スーパー戦隊 バトルロワイヤル Part3at SFX
スーパー戦隊 バトルロワイヤル Part3 - 暇つぶし2ch400:名無しより愛をこめて
09/01/07 20:24:30 9QFjuPxc0
拝読いたしました。

正直に申しますと、ガイの行動に違和感を感じました。
ガイは自分が今まともに戦える状況では無い事を、今までの戦いの中で自覚しています。
そんな状態で、いくら苛立っているとはいえ、わざわざ戦いを挑むでしょうか?
ご回答をお願いします。

以降は避難所の議論スレでお願いします。
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

401:『キラリ☆宝物』 ◆MGy4jd.pxY
09/01/08 19:27:40 t8eDOkfD0
シグナルマン投下します。


402:『キラリ☆宝物』 ◆MGy4jd.pxY
09/01/08 19:28:19 t8eDOkfD0
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」

シグナルマン・ポリス・コバーンは絶叫を放った。
全身に嵌め込まれた信号機を燃えたぎる血潮のように赤く光らせ、己の足を完全に制止させる為に。

「本官は、本官!!!!????……がっ!!!!」
――――ドガッ!!

シグナルマンの声は激突音に掻き消された。
全速力で駆けたスピードと、群立した木々に警戒を怠った報い。
頭から大木に激突したシグナルマンは脳天を押さえその場に蹲った。

「前、前、前、前!前、前、前、前!!しっかり前見て走れよテメー!!いきニャり木に頭突きってどうなってんだ!?」
激突の衝撃で地に転がった魔法猫ことスモーキーがガラの悪い野次を飛ばす。
「な~~、何でもない!」
平静を装おうとしたが意志とは裏腹に、変に気の抜けたような裏返った声が出た。
「ニャんでもない訳ないだろ!!おい、ニャんだこりゃ。木が倒れてるじゃねぇか?!」
スモーキーのツッコミは至極当然。
哀れな森の木は、破砕機の如きシグナルマンの石頭と激突の末、僅かな根本だけを残し無惨にも薙ぎ倒されていた。

「細かいことは気にするんじゃない!ちょっと地図を確かめるために立ち止まっただけなのだ!」
「ア゛~~~~!?立ち止まっただぁ?」
不躾な視線を投げつけてくるスモーキーはガン無視。
シグナルマンはおもむろにデイバックから地図を取り出し現在地を『探るフリ』に没頭する。
探るフリ、あまりにも不自然な言い訳。
スモーキーにも脳天の痛みにも、秩序無き森林伐採にも、すべてに構うことなくシグナルマンはなぜそんな真似を始めたのか。

403:『キラリ☆宝物』 ◆MGy4jd.pxY
09/01/08 19:28:51 t8eDOkfD0
菜月と合流を果たすべく、何とか北東を目指したシグナルマンがなぜこのような行動をとったか。
それは……。

(ほ、本官としたことが!!B―5エリアからさらに北東へ進んでしまったら、菜月ちゃんに合流出来るはずが無いではないかッ!)

そう、菜月はブクラテスたちと共に居た所から北東にいるはずなのだ。
そこからスモーキーの出鱈目な指示で辿りついたのがB―5エリア。
最初の地点からかなり森を北へ進んでしまったうえ、さらにその位置から北東に進んでは、菜月と合流どころかどんどん離れてしまうことになる。

(と……とにかく、もう一度引き返えさなければ!!!)

冷静に考えればそのまま南下すれば良いだけなのだが。
シグナルマンは混乱していた上に、元々彼は何と言うか、まあ、その……。

その点に関しましては、自称『優秀なる警察官』であるシグナルマンが、チーキュなどというへんぴな地へ左遷……。
もとい、御栄転した経緯を考えてもらえばご理解頂けるかと。

おや、賢明な魔法猫スモーキーが彼の優秀さを察知したのかスッと目を細め尊敬の眼差しを向け……。
否、向けるはずが無い。

「おまえ、迷ったニャ……」
「ははははははは!!!!心配するな!本官が必ず菜月ちゃんを捜し出してみせる!」

スモーキーの言葉を遮り、ランプごとデイバックに詰め込みながら、シグナルマンは高らかに笑い、猛烈な勢いで森を引き返した。



404:『キラリ☆宝物』 ◆MGy4jd.pxY
09/01/08 19:29:15 t8eDOkfD0

§

全身全霊全速力。怒濤の勢いで森を駆け抜け、やがて息も上がり始めた時。

「ぐうおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」

シグナルマンは突出した木の根に足を取られ盛大にすっ転んだ。
転んだ拍子にデイバックから再び地に転がったスモーキーはピョンピョンとマジランプごと跳ね回り、底深な怒りを訴える。
「テンメェぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!今度はニャんだよぉぉぉぉぉぉ!!」
鼻は擦り剥け、マジランプは泥だらけ、スモーキーの背に黒い炎(注:CGによる演出です)が轟々と揺れる。
「す、す、す、すまん。木の根に足を取られて……」
シグナルマンは両手を前に突き出し、首を左右に振りながら必死に許しを請う。
「悪かったスモーキー!そんなに怒るんじゃない。牙を剥くなぁぁーーー!!」
「……………………んニャ~?」
ふと、牙を剥き出しシグナルマンに躙り寄っていたスモーキーの足が止まり、そのままきょろきょろと辺りを見回す。
「どうしたスモーキー?」
「おい、どこニャんだ、ここは?」
「はっ!こ……ここは?」

戻らなければ、戻らなければ、戻らなければ、戻らなければ、戻・ら・な・け・れ・ば!!!
その思いにだけに捕らわれていたシグナルマンは辺りを見て呆然とする。
(ほんの少ーーーーーーし、戻りすぎただろうか)
ぶつぶつと文句を垂れ流すスモーキーに背を向け、こそこそと地図とコンパスを片手に、走る速度と時間を思い返しながら距離を測る。
距離の計算式は『は×じ=き』だからえーっと、えーっと、えーっと……。

(省略されました・・ 続きは(ry……)

おそらく、ここはC-4エリア。

(も!戻りすぎたぁぁぁぁ!!!!)

405:『キラリ☆宝物』 ◆MGy4jd.pxY
09/01/08 19:30:22 t8eDOkfD0
口には出さず、ただ神に祈るポーズのみで心からの叫びを表現する。無論、スモーキーに余計な心配をさせまいが為の優しさである。
心では叫んだが、全力で走れば取り返せない距離ではない。
即座に立ち直ったシグナルマンは先を急ぐべく、先程からおとなしくなっていたスモーキーに手を伸ばす。
「ん?何をしているーーーー!」
「あむ」
その時スモーキーは口に何かをくわえ、ランプの中へ潜り込もうとしていた。
「こら!拾い食いするんじゃない。お腹を壊したらどうするんだ!」

ベシベシベシベシベシベシベシベシ!
ベシベシベシベシベシベシベシベシ!!
ベシベシベシベシベシベシベシベシ!!!
ランプを逆さまにし、くわえた物を吐き出させようと叩く!叩く!!叩く!!!
ベシベシベシベシベシベシベシベシ!!!
ベシベシベシベシベシベシベシベシ!!
ベシベシベシベシベシベシベシベシ!


「ニ゛ギャァァァァァーーーー!!」

雄叫びとも断末魔ともつかない声を鳴らしたスモーキーの口からポロッと何かが落ちた。
気合いもろともシグナルマンは、

「ふん!!!」
――――パリン!



406:『キラリ☆宝物』 ◆MGy4jd.pxY
09/01/08 19:30:56 t8eDOkfD0

それを踏み付け、悪食を諌めた自分の行いに思わずガッツポーズをとる。

しかし、残念ながら足の下から聞こえた音は『パリン!』でした。
明らかに食べ物を踏んだのとは違う音です。

恐る恐る足をあげると3cmほどの△、小さな鏡の破片が木っ端みじんに砕け散っていた。

(動物は光る物を集める修正がある。まさか、この破片は森の中で見つけた『キラリ☆宝物』だったとか?
待て、この猫がそ~んなに繊細だったりするだろうか。おっと、そうだ。あれは鳥だか犬の話だった。やっぱり、ただお腹が空いただけなんだろう!)

シグナルマンは自分勝手な結論を下し、ごそごそと支給品のカツサンドを取り出しスモーキーへそっと差し出した。

「これを食べればもう安心だ!正義は『カ・ツ・サンド』だ!!あははは!ははは……はは……」

……………………………しーん。

押し潰されるかと思うほどの静寂。
ある種の底知れぬ寒さが辺りを包みこんだ。

「ニャッ!」

人語で訳せば「ケッ!」といった感じだろうか。
スモーキーは呆れ果てたのか履き捨てるように鳴いた後、ランプの中へ姿を消した。

再度訪れる、静寂。

407:『キラリ☆宝物』 ◆MGy4jd.pxY
09/01/08 19:31:25 t8eDOkfD0
ランプを擦っても叩いても、スモーキーは一向に出てくる気配がない。
「おーい。スモーキー……くん」
答えは無い。
シグナルマンの声は森に吸い込まれていく。
息が詰まるほどの、静寂。
急激にものすごく悪いことをしてしまったように思えてきた。

(本官はなんということを!やはり。あれは大事な宝物だったのか?!本官にとっては不燃ゴミでもスモーキーにとっては宝石だったのだ!!!
あぁぁぁぁぁぁ!!!!!どうしたらいいんだ。
「宇宙お笑い君こそスター誕生」の4週間連続勝者である本官渾身のギャグに失笑すらできないほど、スモーキーは心を閉ざしてしまった!!!)

後悔が深く胸に突き刺さる。
初めて出会った時、メレの一件で落ち込むシグナルマンをスモーキーは元気付けてくれた。
森で迷ってしまったのも、ブクラテスに従うのが癪だっただけでスモーキーは彼なりに菜月を捜し出そうとしていただけなのに。

(本官はスモーキーの信頼を失ってしまったんではないだろうか?)

信頼。何よりも強く人を支えるであろう『盾』
このような殺し合いの場においてでは、なおのこと。

この不始末を挽回すべく、シグナルマンが取るべき道は一つ。
シグナルマンは決意を新たに、ランプの蓋を持ち上げ大声でスモーキーに呼びかけた。
「さっきのことはすまなかった。スモーキー。お詫びに本官が一刻も早く菜月ちゃんを探し出してみせる!」


誰も通らない深い森の中を、草むらを掻き分け、木々を摺り抜け、根を飛び越え……。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

限界突破で駆け抜ける。
行け!シグナルマン・ポリス・コバーン。走れ!!シグナルマン・ポリス・コバーン。

408:『キラリ☆宝物』 ◆MGy4jd.pxY
09/01/08 19:31:52 t8eDOkfD0


§

ランプの中、スモーキーはゴロンと身体を横たえた。
閉じる瞼に浮かぶのは麗、深雪、そして……ヒカル。

森に落ちていた小さな小さな鏡の破片。
スモーキーはその鏡が何であるかを知っていた。
小さな小さなその鏡が映したことが現実のものであることも。

「ダンナのヤツ。殺っちまいやがって。ニャハ、麗が死んじまってトチ狂っちまったか?それとも敵討ちかよ?
……まぁ旦那に直接聞いて見ニャきゃわかんねーけどよ」

森に落ちていた小さな小さな割れたメメの鏡の破片。
誰かが落とした物なのか。
それとも、ロンが気まぐれでばらまいた悪意だったのか。
鏡が映したのはヒカル。
ヒカルが参加者の誰かを刺し貫いた姿。

「ったくよぉ~。本気でダンナは大バカヤローだぜ……」

自分からは、遥か離れた遠い位置。そこで苦悩する飼い主に向かい、スモーキーはそっと呟いた。



409:『キラリ☆宝物』 ◆MGy4jd.pxY
09/01/08 19:32:16 t8eDOkfD0

【シグナルマン・ポリス・コバーン@激走戦隊カーレンジャー】
[時間軸]:第36話以降
[現在地]:C-4森 1日目 午前
[状態]:健康。少し凹み気味。
[装備]:シグナイザー
[道具]:けむり玉(残数2個)、ウイングガントレッド@鳥人戦隊ジェットマン、メレの釵
 マジランプ+スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー、基本支給品とディパック
[思考]
基本行動方針:ペガサスの一般市民を保護。戦っている者がいれば、出来る限り止める。
第一行動方針:強い怒りと悲しみ。菜月を探し出す(再び北東に向かう)。その後、竜也たちと合流。
第二行動方針:乙女(メレ)に謝りたい。
第三行動方針:黒い襲撃者(ガイ)を逮捕する。

【名前】スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:ボウケンジャーVSスーパー戦隊後
[現在地]:C-4 森 1日目 午前
[状態]:健康。マジランプの中。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ヒカルを探す
第一行動方針:強い怒りと悲しみ。菜月を探し出す(北東に向かう)。
※落ちていたメメの鏡の破片(粉砕)によってヒカルがサーガインを刺したのを見ています。

410:『キラリ☆宝物』 ◆MGy4jd.pxY
09/01/08 19:33:34 t8eDOkfD0
以上です。
ですが議論が必要かと思う箇所があります。

場所の設定は面従腹背の時ドロップが転んだ場所と考えて、ドロップが転んだ時にメメの鏡の破片の一部を落としてしまったと仮定しております。
実際に割れた描写は書いておりませんし、行動、場所等の指摘を踏まえて意見が伺えたらと思っております。
なお、現在地の時間表記ですが、前話から2時間経過していないので午前にしております。

よろしくお願いします。



411:名無しより愛をこめて
09/01/08 20:22:15 WEeU0UFIO
投下GJ!です。
シグナルマン何やってんだwwwwww
遅ればせながら間違いに気が付いたのは良かったですが、
天然に暴走気味というか、正直おバ……いえ、なんでもありません。はいw
全て、いたって真面目にやってるのがかえって、おかしかったです。
和ませていただきました。

スモーキーは辛い現実を知ってしまいましたね。
手が届かない位置にいるだけに辛いだろうな……

ギャグと最後のシリアスのギャップが絶妙でした。
面白かったです。GJ!!

412:名無しより愛をこめて
09/01/08 20:30:16 WEeU0UFIO
っと、メメの鏡に関してですが、自分は問題ないと思います。
あの状況でしたら、割れていても不自然ではないと思いますので。

413: ◆i1BeVxv./w
09/01/10 19:00:52 zhMrERPV0
GJ!
行動指針は間違っていないのにやることなすこと裏目に出るシグナルマン。
ロワの途中だというのに、ここまで爆笑の渦を巻き起こしてしまうのは流石でした。
色々、吹かせていただき、楽しかったです。
メメの鏡については私も問題はないと思います。

それでは私も投下いたします。

414:欺瞞と寂寥の果て ◆i1BeVxv./w
09/01/10 19:02:28 zhMrERPV0
 林のように立ち並ぶビル街の一角。
 まるで隕石でも直撃したかのように瓦礫の山と化し、最早ビルとは言えないそこに、まるで悪魔の如き容姿をした男の姿があった。
 冥王ジルフィーザ。
 彼はひとり佇み、ティターンがドロップを連れて来るのを今か今かと待ち受けていた。
(ぬぅぅ、まだか)
 待ち続けること、早2時間。能力の制限も解け、天の力が身体中に漲っているのを感じる。
 本音を言えば、約束を反故にして、元来た道を戻り、自分の手で決着を着けたいと考えていた。
 だが、ジルフィーザがそれをしないのは、ただただティターンへ寄せる"信頼"、その一点につきる。
 自分と互角かそれ以上の実力を持つ男との約束だ。
 例え、愛する弟のことと言えども、彼との約束を破るということは、彼と自分の誇りに泥を塗る行為に他ならない。
 ジルフィーザは待った。
 やがて、彼の前に視線の先に、白いバイクに乗った複数人の人影が見えた。
「来たか」
 まず、見えたのは見知らぬ人間の女性の姿。
 ジルフィーザは彼女がドロップと共に人質になっていた美希ではないかと思い当たる。
 だが、誰であろうとジルフィーザにとってはどうでもいいことだ。すぐに女性の側らにいる少年へと視線を移した。
 純白の服を着たその少年は一度、タワーに昇った時に眼にしている。
 あの時はドロップではないと判断したが、ティターンの話しによれば、この少年がドロップらしい。
 ティターンを疑うわけではないが、果たして、本当なのだろうか。
 早速、当人に訪ねて見ようと口を開こうとする。しかし、ジルフィーザはそれより先に別のことが気にかかった。
「ティターンはどうした?」
 気配を探ってみたが、こちらを窺っている誰かはいるものの、ティターンと思わしき者の姿は見えない。
 わずかな時間ではあったが、ティターンの性格ならば、必ずドロップと同行して来るものとだとジルフィーザは考えていた。
 襲撃者とでも戦っているのだろうか。それともバイクのスピードに付いて来れず、遅れて来るのだろうか。
「ティターンは―」

415:欺瞞と寂寥の果て ◆i1BeVxv./w
09/01/10 19:03:24 zhMrERPV0
 女性が口を開く。だが、それを遮り、側らの少年が言葉を繋いだ。
「殺しました」
「何ぃ!?」
 驚愕の声を上げるジルフィーザ。そして、彼と同様に女性も驚愕の表情を浮かべる。
 まるで、話が違うと言わんばかりに。
 驚く二人を余所に、少年は話を続ける。いや、見た目こそ少年ではあるが、既にその声は彼の外見に似合わず、力強い青年の声に変わっていた。
「私は殺し合いに乗ったのです、兄上様。そして、殺し合いに乗った私にとって、ティターンは邪魔だった。だから、隙を見て、殺したのです。彼女と一緒にね」
「ぬぅぅっ」
 ティターンの死を聞き、愛用の杖を握るジルフィーザの手に自然と力がこもる。
 その様子を見て取ると、ドロップはジルフィーザへと駆け寄った。
「兄上様、なぜ怒っているのです?我ら災魔一族以外の者がどうなろうと構わないではありませんか」
 少年は邪悪な笑みを浮かべ、ジルフィーザの瞳を真っ直ぐに見詰める。
 対して、ジルフィーザも視線を交差させ、少年の瞳を真っ直ぐに見詰めた。
(こいつ、瞳の奥に燃え盛る炎が見える)
「貴様、本当にドロップなのか」
「兄上様が疑問に思うのも無理はありません。私は兄上様が生きていた時間より後、グランドクロスが完成した後の時間から来ています。
 既に私の身体は繭となり、後一歩で成体になれる段階まで、成長いたしました。
 ところが生命のバランスが崩れ、魂だけが繭より抜け出した。それが今の私です」
「にわかには信じ難い話だが」
 しかし、ジルフィーザは信じるしかなかった。
 タワーの屋上で見た時はわからなかったが、こうして真っ直ぐに相対してみれば、少年がドロップであることは疑いようがない。
 ジルフィーザが彼に見た炎は、紛れも無く、災魔の証。だが、それならそれで疑問がある。
「なぜ誇り高き災魔一族が、ロンなどという者の言うことを聞かねばならん」
「そのことですが、確かにグランドクロスは完成し、母上様の降臨はなされました。
 しかし、人間達の抵抗は著しく、完全な状態での降臨は叶わなかったのです」
「なんだと、母上様の身にそのようなことが」

416:欺瞞と寂寥の果て ◆i1BeVxv./w
09/01/10 19:04:04 zhMrERPV0
「はい。ですから、私は母上様の完全なる降臨のために我ら災魔一族が優勝し、彼に願いを叶えてもらおうと考えました。
 勿論、最終的には兄上様を優勝させるために、私は自らの命を断つ覚悟でしたが」
 神妙な面持ちで頭を垂れるドロップ。
 その姿にジルフィーザは怒りが急速に治まっていくのを感じた。
(ドロップはドロップなりに母上のために一生懸命だったのだろう。だが、ドロップはまだ子供。少し極端な手段に走りすぎてしまったといったところか)
 ジルフィーザはドロップの行動に納得すると、その手を彼の頭の上へと置いた。
「ドロップ、お前の覚悟はわかった。だが、やはり彼奴に従う必要性は感じん。彼奴が本当にそれほどの力を持っているのか確証はない。
 何より、母上様のことならば、我ら自身の手で成し遂げてこそ、意味がある。心配はいらん。今からはこのジルフィーザに全て任せておけばいい」
 愛おしげにドロップの頭を撫でるジルフィーザ。
 その様子を複雑な表情で見る女性。
「それで?貴様は何者だ」
 女性はジルフィーザの問いに答えようとする。だが、またしてもドロップが彼女の言葉を遮る。
「そいつは真咲美希。優勝するために私を利用しようとした人間です」
「あなた……」
「申し訳ありません。このような姿なばかりに人間などに屈することに」
「よい。それも仕方のないことだ。だが、お前が受けた屈辱、この私が晴らしてくれよう」
 ジルフィーザは美希を見ると、敵意を剥き出しにする。
 激昂する兄の後ろで、ドロップは声を出さずに口を動かした。
(バイバイ、お姉ちゃん)



 美希は自分の愚かさを嘆いていた。
 眼前には激昂し、今にも襲い掛からんとするジルフィーザの姿。
 分が悪いという言葉が陳腐に思える程、絶望的な状況だ。
 そして、この状況を引き起こしたドロップは美希に向けて微笑んでいた。
(いい気なものね)
 思えば、ドロップが子供というところに油断があったのかも知れない。
 確かに彼は、初めて会った時は脆弱で無防備な子供だった。
 だが、ティターン殺しを積極的に行った時点で気付くべきだったのだ。

417:欺瞞と寂寥の果て ◆i1BeVxv./w
09/01/10 19:04:47 zhMrERPV0
 もはや彼は最初に会った子供とは別人になっていると。
「覚悟はいいか、女?」
(来る)
 過ぎた事を悔やんでも仕方ない。
 美希は気持ちを瞬時に切り替え、ここから撤退する方法を模索する。
(ジルフィーザにはまだ油断があるはず。彼に渾身の一撃を撃ち込んで、その隙に逃げる!)
 マトモにぶつかって勝てる相手ではない。それならば、逃げるという選択肢がもっとも現実的だろう。
 ジルフィーザが美希に向かって駆けて行く。
 その様は隙だらけ。やはりジルフィーザは油断している。
「ゲキワザ・貫貫掌!」
 美希は激気を練ると、カウンター気味に拳を撃ち込んだ。
 それは見事にジルフィーザの胸へと命中する。
 だが―
(激気が出ない!?)
 美希の拳に激気は纏われていなかった。岩をも砕く必殺技も、これでは単なるパンチと違いがない。
 そして、単なるパンチでは冥王の冠を頂くジルフィーザにダメージを与えることなど、できようはずもない。
「痒いな、女」
 嘲るような声。
「何か策があるかと思ったが、買い被り過ぎだったか?」
「くっ」
 美希は激気が封じられた原因に、すぐに思い当たる。首輪による制限だ。
 制限があることは知っていた。だが、誤解があった。
 美希は制限は変身や化け物の特殊な能力に対して行われ、まさか生身である自分にも適用されるとは思っていなかったのだ。
(油断してたのは、私の方だったっていうこと)
 悔やむ美希の首をジルフィーザが掴む。そして、そのまま彼女の身体を駆軽々と持ち上げた。
 あっさりと、彼女の足は大地から離れる。
「このまま、捻り潰してくれる」
 ジルフィーザの腕に、徐々に力が込められていく。そして、それに比例して、美希の苦しみは増していく。
 美希は手足をバタつかせ、必死に抵抗するが、ジルフィーザは身動ぎひとつしない。
(こ、ここまでなの……なつめ!なつめなつめ!なつめ!!!)

418:名無しより愛をこめて
09/01/10 19:05:42 VEAvQamQ0


419:欺瞞と寂寥の果て ◆i1BeVxv./w
09/01/10 19:06:03 zhMrERPV0
 娘との日々が走馬灯のように頭をよぎった。
 なつめを救うまでは死ぬわけにはいかない。
 だが、そのような想いだけでひっくり返せるほど、ジルフィーザは甘くはない。
 次第に、意識が朦朧としてくる。
 落ちる。美希がそう思った瞬間、ジルフィーザの腕から火花が上がった。
「メガトマホーク!」
 青いスーツを装着した戦士が愛用のトマホークでジルフィーザの腕を攻撃したのだ。
 痛みに手を離すジルフィーザ。そして、崩れ落ちる美希の身体をその戦士はやさしく支える。
「何者だ貴様!」
 左腕に美希を抱え、ジルフィーザを威圧するかの如く、右腕を突き出す青の戦士。
 そして、戦士は高らかに名乗りを上げた。
「メガブルー!」
「ほぉ、貴様が噂のメガブルーか。折角だ。邪魔をすると言うのなら、貴様がどれほどのものか、その実力確かめて見るとしよう」
 メガブルーは無言のまま、地面に美希を下ろすと、ジルフィーザに向かって構えた。
 ジルフィーザもそれに合わせて、杖を構える。
「いくぞ!」
「はっ!」
 メガブルーはホルスターからメガスナイパーを抜くと、地面を撃ち、真っ向から斬りかかろうとするジルフィーザの足を止める。
 舞う土埃にジルフィーザが怯んだ隙に、メガブルーは飛び上がると、身体を高速で回転させ、トマホークを振るった。
 メガブルーの得意技、トマホークハリケーンだ。
 だが、ジルフィーザはそれをあっさり杖で防ぐと、回転を力ずくで止めさせる。
「甘い!」
 続いて、ジルフィーザは空いた方の手でメガブルーを掴むと、そのまま投げ捨てた。
 大地に背中から叩きつけられるメガブルー。すかさず、ジルフィーザは杖をメガブルーの首へと放った。
「ぐはっ!」
「どうした、貴様の力はその程度か」
 動けないメガブルーの胸を足蹴にする。何度も何度も何度も。
 だが、戦況はメガブルーの思惑通りに進んでいた。何故なら、ジルフィーザが自分に気を取られているからだ。
 ゴーグルの縁で、メガブルーは美希の様子を確認した。
 見れば、美希は悟られぬよう、ここから逃げ出そうとしている。

420:欺瞞と寂寥の果て ◆i1BeVxv./w
09/01/10 19:06:38 zhMrERPV0
 それでいい。メガブルーの目的は美希の救出にある。
「兄上様、女が逃げます!」
 しかし、メガブルーの思惑も、戦況を冷静な眼で観察できるドロップには通用しなかった。
 そして、彼の言葉を聞き、ジルフィーザは興味の対象をメガブルーから美希へと戻す。
「ぬぅ、逃がさん」
 メガブルーを抑え付けたまま、ジルフィーザが美希に杖を向けた。
「させるか。メガスナイパー!」
 杖から破壊光線が放たれるが、メガブルーのメガスナイパーから放たれた光弾が杖の方向を変え、破壊光線の軌道を逸らす。
「おのれ、余計な真似を」
 怒りに再び、杖をメガブルーに打ちつけようとするジルフィーザ。狙いは頭だ。
 だが、大振りなその攻撃をメガブルーは見切っていた。寸前で首を逸らし、避ける。
 その行動に、ほんのわずかだが、ジルフィーザが動揺したのが、脚を通して、メガブルーへと伝わる。
 その好機をメガブルーは逃さなかった。
「メガスナイパー!」
 3度目のメガスナイパーが、ジルフィーザの頭部へと命中した。
 至近距離からの攻撃に、流石のジルフィーザも痛みに顔を顰める。だが、これで攻撃を終わらせるメガブルーではない。
 メガブルーは身体を跳ね上げ、ジルフィーザを退けると、身体を回転させ、そのまま延髄切りを放った。
 技の名前通り、メガブルーの蹴りが延髄へと炸裂する。
「ごっ!」
「今だ」
 メガブルーの頭部にデジタルテレビの紋章が浮かび、そこから放たれた光線がジルフィーザを捉えた。
「ヌォォォォッ!」
 光に包まれるジルフィーザの身体。
「ええい、小賢しいわ」
 必死に光を振り払うジルフィーザ。
「ぬぅ、なんだこれは」
 数秒の後、光が治まる。だが、そこで眼にした光景は今まで見ていたものとまるで異なっていた。
 ビルはどこぞやの倉庫に変わり、いつの間にか無数の黒服の男に取り囲まれている。
「これは……幻覚だな」
 そうそれはメガブルーの能力、バーチャルビジョン。敵を仮想空間に閉じ込める技だ。

421:名無しより愛をこめて
09/01/10 19:06:43 CQEN2XVXO



422:欺瞞と寂寥の果て ◆i1BeVxv./w
09/01/10 19:08:38 zhMrERPV0
「くっ、このジルフィーザとしたことが」
 機関銃を手に襲い掛かる黒服の男たち。
 ジルフィーザは杖を振り回し、男たちを迎え撃った。



「おのれ、逃げられたか」
 仮想空間で襲い来る敵を一網打尽にし、ジルフィーザが脱出を果たした頃には、メガブルーと美希の姿はその場から消え去っていた。
 時間にして1分と満たなかったが、それだけあれば、身を隠すには充分。もう追っても無駄だろう。
「残念でした兄上様」
「うむ、すまないドロップ。この兄としたことが」
 ばつが悪そうに謝るジルフィーザ。しかし、ドロップはにこりと笑うと、言葉を返した。
「いいえ、兄上様は私のために戦ってくれました。それだけで充分です。
 それより、F-9エリアに私の身体があります。それさえ、あれば災魔の姿に戻り、成長が遂げられるはずです。
 そうすれば、兄上様の力になることも可能かと。しかし、今はこの有様。兄上様に同行していただけるとありがたいのですが」
 ドロップの申し出をジルフィーザは快諾する。
「よかろう、ドロップよ」
「ありがとうございます、兄上様」
 ドロップはジルフィーザに恭しく頭を下げると、彼に背を向け、東へと歩き出した。ジルフィーザも彼の後を追う。
(女を殺せなかったのは残念だったが、ジルフィーザに力を使わせるのには成功したな)
 道すがら、ドロップは今後について策を巡らせ始める。その胸中には恭しさの欠片もない。
 ドロップの時間軸ではジルフィーザは既に過去の存在。そして、彼が持っていた冥王の星は自分に受け継がれている。
(今更、でしゃばられても困るんだよ。天の時代は終わり、龍の時代となろうとしている)
 もはや、ドロップにとって、ジルフィーザは邪魔者でしかなかった。
 だが、ジルフィーザの強さはわかっている。もし真正面から戦えば、勝つにしても、相応のダメージを受けることは間違いない。
 そうなると、後々の行動に影響が出てしまう。ならば、制限を利用すればいい。
 そうすれば、いかに冥王といえども、物の数ではなかろう。
(冥王はふたりもいらない。俺が成長し、そして、俺の制限が解けた時、それが最期の時だ)

423:欺瞞と寂寥の果て ◆i1BeVxv./w
09/01/10 19:09:32 zhMrERPV0
 ドロップは来たるべき時に向けて、拳を力強く握り締めた。



「とりあえずここまで来れば、安心ですね」
 瞬が安堵の声を吐く。
 海岸H-7エリア。波に削られた荒々しい岩の陰、何故かぽっかりと空いたその場所に、瞬たちは腰を落ち着けた。
 メガブルーの変身が解除される直前に、この場所を見つけることが出来たのだから、中々、幸運といえる。
 美希もメガブルーに担がれて移動したおかげで、荒かった呼吸はすっかり正常な状態へと戻っていた。
「ありがとう、助かったわ」
 笑顔で礼を言う美希。対して、瞬も笑顔で返すが、すぐに神妙な面持ちへと変わる。
「どうしたの?」
 急に沈黙した瞬を、美希は訝しげに見詰める。
「……いえ。それより、なんでジルフィーザと戦うことに?」
「それが、ドロップを渡すと、途端に人間は信用できないって、襲い掛かって来たの。
 きっと、彼は最初から殺し合いに乗っていたのね。早くみんなに知らせないと」
 微塵もの動揺も見せず、美希は応えた。心配そうな表情のおまけ付きだ。
 真実を知らぬ者ならば、きっと彼女を信じてしまうだろう。
 しかし、瞬は表情を変えず、更に質問を行う。
「……ティターンはどうしたんです?」
「ティターンは、ここに来る途中に襲撃を受けて。私たちを逃がして、それっきり。無事だといいけど」
「………」
「瞬。さっきからおかしいわよ」
 俯き、何事か考えている様子の瞬。
 やがて、考えがまとまったのか、瞬は美希を真っ直ぐに見詰めると、重々しく口を開いた。 
「美希さん、嘘……ですよね」
「何が?」
「あなたが優勝を目指しているって。殺し合いに乗ったって」
 美希はその言葉を聞き、一瞬だけ俯くが、すぐに笑顔を浮かべる。
「瞬、あなた何を言って……」

424:名無しより愛をこめて
09/01/10 19:09:36 VEAvQamQ0



425:欺瞞と寂寥の果て ◇i1BeVxv./w1氏代理
09/01/10 19:35:53 VEAvQamQ0
「聞いてたんですよ!ドロップとジルフィーザの話を!最初はドロップが口から出任せを言ってると思った。
 でも、あなたは俺の問いに、どちらとも嘘で応えた。
 違うというなら、なんで嘘を吐くんですか。俺が納得いく答えを教えてください!」
(……なんだ、聞いてたんだ)
 美希の顔が笑顔が消える。そこに騙そうしたことの罪悪感はなかった。
 既に美希は瞬の口を封じるか。そのことを考えていた。好都合なことに彼は制限の真っ最中だ。
「今ならまだ引き返せます。俺だって、一度は夢のために殺し合いに乗ろうとした。
 でも、マトイさんのおかげで戻ることができた。あなただって―」
 どうやら瞬は自分を説得しようとしているようだ。
 滑稽に見えるほど、一生懸命に説得の言葉を紡いでいる。
 無駄だ。その段階はとっくに過ぎている。
「一緒にしないで」
 底冷えのしそうな程に冷たい声。それでいて、美希はまるで子供にわかりやすく教えるように言葉を続けた。
「あなたは誰一人、殺してないでしょ。私は違うのよ。スフィンクスを殺し、ティターンを殺した。
 そして、あなたを助けたマトイさんも」
「ま……さか、あの爆発は……」
 美希は瞬の問いに頷くことで応える。
 すると、瞬は驚愕に眼を見開き、明らかに動揺を見せていた。
 拳を握り締めたかと思うと、震えながら手を開き、手を開いたかと思うと、また握り締めた。
「っっっ……あなたを拘束します」
「できるかしら?メガブルーになら兎も角、生身のあなたには負ける気はしないわ」
 年齢の差はあるとはいえ、片や普通の高校生。片や獣拳の使い手。更に蓄積された戦いの傷や疲れは瞬の方が深い。実力の差は明らかだ。
「俺にはこれがあります」
「それはゴウライチェンジャー?」
 瞬はディパックから取り出したゴウライチェンジャーを美希に見せる。
 確かに変身機器が異なれば、2時間という制限も別々にカウントされる可能性は充分にある。
 そして、変身が出来れば、戦力の差はあっという間に埋まることだろう。
 しかし、美希は余裕の笑みを崩さなかった。
「瞬、教えてあげるわ。切り札は相手に使うことが悟られちゃ、意味がないのよ!」
 一閃。美希の回し蹴りが、ゴウライチェンジャーを持つ瞬の手を強襲する。

426:欺瞞と寂寥の果て ◇i1BeVxv./w1氏代理
09/01/10 19:37:27 VEAvQamQ0
呆気なく、地面へと転がるゴウライチェンジャー。そして、瞬はその様子を眼で追った。
(やっぱり、戦士になったとはいえ、まだまだ素人ね)
 美希はその隙を見逃さない。瞬を押し倒すと、そのまま彼の首に手を掛けた。
 瞬の首を締め上げる美希。
 だが、美希にもミスがあった。
 瞬の殺し方に絞殺を選んだことだ。鍛えてあるといっても女性の力。途端に意識が奪われることはない。
 瞬はディパックの中から、たまたま手に触れたカプセルを取り出すと、美希の頭に叩きつけた。
「ぁっ!」
 金属製の鈍器による一撃は彼女の力を弱らせる。瞬はもう一度、彼女の頭にカプセルを叩きつけた。
「うぐっ!」 
 美希の脳が揺らされ、彼女の額から血がタラリとしたたる。
 このままでは逆に殺されてしまうと判断した美希は、絞殺を諦め、一度、間合いを取った。
「はぁはぁ……もう…………やめて………もうやめてください………………美希さん!」
 息も絶え絶えながら、必死に美希を説得しようとする瞬。
 だが、美希はそれを命乞いとして受け取った。そして、彼女は命乞いを聞くつもりはない。
(ゴウライチェンジャーを奪えれば……いえ、そうだ、私のディパックにはスタッグブレイカーが)
「美希さん!!!」
 
―カポッ―

 思わず腕に力が入ったのだろう。その場にそぐわぬ間の抜けた音を立てて、瞬が手にするカプセルが開いた。
「えっ?」
 瞬は反射的にそのカプセルの中身を見た。そこにはこの世のモノとは思えない醜い虫たちが多数蠢いていた。
「うわっ、うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 その声が合図になった。カプセルから飛び出した虫たちは、まず最初の1匹目は彼の頭部に張り付き、続いて、腕、脚、胸、腰へと順々に張り付いていく。
「何、これは」
 そのおぞましい光景に、美希も激しい嫌悪と恐怖を覚えた。
 瞬は懸命にそれを剥がそうとするが、四肢を抑えられ、状態では無理な話だった。
「た、たすけ……ひぃぃ……」
 助けを求め、必死に悲鳴を上げる瞬。だが、その悲鳴も数秒もしない内に聞こえなくなった。

427:名無しより愛をこめて
09/01/10 19:37:48 CQEN2XVXO
支援

428:欺瞞と寂寥の果て ◇i1BeVxv./w1氏代理
09/01/10 19:38:27 VEAvQamQ0
そして、まるで手足を毟られたの昆虫のように身体がピクピクと痙攣を始める。
 その断末魔に美希の殺意は失せていた。もはや直接、手を下さなくとも、瞬は死ぬだろう。
 だが、美希の嫌悪と恐怖は未だ続いていた。
(ここにいてはいけない)
 美希は踵を返す。視界に一瞬、ゴウライチェンジャーが入ったが、美希はそれを無視し、その場から逃げ去った。


 
「はぁはぁはぁ」
 美希は走っていた。1メートルでも、1センチでも、瞬から離れるために。
 まだ嫌悪と恐怖は消えていない。それどころか膨れ上がっていくのを感じる。
(あれは一体……)
 疑問。そんな美希の心の声に、応えるよう、声が響き渡った。
「―次元虫ですよ」
 その声を美希が聞き間違えるはずがない。今、美希が最も怨めしく思っている男の声。
 美希はその声の主の名を叫んだ。
「ロン!」
 黄色い靄が人間の姿を形づくる。この殺し合いの主催者、ロンの姿を。
「並樹瞬に寄生したのは裏次元に生息する次元虫という生き物です。中々、面白い特性を持っていましてね。
 無機物に寄生し、その無機物を次元獣に生成するのですよ。そして、それを強化したバイオ次元虫は更に次元獣に動物の能力を付加することができます。
 でも、アレ単体ではか弱い生き物ですよ。"虫"ですからね」
「次元虫……」
 ロンは頷くと話を続ける。
「本来なら生物には寄生しないんですけど、アレはある時間、ある場所から持ってきた特別性の次元虫でして。
 いや、苦労した甲斐がありました、まさか無機物ではなく、人間に寄生するとは、私でさえ予想できませんでした」
「寄生?じゃあ、もしかして、瞬は―」
「ええ、生きていますよ。宜しければ、確認しに戻られたらいかがですか?」
「冗談じゃないわ。それより、なつめは無事なの!」
「そうそう。私の用件はそれなんですよ。まずはおめでとうと言わせていただきましょう。
 あなたには恐れ入ります。今現在、殺害数はあなたがトップですよ」

429:名無しより愛をこめて
09/01/10 19:38:44 CQEN2XVXO



430:欺瞞と寂寥の果て ◇i1BeVxv./w1氏代理
09/01/10 19:41:33 VEAvQamQ0
 小さく拍手するとロン。
「娘さんも喜んでいました。ママが私のためにいっぱい人を殺してくれて嬉しいって」
「なつめが……なつめがそんなこと言うわけないじゃない」
「おや、本当にそう言い切れますか?誰だって命は惜しい。自分の命が他者に委ねられているのです。
 思わず応援してしまうのではないですか?」
「それは……」
 美希はロンの言葉に沈黙する。
 声高らかにロンの言葉を否定したいのは山々だったが、娘のためという名目で3人もの犠牲者を出した自分にそんなことを言う資格はない。
 そんな美希の心情を察知したロンは込み上げて来る笑いを抑えることが出来なかった。
 これから自分が語る内容を考えると、美希の想いはあまりにも可笑しい。
「クククッ、ハハハッ、なんて、冗談……ですよ。娘さんはそんなこと言っていません。というより、こんな時にどんなことを言うのか、私にはさっぱりわかりません。
 なにせ、なにせぇーーー、私はなつめさんを人質になどとっていないのですから」
「……えっ?」
「クククッ、驚きました?というか私は一言もなつめさんを人質にしたとは言っていませんよ。
 殺し合いに乗れと、強要した覚えもありません。ただ、あなたが寂しい思いをしないようなつめさんの持ち物を支給しただけです。
 それをどう勘違いしたのか、あなたはなつめさんのためという名目で殺し合いに乗ってしまった。
 私が今回、あなたの前に姿を現したのはあなたの勘違いを正すため。純粋な善意からです」
 ロンの言葉に美希は呆然とする。
 なつめが人質になっていなかったのは嬉しい。だが、もし、なつめが人質になっていなかったのなら、自分がやってきたことはどうなるのか。

431:名無しより愛をこめて
09/01/10 19:42:05 CQEN2XVXO
支援

432:欺瞞と寂寥の果て ◇i1BeVxv./w1氏代理
09/01/10 19:42:25 VEAvQamQ0
「そ、そんな……。でも、あなたは言ったわ。なつめを失いたくなければ戦えって」
「ええ、それは確かに言いました。でも、それはあなたが死んだら、あなたとなつめさんはこの世とあの世に分かれることになる。
 あなたから見れば、それはなつめさんを失うということですよね?」
「嘘、嘘!」
 ロンの曲解を否定しようとする美希だが、今の美希には嘘という言葉だけしか呟けなかった。
 その様子を見たロンはより一層、笑みを深くする。
「おやおや、どうして信じないんですか?あなたにとってはこれ以上ない喜ばしいニュースだと思いますが。
 クククッ、まあ、そうですよね。なつめのためにやった。その免罪符が虚構だったのなら、あなたがやってきたことは一体、なんだったのか。
 ……なんだったんでしょうね?」
 息が吹きかかる距離まで、美希に近づくロン。その滑稽な顔を確認しながら、話をするためだ。
「!」


433:欺瞞と寂寥の果て ◇i1BeVxv./w1氏代理
09/01/10 19:43:26 VEAvQamQ0
 その時、美希の拳が彼へと飛んだ。
 しかし、直前でロンの身体は靄となり、彼女の拳は空しく空を切る。
 美希は諦めず、次々と拳を繰り出すが、気体となったロンを傷つけられるはずもない。
「まったく、八つ当たりですか。気は済みましたか?」
 やがて、美希の息が切れる頃、ロンは気体から固体へと戻る。
 それでも美希は一撃を打ち込もうと機会を窺っているようロンには見えた。
「やれやれ、あなたと話すのはこの辺にしておきましょう。何はともあれ、真実はお話しましたしね。
 あなたがこの場において、今後、どういう役割をこなすかは引き続き、あなたの自由です。
 このまま殺戮を続け、優勝を目指しても結構です。勿論、その逆もね」
「!、だぁぁぁっ!!!!」
 渾身の力を込め、正拳突きを打ち込む美希。だが、またもロンは靄になると、今度はそのまま消えていった。 
「っぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!ろぉん!出てきなさいぃ!ろぉぉん!!!!うわぁぁぁぁっ!!!!!!」
 絶叫を上げながら、やり場のない怒りを、近場の建物にぶつける美希。
 激気が込められていれば、その拳は建物の硬度にも負けなかっただろう。
 だが、制限により、激気を封じられた美希の拳からは、皮が破け、血が噴き出す。
 しかし、それでも美希は叫び、殴り続けた。
 怒りの矛先はロンでも、美希が本当に殴りたいのは愚かな自分自身なのだから。



「ふふっ、旨くいきましたねー」
 ロンは美希とのやり取りを思い出しながら、ひとりごちる。
 ロンが美希に語った内容はほとんどが真実だ。ロンはなつめを人質になどとっていない。
 人質などわざわざとらなくても、娘の存在を散らつかせるだけで、美希は殺し合いに乗るはずだと踏んだからだ。
 もっとも、これほど積極的に動いてくれるとは、流石に予想外だった。
 だが、だからこそ、人間を使ってのゲームは面白い。
「ふふっ、さて、真実を知ったあなたは今度はどんな行動を見せてくれるのでしょうかね?
 こんなサプライズを起こしたあなたのことです。きっと、もっと、面白い見世物を私に見せてくれることでしょう」
 ロンの眼の前には並樹瞬がいた。
 いや、並樹瞬だったものがいた。

434:名無しより愛をこめて
09/01/10 19:43:58 CQEN2XVXO



435:欺瞞と寂寥の果て ◇i1BeVxv./w1氏代理
09/01/10 19:44:39 VEAvQamQ0
「グルォォォォッ!!!」
 最早、彼に人間であったときの面影はなかった。
 眼は黒い瞳の部分が目を覆うように広がり、耳は肥大化し、口は大きく裂けていた。
 野獣の武器である牙や爪は獲物を引き裂けるほどに鋭く伸び、獲物を捕らえるためか、背中からは触手のようなものさえ生えている。
 バイラムの幹部の命令になら従う程度の知能は持っているが、残念ながら野獣と化した瞬の前にはもはや眼に映る全てのモノが獲物でしかない。
「カプセルから出たバイオ次元虫の寿命は数十秒。仮にバイオ次元獣になったとしても、数分しかこの空間には存在できない。
 これも生存本能が起こした奇跡ですかね」
 瞬の有様を満足気に見詰めると、ロンは今度こそ、その場から去っていった。

「私という糸から解き放たれたあなたたちがどう踊るか?一観客として、楽しみにしていますよ」


【名前】冥王ジルフィーザ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:第1話前
[現在地]:G-8砂漠 1日目 午前
[状態]:軽傷。戦闘に支障のなし。2時間能力発揮できません
[装備]:杖
[道具]:支給品一式(個別支給品は確認済)
[思考]
基本行動方針:ドロップと協力し、ロンを殺す。
第一行動方針:ドロップの身体を探すため、F-9エリアへ。
[備考]
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。

436:欺瞞と寂寥の果て ◇i1BeVxv./w1氏代理
09/01/10 19:45:49 VEAvQamQ0
【名前】ドロップ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:26話、サラマンデス覚醒前
[現在地]:G-8砂漠 1日目 午前
[状態]:健康。30分程度能力が発揮できません。
[装備]:なし
[道具]:メメの鏡の破片、虹の反物
[思考]
基本行動方針:???
第一行動方針:F-9エリアへ行き、成体になる。
第二行動方針:制限を利用して、ジルフィーザを殺す。
[備考]
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。

【名前】並樹瞬@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第2話後
[現在地]:H-7海岸 1日目 午前
[状態]:健康。次元獣化。
[装備]:デジタイザー
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:暴れる。
[備考]
・ゴウライチェンジャー、瞬の支給品一式はH-7エリアに放置されています。

437:名無しより愛をこめて
09/01/10 19:46:03 CQEN2XVXO
支援

438:欺瞞と寂寥の果て ◇i1BeVxv./w1氏代理
09/01/10 19:46:47 VEAvQamQ0
【名前】真咲美希@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:物語中盤
[現在地]:H-7海岸 1日目 午前
[状態]:激しい憤り。首にジルフィーザの手跡。頭部に軽傷。30分程度激気が使えません。
[装備]:スタッグブレイカー@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:支給品一式
[思考]
基本方針:???
第一行動方針:???
[備考]
・時間軸のずれ、首輪の制限を知っています。
・マシンハスキーは鍵付きでG-7エリアに放置されています。

439:名無しより愛をこめて
09/01/10 19:47:47 CQEN2XVXO



440:欺瞞と寂寥の果て ◇i1BeVxv./w1氏代理
09/01/10 20:02:47 VEAvQamQ0
投下終了。
誤字、脱字、ご意見、指摘事項、ご感想がありましたら、よろしくお願いします。

瞬の処遇に関しては議論が必要かなと考えております。
三魔人ラモンにバイオ次元虫が取り付きましたので、生物も可能とは思いますが、
オリキャラになりますので、今後のリレーのことも考えて、
修正が必要ならば、次元獣化しない場合の話も考えたいと思います。

441:名無しより愛をこめて
09/01/10 20:34:33 VEAvQamQ0
投下GJ!!です。
ふー、ハードな展開にしばし言葉が出ませんでした。
ドロップに裏切られ、目的であり支えでもあったなつめの存在が偽りであった事を知らされた美希さん。
彼女の叫びが悲痛です。これから彼女はどんな道を選んでいく事になるのでしょう。
償いかそれともこのまま突き進むのか……

弟の悪意に気付かないジル兄、美希の裏切りでとんでもない目にあう羽目になった瞬。
共に今後が気になります。
バトル、心理描写どちらも秀逸の一言です。ハードな展開がたまらないw
ハラハラさせていただきました。面白かったです!GJ!!

瞬に関しては、自分は問題無いと思います。
おっしゃる通り、また劇中でロンの言っている通り、生物についた次元虫はおりますし。
確かにリレーの際には細心の注意が必要になる事と思いますが……


442:名無しより愛をこめて
09/01/10 22:48:00 lgEDMtu7O
おおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!
なんてこった瞬!次元虫怖すぎだろ!!
……失礼、思わず取り乱してしまいました。
戦闘描写にドキドキさせられ、ドロップの黒さにニヤリとさせられ、美季の絶望には自分もorz
これは半端無く名作!!
面白かったです!超GJでした!!

瞬の次元虫化については自分も構わないかと思います。


443:名無しより愛をこめて
09/01/11 00:44:19 bhBjYNtX0
グレイの言うことなら聞くのかね?
元に戻る熱い展開があるのか、それともネジブルーに次ぐマーダーになるのか?
面白かったです!

444:名無しより愛をこめて
09/01/13 19:55:32 p3vQkhjMO
当方に支援の用意あり!!!

445: ◆Z5wk4/jklI
09/01/14 00:15:56 rqgBfiQSO
>>444
申し訳ありません。しばしお待ちをー。
延長期限までには仕上げられるよう頑張りますゆえ。

446: ◆8ttRQi9eks
09/01/14 03:11:55 ZpXQwNdr0
自分も延長をお願いします。
少し風邪気味なもので…

447:名無しより愛をこめて
09/01/14 04:20:21 mCzaoEJPO
お二人とも了解致しました。
しかし、あまりご無理をなさらぬよう。

448: ◆8ttRQi9eks
09/01/15 01:41:36 NYRtQrqI0
「さて、高みの見物といこうかな…」

木陰から二人の獣拳使いの激突を眺め、シュリケンジャーは呟いた。
気配を消すのはお手の物。忍者のたしなみというものだ。
勝敗がどちらに転ぶにせよ、人は減る。それで彼の目的は十分に果たせるはずだった。
「だけど、ミーとしては、できれば理央に勝って欲しいんだよなぁ…」
情があるわけではない。時限爆弾つきの彼ならば生き延びたとしても先は知れている。
危険はサンヨよりも少ないという判断だ。今の彼をして動かすのは本来の忍びとしての冷徹さ。
権謀術数にかけては、このゲームの主催であるロンにすら匹敵するだろう。

§

「聞かせてもらおうか! “あいつ”とは誰だ、サンヨ!!!」
理央の詰問にサンヨは慌てた様子で所在無くあたふたと狼狽した様子を見せた。
「な・なんでもないヨ!…誰でもないヨ!!」
誰でもないはずはない。
彼がロンとつながっているのは確かだ。だが、ならば何故ここまで隠すのか。
他の参加者ならともかく、今更自分に対してロンとの関わりを隠す必然性はない。
ならば、ロン以外の誰かとサンヨはつながっているのだろう。
そして恐らくその『あいつ』はこのゲームに乗っている人物と見て間違いはない。
「答える気はない、か…ならば、身体に聞くとしよう――……!」
理央は自らに内在する力の根源に揺さぶりをかける。
足元の空気が逆巻き、大地が震え、木々がざわめく。
「ほぉ…大したもんだな……成る程、彼が大会有数の実力者という話は間違いないようだな…」
だが、その命運は既に尽きている。
これだけの力を持ちながら、彼は優勝することはない。
所詮、彼は獣だ。知恵ある者の都合で弄ばれる哀れなマリオネット。
それが、理央の運命なのだろう。


449: ◆8ttRQi9eks
09/01/15 01:42:17 NYRtQrqI0


「臨気凱装……!!」


黒獅子を模った鎧に身を包み、理央は獣拳使いとしての本質を顕現させる。
夜の闇より、なお冥く。臨獣ライオン拳の理央。
(や・や・や・やばいよ…! 理央本気だよ!!! サンヨ殺されちゃうよぉ!!)
既に幻獣王の力こそ打ち捨てたとはいえ、過去現在、そして恐らくは未来においても最強の称号で語られるであろう彼と、
制限の状態で戦うなど狂気の沙汰だ。
恥も外聞もなく、サンヨは背中を見せて脱兎が如く逃げ出した。
(10分逃げればサンヨの勝ちネ~~! あいつの相手なんてばかばかしくてやってらんないヨォ~~~~!!)

巨躯に似合わない俊足で見る間にリオとの距離を広げていく。
だが、リオはそれを追おうともせず、ただ黙って拳に臨気を込める。
そして、たぎる臨気を一気に解き放つ。

「剛勇…――吼波-----―!!!!!」

道なき道を獣が行くように―
百十の王の形を与えられた臨気が、両者を隔てる空間を一気に押しつぶす。
「どええええええええええええぇぇぇぇえええええーーーーーーーーー!!!!」
爪が、牙が障害となる木々を岩を次々に粉砕し、サンヨに襲い掛かった。
なんとか獅子の顎を両手で必死に押さえるが、その圧倒的勢いの前には風前の灯だ。
「んぎぎぎぎぎぎ…!!!」
相手がゲンギを使ってこないことに僅かな違和感を覚えながら、理央は獅子の幻の圧を強める。
「……無駄だ」
次の瞬間、閃光が弾け辺りを紅蓮の炎が包む。


450: ◆8ttRQi9eks
09/01/15 01:42:54 NYRtQrqI0
爆発。
小規模なクレーターの中心で血まみれになって荒い息を吐くサンヨを悠然と見下ろしながら、
理央は最後通告を行った。
「貴様…制限中か……成る程、貴様の選択は正しかったぞ。そんな状態で俺と戦うことの愚かしさは分かっていたと見える…だが、敵に背を見せるなど仮にも四幻将の一角とは思えぬ無様な醜態…恥を知れ」
「ハァ…ハァ……ハァハァ……」
息も絶え絶えに、頭上から投げかけられる言葉に反論の一つもできずに。
立ち上がる力すら失せたのか、膝をついた格好は自然、相手に頭を垂れる構図となる。
「無様だな、サンヨ。今のお前など倒す価値もない…お前が持っている情報を全て俺に伝えろ。
ロンのこと、メレのこと…そして殺し合いに乗ったお前の新たな仲間の情報についてもな」
―理央の問いかけにシュリケンジャーは、ふっと笑みをこぼす。
獣にもそれ位の知恵はあったらしい。

「全てを話せば命だけは助けてやってもいい…そして、二度と俺とメレの前に姿を現すな」
理央は悠然と立ちつくしたままサンヨの答えを待った。
「ハァ…ハァ…全て話せば…ハァハァ…命だけは見逃してくれるのか…?」
絞り出した声に理央は僅かにうなずいてみせる。
「あぁ…」

「偉そうに…落魄した王の言うことかああああああああああーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」

自らの状態よりも自身のプライドを傷つけられたことにサンヨは逆上した。
彼とてロンの操り人形に過ぎないくせに。
高みから自分を見下ろし、あろうことか助けてやる、だと。
ロンがいなければ幻獣王にすらなれなかったものを。
飛び掛るかつての側近の姿に憐憫の情を覚えながら、理央は自らを循環する臨気の流れに再び働きかける。
――だが。


451: ◆8ttRQi9eks
09/01/15 01:44:44 NYRtQrqI0
力の反動であろうか。
臨気の鎧が理央の身体能力を活性化したことに呼応したか、
体内に打ち込まれた忌まわしい死神もまたその眼を開けることとなったのだ。
「ぐぅッ!?」
かつて経験したことのない激痛にリオはその場に膝をつく。
わずかに反応が遅れたことで本来ならば避けられたはずの、サンヨの横薙ぎの
力の反動であろうか。
臨気の鎧が理央の身体能力を活性化したことに呼応したか、
体内に打ち込まれた忌まわしい死神もまたその眼を開けることとなったのだ。


452: ◆8ttRQi9eks
09/01/15 01:45:21 NYRtQrqI0
「ぐぅッ!?」
かつて経験したことのない激痛にリオはその場に膝をつく。
わずかに反応が遅れたことで本来ならば避けられたはずの、サンヨの横薙ぎの
蹴りをまともに喰らった。
「―――…ッッ!!」
体重を乗せた思い蹴りにわき腹が軋む。
倒れ付した理央の傍らにサンヨの姿が近づく。
「ふざけるんじゃないヨ! 誰のおかげでここまで来れたと思ってるんだヨ!! 貴様なんて所詮はただの操り人形じゃないかヨ!!!!」
怒りにわれを忘れ、目の前の異変にも気づくことなく、サンヨは理央の首筋を持ち上げ地面へしたたかに打ちつけた。
「お前なんて…お前なんて……ただのロンの玩具ネ!!!!」


453:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:14:56 O/i5sauc0
最早、これまでだろう―
サンヨは気づいていないのかもしれないが、既に彼はロンを信じることが出来なくなっている。
死の瀬戸際にあって、彼の中にロンに対する疑念が生まれた。
あるいは、それもロンの差し金なのかもしれないが。

「終わりだ…サンヨ。せめて、その苦しみから俺が解き放ってやろう……」
傍らの死体。
状況から見て、彼の死にサンヨは関っているのかもしれない。
よしんば関っていないとしても、彼は既に殺し合いに乗っている。
理央は最後の審判を下すべく、痛みを乗り越え力の集中を始めた――
―終わったな、とシュリケンジャーが半ばその場からの離脱を考えていたその時だった。
「な…にっ!?」
思わず気配を消していることすら忘れて声が出た。
ちらっとリオが背後を見やる。
しかし、すぐにその視線はサンヨへ注がれた。


「ロンは…ロンはサンヨを信頼してるネ!! 間違いないヨ! 絶対、そうだヨ!!」


薄ら笑いを浮かべ、自らを縛る金色の首輪に手を掛ける。
「貴様…何を…―!」
問いかけは、爆発に途切れた。
力任せに首輪を引きちぎり、サンヨは自ら起こした爆発の炎に倒れたのだ。
とめる間もないあっという間の出来事に理央は呆然と立ち尽くした。
「オ~マイゴォォッド!! まさか、自分で首輪を引きちぎるとはねぇ……」
意外な結末。
だが、彼の希望通り、人は減った。そして死神に魅入られたリオは遠からず死ぬ。
全ては計画通り。


454:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:15:43 O/i5sauc0
シュリケンジャーは愚かな蜥蜴の最期に失笑を漏らした。
だが、真の驚愕はその後に訪れた。

「…やっぱりネェェェ~~~~~……ロンがサンヨを裏切るはずがないんだヨォォォォォォォォ!!!!!!」

サンヨが立ち上がってきた。
制限の枷から解き放たれたことで、その全身から黄金の幻気が立ち昇っている。
「だから最初からサンヨは言ってたんだヨォォ…サンヨに制限なんて必要ないって……見ててよ、ロン……これから一番の邪魔者殺すとこ!」

「くっ…剛 勇 吼 弾ッッッッ!!!」
弾丸上に練りこんだ臨気を相手の頭蓋めがけて射出する。
しかし。
「ぬるいヨッッ!!」
先ほどとは比べ物にならないほどの力の奔流が獅子の一撃を受け止め、彼方へ弾き返した。
―反重力鎧。
本来ならば制限の中にあるはずのゲンギを事も無げに使い、サンヨは高らかに叫んだ。
獅子が地に伏せる瞬間を確信して。






「さっき終わりだとかなんだとか言ってたネ……終わるのはお前だヨッッッ!!!」
天高く、両腕を掲げ、自らに内在する幻気の全てを使って空間の圧に干渉する。
「まずいな…これは……!」
辺りの景色が歪んでいく。
リオもろとも、このエリアを吹き飛ばしてしまうつもりなのだろう。
「読み違えたかな…」


455:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:17:00 O/i5sauc0
自らの読みの甘さにシュリケンジャーは自嘲の笑みを浮かべた。

「喰らえぇぇぇぇぇええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
両の眼はリオを捉えて、サンヨは腕を勢いよく振り下ろす。
その時、世界が軋む音を聞いた。
全てが超重圧の重力異常に押しつぶされていく。
命を失った真墨の遺体も、倒れた木々も全て地に沈んで潰されていった―
そして、全てが去った後で。

「ハァ…ハァ…ハァハァ…やったヨ! 跡形もないよ!! 理央死んだヨ!!! 見てるかい? ロン!!! 理央が死んだヨ!!! サンヨが殺したヨ!!!!!」
パチパチパチパチパチ。
勝どきを上げるサンヨの耳に拍手の音が聞こえてくる。
「ブラボー! ブラボー!! さすがサンヨだね。ミーもまさかここまでやれるとは思わなかったよ!」
背後にいつの間に現れたのか、サンヨが本来落ち合うはずの相手であるシュリケンジャーがたたずんでいた。
「お前…今頃来たのかヨ……」
また、違う姿をしている。
自分にはそれと分かるよう、シュリケンボールをかざす目印を彼は指定していた。
舌打ちをしながら、シュリケンジャーに歩み寄ろうとしたその時だった。
「おっと! 待った…まだ、ゲームは終わってないよ」
何をこの男はいっているんだろう。既に理央は重力異常の中心でぺしゃんこになっているはず。
戦いは、既に終わっているはずなのだ。
だが。
深海の底を覗き込むような重苦しいこの感覚はなんだろう。
重力を操る自分が蛇に睨まれた蛙のようにすくんで動けなくなる。



456:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:18:34 O/i5sauc0
いや、これは蛇の眼差しなどという生易しいものではない。
これは――



「猛きこと獅子の如く…強きこと、また獅子の如く―…邪竜を葬り去る者―臨獣ライオン拳、黒獅子…理央――!!」



あの渦の中心にあってなお、彼は滅びることなく。王者の風格すら漂わせて。
「なっ……!!!」
巨大な影が頭上に迫っていた。
「リンギ・招来獣……」
理央を守護するが如く、漆黒の獣がその威容を現していた。
「嘘だヨ…こんなの夢だヨ…」
弱弱しく頭を振るサンヨを見下ろしながら理央は言った。
「どうやら…この空間には幻気が満ちているらしいな…四幻将の一人であるお前だからこそしばらくは行動できたようだが…それももう、終わりだ」
既に見えない毒の大気はサンヨの体を蝕んでいた。
足に力が入らない。
それは眼前の脅威を目の当たりにしているからという理由だけではないはずだ。
身体が、崩れていく。
前進にひび割れが走り、身体がガラスの様に脆くなっていく。


457:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:22:06 O/i5sauc0
膝が砕け、指が割れた。
仰向けのままどうすることも出来ない。ただ、身体が、心が朽ちていくのを待つしかない。
漆黒の獅子がゆっくりと、その巨大な顎を開いてゆく。
眩い光が辺りを照らし出す。


「―獅子吼」


閃光に呑まれ光となる、その最期の瞬間までサンヨは叫び続けた。
「ロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

…――特別扱いなら、もうしたじゃないですか…後は自分で何とかして御覧なさい――…

死に際の幻聴か、焦がれた人の声を光の中に聞いた気がした。
「ロオオオオオオオオォォォォォオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!!!」


その最期の雄たけびは、確かにロンに届いているはずだった。


§

「さて、と…ミーはそろそろ行こうかな」
今度こそ、その場を後にすべくシュリケンジャーは踵を返した。
「待てっ! セン!?」
理央の問いかけに歩を止める。
みれば、既に彼の凱装は解け人の姿に戻っている。
制限までは後ほんの少し時間があるはずだが、戦闘の痛手と胸の痛みに戦闘状態を保持できないらしい。
制限に入れば臨気で抗うことも出来なくなり、胸に巣食う死神の鎌に命を狩られることとなる。
止めを刺す必要もないだろう。


458:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:22:52 O/i5sauc0
「…違うな。ミーは緑の光弾シュリケンジャー! ユーの敵だよ」
チッチと指を振りながらシュリケンジャーは言った。忍が名乗ることなど、本来はありえない。
彼は自分をセンだと思い込んでいる。このまま、成りすまして嘘を突き通すことも出来る。
だが、戦士としての威風堂々たる戦いを見せた理央への…そんな彼を姑息な手段で利用したことへのせめてもの礼だった。
「貴様…センではないな…!…サンヨが言っていたあいつとはお前のことか!?」
その姿は江成仙一そのものだ。しかし、先ほど出会った彼とは雰囲気が全く違う。
間違いない。彼は自分とサンヨの戦いをずっと盗み見ていた。
どちらかが倒れるのを待っていたのだろう。
「正解。なかなか凄いもの見せてもらったよ。だけど、惜しいな…君はもう、長くない。
制限の二時間を待たずに蠍の毒でリタイアだ」
「貴様…何をしたっ!」
戦闘中に感じた激痛の正体は彼に起因するらしい。
だが、どこでそんな術を施されたのか―
「…ミーはね、1000の顔を持つ男さ。ユーは強い。強いけれど、ただそれだけさ。
出会って間もない男の言葉に身を預けるような無防備さはその強さへのおごりなのかな?
それとも、ユーはそれだけ無垢で、ミーがよっぽど汚れてるってことなのかな?」
「貴様…! センを、センをどうした!!」
胸の奥が焼け付くように痛む。
骨を蝕み、肉を貪り、やがてはその命の灯を消し去るだろう。無間の苦しみの果てに。
「出会って間もない男の心配か…思ったよりユーは優しいんだな。見直したよ」

「さようなら…黒獅子の拳士。君の犠牲は無駄ではないってことだけは、ミーが確実に約束できる唯一つの真実さ………」
彼を救うこともできる。今なら、まだ間に合う。
だが、今のシュリケンジャーにはそれが出来ない。
「待てっ!! 貴様!!!」
「…無駄だよ。君は死ぬ。万が一、生き延びたとしてもミーの本当の顔すら知らない君がどうやって戦うというんだ? 
この勝負、始まる前からユーの負けだったのさ」
獣に人の狡さを求めるのは酷と言う物だろう。


459:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:24:02 O/i5sauc0
獣はその強さゆえに自分を偽れず、変えられず滅んでいく。
だが―

「思い通りには…ならん―…!」

口元に血をにじませながら、理央は残る全てのリンキを身体のただ一点に集中させる。
そして、解き放った。
理央を源に噴出すどす黒い力の奔流が何者をも拒絶して吹き荒れる。
猛り狂う怒臨気の嵐を前に人の叫びはかき消されて消えた。
「理央! 何を!? 止めろ!! 苦しむだけだ!!」
蠍の毒は身体の奥深く心臓にまで達している。無理に力を加えれば、その死期を早めるだけだ。
「俺は…俺はもう、誰かの思い通りにはならん! お前にも、ロンにも俺を操ることは出来ない!! 決してっっっっ!!!」
翻弄されるままに、破滅の道を突き進んだ男はもういない。
人を超え、獣を超え、そして龍を喰らう。
生き抜いて、勝ち抜いて、彼が彼のままに在れる場所を、最愛の人をこの手に取り戻す。
「俺は…俺は死なないッッ!! メレェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

§

地に伏す獅子は、まるで無垢な赤子のような顔で深い眠りに落ちていた。
「……君を一度だけ、見逃すよ…理央。その代わり、君はここにおいていく。
誰かに寝首を掻かれればそれで終わりさ。ミーは君に、何も、しない。
助けることも…………殺すことも」
足元には潰れた蠍が一匹、煙を上げてこの世界から消滅しようとしていた。

「大した男だ…次に会うときはミーとユーのどちらかが死ぬ時だ。最も勝つのはミーだけどね☆」

その再会自体も、あるのかどうか怪しいけれど。




460:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
09/01/15 10:31:07 O/i5sauc0
【サンヨ 死亡】
残り39名

【名前】シュリケンジャー@忍風戦隊ハリケンジャー
[時間軸]:巻之四十三後
[現在地]:C-8森 1日目 午前
[状態]:健康。1時間30分変身不可
[装備]:シュリケンボール、スワン製防弾チョッキ@特捜戦隊デカレンジャー、SPD隊員服(セン)
[道具]:包帯、基本支給品一式
[思考]
基本方針:殺し合いに乗る(一時的に保留)
第一行動方針:七海とおぼろを五体満足で帰還させる。
第二行動方針:それがだめならアレの消滅を願う。
第三行動方針:サンヨが殺せることを確認。放置する。

【名前】理央@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:修行その47 幻気を解き放った瞬間
[現在地]:C-8森 1日目 午前
[状態]:左胸に銃創。肩から脇の下にかけて浅い切り傷。ロンへの怒り。深く無防備に眠り込んでいます
[道具]:支給品一式。
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗った相手には容赦しない。
第一行動方針:メレと合流する。
第二行動方針:ナイとメアを探す。
第三行動方針:メレと合流する。
※大体の制限時間に気付きました。

備考
・サンヨと江成仙一から一通りの情報を得ました。具体的な制限時間も知っています。
・シュリケンジャーはロンが何らかの方法で監視していることに気づきました。
・炎の騎馬はC-7エリアに隠しています。
・シュリケンジャーの支給品は宇宙サソリ@忍風戦隊ハリケンジャーと包帯でした。

461:◇8ttRQi9eks氏の代理投下……
09/01/15 10:58:38 O/i5sauc0
理央が宇宙蠍を浄化できたのはラゲクの回での毒を除去の応用です。
また、サンヨの首輪崩壊後の行動にはご意見ある方、いらっしゃるかと思うのご指摘お待ちしています。


――――――――――――――――――――――――

以上代理投下終r……うわっ何をするやめ(ry



クックックッ……。

まさか、昨夜の内に投下しているとは夢にも思いませんでしたよ。
これだから……。そう、これだからこのロワからは目が離せないのです。

◇8ttRQi9eks氏、投下乙でしたね。
クックックッ。代理投下中、残念な事に一箇所誤字を見つけてしまいました。
教えて差し上げましょう。

前進にひび割れが走り、身体がガラスの様に脆くなっていく。

『全身』ではないでしょうか?

さて、ではゆっくり読せていただきましょう。


462:名無しより愛をこめて
09/01/15 17:08:41 zNHDCQ4s0
投下乙でした。

サンヨの台詞がいいな。
狂喜と絶望の叫びが聞こえてくるようでした。
しかしサンヨが死んで、これはますますロンの真意が謎に包まれてきましたね。
むー。あっさりと宇宙サソリを解除してしまったのは理央ならではというところですかね。
理央とサンヨ。
明暗を分けた二人でしたが、どちらも生き残りを懸けた激しく凄まじい執念を感じました。
GJ!

いくつか指摘と質問を。
・残りの人数ですが29名が正しいかと思われます。
・ロンがサンヨにした特別扱いというのは無理やり引きちぎった際の首輪の威力を小さくしてあった。
 という解釈でいいのでしょうか?(深雪死亡時とくらべてそう思ったのですが……)



463:名無しより愛をこめて
09/01/15 20:28:54 WcASZF2j0
投下乙です。
サンヨの叫びが哀しいですね。
理央にトドメを刺さなかったのは、シュリケンジャーの残った良心ゆえか、誇りゆえか……

いくつか疑問点をば。
・理央は首輪が生命維持装置だと気付いたようですが、どの時点で気付いたのでしょうか?
・サンヨはロンの不死の部分、つまりある意味、幻気のかたまりともいえるという事だと思うのですが、
 なぜ、幻気の毒の影響を受ける事となったのでしょうか?
自分の疑問は以上です。

特に後者は今後の展開にも関わってくる事となると思いますので、議論スレへ移動できたらと思います。
よろしくお願いします。


464: ◆8ttRQi9eks
09/01/15 20:49:43 NYRtQrqI0
感想をありがとうございます。
議論スレのほうで回答をしたいと思いますのでそちらで。

465:名無しより愛をこめて
09/01/19 22:25:26 GmTjBo4W0
保守

466:名無しより愛をこめて
09/01/24 21:07:47 6tp/6B6RO
主催者が復活?するかどうかは分からないけど、
VS記念に保守

467: ◆7m.xhZiEWA
09/01/25 14:35:58 2yFhwPod0
ネジブルー、並樹瞬、早川祐作、クエスターガイ、投下します。

468: ◆7m.xhZiEWA
09/01/25 14:37:02 2yFhwPod0

「さーて、メガブルーはどこかな~ネジシルバーでもいいから出てきてくれないかな~」
都市エリアをうろつく高校生ぐらいの姿をした男が言う。
「メガブルーならなぶり殺しだけどネジシルバーはどう殺そうかなぁ……一気に殺すのもいいし、絶望と苦痛の混じった表情を見ながらじっくりと殺すのもいいなぁ……」
ネジビザールが頭の中でメガシルバー殺害方法を考えていると……

「ウォォオォォォォォォオオオオオ!!」

突然の大声によりネジビザールの意識がこっちの世界に戻ってくる。
当然ネジビザールは面白くない。
「いいところを邪魔しやがって……あの声の奴も殺そうかな……」
すっかり気分を損ねたネジビザールは人間の擬態を解きその声の主の元に向かった。

ガイがビルの屋上で一人たたずんでいた。
「クソが!!!ボウケンピンク…ふざけやがって!!何が許してくださいだ!!」
ガイの脳裏に先ほどのさくらの姿がフラッシュバックする。
敵である自分に対し涙を流し、地に這いつくばり、プライドを捨てた。挙句の果てには命乞いをしたのだ。
「ウォォオォォォォォォォオオオオオ!!」
ガイはやりきれない気持ちになり叫んだ。
しかし重苦しい気分は払われることなくより重い気分になる。
ガイはその場を立ち去るべく出口の方向を向いた瞬間

ゴォォォオオ!!

風を切り裂く音とともに何かガイへと振り下ろされる。
「うお!?」
間一髪でガイはかわしたがデイパックが切り裂かれいくつかの支給品が地面に落ちる。
「ふーん、そんな傷だらけの体でがんばるじゃないか。」
ガイを攻撃した者が言う、青い体に鋭い結晶体、そしてガイを襲ったと思われる長く伸びた爪。
「いきなりなんだよ!!つーかだれだよお前は!!?」

469: ◆zaBiSVxjpk
09/01/25 15:07:18 O47dIjSCO
すみません。
パソコンの調子が悪いので夜に携帯で投下します。
ご迷惑をおかけして申しわけございません。

470:名無しより愛をこめて
09/01/25 15:27:14 kYwcoDvKi
二重カキコ御免
ついでにスパイダーロードに訂正

471:名無しより愛をこめて
09/01/25 16:10:51 M9lfIvoZO
夜に改めて投下の件は了解致しました。
一点お願いですが、鳥を変えられると予約された本人か判別出来ませんので統一していただけますか。

472: ◆zaBiSVxjpk
09/01/25 21:36:02 O47dIjSCO
本当に申し訳ありません!
トラブルが発生して本日中に投下することができなくなりました。
明日には必ず投下いたしますのでもう1日だけお待ちください。
皆様方に迷惑をおかけして本当に申し訳ございません。

>>471
申しわけございません。統一します…

473:名無しより愛をこめて
09/01/25 22:12:59 QXsHd1jPO
>>472
了解致しました。

474: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:49:18 hpzYXLgk0
ブドー投下しますが、要議論であるかと思います。
よろしくお願いします。

475: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:49:59 hpzYXLgk0
ギリリッと歯が軋む音を立てる。
微かに肩は震え、強く握りしめた拳の中、掌へ己の五爪が深く深く突き刺さる。
ブドーは瞬きもせず、森の中に残された轍を只々睨み付けていた。

森の中は聖域にも似た凛とした静けさを保ったまま。
どれだけ耳をそばだてても、誰も近づく音は聞こえない。
慰めるように頬を撫でる風が、制限という追っ手から野良犬のように隠れるしかない口惜しさを掻き立てる。
包みこむような暖かな太陽の光は、傷を抉るような生温かさを齎すだけ。


ぐっと強張る身体から力を抜き、溜めていた息を吐き出した。
もう一度シュリケンジャーが去った方向を睨み、踵を返し反対の方向へ歩を進める。
一歩、また一歩。
歩く度、心に燻る怒りにも似た思いは、薄れるどころか強まるばかり。

「おのれ……」

歩きながらブドーは知らず呟いた。
忌々しい。
そう、サンヨもシュリケンジャーも。

―――ひっ…か……か………っ…………た……………ヨ………………~!

嵌められた。
サンヨの声が蘇ると共に屈辱感で腹の辺りが焼けるように熱くなる。

―――Don't worry、心配しなくても、その内、戦う機会はあるさ。ミーもMurderだからね。Murder同士は生き残っている限り、いつか戦うことになる。そうだろ?

腹に据えた熱き物が呼び水となり、シュリケンジャーの嘲笑を帯びた言葉が思い出された。

476: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:50:34 hpzYXLgk0
制限など関係なくとも、『ブドー如き殺すのは訳が無い』そんな意味合いを含んでいた。
ブドーを躍らせ、人減らしとして利用した後始末する。
そんな薄汚れた姦計さえ垣間見えた。

「次は、許さぬ!」

ブドーは叫び、振り払うように走り出した。
鬱蒼とした森の、深い闇の奥へ。

すべてが如何しようもなく忌々しかった。
戦いに身を投じ命尽きるまで戦い抜くという思いの枷になる制限も。
その思いを嘲笑うような二人の策略も。
何もかもの、すべてが。
膨れ上がる怒り、憎悪、嫉妬、さまざま思いが延々と澱のように胃の腑に溜まって行く。
この澱を吐き出す為に、ただ今は戦いたかった。
眼前の敵を叩き潰し、我武者羅に殺し合いの頂点を目指したかった。
戦うどころか、まんまと逃げられた。その口惜しさを打ち払いたかったのだ。


信念など不要。
手段など選ばぬ。
姦計もいらぬ。
友もいらぬ。
ただ欲しいのは……。
ただ、ただ欲しいのは……!

「拙者がっ……。欲するのは―――!!!」

森を疾駆する。
陽光届かぬ暗き黒い森の中を。

477: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:50:58 hpzYXLgk0
渇望を、憤りを、隠そうともせず思いの丈を咆哮に乗せた。

「―――力っ!力のみっ!!デヤァァーーーーー!!!!!!」

高く跳躍し、目前の巨木目掛け渾身の蹴りを放つ。
だが倒れることなく、折ることもままならず。

「グッ!」

ブドーの右足に、鈍い痛みが尾を引いた。
制限のせいだ、などと己に言い訳をしたところで燻る気は一向に晴れない。

「違う。制限など無くても絶対的に拙者には力が足りぬ」

ブドーは愕然としつつ、地に降り立った。
暫時、膝を付き頷だれた時。

渦巻く。
蠢く。
闇に息づく。
何かが呼応した。
顔を上げ、その何かを捜す。

ザワザワと木々が揺らめく。
鬱蒼と茂る森の木々が意思を持つように道を曳いた。
ブドーは、導かれるように細い獣道を進んだ。

やがて、現れたのは、東西南北を神木で囲み、細く結われた綱で張られた結界だった。
結界の中心には獄門台。
その上に三つの首を持つ竜の像があった。

478: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:51:57 hpzYXLgk0
脚台となる尾と胴は精巧な銀細工を施しから絡み合わせ、黄金色を放つ三頭の竜の頭は三方向へ分かれていた。

「これは……」

つ、とブドーは手を伸ばす。
結界に触れるや否やハラリと綱は崩れ落ちた。
招かれるように結界の中へ進み、獄門台に刻まれた文字を指で辿り、像へ触れた。
刹那。
轟、と一陣の黒き風がブドーを包む。

「……なっ!!!!」

驚愕。
次に訪れたのは、何故か心地よさであった。
枯渇した心に澄んだ水が染み入るように、漆黒の闇が、ブドーの胸の内へ染みていく。
染み込んだ闇は、やがて濁流へ変わり、燻る怒りも、澱のような劣位感もすべて飲み込み。
全身へ流れ、溢れ、湧き上がる『力』の血肉となった。


――手に、入れた。拙者は、拙者ハ手に入れタ……。この闇ノ?チカラヲ。チカラ、ヲォ……。



  ◇    ◇    ◇
  


木々の隙間から零れ落ちる陽光に頬を刺され、ふとブドーは我に変えった。

479: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:52:37 hpzYXLgk0
天を仰げば、陽は頭上近くまで高く上がっていた。

「先程の、あれは……」

願望が見せた幻か?否か?
ブドーは自分の右手に視線を落とす。
己の掌の中、三頭の首を持つ竜は、血肉を得た如くぬらぬらと輝いていた。

「選んだのであろう拙者を。そして、拙者は受け入れた……」

さて、受け入れたのか、喰われたのか。
身体に漲る『力』にブドーは薄く笑った。
おそらく、今少しの時がたてば、飲み込んだ闇が……。
己の魂を蝕み、いずれ志も記憶も、すべてを侵食していくだろう。

確信に近い予感。
だが、構わなかった。
力を得る代償ならば、そのようなもの、もはや惜しくない。
信念など、とうに捨てた。

屍を拾う者など、もういないのだから。




480: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:53:02 hpzYXLgk0
【名前】剣将ブドー@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第24章(ギンガマンに敗れた)後
[現在地]:A-10森 1日目 昼
[状態]:胸と腹に中程度のダメージ。闇の力により戦闘力増幅。
[装備]:ゲキセイバー@獣拳戦隊ゲキレンジャー、一つ目のライフル銃@魔法戦隊マジレンジャー、手裏剣少々@星獣戦隊ギンガマン
[道具]:筆と短冊。サイコマッシュ@特捜戦隊デカレンジャー。予備弾装(銃弾5発、催涙弾5発)。支給品一式(ブドー&バンキュリア)。真墨の首輪。闇の三ツ首竜。
[思考]
基本方針:戦い、勝利する。
第一行動方針:リオを倒せるほどに強くなる。
第二行動方針:優勝を目指す。
※首輪の制限に気が付きました。
※闇の三ツ首竜により力が増幅しています。


481: ◆MGy4jd.pxY
09/01/26 20:55:44 hpzYXLgk0
以上ですが、闇の三ツ首竜の扱いについて要議論かと思っています。
ブドーが闇に選ばれないのでは?
という疑問が出た場合について、個人的には理央や他の参加者との戦いを経て本編真墨の抱えていた思いとブドーが重なったためいけるかと思いました。

修正と仮定して、
1、三ツ首龍と絡ませない。
2、ブドーが三ツ首龍に選ばれずorz

は考えております。
そのほか、矛盾、指摘もよろしくお願いします。
忌憚ない御意見をお聞かせ頂ければ幸いです。

482: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 21:32:54 4XhmEFxZO
投下が遅くなり申し訳ありません。
これより昨日の続きを投下致します。

483: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 21:38:30 4XhmEFxZO
ガイは問う。
「俺の名前かい?俺はネジビザールだよ~」
ふざけた調子でしゃべるネジビザールを見てガイは思い出した。
(こいつメガブルーって奴を捜してた放送のイカレ野郎だ!!…今の体でまともに戦うのは不利だぜ……)
ガイは冷静に思考を巡らせた。
相手はあの放送を聞く限りかなりイカレた野郎だ。
しかもあの呼びかけに集まった人数は多いはず。
それにもかかわらず奴が生き残っているという事は相当実力があるはず。
……やはりまともに相手をせず逃げるのが上策だろう。
だがどうやって逃げる?……奴は出口の前に立っている。
(ちきしょう……迂闊だったな……大声出したのはまずかったぜ……しゃあねえ、一か八か飛び降りるしかねえな。)
幸いこのビルの高さは他のビルに比べて低い。
「なんだい、逃げる方法でも考えてるのかい?」
ネジビザールがじりじりと近寄りながら言う。

(一見隙だらけに見えるが一歩でも奴の制空圏に入ればあの爪でズタズタに引き裂かれちまう…)
そう考えてる間にもネジビザールとガイの距離はますます近くなる。
(奴の気を引く方法……そうだ!)
ガイは閃いた。
(あいつの捜しているメガブルーを使えばいいんだ!)

484: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 21:41:50 4XhmEFxZO
そしてガイは言った。
「お前、メガブルーって奴を探してるんだろ?」
その言葉を聞いた瞬間にネジビザールの目の色が変わる。
「メガブルーを知ってるのか!?」
(よし、食いついた!)
「ああ、知ってるぜ、さっき海岸の辺りで見た。」(嘘だけどな~)
心の中でニヤニヤしてるとネジビザールが雄叫びをあげた。
「そうか……海岸…海岸か……ヒャハハハハハハ!!!!メガブルゥゥゥゥウウウ!!!」
(今だ!)
次の瞬間ガイはビルから飛び降りた。
気分の悪い浮遊感がガイを襲う。
「うおおおおおお!!!」

ガシャーン!

下にあったゴミ袋の山に突っ込んだ。
「いてぇぇぇぇぇええ!!!!」

485: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 21:48:48 4XhmEFxZO
落下の衝撃で傷だらけの体が悲鳴をあげたがゴミがクッションになり大事には至らなかった。
「無事に逃げられたみたいだな、おっとそんなことよりすることがあった!」
すぐに支給品のチェックをする。
「クソ!なくなったのはマグダスの杖とメモが3枚、それと水か……背に腹は代えられねえが痛え出費だぜ……」
ガイは立ち上がり近くのゴミ袋を蹴り飛ばしてその場を後にした。


ネジビザールはようやくガイがいないことに気づいた。
「あれ?あいつどこいったんだ?」
周りを見渡すがだれもいない。あるのはガイのバックから落ちた支給品のみだ。
「逃げたみたいだね、まあこっちには詳細付名簿があるんだ、メガブルーを殺したら次のターゲットはあいつにしよう。ん?なんだこれ?」
ネジビザールはメモを拾い上げた。
「あ~、そこにある杖の使い方か~、ふーんなかなか使えそうな道具じゃないか。もらっておくとしようか……さーて、ようやく会えるんだねぇ。メガブルー……」
ネジビザールは道具を自分のデイバックにしまうと人間の姿になり海岸へと向かった。

486: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 21:51:58 4XhmEFxZO
海岸で祐作は今後の行動を考えていた。
(まずは瞬を探すのが先決だな、その後はサーガインたちと合流してロンを倒す方法を考える、しかし俺たちにはこの首輪がある以上は下手な動きはできない。)
祐作が自身に装着されている首輪に触れる。
(無理やりはずすのは無理そうだしな……)
祐作が考えにふけっていると都市エリアのほうから一人の男が歩いてきた。
とっさに物陰に身を隠した。
(あれは……誰だ?)
祐作は物陰からよく顔を見る。
遠めで見にくいがそれは並樹瞬の顔に見えた。
「瞬!?瞬じゃないか!!!」
祐作が近づき……声をかけた。
そして男はこちらを見て……
笑った……氷のように冷たく闇夜のように黒い笑みで……
「会いたかったよ、ネジシルバー……メガブルーじゃないのは残念だけれど構わないさ…俺を殺してくれたお礼をさせてもらうよ……」
その邪悪な笑みを見て祐作は気づいた。
「お前……瞬じゃないな!誰だお前は!?」

487: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 21:55:21 4XhmEFxZO
男は自分を知らないのか?という顔をしたが何かを理解したかのようで言った。
「ネジビザール、Dr.ヒネラーに造られたネジレンジャーの一人さ。お前は俺たちを知らないネジシルバーみたいだね。」
(ネジレンジャー?ネジビザール?聞いたことない名前だがDr.ヒネラーの名前が出たということはこいつはネジレジアだな。)
「お前の目的は何だ!?このゲームに乗っているのか!?」
ネジビザールは笑いながら答えた。
「俺はこんなゲームどうでもいい、俺の目的はメガブルーを殺すことさ。でもね、俺はメガブルーのほかにも1人殺したい奴が参加していることに気づいたんだ。俺を罠に嵌めて殺してくれた人間……そうだよ…ネジシルバー!!お前だあああ!!」
その言葉を言い終わるとともにネジビザールは人間の姿から異形のものに姿を変え祐作に襲い掛かる。
 
「インストール!!」
まばゆい光が輝き早川祐作はメガシルバーへと姿を変えた。
ネジビザールはその鋭利な爪でメガシルバーの体を貫こうとする。
メガシルバー上体を伏せてかわすと同時にネジビザールの腕をつかみ投げ飛ばした。
しかし投げられたネジビザールは体を回転させ手から青い光弾を放つ。

488: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 21:59:22 4XhmEFxZO
突然の反撃をメガシルバーは避けられなかった。
光弾がメガシルバーを直撃する。
「クッ!!」
追撃の手を休めずメガシルバーを蹴り飛ばす。
蹴りはメガシルバーのみぞおちに直撃しマスクの下から苦痛の声が漏れる。
「なんだよそんなもんなの?ネジシルバー?」
ネジビザールが馬鹿にしたような顔で言った。
「それならリクエストにお答えして本気でいくぜ!!」
そしてシルバーブレイザーを取り出しネジビザールの方に光線を発射する。
ネジビザールの肩に直撃する。
負けじとネジビザールも光弾を撃つがそれはメガシルバーにあっさりと避けられソードモードになったシルバーブレイザーで切りかかる。
「そうだよ!!そうこなくっちゃねぇ~!!」
と口では言うもののネジビザールはメガシルバーの実力を見くびっていたようだ。
強化スーツのなくなった彼の攻撃力やスピードはネジブルーであったときに比べ落ちている。
その上メガシルバーのスーツは2分30秒という時間制限がある代わりに他の色のメガスーツの倍の戦闘力を発揮する。
おそらく単純な戦闘力ならこの殺し合いでも上位に位置するだろう。

489:名無しより愛をこめて
09/01/26 21:59:45 Zj6FteGXO
支援

490: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:03:01 4XhmEFxZO
ネジスーツを着ればその差はあっという間に埋まるだろうがスーツがないままのぶつかり合いでは分が悪い。
だがネジビザールは強化スーツを脱ぐことで使える氷や雪を自在に操る力がある。
「じゃあ俺も本気でいかせてもらうよ!!」
ネジビザールは深呼吸すると口から雪を吐き出した。
「何だこの雪は!?」
メガシルバーが驚き言う。
「ハァァァァァアアアア!!!!」
ネジビザールがメガシルバーに突進してくる。
避けようと思ったが避けられなかった。
雪で視界が悪くなっているのだ。
メガシルバーはまともに喰らい3mほど吹き飛ぶ。
(タイムリミットは残りわずかだ……)
メガシルバーでいられる時間が残り1分もなくなっていた。

491:名無しより愛をこめて
09/01/26 22:06:54 Zz3ISK5F0
支援

492:名無しより愛をこめて
09/01/26 22:08:12 Zj6FteGXO



493: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:10:41 4XhmEFxZO
(落ち着くんだ……視覚に頼らずに……相手の気配を……)
タッタッタ……
ネジビザールの走り出す音が聞こえる。
(まだだ……)
ダッダッダ……
どんどん音が近づいてくる。
ダッダッダ!!!
すぐ間近で声がした。
「死ねぇネジシルバー!!!!!!!」
「そこだ!!」
シルバーブレイザーで音のした方向を撃った。
「グァアアア!!!!」
見事に命中しネジビザールが悶える。

494: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:13:06 4XhmEFxZO
「これで終わりだ!!ブレイザーインパクト!!」
ネジビザールに止めを刺そうとした瞬間。
何かがメガシルバーを貫き体に激痛が走る、そしてそのままメガシルバーは気を失った。
彼を襲った襲撃者が姿を現した。
鋭い牙や爪、大きく裂けた口、真っ黒な目、祐作の血の付いた触手、野獣のような姿をした男だった。
次元獣と化した並樹瞬であった。
しかし主催者であるロンと変身の瞬間を見た美希以外の参加者はもちろん、祐作やデジタル研究会のメンバーでさえも彼を並樹瞬だと見抜けるものはいないだろう。

ただ一人、ネジビザールを除いては。

「メガブルゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!!!!!!!ヒャハハハハハハハハハハハ!!!!やっとだ!!!ようやく逢えたね!!!!ヒャハハハハ!!あの男の言うとおりいたんだね、その格好はなんだい!?また俺をだますつもりなのかい!?」
大声とともにネジビザールが立ち上がる。

495:名無しより愛をこめて
09/01/26 22:14:01 Zz3ISK5F0



496: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:19:19 4XhmEFxZO
ちなみにあの男、というのはガイのことだ当然ガイは海岸に瞬がいたことは知らない。
ただのあてずっぽうが偶然あたっていただけのことだ。
ネジビザールは何故彼が並樹瞬であると認識したのかは自分でもわからなかった。
しかしネジビザールにはその予感が正しいという確信を持っていた。
並樹瞬はネジビザールの姿を確認すると襲い掛かった。
「来たね来たね来たねぇえええ!!!メガブルーには変身しなくていいのかい!!!!?それともその姿のほうが強いのかなぁ!?でも俺を楽しませてくれるならそんなの関係ないさ!!!!!」
ネジビザールは興奮を隠せない。
ようやく逢えたのだ。彼の1番の目的、メガレンジャーの青き戦士メガブルーこと並樹瞬に。
彼は瞬を殺すためだけに生まれてきたのだ。
「メガブルー!!今度は邪魔も入らない!!覚悟しろよぉぉぉ!!!!」
ネジビザールは瞬のタックルをかわすと瞬に光弾を放つ。
一瞬怯むがすぐに体勢を立て直しネジビザールへと向かっていった。
右の爪でネジビザールの肩を切りつけようとしたが、ネジビザールは半歩前に出て避ける。
今度は左の爪で切りかかるがまた同じようにして避けられる。

497:名無しより愛をこめて
09/01/26 22:20:47 Zz3ISK5F0



498: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:22:30 4XhmEFxZO
体制の崩れた瞬をネジビザールは巴投げの要領で投げ飛ばす。
瞬は受身を取ることもできずまともに地面に叩き付けられた。
さらにネジビザールは瞬を蹴り飛ばした。
「グゥゥゥウ……」
苦しげにうめいたかと思うと瞬は背中の触手をネジビザールに絡み付けた。
触手はネジビザールの足、腰、首に巻きつきネジビザールを締め上げる。
が、ネジビザールはまったく動揺せずに自身の爪で触手を切り落とした。
「…………。」
ネジビザールは無言で瞬の足と腕を凍らせた。
これで瞬は身動きをとることができなくなった。
「ガアアアアア!!!!」
瞬が吼えるがそれは無駄な行動だった。瞬の手足の氷は硬く力づくで割るのは不可能だ。
今の瞬は十字架に磔り付けられたキリストのような格好であった。
「ガァァアアア!!!」
瞬はあきらめずに氷を割ろうとする、その様子をネジビザールは冷たい目で見ていた。
「………。メガブルー、つまらないよ……今からでも遅くない、変身しなよ。」

パチン

ネジビザールが指を鳴らすと瞬を拘束していた氷が割れた。

499:名無しより愛をこめて
09/01/26 22:23:06 Zz3ISK5F0



500: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:29:41 4XhmEFxZO
「さあ、早く変身しなよメガブルー……」
だが瞬はその言葉を理解するだけの知能もなくネジビザールに猛然と襲い掛かった。
「…………やっぱりお前は…………メガブルーじゃない……」
静かだが激しい怒りを覚えネジビザールは瞬の攻撃をかわし、殴り飛ばした。
瞬は何度かうめき声を上げると動かなくなった。
ネジビザールは信じられなかった。確かにそこにいる『獣』は並樹瞬、彼の探していたメガブルーだ。
それに今の瞬はパワーもスピードも自分と互角であり戦闘力という点では申し分ない。
でも何かが違う。
彼は自分の求めていたメガブルーではない。
ネジビザールは瞬の方を向いて言った。
「…………メガブルー……お前は俺の知ってるメガブルーじゃない……俺の殺したメガブルーは俺を楽しませてくれる奴だった。俺を倒そうと単純な作戦を練り、俺がそれを破ると今度はまた違う作戦で俺を罠に嵌めて倒した……」
一呼吸おきネジビザールは続けた。
「この殺し合いにいたメガブルーも俺を殺したメガブルーとは差異があったけれどやはり俺を楽しませる何かがあった……でもお前からは何も感じられない。」
ネジビザールは瞬の首に手をかけ持ち上げた。
瞬は無抵抗で宙吊りになる

501:名無しより愛をこめて
09/01/26 22:30:20 Zz3ISK5F0


502: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:32:32 4XhmEFxZO
「……つまらない……こんな奴のために俺は生き返ったのか……?」
ネジビザールは首を握る手に力をこめた。
……瞬が凍っていく、首筋から放射線状に氷が広がっていき全身にいきわたると瞬は氷のオブジェのようになっていた。
しかし瞬は死んではいない、ネジビザールによって仮死状態になっているだけだ。
「………認めない!!!!俺はこんなのは認めない!!!!こんな偽者との決着を認めるわけにはいかない!!!!!」

俺は……本当のお前と決着を付ける!!!!

ネジビザールは氷漬けの「獣」を並樹瞬として復活させ、決着をつけることを誓った。

503:名無しより愛をこめて
09/01/26 22:34:09 Zz3ISK5F0



504: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:36:37 4XhmEFxZO
【名前】ネジブルー@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第41話(ネジビザールとして敗れた後)
[現在地]:H-6海岸 一日目午前
[状態]:全身に打撲、傷あり。能力発揮中。ネジスーツは壊れているためネジレンジャーにはなれません。
[装備]:ネジトマホーク、壊れたネジスーツ@電磁戦隊メガレンジャー、クロノチェンジャー@未来戦隊タイムレンジャー
[道具]:ソニックメガホン@忍風戦隊ハリケンジャー、闇のヤイバの忍者刀@轟轟戦隊ボウケンジャー、魔人マグダスの杖@星獣戦隊ギンガマン、3枚のメモ(杖の説明書、アイテムの隠し場所×2)支給品一式×3、詳細付名簿、スフィンクスの首輪、拡声器。
[思考]
基本行動方針:メガブルーを殺す
第一行動方針:次元獣化した並樹瞬を元に戻し決着をつける。
[備考]
ズバーンとマシンハスキーはF-5都市に放置してあります。

【名前】並樹瞬@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第2話後
[現在地]:H-6海岸 一日目午前
[状態]:全身に打撲、傷あり。能力発揮中。次元獣化。氷漬けにされ仮死状態。
[装備]:デジタイザー
[道具]:なし。
[思考]
基本行動方針:暴れる。
[備考]
瞬の支給品一式はH-7エリアに放置されています。

505: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:38:49 4XhmEFxZO
【名前】早川祐作@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第34話後
[現在地]:H-6海岸 一日目午前
[状態]:気絶。右肩、腹部、左足を負傷。2時間の制限
[装備]:ケイタイザー
[道具]:フェンダーソード@激走戦隊カーレンジャー、火竜の鱗@轟轟戦隊ボウケンジャー、木製の台車(祐作のお手製)、他一品
[思考]
第一行動方針:瞬を探す
[備考]
2時間の制限に気づきました。ヒカルと情報交換を行いました。メガシルバーの変身制限時間は2分30秒のままです。
ヒカルがドモンを殺し合いを止めるように説得していると思っています。勇、深雪、ウメコの死に様をドモンから聞いています。

506: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:40:58 4XhmEFxZO
【名前】クエスター・ガイ@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task23.以降
[現在地]:H-6海岸 一日目午前
[状態]:全身に裂傷、かなりの重症のため時間制限に関わらず戦闘不能。要回復アイテム。傷あり。能力発揮中。
[装備]:グレイブラスター@轟轟戦隊ボウケンジャー
[道具]:クエイクハンマー@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式×3(水なし)天空の花@魔法戦隊マジレンジャー
マージフォン@魔法戦隊マジレンジャー、操獸刀@獸拳戦隊ゲキレンジャー、何かの鍵。
[思考]
基本行動方針:ロンやボウケンジャーを倒すついでにゲームに乗る。
第一行動方針:使えそうな道具を作る。
第二行動方針:アイテムの確保。天空の花を持って、J-10『叫びの塔』へ
第三行動方針:気に入らない奴を殺す。一人殺しました。

507: ◆zaBiSVxjpk
09/01/26 22:45:52 4XhmEFxZO
以上です。
投下をお待たせして大変申し訳ありません。
それと矛盾がございましたらご指摘ください。
なおタイトルは「青き宴」です。

508:名無しより愛をこめて
09/01/26 23:32:14 Zz3ISK5F0
お二方とも投下GJです!!

>>474
ブドーの焼け付くような憎悪や失望、苛立ちが伝わってきました。
ただ力を求める純然たる暗い闇、闇の三つ首龍に選ばれるのも納得でした。
相変わらず、心理描写が秀逸でブドーの感情がひしひしと伝わってきます。
ブドーがこれからどうなるかものすごく楽しみです!GJでした!
闇の三つ首に関してですが、自分は問題ないと思います。
ある意味で情を捨てきれなかった一面のある真墨やヤイバと比べても、
勝るとも劣らない闇をブドーは抱えていると思いました。

>>483
裕作さん思いがけずピーンチ!!と思いましたが、思いがけないところから救いの手が。
(いや、本人にその気はまったくないでしょうが)
とっさの機転でピンチを切り抜けるところがガイらしいです。
(その直前の行動は若干おバカさんですがw)
氷づけになった次元獣 瞬、気絶した裕作さん、思いがけない行動方針を持つ事になったネジブルー。
彼らの今後が楽しみです。GJでした。


509: ◆zaBiSVxjpk
09/01/27 06:18:06 QPn81pMNO
すみません、ガイの状態表にミスがありました。

能力発揮中のところを消してください。

510:508
09/01/27 13:32:59 mckBn8K30
>>509
訂正乙です。
読み返していて少し気になったところをば。

・早川祐作→早川裕作ではないでしょうか?
・クエスターガイの現在地が、H-6海岸になっていますが、
 特に海岸に移動するような描写はなかったように思うのですが。

読み違いであれば、申し訳ありません。ご確認お願いします。


511:名無しより愛をこめて
09/01/27 15:23:28 AxtEoE7b0
投下乙です。

ネジれた愛情ってところでしょうか。
ネジブルー改めネジビザールと瞬が面白くなってきましたね。
ガイと裕作は、まぁなんだ、その、がんばれ。
GJでした。


512: ◆zaBiSVxjpk
09/01/27 22:43:27 QPn81pMNO
すみません、>>510氏の言うとおり裕作の字とガイの状態表が間違っていました。

G-6 都市に変更願います。

513: ◆Z5wk4/jklI
09/01/27 23:48:04 eD5Yf1lI0
>>512
修正乙です。

お二方ともGJです!面白かった!

さて、大変遅くなってご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません。
現在、推敲中です。00時を回る頃には投下できるかと。


514: ◆Z5wk4/jklI
09/01/27 23:56:10 eD5Yf1lI0
ただいまより投下します。

515: ◆Z5wk4/jklI
09/01/27 23:57:30 eD5Yf1lI0
「蒼太くん!蒼太くん!しっかりしぃ!蒼太くんっ!!」
さくらに刺され、意識を失った蒼太を抱え、おぼろは懸命に叫んだ。
止血の為に傷口に押し当てた青い羽織が紫に染まっていく。
意識を呼び起こそうと、色を失った頬を張り、手をきつく握っても、力尽きるように伏せた目はぴくりとも動かない。
紙のように白くなった指から体温が零れ落ちていくのが、握りしめた手から伝わってくる。
それは否応なくおぼろに纏の姿を思い起こさせた。
無我夢中で、忍風館で叩き込まれた救命術を施していく。
「っっっ!!蒼太くん!!」
喉の奥で声が絡む。眼尻から涙が落ちた。
泣いている場合ではない事はおぼろにも分かっていた。ただ混乱した頭が視界を霞ませていく。

―なんでなん?!なんでこないな事に……!!

さくらに刺された瞬間の蒼太の呆然とした顔。
自分が憎しみの言葉を吐いた時に浮かべた、さくらの許しを乞うような縋るような眼差し。
怒りに震える口唇で叫んだ言葉。
思いが走馬燈のように駆けめぐり、おぼろの頭の中を埋め尽くしていく。

さくらを助けたから?
さくらの告白を聞いても、非情になりきる事できなかったから?

「…違う……あたしや」


516:名無しより愛をこめて
09/01/27 23:58:04 WhFi1zCQO



517: ◆Z5wk4/jklI
09/01/27 23:58:57 eD5Yf1lI0

あたしが、もっと彼女の様子に気ぃ付けてれば。
手当てをした時、ナイフの存在に気ぃ付いてれば。
蒼太くんの仲間や思て、彼女の前で隙なんて見せんどけば。
「あたしが……あたしが阿呆やったんや。ごめんな、蒼太くん。ごめんな」
涙でにごる声を詰まらせながら、謝罪の言葉を口にした。
後悔と罪悪感と絶望感が心を黒く塗り潰していく。

「―助けて差し上げましょうか」

ふいに耳にこびり付いて離れないあの忌々しい声が振ってくる。
驚きおぼろが伏せていた視線をあげると、そこには笑みを浮かべたロンが立っていた。
「っ!!ロン!」
とっさに蒼太を庇うように立ち塞がったおぼろにロンはくすりと笑う。
「そんなに警戒されなくても何もしませんよ。今言ったばかりじゃないですか」
「助け…る?蒼太くんを?」
「ええ。先程は貴女には手酷く振られてしまいましたが、どうです?今度は悪い話ではないと思いませんか」
すっと目を細めるとおぼろの耳元に囁きを落とした。
「―だってこれは貴女のせいなんですから」
そのまま、おぼろを覗き込むと満足げに微笑んだ。
おぼろは顔を伏せ、肩を小刻みに震わせていた。
伏せた眼前にロンは手を差し出す。
その手の中には白い小さな石が納められていた。
「私のお願いを聞いてくれるなら、これを差し上げましょう。さあ、どうします?」
勢いよくおぼろが顔を上げる。その表情に覚悟の色が浮かぶ。
わななく唇をグッと噛むとゆっくりと手を伸ばしロンの掌の中の小石を―――――

518:名無しより愛をこめて
09/01/27 23:59:14 WhFi1zCQO



519: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:00:06 eD5Yf1lI0

―――――弾き飛ばした。
「……お断りや。どうせあんたの考えてる事なんてろくな事やない。そんなん聞けるか」
「そうですか。ではこれはお渡しできませんね」
傍らに転がった石を拾いあげると哀れむような視線を蒼太に向けた。
「それにしても彼も不憫ですね。仲間に裏切られ、今度は貴女に裏切られて、助かる唯一の方法をふいにするとは」
おぼろは何かを言い返すように唇をふるわせ、血が滲む程に噛み締めるとロンを睨み返した。
「では、ご健闘をお祈りしますよ。正義の味方のおぼろさん」
愉快そうに言い残すと、ロンの姿は金色の霞となり掻き消える。まるで最初から存在しなかったかのように。おぼろの心に拭い去れない澱だけを残して。

しばらくの間、拳を握りしめ立ち尽くしていたおぼろは力尽きるようにくずおれ、膝を付く。
爪が食い込み、その掌には血が滲んでいたが、おぼろは痛みを感じなかった。
血の滲む唇より掌より、心の方が余程痛む。音を立てそうな程に軋む。
「………蒼太くん……堪忍、堪忍な…………」
あんな奴と取引などできない。
そんな事をすれば、ハリケンジャーに、ゴウライジャーに、纏に、死んでいった者達に、なにより蒼太自身に顔向けできない。
「ごめんな…堪忍してな………ごめんな」
壊れたからくりのように、謝罪の言葉ばかりを繰り返す。許されないと分かっていながら、謝らずにはいられなかった。

――彼女も同じ気持ちだったのだろうか



520:名無しより愛をこめて
09/01/28 00:00:31 WhFi1zCQO



521: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:01:17 eD5Yf1lI0

仲間への裏切りという決して許されない、許されるべきではない罪を犯し逃げ去る時。
おぼろを襲い、意のままに操ろうとした時。
追いつめられた声で。救いを求める瞳で。
しきりに謝罪を繰り返していた彼女も。
彼女の何がそうさせたのかはおぼろには分からない。
僅かに残った良心か。あるいは狂気の中の微かな理性か。
決して理解はできない。
何故、今まで共に戦い、共に過ごした仲間を裏切る事ができるのだ。
生き残りたかったから?誰かを生き残らせたかったから?死んでしまった仲間を甦らせたかったから?
理解はできない。理解してしまうのが恐ろしい。
ただ、聞いてしまったから。見てしまったから。蒼太が敬愛していると語った彼女の名残を。
心の全てを憎悪で塗り潰してしまう事が出来なかった。
「いっそ、憎みきれた方が楽なんやけどなあ……」
蒼太も同じだったのかも知れない。いやむしろ、彼の方がおぼろより余程。
だからあの時、憎悪に飲まれた自分から彼女を逃がしたのだろうか。
そして今、おぼろも同じ罪を背負った。裏切りという名の罪を。
病院がどこにあるかも分からない、充分な手当ても出来ないこの状況下で蒼太が助かる術。可能性をみすみす捨てさせたのだから。
蒼太がそれを望んだかどうかはおぼろには分からない。
だが、このままにしておけばいずれ彼を待っているのは、死。おぼろは自らの手でその淵に叩き込んだのだから。
「ごめんな……ごめ……っ!!」
「……うっ」
「っ!蒼太くん?!」
力なく伏せられていた瞼が微かに動く。おぼろは急いで蒼太の手を取る。
弱々しく、だが確かな力で指が握り返された。


522:名無しより愛をこめて
09/01/28 00:01:34 WhFi1zCQO



523: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:02:29 eD5Yf1lI0
 ◇

「…良かったぁ。ほんまに良かった……」
おぼろの目に尽きたはずの涙が溢れ出す。緩んだ涙腺はなかなか締まってくれそうにない。
「すみません。ご心配おかけしちゃって」
蒼太は二つ重ねたディバックにもたれ、手渡された水を大儀そうに少しずつ飲み下している。
涙を拭いながらおぼろはせわしなく首を振った。
「なんも、そんなこと。でもほんまに助かって良かった」
「おぼろさんの手当てが適切だったおかげですね。それに……」
「…急所は外してたんやな。彼女」
「…ええ」
首を掻き切る。急所である心臓か太腿を刺す。
自衛隊の特殊部隊に所属し訓練を受けていた彼女が、本当に蒼太の命を絶つつもりでいたならばそこを狙ったはずだ。
だが、実際に彼女が刺したのは下腹、しかも致命的な位置からは僅かに逸れた箇所だった。
もっともあのまま血が止まらずにいたならば、遠からず命を落としていただろうが。
手負いの獣に手を出せば、死にものぐるいで抗う。
蒼太にとって、そして彼女にとって不幸は、彼女の手に一振りのナイフという爪があった事だったのかも知れない。
おぼろと蒼太、二人の間をしばしの沈黙が満ちる。
「おぼろさん、一つお願いしたい事があるんですけどいいですか?」
「ん?どうしたん?なんや欲しいもんでもあるん?」
気持ちを切り替えるように、おぼろは努めて明るく問い返した。
「助けを呼んできて欲しいんです。たぶんしばらく僕、動けそうにないので……」
「よっしゃ、まかしとき!あ、でもその間、蒼太くん一人で大丈夫やろうか?」
「ああ、それなら……」
「バウッ!」
ボクがいるから心配するな、とばかりにマーフィーがおぼろにじゃれつく。
「おっと、そうやったな。マーフィーちゃんがおったなあ。蒼太くんを頼んだでぇ、マーフィーちゃん」
「バウッ!!」
心得た。と勢いよく一つ尻尾を振るとマーフィーは蒼太の傍に寄り添う。
蒼太に頭を撫でられて、どことなく心地よさ気だ。

524:名無しより愛をこめて
09/01/28 00:02:50 aMdgtI/gO



525: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:04:11 jWTcekux0
「よっしゃ、じゃあ大急ぎでいってくるから待っててなぁ、二人とも」
そろそろ、瞬が美希達に合流した頃合いだろうか。
いざとなれば、集合場所も分かっているので追いつけないという事はないだろうが、急ぐにこした事はない。
こういう時に自分がバリサンダーを乗りこなせたならばと歯噛みするが、考えてもしょうがない事だ。
膝をバチリと打つと、ディバックを手に立ち上がる。
「ほな、いってくるな」
「すみません。お願いしますおぼろさん……気をつけて下さいね」
「気にせんどいてぇな。それに心配せんでも大丈夫やで。途中で襲ってくる奴ぐらい、いかづち丸で追っ払うさかい」
心配顔の蒼太にいかづち丸を軽く構えてみせる。勿論、怖くない訳ではなかったが、怪我人に心配はかけられない。
精一杯の強がりで微笑んでみせた。
「……合流してからもです」
ぎこちない微笑みは掻き消える。
「…それは……ティターンやドロップのお兄さんの事を言ってるん?」
「いえ、美希さんも含めて、です。むしろ彼女はもっとも注意すべきかもしれない」
「そんな…そないなこと……」
おぼろの脳裏を美希の横顔がよぎる。
あの悲しみは、ドロップへの慈愛は。決して偽りには見えなかったというのに。
だが、見つめた蒼太の顔からは穏やかさが消えていた。
「勿論、僕の考え過ぎかもしれないんですけどね。まあ念の為という事で」
おぼろを見つめ返し蒼太が微笑む。だが、その瞳の奥が笑っていない事におぼろは気が付いていた。
「……分かった。肝に銘じとくわ。蒼太くんも気ぃつけてな」
「ええ。おぼろさんも」
信頼は自分達がロンに立ち向かう上での最大の武器だ。だがそれは同時に翻って自分達を傷付ける凶器にもなりうる。
その事をこの僅かな時間で、蒼太もおぼろも痛感していた。


526:名無しより愛をこめて
09/01/28 00:04:25 aMdgtI/gO




527: ◆Z5wk4/jklI
09/01/28 00:04:58 jWTcekux0
 ◇

走り去るおぼろの背中が少しずつ小さくなっていく。
「さてと。そろそろいいかな。マーフィー、君にも頼みがあるんだけどいいかな?」
「バウッ?」
「おぼろさんに付いていって欲しいんだ。いかづち丸だけじゃ、やっぱり心許ないしね」
じゃあ、君はどうするの?とでも言うように気遣わしげに尻尾を小さく振る。
「僕なら大丈夫。ここでじっとしてるだけだしね。でもおぼろさんが気が付いたらきっと心配するだろうから、気付かれないようこっそりね」
いたずらっぽく人差し指を立てると、軽く片目を瞑る。
マーフィーは蒼太の顔をじっと見つめると、片足を胸の前に掲げ、一目散に駆け出した。
SGSのデータバンクで過去の戦隊のデーターを浚った事がある蒼太にはその仕草の意味が分かった。
もっとも、天下の宇宙警察の事なら、今時、そこらの道を歩いている子供でも知っているだろうが。
「ロジャー……か」
これで、自分はおぼろとマーフィー、二人に嘘を付いた事になるのだろうか。
ここに来てから嘘を吐いてばかりだ。まるで、スパイだったあの頃に戻ってしまったように。
だが、自分が今からやろうとしている事に彼女達を巻き込む訳にはいかなかった。
下腹の傷を軽くさする。そこには既に塞がりつつある傷があった。



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