種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-15at SHAR
種・種死の世界にWキャラがやってきたら MISSION-15 - 暇つぶし2ch166:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 10:27:54
過疎ってんなぁ もう役目は果たし終えてんだからこのまま落としちゃって良いんじゃね

167:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 10:30:51
後3話

168:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 10:42:41
GW進行でおそらく今地獄
ゆっくり待とうや

169:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 10:49:49
>>166
つ【硫化水素】

170:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 18:38:13
正直、総合スレ合流ってのもアリかも知れん。
殆ど何処のSSスレもこんな感じだし

171:通常の名無しさんの3倍
08/05/05 18:55:04
少なくともあと3話あるのは確定事項で、
また残りレス数も容量もじゅうぶん残ってる。
何を急いでる?

172:通常の名無しさんの3倍
08/05/06 22:41:47
無理に合流する事は無いでしょ。
スレがあるんだからノンビリ逝きましょう。

173:通常の名無しさんの3倍
08/05/08 00:20:43
ゆっくり待ちましょう
会社とか学校とかの年度変わったしリアル忙しいんでしょから

適度にレスして落とさないようにするだけですね

174:通常の名無しさんの3倍
08/05/08 00:29:27
ま、そだな。ただ、埋め荒らしがSSスレを狙い始めているので正直ちょっとビビッてるorz

175:通常の名無しさんの3倍
08/05/08 22:03:46
間に合えば明日。
煮詰まってるというか、詰め込みすぎで良いものにならない。

176:通常の名無しさんの3倍
08/05/08 22:19:21
あらかじめ区切っていた話数に固執なさらんでも良いと思うんですぜ。
再構成して話数が増える事で内容がいくらかスッキリして、また私らも
それだけ読める期間が延びるんならいい事ずくめってもんでやんしょ。

177:通常の名無しさんの3倍
08/05/09 09:39:12
そうですぜ。

178:通常の名無しさんの3倍
08/05/10 16:32:03
出来たけど土曜なので明日投下。

179:通常の名無しさんの3倍
08/05/10 22:01:55
なんでやw

180:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 20:26:08
もう日曜も遅いが投下はまだか

181:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 21:03:02
事故でもあったか?

182:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:22:31
投下します。
長いので規制入ると思います。

183:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:23:24
「地球はすぐそこだ! 後少し、後少しで我々の悲願は達成される!」
 ジャスティスのビームサーベルが、ウィンダムの一機を斬り裂いた。従来の
ものを強化されたシュペールラケルタビームサーベルは、相手の装甲を紙切れ
のように斬り裂き、破壊した。
 続けざまに放たれる高エネルギービームライフルが、接近する敵機を尽く撃
ち落とす。
「たかが一機に!」
 果敢にもビームサーベルを構え斬り込んできたダガーLは、鋭い斬撃をジャス
ティスへと放つ。
「遅いなぁっ!」
 しかし、ジャスティスの爪先に発生したグリフォンビームブレイドが、ダガ
ーの斬撃を弾き飛ばすと共にその腕を切り落とした。隠し武器ともいえる攻撃
に敵が動揺していられたのは、僅か数秒。ジャスティスのビームサーベルは、
正確にダガーのコクピットを貫いていた。
 ジャスティスの周囲にある敵機全てが、その光景を前に恐れ戦いている。目
の前にいる機体は大将機、これを討ち取ると言うことは、大将首を手に入れる
と言うことだ。
「なんて、強さだ……」
 パイロットの一人がごくりと生唾を飲む。
 大将首を取るどころではない、迂闊に近づけばこちらの首が斬り飛ばされる。
そう思わせるだけの強さを、ジャスティスは見せつけていた。
 既に戦闘開始から12時間を超える中、遂にインフィニットジャスティス総大
将アスラン・ザラが出撃をしてきた。オーブの参戦、ダイダロス基地の陥落と
いう問題に直面した彼は、自らビルゴ部隊を率いて戦場に躍りでたのだ。ウル
カヌス周辺には余剰兵力など存在しないので、彼が率いているのはウルカヌス
の防衛用に残していた機体である。これを動員することには少なからぬ異論も
あったが、アスランは一蹴した。
「ウルカヌスの防御はスコーピオに固めさせる。あのMAはビルゴ20体分ぐらい
の働きはするさ」
 20体はさすがに過剰評価や誇張であると思うが、実際性能面ではそれぐらい
はあるだろう。ただ、参謀肌の士官に言わせれば戦いとは数であり、その数を
如何に効率よく運用するかだ。機体性能に頼ったような戦略や戦術では、足下
をすくわれる可能性がある。
 とはいったものの、現在の戦闘自体、ビルゴⅡの圧倒的な性能で敵軍との間
にある数の差という劣勢を跳ね飛ばそうとしているのだから、今更このような
ことをいうものおかしいというものだ。第一、アスランの参戦によって押され
始めていた戦局が、再びインフィニットジャスティス側に傾いた。その意味で
は、彼の選択と決断は成功であったろう。
 だが、これは同時にアスランの限界を示していると指摘する後世の戦史家も
いる。
「アスラン・ザラは、正面の物事や戦闘に対処する能力に長けていた。これは
彼が優秀な戦術家である証拠であるが、彼は逆に戦局全体を見通す戦略家とし
ての資質が欠けていた。しかし、それを批難することは出来まい。彼の英雄資
質とは、戦闘における強さ、戦場の勇者としてなのだから」


         第67話「運命対不滅の正義」


184:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:24:24
 ミネルバがゴンドワナ率いるザフト艦隊と合流して、世界統一国家軍とイン
フィニットジャスティスの戦闘が行われている宙域に急ぐ中、頼みの綱であっ
たはずのガンダムチームは、意外な苦戦の中にいた。
 彼らはダイダロス基地の陥落を訊くと共にすぐに出撃の準備を始めたのだが、
そこに敵が奇襲を掛けてきたのだ。アスランは彼らを封じ込めるために、レク
イエムに続く手を打っていたのだ。
「トーラスが十五機に、ヴァイエイトのカスタム機か」
 当初、敵の戦力とその陣容から、ヒイロを始めとした誰もが敵は雑魚である
という認識をしていた。確かにトーラスは機動力に優れ、ヴァイエイトは火力
に富んだモビルドールではあるが、メリクリウスやビルゴのように高い防御力
を有しているわけでもない。普通に戦えば、まず負けるはずのない敵であった。
 そう、普通に戦えば……
「こいつら、何て戦い方しやがる!」
 デュオの叫びは、他の機体に乗るパイロットたちの心情を一言で表したよう
に思える。
 敵の戦術は、なんのことはない、いたってシンプルだ。ヴァイエイト・シュ
イヴァンはダブルビームキャノンを、トーラスはトーラスカノンを構えて、一
斉に砲撃を開始する。如何にガンダムタイプといえども高出力のビーム砲撃を
食らえば無事では済まず、確かに驚異といえる。だが、威力ほどの驚異を与え
るのは、なかなかに難しい。何せガンダムチームは超一流のパイロットであり、
敵機の砲撃に撃ち落とされるようなヘマはまずやらない。
 しかし、それはあくまでガンダムチームに限ってのことである。
「機体で敵の射線軸を塞げ! 突破されるぞ」
 敵機は集中的に、プリベンター巡洋艦に対して砲撃を繰り返してきたのだ。
恐らく、最終的な攻撃目標としてインプットされているのだろう。プリベンタ
ー巡洋艦は速度も武装もそれなりではあるが、それはあくまで艦船としてであ
る。防御力は決して高くはなかったし、モビルスーツと比較した際の機動力は
低いと言い切れるほどのものだ。
「俺達の弱点を完全に見透かしてやがるぜ……敵の総大将は、ホントかわいげ
のない奴だな!」
 ビームサイズでトーラスの一機を斬り裂きながら、デュオが毒づく。
「利口な奴だ。実力で敵わないと悟っているからこそ、別の方向から攻める。
月基地といい巡洋艦といい、大した戦術だ」
 トロワは素直にアスランの戦術を褒めるが、だからといって何時までもこの
状況のままではいられない。敵を撃破するのは簡単だがプリベンター巡洋艦を
防御しつつ、戦い続けるのは容易なことではない。それに、早く戦場に向かわ
なければ行けない状況でもある。
「ここは俺達で何とかする。プリベンター巡洋艦は先行しろ」
 五飛の提案は、ガンダムチームで敵を引き留めるので、その隙に別働隊戦場
へ向というものであった。敵機が立ち塞がる最短ルートを大きく迂回するため
に時間が掛かってしまうが、このままではザフト艦隊よりも到着が遅れてしま
う可能性がある。
「敵機を撃破次第、俺達も最短ルートで戦場に向かう。現状ではこれがベスト
だ」

185:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:25:29
 ヒイロの一言で、作戦は決定された。巡洋艦と共にプリベンター所属の三機、
ガンダムアクスレプオス、ガンダムアクエリアス、カスタムリーオーレオンが
先行する。戦力的には大きく落ち込むが、ここで足止めされているよりはマシ
というものだろう
「状況打開にはそれしかないか……よし、良いだろう」
 プリベンター巡洋艦が進路を変え、戦闘宙域からの離脱を計る。敵機がそれ
を追撃しようとするが、ガンダムチームの猛攻が阻んだ。
 トーラス隊は四方八方に分散し、ガンダムチームを包囲するとトーラスカノ
ンによる砲撃を行った。ガンダム各機はこれを避け続けるが、巧みに狙い撃た
れる砲火は何時しか彼らを一箇所へと集めてしまう。
「まずい……!」
 ヒイロが敵機の意図を察したときには、もう遅かった。ダブルビームキャノ
ンの出力を最大限に上げ、フルチャージを完了させたヴァイエイト・シュイ
ヴァンの砲撃が、ガンダムチームに向かって放たれた。

 その頃、最終決戦が行われている戦場では、世界統一国家軍がそれまでの陣
形と戦術を放棄し、一転して全兵力を密集させた分厚い防御陣形を敷いていた。
インフィニットジャスティスの正面に展開された兵力は世界統一国家軍の全軍、
全力、全兵力であり、彼らは一枚の銅貨もそのポケットに残してはいない。
 総司令官であるムウ・ラ・フラガさえも、今や直属の機動部隊を率いて最前
線にいるのだ。彼の乗る機体は量産機であるウィンダムを、出力面で強化した
カスタム機であるが、基本的には量産機と大差ない。ストライカーパックには
ガンバレルストライカーを使用し、ガンバレルもエグザスの物と強化されてい
るが、ビルゴには通用しなかった。ムウほどの実力者であってもだ。
 ここにきてムウが消耗戦を主体とした戦術を放棄したのにはいくつかの理由
がある。一つは分散させた部隊の戦力比が均等ではなくなったこと。さらに、
アスランの参戦で勢いづいた敵軍の猛撃に各部隊の戦力では対応しきれなくな
ったこと、戦闘の流れが速く、部隊の再編が追いつかなくなったこと、などで
ある。いずれも正当な理由だが、これは彼らが窮地に立たされたことを意味す
る。オーブ艦隊の来援によっていくらか持ち直したとはいえ、既に世界統一国
家軍側の機動兵力は3000機弱まで落ち込んでしまっている。これはアスランが
オーブの参戦という予期せぬ要素を排除し、新たな戦術を持って完璧に対応し
たからであった。
 そのアスランに自らの作戦を打ち破られたムウとしては、正直彼の計算が甘
かったとしか言いようがない。彼に余裕はなく、油断などしてはいなかった。
常識外の力を持つ敵に対し、常識外の16倍という兵力をぶつけた。
「16倍ではまだ足りなかった、というわけか」
 この兵力差すら跳ね返されるというのは、考えても見なかった。16倍という
豊富な兵力を使って敵を疲労、消耗させるムウの作戦は、逆にこちらの限界が
近づくことで崩れ去ろうとしている。敵が動けなくなる前に、こちらが壊滅さ
せられてしまう。
「大軍を少数で破るほど華麗で壮大なことはない。アスランが俺達の勝利すれ
ば、世界は奴の派遣を認めざるを得ないだろう……だが」
 それではいけない。例えアスランにそれだけの才能や才覚があるのだとして
も、覇者によって支配される世界など、あっていいはずがない。
「けど、俺にはもうこの状況を覆すだけの手がない」

186:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:26:34
 ムウ自ら出撃して奮戦しているが、敵の勢いを止めることは未だに出来ない。
それどころか、全体として徐々にではあるが後退している始末だ。地球に到達
されるわけにはいかないというのに、防ぐことも出来ないでいる。
「乱雑な攻撃を止めろ! 隊列を組み直すんだ」
 とりあえず密集して敵に集中砲火を与えていた自軍に対し、ムウは新たな陣
形を組ませた。それはモビルスーツによる三十の横列陣であり、時間差を付け
て敵機に砲撃を行うというものであった。これによって砲撃に間隔に隙が生じ
ず、敵を釘付けに出来るのだ。
「我ながら情けない戦法だが……こちらの目的が敵の消耗である限りは、なん
としても踏みとどまり、時間を稼がなくてはいけないのだ」
 しかし、アスランの戦術はムウのそれを上回った。彼はビルゴのプラネイト
ディファンサーによる壁を作って敵の砲火を阻むと、その隙間から砲戦仕様の
ビルゴで砲撃を開始したのだ。鉄壁が敵の攻撃を弾き返し、砲火が敵の陣列を
撃ち崩す。この極めて有機的な防御と攻撃の連携を前に、世界統一国家軍は一
時潰走寸前に陥った。
「敵に押されるな! 数で圧迫して、押し戻すんだ!」
 ムウの叫びも、今となっては虚しいものだった。その数が、十秒目を瞑るだ
けで激減していくのだ。今でこそアスランは防御を怠らない構えを見せるが、
こちらの攻撃が弱体化したと感じれば、一気に全部隊に攻撃を命じるだろう。
そうすれば、我々は完全に敗北する。
「打つ手、なしか……」
 撤退も、降伏も考えてなどいない。とはいえ、このまま全員が死兵となって
戦うというのは……せめて、撤退許可ぐらいは出すべきであろうか。残る者は
残り、去る者は去るだろう。去る場所があればの話だが。
 アスランは敵の動きが鈍り、潰走寸前であることを見抜いていた。一気に攻
め入り、敵将の首を落とす。彼は完全な勝利まで後一歩の位置まで来ていたの
だ。
「これでいい。これが俺の選んだ道なんだ。俺は覇道を突き進み、今、覇者に
なるんだ」
 ジャスティスのコクピットで、アスランは呟いた。彼自身も多くのモビルス
ーツを撃破し、その強さを敵軍に知らしめていた。
 そんなアスランのコクピットに、ウルカヌスから緊急通信が入った。ウルカ
ヌスが後背から奇襲を受けたというのだ。
「異世界の連中か?」
『違います、ザフトです。ザフト艦隊が総攻撃を駆けてきました!』
 戦闘開始から既に、20時間が過ぎようとしていた。


 宇宙空母ゴンドワナを旗艦としたザフト軍独立艦隊は、月面基地を破壊した
ミネルバと合流後、すぐに最終決戦場へと向かった。強行軍ともいえる部隊は
驚くべき速度で移動し、ウルカヌスをその正面に捕らえたのだ。
「護衛のモビルスーツも全て出払っているようだな。これは好都合だ、全艦砲
撃開始! 撃ち尽くしても構わん、敵が引き返してくる前に敵の根拠地を叩き
つぶせ!」
 ウィラードは全艦に砲撃を命じた。各艦艇の主砲が火を噴き、ウルカヌスへ
と浴びせかけられる。ウルカヌスには一応、スコーピオが護衛として残ってい
たのだが、機動兵器一つで全ての艦砲射撃を防ぐことなど出来ない。

187:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:27:20
「モビルスーツ隊発進! 敵衛星を制圧し、敵軍と切り離せ!」
 ザクやグフが次々に出撃し、ウルカヌスへと迫った。この神速ともいえる用
兵に、さすがのアスランも肝が冷えた。内部制圧が行われ、ビルゴの制御を奪
われればこちらが負ける。それだけは避けねばならない。
「くそ、何機か着いてこい!」
 アスランはジャスティスを旋回させると、数機のビルゴを率いてウルカヌス
へと引き返した。それは素早い反応であったが、間に合うだけの距離ではなか
った。
「こんなところで、負けてたまるかぁっ!」
 夢は、すぐそこなのだ。父の遺志と、仲間の想い、地球はすぐそこだ。負け
るわけには、諦めるわけにはいかないのだ。
 そんなアスランの気持ちが通じたのかは知らないが、ザフト軍のモビルスー
ツはウルカヌスに近づくことが出来なかった。スコーピオが起動し、近づくモ
ビルスーツの排除を始めたのだ。銃剣ビームベイオネットが敵機を撃墜し、巨
体故に体当たりですら艦艇を貫く武器となる。
「おのれ、化け物が!」
 グフがテンペストビームソードで斬りかかる。巨体のスコーピオには回避す
ることの出来ない速度と攻撃、だが、そもそも回避する必要など無かった。ス
コーピオは機体の尾ともいえる長さを持つヒートロッドを伸ばし、グフを貫い
た。
「うがぁっ!?」
 ヒートパワーがコクピットごと機体を瞬壊させる。直撃したところでグフの
攻撃が通じたかはわからないが、スコーピオの攻防一体とした強さにさすがの
ザフト軍もたじろいでいく。
「ミネルバ隊は何をしている!」
 主戦力であるはずのミネルバ隊であるが、機体の整備に時間を取られていた。
デスティニーはすぐに出撃できるのだが、レジェンドとインパルスがダメだっ
た。レジェンドは機動実験も間もない機体を無理に動かしたせいで各部に僅か
な異常を来し、インパルスは先の戦闘でコアスプレンダーが損傷していた。変
形機構などに問題はないのだが、飛行システムが作動しないのだ。
「動かせないわけじゃないんだし、これでいくしかないわよ!」
 整備班の制止を振り切り、ルナマリアは出撃を強行した。レイもまた不休で
整備を手伝い、レジェンドに乗り込んだ。
「二人とも、俺は先に出る!」
 いち早く機体の整備を終えたシンのデスティニーが出撃する。続けて、レジ
ェンド、インパルスの順に出撃していく。インパルスは先の戦闘でブラストシ
ルエットを破損したため、フォースシルエットでの出撃となる。クルーはフル
回転で作業を続け、ミネルバ内部にも最終決戦ムードが漂っている。

 そんな中、これはパイロットやブリッジクルーが知るところではなかったが、
医務室においてメイリン・ホークの意識が回復していた。医療スタッフは気付
いてこそいたが、戦闘中とのこともあってブリッジへの報告をしなかった。
「ここは…………?」
 医務室のベッドで目覚めたメイリンは、そこがミネルバであることにすぐ気
付けなかった。朦朧とした意識の中、姉と会話をした記憶は朧気にあったが、
それは夢想のようにも思える。ふと、隣のベッドに顔を向けると、知らない男
がベッドに腰掛けている。

188:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:28:03
「あなたは?」
「俺はこの艦の捕虜だ」
 スウェン・カル・バヤンはメイリンに一瞬目を向けると、そう答えた。捕虜
といっても彼には大体における行動の自由が許されており、艦内の移動も好き
に出来る。ただ、居場所がないので元々居た医務室にいるのである。
「ここは、ミネルバなんですか……」
「そうだ。お前はこの艦の脱走兵らしいな」
 脱走兵。事実だが、その言葉はメイリンの心に深く突き刺さった。
「お姉ちゃん、ルナマリア・ホークがどこにいるか知りませんか?」
「あの女は出撃した。インフィニットジャスティスと、アスラン・ザラと最後
の戦いをするためにな」
 アスラン・ザラ。その名を聞いて、メイリンが大きく反応を示した。少女が
恋し、少女が愛し、少女を切り捨て、少女が裏切り逃げ出した、それがアスラ
ン・ザラ。
「アスランは、まだ生きてる……」
「ディアッカ・エルスマン、イザーク・ジュールといった奴の片腕ともいえる
存在は相次いで戦死しているが、本人は生きてるようだな」
「あの人たちが、死んだ―!」
 特に会話をしたわけでもなかった。仲が悪かったわけではないが、仲が良か
ったということもない。それどころか最終的には命を狙われた。
 だけど…………
「みんな、みんな死んでいく」
 戦争。アスランは、戦争を行っているのだ。プラントに平和をだとか、世界
に正義を示すとか、そんな言葉は全て建前に過ぎない。敵であろうと仲間であ
ろうと人は死ぬ。
「アスランが自身の敵を全て倒さない限り、奴には死以外の運命は待っていな
い。奴が死なない限り、この戦争は終わらない」
「そんなっ!」
「人は、革命のためには戦わない。革命家と、そいつが示す大義名分があるか
ら戦えるんだ。逆にそれがなければ、戦う意味も、理由もなくす」
 ロッシェなどがアスランさえ倒せば良いと主張しているのは、こうした事実
からである。無論、幾人かはアスランの弔い合戦と称した抵抗を続けるかも知
れないが、彼の存在会ってこそのインフィニットジャスティス。彼が死ねば、
組織は指導者を失って瓦解するだろう。既にイザークやディアッカといった有
力者も戦死している。アスランは孤独だった。あいつ出仲間を失い、自らの手
で友を殺め、それでも勝者になりたくて、戦いを続けている。
「あの人は……馬鹿です。一人で何でも考えて、思い詰めて」
「それが、人というものだ」
 呟くと、スウェンはベッドから腰を上げて立ちあがった。
「どこへ?」
「俺にも出来ることはあるはずだ。戦いに行く」
 命の対価、命の貸しがこの艦にはある。一度や二度、何かしたぐらいでは返
せないだろう。それに、今のスウェンは不思議とコーディネイターへの嫌悪感
や不快感がない。ミネルバという艦と、クルーやパイロットたちが彼の考えを
変えたのだ。

189:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:29:00
「最後に何をしたいか、結局の所それを決めるのは他人じゃなくて自分だ。考
え、決断し、動く。お前も自分がどうしたいのか、考えておくことだ」
 お前に、未来があればの話だが。
 スウェンはそう言うと医務室を出て行った。後には、メイリンだけが残され
る。
「私の未来……」
 そんなもの、あるのだろうか? 自分は裏切り者で、脱走兵だ。一度裏切っ
たのに、ノコノコと戻ってきた最悪な女。最後までアスランの側にいることも
せずに、彼の下を逃げ出した。大体、この戦闘や戦争が一段落すれば自分に待
っているのは銃殺刑だろう。軍が、裏切り者の自分に恩情を掛ける理由など有
りはしないのだから。
「アスラン…………私は」
 メイリンは痛む身体を堪えながら、無理矢理起きあがった。身体は動く。彼
女にはまだしなければ行けないことが、残っていた。


 ザフト艦隊に遅れること三十分弱、ロッシェらを乗せたプリベンター巡洋艦
がウルカヌスと離れた、どちらかといえば統一国家軍に近い位置に現れた。
「まだ統一国家軍側は負けていないようだな」
 安堵のため息をオデルが付いた。見た感じでは潰走寸前であったが、いくら
でも持ち直させることは出来る。
「アスラン・ザラの機影を確認できるか?」
 ロッシェが尋ねるが、主戦場においてジャスティスの機体を確認することは
出来なかった。出撃自体はしているようだが、ウルカヌスへと後退しているの
か、それとも……
「出撃しよう。今なら、まだインフィニットジャスティスを食い止めることが
出来るかも知れない」
 オデルの言葉に、ロッシェとブルムも頷いた。敵のビルゴⅡは僅かほどにも
減少していないのだが、彼らにしてみればこの世界のモビルスーツでよくここ
まで持ちこたえられたと褒めてやりたいぐらいだった。
 失礼極まりない話をすれば、どうしたって勝てるわけはないのだから、攻め
て生き残っていて欲しいというのが彼らの本音だったのである。
 そんな彼らの襲来を、アスランは早い段階で察知していた。しかし、一度主
戦場から引き返してしまった彼にこれを阻むことは出来ず、彼はサトーに迎撃
を命じた。
「俺もザフト艦隊を壊滅させたらすぐ戻る! それまで持ちこたえろ!」
 アスランがウルカヌスへと戻ったことで、ザフト艦隊は奇襲における優勢を
完全に失いつつあった。たった数機のビルゴⅡを率いてきたに過ぎないアスラ
ンだが、スコーピオ共々凄まじい性能差を見せつけている。
「誰にも俺を止めることは出来ない。地球だろうとザフトだろうと、誰にもだ」
 突き崩されるザフト艦隊を見ながら、アスランは不敵な笑みを浮かべる。元
々数が少ないザフト艦隊など、すぐに壊滅できるだろう。そうすればもう後背
の心配をする必要はなく、スコーピオも前線に送り込める。勝利は、すぐそこ
にある。
「―ッ! 砲撃!?」
 ビーム砲の閃光がジャスティスの掠めた。ギリギリのところで回避したが、
直撃していれば一溜まりもなかっただろう。

190:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:29:43
「あれは……」
 赤い翼を広げ、ビーム砲を構えながら佇むモビルスーツ。その姿に、アスラ
ンは見覚えがあった。
「シン・アスカか……チッ、どこまでしつこい奴だなお前は!」
 ビーム砲を収納し、ビームライフルを構えるデスティニー。コクピットで、
シン・アスカが大きく息を吐いた。
「アスラン、あんたを倒すのは俺だ!」

 出撃したアクエリアスとアスクレプオスは、すぐにビルゴ部隊の直中へと攻
撃を掛けた。プラネイトディファンサーを装備するビルゴⅡは彼らであっても
撃破するのは至難の業であるが、決して倒せないというわけではない。
「ロッシェ、射撃戦では不利だ。接近戦を心がけよう」
 パイソンクローでビルゴを砕きながら、オデルが叫ぶ。
「当たり前だ。生憎、この機体にはビーム兵器はないからな!」
 ヒートロッドでビルゴを貫き、斬り裂いていくアクエリアス。
 敵か味方かもわからない二機の出現に、統一国家軍は困惑したが、何せ相手
はビルゴのみを攻撃している。少なくとも、敵ではないはずだ。ムウはそう判
断すると、すぐにその場に向かおうと機体を動かすが、それを無数のビームが
遮った。
「なにっ!?」
 振り返ると、そこに一機のモビルスーツが居た。見たことのない機体だが、
見覚えがある機体。
 額が疼く。言い様のない感覚が、身体を支配していく。
 そう、これは―
「……地中海では、お互いまともに名乗らなかったな。折角だから、名前を聞
かせてくれないか」
 ビームライフルを構えながら、ネオは敵機に通信を送った。その通信を受諾
しながら、敵機であるモビルスーツ、レジェンドのパイロットは呟いた。
「レイ・ザ・バレル。それが俺の名だ」
聞いたことのない名前だった。当然だ、自分は知らないことが多すぎる。自分
の知らぬ間に、彼と、彼の一族は一体幾人の人を不幸にしてきたというのか。
「レイか……一つ問う、今の攻撃はザフトの指示か?」
『違う、あくまで俺個人の行いだ』
「個人?」
『お前は俺の兄弟たち、そして……我が分身、ラウ・ル・クルーゼの仇だ』
 ムウは言葉に詰まった。だが、それが何を意味するのかは、彼にもわかった。
「そうか、軍規を無視し、命がけで挑んできたか」
 そうするだけの理由が彼には、レイ・ザ・バレルという存在にはあるのだろ
う。そして、ムウにはそれを受けなければならない理由があった。
「俺の名はムウ・ラ・フラガ。フラガ家最後の生き残りにして、世界統一国家
代表。お前の挑戦、ここに受けるぞ!」
 紫色のウィンダムと、レジェンドが激突した。



191:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:30:39
 アクエリアスとアスクレプオスが戦場に出るのと入れ替わるように、サトー
の乗るブラックリーオーがプリベンター巡洋艦を沈めるために単機で突っ込ん
できた。インフィニットジャスティスはことに敵の司令塔、つまり頭を叩くこ
とに重点を置いている。これは少数戦力しか持たない彼らにとって当然の選択
であり、サトーもそれに習ったのだ。
「奴らの母艦を撃ち落とし、帰る家を無くしてくれる!」
 ドーバーガンを構え、巡洋艦へと標準を合わせるブラックリーオー。ビーム
タイプではないが、巡洋艦程度一撃で沈められる威力は持っているはずだ。
「これで!」
 ブラックリーオーからドーバーガンが発射された。砲弾は一直線にプリベン
ター巡洋艦へと飛び、これを捕らえたかに見えた。
 が、寸前のところでビームの閃光がこれを阻み、ブラックリーオーの攻撃を
防いだ。
「護衛のモビルスーツか!」
 ブラックリーオーからみて天頂に、一機のモビルスーツが佇んでいる。カス
タムリーオーレオン、ブルム・ブロックスの乗る機体であった。
「随分と懐かしい機体に乗ってるじゃないか……どうだい、丁度相手が居なく
て暇してたんだ。俺と勝負といかないか?」
 ハイパーランチャーを捨て、サーベルを抜き放つレオン。ブラックリーオー
がドーバーガンの標準を合わせる。
「そこをどけ!」
 放たれた砲弾を斬り裂き、レオンがブラックリーオーに迫る。サトーは舌打
ちしながら機体を動かし、敵機の斬撃を避けた。
「その機体、そいつだけは見逃すわけにはいかない。俺にはちょっとした因縁
があるのだ」
 古傷が痛む。機体は違うが、かつて彼に絶望的な『死』を与えた男が、かつ
て乗っていたとされる機体。それが、ブラックリーオーなのだ。
「ついでに、俺はロッシェから頼まれたことがあってな。この艦に乗る姫様を
守って欲しいと……守って欲しいか、あのプライドの高い男が、頼み事をする
だなんてな」
 ならば、答えねばならないだろう。騎士として、男として。
「星屑の騎士が一人ブルム・ブロックス。友との誓いを果たすために、いざ参
る!」
 力強い斬撃がブラックリーオーに迫る。サトーは左手に持つビームサーベル
でこれを受け止めるが、敵の一撃はかなりの重さを持っていた。
「何というパワーだ……だが、私とて!」
 出力差があろうと無かろうと、気迫においてサトーはブルムに一歩も引けを
取っていなかった。二機のリーオーが、サーベルのビーム粒子を撒き散らしな
がら斬り合いを続ける。
 イザークとディアッカが死んだ時点で、インフィニットジャスティスの力は
激減した。そして、敵にビルゴに匹敵するモビルスーツを持った戦士たちが現
れた時点で、あるいは彼らの勝敗は決まっていたのかも知れない。
 それでも、または、だからこそ、サトーは剣を振るっていた。負けるわけに
はいかない、退くわけにはいかない。
「死んでも、負けるわけにはいかんのだ!!」



192:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:31:53
「アスラン、あんたはさぞ満足してるだろうな。でも、それは裏切られた俺た
ちからすれば、屈辱なんだ!」
 デスティニーガンダムと、インフィニットジャスティスが激しいぶつかり合
いを繰り広げている。
「当然だな、戦いの始まりは怨恨や復讐心だ。俺が血のバレンタインで母親を
失い、お前がオーブ解放戦線で両親と妹を失ったように……だがな」
 急接近を掛けるジャスティスに対し、デスティニーはビームライフルを連射
することで牽制をかける。だが、その勢いは一向に衰えることを知らない。
「復讐心だけで戦い続ける奴に、この俺は倒せない!」
 蹴り上げられたジャスティスの爪先から、グリフォンビームブレード発生す
る。寸前のところでこれを避けるシンだが、デスティニーはビームライフルを
切断された。
「俺には志があり、大義がある。俺は義によって立っている!」
 ビームサーベルの斬撃を、ビームシールドで弾き返したデスティニーは、そ
のまま後方へと距離をとる。だが、アスランのジャスティスは逃がそうとしな
い。
「ザフトの一兵士としてしか戦うことのできないお前に、わかるわけがない」
「なんだと!?」
 左手にビームブーメランを構え、柄でジャスティスのビームサーベルを受け
止める。長近距離の接近戦においては、アロンダイトではやや不利なのだ。
「お前は兵士だ。だから戦っている。お前がその機体に乗っているのは所詮状
況に過ぎない」
「あんたは違うって言うのか!」
「そうだ、俺は違う。自ら父の遺志を引き継ぐことを決め、そのことに対して
の後悔はしていない! お前に俺のような心の底から湧き上がる衝動はある
か? 戦わねばならない理由があるのか? 復讐心に駆られて組織の歯車とな
って戦うことしかできないお前みたいなクズは、この俺の前から消え失せろ!」
 確かに、志や大義、もっといえば確固たる信念すらシンは持ち合わせてなど
いない。
 それを振りかざして戦い、戦う道を選んだアスランに取って、シンという存
在は邪魔以外の何者でもないのだ。
「アスラン、あんたは身勝手すぎる。あんたが振りかざしているのは単なる独
善だ!」
「独善だと?」
「そうさ、あんたは父親の遺志を継ぐとか、それが大儀だとか言ってるけど、
結局それはあんた一個人の問題だ! あんたは結局、後悔という名の欲望を満
たすために戦ってるんだ」
 砕けたビームブーメランを放り捨て、ジャスティスとの間に距離を作るデス
ティニー。
「あんたは志がどうだとか、大儀がどうしたとかいってるけど、そんな信念、
それを持ってる人にしか価値がないものじゃないか! そんなごく一部の人間
しか共感できないようなものを理由に戦うこと自体が、間違ってるんだよ!」
 片手を突き出し、ビーム砲を放つデスティニー。ジャスティスはムー部シー
ルドでこれを弾き返すが、シンの叫びは尚も続く。
「前大戦でザフトを裏切ったとき、アスラン、あんたは後悔したんだ。結果が
どうであれ、あんたは父親を裏切り、見捨て、助けることが出来なかった。そ
れを後悔するからこそ、その失敗を補いたいからこそ、あんたは覇道に足を踏
み込んだんだ!」

193:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:32:50
 決めつけだと叫び返すことが、アスランには出来なかった。シンの言ってい
ることを否定するだけのものが、今のアスランにはなかった。
「古い考えを捨てられない地球はコーディネイターを差別し、認めてくれよう
としない。プラントだってナチュラルを見下して軽蔑し続けている。だけど、
それは少しずつだけど変わってきているはずなんだ」
 この戦争のなかで、シンは多くの人と出会い、そして別れた。それはナチュ
ラルであり、コーディネイターであり、一ついえることは彼らが皆同じ人間で
あるということだ。
「世界は変わる。変わっていなくちゃ行けない。そんな時に、過去のことでウ
ジウジと悩んでるような奴の、どうしようもない自己満足に付き合ってる暇な
んてないんだよ! そんなことやりたいなら、どっか遠くの、地球圏とは全然
違う場所でやれってんだ!」
 乱暴な口調であるが、アスランの自尊心を傷つけるには十分だった。アスラ
ンはコクピットで怒りに身体を震わせていた。
「俺の大儀を、父の遺志を、単なる自己満足だというのか……お前は!」
 アスランは初めて、明確な殺意をシンに向けた。そして、シンもそれを感じ
取ってアロンダイトの切っ先をジャスティスへと向ける。
「アスラン、俺はあんたを倒す。あんたを倒して、未来を掴み取ってみせる!」

 レジェンドのドラグーンが、一基、また一基と撃ち落とされていく。ビーム
ライフルに、ガンバレルに、敵の反応速度にレジェンドの攻撃速度が追いつい
ていないのだ。
「馬鹿な、こんなはずは!」
 叫ぶレイであるが、現状としてレジェンドのドラグーンは敵を翻弄するどこ
ろか、逆にこちらが圧倒されている。大型のドラグーンが一基、ビームスパイ
クを形成し、貫通弾のように突撃をする。性格に敵のコクピットを狙う一撃を、
ガンバレルが展開したフィールドエッジのビーム刃が阻んだ。
「遅いな!」
 ガンバレルごと回転を始めたフィールドエッジが、ビーム刃でドラグーンを
弾き飛ばした。レイが思わず目を見張る、神技ともいえる芸当であった。
「直線的すぎる攻撃は読まれやすいし、対処もしやすい。憶えておくことだな」
 どうやら空間認識能力ではムウの方に一日の長があるらしい。ムウとしては、
それぐらいでも有利でなければ、そもそも勝負にすらなっていなかったと思う。
レジェンドの性能もさることながら、レイの鬼神の如き攻撃はムウを追い込む
に十分だった。
「人の執念か……それとも、怨念かな」
 レイはどうか知らないが、クルーゼなら死して尚、怨念による呪いぐらいは
送ってきそうな気がする。随分と嫌われたものだが、仕方ないともいえる。
「俺には多くの兄弟がいた」
「何?」
 その言葉に、ムウが顔を顰める。
「出来るという理由で俺達は作られた。お前の父親のご機嫌取りに、不遜な野
望と野心を抱いた男のために!」

194:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:33:50
 しかし、彼らが作りし夢の結晶、キラ・ヤマトはもうこの世にはいない。レ
イは、彼を作った人間たちの理想や夢など知らない。作られた自分は人間か? 
父も母もなく、勝手な都合で生み出されたこの命は欠陥を抱えている。作られ、
生み出された欠陥品の自分は、人間ですらない。

―今度は完璧だ。我らの科学が勝利したのだ!
―私たちの正しさが証明されたんだ。
―これならフラガ氏だって納得してくれる。研究が続けられる。
―メンデルは、科学技術発展の聖地として歴史に残るぞ!

 幼き日に残る僅かな記憶。身勝手な大人たちの、自己の野心と欲望に基づい
た会話。
 俺は誰だ。ここはどこだ。周りで喋る奴らは何なんだ。
俺は……何のために生まれたんだ!

―史上最強のコーディネイターを作る、私たちの夢はすぐそこだ!

 俺は人間によって作られた。だが、果たしてそれは人間といえるのか。レイ
と、そして彼の親であり、兄であり、分身であったラウ・ル・クルーゼは常に
その悩みを抱えていた。
「ナチュラルでもコーディネイターでもない、それが俺達だ。誰が作ってくれ
と頼んだ? 誰が生み出してくれと願った! 俺は、俺を生んだ全てを、ラウ
を始めとした多くの俺自身を作りだし、犠牲にしてきた者を恨み続ける! こ
れは俺の、俺達の復讐だ!」
 そして、その根源たるフラガ一族、こいつらだけは……
「お前たち一族は、俺とともにここで滅びるべきなんだ!」
「それが君の出した答えというわけか!」
 ビームライフルの閃光が、ガンバレルの一基を撃ち落とした。ムウもビーム
ライフルを斉射するが、ビームシールドの前に阻まれた。
「その為にも、俺はお前に負けられない!」
「ならば死ぬ気で掛かってこい!」
 フィールドエッジがレジェンドの片足を斬り飛ばすが、ドラグーンのビーム
がガンバレルを破壊する。
「俺はここで死んでもいい。俺が死んでも、その後の未来を守ってくれる仲間
が、頼るべき友が俺にはいる!」
 シンやルナマリア、彼らなら、もう自分のような子供が誕生しない未来を作
ってくれるに違いない。
 残る二機のガンバレルが二連装ビーム砲を放ちながらドラグーンを迎撃して
いく。ムウの技量は、レイのそれを確実に上回っている。
「確かに、俺達一族は愚かだった。親父の犯した罪を否定するつもりはないし、
親父の犯したことだとして逃げるつもりも、俺にはない」
 ムウは、ビームライフルを連射しながらドラグーンを牽制し、レジェンドに
迫る。
「俺はあの時、前大戦で死んでからずっと逃げてきた。顔を隠し、名を変え、
それでも生に縋り付いてきた」
 醜く無様に、生き抜いてきた。

195:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:34:44
「生き残った者の責任が俺にはあった。その為に、俺は立ちあがった。けど、
俺の命はもう……」
 意味なんて、ない。
 ウィンダムのビームサーベルが、ビームジャベリンを持ったレジェンドの左
腕を切断した。
「くそっ!」
 ムウが二撃目を放つのと、レイが機体からドラグーンの一基を引きちぎるの
はほぼ同時だった。斬り込まれたウィンダムの斬撃は、浅かった。レジェンド
が突き出したドラグーンのビームスパイクが、ウィンダムの胸部に深々と突き
刺さっていた。
「な、に―!?」
 驚いたのは、レイの方であった。彼は自分の反撃が間に合わないと思った。
彼は自分が敵に、ムウに敗北したと感じていたのだ。
「今の俺が、君に勝てるわけがないんだ。俺には、今の俺には、守るものがな
いんだから」
 大切にしてきたものは、全て失われてしまった。アウルやスティング、それ
にステラといった子供たち。彼を慕い、彼も愛した人々は、彼の手の届かない
場所に行ってしまった。
「ステラ……そこに居るのか?」
 ムウ・ラ・フラガか、それともネオ・ロアノークか、誰の者とも知れぬ声が
ウィンダムのコクピットに響いた。レイは、何も言うことが出来ない。ただ、
目の前の光景を唖然として見つめている。
 ウィンダムが爆発していく、レイの一撃は、致命傷だった。
 果たして死んだのは、レイが倒したのは誰だったのか。世界統一国家軍総司
令官ムウ・ラ・フラガ、かつてエンデミュオンの鷹と呼ばれた英雄なのか? 
それとも、ネオ・ロアノーク大佐、ファントムペインの士官として多くの兵士
に慕われていた軍人だったのか……
 どちらでも、構わなかった。
「ラウ……俺は、俺は」
 レイは泣いていた。ラウ・ル・クルーゼが果たせなかったことを、レイは果
たしたのだ。彼の代わりに、彼の想いを受け継いで、レイは戦い、そして勝っ
た。
「これで俺も、自分を捨てられる。ラウ、ギル……さよならだ」


 ムウの機体がロストしたことは、すぐに世界統一国家軍旗艦ガーティー・ル
ーの知るところとなった。報告を受けたイアン・リーは、動揺も狼狽もしなか
った。
「インフィニットジャスティスに通信を送れ。世界統一国家軍はここに降伏し、
敗北を宣言する。これ以上の戦闘は無用である、と」
「閣下!」
「我々は負けたのだ。あるいは、始めからこうなるために戦ったのかも知れな
い」
 イアンは立ちあがると、スクリーンに映る漆黒の宇宙に向かって敬礼をした。
「フラガ司令官、いや、ネオ・ロアノーク大佐……ご立派でしたぞ」
 訃報はすぐに全艦隊、全軍に向けて発表された。ムウの戦死、それは統一国
家軍、インフィニットジャスティス、ザフト軍全てに衝撃を与えた。

196:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:35:46
 しかし、それですぐに戦闘が終結したかと言えばそうではない。何せ、ビル
ゴは今だ可動を続けていたし、アスランも起動停止を命じなかった。その為、
統一国家軍は訃報に悲しむ間もなく、個々の戦闘を継続せざるを得なかったの
だ。
「統一国家軍の司令官は死んだか……」
 戦場にあって、ロッシェはアクエリアスのコクピットで呟いた。側にいたは
ずのアスクレプオスの姿はなく、彼もどこかで戦っているのだろう。二人は強
かったが、それでもビルゴの勢いを止めるには至らなかった。
 止めるには、もうアレを使うしかないのだろう。
「プリベンター巡洋艦、こちらロッシェ・ナトゥーノだ。ミーア・キャンベル
を出してくれ」
 ロッシェは、ミーアに回線を繋いだ。彼女に話さなければならないことがあ
った。
『ロッシェ、どうしたの……? 戦闘中でしょ?』
 彼の身を案じ、心配する声が聞こえてくる。ロッシェはその声に微笑むと、
言葉を続けた。
「ミーア、いよいよ君の出番だ」
『あたしの?』
「そうだ。この戦争を終わらせるのは、君だ」
『…………』
 何を言っているのか判らない、そんな沈黙が通信機越しに伝わってくる。ロ
ッシェはアクエリアスを操作し、その翼を広げ始める。
「歌ってくれ。君の歌を、この戦場に、世界に、響かせるんだ」
『ロッシェ……』
「君の歌を、聴かせてくれないか?」
 ミーアには、ロッシェの意図がわからなかった。自分はラクスではない、彼
女のように歌で人々の心に訴えかけることが出来るとは、とても思えない。
 だけど、今は―
「わかった。あたし、やってみる」
 悩んでいる暇なんてなかった。自分が一度選んだ道なら、後悔せずに突き進
んでいきたい。偽物でも、紛い物でも、あたしは歌いたい、歌ってみたい!
「ロッシェ、あなたのために、世界のためにあたしは歌う!」
 それでいい……とロッシェは笑った。
 アクエリアスには秘密兵器とも言うべきとっておきがある。アスランも誰も
知らないであろうこの兵器、ロッシェはこれをただ使うつもりはなかった。
「戦争を止めるのは、私の役目ではないからな」
 ミーアの歌声が、アクエリアスのコクピットに響き始める。プリベンター巡
洋艦から、全てのチャンネルに向かって送信され始めたのだ。
 戦争を終結させる、運命の歌声が、歌姫の口から紡ぎ出される。
 今、ミーア・キャンベルは、本当の歌姫になろうとしていた。

                                つづく



197:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/11 21:36:30
第68話です。
泣いても笑っても後2話です。
たった一人、好悪関係なしに殺すか殺すまいかを、ずっと考えていた
キャラがいたのですが、やっと決めました。
それが誰なのかはまた次回ですが、今回は少し長くなりました。
1話追加するには短く区切りも悪いけど、3話だと少し足りないんじゃ
ないか? 結局悩んだ末、当初の予定通り70話完結としました。
GW中に終わらせたかったのですが、GW進行に勝てず……
本当に申し訳なかったです。
話的には69話がピークですが、本編70話、すぐに完結する予定なので、
お付き合いよろしくお願いします。

198:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 21:54:04
GJ!
ああ…ムウ…
シンもカッコいいぜ!
そしてアクエリアスの能力が発動か。ミーアも本物になるのか。

199:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 21:58:27
GJ!

ここでミーアか。
すげぇ……けど、ガンダムって言うよりは、マクロスっぽい展開だな。


200:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 21:59:48
GJ!
ついにあれを使うのか…
マクロス的展開を期待

201:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 21:59:55 7nTz63Za
GJ

なんか、アスランからグレミー(ry
ここでミーアが(ry

202:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 22:03:23
ミーアがついに立つ!

203:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 22:51:18
GJ
アスランとシンwガトーやコウ、ジュドーやグレミーになって忙しいですね

204:通常の名無しさんの3倍
08/05/11 23:05:14
GJ
アスランの策が上手だったんだろうが…Gチームしょぼいな、トラース相手に何しに来たんだか
リアルタイム変化のドロシー人形にもフォーメーション勝ちできた奴らが・・・

205:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 05:46:06
GJ
本当に前哨戦で出張って戦死しちゃったイザディアが生きてたら……
……それはそれで、ガンダムチームとやりあってただけかw

独善ではあるけど凸ではない、そんなアスランもいいなぁ
そして特にヴィジョンもなく未来を勝ち取ってどうすんだ、シンw 少しは考えろw
ムウ逝ったか……え?死んだ?戦後処理誰がやんの?

206:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 06:52:09
ユウナがいるだろ。

207:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 09:23:53
マクロス展開かw

83のコウとガトーの台詞の応酬からZZのジュドーとグレミーのやりとりにつないだのはニヤリとさせられたなぁ。

208:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 10:00:00
>ミンメイアタック
歌っても何の効果もなく戦闘継続って展開なら指示する
異星文明ならまだしも人間同士の戦争が歌で止まるわけがない

209:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 10:09:54
え、ビルゴやトーラスを稼働不能にするんじゃないの?
イメージ的にはミンメイアタックというよりむしろ
『ホゲ~~~~~~』とか『ボエ~~~~~~~』でわ…ん、誰か来たかn(ツーーーーー

210:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 10:28:09
いや、連合は降伏して、攻撃してきているのはコーディネーターだから、止まる可能性が非常に高いぞ。
嫌な話だが、ラクスの歌にはコーディネーターの精神に干渉する作用があるという公式設定があるからな。

ラクスの歌を反復的に聞いていたコーディネーターの脳には既に条件反射が学習されていて、
非常に近い声質を持つミーアの声を聞いても、鎮静作用を持つ脳内物質を分泌する可能性が高い。

また、種死世界のコーディネーターにとって、ラクスは非常なカリスマである事を忘れてもいけない。
ただの歌手が歌ったって、戦争はとまらんだろうさ。
だが、復活したキリストが戦争停止を叫んだら、止めるキリスト教徒は沢山いると思うぜ。

ミーアは偽者だが、それを表明するまでの間は広い範囲で戦争が停止するだろうさ。

211:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 11:19:39
そんな展開は死ねばいいと思う

212:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 11:42:25
自分の趣味の押し付けは良くないぜ。
そうじゃないなら、もっと言い方って奴があるはずだ。
本当に嫌なら、何も言わずにここを出て行けば良いだけの話だしな。


まあ、IJの主戦力はビルゴ、主構成員はコーディネーターだから、
普通に考えればアレが止まると同時にラクスの歌が聞こえてくれば、戦意を喪失する奴が多いだろうな。

213:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 11:45:38
嫌なのが沸いて来る悪寒・・・
〆なんだからやめてよね

214:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 12:33:38
色々言うのは、全部終わってからでも遅くないさw
なにしろあと2話だからな

215:通常の名無しさんの3倍
08/05/12 18:43:22
種関係で『公式設定』ほど二階窓から捨ててしまえなゴミもないわけだが。
いくつかのSSや、あるいはTVもかもだが確かにラクスの歌声に比喩でなく
物理的に洗脳音波作用があったり、あるいは実はチャーム能力付きミュータント
だったりといったパターンもあるにはあるが、少なくとも本作じゃ違うでしょ…

216:通常の名無しさんの3倍
08/05/13 00:32:21
マクロスwww
でも燃えるなぁ。

217:通常の名無しさんの3倍
08/05/15 00:28:58
保守

218:通常の名無しさんの3倍
08/05/16 00:23:47
保守っ!悪いな、一回は一回だ。

219:通常の名無しさんの3倍
08/05/17 23:39:13
保守

220:通常の名無しさんの3倍
08/05/18 16:45:06
保守るぜ~俺に保守させるとみ~んな埋めちまうぞ~

221:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 21:52:42
投下したいんですが、69話は通常の倍以上の文量があります。
長文投下するのと、素直に1話増やして分割するのどっちがいいですかね?

222:通常の名無しさんの3倍
08/05/18 21:57:35
長文でOK

223:通常の名無しさんの3倍
08/05/18 22:34:16
長文カモンカモ~ン!

224:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:18:30
では、長ったらしいですが投下します。

225:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:19:33
 周囲に巨大な岩塊が幾つも浮いている。巨大といっても、それはあくまでモ
ビルスーツや艦艇の大きさと比較してであり、広大にして膨大なる宇宙におい
て、それらは所詮小石程度の大きさでしかない。
 地球が肉眼でハッキリと見える宙域に漂うそれらの岩塊は、かつてプラント
と呼ばれた一つの残骸。ユニウスセブン、血のバレンタインが起こった地にし
て、テログループによって地球へと墜とされるはずだった墓標。ザフトが砕き、
そのまま放置されていた岩塊群であるが、現在この宙域において激しい戦闘が
繰り広げられている。
 そう、破竹の勢いで進撃を続けるインフィニットジャスティスに対し、世界
統一国家軍の残存兵力は戦線を後退させ、いつの間にかユニウスセブンの跡地
とも言うべき場所が主戦場へと変わっていたのだ。前大戦から考えれば、ここ
はまさに始まりの地。全ての因縁が、憎悪が、対立がぶつかり合って、今日ま
で続いた戦い。それは、この場所から生まれたと言っても過言ではないはずだ。

 その主戦場において、二機のモビルスーツが激しく、そして雄々しい姿を見
せつけながら一騎打ちを繰り広げている。
「世界統一国家軍は、地球はあんたに対して敗北を認め、降伏した! それで
もあんたは地球を壊すって言うのか!」
 大振りの斬撃が繰り出され、必殺の威力を持った一撃がジャスティスに迫る。
ジャスティスはビームシールドを展開すると、相手の攻撃を受け流すように斬
撃の軌道を逸らす。
「シン、地球育ちのお前にはわからないんだ。地球に住むナチュラルなんて、
この宇宙の害虫でしかないということが」
 ビームライフルを突きつけるジャスティスだが、デスティニーはバルカン砲
を連射し、ライフルを持つ右腕を衝撃で弾く。
「アスラン―!」
 すかさずジャスティスの蹴りが飛び、爪先のビームブレイドがデスティニー
を掠める。シンは歯を食いしばると、再び構えるジャスティスのビームライフ
ルを機体の左手で掴んだ。
「俺はあんたほど人類に失望してなければ、絶望もしちゃいない! 人は、や
り直せるはずだ!」
 ビーム砲がライフルを破壊し、アスランは舌打ちしながら残骸を投げ捨てる。
「無理だな。その前にナチュラルとコーディネイターは、互いに互いを滅ぼす
さ。人類の歴史は戦いの歴史だ! 敵がいる限り、戦いはなくならないんだ
よ!」
 前大戦時、アスランは戦いを、戦争を止めるために、世界を平和にするため
に必死で戦った。しかし、彼が掴み取った平和は、一年と少しで脆くも崩れ去
った。
「失敗しても、転んでも、それでも起ち上がって前に進む。それが人だ!」
 シンの叫びが、アスランに響く。だが、彼にとってそれはビジョン無きロマ
ンチズム以外の何物でもない。
「だったら、俺を倒してそれを証明してみろ! シン・アスカ!」


         第69話「運命の歌姫」



226:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:21:10
 別の場所においても、モビルスーツ同士の激しく、そして苛烈な戦闘が行わ
れていた。
「仮初めの和平など、所詮は虚構に過ぎなかった。少しの刺激を与えるだけで、
この世界はまた戦争を行った。何故だと思う!」
 サトーは叫びながら、機体のビームサーベルを振り上げてレオンに斬りかか
った。ブルムもまたビームサーベルを引き抜き、これに対応する。
「軍人が戦争の意味を問うとは、ナンセンスだな!」
 レオンのビームサーベルが、ブラックリーオーのビームサーベルと激しくぶ
つかり合う。出力は互角、だが、パワーならばレオンに分がある。
「貴様が軍服をまとっていたのは、国を守るという誇りがあったからだろう
に!」
「その誇りをくれたのがプラントなら、奪ったのもプラントなのだ! 妻と娘
を奪った血のバレンタイン……あんなことを行った地球と、クライン派は手を
取り合った!」
 技量でいえば、驚くべきことにブルムとサトーのそれは拮抗していた。いく
ら歴戦の戦士とはいえ、異世界の機体をここまで操るには相当の努力が必要だ
ったろう。イザークやディアッカのような天才ならばともかく、サトーは単な
る武人に過ぎない。
「そんなプラントやクラインのために戦う者たちに、私は負けん!」
「守るさ。守るために戦う、それが騎士だ!」
 マシンキャノンが火を吹き、ブラックリーオーの機体が衝撃に揺れる。サト
ーは距離を取ると、ドーバーガンを構える。
 だが、ブルムの反応は砲撃よりも早かった。
「遅いなぁっ!」
 機体を加速させ、敵機に急接近したレオンは、その太い両腕でドーバーガン
の砲身を掴み取った。
「ぬぅんっ!!」
「なっ!」
 メキメキと音を立て、ドーバーガンの砲身が潰されていく。決して柔らかい
わけではない、チタニュウム合金が折れる。
「なんという揚力……!」
「小細工はそろそろ抜きにしようではないか」
「どういう意味だ?」
「男と男、戦士と騎士、互いに意地があるのなら、体と体でぶつかり合って、
そいつを押し通せばいいのだ!」
 潰して引き千切ったドーバーガンの砲身を捨て去ると、ブルムは距離を取っ
てビームサーベルを構えた。小技も小細工も必要ない、一対一の真っ向勝負。
「貴様も戦士ならば、一騎打ちの真髄を見せつけてみろ!」
 その言葉に、サトーの体は痺れを覚えた。
「……真っ向勝負か。良いだろう、叩きのめしてくれる!」
 こちらもビームサーベルを引き抜き、突きの構えを取る。
 静寂が訪れた。深遠なる宇宙、まるでこの二機の時間だけが止まってしまっ
たかのような、刹那の時。

 先に動いたのは、サトーのブラックリーオー。



227:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:22:20
 ブルムは、僅か一瞬、常人では気づかないであろう一瞬、遅れた。
「とったぁっ!」
 レオンがビームサーベルを振り上げたまさにその時、ブラックリーオーのビ
ームサーベルがレオンの右胸部を貫いた。そして、そのまま機体を斬り裂き、
右肩から右腕を斬り飛ばした。
「勝った、勝ったぞ!」
 サトーは歓喜の声を上げた。異世界の騎士に、自分よりも強い男に、自分は
今勝利した。まだ終わってはいない、我々は、インフィニットジャスティスは
戦える!
「いや……終わりだ!」
 衝撃がブラックリーオーの機体を打ち砕いた。
 サトーは何が起きたのか理解できなかった。彼に分ったのは、一撃でコクピ
ットが破壊され、自分が残骸に押しつぶされようとしていることだった。
「ガ…ハッ……」
 血塊が、口から吐き出された。ノーマルスーツごと、コクピットとともに身
体を砕かれた。
「拳、だと」
 そう、右胸部を貫かれ、右肩から右腕を斬り飛ばされた瞬間、ブルムはレオ
ンの左拳を、ブラックリーオーのコクピットに叩き込んだのだ。勢いある拳の
一撃が、たった一発でコクピットを砕いた。
 肉を切らせて、骨を断つ。以前、ロッシェがとったのと同一の戦法を、ブル
ムも使ったのだ。そして、その効果は絶大であった。
「これも、国を裏切り、世界に反旗を翻した者への……報いか」
 消えうせる意識の中、サトーの頭に思い浮かんだのは愛していた妻や娘のこ
とではなく、彼が担ぎ上げ、彼の期待に応えて戦ってくれた少年の顔だった。
「アスラン、ザラ。後は、あなたに任せます。どうか、パトリック・ザラの、
われらの遺志を……」
 ブラックリーオーの機体が動作を停止した。コクピットを破壊され、もはや
動くことのなくなった機体を、レオンに乗るブルムは静かに見つめている。
「相手が悪かったな。俺は、二度死ぬつもりはなかったんでな」
 その言葉を聞く者も、答える者もこの場にはもういなかった。


 デスティニーのビーム砲がジャスティスを襲う。アスランはこれをビームシ
ールドで受けきった。
「大した防御力だよ、まったく」
 始めは満足に戦えるかとも思っていたのだが、今や自分が確実にシンとデス
ティニーを押しているという自覚がアスランにはあった。デスティニーの力は
確かに強い。性能も、そしてパイロットであるシンの実力も自分に匹敵するほ
どにまで成長している。
 だが……
「相性が悪いみたいだな、俺とお前では!」
 アスランのジャスティスが徹底的なまでに近接格闘戦に拘って強化されたの
に対し、シンのデスティニーはどう見ても拠点攻略用の局地戦兵器だ。戦艦や、
大型モビルスーツなどには絶大な効果を発揮するだろうが、単体の一騎打ちに
は武装の大きさからして不利なのだ。無論、シンの実力を持ってすれば並のモ
ビルスーツやパイロットなど一瞬で蹴散らせるが、今彼と戦っているのは当代
きっての英雄アスラン・ザラだ。容易に勝てる相手ではない。

228:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:23:59
「それでも、俺はあんたを……アスラン・ザラを倒さなくちゃ、超えなくちゃ
行けないんだ!」
 自分のような優秀でもなく、他者より優れているところがあるわけでもない
コーディネイターが、万が一にでも英雄を倒すことが出来れば……あるいは人
は、それに希望を見出してくれるのではないか。
「愚かな、そんなものは夢だ。愚か者が見る、虚構に過ぎない!」
 あろうことかビームシールドを武器に、デスティニーへと攻撃を仕掛けるジ
ャスティス。
「夢を見て何が悪い! 人が一歩前を踏み出すには勇気がいるんだ!」
 そう、俺は……俺はそんな人たちの……
「勇気となって、その人たちの背中を押してやりたい!」
 ビームシールドで強引にアロンダイトを押し戻されながらも、シンは歯を食
いしばってその場で堪える。
「ならば、今すぐ全人類に英知を希望を与えてみたらどうだ! お前は出来も
しないことを、きれい事を並べてほざいているだけだ」
「あんたを倒してから、そうさせてもらうさ!」
 減らず口を応酬しながら、二機が激突を繰り返している。理想を捨て、彼な
りの現実を見据えて覇道を突き進む男と、理想を捨てず、勇気を振り絞って正
道を歩く男の、真剣勝負。
 彼らの周囲には幾つか有人機もいたのだが、戦いに割っては入れるような状
況ではなかった。ただ、メインカメラに激しさを増す光景を焼き付け、周囲に
向かって送り続けている。何分、何時間経ったのか、時間の感覚すら彼らには
なかった。
 互角と断言しても差し支えのない二人の死闘は、そう簡単に終わるものでは
ないかに見えた。だが、彼らの戦いに対し、ルナマリア・ホークが介入したこ
とで事態は一転した。
「シン、アスラン!」
 ルナマリアは別に、二人の戦いに横やりを入れるつもりはなかった。単純に、
二人の所在を確かめるべく接近しただけなのだろう。しかし、シンは彼女が援
護をしに来たと勘違いをしてしまい、こう叫んだ。
「ルナ、来るな!」
 その叫びは、結果としてルナマリアが彼らに近づきつつあるといことをアス
ランにも教えることになってしまった。緊迫した状況下で、アスランはルナマ
リアの存在に大きく舌打ちをした。
「ルナマリアか……女如きが男同士の戦いに割ってはいるな!」
 とんでもないことを叫びながら、アスランは機体を反転してルナマリアの乗
るインパルスへと迫った。
「よせ! アスラン!」
 シンの制止を振り切り、ジャスティスはビームサーベルを構えてインパルス
へと飛び込む。インパルスはビームライフルを斉射してこれを迎撃するが、そ
の程度ではジャスティスを止めることは出来なかった。
「相変わらず射撃が下手だな、君はっ」
 ビームサーベルとビームブレイドの連撃が、瞬時にインパルスを斬り裂いた。
ボディや脚部を斬り裂かれ、コクピットたるコアスプレンダーが剥き出しにな
る。

229:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:25:11
「そんな―!」
 ルナマリアは悲鳴に近い声を上げた。コアスプレンダーは、現在飛行能力に
以上を来しているため、脱出することが出来ない。このままでは、殺される!
 だが、アスランはすぐにルナマリアを殺したりはしなかった。なんと、彼は
コアスプレンダーを抱えるとそのまま宙域から離脱を計ったのだ。
「ま、まてっ!」
 慌ててシンもその後を追う。砲撃したくても、ルナマリアを盾にされては困
るし、あるいはアスランの狙いはそれなのかも知れなかった。

 加速を続ける二機であったが、アスランはユニウスセブンの残骸の中でも一
際大きい岩塊を見つけると、そこに降り立った。後を追うシンも、機体をそこ
に着地させる。
 コアスプレンダーを左脇に抱えるアスランは、ビームサーベルを持つ機体の
右手をデスティニーに突きつけた。
「シン、ルナマリアの命が惜しかったら武器を捨て、投降しろ」
 コクピットの中でルナマリアと、そして言葉を投げかけられたシンが衝撃に
震えた。
「アスラン……あんたはどこまで腐ってやがる!」
「何とでも言え。俺は覇道を歩いている。正々堂々の勝負なんて、これ以上し
ていられるか」
 視線でモビルスーツが壊せるならば、シンは百回でもジャスティスを破壊し
ていただろう。シンは、操縦板に拳を叩き付けると、デスティニーのアロンダ
イトを地面に投げ、ビームブーメランも取り外した。
「シン、私に構わないで!」
 死の恐怖に怯えながらも、気丈にルナマリアは叫ぶ。だが、シンには彼女を
見捨てることが出来なかった。
「馬鹿な奴だな。ルナマリアを見捨てて戦い続ければ、俺に勝てたかも知れな
いのに。そんなに仲間の命が大事か?」
「仲間だからじゃない。誰のものであろうと、命はかけがえのないものだ。例
えアスラン、あんたみたいな屑野郎の命でもな……」
 吐き捨てるように言うシンと、嘲笑するアスラン。アスランにとって、シン
の言い分など甘ったれたガキの戯言でしかなかった。
「それで自分が死んだら何の意味もないな。良いだろう、ルナマリアは見逃し
てやる。けど、その代わり……」

 アスランはビームサーベルを構える。シンはそれに対し、動きを見せようと
しない。
「その代わり、お前の命は俺が貰う!」
 コアスプレンダーを抱えたまま、ジャスティスが走り出す。どうすることも
出来ない、シンが覚悟を決めた。

 その時だった―

 アンカーランチャーが、ジャスティスの左腕に打ち込まれた。衝撃に、アス
ランは思わずコアスプレンダーを落としてしまう。
「だ、誰が!?」
 あり得ぬ方向からの攻撃に目をやるアスラン。
 そこにいたのは…………

230:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:27:01
「お前が正しいかなんて俺はどうでも良い。ただ一ついえるのは、今のお前が
堪らなく醜い悪党に成り下がりつつある、それだけだ」
 ボロボロの機体。修理も満足に行われていない、その機体をアスランは、そ
してシンは見覚えがあった。
「ストライク……スウェンか!」
 弾き飛ばされたコアスプレンダーをキャッチしながら、シンが叫んだ。スウ
ェンは答える間もなく、機体を飛ばし、デスティニーの手からコアスプレンダ
ーを奪う。
「こいつは俺に任せろ。お前はそこにいる小悪党を、さっさと倒せ」
『ちょ、ちょっと私は―』
 スウェンは、抗議するルナマリアを連れてそのまま離脱した。一瞬の攻防劇
に、アスランは唖然としてしまったが、すぐに我に返った。

「くそったれ!」
 頭部の2連装近接防御機関砲と、胸部のCIWSを連射してデスティニーが地面に
投げた武器を撃つ。ビームブーメランは弾き飛ばしたが、大剣のビームソード
は……
「アロンダイトォォォォォォォォオッ!!!!」
 寸前のところでアロンダイトを掴み取ったデスティニーが、大剣を勢いよく
振りかざし、剣先を突きつけるように構えを取った。
「アンビデクストラス・ハルバートッ!!!!」
 迎え撃つべく、ジャスティスもまた二刀のビームサーベルを連結させた、最
強の双頭刃形態を取る。
『ハァッ!!!』
 同時に叫ぶとともに二機が正面へと飛び出し、縦と横の一閃がそれぞれ交錯
しあう。デスティニーは片翼を斬られ、ジャスティスは頭部のアンテナを斬り
落とされた。
 振り向き様に二機は中空へと跳び上がった。
「くらえっ!」
 ジャスティスからグラップルスティンガーが発射され、デスティニーへと迫
る。シンはパルマフィオキーナでこれを吹き飛ばすと、高エネルギービーム砲
でジャスティスを狙い撃つ。
 アスランは素早い動きでこれを避けると、さらに斬りかかろうとするデステ
ィニーに急接近し、グリフォンビームブレイドでビーム砲の砲身を叩き斬った。
 シンはパーツをパージし、前方に加速して距離を取る。同じくアスランも前
方に飛び出してから、機体を旋回させる。
「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォオッ!!」
「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!」
 二機が激突し、地面へと落下する。
 ともに胸部を破損したが、デスティニーが膝をついたのに対し、アスランの
ジャスティスは地に足を着けて立っている。
「おのれ、この程度の損傷……!」
 破損箇所を庇いながら、アスランが呟く。
 機体を奮い立たせながら、シンのデスティニーがアロンダイトビームソード
を構え直した。それを見て、アスランもジャスティスのアンビデクストラス・
ハルバードを構える。

231:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:28:11
「シン、お前は弱者だ! お前は弱いからこそ、力がないからこそ、そうやっ
てきれい事並べることしかできない。だが、俺は違う。俺は覇道を突き進む、
強者なのだから! そんな俺が、お前なんかに負けるものか!」
 叫び、轟き、アスランとジャスティスが飛び出した。
「そうだ、俺は確かに弱い。あんたみたいに自分の実力に自信も持てないし、
英雄なんて大層な異名を持ってもいない。だけど、だからこそ俺は!」
 その時シンの脳裏に掠めたのは、一人の少女の姿。それはかつて、彼に勇気
と、強さを取り戻させてくれた、大切な存在。
「弱いからこそ、心だけは、強く生きていきたい!」
 翼を広げ、大剣を振り上げたデスティニーがジャスティスに立ち向かう。
 二機の距離は、至近であり指針。
「勝負だ、アスラン・ザラ!!!」
 シンの叫びと、
「来い、シン・アスカ!!!」
 アスランの叫びが、真っ向から激突する。

『オォォォォォォォォォォォォォォッ!!!』

 互いの魂を揺らす覇道と衝撃が、ぶつかり合う大剣と双頭刃を通して二人に
伝わってくる。アロンダイトの刀身に、ビームサーベルの刃が叩き付けられ、
激しい鍔づり合いを起こす。

 威力は互角―いや、

「ウァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
 シンの斬撃が、アロンダイトの一撃がアスランのジャスティスを斬り破った。
ジャスティスはアンビデクストラス・ハルバードごと、その機体を弾き飛ばさ
れた。
「嘘、だ……」
 勢いよく地面に叩き付けられる機体の中で、アスランは呆然と声を出した。
全身全霊を込めたはずの一撃が、跳ね返されたとでも言うのか。慌てて機体を
起ち上がらせようとするアスランだが、機体の軋む音が響く。今の一撃は、必
殺となってジャスティスの機体を破壊していた。
「俺が、シンに、シンなんかに」
 まだだ、まだ終わってはいない。この上は、ビルゴを呼び寄せてでもこの場
を切り抜けなくてはならない。
 アスランはビルゴを呼び寄せようと手を伸ばし、ある異変に気がついた。何
か、微かな声のようなものがコクピットに響き渡ってくる。
「なんだ、これは」
 外部チャンネル。アスランは、声が流れるチャンネルに合わせると、音量を
一気に上げた。
「ミーアの、歌声……?」



232:通常の名無しさんの3倍
08/05/18 23:28:40
支援

233:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:29:28
 その頃、主戦場では奇跡が起こっていた。見た者全てが、それを奇跡という
意外に形容できなかった。
「ビルゴが、動きを止めていく」
 世界統一国家軍側のパイロットが、呆然と呟いた。突然、綺麗な歌声が全自
動通信で流れ込んできたかと思うと、次々にビルゴが動きを止めていったのだ。
この歌声、この世界に生きる者ならば、大抵の人間が知っている。

「何故だ、何故ビルゴの制御が出来ない!」
 ウルカヌスにおいてもこの異常事態に混乱が起きていた。ラクス・クライン、
いや、ラクス・クラインの偽物と思われる存在の歌声が線上に響く中で、彼ら
の主戦力たるビルゴがこちらの命令を受け付けず、機能停止を始めているのだ。
操作も命令もできずに、彼らは立ち尽くしている。

 ザフト軍は終結が近いことを悟っていた。
 スコーピオ率いるビルゴ部隊もまた、この歌声が流れるとともに飛来した光
り輝くモビルスーツの前に機能を停止してしまったのだ。
「ラクス・クラインの歌が戦闘を止めている……?」
 スウェンとともに帰還したルナマリアは驚きを隠せないと言った風に呟くが、
スウェンには異なる見解があった。だが、今のところはルナマリアが思うよう
な事実が重要視されるのだろう。

 一機のモビルスーツが、翼を煌めかせながら戦場を飛び続ける。
 歌姫の歌声に乗せられて、青く輝く粒子が戦場に舞い、モビルドールが一機、
また一機と行動不能に陥っていった。これこそが、ガンダムアクエリアスが持
つ機能、対MD用電子戦装備アンチMDシステム。
 半径100km以内に存在する全てのモビルドールにコンピュータウイルスを送
信し、機能障害を引き起こし、活動能力を奪うこの兵器は、まさに支援用のモ
ビルスーツだからこそ持っている秘密兵器だった。ロッシェは戦場を飛び回る
ことで制限範囲を無くし、戦場にいるモビルドールというモビルドールを駆逐
していった。動けなければ、ただの人形でしかないのだから。
「それにしても、本当に良い歌声だ……」
 彼のコクピットにも流れる歌声、ミーア・キャンベルが歌う歌も、全ての戦
場に、全世界に向けて発信されている。アクエリアスの機能を知らなければ、
人はミーアの歌によってビルゴが動きを止めていると思うだろう。
 ロッシェの狙いは、まさにそれだった。
「アクエリアスを使えば、ビルゴを止めるのは簡単だった」
 だが、ロッシェはそれだけでは何の意味もないと感じていた。ただビルゴの
動きが止まるだけでは、敵は抵抗を止めないだろう。
 そこで、殊更に劇的な効果を狙ってロッシェはミーアの歌を選んだ。相手の
戦意を、根本から打ち砕き、引き抜くような力を、ミーアに求めたのだ。
 その効果は、絶大だった。
「戦いを決するのは、兵士じゃない。ミーア、君のように心の底から平和を願
い、それを歌という形にして送り出せる人が、必要なんだ」
 遅れて戦場に到着したガンダムチームも、目の前で起きている光景に目こそ
疑わなかったが、衝撃を憶えていた。

234:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:31:16
「凄いな、あんな特殊能力があったのかよ」
 対モビルドール用兵器を搭載していたとは、さすがのデュオも考えていなか
った。
「恐らく、あの兵器でビルゴの動きを封じてエピオンが殲滅するという戦略だ
ったのでしょう。何せ、兄弟機ですから」
 カトルの言葉に全員が頷く中、トロワが提案をする。
「とはいっても、あるいは一時的な効果かも知れない。再起動の危険性がある
ことだし、今の内に全機破壊しておくべきだろう」
「動かぬ人形ほど歯ごたえのない敵もいないが、賢明な判断だろうな」
 ガンダムチームはそう言いながら各自ビルゴを殲滅するために飛び立つが、
ここで彼らは一つの失敗をしている。誰か一人、一機だけで良いからウルカヌ
スの制圧に向かうべきだった。彼らがそれをしなかったのは、もちろんビルゴ
が再起動する危険性を重要視したことと、ウルカヌスにはもう戦力など残って
いないと判断したからだった。


 勝敗は、決した。どちらが勝ったわけでも、負けたわけでもない。だが、勝
利できなかった、その時点で、アスランは負けを悟らざるを得ないのかも知れ
なかった。
 倒れたまま動かぬジャスティスに、シンのデスティニーが歩み寄った。
「アスラン、あんたの負けだ。潔く降伏しろ」
 シンがすぐにアスランへトドメを刺さなかったのは、彼の口から敗北を宣言
させ、インフィニットジャスティスの抵抗を止めさせる必要があったからだ。
もう戦いは終わっている、これ以上、人が傷つくことはないはずだ。
「俺は……」
 絞り出すような声で、アスランが呟く。彼の瞳には、まだ強い輝きがあった。
「俺はまだ、敗者になるわけにはいかない。俺はそんなに、諦めが悪くない!」
 アスランが機体を動かし、無理矢理飛び立たせた。
「アスラン、あんたはまだ―!」
 ジャスティスが支援空中機動飛翔体ファトゥム-01を切り離した。ハイパーフ
ォルティスビーム砲を撃ちながら、ビームサーベルを展開してデスティニーへ
と突っ込んでくる。
「こなくそっ!」
 砲火を受けながらもアロンダイトで受け止めるデスティニーだが、その威力
と衝撃に機体と刀身が揺れた。
 それでもその場に踏ん張り、シンは何とかファトゥムを斬り裂いた。
「アスランは!?」
 見ると、ジャスティスはウルカヌスの方へと飛び去っていく。
「くそ、待て!」
 追いかけようとするシンであるが、機体が言うことを訊かない。度重なる戦
闘による損傷が、機体の自由を奪っていたのだ。
「このままじゃ」
 焦るシンであったが、その機体を、別の機体が支えた。驚いてシンがメイン
カメラを向けると、オデルのアスクレプオスがシンのデスティニーを支えてく
れてくれている。

235:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:32:26
「シン、良くやったな」
「オデルさん……」
「みんな見ていた。お前の勝ちだ、お前はアスランに勝ったんだ!」
 勝った……? オデルに言われても尚、シンには実感が沸かなかった。無我
夢中だった。ただ、自分の想いをさらけ出して、アスランにぶつけただけだ。
「お前の想いが、お前の意思がアスランを打ち破ったんだ。胸を張って、ミネ
ルバに帰ろう」
「で、でも、アスランはまだ!」
「大丈夫だ、もうウルカヌスには戦力なんて残っていない」
 事実のはずだった。インフィニットジャスティスは、ウルカヌスにある全て
のビルゴⅡを戦場に投入していた。それらは全てロッシェの手によって自由を
奪われ、今現在ガンダムチームによって破壊されている。
 だが、彼の知らない、またガンダムチームの気付いていない兵器が、戦場に
は残されていた。


 損傷し、満足に飛ぶことも出来ない機体を動かしながら、アスランはウルカ
ヌスへと急いでいた。空中分解してもおかしくないほどに損傷した機体は、ア
スラン・ザラがシン・アスカの前に敗北した、確かな証拠と言えなくもない。
「どうして、どうしてこんなことになった……」
 コクピットの中で、アスランは呟いている。
 こんなはずではなかった。圧倒的なビルゴの力を持って敵を壊滅させ、地球
を制覇し、プラントでの覇権を樹立する。心強い友と、多くの仲間、彼らと手
を取り合い、覇道を歩み続けるはずだった。
 だが、ディアッカ・エルスマンが死に、イザーク・ジュールが死んだ。かつ
ての友、キラ・ヤマトに至っては自ら手を下してしまった。メイリン・ホーク
は彼の元を去り、いつの間にか、アスランは一人になっていた。
「俺は……」
 アスランはそれでも、戦意を失ってはいなかった。彼は、自分には責任があ
ると思っていた。
 その責任とは、一体どんな、そして誰に対してなのか。
「決まってる。これまで倒し、殺してきた全ての人間と、覇道を歩むと決めた
自分自身にだ!」
 故に、アスランは勝者とならねばならない。どんな手を使ってでも、例え最
後の一人になろうとも、戦い続けなければならないのだ。
 眼前に迫るウルカヌス。その周囲には、アクエリアスによって強制的に機能
停止させられたビルゴⅡが何機も漂っている。アスランは、その中から目的の
機体を見つけた。
 赤く、そして巨大な機体は見たところ傷一つついてはいなかった。
「俺はまだ負けない。俺は弱者にも、敗者にもならない!」
 コンソールを操作し、コードを入力していく。
 入力されたコードは……

 ―56WI―


236:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:33:22
 プリベンター巡洋艦へと帰還したロッシェは、機体の王宮整備と補給を済ま
せる中、ハワードにある注文を付けていた。
「ジェネレータの出力を弄って、ビーム兵器も使えるようにしろだと?」
「あぁ、システムとのリンクを切れば、ビームサーベルぐらいは使えるように
なるはずだ」
「出来ないことはないが、もう掃討戦だけのはずだ。そこまでする必要が……」
「あるさ。あるから頼んでいる」
 あるのかと問いかけるハワードに対し、ロッシェはあると断言した。ロッシ
ェは、自分がもう一度だけ出撃する必要があると確信していた。
 そんな彼の元へ、ミーアが駆け寄ってきた。
「ロッシェ、さっきの歌、あたしの歌、どうだった!?」
 抱きつくように飛び込んでくる彼女を、ロッシェは優しく抱きかかえた。
「良かったよ、良かったに決まってるさ。他でもない、君の歌だ」
「ありがとう。これで、戦いは終わるのね……」
 興奮による震えを隠せないミーアであったが、ロッシェは小さく首を振った。
「残念だが、私にはまだやり残したことがある」
「えっ、やり残したこと?」
 世界統一国家軍は敗北を宣言し、インフィニットジャスティスはその主戦力
を失った。この状況下にあって、戦闘は終わったと思うのが普通であるはずだ。
少なくとも、ロッシェともう一人だけを除いて誰もがそう思っていたはずだっ
た。
「ほんの些細な、野暮用ともいえるものだ。だが、それだけに譲れないもので
もある」
 ロッシェは、視線をミーアからアクエリアスへと移した。ミーアは直感的に、
それが何を意味するのか気付いた。
「まさか、まだ戦うつもりなの?」
「……あぁ」
「どうして? だって、もう敵なんて!」
 叫ぶミーアの口を、ロッシェがそっと指で塞いだ。
 驚いたように、ミーアが眼をパチクリとさせる。
「ミーア、私は馬鹿で愚かな男だ。本来なら君に愛しされる資格などない、つ
まらない男なんだ」
 指を離して、ミーアに背を向けるロッシェ。ミーアはその背に手を伸ばすが、
届かない。
「奴は私に手袋を投げてきて、私もそれを受け取った。ならば、最後の最後に
は白黒ハッキリさせる必要がある」
 出会いがどうであるとか、始まりが何であったかなど関係ない。刃を突きつ
けられ、こちらも突き返した。
 理由など、その程度で構わない。
「決着を付けに行く。この世界に対してのケジメを、私はつける」
 奴もきっと、それを考えているはずだ。
 ならば、私も剣を取らなくてはいけない。
「そうだろう? アスラン・ザラ―」



237:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:34:23
 スコーピオが、ゆっくりと再起動を始めていく。
 モビルドールとしてではない。モビルドールシステムを封じられた以上、動
くことはあり得ない。だが、スコーピオにはアクエリアスと同じく、ある機能
が備わっていた。それは、特殊な解除コードを入力することで機体を変形、有
人型のモビルスーツとして起動させることが出来るのだ。
「俺は戦う。最後の一人になったとしても、俺の命と魂を、俺が英雄として生
きる全てを賭けて!」
 モビルスーツスコーピオ、パイロットは英雄アスラン・ザラ。
 アフター・コロニー最大最強の機体と、コズミック・イラ最強の戦士がここ
に合わさった。
 無論、その光景はガンダムチームの知るところとなる。
「スコーピオだと!」
 ヒイロが彼にしては珍しく焦りの声を出した。スコーピオは、かつて彼が倒
したはずの機体だったからだ。
「恐らく、予備パーツを元に組み立てたのだろうが……あれがいるとはな」
 軽く唇を噛みしめながら、トロワが呟いた。あの機体は、一機だけでコロニ
ーすら破壊できるだけの力を持った強大強力なモビルスーツだ。前回は、モビ
ルスーツパイロットとしては何の取り柄も才能もない狂信者が乗っていたから、
何とか早期に倒すことが出来たが……
「異世界の人間といっても、英雄と呼ばれているほど男です。早く止めなけれ
ば、大変なことに」
「おい、スコーピオもそうだけど、ウルカヌスの様子がおかしいぞ!」
 デュオの叫びに、一同がモニターを確認する。見れば、ウルカヌスが突如急
速前進を始めたのだ。
「まさか、あれを地球に落とすつもりか?」
 険しい目つきで五飛が問いかける。その問いに対する答えを、誰もが口にす
るのを拒んでいた。
 どちらにしろ、止めなくてはいけないのは事実だが。
「スコーピオを破壊して、ウルカヌスも止める。それしか方法はない」
 ヒイロが機体をウルカヌスへと飛ばし、残る機体もそれにならった。その姿
を、遠くからアスランが確認する。

「来たか、異世界の邪魔者どもが!」
 アスランの叫びに呼応するかのように、ウルカヌスのハッチから二十機ほど
の機体が飛び出してきた。
「おい、ビルゴⅡは全部出払ったんじゃなかったのかよ!?」
 驚きの声を上げるデュオだが、機影を確認したカトルが愕然とした。
「あれはビルゴⅡじゃない……ビルゴⅢ、ビルゴの最終形態です!」
 切り札は最後の最後まで取っておく。古典的な戦術を、アスランは守ったに
過ぎない。だが、この局面にあってその効果は絶大であると言わざるを得ない。
さすがのガンダムチームも、これを突破するのは簡単ではないのだ。
「常に相手の先手を打ち、翻弄する。それが俺の、アスラン・ザラの戦術だ!」
 ビルゴⅢで倒せるとは思えないが、時間を稼げればそれでいい。弱ったとこ
ろを自分で倒すのも良いし、その前にウルカヌスが地球へ落ちれば、こちらの
勝利だ。
「勝利は俺の手の中にある……最後の勝者は、俺なんだ!」
 シンに負けたがどうした、たった一度の敗北、いくらだって挽回は出来る。
何回負けようとも、最後の時点で勝っていれば問題はない。

238:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:36:07
「ならば、その手ごと貴様の勝利を斬り落としてやろう」
 声は、アスランの背後から響いてきた。
 華麗で、優雅とさえ思うその声に、アスランは機体を振り向かせた。
 目に映るのは、青く輝き、翼を広げる機体。
「ロッシェ・ナトゥーノか」
「そうだ。アスラン・ザラ、お前を殺しに来た」
 アクエリアスは右手に一本のビームサーベルを持っていた。ウイングゼロの
予備であり、出力はリーオータイプのそれと桁違いだった。その剣先を、真っ
直ぐとアスランの乗るスコーピオへと突きつける。
「何故だ……何故、異世界の人間が俺の邪魔をするんだ」
「なに?」
「お前らにとって、この世界など何の関わり合いもない、こんな世界がどうな
ろうと知ったことではないはずだ! なのに何故、命を賭けてまで戦いを挑ん
でくる!?」
 彼らにとって、この世界が許せないものだからなのか? 価値観の差違か、
それとも主義主張の違いか。だが、どんな理由にしても異世界の人間である彼
らが、ロッシェが自分を否定し、世界を否定することな出来ないはずだ。
 そんな資格、あるわけが……
「確かに、私にはこの世界を否定する理由も、権利も、持ち合わせてなどいな
い。お前の言うとおり、心の中ではどうなろうと構わないとさえ、思っている
のかも知れない」
「だったら、何故お前は俺の前に立ちはだかり、剣を向ける!」
 邪魔をするな。邪魔をしないでくれ。
 後少し、後少しで夢が、覇業が達成する目前なんだ!
「しかし、私にはお前と戦うだけの確かな理由が三つある」
「理由だと……」
「そうだ、私が騎士として、男として貴様に剣を向けるだけの理由だ!」
 それは一体、なんだ。俺はこの男に、何をしたというんだ?
 呆然と、そして唖然とするアスランは、さらに愕然とする羽目になる。
「お前は私の友人、ハイネ・ヴェステンフルスを殺した!」
「ハイネ……?」
 アスランにとっては既に懐かしさすら感じる名前が、ロッシェの口から出さ
れた。
「私に手袋を投げ刃を突きつけてきたのもお前で、そして……」
 そして、最後に―
「私が愛する少女、ミーア・キャンベルに涙を流させた! 貴様はそれだけで
万死に値する! 故にアスラン・ザラ」
 アクエリアスが、ビームサーベルの剣先を向ける。
「私は貴様を倒す! 誇りと、矜恃と、私を騎士とする全てをかけて! 貴様
を倒す!」

 言葉に、アスランは圧倒されそうになった。強い口調で叫び出された言葉は、
アスランの鼓膜を衝撃波のように打った。
「な、なんだそれは! お前は、お前は私怨で俺と戦おうというのか!?」
 ロッシェがアスランに刃を向け、一騎打ちの決闘を申し込む理由。それは、
ハイネの死と自身のプライド、そして愛する少女のためというアスランにして
みればどうでも良い、ロッシェの個人的な恨みに他ならなかった。

239:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:37:20
「だからこそ、私はこの世界で貴様と戦うことが出来る!」
 主義でも主張でもなく、まして思想ですらない私怨だからこそ、異世界の人
間であるロッシェはアスランに剣を突きつけることが出来る。
「貴様が世界征服を仕様が、覇業を成し遂げようとしったことか! ハイネの
無念を晴らし、ミーアに涙を流させた代償を貰い受ける。それだけだ!」
「ふざけるな! そんな下らない理由で、この俺がやられてたまるか!」
 二機の、大きさが全く違うモビルスーツが激突した。ドーバーガンを撃ち放
つアクエリアスだが、A.S.プラネイトディフェンサーを装備するスコーピオは
これを完全に防御し、ディフェンサーごとアクエリアスに体当たりをした。巨
大な猛牛の突撃にも似たタックルに、パワーのないアクエリアスが吹き飛ばさ
れる。A.S.プラネイトディフェンサーはメリクリウスに装備されていたものよ
りも遥に強化、大型化された鉄壁を超える防御壁だった。
「力こそパワーというわけか。技も性能も必要としない、純粋な力……」
 あるいはガンダム以上とも思われるスコーピオであるが、ロッシェは逃げも
隠れもしなかった。
「目の前にいるのが敵ならば、斬り倒すだけだ。私はそうやって生きてきた」
 別に、ロッシェはアスランのことが嫌いなわけじゃない。恨んではいるが、
嫌いになるほど相手のことをよく知らないし、あるいは出会い方さえ違えば、
こうなっていなかったとさえ思う。
 だが、現実はそうはならなかった。
 ロッシェはアスランを倒す。倒して、心に区切りをつけなければ行けない。
「……お前は俺の前に立ちはだかった壁で、相容れぬ存在だ。ならば、斬り裂
いてでも俺は前に進む! 俺の覇道を!」
 二刀のビームベイオネットサーベルをスコーピオが展開する。ガンダムタイ
プでさえも一撃で両断する高出力のビームサーベルである。
「そうなこなくては、戦い甲斐がないないというものだ!」
 互いに、全ては前に歩き、進むために。
 二人は戦い、決着を付けなくてはいけない。負けなど許されず、どちらも自
分が負けるなどと思っていない。
「ハァァァァァァァァァアッ!!!」
 アクエリアスのビームサーベルが、スコーピオの脳天へと振り下ろされる。
しかし、二刀のビームベイオネットサーベルはその一撃を弾き返した。
「柔いっ!」
 素早く斬り込まれた反撃は、アクエリアスのドーバーガンを斬り飛ばした。
ロッシェは使い物にならなくなった砲身をスコーピオに叩き付けるように切り
離す。
 ビームベイオネットライフルが連射され、アクエリアスはシールド防御をし
ながら距離を取った。
「逃がすかぁっ!」
 スコーピオの機体が開き、三十発ものマイクロミサイルがアクエリアスへと
迫る。
「逃げる? 誰が逃げるものか!」
 アクエリアスの両腕から放たれたヒートロッドが縦横無尽に動き、ミサイル
の全てを叩き落とす。ロッシェにすら出来るかどうかわからなかった、既に神
技に近い芸当だった。

240:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:38:32
「そこだ!」
 ヒートロッドが伸び、スコーピオのコクピットを一直線に狙う。メリクリウ
スシュイバンを貫き、イザーク・ジュールを死に至らしめた一撃。
「甘い!」
 スコーピオは右腕のクローでヒートロッドを掴み取ると、ビームベイオネッ
トでそれを引きちぎった。
「やるな! だが、しかし!」
 もう一対のヒートロッドが、スコーピオに振りかざされた。アスランはA.S.
プラネイトディフェンサーでこれを弾き返そうとする。赤熱するヒートパワー
が、鉄壁を超える防御を揺るがした。
「さすがに、固いな」
 機体を急加速させ、懐に入り込もうとするロッシェ。アスランはそれを見越
して、敢えて果敢に突撃をする。パワーならばスコーピオの方が圧倒的に上で
あり、勢いで押し切ることが可能なのだ。
「お前に俺は倒せない!」
 二刀のサーベルで斬り込まれ、防御したのにもかかわらずアクエリアスの機
体はウルカヌスの外壁へと叩き付けられた。そこに追い打ちを掛けるように、
マイクロミサイルが撃ち込まれていく。外壁とともに機体を砕かれるような真
似を、ロッシェはしなかった。咄嗟に機体を滑らせ、攻撃を避けたのだ。
「トドメだっ!!!」
 スコーピオが突っ込んでくる。ロッシェは機体を翻すと、闘牛士が牡牛の突
撃を避けるかのようにスコーピオの突撃を回避した。外壁へと衝突したスコー
ピオは、自身のミサイル攻撃で脆くなった外壁を砕いてウルカヌス内部へと突
入してしまう。
「あんな程度で死ぬ奴ではないな……良いだろう、ウルカヌスの中で続きとい
こうではないか」
 ロッシェは呟くと、アクエリアスもウルカヌスへと突入させた。


「いかん、このままウルカヌスが地球へ落下でもしたら―」
 ウルカヌスの落下速度とコースを計算していたハワードは、その目標地点が
紛れもなく地球であること知って焦りを隠せないでいた。
「ハワード、仮にあれが落ちれば」
「地球は滅亡する。あれに積んでいる大型の核融合炉もさることながら、あの
質量の衛星が落ちるだけで、地球は終わりだ」
 オデルの問いに、絶望的な答えを返すハワード。
「オデル、お前は再出撃してガンダムチームの支援をしてくれ。あれを破壊す
るには、ガンダムの力が必要だ」
「わかりました」
「それと、ロッシェは今どこに―」
 その時オペレーターから、ロッシェのアクエリアスの現在位置を知らせる報
告が届いた。
「ウルカヌス内部だと!?」
「スコーピオの反応も内部に……恐らく、戦っているのではないかと」
「馬鹿が、もし奴が早急にスコーピオを倒せなければ」
 ハワードはそこで言い淀んだ。側にミーアがいることを思いだしたからだ。
ミーアは、真剣な表情でハワードに問うた。

241:通常の名無しさんの3倍
08/05/18 23:38:52
支援

242:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:39:48
「倒せなかったら、どうなるんですか?」
「最悪、あいつが中にいようが、ウルカヌスを破壊することになる」
 事実を前に、ミーアは取り乱したりも、非難したりもしなかった。
 ただ一言、彼女の知りうる事実を告げる。
「なら、大丈夫です。ロッシェは勝ちます、絶対に」

 ウルカヌスの内部において、スコーピオとアクエリアスの戦闘が激化しつつ
あった。狭い通路を破壊しながら戦闘を続ける二機は、周りに人がいようと何
あろうと一切関係ないと言わんばかりに、ただひたすらに刃を交えていた。
 アスランのスコーピオにも、ゼロシステムが搭載されている。彼はイザーク
・ジュールのようにシステムに飲み込まれることもなければ、ディアッカ・エ
ルスマンのようにシステムを拒絶し、排除されることもなかった。システムは、
ただひたすらに彼に勝利を見せつけていた。
「でぇやぁっ!」
 スコーピオの左腕がアクエリアスへと叩き込まれる。アクエリアスはヒート
ロッドを伸ばし、その左腕を巻き付けると攻撃の軌道を変えた。
「そしてっ!」
 ヒートートパワーが炸裂し、A.S.プラネイトディフェンサーごと左腕が切断
される。
「ちくしょうぉっ!」
 ビームベイオネットサーベルを振るい、ヒートロッドを斬り裂くアスラン。
腕の一本ぐらい、くれてやる!
「やってくれたな!」
 アクエリアスがスコーピオに飛びかかり、メインカメラを殴り付けた。歪む
メインカメラをものともせず、スコーピオはアクエリアスを床に叩き付けると、
その機体を踏みつけた。
「潰れろぉっ!」
 巨体の重量がアクエリアスへとのし掛かる。ロッシェは機体の全出力を出し
切る勢いでこれを支え、払いのけた。
 即座に体勢を立て直す二機は、互いにビームサーベルを構えて睨み合う。
「お前には負けない……異世界の人間に、この俺が、アスラン・ザラが負ける
わけにはいかない。俺は勝って、今度こそ英雄として」
 スコーピオがビームサーベルを振り上げる。
「貴様に勝つ……異世界だろうと、どこであろうと、私は常に騎士として、一
人の人間として」
 アクエリアスが、ビームサーベルを突き出す。

『生きる資格が欲しい!』

 二人が最後の激突をする瞬間、
「PXシステム―起動!」
 アクエリアスに急遽搭載されたPXシステムが、起動した。
 PXシステムは、ゼロシステムと違いパイロットの機体シンクロ率を底上げし
て瞬間的にフルパワーを出させるシステムといわれている。反応速度、反射速
度が格段に上がり、スポーツ選手で言うところの「周囲がゆっくりと見える」
といった現象に近い速さを得ることが出来る。

243:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:41:23
 逆にゼロシステムは、システムが人体の脳その物を刺激し能力を強化し、人
体限界を超えた稼動を行わせることが出来る。さらに、システムが収集した情
報を分析し、「確実に勝利するため」の予測や指示を与え、相手の攻撃が繰り
出される前に倒すことが出来る。
 つまり、この異なるシステムを搭載した二機の戦いは、極端に言えばどちら
が速く、先に攻撃を仕掛けるかで決まっていた。

「正面から斬り裂く!」
 ビームサーベルを振り上げ、スコーピオが突撃する。
「真っ向から貫く!」
 ビームサーベルを突き出し、アクエリアスが突撃する。

 アクエリアスがスコーピオの、ゼロの速度を超えたとき、勝負はついた。
 ゼロシステムが導き出した予測を元に、スコーピオがビームベイオネットサ
ーベルで敵機を叩き斬るよりも速く、アクエリアスのビームサーベルは敵機の
左足を貫いていた。そして、えぐり取るように足を斬り飛ばした。
 ゼロシステムよりも僅かに、PXシステム方が早かった。システムによって強
化されたアスランと、システムによって内なる力を全て出し切ったロッシェ。
崩れ落ちる機体の中で、アスランは今度こそ、自身の敗北を悟っていた。
「一思いに……殺せ」
 片足を切り飛ばされただけである。戦おうと思えば、まだ戦えるはずだった。
しかし、アスランは戦意を完全に喪失していた。油断も余裕も何もない、シン
の時と同じ全身全霊を込めた一撃だった。それを、二度も破られたのだ。
「そうだな。そうさせて貰う」
 私怨で戦っていると言い切るロッシェは、シンのように先のことも後のこと
も考えていない。ビームサーベルを手に、スコーピオへと歩み寄っていく。
 だが…………
「通信? 誰だ、一体」
 しつこく通信を警告する音が鳴っているのに今更気付いたロッシェは、回線
を繋いだ。
『ロッシェか、お前今どこにいる』
 オデルだった。かなり緊迫した声である。
「ウルカヌスの中だ。今、アスランを倒した」
『……そうか。なら脱出ついでに、ウルカヌスの核融合炉を破壊してくれない
か?』
「核融合炉? なんのことだ」
『中にいるお前はわからないかも知れないが、ウルカヌスは今、地球へ落下す
る軌道を取っているんだ。外からの砲撃を行う予定だが、念のために核融合炉
も破壊してくれ』
 そういう理由か。ロッシェは眼前に横たわるスコーピオを見る。惨めにも地
面に突っ伏して、動くことすらしようとしない。
「用が出来た。悪いが私はここの核融合炉を破壊しに行く」
「俺を……殺さないのか」
「お前は倒した。このまま弱者として、負け犬としてウルカヌスとともに爆死
でもするが良いさ」
 ロッシェは言い捨てると、そのまま核融合炉室へと向けて機体を飛ばしてい
った。

244:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:42:20
「負け犬か……ハハ、俺は負け犬か」
 乾いた声で、アスランは笑い出した。空笑いだった。


 ウルカヌスの外ではガンダムチームが勢揃いして、ツインバスターライフル
を構えている。ウイングゼロの持つそれに、ガンダム五体分の力を合わせて撃
つことで、ウルカヌスを跡形もなく消し去ろうというのだ。だが、それをする
にはロッシェが核融合炉を破壊し、砲撃の前に脱出する必要がある。
 タイムリミットは近い。
「本当にモビルスーツの砲撃程度であれが破壊できるんでしょうか」
 ミネルバにおいて、アーサーが不安そうな声を上げていた。問われたタリア
にしてみても、彼と同じ気持ちであった。
「信じるしかないわ。彼らが失敗すれば、地球はお終いよ。もしもの時のこと
を考えて、ミネルバも援護射撃の用意よ」
 ザフト艦隊も世界統一国家軍の艦隊も、ともに一斉砲撃の準備は出来ている。
砲撃で砕けるとは思っていないが、今からメテオブレイカーの用意も出来ない
し、それしか方法がないのだ。
 パイロットたちにも出撃準備を告げる命令が出ていたが、レイを除いてミネ
ルバの機体はとても出撃できる状況ではなかった。特にルナマリアが酷いもの
で、インパルスが大破したばかりかコクピット内で軽傷を負って、スウェンに
付き添われて医務室に行った。
「このぐらいどうってことないわよ。インパルスなら別パーツがあるんだから、
出撃ぐらい」
「砲戦仕様のパーツがない以上、無理はするな。シンとレイに任せておけばい
い」
 といっても、デスティニーにしたところでビーム砲を破壊されてしまったの
でほとんど出来ることはなかった。ただ、外でことの成り行きを見守るしかな
かった。
「ハァ……まあ仕方ないとは思うけど」
 ルナマリアはため息付きながら、医務室を見回す。
 そして、違和感に気付き始める。
「あれ……?」
 その声に、スウェンも医務室内に目を向ける。彼は、すぐに気付いた。ルナ
マリアが起ち上がり、医務室の隅々を確認する。
「ねぇ、私の妹は、メイリンはどこ?」


 アクエリアスが、ウルカヌスの核融合炉の前に降り立った。
「こいつを破壊すればいいわけか……しかし、どうやって破壊したものかな」
 射撃武器の類は全て破壊されてしまったし、となれば少し危険だがビームサ
ーベルを突き刺すしか……
「チッ、こんな時に!」
 唐突に、アクエリアスが持つビームサーベルの輝きが失われた。無理にビー
ム出力にジェネレーターを切り替えたせいか、消耗が激しかったようだ。アク
エリアスにはバルカン砲などの小火器はない。

245:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:43:19
「残すは、自爆装置か」
 もしくは、ここから脱出するという手もある。核融合炉を破壊するのは、あ
くまで安全を期してのことだ。無理に破壊する必要は、ないはずだ。
「だが、万が一が起こったとき、私にその責任は取れないからな」
 ロッシェは、彼の帰りを待っていてくれるであろう少女の顔を思い浮かべる。
あぁ、残念ながら彼女の元へ帰ることが、出来そうにない。
「異世界の騎士ロッシェ・ナトゥーノ、ここに命を散らす、か。墓碑銘として
はイマイチだな」
 苦笑し、自爆コードを入力するためにロッシェが手を伸ばしたときである。
突如後方からスコーピオが爆進をしてきた。壁に機体を激突させながら、危な
っかしい勢いで核融合炉の前に現れる。
「アスラン……貴様、まだ」
 ハッキリ言って不味い状況である。今のアクエリアスは丸腰で、ロッシェに
出来ることと言えば自爆して核融合炉の爆発に巻き込むことぐらいしかできな
い。だが、仕留め損なえば。手負いとはいえ、スコーピオが強力なモビルスー
ツであることに変わりはない。もし、プリベンター巡洋艦辺りに自爆特攻でも
敢行されたりしたら……
「ロッシェ・ナトゥーノ、俺は負け犬にはならない」
 意外な言葉が、アスランの口から漏れてきた。
「貴様、そんなことを言うためにわざわざ来たのか? 動けるのなら、脱出す
れば良かったものを」
 呆れたように言うロッシェだが、アスランはそれを振り払った。
「俺は弱者じゃない。俺は強者だ! 覇者だ! 英雄なんだ!」
 スコーピオが機体を引きずりながら、ビームベイオネットサーベルをスコー
ピオが出現させる。思わず身構えるアクエリアスだが、既にアスランにはロッ
シェの姿など見えていない。
「俺は、強くなってみせる。誰よりも強く、どこまで強く! 俺は死なない、
俺は勝利者なのだから!」


 機体を飛ばして、スコーピオが核融合炉にビームベイオネットサーベルを突
き立てた。ロッシェが半ば本気で慌てて機体を飛ばし、脱出する。
 爆発が起こった。核融合炉が爆発し、スコーピオごと核融合炉室が崩壊して
いく。しかし、さすがはスコーピオ、ガンダニュウム合金の塊といったところ
か、この大爆発を受けても尚、ギリギリコクピットは無事であった。
 もっとも、パイロットのアスランは瀕死とも言うべき傷を負っていたが。
「どこで、俺は間違えたんだ。一体、どうして」
 消えゆく意識の中で、アスランは呟き続ける。
 引きずり出るようにコクピットから落ちて、アスランはウルカヌスの地面に
その身体を横たえた。身体が、動かない。
「死ぬのか……俺は」
 ふいに、アスランの目の前が暗くなった。死が訪れたのか? 違う、目の前
に影が出来たのだ。誰かが、彼の前に立っている。
 一体、誰が―
「メイリン…………?」
 信じられない光景が、居るはずのない人間が、そこにいた。メイリン・ホー
クが、彼を裏切り、彼が切り捨てた少女が、そこにいた。

246:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:44:53
「アスラン、あなたはもう少しだけ優しい人になるべきだった」
 メイリンは、アスランの前に膝をつくと彼の身体を抱きかかえた。メイリン
の身体は、暖かかった。
「あなたが周囲に対して、少しでも優しく振る舞えていたら、あなたはもっと
多くの物を得られたんだと思う」
「優しさ……?」
「だって、優しくもない人のために誰も戦いたいなんて思わないもの」
 ならば何故、どうして君は戻ってきた―?
 アスランの問いは口にこそ出なかったが、メイリンにはハッキリと伝わって
いた。
「好きだからですよ。私は、あなたのことが好きなんです。あなたが私を嫌い
でも、私はあなたに恋して、愛して……あなた一人をここで死なせることなん
て、あたしには出来ません」
 思えば、ちゃんとした告白をメイリンはまだしていなかった。こんな場所で、
こんな状況で、メイリン・ホークは、アスラン・ザラに愛の告白をしていた。
でも、これを逃せば、もう一生出来そうになかった。
「メイリン、君は馬鹿な女だな……」
「良く言われます。お姉ちゃんと違って、私には何の取り柄も才能もありませ
んでしたから」
 笑うメイリンの笑顔は、どこまでも輝いて見えた。
 アスランは自分の頬が生温くなるのを感じていた。彼は、いつの間にか涙を
流していた。
「俺も、ただの馬鹿だよ。君もそう思うだろう、メイリン……」
 
 
「もう待てない。バスターライフルを発射するぞ」
 ヒイロが非常な決断を下したとき、ミーアが抗議の声を上げた。
『あと五分、五分で良いから待って!』
「無理だ、あと45秒でレッドラインを超える。それ以上は外から砕いても破片
が地球に落ちる恐れがある」
『そんな……!』
 通信を切った。ヒイロだって出来れば待ってやりたいが、ロッシェ一人のた
めに地球を危機に晒すことは、やはり出来ない。
「恨みたければ恨め。恨まれることには、なれているつもりだ」
 呟くと、ヒイロはモニターに映る他のパイロットたちに目配せをする。彼ら
もまた無表情だったり、心苦しそうな顔をしているが、辞めようというものは
いなかった。
「―発射!」
 ツインバスターライフルが放たれた。ガンダム五体分のパワー込めたバスタ
ーの砲火が、ウルカヌスへと直撃した。誰もが目を見張る中、その破壊力を持
ってウルカヌスを砕き散らしていく。
 レイクイエムやジェネシスの比ではない。一度見れば、一生目に焼き付いて
離れないであろう光が戦場を照らした。
「終戦の祝砲……かな」
 デスティニーのコクピットの中で、シンが呟いた。

247:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:47:18
 これで、全てが終わる。長かった、シンにとって本当に長かった戦いが、今
まさに終わろうとしてる。
「あれは?」
 爆発し砕け散るウルカヌスの中から、一機のモビルスーツが飛び出してきた。
青い翼を広げて、光の粒子を散らしながら漆黒の宇宙に舞うその機体は……
「ロッシェ、ロッシェの機体よ!」
 ミーアが声を上げた。傷つき、ボロボロになりながらも、ロッシェ・ナトゥ
ーノは生きていた。
 彼は、コクピットの中で静かに息を吐いた。
 戦いは終わった。ユニウスセブンにおけるテロ事件から始まり、インフィニ
ットジャスティスの蜂起へと発展した全ての戦争が、ここに終結した。誰が勝
者でも、誰が敗者でも構わない。そんなもの、後から決めたって良いはずだ。
 だが、今は…………
「ハイネ、終わったよ。私は、勝ったぞ」
 今は亡き友人に、哀悼の念を捧げよう。

                                つづく


248:運命の歌姫 ◆1gwURfmbQU
08/05/18 23:49:48
第69話です。
分割するべき量だと判ってはいるんですが、
70話完結という数字の区切りの良さ取りました。

さて、メイリン・ホークのラストを考えていたとき、
彼女をどうするかは最後まで悩んでました。
というのも、思いついた構図がまんま種死ラストの
デュランダルとタリアだったんですよね……
まあ、それはそれでいいかなと思って決断しましたが。

本編は次回で最終回ですが、規制が廃止されたのか
今回はスムーズに投下が出来ました。
最終回はこれから書きます。
後、最終回のあとがきで今後についても書きます。
では、多分週末になると思いますが、次回で最終回、
皆さんよろしくお願いします。  

249:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 00:14:28
乙&GJ!
最初アムロとシャアがいたようだが気にしないぜw

250:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 00:38:58

GJ!

ただ……、どーもなー、アスランやらサトーの言葉が一切合財子供の駄々や逆恨みにしか聞こえないから
対手であるシンやロッシュまで小さく見える。

251:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 00:50:10
>にしか聞こえないから

つーか実際その通りだろ?

252:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 01:26:33
GJでした。後1話頑張って下さい。
シンがまたジュドーやアムロになった気がしたが何ともなかったぜ

253:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 02:51:09
GJ!
ロッシェが男前過ぎてたまらんです(*´Д`)

254:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 03:43:16
>>250
人間なんてそんなもんだよ

255:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 10:45:17
っていうか、引用し過ぎなんだよ。過去のガンダム名台詞から
だから、なんかやたらと戦いが安っぽく感じる
あーゆーのは本当に時々やるからいいのに…

256:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 12:27:32
>>255
まったくもってその通り。

257:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 14:25:51
>>248
誤字発見
>ヒートートパワーが炸裂し、

258:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 14:34:24
>だったら、俺を倒してそれを証明してみろ! シン・アスカ!」

ボンボン版のシン?

259:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 17:39:33
最後に融合炉破壊する意味がわからん
ゼクスとアスランじゃ動機が違うのになんで同じ行動になるんだ?
シチュエーション当てはめる為にキャラの性格を無視してる

260:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 20:30:30
融合炉破壊→爆破で道連れ→こちらも死ぬけど勝ち。

わかりにくいけどウルカヌスを止めるのではなく、
敵を倒すため、負け犬にならないため暴挙に出たんだと。

261:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 21:07:32
その行動自体が負け犬の証だと思うが。
つーか、アスランって自分が何で支持されて、何で力で圧倒できたかを最後まで分かって無かったよ。
全部借り物で「アスラン・ザラ」という人間には何にも無いということを自覚してなかった。

262:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 21:20:27
戦略的にはウルカヌス落としたほうが勝ちだろ

263:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 21:46:28
こけにされたから一矢報いたかったんだよ

264:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 22:37:17
まあ、アスランだし
キラと同類だし
土壇場でトチ狂ってもおかしくない

265:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 22:52:21
まあ、何がイヤかって最後の最後までWが持って行った所かな
Wキャラに対して種キャラが一矢報いた描写なんて殆どないの

266:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 23:12:19
まあ話の構造上、Wキャラが常に上から目線だったのは確かだな
本当に必死に戦って傷ついてるのは敵も味方も種キャラばかりで、Wキャラが全くもって他人事(事実そうなんだが)ってのがどうにも…
そのくせ肝心なところで美味しいとこ持ってくのは大抵Wキャラってのが全体通して見た、個人的な印象

267:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 23:16:19
ごひを敵にするとか工夫するべきだったな

268:通常の名無しさんの3倍
08/05/19 23:17:19
終わりに近くなってきてクレーマーが現れて盛り上がってまいりました

269:通常の名無しさんの3倍
08/05/20 00:01:36
戦い自体はシンvsアスランで終わってた。
ロッシェはおまけみたいなものだし、アスランのあれは悪あがき。
パワーバランスを考えるとW勢が苦しみ、傷つくってのが難しいからなぁ。



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