08/02/02 02:33:03
「……ううん、気のせいだったみたい」
「そ、そうか」
アスラン、心の中でホッと一息。
しかし、こういうところはさすがにスーパーコーディネイターと言うべきか。
普段とは違う匂いを今のアスランから感じ取りかけたその勘、嗅覚は超人のそれである。
もっとも、能力はあれど研磨はしていないから、「おかしいかな? ううん気のせいか」で止まってしまうわけだが。
「それで、ラクスは話があると言っていたが?」
アスランはキラに椅子を勧めた。
それに従い、キラはそれに腰を下ろす。
「あ、そう、そのこと何だけどね」
「ん?」
「アスラン、昨日かその前でもいいんだけど、ヘンな夢を見なかった?」
「……夢?」
先ほどと違って、ここはアスランは平静だった。
何故なら、真エビデンスからキラの訪問の意味するところを教示されていたからだ。
「見たな、ヘンな夢なら」
「えっ、本当?」
そして、キラ・ヤマトを自分と同じようにこちら側に引き込む手段も。
何かフォースの暗黒面を説くダース・ベイダーみたいなアスランである。
「ああ、そして今も夢を見ている!」
アスランは立ち上がると、窓際に行きカーテンを引いた。
「えっ!?」
「キラ、お前も見ろ! 極上の夢を!」
カーテンの裾から、ひらりと影がひとつ飛び出すのをキラは見た。
いきなりの展開に虚を突かれた格好だが、
これこそが真エビデンスの立てた策略だった。
「はじめまして、ううん、また会ったねと言った方がいいかな、キラ・ヤマト!」
キラを洗脳(真エビデンス的には洗脳ではないし暗示でもないが、便宜上以降この言葉を主に使う)する方法は、基本的にアスランの時と同じ。
エビデンスのパワーが通じやすいように、相手の隙、それも大きな隙を作ることが必要だったわけだが、
そういった理由からこのように多少強引とも言える手段を真エビデンスは選んだのだ。
キラは何度も述べているように最高の人類であるスーパーコーディネイター、
つまり最も「神に近い人間」とも言えるわけで、アスランの時以上の力を注ぎこまねばならない、という理由もあった。
「さあ、ボクの目を見て!」
「くっ、な、なん……だ!?」
勝負は、キラが真エビデンスと目を合わせてしまった瞬間に決まってしまったと言えるかもしれない。
いかにキラの精神力が高かろうとも、不意をつかれてはたまったものではない。
「キラ・ヤマト……! もう君は、ボクのものだよ……!」
キラの視界が、真エビデンスの瞳から発せられる形容し難い光によって塗りつぶされていく。
「う……! ラ、ラクス……ッ!」
キラはパートナーの名前を口にした。
そして――それを最後に、キラはキラでなくなった。
次回に続くッガイ。
職場の配置が変わってそして年末からずっと忙しくて文章を頭でまとめてそしてパソコンに打ち込むだけの時間が取れませんガイ。
だけど頑張りますガイ。
>>408麻翁氏、一日も早い回復をお祈りしています。