スーパー戦隊 バトルロワイヤル Part3at SFX
スーパー戦隊 バトルロワイヤル Part3 - 暇つぶし2ch450: ◆8ttRQi9eks
09/01/15 01:42:54 NYRtQrqI0
爆発。
小規模なクレーターの中心で血まみれになって荒い息を吐くサンヨを悠然と見下ろしながら、
理央は最後通告を行った。
「貴様…制限中か……成る程、貴様の選択は正しかったぞ。そんな状態で俺と戦うことの愚かしさは分かっていたと見える…だが、敵に背を見せるなど仮にも四幻将の一角とは思えぬ無様な醜態…恥を知れ」
「ハァ…ハァ……ハァハァ……」
息も絶え絶えに、頭上から投げかけられる言葉に反論の一つもできずに。
立ち上がる力すら失せたのか、膝をついた格好は自然、相手に頭を垂れる構図となる。
「無様だな、サンヨ。今のお前など倒す価値もない…お前が持っている情報を全て俺に伝えろ。
ロンのこと、メレのこと…そして殺し合いに乗ったお前の新たな仲間の情報についてもな」
―理央の問いかけにシュリケンジャーは、ふっと笑みをこぼす。
獣にもそれ位の知恵はあったらしい。

「全てを話せば命だけは助けてやってもいい…そして、二度と俺とメレの前に姿を現すな」
理央は悠然と立ちつくしたままサンヨの答えを待った。
「ハァ…ハァ…全て話せば…ハァハァ…命だけは見逃してくれるのか…?」
絞り出した声に理央は僅かにうなずいてみせる。
「あぁ…」

「偉そうに…落魄した王の言うことかああああああああああーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」

自らの状態よりも自身のプライドを傷つけられたことにサンヨは逆上した。
彼とてロンの操り人形に過ぎないくせに。
高みから自分を見下ろし、あろうことか助けてやる、だと。
ロンがいなければ幻獣王にすらなれなかったものを。
飛び掛るかつての側近の姿に憐憫の情を覚えながら、理央は自らを循環する臨気の流れに再び働きかける。
――だが。


451: ◆8ttRQi9eks
09/01/15 01:44:44 NYRtQrqI0
力の反動であろうか。
臨気の鎧が理央の身体能力を活性化したことに呼応したか、
体内に打ち込まれた忌まわしい死神もまたその眼を開けることとなったのだ。
「ぐぅッ!?」
かつて経験したことのない激痛にリオはその場に膝をつく。
わずかに反応が遅れたことで本来ならば避けられたはずの、サンヨの横薙ぎの
力の反動であろうか。
臨気の鎧が理央の身体能力を活性化したことに呼応したか、
体内に打ち込まれた忌まわしい死神もまたその眼を開けることとなったのだ。


452: ◆8ttRQi9eks
09/01/15 01:45:21 NYRtQrqI0
「ぐぅッ!?」
かつて経験したことのない激痛にリオはその場に膝をつく。
わずかに反応が遅れたことで本来ならば避けられたはずの、サンヨの横薙ぎの
蹴りをまともに喰らった。
「―――…ッッ!!」
体重を乗せた思い蹴りにわき腹が軋む。
倒れ付した理央の傍らにサンヨの姿が近づく。
「ふざけるんじゃないヨ! 誰のおかげでここまで来れたと思ってるんだヨ!! 貴様なんて所詮はただの操り人形じゃないかヨ!!!!」
怒りにわれを忘れ、目の前の異変にも気づくことなく、サンヨは理央の首筋を持ち上げ地面へしたたかに打ちつけた。
「お前なんて…お前なんて……ただのロンの玩具ネ!!!!」


453:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:14:56 O/i5sauc0
最早、これまでだろう―
サンヨは気づいていないのかもしれないが、既に彼はロンを信じることが出来なくなっている。
死の瀬戸際にあって、彼の中にロンに対する疑念が生まれた。
あるいは、それもロンの差し金なのかもしれないが。

「終わりだ…サンヨ。せめて、その苦しみから俺が解き放ってやろう……」
傍らの死体。
状況から見て、彼の死にサンヨは関っているのかもしれない。
よしんば関っていないとしても、彼は既に殺し合いに乗っている。
理央は最後の審判を下すべく、痛みを乗り越え力の集中を始めた――
―終わったな、とシュリケンジャーが半ばその場からの離脱を考えていたその時だった。
「な…にっ!?」
思わず気配を消していることすら忘れて声が出た。
ちらっとリオが背後を見やる。
しかし、すぐにその視線はサンヨへ注がれた。


「ロンは…ロンはサンヨを信頼してるネ!! 間違いないヨ! 絶対、そうだヨ!!」


薄ら笑いを浮かべ、自らを縛る金色の首輪に手を掛ける。
「貴様…何を…―!」
問いかけは、爆発に途切れた。
力任せに首輪を引きちぎり、サンヨは自ら起こした爆発の炎に倒れたのだ。
とめる間もないあっという間の出来事に理央は呆然と立ち尽くした。
「オ~マイゴォォッド!! まさか、自分で首輪を引きちぎるとはねぇ……」
意外な結末。
だが、彼の希望通り、人は減った。そして死神に魅入られたリオは遠からず死ぬ。
全ては計画通り。


454:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:15:43 O/i5sauc0
シュリケンジャーは愚かな蜥蜴の最期に失笑を漏らした。
だが、真の驚愕はその後に訪れた。

「…やっぱりネェェェ~~~~~……ロンがサンヨを裏切るはずがないんだヨォォォォォォォォ!!!!!!」

サンヨが立ち上がってきた。
制限の枷から解き放たれたことで、その全身から黄金の幻気が立ち昇っている。
「だから最初からサンヨは言ってたんだヨォォ…サンヨに制限なんて必要ないって……見ててよ、ロン……これから一番の邪魔者殺すとこ!」

「くっ…剛 勇 吼 弾ッッッッ!!!」
弾丸上に練りこんだ臨気を相手の頭蓋めがけて射出する。
しかし。
「ぬるいヨッッ!!」
先ほどとは比べ物にならないほどの力の奔流が獅子の一撃を受け止め、彼方へ弾き返した。
―反重力鎧。
本来ならば制限の中にあるはずのゲンギを事も無げに使い、サンヨは高らかに叫んだ。
獅子が地に伏せる瞬間を確信して。






「さっき終わりだとかなんだとか言ってたネ……終わるのはお前だヨッッッ!!!」
天高く、両腕を掲げ、自らに内在する幻気の全てを使って空間の圧に干渉する。
「まずいな…これは……!」
辺りの景色が歪んでいく。
リオもろとも、このエリアを吹き飛ばしてしまうつもりなのだろう。
「読み違えたかな…」


455:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:17:00 O/i5sauc0
自らの読みの甘さにシュリケンジャーは自嘲の笑みを浮かべた。

「喰らえぇぇぇぇぇええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
両の眼はリオを捉えて、サンヨは腕を勢いよく振り下ろす。
その時、世界が軋む音を聞いた。
全てが超重圧の重力異常に押しつぶされていく。
命を失った真墨の遺体も、倒れた木々も全て地に沈んで潰されていった―
そして、全てが去った後で。

「ハァ…ハァ…ハァハァ…やったヨ! 跡形もないよ!! 理央死んだヨ!!! 見てるかい? ロン!!! 理央が死んだヨ!!! サンヨが殺したヨ!!!!!」
パチパチパチパチパチ。
勝どきを上げるサンヨの耳に拍手の音が聞こえてくる。
「ブラボー! ブラボー!! さすがサンヨだね。ミーもまさかここまでやれるとは思わなかったよ!」
背後にいつの間に現れたのか、サンヨが本来落ち合うはずの相手であるシュリケンジャーがたたずんでいた。
「お前…今頃来たのかヨ……」
また、違う姿をしている。
自分にはそれと分かるよう、シュリケンボールをかざす目印を彼は指定していた。
舌打ちをしながら、シュリケンジャーに歩み寄ろうとしたその時だった。
「おっと! 待った…まだ、ゲームは終わってないよ」
何をこの男はいっているんだろう。既に理央は重力異常の中心でぺしゃんこになっているはず。
戦いは、既に終わっているはずなのだ。
だが。
深海の底を覗き込むような重苦しいこの感覚はなんだろう。
重力を操る自分が蛇に睨まれた蛙のようにすくんで動けなくなる。



456:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:18:34 O/i5sauc0
いや、これは蛇の眼差しなどという生易しいものではない。
これは――



「猛きこと獅子の如く…強きこと、また獅子の如く―…邪竜を葬り去る者―臨獣ライオン拳、黒獅子…理央――!!」



あの渦の中心にあってなお、彼は滅びることなく。王者の風格すら漂わせて。
「なっ……!!!」
巨大な影が頭上に迫っていた。
「リンギ・招来獣……」
理央を守護するが如く、漆黒の獣がその威容を現していた。
「嘘だヨ…こんなの夢だヨ…」
弱弱しく頭を振るサンヨを見下ろしながら理央は言った。
「どうやら…この空間には幻気が満ちているらしいな…四幻将の一人であるお前だからこそしばらくは行動できたようだが…それももう、終わりだ」
既に見えない毒の大気はサンヨの体を蝕んでいた。
足に力が入らない。
それは眼前の脅威を目の当たりにしているからという理由だけではないはずだ。
身体が、崩れていく。
前進にひび割れが走り、身体がガラスの様に脆くなっていく。


457:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:22:06 O/i5sauc0
膝が砕け、指が割れた。
仰向けのままどうすることも出来ない。ただ、身体が、心が朽ちていくのを待つしかない。
漆黒の獅子がゆっくりと、その巨大な顎を開いてゆく。
眩い光が辺りを照らし出す。


「―獅子吼」


閃光に呑まれ光となる、その最期の瞬間までサンヨは叫び続けた。
「ロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

…――特別扱いなら、もうしたじゃないですか…後は自分で何とかして御覧なさい――…

死に際の幻聴か、焦がれた人の声を光の中に聞いた気がした。
「ロオオオオオオオオォォォォォオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!!!」


その最期の雄たけびは、確かにロンに届いているはずだった。


§

「さて、と…ミーはそろそろ行こうかな」
今度こそ、その場を後にすべくシュリケンジャーは踵を返した。
「待てっ! セン!?」
理央の問いかけに歩を止める。
みれば、既に彼の凱装は解け人の姿に戻っている。
制限までは後ほんの少し時間があるはずだが、戦闘の痛手と胸の痛みに戦闘状態を保持できないらしい。
制限に入れば臨気で抗うことも出来なくなり、胸に巣食う死神の鎌に命を狩られることとなる。
止めを刺す必要もないだろう。


458:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:22:52 O/i5sauc0
「…違うな。ミーは緑の光弾シュリケンジャー! ユーの敵だよ」
チッチと指を振りながらシュリケンジャーは言った。忍が名乗ることなど、本来はありえない。
彼は自分をセンだと思い込んでいる。このまま、成りすまして嘘を突き通すことも出来る。
だが、戦士としての威風堂々たる戦いを見せた理央への…そんな彼を姑息な手段で利用したことへのせめてもの礼だった。
「貴様…センではないな…!…サンヨが言っていたあいつとはお前のことか!?」
その姿は江成仙一そのものだ。しかし、先ほど出会った彼とは雰囲気が全く違う。
間違いない。彼は自分とサンヨの戦いをずっと盗み見ていた。
どちらかが倒れるのを待っていたのだろう。
「正解。なかなか凄いもの見せてもらったよ。だけど、惜しいな…君はもう、長くない。
制限の二時間を待たずに蠍の毒でリタイアだ」
「貴様…何をしたっ!」
戦闘中に感じた激痛の正体は彼に起因するらしい。
だが、どこでそんな術を施されたのか―
「…ミーはね、1000の顔を持つ男さ。ユーは強い。強いけれど、ただそれだけさ。
出会って間もない男の言葉に身を預けるような無防備さはその強さへのおごりなのかな?
それとも、ユーはそれだけ無垢で、ミーがよっぽど汚れてるってことなのかな?」
「貴様…! センを、センをどうした!!」
胸の奥が焼け付くように痛む。
骨を蝕み、肉を貪り、やがてはその命の灯を消し去るだろう。無間の苦しみの果てに。
「出会って間もない男の心配か…思ったよりユーは優しいんだな。見直したよ」

「さようなら…黒獅子の拳士。君の犠牲は無駄ではないってことだけは、ミーが確実に約束できる唯一つの真実さ………」
彼を救うこともできる。今なら、まだ間に合う。
だが、今のシュリケンジャーにはそれが出来ない。
「待てっ!! 貴様!!!」
「…無駄だよ。君は死ぬ。万が一、生き延びたとしてもミーの本当の顔すら知らない君がどうやって戦うというんだ? 
この勝負、始まる前からユーの負けだったのさ」
獣に人の狡さを求めるのは酷と言う物だろう。


459:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:24:02 O/i5sauc0
獣はその強さゆえに自分を偽れず、変えられず滅んでいく。
だが―

「思い通りには…ならん―…!」

口元に血をにじませながら、理央は残る全てのリンキを身体のただ一点に集中させる。
そして、解き放った。
理央を源に噴出すどす黒い力の奔流が何者をも拒絶して吹き荒れる。
猛り狂う怒臨気の嵐を前に人の叫びはかき消されて消えた。
「理央! 何を!? 止めろ!! 苦しむだけだ!!」
蠍の毒は身体の奥深く心臓にまで達している。無理に力を加えれば、その死期を早めるだけだ。
「俺は…俺はもう、誰かの思い通りにはならん! お前にも、ロンにも俺を操ることは出来ない!! 決してっっっっ!!!」
翻弄されるままに、破滅の道を突き進んだ男はもういない。
人を超え、獣を超え、そして龍を喰らう。
生き抜いて、勝ち抜いて、彼が彼のままに在れる場所を、最愛の人をこの手に取り戻す。
「俺は…俺は死なないッッ!! メレェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

§

地に伏す獅子は、まるで無垢な赤子のような顔で深い眠りに落ちていた。
「……君を一度だけ、見逃すよ…理央。その代わり、君はここにおいていく。
誰かに寝首を掻かれればそれで終わりさ。ミーは君に、何も、しない。
助けることも…………殺すことも」
足元には潰れた蠍が一匹、煙を上げてこの世界から消滅しようとしていた。

「大した男だ…次に会うときはミーとユーのどちらかが死ぬ時だ。最も勝つのはミーだけどね☆」

その再会自体も、あるのかどうか怪しいけれど。




460:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:31:07 O/i5sauc0
【サンヨ 死亡】
残り39名

【名前】シュリケンジャー@忍風戦隊ハリケンジャー
[時間軸]:巻之四十三後
[現在地]:C-8森 1日目 午前
[状態]:健康。1時間30分変身不可
[装備]:シュリケンボール、スワン製防弾チョッキ@特捜戦隊デカレンジャー、SPD隊員服(セン)
[道具]:包帯、基本支給品一式
[思考]
基本方針:殺し合いに乗る(一時的に保留)
第一行動方針:七海とおぼろを五体満足で帰還させる。
第二行動方針:それがだめならアレの消滅を願う。
第三行動方針:サンヨが殺せることを確認。放置する。

【名前】理央@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:修行その47 幻気を解き放った瞬間
[現在地]:C-8森 1日目 午前
[状態]:左胸に銃創。肩から脇の下にかけて浅い切り傷。ロンへの怒り。深く無防備に眠り込んでいます
[道具]:支給品一式。
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗った相手には容赦しない。
第一行動方針:メレと合流する。
第二行動方針:ナイとメアを探す。
第三行動方針:メレと合流する。
※大体の制限時間に気付きました。

備考
・サンヨと江成仙一から一通りの情報を得ました。具体的な制限時間も知っています。
・シュリケンジャーはロンが何らかの方法で監視していることに気づきました。
・炎の騎馬はC-7エリアに隠しています。
・シュリケンジャーの支給品は宇宙サソリ@忍風戦隊ハリケンジャーと包帯でした。

461:◇8ttRQi9eks氏の代理投下……
09/01/15 10:58:38 O/i5sauc0
理央が宇宙蠍を浄化できたのはラゲクの回での毒を除去の応用です。
また、サンヨの首輪崩壊後の行動にはご意見ある方、いらっしゃるかと思うのご指摘お待ちしています。


――――――――――――――――――――――――

以上代理投下終r……うわっ何をするやめ(ry



クックックッ……。

まさか、昨夜の内に投下しているとは夢にも思いませんでしたよ。
これだから……。そう、これだからこのロワからは目が離せないのです。

◇8ttRQi9eks氏、投下乙でしたね。
クックックッ。代理投下中、残念な事に一箇所誤字を見つけてしまいました。
教えて差し上げましょう。

前進にひび割れが走り、身体がガラスの様に脆くなっていく。

『全身』ではないでしょうか?

さて、ではゆっくり読せていただきましょう。


462:名無しより愛をこめて
09/01/15 17:08:41 zNHDCQ4s0
投下乙でした。

サンヨの台詞がいいな。
狂喜と絶望の叫びが聞こえてくるようでした。
しかしサンヨが死んで、これはますますロンの真意が謎に包まれてきましたね。
むー。あっさりと宇宙サソリを解除してしまったのは理央ならではというところですかね。
理央とサンヨ。
明暗を分けた二人でしたが、どちらも生き残りを懸けた激しく凄まじい執念を感じました。
GJ!

いくつか指摘と質問を。
・残りの人数ですが29名が正しいかと思われます。
・ロンがサンヨにした特別扱いというのは無理やり引きちぎった際の首輪の威力を小さくしてあった。
 という解釈でいいのでしょうか?(深雪死亡時とくらべてそう思ったのですが……)



463:名無しより愛をこめて
09/01/15 20:28:54 WcASZF2j0
投下乙です。
サンヨの叫びが哀しいですね。
理央にトドメを刺さなかったのは、シュリケンジャーの残った良心ゆえか、誇りゆえか……

いくつか疑問点をば。
・理央は首輪が生命維持装置だと気付いたようですが、どの時点で気付いたのでしょうか?
・サンヨはロンの不死の部分、つまりある意味、幻気のかたまりともいえるという事だと思うのですが、
 なぜ、幻気の毒の影響を受ける事となったのでしょうか?
自分の疑問は以上です。

特に後者は今後の展開にも関わってくる事となると思いますので、議論スレへ移動できたらと思います。
よろしくお願いします。


464: ◆8ttRQi9eks
09/01/15 20:49:43 NYRtQrqI0
感想をありがとうございます。
議論スレのほうで回答をしたいと思いますのでそちらで。

465:名無しより愛をこめて
09/01/19 22:25:26 GmTjBo4W0
保守

466:名無しより愛をこめて
09/01/24 21:07:47 6tp/6B6RO
主催者が復活?するかどうかは分からないけど、
VS記念に保守

467: ◆7m.xhZiEWA
09/01/25 14:35:58 2yFhwPod0
ネジブルー、並樹瞬、早川祐作、クエスターガイ、投下します。

468: ◆7m.xhZiEWA
09/01/25 14:37:02 2yFhwPod0

「さーて、メガブルーはどこかな~ネジシルバーでもいいから出てきてくれないかな~」
都市エリアをうろつく高校生ぐらいの姿をした男が言う。
「メガブルーならなぶり殺しだけどネジシルバーはどう殺そうかなぁ……一気に殺すのもいいし、絶望と苦痛の混じった表情を見ながらじっくりと殺すのもいいなぁ……」
ネジビザールが頭の中でメガシルバー殺害方法を考えていると……

「ウォォオォォォォォォオオオオオ!!」

突然の大声によりネジビザールの意識がこっちの世界に戻ってくる。
当然ネジビザールは面白くない。
「いいところを邪魔しやがって……あの声の奴も殺そうかな……」
すっかり気分を損ねたネジビザールは人間の擬態を解きその声の主の元に向かった。

ガイがビルの屋上で一人たたずんでいた。
「クソが!!!ボウケンピンク…ふざけやがって!!何が許してくださいだ!!」
ガイの脳裏に先ほどのさくらの姿がフラッシュバックする。
敵である自分に対し涙を流し、地に這いつくばり、プライドを捨てた。挙句の果てには命乞いをしたのだ。
「ウォォオォォォォォォォオオオオオ!!」
ガイはやりきれない気持ちになり叫んだ。
しかし重苦しい気分は払われることなくより重い気分になる。
ガイはその場を立ち去るべく出口の方向を向いた瞬間

ゴォォォオオ!!

風を切り裂く音とともに何かガイへと振り下ろされる。
「うお!?」
間一髪でガイはかわしたがデイパックが切り裂かれいくつかの支給品が地面に落ちる。
「ふーん、そんな傷だらけの体でがんばるじゃないか。」
ガイを攻撃した者が言う、青い体に鋭い結晶体、そしてガイを襲ったと思われる長く伸びた爪。
「いきなりなんだよ!!つーかだれだよお前は!!?」

469: ◆zaBiSVxjpk
09/01/25 15:07:18 O47dIjSCO
すみません。
パソコンの調子が悪いので夜に携帯で投下します。
ご迷惑をおかけして申しわけございません。

470:名無しより愛をこめて
09/01/25 15:27:14 kYwcoDvKi
二重カキコ御免
ついでにスパイダーロードに訂正

471:名無しより愛をこめて
09/01/25 16:10:51 M9lfIvoZO
夜に改めて投下の件は了解致しました。
一点お願いですが、鳥を変えられると予約された本人か判別出来ませんので統一していただけますか。

472: ◆zaBiSVxjpk
09/01/25 21:36:02 O47dIjSCO
本当に申し訳ありません!
トラブルが発生して本日中に投下することができなくなりました。
明日には必ず投下いたしますのでもう1日だけお待ちください。
皆様方に迷惑をおかけして本当に申し訳ございません。

>>471
申しわけございません。統一します…

473:名無しより愛をこめて
09/01/25 22:12:59 QXsHd1jPO
>>472
了解致しました。

474: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:49:18 hpzYXLgk0
ブドー投下しますが、要議論であるかと思います。
よろしくお願いします。

475: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:49:59 hpzYXLgk0
ギリリッと歯が軋む音を立てる。
微かに肩は震え、強く握りしめた拳の中、掌へ己の五爪が深く深く突き刺さる。
ブドーは瞬きもせず、森の中に残された轍を只々睨み付けていた。

森の中は聖域にも似た凛とした静けさを保ったまま。
どれだけ耳をそばだてても、誰も近づく音は聞こえない。
慰めるように頬を撫でる風が、制限という追っ手から野良犬のように隠れるしかない口惜しさを掻き立てる。
包みこむような暖かな太陽の光は、傷を抉るような生温かさを齎すだけ。


ぐっと強張る身体から力を抜き、溜めていた息を吐き出した。
もう一度シュリケンジャーが去った方向を睨み、踵を返し反対の方向へ歩を進める。
一歩、また一歩。
歩く度、心に燻る怒りにも似た思いは、薄れるどころか強まるばかり。

「おのれ……」

歩きながらブドーは知らず呟いた。
忌々しい。
そう、サンヨもシュリケンジャーも。

―――ひっ…か……か………っ…………た……………ヨ………………~!

嵌められた。
サンヨの声が蘇ると共に屈辱感で腹の辺りが焼けるように熱くなる。

―――Don't worry、心配しなくても、その内、戦う機会はあるさ。ミーもMurderだからね。Murder同士は生き残っている限り、いつか戦うことになる。そうだろ?

腹に据えた熱き物が呼び水となり、シュリケンジャーの嘲笑を帯びた言葉が思い出された。

476: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:50:34 hpzYXLgk0
制限など関係なくとも、『ブドー如き殺すのは訳が無い』そんな意味合いを含んでいた。
ブドーを躍らせ、人減らしとして利用した後始末する。
そんな薄汚れた姦計さえ垣間見えた。

「次は、許さぬ!」

ブドーは叫び、振り払うように走り出した。
鬱蒼とした森の、深い闇の奥へ。

すべてが如何しようもなく忌々しかった。
戦いに身を投じ命尽きるまで戦い抜くという思いの枷になる制限も。
その思いを嘲笑うような二人の策略も。
何もかもの、すべてが。
膨れ上がる怒り、憎悪、嫉妬、さまざま思いが延々と澱のように胃の腑に溜まって行く。
この澱を吐き出す為に、ただ今は戦いたかった。
眼前の敵を叩き潰し、我武者羅に殺し合いの頂点を目指したかった。
戦うどころか、まんまと逃げられた。その口惜しさを打ち払いたかったのだ。


信念など不要。
手段など選ばぬ。
姦計もいらぬ。
友もいらぬ。
ただ欲しいのは……。
ただ、ただ欲しいのは……!

「拙者がっ……。欲するのは―――!!!」

森を疾駆する。
陽光届かぬ暗き黒い森の中を。

477: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:50:58 hpzYXLgk0
渇望を、憤りを、隠そうともせず思いの丈を咆哮に乗せた。

「―――力っ!力のみっ!!デヤァァーーーーー!!!!!!」

高く跳躍し、目前の巨木目掛け渾身の蹴りを放つ。
だが倒れることなく、折ることもままならず。

「グッ!」

ブドーの右足に、鈍い痛みが尾を引いた。
制限のせいだ、などと己に言い訳をしたところで燻る気は一向に晴れない。

「違う。制限など無くても絶対的に拙者には力が足りぬ」

ブドーは愕然としつつ、地に降り立った。
暫時、膝を付き頷だれた時。

渦巻く。
蠢く。
闇に息づく。
何かが呼応した。
顔を上げ、その何かを捜す。

ザワザワと木々が揺らめく。
鬱蒼と茂る森の木々が意思を持つように道を曳いた。
ブドーは、導かれるように細い獣道を進んだ。

やがて、現れたのは、東西南北を神木で囲み、細く結われた綱で張られた結界だった。
結界の中心には獄門台。
その上に三つの首を持つ竜の像があった。

478: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:51:57 hpzYXLgk0
脚台となる尾と胴は精巧な銀細工を施しから絡み合わせ、黄金色を放つ三頭の竜の頭は三方向へ分かれていた。

「これは……」

つ、とブドーは手を伸ばす。
結界に触れるや否やハラリと綱は崩れ落ちた。
招かれるように結界の中へ進み、獄門台に刻まれた文字を指で辿り、像へ触れた。
刹那。
轟、と一陣の黒き風がブドーを包む。

「……なっ!!!!」

驚愕。
次に訪れたのは、何故か心地よさであった。
枯渇した心に澄んだ水が染み入るように、漆黒の闇が、ブドーの胸の内へ染みていく。
染み込んだ闇は、やがて濁流へ変わり、燻る怒りも、澱のような劣位感もすべて飲み込み。
全身へ流れ、溢れ、湧き上がる『力』の血肉となった。


――手に、入れた。拙者は、拙者ハ手に入れタ……。この闇ノ?チカラヲ。チカラ、ヲォ……。



  ◇    ◇    ◇
  


木々の隙間から零れ落ちる陽光に頬を刺され、ふとブドーは我に変えった。

479: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:52:37 hpzYXLgk0
天を仰げば、陽は頭上近くまで高く上がっていた。

「先程の、あれは……」

願望が見せた幻か?否か?
ブドーは自分の右手に視線を落とす。
己の掌の中、三頭の首を持つ竜は、血肉を得た如くぬらぬらと輝いていた。

「選んだのであろう拙者を。そして、拙者は受け入れた……」

さて、受け入れたのか、喰われたのか。
身体に漲る『力』にブドーは薄く笑った。
おそらく、今少しの時がたてば、飲み込んだ闇が……。
己の魂を蝕み、いずれ志も記憶も、すべてを侵食していくだろう。

確信に近い予感。
だが、構わなかった。
力を得る代償ならば、そのようなもの、もはや惜しくない。
信念など、とうに捨てた。

屍を拾う者など、もういないのだから。




480: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:53:02 hpzYXLgk0
【名前】剣将ブドー@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第24章(ギンガマンに敗れた)後
[現在地]:A-10森 1日目 昼
[状態]:胸と腹に中程度のダメージ。闇の力により戦闘力増幅。
[装備]:ゲキセイバー@獣拳戦隊ゲキレンジャー、一つ目のライフル銃@魔法戦隊マジレンジャー、手裏剣少々@星獣戦隊ギンガマン
[道具]:筆と短冊。サイコマッシュ@特捜戦隊デカレンジャー。予備弾装(銃弾5発、催涙弾5発)。支給品一式(ブドー&バンキュリア)。真墨の首輪。闇の三ツ首竜。
[思考]
基本方針:戦い、勝利する。
第一行動方針:リオを倒せるほどに強くなる。
第二行動方針:優勝を目指す。
※首輪の制限に気が付きました。
※闇の三ツ首竜により力が増幅しています。


481: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:55:44 hpzYXLgk0
以上ですが、闇の三ツ首竜の扱いについて要議論かと思っています。
ブドーが闇に選ばれないのでは?
という疑問が出た場合について、個人的には理央や他の参加者との戦いを経て本編真墨の抱えていた思いとブドーが重なったためいけるかと思いました。

修正と仮定して、
1、三ツ首龍と絡ませない。
2、ブドーが三ツ首龍に選ばれずorz

は考えております。
そのほか、矛盾、指摘もよろしくお願いします。
忌憚ない御意見をお聞かせ頂ければ幸いです。

482: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 21:32:54 4XhmEFxZO
投下が遅くなり申し訳ありません。
これより昨日の続きを投下致します。

483: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 21:38:30 4XhmEFxZO
ガイは問う。
「俺の名前かい?俺はネジビザールだよ~」
ふざけた調子でしゃべるネジビザールを見てガイは思い出した。
(こいつメガブルーって奴を捜してた放送のイカレ野郎だ!!…今の体でまともに戦うのは不利だぜ……)
ガイは冷静に思考を巡らせた。
相手はあの放送を聞く限りかなりイカレた野郎だ。
しかもあの呼びかけに集まった人数は多いはず。
それにもかかわらず奴が生き残っているという事は相当実力があるはず。
……やはりまともに相手をせず逃げるのが上策だろう。
だがどうやって逃げる?……奴は出口の前に立っている。
(ちきしょう……迂闊だったな……大声出したのはまずかったぜ……しゃあねえ、一か八か飛び降りるしかねえな。)
幸いこのビルの高さは他のビルに比べて低い。
「なんだい、逃げる方法でも考えてるのかい?」
ネジビザールがじりじりと近寄りながら言う。

(一見隙だらけに見えるが一歩でも奴の制空圏に入ればあの爪でズタズタに引き裂かれちまう…)
そう考えてる間にもネジビザールとガイの距離はますます近くなる。
(奴の気を引く方法……そうだ!)
ガイは閃いた。
(あいつの捜しているメガブルーを使えばいいんだ!)

484: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 21:41:50 4XhmEFxZO
そしてガイは言った。
「お前、メガブルーって奴を探してるんだろ?」
その言葉を聞いた瞬間にネジビザールの目の色が変わる。
「メガブルーを知ってるのか!?」
(よし、食いついた!)
「ああ、知ってるぜ、さっき海岸の辺りで見た。」(嘘だけどな~)
心の中でニヤニヤしてるとネジビザールが雄叫びをあげた。
「そうか……海岸…海岸か……ヒャハハハハハハ!!!!メガブルゥゥゥゥウウウ!!!」
(今だ!)
次の瞬間ガイはビルから飛び降りた。
気分の悪い浮遊感がガイを襲う。
「うおおおおおお!!!」

ガシャーン!

下にあったゴミ袋の山に突っ込んだ。
「いてぇぇぇぇぇええ!!!!」

485: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 21:48:48 4XhmEFxZO
落下の衝撃で傷だらけの体が悲鳴をあげたがゴミがクッションになり大事には至らなかった。
「無事に逃げられたみたいだな、おっとそんなことよりすることがあった!」
すぐに支給品のチェックをする。
「クソ!なくなったのはマグダスの杖とメモが3枚、それと水か……背に腹は代えられねえが痛え出費だぜ……」
ガイは立ち上がり近くのゴミ袋を蹴り飛ばしてその場を後にした。


ネジビザールはようやくガイがいないことに気づいた。
「あれ?あいつどこいったんだ?」
周りを見渡すがだれもいない。あるのはガイのバックから落ちた支給品のみだ。
「逃げたみたいだね、まあこっちには詳細付名簿があるんだ、メガブルーを殺したら次のターゲットはあいつにしよう。ん?なんだこれ?」
ネジビザールはメモを拾い上げた。
「あ~、そこにある杖の使い方か~、ふーんなかなか使えそうな道具じゃないか。もらっておくとしようか……さーて、ようやく会えるんだねぇ。メガブルー……」
ネジビザールは道具を自分のデイバックにしまうと人間の姿になり海岸へと向かった。

486: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 21:51:58 4XhmEFxZO
海岸で祐作は今後の行動を考えていた。
(まずは瞬を探すのが先決だな、その後はサーガインたちと合流してロンを倒す方法を考える、しかし俺たちにはこの首輪がある以上は下手な動きはできない。)
祐作が自身に装着されている首輪に触れる。
(無理やりはずすのは無理そうだしな……)
祐作が考えにふけっていると都市エリアのほうから一人の男が歩いてきた。
とっさに物陰に身を隠した。
(あれは……誰だ?)
祐作は物陰からよく顔を見る。
遠めで見にくいがそれは並樹瞬の顔に見えた。
「瞬!?瞬じゃないか!!!」
祐作が近づき……声をかけた。
そして男はこちらを見て……
笑った……氷のように冷たく闇夜のように黒い笑みで……
「会いたかったよ、ネジシルバー……メガブルーじゃないのは残念だけれど構わないさ…俺を殺してくれたお礼をさせてもらうよ……」
その邪悪な笑みを見て祐作は気づいた。
「お前……瞬じゃないな!誰だお前は!?」

487: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 21:55:21 4XhmEFxZO
男は自分を知らないのか?という顔をしたが何かを理解したかのようで言った。
「ネジビザール、Dr.ヒネラーに造られたネジレンジャーの一人さ。お前は俺たちを知らないネジシルバーみたいだね。」
(ネジレンジャー?ネジビザール?聞いたことない名前だがDr.ヒネラーの名前が出たということはこいつはネジレジアだな。)
「お前の目的は何だ!?このゲームに乗っているのか!?」
ネジビザールは笑いながら答えた。
「俺はこんなゲームどうでもいい、俺の目的はメガブルーを殺すことさ。でもね、俺はメガブルーのほかにも1人殺したい奴が参加していることに気づいたんだ。俺を罠に嵌めて殺してくれた人間……そうだよ…ネジシルバー!!お前だあああ!!」
その言葉を言い終わるとともにネジビザールは人間の姿から異形のものに姿を変え祐作に襲い掛かる。
 
「インストール!!」
まばゆい光が輝き早川祐作はメガシルバーへと姿を変えた。
ネジビザールはその鋭利な爪でメガシルバーの体を貫こうとする。
メガシルバー上体を伏せてかわすと同時にネジビザールの腕をつかみ投げ飛ばした。
しかし投げられたネジビザールは体を回転させ手から青い光弾を放つ。

488: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 21:59:22 4XhmEFxZO
突然の反撃をメガシルバーは避けられなかった。
光弾がメガシルバーを直撃する。
「クッ!!」
追撃の手を休めずメガシルバーを蹴り飛ばす。
蹴りはメガシルバーのみぞおちに直撃しマスクの下から苦痛の声が漏れる。
「なんだよそんなもんなの?ネジシルバー?」
ネジビザールが馬鹿にしたような顔で言った。
「それならリクエストにお答えして本気でいくぜ!!」
そしてシルバーブレイザーを取り出しネジビザールの方に光線を発射する。
ネジビザールの肩に直撃する。
負けじとネジビザールも光弾を撃つがそれはメガシルバーにあっさりと避けられソードモードになったシルバーブレイザーで切りかかる。
「そうだよ!!そうこなくっちゃねぇ~!!」
と口では言うもののネジビザールはメガシルバーの実力を見くびっていたようだ。
強化スーツのなくなった彼の攻撃力やスピードはネジブルーであったときに比べ落ちている。
その上メガシルバーのスーツは2分30秒という時間制限がある代わりに他の色のメガスーツの倍の戦闘力を発揮する。
おそらく単純な戦闘力ならこの殺し合いでも上位に位置するだろう。

489:名無しより愛をこめて
09/01/26 21:59:45 Zj6FteGXO
支援

490: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:03:01 4XhmEFxZO
ネジスーツを着ればその差はあっという間に埋まるだろうがスーツがないままのぶつかり合いでは分が悪い。
だがネジビザールは強化スーツを脱ぐことで使える氷や雪を自在に操る力がある。
「じゃあ俺も本気でいかせてもらうよ!!」
ネジビザールは深呼吸すると口から雪を吐き出した。
「何だこの雪は!?」
メガシルバーが驚き言う。
「ハァァァァァアアアア!!!!」
ネジビザールがメガシルバーに突進してくる。
避けようと思ったが避けられなかった。
雪で視界が悪くなっているのだ。
メガシルバーはまともに喰らい3mほど吹き飛ぶ。
(タイムリミットは残りわずかだ……)
メガシルバーでいられる時間が残り1分もなくなっていた。

491:名無しより愛をこめて
09/01/26 22:06:54 Zz3ISK5F0
支援

492:名無しより愛をこめて
09/01/26 22:08:12 Zj6FteGXO



493: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:10:41 4XhmEFxZO
(落ち着くんだ……視覚に頼らずに……相手の気配を……)
タッタッタ……
ネジビザールの走り出す音が聞こえる。
(まだだ……)
ダッダッダ……
どんどん音が近づいてくる。
ダッダッダ!!!
すぐ間近で声がした。
「死ねぇネジシルバー!!!!!!!」
「そこだ!!」
シルバーブレイザーで音のした方向を撃った。
「グァアアア!!!!」
見事に命中しネジビザールが悶える。

494: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:13:06 4XhmEFxZO
「これで終わりだ!!ブレイザーインパクト!!」
ネジビザールに止めを刺そうとした瞬間。
何かがメガシルバーを貫き体に激痛が走る、そしてそのままメガシルバーは気を失った。
彼を襲った襲撃者が姿を現した。
鋭い牙や爪、大きく裂けた口、真っ黒な目、祐作の血の付いた触手、野獣のような姿をした男だった。
次元獣と化した並樹瞬であった。
しかし主催者であるロンと変身の瞬間を見た美希以外の参加者はもちろん、祐作やデジタル研究会のメンバーでさえも彼を並樹瞬だと見抜けるものはいないだろう。

ただ一人、ネジビザールを除いては。

「メガブルゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!!!!!!!ヒャハハハハハハハハハハハ!!!!やっとだ!!!ようやく逢えたね!!!!ヒャハハハハ!!あの男の言うとおりいたんだね、その格好はなんだい!?また俺をだますつもりなのかい!?」
大声とともにネジビザールが立ち上がる。

495:名無しより愛をこめて
09/01/26 22:14:01 Zz3ISK5F0



496: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:19:19 4XhmEFxZO
ちなみにあの男、というのはガイのことだ当然ガイは海岸に瞬がいたことは知らない。
ただのあてずっぽうが偶然あたっていただけのことだ。
ネジビザールは何故彼が並樹瞬であると認識したのかは自分でもわからなかった。
しかしネジビザールにはその予感が正しいという確信を持っていた。
並樹瞬はネジビザールの姿を確認すると襲い掛かった。
「来たね来たね来たねぇえええ!!!メガブルーには変身しなくていいのかい!!!!?それともその姿のほうが強いのかなぁ!?でも俺を楽しませてくれるならそんなの関係ないさ!!!!!」
ネジビザールは興奮を隠せない。
ようやく逢えたのだ。彼の1番の目的、メガレンジャーの青き戦士メガブルーこと並樹瞬に。
彼は瞬を殺すためだけに生まれてきたのだ。
「メガブルー!!今度は邪魔も入らない!!覚悟しろよぉぉぉ!!!!」
ネジビザールは瞬のタックルをかわすと瞬に光弾を放つ。
一瞬怯むがすぐに体勢を立て直しネジビザールへと向かっていった。
右の爪でネジビザールの肩を切りつけようとしたが、ネジビザールは半歩前に出て避ける。
今度は左の爪で切りかかるがまた同じようにして避けられる。

497:名無しより愛をこめて
09/01/26 22:20:47 Zz3ISK5F0



498: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:22:30 4XhmEFxZO
体制の崩れた瞬をネジビザールは巴投げの要領で投げ飛ばす。
瞬は受身を取ることもできずまともに地面に叩き付けられた。
さらにネジビザールは瞬を蹴り飛ばした。
「グゥゥゥウ……」
苦しげにうめいたかと思うと瞬は背中の触手をネジビザールに絡み付けた。
触手はネジビザールの足、腰、首に巻きつきネジビザールを締め上げる。
が、ネジビザールはまったく動揺せずに自身の爪で触手を切り落とした。
「…………。」
ネジビザールは無言で瞬の足と腕を凍らせた。
これで瞬は身動きをとることができなくなった。
「ガアアアアア!!!!」
瞬が吼えるがそれは無駄な行動だった。瞬の手足の氷は硬く力づくで割るのは不可能だ。
今の瞬は十字架に磔り付けられたキリストのような格好であった。
「ガァァアアア!!!」
瞬はあきらめずに氷を割ろうとする、その様子をネジビザールは冷たい目で見ていた。
「………。メガブルー、つまらないよ……今からでも遅くない、変身しなよ。」

パチン

ネジビザールが指を鳴らすと瞬を拘束していた氷が割れた。

499:名無しより愛をこめて
09/01/26 22:23:06 Zz3ISK5F0



500: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:29:41 4XhmEFxZO
「さあ、早く変身しなよメガブルー……」
だが瞬はその言葉を理解するだけの知能もなくネジビザールに猛然と襲い掛かった。
「…………やっぱりお前は…………メガブルーじゃない……」
静かだが激しい怒りを覚えネジビザールは瞬の攻撃をかわし、殴り飛ばした。
瞬は何度かうめき声を上げると動かなくなった。
ネジビザールは信じられなかった。確かにそこにいる『獣』は並樹瞬、彼の探していたメガブルーだ。
それに今の瞬はパワーもスピードも自分と互角であり戦闘力という点では申し分ない。
でも何かが違う。
彼は自分の求めていたメガブルーではない。
ネジビザールは瞬の方を向いて言った。
「…………メガブルー……お前は俺の知ってるメガブルーじゃない……俺の殺したメガブルーは俺を楽しませてくれる奴だった。俺を倒そうと単純な作戦を練り、俺がそれを破ると今度はまた違う作戦で俺を罠に嵌めて倒した……」
一呼吸おきネジビザールは続けた。
「この殺し合いにいたメガブルーも俺を殺したメガブルーとは差異があったけれどやはり俺を楽しませる何かがあった……でもお前からは何も感じられない。」
ネジビザールは瞬の首に手をかけ持ち上げた。
瞬は無抵抗で宙吊りになる

501:名無しより愛をこめて
09/01/26 22:30:20 Zz3ISK5F0


502: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:32:32 4XhmEFxZO
「……つまらない……こんな奴のために俺は生き返ったのか……?」
ネジビザールは首を握る手に力をこめた。
……瞬が凍っていく、首筋から放射線状に氷が広がっていき全身にいきわたると瞬は氷のオブジェのようになっていた。
しかし瞬は死んではいない、ネジビザールによって仮死状態になっているだけだ。
「………認めない!!!!俺はこんなのは認めない!!!!こんな偽者との決着を認めるわけにはいかない!!!!!」

俺は……本当のお前と決着を付ける!!!!

ネジビザールは氷漬けの「獣」を並樹瞬として復活させ、決着をつけることを誓った。

503:名無しより愛をこめて
09/01/26 22:34:09 Zz3ISK5F0



504: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:36:37 4XhmEFxZO
【名前】ネジブルー@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第41話(ネジビザールとして敗れた後)
[現在地]:H-6海岸 一日目午前
[状態]:全身に打撲、傷あり。能力発揮中。ネジスーツは壊れているためネジレンジャーにはなれません。
[装備]:ネジトマホーク、壊れたネジスーツ@電磁戦隊メガレンジャー、クロノチェンジャー@未来戦隊タイムレンジャー
[道具]:ソニックメガホン@忍風戦隊ハリケンジャー、闇のヤイバの忍者刀@轟轟戦隊ボウケンジャー、魔人マグダスの杖@星獣戦隊ギンガマン、3枚のメモ(杖の説明書、アイテムの隠し場所×2)支給品一式×3、詳細付名簿、スフィンクスの首輪、拡声器。
[思考]
基本行動方針:メガブルーを殺す
第一行動方針:次元獣化した並樹瞬を元に戻し決着をつける。
[備考]
ズバーンとマシンハスキーはF-5都市に放置してあります。

【名前】並樹瞬@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第2話後
[現在地]:H-6海岸 一日目午前
[状態]:全身に打撲、傷あり。能力発揮中。次元獣化。氷漬けにされ仮死状態。
[装備]:デジタイザー
[道具]:なし。
[思考]
基本行動方針:暴れる。
[備考]
瞬の支給品一式はH-7エリアに放置されています。

505: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:38:49 4XhmEFxZO
【名前】早川祐作@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第34話後
[現在地]:H-6海岸 一日目午前
[状態]:気絶。右肩、腹部、左足を負傷。2時間の制限
[装備]:ケイタイザー
[道具]:フェンダーソード@激走戦隊カーレンジャー、火竜の鱗@轟轟戦隊ボウケンジャー、木製の台車(祐作のお手製)、他一品
[思考]
第一行動方針:瞬を探す
[備考]
2時間の制限に気づきました。ヒカルと情報交換を行いました。メガシルバーの変身制限時間は2分30秒のままです。
ヒカルがドモンを殺し合いを止めるように説得していると思っています。勇、深雪、ウメコの死に様をドモンから聞いています。

506: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:40:58 4XhmEFxZO
【名前】クエスター・ガイ@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task23.以降
[現在地]:H-6海岸 一日目午前
[状態]:全身に裂傷、かなりの重症のため時間制限に関わらず戦闘不能。要回復アイテム。傷あり。能力発揮中。
[装備]:グレイブラスター@轟轟戦隊ボウケンジャー
[道具]:クエイクハンマー@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式×3(水なし)天空の花@魔法戦隊マジレンジャー
マージフォン@魔法戦隊マジレンジャー、操獸刀@獸拳戦隊ゲキレンジャー、何かの鍵。
[思考]
基本行動方針:ロンやボウケンジャーを倒すついでにゲームに乗る。
第一行動方針:使えそうな道具を作る。
第二行動方針:アイテムの確保。天空の花を持って、J-10『叫びの塔』へ
第三行動方針:気に入らない奴を殺す。一人殺しました。

507: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:45:52 4XhmEFxZO
以上です。
投下をお待たせして大変申し訳ありません。
それと矛盾がございましたらご指摘ください。
なおタイトルは「青き宴」です。

508:名無しより愛をこめて
09/01/26 23:32:14 Zz3ISK5F0
お二方とも投下GJです!!

>>474
ブドーの焼け付くような憎悪や失望、苛立ちが伝わってきました。
ただ力を求める純然たる暗い闇、闇の三つ首龍に選ばれるのも納得でした。
相変わらず、心理描写が秀逸でブドーの感情がひしひしと伝わってきます。
ブドーがこれからどうなるかものすごく楽しみです!GJでした!
闇の三つ首に関してですが、自分は問題ないと思います。
ある意味で情を捨てきれなかった一面のある真墨やヤイバと比べても、
勝るとも劣らない闇をブドーは抱えていると思いました。

>>483
裕作さん思いがけずピーンチ!!と思いましたが、思いがけないところから救いの手が。
(いや、本人にその気はまったくないでしょうが)
とっさの機転でピンチを切り抜けるところがガイらしいです。
(その直前の行動は若干おバカさんですがw)
氷づけになった次元獣 瞬、気絶した裕作さん、思いがけない行動方針を持つ事になったネジブルー。
彼らの今後が楽しみです。GJでした。


509: ◆zaBiSVxjpk
09/01/27 06:18:06 QPn81pMNO
すみません、ガイの状態表にミスがありました。

能力発揮中のところを消してください。

510:508
09/01/27 13:32:59 mckBn8K30
>>509
訂正乙です。
読み返していて少し気になったところをば。

・早川祐作→早川裕作ではないでしょうか?
・クエスターガイの現在地が、H-6海岸になっていますが、
 特に海岸に移動するような描写はなかったように思うのですが。

読み違いであれば、申し訳ありません。ご確認お願いします。


511:名無しより愛をこめて
09/01/27 15:23:28 AxtEoE7b0
投下乙です。

ネジれた愛情ってところでしょうか。
ネジブルー改めネジビザールと瞬が面白くなってきましたね。
ガイと裕作は、まぁなんだ、その、がんばれ。
GJでした。


512: ◆zaBiSVxjpk
09/01/27 22:43:27 QPn81pMNO
すみません、>>510氏の言うとおり裕作の字とガイの状態表が間違っていました。

G-6 都市に変更願います。

513: ◆Z5wk4/jklI
09/01/27 23:48:04 eD5Yf1lI0
>>512
修正乙です。

お二方ともGJです!面白かった!

さて、大変遅くなってご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません。
現在、推敲中です。00時を回る頃には投下できるかと。


514: ◆Z5wk4/jklI
09/01/27 23:56:10 eD5Yf1lI0
ただいまより投下します。

515: ◆Z5wk4/jklI
09/01/27 23:57:30 eD5Yf1lI0
「蒼太くん!蒼太くん!しっかりしぃ!蒼太くんっ!!」
さくらに刺され、意識を失った蒼太を抱え、おぼろは懸命に叫んだ。
止血の為に傷口に押し当てた青い羽織が紫に染まっていく。
意識を呼び起こそうと、色を失った頬を張り、手をきつく握っても、力尽きるように伏せた目はぴくりとも動かない。
紙のように白くなった指から体温が零れ落ちていくのが、握りしめた手から伝わってくる。
それは否応なくおぼろに纏の姿を思い起こさせた。
無我夢中で、忍風館で叩き込まれた救命術を施していく。
「っっっ!!蒼太くん!!」
喉の奥で声が絡む。眼尻から涙が落ちた。
泣いている場合ではない事はおぼろにも分かっていた。ただ混乱した頭が視界を霞ませていく。

―なんでなん?!なんでこないな事に……!!

さくらに刺された瞬間の蒼太の呆然とした顔。
自分が憎しみの言葉を吐いた時に浮かべた、さくらの許しを乞うような縋るような眼差し。
怒りに震える口唇で叫んだ言葉。
思いが走馬燈のように駆けめぐり、おぼろの頭の中を埋め尽くしていく。

さくらを助けたから?
さくらの告白を聞いても、非情になりきる事できなかったから?

「…違う……あたしや」


516:名無しより愛をこめて
09/01/27 23:58:04 WhFi1zCQO



517: ◆Z5wk4/jklI
09/01/27 23:58:57 eD5Yf1lI0

あたしが、もっと彼女の様子に気ぃ付けてれば。
手当てをした時、ナイフの存在に気ぃ付いてれば。
蒼太くんの仲間や思て、彼女の前で隙なんて見せんどけば。
「あたしが……あたしが阿呆やったんや。ごめんな、蒼太くん。ごめんな」
涙でにごる声を詰まらせながら、謝罪の言葉を口にした。
後悔と罪悪感と絶望感が心を黒く塗り潰していく。

「―助けて差し上げましょうか」

ふいに耳にこびり付いて離れないあの忌々しい声が振ってくる。
驚きおぼろが伏せていた視線をあげると、そこには笑みを浮かべたロンが立っていた。
「っ!!ロン!」
とっさに蒼太を庇うように立ち塞がったおぼろにロンはくすりと笑う。
「そんなに警戒されなくても何もしませんよ。今言ったばかりじゃないですか」
「助け…る?蒼太くんを?」
「ええ。先程は貴女には手酷く振られてしまいましたが、どうです?今度は悪い話ではないと思いませんか」
すっと目を細めるとおぼろの耳元に囁きを落とした。
「―だってこれは貴女のせいなんですから」
そのまま、おぼろを覗き込むと満足げに微笑んだ。
おぼろは顔を伏せ、肩を小刻みに震わせていた。
伏せた眼前にロンは手を差し出す。
その手の中には白い小さな石が納められていた。
「私のお願いを聞いてくれるなら、これを差し上げましょう。さあ、どうします?」
勢いよくおぼろが顔を上げる。その表情に覚悟の色が浮かぶ。
わななく唇をグッと噛むとゆっくりと手を伸ばしロンの掌の中の小石を―――――

518:名無しより愛をこめて
09/01/27 23:59:14 WhFi1zCQO



519: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:00:06 eD5Yf1lI0

―――――弾き飛ばした。
「……お断りや。どうせあんたの考えてる事なんてろくな事やない。そんなん聞けるか」
「そうですか。ではこれはお渡しできませんね」
傍らに転がった石を拾いあげると哀れむような視線を蒼太に向けた。
「それにしても彼も不憫ですね。仲間に裏切られ、今度は貴女に裏切られて、助かる唯一の方法をふいにするとは」
おぼろは何かを言い返すように唇をふるわせ、血が滲む程に噛み締めるとロンを睨み返した。
「では、ご健闘をお祈りしますよ。正義の味方のおぼろさん」
愉快そうに言い残すと、ロンの姿は金色の霞となり掻き消える。まるで最初から存在しなかったかのように。おぼろの心に拭い去れない澱だけを残して。

しばらくの間、拳を握りしめ立ち尽くしていたおぼろは力尽きるようにくずおれ、膝を付く。
爪が食い込み、その掌には血が滲んでいたが、おぼろは痛みを感じなかった。
血の滲む唇より掌より、心の方が余程痛む。音を立てそうな程に軋む。
「………蒼太くん……堪忍、堪忍な…………」
あんな奴と取引などできない。
そんな事をすれば、ハリケンジャーに、ゴウライジャーに、纏に、死んでいった者達に、なにより蒼太自身に顔向けできない。
「ごめんな…堪忍してな………ごめんな」
壊れたからくりのように、謝罪の言葉ばかりを繰り返す。許されないと分かっていながら、謝らずにはいられなかった。

――彼女も同じ気持ちだったのだろうか



520:名無しより愛をこめて
09/01/28 00:00:31 WhFi1zCQO



521: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:01:17 eD5Yf1lI0

仲間への裏切りという決して許されない、許されるべきではない罪を犯し逃げ去る時。
おぼろを襲い、意のままに操ろうとした時。
追いつめられた声で。救いを求める瞳で。
しきりに謝罪を繰り返していた彼女も。
彼女の何がそうさせたのかはおぼろには分からない。
僅かに残った良心か。あるいは狂気の中の微かな理性か。
決して理解はできない。
何故、今まで共に戦い、共に過ごした仲間を裏切る事ができるのだ。
生き残りたかったから?誰かを生き残らせたかったから?死んでしまった仲間を甦らせたかったから?
理解はできない。理解してしまうのが恐ろしい。
ただ、聞いてしまったから。見てしまったから。蒼太が敬愛していると語った彼女の名残を。
心の全てを憎悪で塗り潰してしまう事が出来なかった。
「いっそ、憎みきれた方が楽なんやけどなあ……」
蒼太も同じだったのかも知れない。いやむしろ、彼の方がおぼろより余程。
だからあの時、憎悪に飲まれた自分から彼女を逃がしたのだろうか。
そして今、おぼろも同じ罪を背負った。裏切りという名の罪を。
病院がどこにあるかも分からない、充分な手当ても出来ないこの状況下で蒼太が助かる術。可能性をみすみす捨てさせたのだから。
蒼太がそれを望んだかどうかはおぼろには分からない。
だが、このままにしておけばいずれ彼を待っているのは、死。おぼろは自らの手でその淵に叩き込んだのだから。
「ごめんな……ごめ……っ!!」
「……うっ」
「っ!蒼太くん?!」
力なく伏せられていた瞼が微かに動く。おぼろは急いで蒼太の手を取る。
弱々しく、だが確かな力で指が握り返された。


522:名無しより愛をこめて
09/01/28 00:01:34 WhFi1zCQO



523: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:02:29 eD5Yf1lI0
 ◇

「…良かったぁ。ほんまに良かった……」
おぼろの目に尽きたはずの涙が溢れ出す。緩んだ涙腺はなかなか締まってくれそうにない。
「すみません。ご心配おかけしちゃって」
蒼太は二つ重ねたディバックにもたれ、手渡された水を大儀そうに少しずつ飲み下している。
涙を拭いながらおぼろはせわしなく首を振った。
「なんも、そんなこと。でもほんまに助かって良かった」
「おぼろさんの手当てが適切だったおかげですね。それに……」
「…急所は外してたんやな。彼女」
「…ええ」
首を掻き切る。急所である心臓か太腿を刺す。
自衛隊の特殊部隊に所属し訓練を受けていた彼女が、本当に蒼太の命を絶つつもりでいたならばそこを狙ったはずだ。
だが、実際に彼女が刺したのは下腹、しかも致命的な位置からは僅かに逸れた箇所だった。
もっともあのまま血が止まらずにいたならば、遠からず命を落としていただろうが。
手負いの獣に手を出せば、死にものぐるいで抗う。
蒼太にとって、そして彼女にとって不幸は、彼女の手に一振りのナイフという爪があった事だったのかも知れない。
おぼろと蒼太、二人の間をしばしの沈黙が満ちる。
「おぼろさん、一つお願いしたい事があるんですけどいいですか?」
「ん?どうしたん?なんや欲しいもんでもあるん?」
気持ちを切り替えるように、おぼろは努めて明るく問い返した。
「助けを呼んできて欲しいんです。たぶんしばらく僕、動けそうにないので……」
「よっしゃ、まかしとき!あ、でもその間、蒼太くん一人で大丈夫やろうか?」
「ああ、それなら……」
「バウッ!」
ボクがいるから心配するな、とばかりにマーフィーがおぼろにじゃれつく。
「おっと、そうやったな。マーフィーちゃんがおったなあ。蒼太くんを頼んだでぇ、マーフィーちゃん」
「バウッ!!」
心得た。と勢いよく一つ尻尾を振るとマーフィーは蒼太の傍に寄り添う。
蒼太に頭を撫でられて、どことなく心地よさ気だ。

524:名無しより愛をこめて
09/01/28 00:02:50 aMdgtI/gO



525: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:04:11 jWTcekux0
「よっしゃ、じゃあ大急ぎでいってくるから待っててなぁ、二人とも」
そろそろ、瞬が美希達に合流した頃合いだろうか。
いざとなれば、集合場所も分かっているので追いつけないという事はないだろうが、急ぐにこした事はない。
こういう時に自分がバリサンダーを乗りこなせたならばと歯噛みするが、考えてもしょうがない事だ。
膝をバチリと打つと、ディバックを手に立ち上がる。
「ほな、いってくるな」
「すみません。お願いしますおぼろさん……気をつけて下さいね」
「気にせんどいてぇな。それに心配せんでも大丈夫やで。途中で襲ってくる奴ぐらい、いかづち丸で追っ払うさかい」
心配顔の蒼太にいかづち丸を軽く構えてみせる。勿論、怖くない訳ではなかったが、怪我人に心配はかけられない。
精一杯の強がりで微笑んでみせた。
「……合流してからもです」
ぎこちない微笑みは掻き消える。
「…それは……ティターンやドロップのお兄さんの事を言ってるん?」
「いえ、美希さんも含めて、です。むしろ彼女はもっとも注意すべきかもしれない」
「そんな…そないなこと……」
おぼろの脳裏を美希の横顔がよぎる。
あの悲しみは、ドロップへの慈愛は。決して偽りには見えなかったというのに。
だが、見つめた蒼太の顔からは穏やかさが消えていた。
「勿論、僕の考え過ぎかもしれないんですけどね。まあ念の為という事で」
おぼろを見つめ返し蒼太が微笑む。だが、その瞳の奥が笑っていない事におぼろは気が付いていた。
「……分かった。肝に銘じとくわ。蒼太くんも気ぃつけてな」
「ええ。おぼろさんも」
信頼は自分達がロンに立ち向かう上での最大の武器だ。だがそれは同時に翻って自分達を傷付ける凶器にもなりうる。
その事をこの僅かな時間で、蒼太もおぼろも痛感していた。


526:名無しより愛をこめて
09/01/28 00:04:25 aMdgtI/gO




527: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:04:58 jWTcekux0
 ◇

走り去るおぼろの背中が少しずつ小さくなっていく。
「さてと。そろそろいいかな。マーフィー、君にも頼みがあるんだけどいいかな?」
「バウッ?」
「おぼろさんに付いていって欲しいんだ。いかづち丸だけじゃ、やっぱり心許ないしね」
じゃあ、君はどうするの?とでも言うように気遣わしげに尻尾を小さく振る。
「僕なら大丈夫。ここでじっとしてるだけだしね。でもおぼろさんが気が付いたらきっと心配するだろうから、気付かれないようこっそりね」
いたずらっぽく人差し指を立てると、軽く片目を瞑る。
マーフィーは蒼太の顔をじっと見つめると、片足を胸の前に掲げ、一目散に駆け出した。
SGSのデータバンクで過去の戦隊のデーターを浚った事がある蒼太にはその仕草の意味が分かった。
もっとも、天下の宇宙警察の事なら、今時、そこらの道を歩いている子供でも知っているだろうが。
「ロジャー……か」
これで、自分はおぼろとマーフィー、二人に嘘を付いた事になるのだろうか。
ここに来てから嘘を吐いてばかりだ。まるで、スパイだったあの頃に戻ってしまったように。
だが、自分が今からやろうとしている事に彼女達を巻き込む訳にはいかなかった。
下腹の傷を軽くさする。そこには既に塞がりつつある傷があった。


528: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:08:42 jWTcekux0
 ◇

『良い事教えておいてやるよ。お前、そのうち女に刺されるぞ』
『僕は、鳥羽さんと違って女の子を泣かせたりしませんよ』
『さーて、それはどうかな?まあ俺達の稼業なんてどうせ薄暗い事ばっかりだ。いい死に方はしないだろうさ。
 裏路地で蜂の巣になるか、廃工場で野垂れ死ぬか……まあ美人だと思って油断してグッサリ、なんてならないように用心しろよ』
『美人に殺されるなら、それも悪くないなぁ』
『お前らしいよ。……でもまあ、確かに悪くはないな…』
『でしょ?』

「……結局、鳥羽さんの言った通りになっちゃったなあ………」
溜息を吐きながら、気怠い体を起こす。
確かにナイフが刺さったはずの下腹には傷跡もなく、口元を拭っても血の跡さえない。
目を開けても見えるのは現実感の欠けた果てしない無音の暗闇。死ぬ間際の夢にしては少しばかり虚しすぎる光景。
「……まあ、しょうがないか」
そう、仕方がない。あの日、自分が言ったように女性を泣かせてしまったのだから。
軽く目を閉じるだけで、瞼の裏に焼き付いて離れない光景が甦る。
自分を刺した時、あの場から逃げ去る時、見開いた目で、縋るような目で彼女は泣いていた。
今まで、自分達の前では涙など見せたことさえ無かったのに。
これは報いだ。自らは信頼を重んじながら、さくらを罠に嵌めるような真似をしたのだから。
ずっと他人を裏切って生きてきた。スリルを求めて、誰かを傷付けて。その陰で流される涙に気付く事さえなく。いや、気付かないふりをして。
自分が信じる側にまわって、初めて裏切られる事が恐ろしくなった。
確証を得たかったのだと思う。彼女は自分の信頼を裏切らない。尊敬する優秀なサブリーダーのままの彼女だと。
違和感は感じていた。どこか思い詰めている事も。分かっていながら、むざむざ追いつめるような事をしたのだ。
ただ、自分が裏切られたくないその一心で。

529:名無しより愛をこめて
09/01/28 00:09:12 aMdgtI/gO



530: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:10:01 jWTcekux0
その結果がこれだ。
確かに、彼女は殺し合いにのったと言った。敵に命乞いをして生き残ったとも。
だが、少なくともあの瞬間までは、彼女はまだ誰も手に掛けてはいなかったのだ。
その最後の一線を自分が越えさせてしまった。引き返せない所まで追いつめてしまった
彼女は語った。ただ生き残りたかったのだと。
だが、蒼太にはどうしても彼女がそれだけの理由で殺し合いにのるとは思えなかった。
彼女の行動には何か理由があるはずだ。例えば――
(チーフに何かあったとか?)
もし、チーフからのメッセージが偽りで、何者かにチーフの命を盾に取られていたのならば、彼女があれ程までに懸命になった理由の説明がつく。
彼女にとって明石チーフは憧憬の存在であり、唯一無二の存在なのだから。
真相は分からない。あるいは、自分の買いかぶりで、彼女は本当にただ生き残りたかっただけなのかも知れない。
どちらにしろ、今の蒼太にはどうすることもできない。死は今しも眼前にせまっているのだから。

『―助けて差し上げましょうか』

果てのない暗闇の中から滲み出るように、金色の霞が寄り集まり人の形を成していく。
蒼太はその姿を睨みつけると、指でボウケンチップを弾いた。
「あなたらしくない事をされますね。何も言わずに仕掛けてこられるとは」
霞の中を突き抜けるかに見えたチップは、澱むように動きを止め、人の姿をとったロンの手の中に転がる。
「死ぬ間際まで、君と腹の探り合いをするつもりはないよ」
当て付けのように投げたチップで牽制できるとは思っていなかった。
左手に構えたスコープショットをロンの方に向ける。
そのまま目を逸らさずに、アクセルラーに手を伸ばした。
対してロンは構える事もなく、ただゆったりと手を広げた。
「無駄ですよ。それに例え変身出来たところで、この場であなたは私に傷を付けられるとお思いですか?」
「さあね。でも君が目の前にいるんだ。このまま何もせずに死ぬよりましかもしれない」
「死なずに済む、としてもですか」
蒼太の目付きがより険しく鋭いものに変わる。
「……なんのつもりかな?」
「いえ、一応ご本人にも確認しておこうと思いまして」
大仰に広げていた手を蒼太の前に差し出す。
その手の中に納められた小さな石。見た目はちっぽけな、なんの変哲も無い石に見える。

531:名無しより愛をこめて
09/01/28 00:10:16 aMdgtI/gO




532: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:11:04 jWTcekux0
だが―
「ハザードレベル22……」
とっさに翳したアクセルラーが、蒼太の手の中で見た目にそぐわない数値を弾き出す。
「ええ、あなた方の言う処のプレシャスという奴ですね。昔、これを持っていた者は、確か不死の薬、と呼んでいましたか。
 もっとも実際には、一時的に生命力を増大させる程度の代物ですが。それでも今のあなたには充分なものだと思いませんか?」
わざとらしく眉根を寄せると溜息を吐いてみせた。
「実を言いますと、まずおぼろさんにこれを差し上げようとしたのですが、断られてしまいましてね。
 彼女はあなたの命よりも自分の誇りを選ばれたようですよ……まったく、正義の味方とは素晴らしいものですね」
口の端に抑えきれない、いや、抑えるつもりがないのだろう、歪んだ笑みを浮かべると蒼太の顔を覗き込んだ。
だが、その笑みはたちまちのうちに掻き消える事となる。
そこには、怒りも失望も悲しみも、ロンが期待した表情は何一つ、浮かんではいなかった。
「……何がおかしいんですか?」
その顔に浮かぶのは、微かな笑み。
渋面を作ったロンに問いかけられた蒼太はクスリと笑うと、腕を広げる。
「さあね。さて、いい加減、何が目的か教えて貰おうかな。僕を君の手駒にしたい、とかそんなところかな」
「なぜ、そう思われるのでしょうね?私が親切で差し上げようと思っているのかもしれませんよ」
「なんの条件もなくそんな物、渡す奴はいないだろう?特に君はこの状況を楽しんでいる。
 そんな君がわざわざ僕に情けをかけに来るとは思えないな」
「察しの良い方は嫌いではありませんよ」
ロンの顔に再びニヤリとした歪んだ笑みが浮かぶ。
「ああ、でも少しばかり惜しいですね。私がお願いしたいのは――」


533:名無しより愛をこめて
09/01/28 00:11:22 aMdgtI/gO



534: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:12:06 jWTcekux0
 
 ◇

(疑心暗鬼を煽れ、か。まあ、確かに僕は適任だろうね)
蒼太の傍らを人影のない荒涼としたビル群の風景が流れていく。
バリサンダーから伝わる振動が、塞がりきっていない傷に障るがあまりゆっくりもしていられない。
さくらやおぼろがバリサンダーに乗らなかったのは、蒼太にとって幸いだった。
今の状態では、徒歩であまり距離は稼げない。

『逆らえば僕を殺す、ってとこかな?』
『さあ?どうでしょう。ご想像にお任せしますよ』
得たりとばかりに愉快そうに笑うロンの顔が脳裏にちらつく。
疑心暗鬼を煽る、蒼太がその条件を飲むとロンは満足げに頷いた。
『やはり、私が見込んだだけの事はありますね。では、良い殺し合いを』

確かに蒼太はおぼろに美希への不信を吹き込んだ。彼女の疑心を煽る為に。
例え、元々彼が美希への疑惑を持っていたとしてもだ。
だからこそ、これ以上彼女と共にはいられなかった。
だから、偽りの願いで彼女を遠ざけた。
もし、彼女が工場に戻ったとしても、残されている物はない。
手掛かりになるような物は何も残して来なかった。彼女が自分を追ってこれないように。
もうこれ以上、彼女を巻き込みたくなかったから。

ロンの打倒を胸に誓いながら、生き延びる為にロンの出した条件に従う。
矛盾した二つを抱え、蒼太はバリサンダーを奔らせる。
ただ一つの人影、西堀さくらの姿を追い求めて。
彼女が誰も手にかけないうちに。もう彼女が泣かずに済むように。
どんな手を使っても彼女を止める。例えもう一度傷付けあう事になったとしても。

その為に死の淵から這い上がって来たのだから――



535:名無しより愛をこめて
09/01/28 00:12:25 aMdgtI/gO


536: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:12:57 jWTcekux0
【最上蒼太@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.3、後
[現在地]:F-5都市 1日目 昼
[状態]:下腹に刺し傷(不死の薬の効果により回復中)、30分ボウケンブルーに変身できません。
[装備]:アクセルラー@轟轟戦隊ボウケンジャー、スコープショット@轟轟戦隊ボウケンジャー、ヒュプノピアス@未来戦隊タイムレンジャー
[道具]:バリサンダー@忍風戦隊ハリケンジャー、不死の薬@轟轟戦隊ボウケンジャー、支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:さくらを止める。
第二行動方針:目的を果たす為、ロンの出した条件を飲む(あまり積極的ではない)
※首輪の制限に気が付きました。
※時間軸のずれを知っています。

【日向おぼろ@忍風戦隊ハリケンジャー】
[時間軸]:巻之三十、後
[現在地]:F-5都市 1日目 昼
[状態]:全身に軽い火傷、打撲。応急処置済み
[装備]:イカヅチ丸@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:動けない蒼太の為に助けを呼んでくる。
第二行動方針:首輪を何とかする。ジルフィーザと合流する。
第三行動方針:蒼太と共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
※首輪の制限に気が付きました。
※時間軸のずれを知っています。


537:名無しより愛をこめて
09/01/28 00:13:10 aMdgtI/gO



538: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:15:38 jWTcekux0

【名前】マーフィーK-9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:F-5都市 1日目 昼
[状態]:修復完了。本調子ではないが、各種機能に支障なし。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:???
第一行動方針:おぼろを追いかける(こっそりと)


以上です。
指摘、つっこみ、誤字脱字、感想などありましたらよろしくお願いします。

539: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:20:57 aMdgtI/gO
っと、タイトルを忘れておりました。

『Separation』

540: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:46:34 jWTcekux0
途中送信とかorz

『Separation of the heart』です。

よろしくお願いします。

541: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 01:14:18 aMdgtI/gO
修正箇所を見つけましたので、自己申告をば。

不死の薬→不死の薬の欠片

お手数ですがよろしくお願いします。

また、不死の薬の本来のハザードレベルは82ですが、
その欠片ですので、若干数値を落としてあります。
もし、問題があるようでしたら、修正いたしますので、その際はご意見をお願いいたします。

542:名無しより愛をこめて
09/01/28 01:50:40 7WCi9xV10
御三方ともGJ!

>ブドー
強さを渇望し、その結果、三ツ首龍を手に入れたブドー。
それに至る経緯が情感たっぷりに描写されていてブドーに感情移入してしまいました。
今後のブドーの動きがとても楽しみです。
三ツ首龍の扱いについては特に問題はないと思います。
指摘ですが、タイトルをいただければなと。

>蜥蜴の尻尾切り
メガブルーに対するネジビザールの態度の描写が秀逸。
変わり果てたメガブルーをそのまま倒すかと思いきや、氷漬けにするという行動をとったのがネジブルーの変質ぶりが顕わされているなと思いました。
しかし、裕作氏はどうなることやら。
指摘ですが、裕作のI4からH6の場所移動に掛った時間を考慮すると、流石に時刻が午前というのは厳しいかなと。

>Separation of the heart
蒼太の傷とロンの甘言に迷うおぼろさん。結果、撥ね退けましたが、今度は蒼太に魔の手が。
ロンのアグレシップさが暫定的ながら蒼太を協力者にすることに成功しましたが、はてさて、それが今後、どういう影響を与えていくのか。
ロンの甘言に揺れ動く蒼太とおぼろの心情の変化が素晴らしい作品でした。

543:名無しより愛をこめて
09/01/28 13:59:08 eMu0G1Kh0
投下乙です。
GJです。
おぼろさんと蒼太の心理描写が良かったです。
細かいところまで、とても丁寧に描写してあって感情がすごく伝わってきた。
読んでて胸が痛くなったのは内緒だ。
もう一度GJ!


544:名無しより愛をこめて
09/01/28 22:38:19 7FA294Ly0
あえて毒を呑む蒼太の決意が物悲しいですね…これから先どうなっていくのか……
纏の墓の前で誓った言葉から皆どんどん遠ざかっていくようです。

それと、指摘というほどのものでもないのですが、おぼろは前回抱いたさくらへの怒りを
一旦平静に戻ったことで解いたということでよろしいのでしょうか?
自身もヒュプノピアスの被害に遭っている上に蒼太まで傷つけられているのですが。
人を憎みきれないおぼろの気性そのものは丁寧に描写されているので納得は出来るのですが、
さくらへの感情はどうなのでしょう?

545: ◆Z5wk4/jklI
09/01/29 18:24:36 pEPYnnQQ0
>>542-544
ご感想ありがとうございます。

>>544
返答が遅くなりまして申し訳ありません。
そのようにご解釈いただければ幸いです。

まず、蒼太がなんとか命を取り留めたことで平静を取り戻したこと
刺し傷が急所を外していた事。
蒼太を傷つける前後のさくらの様子を思い出し、
彼女が追い詰められていたことを行動自体は理解できないまでも、感じたこと。
助けを求めにいくという目的が出来たこと。
などにより、さくらに対する憎悪に飲まれた状態から回復した。
というように描写したつもりでした。
もし、ご納得いただけない、本文から伝わってこないという事でしたら、修正させていただこうと思いますので、
お手数ですが、ご意見お願い致します。


546:544
09/01/30 02:56:02 BT/g46Bi0
いえいえ、ご指摘というか、個人的に少し気になっただけなので。
丁寧にご説明いただきありがとうございました。

547:名無しより愛をこめて
09/01/31 11:52:34 5C1vqNF20
熱血死、鬱死、無念死と死に様は色々あるけど、好きな死に様のキャラって誰かいる?

ちなみに自分は、纏兄の熱くも切ない死に様と、サーガインの死亡話が好きだ。
特にサーガインは読んでるとき、『次の状態表で海の中だったりしてw』なんて、暢気に読んでたから、
読み進めた時に本当にびっくりしたw

548:名無しより愛をこめて
09/01/31 13:34:20 X1CNVZ1ZO
深雪ママかな。
あの無念さと絶望にはマジでorz
魂えぐられた感じがした。


549:名無しより愛をこめて
09/02/01 17:13:19 ayTtNKIPO
>>548
確かにあの話は読んだ時のダメージがでかかったなー。
小津母娘の死に方は壮絶だった。

550:名無しより愛をこめて
09/02/03 17:21:30 8oO/XffXO
くっ!乗り遅れたか。
まさにどうしようもない状態のバンキュリアもorz

551:名無しより愛をこめて
09/02/07 13:44:28 09mj48PQ0


552:名無しより愛をこめて
09/02/08 00:33:32 lMC5QG90O



553: ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:08:52 kDBnFMa30
志乃原菜摘、高丘映士、投下します。

554:NATURAL BORN 姉御肌 ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:09:36 kDBnFMa30
ゴロンと横たわる大きなオレンジ色の爆竜。
アンキロベイルスのキレイなオレンジ色の体表が、遠目からでもはっきりと良く見える。
背中のトゲトゲした銀色の突起が、太陽の光を受けて鈍く輝いていて、まるでアンキロベイルスが『菜摘、こっちだキロ~』と私を呼んでいるみたい。
「っ!?あいつがアンキロベイルスか」
アンキロベイルスを目の当たりにした映士は、猫みたいにカッと目を見開いた。
ま、あの大きさじゃ驚くのは無理ないよね。
でも、アンキロベイルスは怪物じゃない。
私を助けてくれた、私にとって大切な友人。
映士にとってのウメコってコと一緒だと思う。
「そんなに驚くことないキロ!」
私はわざとアンキロベイルスの口調を真似て言ってみた。
映士は面食らった顔で私を見つめて、
「お、おぅ。すまねぇ」
なんて、ちょっと間の抜けた返事を返した。
解ればよろしい。
私はきゅっと口を結んで頷き、映士の肩をばしんと叩き先へ急がせた。
映士が走る速度を上げる。
私も映士に合わせてどんどん速さを上げる。
急がなきゃ、ね。
なにしろ、壬琴がウメコってコの首輪を奪いに行くまでのカウントダウンは、もう始まってるんだから。

壬琴が私たちに与えたのは3時間。

普通で考えれば、3時間あれば結構といろいろ出来る。
落とし物を探すには充分かな?とも思える。
でも、今、探さなきゃならないのは普通の探し物とちょっと違う。
3時間。それは、充分なようにも足りないようにも思える。

アンキロベイルスの首輪を探すには、まず何処に落ちてるかっていう場所の特定が肝心。
だけど、場所はそう心配じゃない。
映士が探してみせると言ったし、その手段を映士は持ってるから。

555:NATURAL BORN 姉御肌 ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:10:15 kDBnFMa30
ただ一つ、私が心配なのは、首輪がどこに落ちてるか。
それによって結果が大きく変わってくる。

『沈みかけている島が見え……たから、きっとそこに菜摘がいると思って……』

アンキロベイルスは、確かにそう言っていた。
きっと、アンキロベイルスがいたのは、私が捜していた洞窟からそう遠くないところ。
何か特別な仕掛けがしてあったのか、水中だったのか地中にいたのかは解らないけど。
アンキロベイルスが元の大きさに戻った事で、落ちてしまった首輪が海に沈んでいたり、土砂に埋もれてしまったりしているかもしれない。
もし、海中だったら……。
流れが激しい上に、海底にはごろごろ岩が転がってて見つかりにくいだろうし。
もし、地中だったら……。
どれくらい下に埋まっているかで掛かる時間が全然変わってくる。
どっちにしろ、実際に行ってみなければ、答えなんかでない。

……なーんて。案外、こんな心配は無用だったりして。
海にプカプカ浮いてたり、アンキロベイルスのすぐ側に落ちているかもしれないし。
って、やっぱりそんなに都合良くいくわけはないか。

「おい、菜摘!待てよ。俺様に任せとけって!!」
映士の声が後ろから聞こえた。
考えてるうちに、いつの間にか映士を追い越してたらしい。
私は少し走る速度を落とした。
夢中で走ってたおかげでもうアンキロベイルスは目の前、ここからは映士の出番だ。
私は右手を腰に当て、左手で映士をビシッと指差した。
「じゃあ、早速だけどお願いね!」
「おう、任せとけってんだ!」
映士は手で鼻を擦りニヤリと笑った。
「ゴーゴーチェンジャー!スタートアップ!!」
まさに、俺の出番だ!と言わんばかりのオーバーリアクション。
振り上げた腕のブレスが銀色の閃光を放ち、映士はボウケンシルバーに変身した。

556:NATURAL BORN 姉御肌 ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:11:46 kDBnFMa30
流石、眩き冒険者と名乗るだけのことはあるね。
眩しくて、つい私は目をそらした。
そしてアンキロベイルスの、背中の鎧みたいな銀色の装甲を見あげる。
文字通り『眩く』輝いたボウケンシルバーの銀色の光は、アンキロベイルスの鈍い銀色と比べて眩しすぎた。
生と死の対比みたいで、ほんの少しだけ心が痛かったのは内緒にしておこう。
私の視線を追って、ボウケンシルバーもアンキロベイルスを見あげた。
「許せねぇよな。これじゃ、まるで見せしめじゃねぇかっ!」
おっと、いきなりボウケンシルバーがキレた。
でも、『見せしめ』か。
そうか、見せしめにするためだから、身体の大きいアンキロベイルスだったんだ。
ロンのやった事と、助けて上げられなかった悔しさで鳥肌が立った。
「うん。絶対、許せない」
私は涙を飲み込んで言った。
「ロンは、ただ首輪を外しただけじゃ帰れない。結局は殺し合いに乗らなきゃ生きて帰れない。
きっと、その事を私たち参加者に思い知らせるために、最初から見せしめにするために、アンキロベイルスを使ったんだわ」
私はアンキロベイルスの、キレイなオレンジ色の肌をそっと撫でた。
もうすっかり冷たくなってしまった新しい友達。
「ごめんね。本当に絶対ロンになんか負けないから」
私はアンキロベイルスに誓った。
アンキロベイルスの死を無駄にしないためにも、絶対に負けないと―。


――キュイーン、キュイーン。
サガスナイパーが探索音を鳴らし首輪を探知し始める。
「ヒット!」
わかりやすい!
もう場所が解ったのね。
私はボウケンシルバーの元へ駆け寄った。
「あったの?」
「ああ、こっちだ!」
ボウケンシルバーと私はサガスナイパーの示す方向へ急いだ。

557:NATURAL BORN 姉御肌 ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:12:20 kDBnFMa30
ちらっと時計を確かめる。
壬琴と別れてから、まだ1時間も経っていない。
楽勝かな?つい、頬が緩んだ。

だけど、やっぱりそうは問屋が卸さなかった。
サガスナイパーの反応を追った私たちを待っていた先は断崖絶壁。
自殺の名所と表すのがピッタリの場所だった。
崖の下はご丁寧にも渦が巻き、高い水しぶきが上がっている。
私はごくりと一つ息を飲み込んだ。
「この崖の下って訳ね?わかったわ」
腕を捲くって飛び込もうとした私をボウケンシルバーが慌てて止めた。
「バカヤロー!変身出来ねぇくせに飛び込んでどうすんだ」
グサッと映士の言葉が胸に突き刺さる。
バカヤローはないんじゃない?
……確かに変身できないけど。
映士と壬琴に話したように、アンキロベイルスを助けようとした時、私はアクセルキーを海に落としてしまっていた。
そのおかげで私はイエローレーサーに変身できない。
鍵なんてなければよかったのに。
私はただのブレスレットと化したアクセルブレスを恨めしく見つめた。
きっとダイノハープの一件の時、壬琴で爆笑したバチが当たったんだ。
他に私が持っているのは、同じように鍵がなきゃ変身できないダイノコマンダーと、ゲキファンにダンベルみたいな物と、アンキロベイルスを捜すときに見付けた通信機だけ。
今、役立ちそうな物はない。
「お前はここで大人しく待ってろ!!」
「大人しくって何よ!」
「だから!俺様に任せろって言ってんだろ!!」
ボウケンシルバーはサガスナイパーを私の右手、アクセルブレスにかざし、探査に使うチューニングを切り替えた。
――キュイー―ン。
「ヒット!」
再びサガスナイパーが海の中で反応を示した。
フン、と勝ち誇ったようにボウケンシルバーは鼻を鳴らした。

558:NATURAL BORN 姉御肌 ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:12:53 kDBnFMa30
「やっぱりな。俺様の読み通り、菜摘の落とし物も首輪も流されて、ここに集まって来てるようだぜ。待ってろ、俺様が取ってきてやる!」
ボウケンシルバーは私の答えを待たず、断崖絶壁へ飛び込んで行った。


数分間、私は瞬きをするのも忘れて荒れ狂う海を見つめていた。
青い海の中、銀色のボウケンシルバーの姿は見えない。
大丈夫かな?
溺れたりしてないよね?
私は両手を胸の前で握りしめ、じっと祈りながらボウケンシルバーを待つ。

ザバン!

一際高く舞い上がる波と共に、ボウケンシルバーが海から飛び出した。
「菜摘!」
ボウケンシルバーが私に目掛けて小さな『何か』を投げた。
手を伸ばしてキャッチすると、それはアクセルキー。
「やった!」
私は手を振り上げて喜んだ!
ボウケンシルバーはそのまま放物線を描き再び海の中へ。
やった!やった!やったね!
ボウケンシルバー最高!
サガスナイパー最高!!
この調子なら任せておいて大丈夫よね。
私はすっかり安心しきって崖の上に腰を下ろし、おねだりする子供のみたいに両足をパタパタさせてボウケンシルバーを待った。

そして数分後、さっきと同じように派手な波しぶきを上げてボウケンシルバーが海中から跳躍した。
もちろん、アンキロベイルスの首輪を手にキラリと光らせて。
颯爽とボウケンシルバーは崖を飛び越えて、こちらに飛んでくる ……。

559:NATURAL BORN 姉御肌 ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:13:53 kDBnFMa30
と思いきや。
突然、ボウケンシルバー身体が銀色の光を放った。

「うおぉーーーーーっ?!?!」

ボウケンシルバーが叫び、いや、何故か空中で元の姿に、ボウケンシルバーから映士に戻っていた。
崖の上まで後少しのところで、バランスを崩した映士は、そのまま真っ逆さまに海へ落ちて行った。

「映士?!映士ィーーーー!!」

一体どういうこと?
なんで変身解除するわけ!?
ううん。あの状況で解除って有り得ない。
いきなり強制終了されたって感じだった。
もしかして、これもロンの仕掛けだとか?
と、考えている間に映士の身体が波に飲まれていく。

ヤバイ!

思わず私は海にダイブ。
落ちていく途中、映士が変身していた時間を頭の中で素早く思い出す。
アンキロベイルスの元に辿り着いてから変身が解除されるまでの時間は10分ぐらいだった。
なら、私もそれぐらいは変身したままでいられるはず。
その間に映士と首輪を引き上げる。
「よし、激走!アクセルチェーーンジ!!」
着水寸前、私はアクセルキーをアクセルブレスに差し込みイエローレーサーへ変身した。


私は無事に変身出来たことに安堵しつつ、映士を探すために注意深く海の中を見回した。
だけど、海底を流れる激しい水流と、浮かび上がる大小様々な泡に、私の視界は奪われる。
(映士!どこ!?)
いない。

560:名無しより愛をこめて
09/02/08 23:14:16 CunQhbcH0
支援

561:NATURAL BORN 姉御肌 ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:15:49 kDBnFMa30
……海底の岩の間に嵌まってしまったのか。
いや、もしかしたらすでに浮上しているとか。
波に逆らいながらもう一度、上下左右ぐるっと視線を動かしてみる。
早く見つけなきゃ。
生身の人間が溺死するのにどれくらいの時間がかかるのか私には解らなかった。
波に消えた映士が、息を止めていられる限界はどれくらいだろう。
この流れの中じゃ、そんなに長く息を止めてはいられないと思う。
2、3分もあれば充分死んでしまうように思える。

こうしてる間にも映士が……。
私のせいだ。
私がアクセルキーを落としてなきゃ。
映士、アクセルキーなんか探してなきゃ、こんなことにならなかったのに。
私のせいでアンキロベイルスだけじゃなく、映士まで。

そう思うと涙がこぼれ、マスク越しの視界が余計悪くなる。
泣くな、私。
前が見えなくなるから。
私はパチンと目を瞬かせ涙を払った。

よく目を凝らすと、水流が渦巻く中心。
流れが緩やかな場所にキラキラ輝く光が見える。

ちょっと、待って……。あれは!?

ゆったりと流れに戯れる金の光……。

あれ、やっぱり!
金の光はアンキロベイルスの首輪。
そしてその先に、手足を大きく投げだし、漂う映士の姿を見つけた。

562:NATURAL BORN 姉御肌 ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:16:31 kDBnFMa30
私は猛然とその光に向かって泳ぎ進んだ。

すぐそこに映士が見えているのに、水流が邪魔をする。
泳いでも泳いでも距離が縮まらないように思う。
だけど、腕に渾身の力を込めて泳ぎ進んだ。
私の伸ばした手が映士に届きそうなところまで来た時。
身体がふっと軽くなった。
渦巻きの中心まで辿り着いたんだ。

私は映士の手を握って引き寄せる。
アンキロベイルスの首輪も、じゃれるようにこちらに流されて来た。
私は映士の両脇に腕を回し抱き、アンキロベイルスの首輪をしっかりと握り、海面に向かって浮上する。
暗い水の中で、アンキロベイルスの首輪の放つ光がキラキラ揺れていた。


海面を突き破って一気に空気の中に踊り出る。
映士を抱えたまま、僅か突き出た岩を足場に崖の上まで駆け上がった。
なるべく平らなところにそっと映士を寝かせ、呼吸を確かめる。
ダメだ。
息を、してない。
絶望的な思いが私を包んだ。

待って、待って、冷静になれ、私。
私は映士の心臓に手を当ててみたり、頬を叩いてみたりしながら考えた。

そうだ……。
こういう時ってアレだよね。

私は映士の顔を見つめた。
薄い唇が血の気を無くして紫に近い色に見える。

マウス・トゥ・マウス。だよね。

563:NATURAL BORN 姉御肌 ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:17:14 kDBnFMa30
一分どころか一秒を争うんだよね。

……あぁ。

一瞬、憂いが私を襲う。
でも、私のせいだ。
それに、これはキスじゃない。キスするわけじゃない。
人命救助なんだ。
と、思ったところでお誂えむきに、私の変身は解除された。

映士が死んでもいいの!?

私は自分を奮い起たせた。
映士の鼻を摘み、大きく息を吸い込む。

「映士、ごめん!」

なんで謝ってるのかよく解らなかったけど。
私は無我夢中で映士の唇に自分の唇を押し当て、遠慮なく息を吹き込んだ。



結果から言うと、私たちが戻った時、公園にもう壬琴はいなかった。
ビビデビも、もちろんいなかった。
映士はというと、あの後無事に息を吹き返し、今は私の横で悔しさを大地にぶつけている。
私はフツフツと込み上げる怒りに拳を握りしめ、壬琴が別れ際に私たちに向けた、やたらサディスティックな笑みを思い出しているところだ。

なるほどね。
最初からそういうつもりだったってわけ?
約束の時間まで、まだ1時間あったのに。
あんな思いまでして、やっと見つけて来たのに。

564:名無しより愛をこめて
09/02/08 23:17:21 lufuHFnR0
sien

565:NATURAL BORN 姉御肌 ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:18:33 kDBnFMa30
映士なんて、死にかけたのに。
壬琴、あなた、やってくれるじゃない……。

「映士!」
私は自分でもびっくりするくらいの大声で映士を呼んだ。
映士はビクッと肩を震わせて恐る恐る私を見た。
「座り込んでる場合じゃないでしょ!行くよ!!」
驚いてる映士の腕を掴んで、私は『ウメコ』の元へ走った。


【名前】高丘映士@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:J-7海岸 1日目 昼
[状態]:溺れた事による極度の疲労。2時間変身不可。
[装備]:ゴーゴーチェンジャー
[道具]:ボウケンチップ、知恵の実、不明(確認済) 、基本支給品一式(映士、小梅)
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ロンを倒す。
第一行動方針:菜摘と共にウメコの元へ。
第二行動方針:ガイと決着を着ける。
※首輪をただ外すだけでは駄目だということに気付きました。


566:NATURAL BORN 姉御肌 ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:19:16 kDBnFMa30

【名前】志乃原菜摘@激走戦隊カーレンジャー
[時間軸]:最終回終了後
[現在地]:J-7海岸 1日目 昼
[状態]:軽い打撲、水中にいたため身体は疲労しています。
[装備]:アクセルブレス
[道具]:ダイノコマンダー@爆竜戦隊アバレンジャー、クロノチェンジャー@未来戦隊タイムレンジャー、キーボーン@特捜戦隊デカレンジャー、ゲキファン@獣拳戦隊ゲキレンジャー、アンキロベイルスの首輪、基本支給品一式
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。仲間を集めて状況を打開したい。 ロンに負けない。
第一行動方針:映士とウメコの元へ。壬琴に怒り。
第二行動方針:仲間(陣内恭介・シグナルマン)を探す。
備考:ダイノハープがないため、アバレブラックへの変身はできません。また、菜摘が変身できるほどのダイノガッツがあるかは不明です。
 アクセルキーは見つかりました。変身制限に気が付きました。
※首輪をただ外すだけでは駄目だということに気付きました。

567:名無しより愛をこめて
09/02/08 23:20:50 lufuHFnR0



568:NATURAL BORN 姉御肌 ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:21:45 kDBnFMa30
以上投下終了です。
途中支援ありがとうございました。

指摘、矛盾、疑問点がありましたらお願い致します。
感想も頂ければ嬉しく思います。

遅くなり申し訳ありませんでした。

569:名無しより愛をこめて
09/02/08 23:40:16 lufuHFnR0
投下GJです!!
仲代先生逃げてー!超逃げてー!!怒りの姉御が追ってくるぞーw
実際は仲代先生にその気はないわけですが、この状況じゃ彼らの怒りも無理もないですねw
ある意味ピンチの仲代先生も含めて今後が楽しみですw
菜摘のアンキロへの想いの描写が切なかったです。GJ!!

それにしても、相変わらず菜摘は無謀というか、無茶というかw

570: ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:45:59 kDBnFMa30
さっそくの感想ありがとうございました。

自己申告にて修正をさせて頂きます。

>>554-555にかけての部分少し日本語がおかしいので

アンキロベイルスの首輪を探すには、まず場所の特定が肝心。
だけど、場所はそう心配じゃない。
映士が探してみせると言ったし、その手段を映士は持ってるから。
ただ一つ、私が心配なのは、首輪が拾えるところに落ちているか。
それによって結果が大きく変わってくる。

に修正します。
申し訳ありません。

571: ◆MGy4jd.pxY
09/02/08 23:50:23 kDBnFMa30
と、菜摘の状態表で『2時間変身不可。』が抜けておりました。
重ね重ね申し訳ありません。

572:名無しより愛をこめて
09/02/11 18:44:53 aOoCRuBg0
電線に鳩が二羽サンバ

573:名無しより愛をこめて
09/02/11 20:16:39 Gwv8u5FoO
鳩が二羽サンバ?
なにそれ?!ネガティブシンジケートの暗号?

574:名無しより愛をこめて
09/02/11 22:45:03 7ww5aIZzO

つ カーレンジャーED『天国サンバ』

575:名無しより愛をこめて
09/02/12 12:24:38 aD2nZTA+0
保守

576:名無しより愛をこめて
09/02/15 18:46:22 LMIWB6s00
したらばの参加者&アイテム紹介の人最近出ないな~。

577:名無しより愛をこめて
09/02/16 09:44:46 51RnlkZc0
まとめ更新GJです!
いつもありがとうございます。

578:名無しより愛をこめて
09/02/20 08:50:14 Tt+V3Xf0O
第2回放送も近いな。
まだまだ波乱がありそうだが……。

579:名無しより愛をこめて
09/02/20 16:39:58 WVqjvmBp0
少なくとも、一騒動はありそうですねー。
導火線に火がついてジリジリ進んでる感じがしてwktk

580:名無しより愛をこめて
09/02/23 19:48:35 H/xblAR3O
予約も楽しみ。

581:名無しより愛をこめて
09/02/24 21:36:14 074/479zO
>>580
楽しみですねー、ネジブルー、メガブルー(with次元獣)、ロンがどんな風に絡むのかな?

582:名無しより愛をこめて
09/02/26 08:47:11 NAaEZZ2mO
もう一本予約入りましたね!wktk

583:名無しより愛をこめて
09/02/27 22:53:58 E7AlQ8daO
>>582
楽しみですね!
ついにあの3人が!!とwktkが止まらない

584: ◆i1BeVxv./w
09/03/01 17:09:44 sM6XDsJR0
投下いたします。

585:サクラチル ◆i1BeVxv./w
09/03/01 17:10:27 sM6XDsJR0
 血と肉片が散らばる床から、さくらは血塗れの槍を手に取った。
 おそらくそれはフラビージョの装備だったものだろう。
 支給品の全てを破壊され、ズバーンに見捨てられたさくらには貴重な武器だ。
 落ち込んでいる暇などない。自分には確固たる目的がある。
 さくらはズバーンを一瞥すると、頭の中で地図を広げた。そして、自分が今、どの辺りにいるかを瞬時に把握する。
(さて、これからどこへ向かうべきでしょうか?)
 西と南は既に禁止エリアとなった。ならば、北か東。
 東はあと数分もしない内に禁止エリアと成り果てる。普通に考えれば北だ。
 だが、だからといって北へ向かえば、まだこのエリアにいる者、例えば、おぼろと鉢合わせる可能性が高い。
 ならば、危険を承知で東を抜けるべきか。
(ここで様子を見るというのは……ありえませんね)
 留まるという第3の選択肢をさくらは否定する。
(チーフはきっと都市部のどこかに居ます。留まったところで、チーフが私を見つける可能性はそれこそ0でしょう。
 行動しなくては、何も始まりません。一刻も早くチーフと合流するためには動くべきです)
 ロンに掛けられた暗示は惨めで見苦しい無様な死に様を晒すこと。特に相手は指定されていなかった。
 だが、二度目のロンの邂逅と、その心の奥底にある明石暁への強い執着心から、さくらは明石以外に死に様を晒そうとは思わなくなっていた。
(東にしましょう。一か八かですが、誰かを相手にするより、時間を相手にした方が幾分か楽そうです)
 さくらはスッと立ち上がると、東へと身体を向けた。時間を相手にする以上、これからの行動には俊敏さが求められる。
(……今、何か音が)
 しかし、さくらは周りの警戒を怠ってはいなかった。
 空気の震えを感じ、素早く物陰に身を隠すと、耳に全神経を集中させる。
(聞こえます。これは……足音。こちらに近づいて来ている?)
 おぼろか、グレイか、はたまたフラビージョを殺した殺戮者か。
 何にせよ今のさくらにとっては誰であろうと大した問題ではない。
(チーフと合流するまで、もう迂闊な接触は避けるべきですね)

586:サクラチル ◆i1BeVxv./w
09/03/01 17:10:59 sM6XDsJR0
 幸いにして、闖入者との距離はまだある。逃げるには充分な距離だ。
 だが、踏み出したさくらの足は一歩目で止まった。
「おい、誰かいるか!」
(こ、この声は……)
 さくらはその声に聞き覚えがあった。
(いえ、ありえません。そんな幸運。動かずとも、会えるなんて、そんなこと)
 可能性は限りなく低い。だが、実際に耳を震わせたその声を、自分が間違えるはずもないその声の主を疑う余地はない。
「チーフ!!」
 さくらの声に足音が刻むリズムの速度を増す。
 やがて、さくらの視界が声の主を捉えた。
 その姿は紛れもなくさくらが待ち望んだ男。赤のボウケンジャケットを身に纏った明石暁だった。
「さくら、無事だったのか!」
 笑顔で暁はさくらに駆け寄る。対して、さくらもわずかな距離を埋めるため、暁に駆け寄った。
 二人の距離が程なくして0になる。
「はい、チーフも無事のようで何よりです」
「ああ。しかし、この惨状は……」
「ええ、私が来た時にはもうこの状態でした」
 暁は眼前の光景にわずかに顔をしかめた。
「犠牲者は魔神クロノスとの戦いでクロノス側にいた巫女、フラビージョ。
 そして、おそらく手を下したのはメガブルーを呼び出そうとしていた放送の主でしょう」
「放送?そんなことがあったのか」
「そういえば、チーフはロンからの放送があった時点ではG2エリアでしたね」
 さくらは簡単にメガブルーを呼び出す放送のことを暁に伝える。
 そして、同時にお互いがどの時間軸から来ているのかの確認も行った。
「流石です、チーフ。既に時間軸の違いに気付いていたとは。
 すると、チーフは私がいた日時より、1ヶ月程後ということになりますね。
 それでチーフ、その間に共有すべき情報は……」
「さくら、ミッションはまだ継続中だ。情報交換は移動しながらでも出来る。先に進むぞ」
「それもそうですね」
 踵を返した暁に、さくらも移動の準備をする。

587:サクラチル ◆i1BeVxv./w
09/03/01 17:14:02 sM6XDsJR0
 そうは言っても、さくらの持ち物と言えば、槍ぐらいだが。
「さくら、ズバーンを取ってくれ」
「えっ」
「ズバーンだ。そこに落ちているだろう」
 さくらは暁に会えた喜びにすっかり失念していた。床に放置されているズバーンの存在を。
「どうした?」
 ズバーンを取りたいのは山々だが、さくらはズバーンには拒絶されている。
 おそらく、もう一度、取ろうとしても結果は一緒だろう。
「チーフ、ズバーンはチーフが持つべきです。私は―」
「俺は既に命令した」
 なんとか誤魔化そうとするさくらだったが、暁は背中を向けたまま、取り合おうとしない。
(……仕方ありません)
 チーフの命令は絶対。
 おずおずとさくらはズバーンに手を伸ばした。
「ぐっ!ああああーーっ!」
 ズバーンから発せられた電流がさくらの身体を駆け巡る。
 覚悟していた分、悲鳴を抑えることは出来たが、持つには至らず、すぐにその手を離してしまう。
「……やはりな」
 暁は振り向き、鋭い眼でさくらを捉える。
 さくらはその態度から、暁が目的を持って、自分にズバーンを拾わせたことを悟る。
 そう、冒険者たる暁がズバーンの宝石が黒ずんでいることを見逃すわけもなく、冒険者たるさくらがズバーンを拾わないことは普通ならありえない。
「はぁ、はぁ、はぁ…………チ、チーフ……」
「さくら、どうしてズバーンはお前を拒む?」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「答えろ、さくら!」
「………」
 さくらは槍を自分の咽喉元へと向ける。
「!」
「チーフ、私は殺し合いに乗りました。殺し合いに乗って、グレイというロボットを破壊しようとしました。
 クエスターを挑発し、殺そうとしましたが、返り討ちに合い、土下座して、靴を舐めて、命を乞いました」

588:サクラチル ◆i1BeVxv./w
09/03/01 17:16:20 sM6XDsJR0
「さくら―」
 暁が言葉を掛けようとしたのが見て取れた。おそらく慰めの言葉だろう。
 だが、さくらは口を噤まず、言葉を紡ぎ続ける。
「その後、蒼太くんに会いました。
 蒼太くんは半年以上前の蒼太くんだったみたいですけど、私が殺し合いに乗ったことを知っても許してくれました。
 でも、私はそんな蒼太くんを手にかけてしまいました。
 ズバーンに見捨てられるのも当然です。人を殺すことを躊躇わず、自分の保身のためには誇りさえ捨て、信じあえる仲間まで犠牲にしました。
 どうしようもなく惨めで、生きていることが無様です。だから、私は―」
「死んで、全てを精算するつもりか」
 さくらはわずかに頷き、肯定の意思を示すと、ゆっくりと眼を閉じた。
 瞳から一粒の涙が、零れ落ちる。
 最後にこの世で最も敬愛する男に看取られ死ねるのだ。悔いはない。むしろ、堕ちた自分には過ぎた最期だ。
「そうか、ならば死ねばいい。俺は止めない」
「―えっ」
 一度は閉じたさくらの眼が開かれた。
 命を失うことに躊躇いはない。もう覚悟はできた。例え、どんな慰めを受けようが、手を止めようとは思っていなかった。
 だが、暁の反応はさくらの常軌を逸していた。
「どうした、何を驚いている?お前が自分で決めたことだ。俺はそれを否定するつもりはない」
「チ……ーフ?」
 槍を握ったさくらの手が震えだす。
 仲間を信用しているといえば聞こえはいいが、何の反応も示さないのは違うのではないか。
 チーフにとって、自分は生きようが、死のうがどうでもいい存在だったのか。

(これじゃあ、私の死ぬ意味が)―これではサクラにした意味が―

 さくらの中で自分以外の誰かの声が聞こえた。
 腕が勝手に動き、咽喉元から槍が少しずつ離れていく。
「だが、それは自分で決めたことなのか?」
「えっ」
 気付けば、暁はさくらの眼前へと移動していた。

589:サクラチル ◆i1BeVxv./w
09/03/01 17:18:22 sM6XDsJR0
 そして、その直後、さくらは腹に重い拳の一撃が入ったのを感じた。
「………!」
 声にならない悲鳴を上げ、さくらの意識はゆっくりと闇へと沈んでいった。



 目蓋を閉じても、太陽は容赦なく、瞳に光を届ける。
「ぅぅっ、私は……一体……」
 さくらが意識を取り戻すと、そこは太陽の光に照らされた芝生の上だった。
 自殺するため、自らに槍を向けたところまでは覚えているが、そこから後がどうにもはっきりしない。
「気がつきました?」
「チーフ!」
 掛けられた声に、さくらは反射的に名前を読んだ。
 だが、見れば、またもそこには予想外の人物の姿があった。
「蒼太くん!あなた、生きて……いえ、それよりチーフは!」
「僕が生きてたことより、チーフですか。傷つくなぁ」
 軽口を叩く蒼太をキッと睨みつける。
 そんなさくらに、蒼太はやれやれと大げさなアクションを取ると、さくらの後方を指し示した。
「チーフなら、あそこにいますよ。……あそこで倒れているのがチーフです」
 さくらから数メートル先。身を伏している赤いボウケンジャケットを纏った男。
 さくらは息を飲むと同時に男へと駆け寄り、その身を抱き起こした。
「っ!」
 男は紛れもなく暁だった。さくらが間違えるはずもない。
 ただその状態は先程とはまったく違っていた。
 彼のジャケットは腹部を中心に、染料とは違うものでより真っ赤に染まっていた。
 顔は血色を失い、じわりとした汗で湿っている。
 息はあるものの注意しなければわからないほど微かだ。
「そんな、チーフ……」

590:サクラチル ◆i1BeVxv./w
09/03/01 17:19:56 sM6XDsJR0
「危ないところでした。さくらさんを抱きかかえてタワーから出てくるチーフを見つけましてね。
 何をするかと思えば、ナイフを振りかざし、さくらさんを切り裂こうと。
 それで僕は已む無く、チーフを―」
「嘘、嘘です!」
 必死に首を振るさくらを、嬉しそうに見下ろす蒼太。
「そう嘘です。チーフが殺し合いに乗るなんて考えられません。だから、それは表向きの理由ですよ。
 本当はさくらさんを介抱していたチーフの隙を突いただけです。
 あっけなかったですよ。これがあの不滅の牙かと思うほどね」
「なぜそんなことを」
「決まってるじゃないですか。殺し合いに乗ったからですよ。これを見てください」
 蒼太は服を捲り、自らの腹を見せる。
 そこには深くナイフで刺されたような傷痕があった。
 それはさくらがその手で付けた傷に間違いない。
「あの後、ロンが現れて、殺し合いを円滑に進めるという条件で不死の薬というプレシャスを僕にくれましたよ。
 そのおかげでなんとか一命を取り留めることができました。
 で、気づいたわけです。さくらさんもロンの甘言を受けて、殺し合いに乗った。だから、僕を刺した。違いますか?」
「私は違う!」
「違う?何が違うんですか。なら、目的を言えますか?殺し合いに乗った目的を」
「も…く…てき?………わたしのもくてき、目的は……」
「もう誤魔化すのはなしにしましょう」
 さくらは必死に考える。考えるが―
(わからない)
 ―何も思い浮かばなかった。
 それも当然と言える。所詮はロンに無理矢理植えつけられた思考。
 論理的に考えていけば、最終的には矛盾に行き当たる。
 何より、当の暁の命は風前の灯。更に蒼太はロンに下ったとなれば、ここで死ぬ理由もない。
(わからない)
 さくらは頭を垂れる。ふと、チーフの顔が目に入った。
 チーフは苦しげな表情を浮かべつつ、何事かを必死に囁いていた。
 さくらは耳を近づけ、その言葉を聞く。

591:サクラチル ◆i1BeVxv./w
09/03/01 17:22:56 sM6XDsJR0
「さくら……お前の…目的は…………自分で決めろ」
(チーフ……)
 さくらは自分の中で何かがぱっと弾けたような気がした。
 思い出されるのは暁と初めて出会った日のこと。
 サージェスへの加入を渋る自分に、暁は誰にでも自分だけの宝があり、それは自分で見つけるしかないと説いた。
 自分だけの宝を一緒に見つけようと言ってくれた。
 それは本当にしたいことを見つけれず、迷走していた自分にとって、方位磁石を与えてくれたようなものだった。
 そして、今も暁は自分が進むべき方向を示そうとしてくれている。 
「思い出しました」
「え?」
「思い出したんです。私の目的を。そう、チーフ。チーフに、私の見苦しく惨めな死に様を晒すこと。それが私の目的。
 ここに連れてこられた時、ロンにそう暗示をかけられたんですよ。
 だから私はあなたを挑発し、チーフの眼の前で殺されようと企んだ。もっともそれは失敗してしまいましたがね」
 さくらはチーフを地面にゆっくりと下ろすと、立ち上がり、蒼太を正面から見据えた。
「なるほど。チーフが死ぬ前に僕に殺されようというわけですか」
「いいえ、もうそのつもりはありません」
 そう、他人に命令された道を歩くつもりはない。
「それじゃあ、チーフの仇を討つために僕を殺す?」
「確かにチーフを刺したあなたは憎い。ですが、元を糺せば私が原因です。そのつもりもありません」
 手を血に染める必要などない
「だったら、どうするんですか」
「勿論、ロンを倒します。全ての元凶を倒し、元の世界に戻り、冒険を続けます」
「ふっ、流石さくらさんだ」
 さくらの決意に蒼太は笑みを浮かべると、暁へと近づく。
「何をする気ですか!」
「種明かしですよ」

592:サクラチル ◆i1BeVxv./w
09/03/01 17:24:37 sM6XDsJR0
 蒼太は懐から不死の薬を取り出すと、暁の傷口に近づけた。



「つまり、全てチーフの作戦だったわけですか」
「そうだ。最初から順番に話そう」
 町を歩く、暁、さくら、蒼太の三人。
 暁は多少、ペースは遅いもののその歩みはしっかりとしたものだった。
 さくらはいつでも支えられるように暁に寄り添っている。
 そして、蒼太は二人の傍らで自分が来た時間軸より後に造られることになるアクセルテクターを興味深げに見つめていた。
「アクセルテクターを戻したときから異変には気付いていた。アクセルテクターは熱され、銃弾のような傷が付いていたからな。
 おそらく戦闘が起こり、ディパックを燃やされる事態。つまり、命に関わる事態が起こったと俺は予想した。
 それが誰の身に起こったことかはわからなかったが、俺は戦闘が起こった場所を重点的に捜索することにした」
「だから、あんなところまで捜索に」
「そうだ。そして、さくらの言葉から窮地に陥ったのがさくらだということに気づいた。
 同時にズバーンが放置されている意味にも」
「そう、ずっと気になっていたんですよ。チーフはズバーンのおかげでさくらさんが操られていることに気付いたって、言っていたけど。
 僕はズバーンの存在を知らないし、その剣でどうやってわかったが疑問で」
 蒼太はさくらが持つズバーンを指し示す。
 宝玉こそ光を失ったままだったが、さくらに危害を与える気配はない。
「ズバーンは悪しき心の持ち主を拒み、正しき魂の者にだけ扱える。だが、それだけでさくらが放置する理由にはならない。
 扱えないというだけで、持つことは誰にでもできるんだ。それなのに、さくらは拾うことすら出来なかった。
 それは何故か。ズバーンは教えてくれたんだ。今のさくらに悪しきモノが宿っていることをな」
「なるほど。で、合流した僕を使って、さくらさんが自我を意識するように仕向けたわけだ」
「でも、チーフ、流石に無茶が過ぎます。もし、私が正気に戻らなかったら、チーフは死んでいたかも知れないんですよ」
 自分のためとはいえ、さくらとしては一発、腹を殴りたい気分だ。流石に命にかかわるので、本気でやる気はないが。

593:サクラチル ◆i1BeVxv./w
09/03/01 17:26:30 sM6XDsJR0
「血のりや苦しそうな演技だけでは直ぐに見抜かれると思ったんでな。それに蒼太から不死の薬があることは聞いていた。
 そして、何より、西堀さくらはロンには負けたりしない。そう信じていたから俺も命を賭けることができたんだ」
「チーフ」
「まあ、これも―」
「それも……ちょっとした冒険というやつですか?」
 暁の言葉に、他の誰かの言葉が重ねられる。
 三人の前に現れる金色の靄。
「「ロン!」」
「おやおや、主催者直々のお出ましとは、光栄の極みだ」
「ふん、その余裕、気に入りませんね」
 余裕の笑みを浮かべる暁を、ロンは憎々しげに見つめる。
「確かに西堀さくらの洗脳を解いたのは見事でした。が、それでこのゲームが終わったわけではありません。
 それに正直な話、もう解いてもいいかなと思っていたところです。
 元々、彼女を洗脳下に置いたのはあなたが驚愕し、絶望する表情を見たかったからですからね」
「洗脳を解いたのは俺の力ではない。さくら自身の力だ。俺も、俺の信じる仲間もお前には負けはしない!」
「クククッ、随分と威勢がいい言葉だ。伊能真墨が死んだと聞いたとき、あなたはどんな顔をしましたかね?」
 ロンの台詞に今度は暁の顔が激しい怒りの表情に変わった。
「フフッ、いい顔です。私は貴方のそんな顔が見たいのですよ。
 仲間を信じるのも結構ですが、果たしてそんなこと、いつまで言っていられますかね?
 あなたは知らないでしょ。あなたの仲間たちが今、どんな状況に置かれているかを。
 ある者は息絶え、ある者は手を血に染める。そんな様を見たとしてもあなたは―」
「生き返らせてもらうさ。お前をにはその力があるんだろ?
 お前を倒し、死んだ全ての参加者を生き返らせる。それが俺の望みだ!」
「ふぅ、どうやらこれ以上話しても無駄のようですね」
 薄く笑い、再び、金色の靄となり、消えるロン。
 強く拳を握り締める暁。
 定時放送が始まったのはそれから直ぐのことだった。



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