ、統一国家軍の第四部隊はその進撃速度が
著しく低下し、足並みが大きく乱れた。
「まずい、このままでは第三部隊が突破される」
 ムウはアスランがこちらの戦術に対応してきたことを悟り、背筋が寒くなる
のを感じた。というのも、実際の所、世界統一国家軍とインフィニットジャス
ティスは必ずしも『正面決戦』を行っているわけではない。ムウは機動兵力部
隊を横から横へ移動させ、アスランの機動兵力部隊の前に出現させるという方
法を作戦に用いていた為、横の流れが一旦止まってしまうと正面に敵は居らず、
一気に突破することが可能なのだ。
「なんとしても突入し、第三部隊を助けろ! 上手くすれば挟撃のチャンスに
もなるぞ」
 激昂は、時として焦りの表れである。ビルゴの集中砲火の前に押し戻される
第四部隊を後目に、混乱が続く第三部隊に更なる悲劇が起こっていた。殺到す
るビルゴに対し、彼らは無力ではなかったが、限りなく無力に近かった。

76:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/04/18 18:05:53
「第三部隊を突破したら、統一国家軍などに構うな! 一気に地球へと進軍し、奴らの帰る家を無くしてしまえ!」
 叫ぶアスランに、ビルゴが敵第三部隊を突破しつつありとの報告が入った。
満足そうに頷くアスランであるが、その表情はすぐに一変することになる。

 高機動力を駆使した近接戦闘により第三部隊を圧倒し続けたビルゴⅡは、遂
に敵部隊の中心部に穴を空け、突破することに成功した。部隊は壊走し、崩れ
た。アスランが勝ちを確信し、ムウが敗北に恐怖した、まさにその時。
 巨大な閃光が、敵部隊を突破したビルゴに直撃した。太く、そして眩い光り
の塊を叩き付けられ、さすがのビルゴも押し戻されていく。
「ビルゴが陽電子砲による砲撃を受けました! 凄い数の砲撃が……」
 索敵士官の悲鳴に、アスランもまた驚愕していた。まさか、敵に伏兵がいた
というのか。予想以上に敵の戦力、兵力は豊富だったということか。
「これは、これはまさか」
「なんだ、一体どうした!」
 狂った音程で声を上げる士官に対し、サトーが怒鳴りつける。
「統一国家軍ではありません! オーブ軍が、オーブ宇宙艦隊が来援してきま
した!」
 その言葉に、アスランの動きが、一瞬であるが固まった。
「オーブ、だと?」
 来援したオーブ軍は戦艦三十隻、モビルスーツ百二十機という兵力を有して
いた。地上における兵力の大半は消失したオーブであるが、宇宙軍は未だ健在
だったのだ。
「まさか、オーブが助けに来てくれるとは思わなかった」
 安堵の溜息を付くのはムウである。危機一髪とは、まさにこの事か。ムウは
地上における戦闘で大敗したオーブを、そもそも戦力だとは考えておらず最終
決戦時の兵力徴収の際も無視していた。相手が正式に統一国家入りしていない
中立国というのもあったが、カガリがアスランと戦いたいとは思っていないと
感じたからである。
「彼女は、思いのほか聡明で、強く育ったようだな」
 人は変わる。時の流れが、歩んできた日々が、人を変えてしまう。これは仕
方のないことで、人は生きていくために変わらなければならない。キラやラク
スにはそれが出来ず、アスランとカガリにはそれが出来た。
「そうか……カガリ、君も俺の前に立ちはだかるか」
 親友の次は、一時でも恋をした少女。
 結局誰も、理解してはくれなかった。自分を、アスラン・ザラを。アスラン
・ザラという男を。
「この俺の強さに、誰一人着いてこれなかった。それだけだ!」
 アスランは叫ぶと、オーブ艦隊に対して攻撃を命じた。すると、間髪入れず
して別の報告が舞い込んできた。
「ダイダロス基地が、陥落しました!」



77:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/04/18 18:07:16
 戦場の近くで待機を続ける二隻のプリベンター巡洋艦。
 その内、一隻の格納庫においてロッシェ・ナトゥーノとオデル・バーネット
が会話をしていた。会話といっても、ロッシェが話があるといってオデルを呼
びつけたのだが。
「出撃準備で忙しいときに、話とはなんだ?」
 オデルの問いかけにロッシェは即答せず、背後にそびえ立つ自身の機体、ガ
ンダムアクエリアスの方を見た。
「頼みがある。お前にしかできない頼みだ」
「どういうことだ?」
「この機体は、戦闘用じゃない。戦闘支援用の機体だということが、ハワード
たちの調べでわかった」
 そのことに対して、ロッシェが落胆を憶えなかったといえば嘘になるが、そ
れほどショックなことでもなかった。あのエピオンの対となるモビルスーツな
のだから、十分にある可能性であった。
「特殊機器を積み込んでいるためにビーム兵器は使えず、当然ゼロシステムも
ない」
「いいことじゃないか。前者はともかく、ゼロシステムなんてない方がいい」
 あれは、一部パイロットにしか扱うことの出来ないシステムだ。ロッシェも
オデルも一流のパイロットであるが、ただの一流では使いこなすことは出来な
い。次元が違うのだ。一流と超一流の間には、とてつもなく大きくて、容易に
超えることは出来ない壁があるのだから。
「確かに……正直な話、私もゼロシステムを扱いこなせる自信はない。ディア
ッカ・エルスマンのようになりたくはないし、イザーク・ジュールのように身
も心もシステムに捧げることなんて出来ない」
 しかしだ、とロッシェは続ける。
「恐らく、敵にはまだゼロシステム搭載のモビルスーツが残ってる。私はそれ
と戦い、勝利しなくてはならない」
「ロッシェ……お前」
「オデル、お前にしか頼めないことだ。私はこのアクエリアスに―」
 ロッシェは簡潔に、用件を告げた。それを聞いたオデルの顔は、途端に険し
くなっていく。
「やってやれないことはないが、出来るのか?」
「それこそ、やってみないとわからない」
「失敗すれば、身体の補償は出来ないぞ。せめてリミットを付けろ」
「不要だ。あの男に使いこなせて、俺に使えない道理はない。機体も、そして
システムもだ」
 言い切ると、ロッシェはどこか遠い目をしながらアクエリアスを眺める。彼
には珍しく、どことない寂しさを含んだ表情だった。
「アスラン・ザラは、ハイネ・ヴェステンフルスと、キラ・ヤマトを殺した。
私はキラ・ヤマトという男と面識はないし、その実力も知らないが、ハイネは
違う。奴の実力は本物だった。アスランは間違いなく、この世界最強の戦士だ。
オデル、私は奴と戦いたい。戦って、勝たねばならないんだ」
 その強い瞳を見て、オデルは軽く溜息を付くと協力すること了承した。
 しかし、たった一言だけ、ロッシェに警告をした。
「クラーツ・シェルビィは死んだ。そのことをよく思い出せ」


78:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/04/18 18:08:18
 オデルが準備をするために一度私室に戻った後も、ロッシェは格納庫でアク
エリアスを見つめていた。
「そんなことはわかっている。だが、私はクラーツのようにはいかない」
 同じ運命を辿るわけにはいかないのだ。仮に、もし同じ運命が待っていたの
だとしたら、体当たりしてでも運命を変える必要がある。
「違うな……違う。人の人生を、世界の流れを、運命などという言葉に左右さ
れてたまるか」
 呟くロッシェは、背後に人の気配を感じた。振り返ると、そこにはミーア・
キャンベルが立っていた。
 彼女は本来、プラントの要人であるから、ザフト艦隊と合流するかプラント
に帰還するのが筋であったのだが、彼女はロッシェの側にいることを、戦場に
残ることを決めた。
「ロッシェ……いよいよ最後の戦いね」
 彼の隣まで歩み寄り、同じようにアクエリアスに目を向けるミーア。
「あぁ、これが最後だ。これで、最後にしなくてはいけない」
「アスランと、戦うの?」
「そのつもりだ」
 短く言葉を交わし、二人の間に沈黙が訪れる。ロッシェはミーアの顔を見る
が、表情が読めない。
「ミーア、君は許してくれるか?」
「えっ……?」
「私は多分、アスランを殺す。けど君は、それを望んでいない」
 何故なら、ミーアはアスランのことを―
「そんなことない。あたしは確かにアスランに憧れていた。英雄としての彼に、
ラクス・クラインの婚約者だった彼に、憧憬の念を抱いていた……だけど」
「だけど?」
「あたしはもう、恋をしてしまったから」
 軽く笑って、ミーアはロッシェに向き直った。顔は笑っているのに、身体は
どこか震えている。
 まるで、何かを堪えるように。
「ロッシェ、あなたは全てが終わったら、あなたの世界に帰るの?」
 その問いかけに、ロッシェは即答するべきか、一瞬迷った。
「私は、この世界の人間じゃないからな。買える場所があり……きっと、私の
帰りを待ってくれている人がいる」
「そう、なんだ」
 ギュッと、ミーアは手を握りしめた。顔を俯かせ、ロッシェと視線を合わせ
ようとしない。
「ロッシェ、あたしはね……あたしは」
 顔を上げた、ミーアのその顔はいつの間にか涙に濡れていた。
「あたしは、あなたと一緒にいられるのなら、今の自分なんてなくてもいい、
そうとさえ思ったことがあるの」
 ラクス・クラインとしての偽りの自分ではなく、ミーア・キャンベルという
本当の自分で、ロッシェに恋し、ロッシェを愛した。
「あなたと一緒にいたい、あなたに残って欲しい、それがダメなら、あたしを
連れてって……欲しかった」
 それは、少女の抱いた夢だった。けれど、これは夢だ。恋する少女が胸の中
に抱き、可愛らしい絵筆で描き上げた、ロマンチズムでしかない。

79:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/04/18 18:09:21
「ミーア、君にはまだすることがあるはずだ。しなくてはいけないことがある」
「そんなもの―! あたしはラクス様じゃ、ラクス・クラインじゃない。み
んなを騙して、偽りの自分を演じ続け、歌い続けてきた愚かしい女よ」
 今更、自分に何が出来るというのか。結局、自分が歌っても、言葉を発して
も、世界は何も変わらなかったではないか。
「ミーア、君は確かにラクス・クラインじゃない。どんなに姿形を似せようと、
同じ声で歌を歌おうと、本物にはなれない」
 こんな風に断言されるのは、ミーアとしてはいささかショックだったが、事
実なので肯定するしかない。
「えぇ、あたしとラクス・クラインじゃ違いすぎるわ。才能も、考え方も、何
もかもが」
 自虐的にいうミーアだが、それをロッシェが遮った。
「違う。私はラクス・クラインという女性にあったことはないが、別に君との
間に優劣があるだなんて思ってはいない」
「どういう意味?」
「君とラクスに差があるのだとすれば、それは個性の差だ。ラクス・クライン
であろうと無かろうと、誰の真似も出来ない、する必要はないんだ。君はミー
ア・キャンベルという一人の女性なのだから」
 ミーアは、ミーアとして歌を歌えば良いだけだ。平和を願うのが、ラクス・
クラインでなければならないという理由は、どこにもない。
「いつか、誰かが言っただろう。君がどこの誰であろうと、君が平和を願い、
歌い続けてきたその気持ちは本物だったと。ミーア、君はもう少し自分に自信
を持つべきだ」
「でも、あたしは……」
「ミーア・キャンベルとして歩く勇気が必要なら、私が君の背中を押そう。そ
れだけの時間は、まだ残ってる」
 微笑むロッシェに、ミーアは涙を流しながら頷いた。
「……うん、わかった」
 その時、艦内の警報装置が一斉に鳴り響いた。ミーアは驚き、ロッシェは顔
色を変えて近くの通信機器に向かう。
「何があった?」
『敵襲です。モビルドール部隊が、こちらに接近しつつあります』
「敵に先手を打たれたか……!」
 通信を切ると、ロッシェは出撃するためにアクエリアスへと搭乗準備を始め
る。そのロッシェに対し、ミーアが言葉を投げかける。
「ロッシェ、最後に一つだけ、これだけは言わせて!」
 その声に、ロッシェが振り返る。
 ミーアとロッシェ、二人の距離は、近いようで遠い。
「あたしはあなたが」
 吹っ切れたのか、ミーアはどこか清々しい表情をしていた。
「あたしはあなたのことが、大好きです!」

                                つづく


80:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/04/18 18:11:27
第67話です。
なんとか後3話で区切りよく終わらせることが出来そうです。
次に書いてくれる人も現れたみたいで、とりあえずは安心。

私がこの作品を書き始めた時期は、W-Dもまだ連載中でした。
当時の人気ぶりと、作品の面白さは一年も前なのにハッキリと
思い出すことが出来ます。
W-DにしろEDにしろ優れた作品で、私には到底書けない読み
応えのある作品でした。そんな中、私は単にWキャラを出す
だけではどうしたって他作品より面白いものは書けないだろう
と考え、自分の作品にG-UNITを使おうと思いました。
他の作者がやっていないようなことをしたかったというか、
アスランをこういうキャラにしたのも、今はどうか知りませんが、
当時はアスランがこういう立ち位置にいる二次創作が無かったか
らです。

何とも消極的な理由で始まった作品ですが、こうして完結にまで
近づくことが出来たのは、スレ住人の皆様のおかげです。
本編後3話、どうか最後までお付き合い願えれば幸いです。

81:通常の名無しさんの3倍
08/04/18 19:37:12
久しぶりのGJ!
いやー、佳境だなー。
後三話。お忙しいから投下は当分先になるでしょうけど、楽しみに待ってます!

82:通常の名無しさんの3倍
08/04/18 22:42:38
あぁぁぁぁ、あと3話かぁ。
スゲー好きだったアニメが終わるときと同じ気持ちだ……

83:通常の名無しさんの3倍
08/04/19 01:05:46
>82
良く解るぜ、携帯厨だから余計にな。まとめが読めないからとてもさびしいぜ。最後に作者にGJ

84:通常の名無しさんの3倍
08/04/19 01:32:29
GJ!
こんなにオーブが頼りに感じたのは初めてだ!
ロッシェはやはりあれをつけるのか?
まさにクライマックス!

85:通常の名無しさんの3倍
08/04/19 05:06:49
>>83
まとめ見るならファイルシークとか方法はあるだろ

86:通常の名無しさんの3倍
08/04/19 10:10:47
>>「私は、この世界の人間じゃないからな。買える場所があり……きっと、私の
帰りを待ってくれている人がいる」
帰る場所 では?


87:通常の名無しさんの3倍
08/04/19 11:16:23
>>86
誤字脱字は以前からこの作品の仕様だから野暮なことは(ry


ともあれ職人氏乙

88:通常の名無しさんの3倍
08/04/19 16:27:00
>>86
オレ達のために急いで投下してくれてるんだよ。

89:通常の名無しさんの3倍
08/04/19 16:58:00
GJ!
なんという正統派ヒロインのミーア。
火力不足のアクエリアスにあれをつけてどうなるか期待

90:通常の名無しさんの3倍
08/04/19 18:33:38
489 名前:はせお ◆uFnEeBS2Ws [sage] 投稿日:2008/04/19(土) 18:29:31 ID:MXdzaaPv
あとAPもかなりすごかったぜ
とくにシャアゲル対RX78はZと比べても遜色無い
何故かEW五機全部出た
乱舞しながら細かき蹴り入れるサンドロックかっけぇ
今年のグリリバ枠はAPのようです
ゴヒだけ敵



91:通常の名無しさんの3倍
08/04/20 00:52:14
ミーアかわいいよミーア

92:通常の名無しさんの3倍
08/04/20 08:21:58
アクエリアス、ビルゴ達を操る

統一国家誤解しアクエリアスを攻撃

あぼーん

93:通常の名無しさんの3倍
08/04/20 16:48:12
作者様GJ!
続き楽しみに待ってます。
体壊さないでくださいね。

>92
あれ?
アクエリアスって対MD用の機能停止ウィルス流すだけじゃなかったっけか?

94:通常の名無しさんの3倍
08/04/20 22:04:52
>>93
誤解してた、すまん

95:通常の名無しさんの3倍
08/04/22 00:26:02
(・∀・)

96:通常の名無しさんの3倍
08/04/23 00:02:16
エレガントに保守

97:通常の名無しさんの3倍
08/04/23 23:06:40
埋め

98:通常の名無しさんの3倍
08/04/24 01:43:52
>>97
???

99:通常の名無しさんの3倍
08/04/24 20:15:38
>>98
そこは誤爆乙、とか早漏にも程があるwwwとツッコミを入れるんだ

100:通常の名無しさんの3倍
08/04/25 14:50:34
しかし、最近気付いたんだがW世界のコロニー市民も遺伝子改良受けてるのね。
コーディネイターとは違う種類の所謂宇宙特有の出産時の母体のダメージを抑える為と言うのがWikiで書いてあるが。
UCも遺伝子弄くってるみたいだし、色々と種とは組み合わせ易い設定なんだよなぁっと今更思った

101:通常の名無しさんの3倍
08/04/25 17:26:17
遺伝子改良じゃなくて
試験管ベイビーだろ?
カトルの姉たち




102:通常の名無しさんの3倍
08/04/25 17:40:16
いや、カトル姉以外も何か出産するたびに死ぬんで改良したって設定らしい。
死亡率は母体55%、乳児79%だそうだ。

試験管ベビーとはいえば、そうかも知れんが精子の段階で改造受けてるとWikiにはある。ただ要出典とあるが。

103:通常の名無しさんの3倍
08/04/25 19:27:57
精子のDNA操作によって~のくだりは小説版EWに書いてある。
カトルの父が試験管で29人の女子(遺伝子操作済みの精子による)をもうけたのは
遺伝子操作に反対する歴代当主に反発したため。

104:通常の名無しさんの3倍
08/04/25 21:53:22
で、その父にさらに反発してカトルは家出したんだよね
何かここのくだりだけ見ると馬鹿ウズミの馬鹿娘を思い出しそうになるが別にそんな事は無かったぜ

105:通常の名無しさんの3倍
08/04/25 22:17:04
要するにパクリ元なんだろう

106:通常の名無しさんの3倍
08/04/25 23:10:26
そういやあの親父もよくわからん理由で自爆してたな

107:通常の名無しさんの3倍
08/04/25 23:54:13
ふむ。まぁ、侍の切腹みたいなノリだったんだけど
とりあえず三島由紀夫読んどけって感じだったな。

ちなみに、カガリと何かペアと言うか喧嘩とかイベントさせるなら誰が面白いだろ。
五飛辺りは喧嘩になるか変に共感してしまいそうな

108:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 00:16:33
種ってまともそうに描かれている奴ほど実はメチャクチャで、
敵だったり端役だったりする奴のほうが、まともな主張や
対応をしてたりする。

まあ、主人公やヒロインからしてあれだけどさ。

109:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 00:32:39
個人的には盟主王の言動なんかはナチュラルの利益や言い分を
忠実に代弁したものに思えたから、盟主王が一番まともに見えた

110:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 01:32:10
まあ、最期辺りは負債に狂わされたがな。最後の核をヤキンやジェネシスにぶち込んでればな…

111:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 10:50:59
問題は核は打ち込めても所詮宇宙じゃでかい爆弾だからなぁ

112:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 11:52:11
陽電子砲は通じなくても
PS装甲である以上、核の物理的爆発力ならPS装甲をぶっ壊せるだろうという理屈である

113:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 12:02:27
そうか。宇宙じゃあ放射能なんて関係ないから、ボンボンぶっ放していいわけか。

114:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 12:59:43
関係ないって言うか詳しくはないが宇宙は放射能どころかもっとやばいもんが
宇宙線となってると聞きかじった。

つまり、土砂降りの雨の中で合羽着てる人間に水風船ぶつけたら、「水で濡れるわ!」って怒ってる様なもん。


115:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 13:32:33
>>112
ジェネシスのミラー壊すだけで十分だぞ。

116:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 18:18:26
盟主王がプラントに核を向けた理由は囲魏救趙の計だと言ってみる。

117:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 18:44:30
>>116
知っているのか、雷電! 折角なのでスレのネタに詳しく詳細希望

118:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 18:54:20
戦場自体が変わらんから、それは無いんじゃないか?>囲魏救趙の計
ヤキンとジェネシスが遠く離れた所に位置するとかなら分かるが。

119:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 19:26:27
微妙に違うが納得は出来るな。>囲魏救趙の計


120:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 20:34:54
>>115
だがちょっと待って、よく考えてほしい
そもそも、ミラーだけを壊しても、ジェネシスのミラーは予備の物と交換が出来る

ここは万全を期すために本体に攻撃を仕掛けるのが
人類の存亡を万全のものとするために、盟主王としては必須な行動だったのではないだろうか

121:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 20:39:41
【囲魏救趙の計】
兵法三十六計のうちの第二計。
魏国の軍勢に都を包囲された趙国の救援に遣わされた斉国の将軍がそのまま救援に向かわずに
魏国へ直接攻め入り、危機に急いで戻ってきた魏軍を倒して斉国を救った策略。
これにちなんで、敵を一ヶ所に固まらせずにペースをかき乱し疲労させてから撃破する戦術を
「囲魏救趙の計」と読んだ。

122:通常の名無しさんの3倍
08/04/26 21:07:56
因みに魏の将軍と斉の軍師は幼馴染みだった。

123:通常の名無しさんの3倍
08/04/27 01:05:33
クロススレ最深部(?)より浮上する

124:通常の名無しさんの3倍
08/04/27 13:43:06
>>120
ミラーも全部ぶっ壊す。

125:通常の名無しさんの3倍
08/04/27 20:31:06
まぁ、問題は核を使ったとしてもそれより大きい質量を如何するかって感じだな。
ボアズを落とすのに少なからず10発位は当ててる訳だから
実質ジェネシス、ヤキンに何発位当てれば壊れるだろ

126:通常の名無しさんの3倍
08/04/27 22:10:39
周りが岩な要塞と機械剥き出しの大砲じゃまるで違うし、機能の一部を壊せりゃいんだから1発で十分

127:通常の名無しさんの3倍
08/04/27 23:36:04
核だけでなく通常弾も上手く使えばジェネシス破壊出来なくもないと考える。
ヤキンはジェネシスなければほっといててもいいんじゃね。後は頭が居ると思われる(実際はヤキンだった)プラントの首都コロニーに打っ放すと脅せば戦争は終わってた

128:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 03:33:02
どうでも良い事だけどPS装甲って衝撃には強いだろうが熱には強いんだろうか

129:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 08:09:14
一応ストライクが大気圏突入できるのはPS装甲の耐熱性の賜物、て事らしいスよ
パイロットが茹であがるのはさておき

130:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 08:48:42
胴体にビーム喰らってPS装甲でなければ死んでいたって描写が公式にある
ビームに耐え切れないだけで通常装甲よりも対ビーム強度も上

131:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 09:43:21
熱に強くなければ実体弾食らってもあっさり貫通されるからな。
レールガンとかの場合、弾速がマッハ5~8くらいになるから直撃したときに弾丸が激突したときに発生する熱がとんでもないものになるだろうし。
それに耐えられなかったら貫かれるわけで。

132:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 11:53:37
どっかの考察スレでHEAT弾ならPS装甲貫けるはずとか書いてたな

133:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 12:41:57
それはかなり前から言われてるが、正直レールガンをコクピットにゼロ距離で叩き込まれてもパイロットが脳震盪さえ起こさないんだから、虚しい意見だ

134:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 13:24:54
途方もない耐衝撃性能ですね。

135:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 13:37:41
でもM1の掌底程度でPS装甲ごとオーバーフローする程度の耐衝撃性能でもあるんだよな

136:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 13:56:04
ま、けどさ。それを言ったら特にWのリーオーなんて
乗るパイロットによって強度が変わるとか言われてる現実もある訳でorz

137:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 15:23:34
それよく言われてるけど実際にはそんな描写は無いぞ
確かにヒイロが乗ったリーオーは雑魚機と比べてしぶといが、
致命傷になる部分への被弾を避けてるだけと解釈できる

138:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 15:44:48
>>136
言ってる奴らはろくにWを見たことない連中ばかりだろ。

139:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 15:56:50
ま、個人的にリーオーの装甲の強弱は演出の力だと思う。
実際、雑魚が乗った時と、ネームドキャラが乗った時の性能差は凄いがパイロットの腕だし。

後、よく言われるチート性能なガンダムだが実際に基地を制圧する時倒してるのは10~20機程度。
50機のサーペントを倒すのがジリ貧なWのガンダム達だが
100~200機撃墜当たり前と思われてる。

そういう意味で魅せる力はWは凄いと思うから余計にPS装甲とかはorz

140:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 16:09:16
ヒイロがリーオーに乗ってビルゴ軍団と戦った時あったけど特に強化はなかったし。

141:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 19:22:29
Wはむしろガンダムのがあっさりやられるから不思議!

142:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 23:30:07
リーオーって凄く懐が深いんだな。
乗るヤツが乗ればかなり強いってカッコイイ。

143:通常の名無しさんの3倍
08/04/28 23:34:29
>>135
あれはただの掌底じゃなくて、浸透勁の一種だからな
それも、打ったM1の方も機体が耐え切れないぐらいのトンでもないレベルな

144:通常の名無しさんの3倍
08/04/29 00:04:09
>>143
うさんくせーな、信じられん。

145:通常の名無しさんの3倍
08/04/29 00:44:14
>>142
捨て身戦法とは言えど単機で主役MSと戦って倒した量産MSなんて全ガンダム作品中でもリーオーくらいだしな

146:通常の名無しさんの3倍
08/04/29 00:59:56 f+RzHy0A
>>145
ザク改を忘れているぞ。
一応連邦側主役ガンダムを破壊している。パイロットは死んだが。

147:通常の名無しさんの3倍
08/04/29 01:23:16
それ何だっけ?

148:通常の名無しさんの3倍
08/04/29 01:26:37
0080ポケットの中の戦争

149:通常の名無しさんの3倍
08/04/29 01:54:02
>>143
それなんて操兵?

150:通常の名無しさんの3倍
08/04/29 17:23:41
>>149
だってあいつ宇宙空間用に割り切って脚なんかライディングギアにすぎませんなM1Aで地球を歩き回るアホだもん

151:通常の名無しさんの3倍
08/04/29 18:22:48
あれ? M1Aで歩き回ったのは天井じゃなかったっけ?

152:通常の名無しさんの3倍
08/04/29 18:23:13
三角とび→天井走り→パワーダイブ
じゃなかったか?

153:通常の名無しさんの3倍
08/04/29 19:20:13
>>142
劇中じゃ化け物扱いのガンダムもアビリティレベルで見たらじつはリーオーに比べてそんなに強いわけではないしな。

154:通常の名無しさんの3倍
08/04/30 00:03:37
アビリティレベルと聞いてFFを思い浮べ、あまつさえガンダム達とリーオーが並んでFFの戦闘している映像が浮んでしまった…

155:通常の名無しさんの3倍
08/04/30 00:09:15
>>154
疲れてるようだな
今日は早く寝ろ

156:通常の名無しさんの3倍
08/04/30 02:10:13
リーオーのきちんとしたプラモデル欲しいなー。
千円くらいで。

157:通常の名無しさんの3倍
08/05/01 00:36:11
15m前後が標準なF91~XまでのMS規格だと、手頃なサイズのキットは
どうしても1/100になってしまうからなあ。
かといってアナザー物のMG以上のキット化なんて主役級ガンダムタイプでさえ
数えるくらいしかない。
MG化なんて贅沢は言わないから、1/100でのHGUCF91~Ⅴガンシリーズや
同じく1/100HGFC、HGAC、HGAWなんてシリーズ化に踏み切ってほしいもんだが。

158:通常の名無しさんの3倍
08/05/01 00:36:48
15m前後が標準なF91~XまでのMS規格だと、手頃なサイズのキットは
どうしても1/100になってしまうからなあ。
かといってアナザー物のMG以上のキット化なんて主役級ガンダムタイプでさえ
数えるくらいしかない。
MG化なんて贅沢は言わないから、1/100でのHGUCF91~Ⅴガンシリーズや
同じく1/100HGFC、HGAC、HGAWなんてシリーズ化に踏み切ってほしいもんだが。

159:通常の名無しさんの3倍
08/05/01 00:38:06
秘密の花園のせいでダブった…?

160:通常の名無しさんの3倍
08/05/01 07:40:44
そいつら山になるか?

161:通常の名無しさんの3倍
08/05/01 22:45:02
塵も積もれば山となる

162:通常の名無しさんの3倍
08/05/02 23:25:24
保守

163:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 00:01:26
保守

164:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 09:35:26
上げ

165:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 09:37:54
あげんな

166:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 10:27:54
過疎ってんなぁ もう役目は果たし終えてんだからこのまま落としちゃって良いんじゃね

167:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 10:30:51
後3話

168:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 10:42:41
GW進行でおそらく今地獄
ゆっくり待とうや

169:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 10:49:49
>>166
つ【硫化水素】

170:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 18:38:13
正直、総合スレ合流ってのもアリかも知れん。
殆ど何処のSSスレもこんな感じだし

171:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 18:55:04
少なくともあと3話あるのは確定事項で、
また残りレス数も容量もじゅうぶん残ってる。
何を急いでる?

172:通常の名無しさんの3倍
08/05/06 22:41:47
無理に合流する事は無いでしょ。
スレがあるんだからノンビリ逝きましょう。

173:通常の名無しさんの3倍
08/05/08 00:20:43
ゆっくり待ちましょう
会社とか学校とかの年度変わったしリアル忙しいんでしょから

適度にレスして落とさないようにするだけですね

174:通常の名無しさんの3倍
08/05/08 00:29:27
ま、そだな。ただ、埋め荒らしがSSスレを狙い始めているので正直ちょっとビビッてるorz

175:通常の名無しさんの3倍
08/05/08 22:03:46
間に合えば明日。
煮詰まってるというか、詰め込みすぎで良いものにならない。

176:通常の名無しさんの3倍
08/05/08 22:19:21
あらかじめ区切っていた話数に固執なさらんでも良いと思うんですぜ。
再構成して話数が増える事で内容がいくらかスッキリして、また私らも
それだけ読める期間が延びるんならいい事ずくめってもんでやんしょ。

177:通常の名無しさんの3倍
08/05/09 09:39:12
そうですぜ。

178:通常の名無しさんの3倍
08/05/10 16:32:03
出来たけど土曜なので明日投下。

179:通常の名無しさんの3倍
08/05/10 22:01:55
なんでやw

180:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 20:26:08
もう日曜も遅いが投下はまだか

181:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 21:03:02
事故でもあったか?

182:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:22:31
投下します。
長いので規制入ると思います。

183:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:23:24
「地球はすぐそこだ! 後少し、後少しで我々の悲願は達成される!」
 ジャスティスのビームサーベルが、ウィンダムの一機を斬り裂いた。従来の
ものを強化されたシュペールラケルタビームサーベルは、相手の装甲を紙切れ
のように斬り裂き、破壊した。
 続けざまに放たれる高エネルギービームライフルが、接近する敵機を尽く撃
ち落とす。
「たかが一機に!」
 果敢にもビームサーベルを構え斬り込んできたダガーLは、鋭い斬撃をジャス
ティスへと放つ。
「遅いなぁっ!」
 しかし、ジャスティスの爪先に発生したグリフォンビームブレイドが、ダガ
ーの斬撃を弾き飛ばすと共にその腕を切り落とした。隠し武器ともいえる攻撃
に敵が動揺していられたのは、僅か数秒。ジャスティスのビームサーベルは、
正確にダガーのコクピットを貫いていた。
 ジャスティスの周囲にある敵機全てが、その光景を前に恐れ戦いている。目
の前にいる機体は大将機、これを討ち取ると言うことは、大将首を手に入れる
と言うことだ。
「なんて、強さだ……」
 パイロットの一人がごくりと生唾を飲む。
 大将首を取るどころではない、迂闊に近づけばこちらの首が斬り飛ばされる。
そう思わせるだけの強さを、ジャスティスは見せつけていた。
 既に戦闘開始から12時間を超える中、遂にインフィニットジャスティス総大
将アスラン・ザラが出撃をしてきた。オーブの参戦、ダイダロス基地の陥落と
いう問題に直面した彼は、自らビルゴ部隊を率いて戦場に躍りでたのだ。ウル
カヌス周辺には余剰兵力など存在しないので、彼が率いているのはウルカヌス
の防衛用に残していた機体である。これを動員することには少なからぬ異論も
あったが、アスランは一蹴した。
「ウルカヌスの防御はスコーピオに固めさせる。あのMAはビルゴ20体分ぐらい
の働きはするさ」
 20体はさすがに過剰評価や誇張であると思うが、実際性能面ではそれぐらい
はあるだろう。ただ、参謀肌の士官に言わせれば戦いとは数であり、その数を
如何に効率よく運用するかだ。機体性能に頼ったような戦略や戦術では、足下
をすくわれる可能性がある。
 とはいったものの、現在の戦闘自体、ビルゴⅡの圧倒的な性能で敵軍との間
にある数の差という劣勢を跳ね飛ばそうとしているのだから、今更このような
ことをいうものおかしいというものだ。第一、アスランの参戦によって押され
始めていた戦局が、再びインフィニットジャスティス側に傾いた。その意味で
は、彼の選択と決断は成功であったろう。
 だが、これは同時にアスランの限界を示していると指摘する後世の戦史家も
いる。
「アスラン・ザラは、正面の物事や戦闘に対処する能力に長けていた。これは
彼が優秀な戦術家である証拠であるが、彼は逆に戦局全体を見通す戦略家とし
ての資質が欠けていた。しかし、それを批難することは出来まい。彼の英雄資
質とは、戦闘における強さ、戦場の勇者としてなのだから」


         第67話「運命対不滅の正義」


184:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:24:24
 ミネルバがゴンドワナ率いるザフト艦隊と合流して、世界統一国家軍とイン
フィニットジャスティスの戦闘が行われている宙域に急ぐ中、頼みの綱であっ
たはずのガンダムチームは、意外な苦戦の中にいた。
 彼らはダイダロス基地の陥落を訊くと共にすぐに出撃の準備を始めたのだが、
そこに敵が奇襲を掛けてきたのだ。アスランは彼らを封じ込めるために、レク
イエムに続く手を打っていたのだ。
「トーラスが十五機に、ヴァイエイトのカスタム機か」
 当初、敵の戦力とその陣容から、ヒイロを始めとした誰もが敵は雑魚である
という認識をしていた。確かにトーラスは機動力に優れ、ヴァイエイトは火力
に富んだモビルドールではあるが、メリクリウスやビルゴのように高い防御力
を有しているわけでもない。普通に戦えば、まず負けるはずのない敵であった。
 そう、普通に戦えば……
「こいつら、何て戦い方しやがる!」
 デュオの叫びは、他の機体に乗るパイロットたちの心情を一言で表したよう
に思える。
 敵の戦術は、なんのことはない、いたってシンプルだ。ヴァイエイト・シュ
イヴァンはダブルビームキャノンを、トーラスはトーラスカノンを構えて、一
斉に砲撃を開始する。如何にガンダムタイプといえども高出力のビーム砲撃を
食らえば無事では済まず、確かに驚異といえる。だが、威力ほどの驚異を与え
るのは、なかなかに難しい。何せガンダムチームは超一流のパイロットであり、
敵機の砲撃に撃ち落とされるようなヘマはまずやらない。
 しかし、それはあくまでガンダムチームに限ってのことである。
「機体で敵の射線軸を塞げ! 突破されるぞ」
 敵機は集中的に、プリベンター巡洋艦に対して砲撃を繰り返してきたのだ。
恐らく、最終的な攻撃目標としてインプットされているのだろう。プリベンタ
ー巡洋艦は速度も武装もそれなりではあるが、それはあくまで艦船としてであ
る。防御力は決して高くはなかったし、モビルスーツと比較した際の機動力は
低いと言い切れるほどのものだ。
「俺達の弱点を完全に見透かしてやがるぜ……敵の総大将は、ホントかわいげ
のない奴だな!」
 ビームサイズでトーラスの一機を斬り裂きながら、デュオが毒づく。
「利口な奴だ。実力で敵わないと悟っているからこそ、別の方向から攻める。
月基地といい巡洋艦といい、大した戦術だ」
 トロワは素直にアスランの戦術を褒めるが、だからといって何時までもこの
状況のままではいられない。敵を撃破するのは簡単だがプリベンター巡洋艦を
防御しつつ、戦い続けるのは容易なことではない。それに、早く戦場に向かわ
なければ行けない状況でもある。
「ここは俺達で何とかする。プリベンター巡洋艦は先行しろ」
 五飛の提案は、ガンダムチームで敵を引き留めるので、その隙に別働隊戦場
へ向というものであった。敵機が立ち塞がる最短ルートを大きく迂回するため
に時間が掛かってしまうが、このままではザフト艦隊よりも到着が遅れてしま
う可能性がある。
「敵機を撃破次第、俺達も最短ルートで戦場に向かう。現状ではこれがベスト
だ」

185:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:25:29
 ヒイロの一言で、作戦は決定された。巡洋艦と共にプリベンター所属の三機、
ガンダムアクスレプオス、ガンダムアクエリアス、カスタムリーオーレオンが
先行する。戦力的には大きく落ち込むが、ここで足止めされているよりはマシ
というものだろう
「状況打開にはそれしかないか……よし、良いだろう」
 プリベンター巡洋艦が進路を変え、戦闘宙域からの離脱を計る。敵機がそれ
を追撃しようとするが、ガンダムチームの猛攻が阻んだ。
 トーラス隊は四方八方に分散し、ガンダムチームを包囲するとトーラスカノ
ンによる砲撃を行った。ガンダム各機はこれを避け続けるが、巧みに狙い撃た
れる砲火は何時しか彼らを一箇所へと集めてしまう。
「まずい……!」
 ヒイロが敵機の意図を察したときには、もう遅かった。ダブルビームキャノ
ンの出力を最大限に上げ、フルチャージを完了させたヴァイエイト・シュイ
ヴァンの砲撃が、ガンダムチームに向かって放たれた。

 その頃、最終決戦が行われている戦場では、世界統一国家軍がそれまでの陣
形と戦術を放棄し、一転して全兵力を密集させた分厚い防御陣形を敷いていた。
インフィニットジャスティスの正面に展開された兵力は世界統一国家軍の全軍、
全力、全兵力であり、彼らは一枚の銅貨もそのポケットに残してはいない。
 総司令官であるムウ・ラ・フラガさえも、今や直属の機動部隊を率いて最前
線にいるのだ。彼の乗る機体は量産機であるウィンダムを、出力面で強化した
カスタム機であるが、基本的には量産機と大差ない。ストライカーパックには
ガンバレルストライカーを使用し、ガンバレルもエグザスの物と強化されてい
るが、ビルゴには通用しなかった。ムウほどの実力者であってもだ。
 ここにきてムウが消耗戦を主体とした戦術を放棄したのにはいくつかの理由
がある。一つは分散させた部隊の戦力比が均等ではなくなったこと。さらに、
アスランの参戦で勢いづいた敵軍の猛撃に各部隊の戦力では対応しきれなくな
ったこと、戦闘の流れが速く、部隊の再編が追いつかなくなったこと、などで
ある。いずれも正当な理由だが、これは彼らが窮地に立たされたことを意味す
る。オーブ艦隊の来援によっていくらか持ち直したとはいえ、既に世界統一国
家軍側の機動兵力は3000機弱まで落ち込んでしまっている。これはアスランが
オーブの参戦という予期せぬ要素を排除し、新たな戦術を持って完璧に対応し
たからであった。
 そのアスランに自らの作戦を打ち破られたムウとしては、正直彼の計算が甘
かったとしか言いようがない。彼に余裕はなく、油断などしてはいなかった。
常識外の力を持つ敵に対し、常識外の16倍という兵力をぶつけた。
「16倍ではまだ足りなかった、というわけか」
 この兵力差すら跳ね返されるというのは、考えても見なかった。16倍という
豊富な兵力を使って敵を疲労、消耗させるムウの作戦は、逆にこちらの限界が
近づくことで崩れ去ろうとしている。敵が動けなくなる前に、こちらが壊滅さ
せられてしまう。
「大軍を少数で破るほど華麗で壮大なことはない。アスランが俺達の勝利すれ
ば、世界は奴の派遣を認めざるを得ないだろう……だが」
 それではいけない。例えアスランにそれだけの才能や才覚があるのだとして
も、覇者によって支配される世界など、あっていいはずがない。
「けど、俺にはもうこの状況を覆すだけの手がない」

186:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:26:34
 ムウ自ら出撃して奮戦しているが、敵の勢いを止めることは未だに出来ない。
それどころか、全体として徐々にではあるが後退している始末だ。地球に到達
されるわけにはいかないというのに、防ぐことも出来ないでいる。
「乱雑な攻撃を止めろ! 隊列を組み直すんだ」
 とりあえず密集して敵に集中砲火を与えていた自軍に対し、ムウは新たな陣
形を組ませた。それはモビルスーツによる三十の横列陣であり、時間差を付け
て敵機に砲撃を行うというものであった。これによって砲撃に間隔に隙が生じ
ず、敵を釘付けに出来るのだ。
「我ながら情けない戦法だが……こちらの目的が敵の消耗である限りは、なん
としても踏みとどまり、時間を稼がなくてはいけないのだ」
 しかし、アスランの戦術はムウのそれを上回った。彼はビルゴのプラネイト
ディファンサーによる壁を作って敵の砲火を阻むと、その隙間から砲戦仕様の
ビルゴで砲撃を開始したのだ。鉄壁が敵の攻撃を弾き返し、砲火が敵の陣列を
撃ち崩す。この極めて有機的な防御と攻撃の連携を前に、世界統一国家軍は一
時潰走寸前に陥った。
「敵に押されるな! 数で圧迫して、押し戻すんだ!」
 ムウの叫びも、今となっては虚しいものだった。その数が、十秒目を瞑るだ
けで激減していくのだ。今でこそアスランは防御を怠らない構えを見せるが、
こちらの攻撃が弱体化したと感じれば、一気に全部隊に攻撃を命じるだろう。
そうすれば、我々は完全に敗北する。
「打つ手、なしか……」
 撤退も、降伏も考えてなどいない。とはいえ、このまま全員が死兵となって
戦うというのは……せめて、撤退許可ぐらいは出すべきであろうか。残る者は
残り、去る者は去るだろう。去る場所があればの話だが。
 アスランは敵の動きが鈍り、潰走寸前であることを見抜いていた。一気に攻
め入り、敵将の首を落とす。彼は完全な勝利まで後一歩の位置まで来ていたの
だ。
「これでいい。これが俺の選んだ道なんだ。俺は覇道を突き進み、今、覇者に
なるんだ」
 ジャスティスのコクピットで、アスランは呟いた。彼自身も多くのモビルス
ーツを撃破し、その強さを敵軍に知らしめていた。
 そんなアスランのコクピットに、ウルカヌスから緊急通信が入った。ウルカ
ヌスが後背から奇襲を受けたというのだ。
「異世界の連中か?」
『違います、ザフトです。ザフト艦隊が総攻撃を駆けてきました!』
 戦闘開始から既に、20時間が過ぎようとしていた。


 宇宙空母ゴンドワナを旗艦としたザフト軍独立艦隊は、月面基地を破壊した
ミネルバと合流後、すぐに最終決戦場へと向かった。強行軍ともいえる部隊は
驚くべき速度で移動し、ウルカヌスをその正面に捕らえたのだ。
「護衛のモビルスーツも全て出払っているようだな。これは好都合だ、全艦砲
撃開始! 撃ち尽くしても構わん、敵が引き返してくる前に敵の根拠地を叩き
つぶせ!」
 ウィラードは全艦に砲撃を命じた。各艦艇の主砲が火を噴き、ウルカヌスへ
と浴びせかけられる。ウルカヌスには一応、スコーピオが護衛として残ってい
たのだが、機動兵器一つで全ての艦砲射撃を防ぐことなど出来ない。

187:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:27:20
「モビルスーツ隊発進! 敵衛星を制圧し、敵軍と切り離せ!」
 ザクやグフが次々に出撃し、ウルカヌスへと迫った。この神速ともいえる用
兵に、さすがのアスランも肝が冷えた。内部制圧が行われ、ビルゴの制御を奪
われればこちらが負ける。それだけは避けねばならない。
「くそ、何機か着いてこい!」
 アスランはジャスティスを旋回させると、数機のビルゴを率いてウルカヌス
へと引き返した。それは素早い反応であったが、間に合うだけの距離ではなか
った。
「こんなところで、負けてたまるかぁっ!」
 夢は、すぐそこなのだ。父の遺志と、仲間の想い、地球はすぐそこだ。負け
るわけには、諦めるわけにはいかないのだ。
 そんなアスランの気持ちが通じたのかは知らないが、ザフト軍のモビルスー
ツはウルカヌスに近づくことが出来なかった。スコーピオが起動し、近づくモ
ビルスーツの排除を始めたのだ。銃剣ビームベイオネットが敵機を撃墜し、巨
体故に体当たりですら艦艇を貫く武器となる。
「おのれ、化け物が!」
 グフがテンペストビームソードで斬りかかる。巨体のスコーピオには回避す
ることの出来ない速度と攻撃、だが、そもそも回避する必要など無かった。ス
コーピオは機体の尾ともいえる長さを持つヒートロッドを伸ばし、グフを貫い
た。
「うがぁっ!?」
 ヒートパワーがコクピットごと機体を瞬壊させる。直撃したところでグフの
攻撃が通じたかはわからないが、スコーピオの攻防一体とした強さにさすがの
ザフト軍もたじろいでいく。
「ミネルバ隊は何をしている!」
 主戦力であるはずのミネルバ隊であるが、機体の整備に時間を取られていた。
デスティニーはすぐに出撃できるのだが、レジェンドとインパルスがダメだっ
た。レジェンドは機動実験も間もない機体を無理に動かしたせいで各部に僅か
な異常を来し、インパルスは先の戦闘でコアスプレンダーが損傷していた。変
形機構などに問題はないのだが、飛行システムが作動しないのだ。
「動かせないわけじゃないんだし、これでいくしかないわよ!」
 整備班の制止を振り切り、ルナマリアは出撃を強行した。レイもまた不休で
整備を手伝い、レジェンドに乗り込んだ。
「二人とも、俺は先に出る!」
 いち早く機体の整備を終えたシンのデスティニーが出撃する。続けて、レジ
ェンド、インパルスの順に出撃していく。インパルスは先の戦闘でブラストシ
ルエットを破損したため、フォースシルエットでの出撃となる。クルーはフル
回転で作業を続け、ミネルバ内部にも最終決戦ムードが漂っている。

 そんな中、これはパイロットやブリッジクルーが知るところではなかったが、
医務室においてメイリン・ホークの意識が回復していた。医療スタッフは気付
いてこそいたが、戦闘中とのこともあってブリッジへの報告をしなかった。
「ここは…………?」
 医務室のベッドで目覚めたメイリンは、そこがミネルバであることにすぐ気
付けなかった。朦朧とした意識の中、姉と会話をした記憶は朧気にあったが、
それは夢想のようにも思える。ふと、隣のベッドに顔を向けると、知らない男
がベッドに腰掛けている。

188:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:28:03
「あなたは?」
「俺はこの艦の捕虜だ」
 スウェン・カル・バヤンはメイリンに一瞬目を向けると、そう答えた。捕虜
といっても彼には大体における行動の自由が許されており、艦内の移動も好き
に出来る。ただ、居場所がないので元々居た医務室にいるのである。
「ここは、ミネルバなんですか……」
「そうだ。お前はこの艦の脱走兵らしいな」
 脱走兵。事実だが、その言葉はメイリンの心に深く突き刺さった。
「お姉ちゃん、ルナマリア・ホークがどこにいるか知りませんか?」
「あの女は出撃した。インフィニットジャスティスと、アスラン・ザラと最後
の戦いをするためにな」
 アスラン・ザラ。その名を聞いて、メイリンが大きく反応を示した。少女が
恋し、少女が愛し、少女を切り捨て、少女が裏切り逃げ出した、それがアスラ
ン・ザラ。
「アスランは、まだ生きてる……」
「ディアッカ・エルスマン、イザーク・ジュールといった奴の片腕ともいえる
存在は相次いで戦死しているが、本人は生きてるようだな」
「あの人たちが、死んだ―!」
 特に会話をしたわけでもなかった。仲が悪かったわけではないが、仲が良か
ったということもない。それどころか最終的には命を狙われた。
 だけど…………
「みんな、みんな死んでいく」
 戦争。アスランは、戦争を行っているのだ。プラントに平和をだとか、世界
に正義を示すとか、そんな言葉は全て建前に過ぎない。敵であろうと仲間であ
ろうと人は死ぬ。
「アスランが自身の敵を全て倒さない限り、奴には死以外の運命は待っていな
い。奴が死なない限り、この戦争は終わらない」
「そんなっ!」
「人は、革命のためには戦わない。革命家と、そいつが示す大義名分があるか
ら戦えるんだ。逆にそれがなければ、戦う意味も、理由もなくす」
 ロッシェなどがアスランさえ倒せば良いと主張しているのは、こうした事実
からである。無論、幾人かはアスランの弔い合戦と称した抵抗を続けるかも知
れないが、彼の存在会ってこそのインフィニットジャスティス。彼が死ねば、
組織は指導者を失って瓦解するだろう。既にイザークやディアッカといった有
力者も戦死している。アスランは孤独だった。あいつ出仲間を失い、自らの手
で友を殺め、それでも勝者になりたくて、戦いを続けている。
「あの人は……馬鹿です。一人で何でも考えて、思い詰めて」
「それが、人というものだ」
 呟くと、スウェンはベッドから腰を上げて立ちあがった。
「どこへ?」
「俺にも出来ることはあるはずだ。戦いに行く」
 命の対価、命の貸しがこの艦にはある。一度や二度、何かしたぐらいでは返
せないだろう。それに、今のスウェンは不思議とコーディネイターへの嫌悪感
や不快感がない。ミネルバという艦と、クルーやパイロットたちが彼の考えを
変えたのだ。

189:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:29:00
「最後に何をしたいか、結局の所それを決めるのは他人じゃなくて自分だ。考
え、決断し、動く。お前も自分がどうしたいのか、考えておくことだ」
 お前に、未来があればの話だが。
 スウェンはそう言うと医務室を出て行った。後には、メイリンだけが残され
る。
「私の未来……」
 そんなもの、あるのだろうか? 自分は裏切り者で、脱走兵だ。一度裏切っ
たのに、ノコノコと戻ってきた最悪な女。最後までアスランの側にいることも
せずに、彼の下を逃げ出した。大体、この戦闘や戦争が一段落すれば自分に待
っているのは銃殺刑だろう。軍が、裏切り者の自分に恩情を掛ける理由など有
りはしないのだから。
「アスラン…………私は」
 メイリンは痛む身体を堪えながら、無理矢理起きあがった。身体は動く。彼
女にはまだしなければ行けないことが、残っていた。


 ザフト艦隊に遅れること三十分弱、ロッシェらを乗せたプリベンター巡洋艦
がウルカヌスと離れた、どちらかといえば統一国家軍に近い位置に現れた。
「まだ統一国家軍側は負けていないようだな」
 安堵のため息をオデルが付いた。見た感じでは潰走寸前であったが、いくら
でも持ち直させることは出来る。
「アスラン・ザラの機影を確認できるか?」
 ロッシェが尋ねるが、主戦場においてジャスティスの機体を確認することは
出来なかった。出撃自体はしているようだが、ウルカヌスへと後退しているの
か、それとも……
「出撃しよう。今なら、まだインフィニットジャスティスを食い止めることが
出来るかも知れない」
 オデルの言葉に、ロッシェとブルムも頷いた。敵のビルゴⅡは僅かほどにも
減少していないのだが、彼らにしてみればこの世界のモビルスーツでよくここ
まで持ちこたえられたと褒めてやりたいぐらいだった。
 失礼極まりない話をすれば、どうしたって勝てるわけはないのだから、攻め
て生き残っていて欲しいというのが彼らの本音だったのである。
 そんな彼らの襲来を、アスランは早い段階で察知していた。しかし、一度主
戦場から引き返してしまった彼にこれを阻むことは出来ず、彼はサトーに迎撃
を命じた。
「俺もザフト艦隊を壊滅させたらすぐ戻る! それまで持ちこたえろ!」
 アスランがウルカヌスへと戻ったことで、ザフト艦隊は奇襲における優勢を
完全に失いつつあった。たった数機のビルゴⅡを率いてきたに過ぎないアスラ
ンだが、スコーピオ共々凄まじい性能差を見せつけている。
「誰にも俺を止めることは出来ない。地球だろうとザフトだろうと、誰にもだ」
 突き崩されるザフト艦隊を見ながら、アスランは不敵な笑みを浮かべる。元
々数が少ないザフト艦隊など、すぐに壊滅できるだろう。そうすればもう後背
の心配をする必要はなく、スコーピオも前線に送り込める。勝利は、すぐそこ
にある。
「―ッ! 砲撃!?」
 ビーム砲の閃光がジャスティスの掠めた。ギリギリのところで回避したが、
直撃していれば一溜まりもなかっただろう。

190:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:29:43
「あれは……」
 赤い翼を広げ、ビーム砲を構えながら佇むモビルスーツ。その姿に、アスラ
ンは見覚えがあった。
「シン・アスカか……チッ、どこまでしつこい奴だなお前は!」
 ビーム砲を収納し、ビームライフルを構えるデスティニー。コクピットで、
シン・アスカが大きく息を吐いた。
「アスラン、あんたを倒すのは俺だ!」

 出撃したアクエリアスとアスクレプオスは、すぐにビルゴ部隊の直中へと攻
撃を掛けた。プラネイトディファンサーを装備するビルゴⅡは彼らであっても
撃破するのは至難の業であるが、決して倒せないというわけではない。
「ロッシェ、射撃戦では不利だ。接近戦を心がけよう」
 パイソンクローでビルゴを砕きながら、オデルが叫ぶ。
「当たり前だ。生憎、この機体にはビーム兵器はないからな!」
 ヒートロッドでビルゴを貫き、斬り裂いていくアクエリアス。
 敵か味方かもわからない二機の出現に、統一国家軍は困惑したが、何せ相手
はビルゴのみを攻撃している。少なくとも、敵ではないはずだ。ムウはそう判
断すると、すぐにその場に向かおうと機体を動かすが、それを無数のビームが
遮った。
「なにっ!?」
 振り返ると、そこに一機のモビルスーツが居た。見たことのない機体だが、
見覚えがある機体。
 額が疼く。言い様のない感覚が、身体を支配していく。
 そう、これは―
「……地中海では、お互いまともに名乗らなかったな。折角だから、名前を聞
かせてくれないか」
 ビームライフルを構えながら、ネオは敵機に通信を送った。その通信を受諾
しながら、敵機であるモビルスーツ、レジェンドのパイロットは呟いた。
「レイ・ザ・バレル。それが俺の名だ」
聞いたことのない名前だった。当然だ、自分は知らないことが多すぎる。自分
の知らぬ間に、彼と、彼の一族は一体幾人の人を不幸にしてきたというのか。
「レイか……一つ問う、今の攻撃はザフトの指示か?」
『違う、あくまで俺個人の行いだ』
「個人?」
『お前は俺の兄弟たち、そして……我が分身、ラウ・ル・クルーゼの仇だ』
 ムウは言葉に詰まった。だが、それが何を意味するのかは、彼にもわかった。
「そうか、軍規を無視し、命がけで挑んできたか」
 そうするだけの理由が彼には、レイ・ザ・バレルという存在にはあるのだろ
う。そして、ムウにはそれを受けなければならない理由があった。
「俺の名はムウ・ラ・フラガ。フラガ家最後の生き残りにして、世界統一国家
代表。お前の挑戦、ここに受けるぞ!」
 紫色のウィンダムと、レジェンドが激突した。



191:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:30:39
 アクエリアスとアスクレプオスが戦場に出るのと入れ替わるように、サトー
の乗るブラックリーオーがプリベンター巡洋艦を沈めるために単機で突っ込ん
できた。インフィニットジャスティスはことに敵の司令塔、つまり頭を叩くこ
とに重点を置いている。これは少数戦力しか持たない彼らにとって当然の選択
であり、サトーもそれに習ったのだ。
「奴らの母艦を撃ち落とし、帰る家を無くしてくれる!」
 ドーバーガンを構え、巡洋艦へと標準を合わせるブラックリーオー。ビーム
タイプではないが、巡洋艦程度一撃で沈められる威力は持っているはずだ。
「これで!」
 ブラックリーオーからドーバーガンが発射された。砲弾は一直線にプリベン
ター巡洋艦へと飛び、これを捕らえたかに見えた。
 が、寸前のところでビームの閃光がこれを阻み、ブラックリーオーの攻撃を
防いだ。
「護衛のモビルスーツか!」
 ブラックリーオーからみて天頂に、一機のモビルスーツが佇んでいる。カス
タムリーオーレオン、ブルム・ブロックスの乗る機体であった。
「随分と懐かしい機体に乗ってるじゃないか……どうだい、丁度相手が居なく
て暇してたんだ。俺と勝負といかないか?」
 ハイパーランチャーを捨て、サーベルを抜き放つレオン。ブラックリーオー
がドーバーガンの標準を合わせる。
「そこをどけ!」
 放たれた砲弾を斬り裂き、レオンがブラックリーオーに迫る。サトーは舌打
ちしながら機体を動かし、敵機の斬撃を避けた。
「その機体、そいつだけは見逃すわけにはいかない。俺にはちょっとした因縁
があるのだ」
 古傷が痛む。機体は違うが、かつて彼に絶望的な『死』を与えた男が、かつ
て乗っていたとされる機体。それが、ブラックリーオーなのだ。
「ついでに、俺はロッシェから頼まれたことがあってな。この艦に乗る姫様を
守って欲しいと……守って欲しいか、あのプライドの高い男が、頼み事をする
だなんてな」
 ならば、答えねばならないだろう。騎士として、男として。
「星屑の騎士が一人ブルム・ブロックス。友との誓いを果たすために、いざ参
る!」
 力強い斬撃がブラックリーオーに迫る。サトーは左手に持つビームサーベル
でこれを受け止めるが、敵の一撃はかなりの重さを持っていた。
「何というパワーだ……だが、私とて!」
 出力差があろうと無かろうと、気迫においてサトーはブルムに一歩も引けを
取っていなかった。二機のリーオーが、サーベルのビーム粒子を撒き散らしな
がら斬り合いを続ける。
 イザークとディアッカが死んだ時点で、インフィニットジャスティスの力は
激減した。そして、敵にビルゴに匹敵するモビルスーツを持った戦士たちが現
れた時点で、あるいは彼らの勝敗は決まっていたのかも知れない。
 それでも、または、だからこそ、サトーは剣を振るっていた。負けるわけに
はいかない、退くわけにはいかない。
「死んでも、負けるわけにはいかんのだ!!」



192:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:31:53
「アスラン、あんたはさぞ満足してるだろうな。でも、それは裏切られた俺た
ちからすれば、屈辱なんだ!」
 デスティニーガンダムと、インフィニットジャスティスが激しいぶつかり合
いを繰り広げている。
「当然だな、戦いの始まりは怨恨や復讐心だ。俺が血のバレンタインで母親を
失い、お前がオーブ解放戦線で両親と妹を失ったように……だがな」
 急接近を掛けるジャスティスに対し、デスティニーはビームライフルを連射
することで牽制をかける。だが、その勢いは一向に衰えることを知らない。
「復讐心だけで戦い続ける奴に、この俺は倒せない!」
 蹴り上げられたジャスティスの爪先から、グリフォンビームブレード発生す
る。寸前のところでこれを避けるシンだが、デスティニーはビームライフルを
切断された。
「俺には志があり、大義がある。俺は義によって立っている!」
 ビームサーベルの斬撃を、ビームシールドで弾き返したデスティニーは、そ
のまま後方へと距離をとる。だが、アスランのジャスティスは逃がそうとしな
い。
「ザフトの一兵士としてしか戦うことのできないお前に、わかるわけがない」
「なんだと!?」
 左手にビームブーメランを構え、柄でジャスティスのビームサーベルを受け
止める。長近距離の接近戦においては、アロンダイトではやや不利なのだ。
「お前は兵士だ。だから戦っている。お前がその機体に乗っているのは所詮状
況に過ぎない」
「あんたは違うって言うのか!」
「そうだ、俺は違う。自ら父の遺志を引き継ぐことを決め、そのことに対して
の後悔はしていない! お前に俺のような心の底から湧き上がる衝動はある
か? 戦わねばならない理由があるのか? 復讐心に駆られて組織の歯車とな
って戦うことしかできないお前みたいなクズは、この俺の前から消え失せろ!」
 確かに、志や大義、もっといえば確固たる信念すらシンは持ち合わせてなど
いない。
 それを振りかざして戦い、戦う道を選んだアスランに取って、シンという存
在は邪魔以外の何者でもないのだ。
「アスラン、あんたは身勝手すぎる。あんたが振りかざしているのは単なる独
善だ!」
「独善だと?」
「そうさ、あんたは父親の遺志を継ぐとか、それが大儀だとか言ってるけど、
結局それはあんた一個人の問題だ! あんたは結局、後悔という名の欲望を満
たすために戦ってるんだ」
 砕けたビームブーメランを放り捨て、ジャスティスとの間に距離を作るデス
ティニー。
「あんたは志がどうだとか、大儀がどうしたとかいってるけど、そんな信念、
それを持ってる人にしか価値がないものじゃないか! そんなごく一部の人間
しか共感できないようなものを理由に戦うこと自体が、間違ってるんだよ!」
 片手を突き出し、ビーム砲を放つデスティニー。ジャスティスはムー部シー
ルドでこれを弾き返すが、シンの叫びは尚も続く。
「前大戦でザフトを裏切ったとき、アスラン、あんたは後悔したんだ。結果が
どうであれ、あんたは父親を裏切り、見捨て、助けることが出来なかった。そ
れを後悔するからこそ、その失敗を補いたいからこそ、あんたは覇道に足を踏
み込んだんだ!」

193:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:32:50
 決めつけだと叫び返すことが、アスランには出来なかった。シンの言ってい
ることを否定するだけのものが、今のアスランにはなかった。
「古い考えを捨てられない地球はコーディネイターを差別し、認めてくれよう
としない。プラントだってナチュラルを見下して軽蔑し続けている。だけど、
それは少しずつだけど変わってきているはずなんだ」
 この戦争のなかで、シンは多くの人と出会い、そして別れた。それはナチュ
ラルであり、コーディネイターであり、一ついえることは彼らが皆同じ人間で
あるということだ。
「世界は変わる。変わっていなくちゃ行けない。そんな時に、過去のことでウ
ジウジと悩んでるような奴の、どうしようもない自己満足に付き合ってる暇な
んてないんだよ! そんなことやりたいなら、どっか遠くの、地球圏とは全然
違う場所でやれってんだ!」
 乱暴な口調であるが、アスランの自尊心を傷つけるには十分だった。アスラ
ンはコクピットで怒りに身体を震わせていた。
「俺の大儀を、父の遺志を、単なる自己満足だというのか……お前は!」
 アスランは初めて、明確な殺意をシンに向けた。そして、シンもそれを感じ
取ってアロンダイトの切っ先をジャスティスへと向ける。
「アスラン、俺はあんたを倒す。あんたを倒して、未来を掴み取ってみせる!」

 レジェンドのドラグーンが、一基、また一基と撃ち落とされていく。ビーム
ライフルに、ガンバレルに、敵の反応速度にレジェンドの攻撃速度が追いつい
ていないのだ。
「馬鹿な、こんなはずは!」
 叫ぶレイであるが、現状としてレジェンドのドラグーンは敵を翻弄するどこ
ろか、逆にこちらが圧倒されている。大型のドラグーンが一基、ビームスパイ
クを形成し、貫通弾のように突撃をする。性格に敵のコクピットを狙う一撃を、
ガンバレルが展開したフィールドエッジのビーム刃が阻んだ。
「遅いな!」
 ガンバレルごと回転を始めたフィールドエッジが、ビーム刃でドラグーンを
弾き飛ばした。レイが思わず目を見張る、神技ともいえる芸当であった。
「直線的すぎる攻撃は読まれやすいし、対処もしやすい。憶えておくことだな」
 どうやら空間認識能力ではムウの方に一日の長があるらしい。ムウとしては、
それぐらいでも有利でなければ、そもそも勝負にすらなっていなかったと思う。
レジェンドの性能もさることながら、レイの鬼神の如き攻撃はムウを追い込む
に十分だった。
「人の執念か……それとも、怨念かな」
 レイはどうか知らないが、クルーゼなら死して尚、怨念による呪いぐらいは
送ってきそうな気がする。随分と嫌われたものだが、仕方ないともいえる。
「俺には多くの兄弟がいた」
「何?」
 その言葉に、ムウが顔を顰める。
「出来るという理由で俺達は作られた。お前の父親のご機嫌取りに、不遜な野
望と野心を抱いた男のために!」

194:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:33:50
 しかし、彼らが作りし夢の結晶、キラ・ヤマトはもうこの世にはいない。レ
イは、彼を作った人間たちの理想や夢など知らない。作られた自分は人間か? 
父も母もなく、勝手な都合で生み出されたこの命は欠陥を抱えている。作られ、
生み出された欠陥品の自分は、人間ですらない。

―今度は完璧だ。我らの科学が勝利したのだ!
―私たちの正しさが証明されたんだ。
―これならフラガ氏だって納得してくれる。研究が続けられる。
―メンデルは、科学技術発展の聖地として歴史に残るぞ!

 幼き日に残る僅かな記憶。身勝手な大人たちの、自己の野心と欲望に基づい
た会話。
 俺は誰だ。ここはどこだ。周りで喋る奴らは何なんだ。
俺は……何のために生まれたんだ!

―史上最強のコーディネイターを作る、私たちの夢はすぐそこだ!

 俺は人間によって作られた。だが、果たしてそれは人間といえるのか。レイ
と、そして彼の親であり、兄であり、分身であったラウ・ル・クルーゼは常に
その悩みを抱えていた。
「ナチュラルでもコーディネイターでもない、それが俺達だ。誰が作ってくれ
と頼んだ? 誰が生み出してくれと願った! 俺は、俺を生んだ全てを、ラウ
を始めとした多くの俺自身を作りだし、犠牲にしてきた者を恨み続ける! こ
れは俺の、俺達の復讐だ!」
 そして、その根源たるフラガ一族、こいつらだけは……
「お前たち一族は、俺とともにここで滅びるべきなんだ!」
「それが君の出した答えというわけか!」
 ビームライフルの閃光が、ガンバレルの一基を撃ち落とした。ムウもビーム
ライフルを斉射するが、ビームシールドの前に阻まれた。
「その為にも、俺はお前に負けられない!」
「ならば死ぬ気で掛かってこい!」
 フィールドエッジがレジェンドの片足を斬り飛ばすが、ドラグーンのビーム
がガンバレルを破壊する。
「俺はここで死んでもいい。俺が死んでも、その後の未来を守ってくれる仲間
が、頼るべき友が俺にはいる!」
 シンやルナマリア、彼らなら、もう自分のような子供が誕生しない未来を作
ってくれるに違いない。
 残る二機のガンバレルが二連装ビーム砲を放ちながらドラグーンを迎撃して
いく。ムウの技量は、レイのそれを確実に上回っている。
「確かに、俺達一族は愚かだった。親父の犯した罪を否定するつもりはないし、
親父の犯したことだとして逃げるつもりも、俺にはない」
 ムウは、ビームライフルを連射しながらドラグーンを牽制し、レジェンドに
迫る。
「俺はあの時、前大戦で死んでからずっと逃げてきた。顔を隠し、名を変え、
それでも生に縋り付いてきた」
 醜く無様に、生き抜いてきた。

195:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:34:44
「生き残った者の責任が俺にはあった。その為に、俺は立ちあがった。けど、
俺の命はもう……」
 意味なんて、ない。
 ウィンダムのビームサーベルが、ビームジャベリンを持ったレジェンドの左
腕を切断した。
「くそっ!」
 ムウが二撃目を放つのと、レイが機体からドラグーンの一基を引きちぎるの
はほぼ同時だった。斬り込まれたウィンダムの斬撃は、浅かった。レジェンド
が突き出したドラグーンのビームスパイクが、ウィンダムの胸部に深々と突き
刺さっていた。
「な、に―!?」
 驚いたのは、レイの方であった。彼は自分の反撃が間に合わないと思った。
彼は自分が敵に、ムウに敗北したと感じていたのだ。
「今の俺が、君に勝てるわけがないんだ。俺には、今の俺には、守るものがな
いんだから」
 大切にしてきたものは、全て失われてしまった。アウルやスティング、それ
にステラといった子供たち。彼を慕い、彼も愛した人々は、彼の手の届かない
場所に行ってしまった。
「ステラ……そこに居るのか?」
 ムウ・ラ・フラガか、それともネオ・ロアノークか、誰の者とも知れぬ声が
ウィンダムのコクピットに響いた。レイは、何も言うことが出来ない。ただ、
目の前の光景を唖然として見つめている。
 ウィンダムが爆発していく、レイの一撃は、致命傷だった。
 果たして死んだのは、レイが倒したのは誰だったのか。世界統一国家軍総司
令官ムウ・ラ・フラガ、かつてエンデミュオンの鷹と呼ばれた英雄なのか? 
それとも、ネオ・ロアノーク大佐、ファントムペインの士官として多くの兵士
に慕われていた軍人だったのか……
 どちらでも、構わなかった。
「ラウ……俺は、俺は」
 レイは泣いていた。ラウ・ル・クルーゼが果たせなかったことを、レイは果
たしたのだ。彼の代わりに、彼の想いを受け継いで、レイは戦い、そして勝っ
た。
「これで俺も、自分を捨てられる。ラウ、ギル……さよならだ」


 ムウの機体がロストしたことは、すぐに世界統一国家軍旗艦ガーティー・ル
ーの知るところとなった。報告を受けたイアン・リーは、動揺も狼狽もしなか
った。
「インフィニットジャスティスに通信を送れ。世界統一国家軍はここに降伏し、
敗北を宣言する。これ以上の戦闘は無用である、と」
「閣下!」
「我々は負けたのだ。あるいは、始めからこうなるために戦ったのかも知れな
い」
 イアンは立ちあがると、スクリーンに映る漆黒の宇宙に向かって敬礼をした。
「フラガ司令官、いや、ネオ・ロアノーク大佐……ご立派でしたぞ」
 訃報はすぐに全艦隊、全軍に向けて発表された。ムウの戦死、それは統一国
家軍、インフィニットジャスティス、ザフト軍全てに衝撃を与えた。

196:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:35:46
 しかし、それですぐに戦闘が終結したかと言えばそうではない。何せ、ビル
ゴは今だ可動を続けていたし、アスランも起動停止を命じなかった。その為、
統一国家軍は訃報に悲しむ間もなく、個々の戦闘を継続せざるを得なかったの
だ。
「統一国家軍の司令官は死んだか……」
 戦場にあって、ロッシェはアクエリアスのコクピットで呟いた。側にいたは
ずのアスクレプオスの姿はなく、彼もどこかで戦っているのだろう。二人は強
かったが、それでもビルゴの勢いを止めるには至らなかった。
 止めるには、もうアレを使うしかないのだろう。
「プリベンター巡洋艦、こちらロッシェ・ナトゥーノだ。ミーア・キャンベル
を出してくれ」
 ロッシェは、ミーアに回線を繋いだ。彼女に話さなければならないことがあ
った。
『ロッシェ、どうしたの……? 戦闘中でしょ?』
 彼の身を案じ、心配する声が聞こえてくる。ロッシェはその声に微笑むと、
言葉を続けた。
「ミーア、いよいよ君の出番だ」
『あたしの?』
「そうだ。この戦争を終わらせるのは、君だ」
『…………』
 何を言っているのか判らない、そんな沈黙が通信機越しに伝わってくる。ロ
ッシェはアクエリアスを操作し、その翼を広げ始める。
「歌ってくれ。君の歌を、この戦場に、世界に、響かせるんだ」
『ロッシェ……』
「君の歌を、聴かせてくれないか?」
 ミーアには、ロッシェの意図がわからなかった。自分はラクスではない、彼
女のように歌で人々の心に訴えかけることが出来るとは、とても思えない。
 だけど、今は―
「わかった。あたし、やってみる」
 悩んでいる暇なんてなかった。自分が一度選んだ道なら、後悔せずに突き進
んでいきたい。偽物でも、紛い物でも、あたしは歌いたい、歌ってみたい!
「ロッシェ、あなたのために、世界のためにあたしは歌う!」
 それでいい……とロッシェは笑った。
 アクエリアスには秘密兵器とも言うべきとっておきがある。アスランも誰も
知らないであろうこの兵器、ロッシェはこれをただ使うつもりはなかった。
「戦争を止めるのは、私の役目ではないからな」
 ミーアの歌声が、アクエリアスのコクピットに響き始める。プリベンター巡
洋艦から、全てのチャンネルに向かって送信され始めたのだ。
 戦争を終結させる、運命の歌声が、歌姫の口から紡ぎ出される。
 今、ミーア・キャンベルは、本当の歌姫になろうとしていた。

                                つづく



197:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:36:30
第68話です。
泣いても笑っても後2話です。
たった一人、好悪関係なしに殺すか殺すまいかを、ずっと考えていた
キャラがいたのですが、やっと決めました。
それが誰なのかはまた次回ですが、今回は少し長くなりました。
1話追加するには短く区切りも悪いけど、3話だと少し足りないんじゃ
ないか? 結局悩んだ末、当初の予定通り70話完結としました。
GW中に終わらせたかったのですが、GW進行に勝てず……
本当に申し訳なかったです。
話的には69話がピークですが、本編70話、すぐに完結する予定なので、
お付き合いよろしくお願いします。

198:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 21:54:04
GJ!
ああ…ムウ…
シンもカッコいいぜ!
そしてアクエリアスの能力が発動か。ミーアも本物になるのか。

199:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 21:58:27
GJ!

ここでミーアか。
すげぇ……けど、ガンダムって言うよりは、マクロスっぽい展開だな。


200:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 21:59:48
GJ!
ついにあれを使うのか…
マクロス的展開を期待

201:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 21:59:55 7nTz63Za
GJ

なんか、アスランからグレミー(ry
ここでミーアが(ry

202:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 22:03:23
ミーアがついに立つ!

203:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 22:51:18
GJ
アスランとシンwガトーやコウ、ジュドーやグレミーになって忙しいですね

204:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 23:05:14
GJ
アスランの策が上手だったんだろうが…Gチームしょぼいな、トラース相手に何しに来たんだか
リアルタイム変化のドロシー人形にもフォーメーション勝ちできた奴らが・・・

205:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 05:46:06
GJ
本当に前哨戦で出張って戦死しちゃったイザディアが生きてたら……
……それはそれで、ガンダムチームとやりあってただけかw

独善ではあるけど凸ではない、そんなアスランもいいなぁ
そして特にヴィジョンもなく未来を勝ち取ってどうすんだ、シンw 少しは考えろw
ムウ逝ったか……え?死んだ?戦後処理誰がやんの?

206:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 06:52:09
ユウナがいるだろ。

207:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 09:23:53
マクロス展開かw

83のコウとガトーの台詞の応酬からZZのジュドーとグレミーのやりとりにつないだのはニヤリとさせられたなぁ。

208:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 10:00:00
>ミンメイアタック
歌っても何の効果もなく戦闘継続って展開なら指示する
異星文明ならまだしも人間同士の戦争が歌で止まるわけがない

209:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 10:09:54
え、ビルゴやトーラスを稼働不能にするんじゃないの?
イメージ的にはミンメイアタックというよりむしろ
『ホゲ~~~~~~』とか『ボエ~~~~~~~』でわ…ん、誰か来たかn(ツーーーーー

210:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 10:28:09
いや、連合は降伏して、攻撃してきているのはコーディネーターだから、止まる可能性が非常に高いぞ。
嫌な話だが、ラクスの歌にはコーディネーターの精神に干渉する作用があるという公式設定があるからな。

ラクスの歌を反復的に聞いていたコーディネーターの脳には既に条件反射が学習されていて、
非常に近い声質を持つミーアの声を聞いても、鎮静作用を持つ脳内物質を分泌する可能性が高い。

また、種死世界のコーディネーターにとって、ラクスは非常なカリスマである事を忘れてもいけない。
ただの歌手が歌ったって、戦争はとまらんだろうさ。
だが、復活したキリストが戦争停止を叫んだら、止めるキリスト教徒は沢山いると思うぜ。

ミーアは偽者だが、それを表明するまでの間は広い範囲で戦争が停止するだろうさ。

211:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 11:19:39
そんな展開は死ねばいいと思う

212:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 11:42:25
自分の趣味の押し付けは良くないぜ。
そうじゃないなら、もっと言い方って奴があるはずだ。
本当に嫌なら、何も言わずにここを出て行けば良いだけの話だしな。


まあ、IJの主戦力はビルゴ、主構成員はコーディネーターだから、
普通に考えればアレが止まると同時にラクスの歌が聞こえてくれば、戦意を喪失する奴が多いだろうな。

213:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 11:45:38
嫌なのが沸いて来る悪寒・・・
〆なんだからやめてよね

214:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 12:33:38
色々言うのは、全部終わってからでも遅くないさw
なにしろあと2話だからな

215:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 18:43:22
種関係で『公式設定』ほど二階窓から捨ててしまえなゴミもないわけだが。
いくつかのSSや、あるいはTVもかもだが確かにラクスの歌声に比喩でなく
物理的に洗脳音波作用があったり、あるいは実はチャーム能力付きミュータント
だったりといったパターンもあるにはあるが、少なくとも本作じゃ違うでしょ…

216:通常の名無しさんの3倍
08/05/13 00:32:21
マクロスwww
でも燃えるなぁ。

217:通常の名無しさんの3倍
08/05/15 00:28:58
保守

218:通常の名無しさんの3倍
08/05/16 00:23:47
保守っ!悪いな、一回は一回だ。

219:通常の名無しさんの3倍
08/05/17 23:39:13
保守

220:通常の名無しさんの3倍
08/05/18 16:45:06
保守るぜ~俺に保守させるとみ~んな埋めちまうぞ~

221:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 21:52:42
投下したいんですが、69話は通常の倍以上の文量があります。
長文投下するのと、素直に1話増やして分割するのどっちがいいですかね?

222:通常の名無しさんの3倍
08/05/18 21:57:35
長文でOK

223:通常の名無しさんの3倍
08/05/18 22:34:16
長文カモンカモ~ン!

224:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:18:30
では、長ったらしいですが投下します。

225:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:19:33
 周囲に巨大な岩塊が幾つも浮いている。巨大といっても、それはあくまでモ
ビルスーツや艦艇の大きさと比較してであり、広大にして膨大なる宇宙におい
て、それらは所詮小石程度の大きさでしかない。
 地球が肉眼でハッキリと見える宙域に漂うそれらの岩塊は、かつてプラント
と呼ばれた一つの残骸。ユニウスセブン、血のバレンタインが起こった地にし
て、テログループによって地球へと墜とされるはずだった墓標。ザフトが砕き、
そのまま放置されていた岩塊群であるが、現在この宙域において激しい戦闘が
繰り広げられている。
 そう、破竹の勢いで進撃を続けるインフィニットジャスティスに対し、世界
統一国家軍の残存兵力は戦線を後退させ、いつの間にかユニウスセブンの跡地
とも言うべき場所が主戦場へと変わっていたのだ。前大戦から考えれば、ここ
はまさに始まりの地。全ての因縁が、憎悪が、対立がぶつかり合って、今日ま
で続いた戦い。それは、この場所から生まれたと言っても過言ではないはずだ。

 その主戦場において、二機のモビルスーツが激しく、そして雄々しい姿を見
せつけながら一騎打ちを繰り広げている。
「世界統一国家軍は、地球はあんたに対して敗北を認め、降伏した! それで
もあんたは地球を壊すって言うのか!」
 大振りの斬撃が繰り出され、必殺の威力を持った一撃がジャスティスに迫る。
ジャスティスはビームシールドを展開すると、相手の攻撃を受け流すように斬
撃の軌道を逸らす。
「シン、地球育ちのお前にはわからないんだ。地球に住むナチュラルなんて、
この宇宙の害虫でしかないということが」
 ビームライフルを突きつけるジャスティスだが、デスティニーはバルカン砲
を連射し、ライフルを持つ右腕を衝撃で弾く。
「アスラン―!」
 すかさずジャスティスの蹴りが飛び、爪先のビームブレイドがデスティニー
を掠める。シンは歯を食いしばると、再び構えるジャスティスのビームライフ
ルを機体の左手で掴んだ。
「俺はあんたほど人類に失望してなければ、絶望もしちゃいない! 人は、や
り直せるはずだ!」
 ビーム砲がライフルを破壊し、アスランは舌打ちしながら残骸を投げ捨てる。
「無理だな。その前にナチュラルとコーディネイターは、互いに互いを滅ぼす
さ。人類の歴史は戦いの歴史だ! 敵がいる限り、戦いはなくならないんだ
よ!」
 前大戦時、アスランは戦いを、戦争を止めるために、世界を平和にするため
に必死で戦った。しかし、彼が掴み取った平和は、一年と少しで脆くも崩れ去
った。
「失敗しても、転んでも、それでも起ち上がって前に進む。それが人だ!」
 シンの叫びが、アスランに響く。だが、彼にとってそれはビジョン無きロマ
ンチズム以外の何物でもない。
「だったら、俺を倒してそれを証明してみろ! シン・アスカ!」


         第69話「運命の歌姫」



226:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:21:10
 別の場所においても、モビルスーツ同士の激しく、そして苛烈な戦闘が行わ
れていた。
「仮初めの和平など、所詮は虚構に過ぎなかった。少しの刺激を与えるだけで、
この世界はまた戦争を行った。何故だと思う!」
 サトーは叫びながら、機体のビームサーベルを振り上げてレオンに斬りかか
った。ブルムもまたビームサーベルを引き抜き、これに対応する。
「軍人が戦争の意味を問うとは、ナンセンスだな!」
 レオンのビームサーベルが、ブラックリーオーのビームサーベルと激しくぶ
つかり合う。出力は互角、だが、パワーならばレオンに分がある。
「貴様が軍服をまとっていたのは、国を守るという誇りがあったからだろう
に!」
「その誇りをくれたのがプラントなら、奪ったのもプラントなのだ! 妻と娘
を奪った血のバレンタイン……あんなことを行った地球と、クライン派は手を
取り合った!」
 技量でいえば、驚くべきことにブルムとサトーのそれは拮抗していた。いく
ら歴戦の戦士とはいえ、異世界の機体をここまで操るには相当の努力が必要だ
ったろう。イザークやディアッカのような天才ならばともかく、サトーは単な
る武人に過ぎない。
「そんなプラントやクラインのために戦う者たちに、私は負けん!」
「守るさ。守るために戦う、それが騎士だ!」
 マシンキャノンが火を吹き、ブラックリーオーの機体が衝撃に揺れる。サト
ーは距離を取ると、ドーバーガンを構える。
 だが、ブルムの反応は砲撃よりも早かった。
「遅いなぁっ!」
 機体を加速させ、敵機に急接近したレオンは、その太い両腕でドーバーガン
の砲身を掴み取った。
「ぬぅんっ!!」
「なっ!」
 メキメキと音を立て、ドーバーガンの砲身が潰されていく。決して柔らかい
わけではない、チタニュウム合金が折れる。
「なんという揚力……!」
「小細工はそろそろ抜きにしようではないか」
「どういう意味だ?」
「男と男、戦士と騎士、互いに意地があるのなら、体と体でぶつかり合って、
そいつを押し通せばいいのだ!」
 潰して引き千切ったドーバーガンの砲身を捨て去ると、ブルムは距離を取っ
てビームサーベルを構えた。小技も小細工も必要ない、一対一の真っ向勝負。
「貴様も戦士ならば、一騎打ちの真髄を見せつけてみろ!」
 その言葉に、サトーの体は痺れを覚えた。
「……真っ向勝負か。良いだろう、叩きのめしてくれる!」
 こちらもビームサーベルを引き抜き、突きの構えを取る。
 静寂が訪れた。深遠なる宇宙、まるでこの二機の時間だけが止まってしまっ
たかのような、刹那の時。

 先に動いたのは、サトーのブラックリーオー。



227:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:22:20
 ブルムは、僅か一瞬、常人では気づかないであろう一瞬、遅れた。
「とったぁっ!」
 レオンがビームサーベルを振り上げたまさにその時、ブラックリーオーのビ
ームサーベルがレオンの右胸部を貫いた。そして、そのまま機体を斬り裂き、
右肩から右腕を斬り飛ばした。
「勝った、勝ったぞ!」
 サトーは歓喜の声を上げた。異世界の騎士に、自分よりも強い男に、自分は
今勝利した。まだ終わってはいない、我々は、インフィニットジャスティスは
戦える!
「いや……終わりだ!」
 衝撃がブラックリーオーの機体を打ち砕いた。
 サトーは何が起きたのか理解できなかった。彼に分ったのは、一撃でコクピ
ットが破壊され、自分が残骸に押しつぶされようとしていることだった。
「ガ…ハッ……」
 血塊が、口から吐き出された。ノーマルスーツごと、コクピットとともに身
体を砕かれた。
「拳、だと」
 そう、右胸部を貫かれ、右肩から右腕を斬り飛ばされた瞬間、ブルムはレオ
ンの左拳を、ブラックリーオーのコクピットに叩き込んだのだ。勢いある拳の
一撃が、たった一発でコクピットを砕いた。
 肉を切らせて、骨を断つ。以前、ロッシェがとったのと同一の戦法を、ブル
ムも使ったのだ。そして、その効果は絶大であった。
「これも、国を裏切り、世界に反旗を翻した者への……報いか」
 消えうせる意識の中、サトーの頭に思い浮かんだのは愛していた妻や娘のこ
とではなく、彼が担ぎ上げ、彼の期待に応えて戦ってくれた少年の顔だった。
「アスラン、ザラ。後は、あなたに任せます。どうか、パトリック・ザラの、
われらの遺志を……」
 ブラックリーオーの機体が動作を停止した。コクピットを破壊され、もはや
動くことのなくなった機体を、レオンに乗るブルムは静かに見つめている。
「相手が悪かったな。俺は、二度死ぬつもりはなかったんでな」
 その言葉を聞く者も、答える者もこの場にはもういなかった。


 デスティニーのビーム砲がジャスティスを襲う。アスランはこれをビームシ
ールドで受けきった。
「大した防御力だよ、まったく」
 始めは満足に戦えるかとも思っていたのだが、今や自分が確実にシンとデス
ティニーを押しているという自覚がアスランにはあった。デスティニーの力は
確かに強い。性能も、そしてパイロットであるシンの実力も自分に匹敵するほ
どにまで成長している。
 だが……
「相性が悪いみたいだな、俺とお前では!」
 アスランのジャスティスが徹底的なまでに近接格闘戦に拘って強化されたの
に対し、シンのデスティニーはどう見ても拠点攻略用の局地戦兵器だ。戦艦や、
大型モビルスーツなどには絶大な効果を発揮するだろうが、単体の一騎打ちに
は武装の大きさからして不利なのだ。無論、シンの実力を持ってすれば並のモ
ビルスーツやパイロットなど一瞬で蹴散らせるが、今彼と戦っているのは当代
きっての英雄アスラン・ザラだ。容易に勝てる相手ではない。

228:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:23:59
「それでも、俺はあんたを……アスラン・ザラを倒さなくちゃ、超えなくちゃ
行けないんだ!」
 自分のような優秀でもなく、他者より優れているところがあるわけでもない
コーディネイターが、万が一にでも英雄を倒すことが出来れば……あるいは人
は、それに希望を見出してくれるのではないか。
「愚かな、そんなものは夢だ。愚か者が見る、虚構に過ぎない!」
 あろうことかビームシールドを武器に、デスティニーへと攻撃を仕掛けるジ
ャスティス。
「夢を見て何が悪い! 人が一歩前を踏み出すには勇気がいるんだ!」
 そう、俺は……俺はそんな人たちの……
「勇気となって、その人たちの背中を押してやりたい!」
 ビームシールドで強引にアロンダイトを押し戻されながらも、シンは歯を食
いしばってその場で堪える。
「ならば、今すぐ全人類に英知を希望を与えてみたらどうだ! お前は出来も
しないことを、きれい事を並べてほざいているだけだ」
「あんたを倒してから、そうさせてもらうさ!」
 減らず口を応酬しながら、二機が激突を繰り返している。理想を捨て、彼な
りの現実を見据えて覇道を突き進む男と、理想を捨てず、勇気を振り絞って正
道を歩く男の、真剣勝負。
 彼らの周囲には幾つか有人機もいたのだが、戦いに割っては入れるような状
況ではなかった。ただ、メインカメラに激しさを増す光景を焼き付け、周囲に
向かって送り続けている。何分、何時間経ったのか、時間の感覚すら彼らには
なかった。
 互角と断言しても差し支えのない二人の死闘は、そう簡単に終わるものでは
ないかに見えた。だが、彼らの戦いに対し、ルナマリア・ホークが介入したこ
とで事態は一転した。
「シン、アスラン!」
 ルナマリアは別に、二人の戦いに横やりを入れるつもりはなかった。単純に、
二人の所在を確かめるべく接近しただけなのだろう。しかし、シンは彼女が援
護をしに来たと勘違いをしてしまい、こう叫んだ。
「ルナ、来るな!」
 その叫びは、結果としてルナマリアが彼らに近づきつつあるといことをアス
ランにも教えることになってしまった。緊迫した状況下で、アスランはルナマ
リアの存在に大きく舌打ちをした。
「ルナマリアか……女如きが男同士の戦いに割ってはいるな!」
 とんでもないことを叫びながら、アスランは機体を反転してルナマリアの乗
るインパルスへと迫った。
「よせ! アスラン!」
 シンの制止を振り切り、ジャスティスはビームサーベルを構えてインパルス
へと飛び込む。インパルスはビームライフルを斉射してこれを迎撃するが、そ
の程度ではジャスティスを止めることは出来なかった。
「相変わらず射撃が下手だな、君はっ」
 ビームサーベルとビームブレイドの連撃が、瞬時にインパルスを斬り裂いた。
ボディや脚部を斬り裂かれ、コクピットたるコアスプレンダーが剥き出しにな
る。


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