08/06/18 23:19:02
携帯用バイク―全高四七センチ、全長八〇センチ、重量二〇キロ。搭乗者に合わせて百分の一ミリ単位でシートとレバーが微細に角度を変え、風防を務める半楕円形のフードがスライドしてマユの目の前に展開する。
搭載された小型バッテリーによって時速八〇キロで三六時間の連続走行を可能とし、最大時速三二〇キロを誇るミニ・モンスターだ。バッテリーのみで稼働する為排気音や排煙が発生しない点も注目すべきだろう。
マユの体格に相応しい鋼の暴れ馬は、乗り手を時速七〇キロに引き込んで勢いよくモーターを回転させて発進する。
マユは、望遠モードのツールが告げる状況を理解し、やばっと声を洩らす。ヴァルデマール金貨の持ち主が逃げ出したのはガイスターの襲来もあるが、それとは別の賊に狙われたからであった。
しかもあの慌ただしい逃げっぷりからして、金貨を手に入れる寸前までいっているらしい。マユはハンドルを握りしめてミニバイクを時速二百キロに加速させた。
「駆けよ、トロンベェ!」
遊園地のジェットコースターにでも乗っているようなノリで、マユは独逸語で「竜巻」を意味する言葉を口にして、一気にリムジンとその護衛の車両と、それを追う一台のジープ目掛けてミニバイクの機首を巡らした。
ジープとリムジンの護衛車両との間で盛大な銃火が応酬されているのを見て、マユは右太もものホルスターに収納した銃を意識した。
十六連発のオートマチックタイプの麻酔銃には、地球上のあらゆる生物に効果のある特製麻酔弾『スリーピング・ビューティー』を装填済みだ。
対人戦闘を想定したボディ・アーマーの分厚い生地も、問答無用で貫く特殊加工したタングステンの針から体内に投与される麻酔薬は、一切の副作用なしで安らかな眠りを十二時間ほど約束する。
ど、と地面に着地する衝撃は驚くほど少なく、マユは襟元にある通信機でサンダルフォンの艦長に連絡を入れた。
“自分達とは別の賊、たぶんトレジャー・ハンターがお宝を狙って持ち主を追っている”、と。
マユからの連絡を、艦長はそのままダイノガイストにつなげ、新たな指示を待った。マユには甘い傾向のあるダイノガイストがどう言った指示を出すか、多少興味はあった。
アガメムノン級部分の格納庫で、歪な玉座にかけたダイノガイストは、意外にもマユにそのまま金貨を追うように指示を出した。
『マユにはそのまま追わせろ。シンとアルダも傭兵共を黙らせるのだ』
「それで本当によろしいので?」
これは艦橋の艦長だ。万が一を考えてマユの援護を出さなくてよいのか? と暗に聞いている。
『構わん。今のマユならその程度はこなせる。追っているトレジャー・ハンターが例の奴らでなければ取り逃がしはせん』
「了解」
マユの事を信用しているのか、それとも失敗してもどうでもよいと考えているのか、艦長はモニターの向こうのダイノガイストをしばし見つめたが、やがて通信を切った。
一秒前までダイノガイストの恐竜顔が映っていたモニターを見てから、やがて艦長は小さく笑った。それを、隣のコンソールに下半身を埋めてサポート中のテレビロボが、画面に『?』マークを浮かべた。
なぜ笑ったのか? という意味だ。
「いや、なんなんだかんだ言って、あの娘の事が気になるのだなと思ってな」
艦長は見たのだ。ダイノガイストの尻尾が上下に振られて床を叩いているのを。それは苛立たしさを表す動作と言うよりは、マユの事を心配して無意識のうちに行った動作の様に思えた。
それに気付いてなんだか微笑ましい気持ちになり、つい笑みを浮かべてしまったのだ。
「思ったより宇宙海賊も悪くなかったな」
不意に、艦長―ナタル・バジルールにそう言われたテレビロボは、当たり前だ、とばかりに右の触手を左右に振った。
さて、現実の方で後問題なのは、宝を追っているのが『例の奴ら』かどうかと言う事だった。
「がんばれ、マユ」
艦長は、一人宝を追うマユに、せめてもの声援を送った。
―続く
347:通常の名無しさんの3倍
08/06/18 23:19:11
支援
348:660 ◆nZAjIeoIZw
08/06/18 23:20:47
というわけで今回ここまでです。ん~ちょっと短いかな。でもなんだか十話で終わる予定がもう覆りそうな予感が……。
別スレで投下させていただいているのと同じ匂いがしてきています。『長くなっちゃった症候群』に罹ってそうだな。
ではでは、ご感想・ご指摘・ご助言もろもろお待ちしております。楽しんでいただけたなら幸いでした。
ゲルズゲー+ザムザザーとかのキワモノ合体なら考えてました。どうやって合体するのか全くイメージできませんでしたけれども。
349:通常の名無しさんの3倍
08/06/18 23:30:11
マユはそのうち伝説の厨具を探しに中国へ飛ぶと見た!
350:通常の名無しさんの3倍
08/06/18 23:57:17
投下乙であります
この時期だとMSサイズの刀を鍛てるジャンク屋は火星ですかね?
マユ用の2種類の大きさの包丁を鍛え上げるのには最適な人物なんでしょうが・・・
351:通常の名無しさんの3倍
08/06/19 01:40:04
そういや種死初期の5Gの合体ロボの絵あったな、後ジオンMA合体絵(頭部がザクレロ)
なにはともあれGJ
352:通常の名無しさんの3倍
08/06/19 23:17:29
GJでございます。というか、マユがある意味すごいw
そして『例の奴ら』とは誰なのか!
ついでにトレーダー(二代目)とか出てこないかちょっと楽しみだったりします
353:通常の名無しさんの3倍
08/06/19 23:43:02
果てしないGJを送るぜ!!
後、一カ所ゲイツのはずがシグーになってますよ
354:通常の名無しさんの3倍
08/06/19 23:49:08
うおぉ、読んでてドキドキしてくるのは久しぶりだ!
作者様、GJです!!
355:通常の名無しさんの3倍
08/06/20 10:53:42
新作オツかれっす。
ダイノガイスト様メシ食えるんだ。いや、分子変換か。それ以上に、
味わかるのかなー。すげぇなエイリアンテクノロジー。
ダイノガイスト様の食費とか、食料の量とか色々大変そうだなー。
船には、ほんの数日分ぐらいしか乗らないんじゃないだろうか。
食わない、という選択肢をとらんかぎり。
最近気がつきましたが、総帥は物に対する描写を多くやりますね。
今回なら食い物とマユのバイク。前回なら宝物。参考になります。
356:通常の名無しさんの3倍
08/06/20 15:12:09
なぜか
>アルダは、その身で知るダイノガイストの戦闘能力を
のところで、
ダイノガイスト様に切り落とされるドラグーンが普通に浮かんだ。
357:通常の名無しさんの3倍
08/06/20 20:17:33
『例の奴ら』;実写版Transformers。ジープが変形。
358:通常の名無しさんの3倍
08/06/20 21:14:17
『例の奴ら』=ダイ・ヤガシラ&ユキ・ダザイ
……総帥だけに普通にあり得そうな罠。
359:通常の名無しさんの3倍
08/06/21 00:19:32
>>355
おそらく基地には巨大な野菜や合成お肉を作るエイリアンテクノロジー製の食料工場があるんだ
360:通常の名無しさんの3倍
08/06/21 01:26:59
>>359
自給自足か。なるほど、確かにあの物量は足がつく。外部に秘密基地の
場所を知られないためにも必要だ。おそらく、調味料の生産工場も
あるに違いない。マヨネーズは自家製だ。マユがあのパワーローダーで
作ってんだ。すごいぞ新生ガイスター。主に食料事情的な意味で。
361:通常の名無しさんの3倍
08/06/21 01:36:31
たしかダイノ様酒飲んでいなかった?部下は栄養ドリンクガブガブ飲んでいたような
362:通常の名無しさんの3倍
08/06/21 01:38:49
なんか部下が奪ってきたタバコ吸ってむせまくってるようなシーンがあったような気が。
363:通常の名無しさんの3倍
08/06/21 17:34:05
>>362
部下は全員むせまくってたが、ダイノ様は煙草踏みつけて「価値無しか…」とぼやいていた
364:通常の名無しさんの3倍
08/06/21 19:39:10
サンダーガイストが酒呑んで酔っ払ってたのは覚えてるぜ
365:通常の名無しさんの3倍
08/06/22 02:35:52
えらく健康思考だな
366:通常の名無しさんの3倍
08/06/23 01:47:49
ダ・ガーンは鬱多かったな・・・Jデッカーは救いあったけど