スーパー戦隊 バトルロワイヤル Part3at SFX
スーパー戦隊 バトルロワイヤル Part3 - 暇つぶし2ch300:名無しより愛をこめて
08/12/25 00:14:26 2R5RRYKLO




301: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 00:17:06 PQxHz/lF0
「ぬるいわ!ドモンは殺し合いに乗ったのだ」
「それにしたっておまえの言い方は一方的過ぎる」
サーガインは苛立ちを押えず机の上に拳を振り下ろす。
不意に現実に引き戻されたヒカルはサーガインに冷たい視線を送った。
深雪殿深雪殿と思ってくれるのはありがたいが怒鳴り声で連呼されるのはカンにさわる。
溢れ出しそうな感情を抑えるのが精一杯の状態で、蹴散らすような怒声を聞かされるのは、やはり気分のいいものではない。
「ふん、深雪殿のためだなどほざいていたな。ふざけた話よ。どうせ貴様が守りきれなかったせいで死んだのだ!」
ヒカルの胸の内もお構い無しにサーガインは続ける。
ドモンは何一つ聞こえていないかのように身動き一つせず。
裕作は鏡の張られた壁にもたれ掛かり、ため息をついただけで言葉を繋ごうとしない。

数秒間の沈黙。
何か聞きたいことはないかと言いたげに裕作がこちらを見る。
裕作とのやり取りで、ドモンが深雪を殺したのではないかという疑念は晴れつつあった。
おそらくサーガインの言う通り、ドモンは守りきれなかった。深雪を思い生き返らせるため殺し合いに乗ったのだろう。
しかし、それは憶測に過ぎず、何も語らないドモンを手放しで受け入れる気にはなれない。
所詮、そんなものは希望に基づいた憶測なのだから。
「ドモン……」
静かにドモンの名を呼ぶ。ヒカルの声に項垂れていたドモンの頭が持ち上がる。
「ボクはブレイジェルから深雪さんを託された。二人はボクにとって、とても大切な存在だったんだ」
ヒカルはポケットから一枚のマジチケットを取り出しそっと握った。
取り出したマジチケットには後光差す天空聖者が描かれている。
「 ルーマ・ゴルド。この魔法を使えば黙っていても記憶を探り出せる。もうすぐ制限も切れる。
話す気にならないなら見せてもらうことになるよ。そうなれば、キミに黙秘権はない」
驚いた裕作とサーガインに構わずドモンの横に立った。
ドモンを上から見下ろし、チケットを翳した。
「ヒカルさんに、話したいことがある」
押し黙っていたドモンが口を開いた。

302:名無しより愛をこめて
08/12/25 00:19:17 ik/kfBYbO



303: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 00:20:51 PQxHz/lF0
「ヒカルさんと、二人にしてくれないか……」
ドモンは裕作とサーガインに視線を移さず、真っ直ぐにヒカルを見つめていた。
太陽に照らされたドモンの顔。
とても澄んだ瞳でヒカルを見つめていた。


 ▽


「結局ドモンは自分の口から全部話したってわけか。まぁ、さっきのドモンの様子からして嘘じゃねぇだろう。
しかし、放送で呼ばれた3人の死に様に、ドモンが関わっていたとはね」
深雪が死んだ経緯を聞いた時、裕作は全身が総毛立った。
嫌らしい笑いを浮かべドモンに近づくロンが脳裏に浮かび上がる。
今もロンはどこかで同じように誰かに囁いているのだろう。
ドモンのように、愛する人を守ることができなかった者や、放送で大切な人を失ったことを知った者。
精神的に極めて不安定な状態をつけ狙い、甘い言葉で誘う。
惑わされた者は、迷いながらもそれにすがり、失った者を取り戻そうと殺し合いに乗る。
そして、誰かが死ぬたび、それは繰り返されるのだ。
「ドモンが持っていたデイバックは深雪殿の物で、中の品はロンが直々に持ってきたブレイジェルとやらの支給品とは……。しかし深雪殿もドモン如きのために哀れな話よ」
「あぁ、ブレイジェルはウルザードとして記憶を無くし彼等の前に蘇った。おそらく呪縛転生の魔法を使ったんだろう。
だけど腑に落ちないところもあるんだ。ウルザードはン・マに忠誠を誓っている時でさえ、本能のどこかで家族を守ろうとしていた節がある。
だがドモンに聞いたウルザードからは殺意以外は感じられない」
「蘇る際にロンに唆されたのではないか?誰かのように……な。得意の魔法で探ってみたらどうだ」
「そんな魔法はないよ。ドモンの記憶を探ってみたところで、そこまではわからない」
ヒカルは魔法で記憶を確かめなかった。

304: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 00:21:58 PQxHz/lF0
裕作はそれでいい、と思う。ヒカルが直接、今の話を目の当りにするのはショックが大きすぎるだろう。
ただ少し気持ちに区切りがついたのか、ヒカルは幾分表情を和らげていた。

「これから、ドモンと二人で深雪さんの所へ行こうと思う。直接確かめたいんだ。しっかり現実として受け入れるためにも……」
「二人で、何故だい?!」
裕作は視線をぶつける。
なるべく口調は柔らかくしたつもりだったが、そうでもなかったらしい。
「っと、殺し合いに乗った人間を野放しにはできないだろう」
ヒカルの表情から和らぎが消えた。
眉間にシワをよせ真剣な眼差しを返してくる。
「キミたちはさっきからボクが殺し合いに乗ったような目で見ている……。ボクがドモンを殺すとでも?」
「いや、そうは言ってない」
サーガインがヒカルから見えない位置でドライガンに手をかけた。
裕作はそっとそれを制す。
嫌な緊張感が全身を包んだ。
「ドモンを殺す、ドモンの思いを尊重するならドモンは一番最後だ。聞いていたんだろう?」
ヒカルは立ち上がり、壁に引かれたカーテンを開けた。
カーテンの下は硝子張りになっていて、硝子越しにはドモンの姿がある。
隣室とこの部屋の間にあるマジックミラーとデスクの上の通信機で二人の会話はすべて裕作たちにも聞こえていた。
「そうだ、ヒカル。ドモンの言葉をはっきりとこの耳で聞いた!」
サーガインはドモンを指差し、机に身を乗り出させた。
「二人で勝ち残った暁にはヒカルが優勝すればいいと。その時ドモンは死んでも構わぬと言っていたであろう!!」
「あぁ、そしてボクはドモンに『キミの気持ちはわかった。協力しよう。少し待っていてくれ』と部屋を出た」
ヒカルは悪びれる様子もなく、笑顔さえ浮かべていた。
「そう、貴様はドモンの願いを聞き入れた。貴様は乗ったのだ!殺し合いに!!深雪殿に幸せな家族をプレゼントするためにな!!」

305: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 00:23:44 PQxHz/lF0
サーガインは裕作を押し退け、ヒカルの胸にドライガンを突き付ける。

「ま、まだ、わかってもらえないのかい?」
ヒカルは裕作とサーガインを交互に睨みつけてきた。
「あの場でドモンを説き伏せるのは難しいと思った。だから、どちらとも取れるような返事をしたのさ。しばらく二人で行動すればドモンを説得できるんじゃないかと思ってね」
「説得だと!?しらを切るつもり……うわ、裕作殿ッ。何を!モガッ、モガ~」
サーガインの口を押さえ、ヒカルから引き離しながら裕作は言葉を継ぐ。
「説得するって、ならヒカル。おまえは殺し合いに乗った訳じゃないんだな?信じていいんだな?!」
「一緒に勝ち残るという話も含めて、ボクがドモンから聞いた話をすべて包み隠さず伝えれば、殺し合いに乗らなかった証明になると思ったんだ。
本当はマジックミラーには、気付かないふりをするつもりだった」
ヒカルは前髪をさらりと払い、非難がましい目をサーガインに向けた。

裕作はほっと胸をなでおろしサーガインから手を離す。
「ブハッ。ぬ、ぅおっ!」
前にでようとした反動でサーガインはつんのめり、デスクの角で額をぶつけた。
今日、頭をぶつけるのは二度目らしい。痛い!痛い!!と頭を押え、のた打ち回った。
「話したことはすべて本当だっただろう。キミたちがあまり怖い顔で見ているから、種明かしをする前に殺されてしまうかと思ったよ」
「すまなかった。悪く思わないでくれ。だが、よく決断できたな」
「……誘いに乗った方が、楽なのかもしれないと思ったよ。正直、今も心が押し潰されそうだ」
苦笑するヒカルの端正な顔に疲労の色が濃くでていた。
この数時間で急に年を取ったように。

ふと裕作は、瞬が死んだら俺はこんなに思ってやれるのだろうかと思った。
そんな後悔をする前に捜してやらなければならない。
焦りに似た気持ちが裕作の胸を包む。

「だろうな。顔を見ればわかるぜ。疲れきってボロボロ。せっかくの男前が台無しだ。ってのは冗談だが……、おまえと話していたドモンも苦痛に満ちた顔だったぜ」
「ボクはその何百倍も苦しい……。だからこそ、ドモンの気持ちは痛いほどわかったよ」
「ドモンと自分の思いを重ねることで、進むべき道が見えたってところか」

306:名無しより愛をこめて
08/12/25 00:23:50 ik/kfBYbO





307: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 00:27:03 PQxHz/lF0
「あぁ、ドモンはまだ誰も殺していない。まだ引き返せる。ドモンに正しい道を示すのが、ボクにできることだと思うんだ。
ブレイジェルへの償いと、命がけでドモンを救った深雪さんの遺志を継ぐという意味でもね」

ヒカルがマジックミラー越しにドモンを見た。
裕作も視線を移す。ドモンは何も知らずに首を捻り太陽を仰いでいる。
ヒカルと最後の二人になり、ヒカルを優勝へ導き、深雪に幸せな家族をプレゼントする。
犠牲の上に成り立つ幸せな家族など……。悲しいけれど、ドモンの選択した道は間違っている。
同じ絶望、いや、それ以上に辛い絶望の中、ヒカルが選んだのはドモンの軌道修正。
ヒカルになら、いや、ヒカルにしかドモンを止める事はできないだろう。
そしてドモンに正しい道を示すことで、ヒカル自身も道を逸れずにすむ。
絶望から見いだした必死の答え。ヒカルの導き出した最善の選択だ。
「わかったぜ。ドモンの事はおまえに任そう。だが、ロンがしゃしゃり出てきてるとなったからには、俺たちもノンビリおまえらを待つ訳にはいかない。
その間、俺は瞬を捜す。サーガイン、おまえはどうする? 厄介な制限もあることだし一緒にこないか?」
痛みが治まったのかサーガインは椅子の上でふんぞり返っていた。
会話に入れず、さぞ機嫌が悪いだろうと思っていたが、返ってきたのは至ってまともな答えだった。
「ふむ、裕作殿。俺は明石を探してやろう。ヒカルとて、もう知り合いに死なれるのはかなわんだろうからな」
「おっ?どうしたんだ。サーガイン」
似合わない優しさにヒカルと顔を見合わせる。フッと鼻を鳴らしサーガインは自嘲気味に続けた。
「どうしたもこうしたも。残念だが、俺にはろくな知り合いがおらぬ。フラビージョしかり、シュリケンジャーしかり。
だが、明石は信頼に足る人物とみた。まだそう遠くには行っているまい。三時間ほどで戻ってくる」
そのまま出て行こうとするサーガインを裕作は慌てて止めた。
「おっと、待ちなよサーガイン。そのデイバックの中身はヒカルに渡してやれ」
「何故?」
「ウルザードって奴もヒカルの身内みたいな奴だ。ヒカルが持っておくのが筋だろう。ドモンが心を入れ替えるまでドモンの荷物もヒカルに預けよう」
「……」

けだるそうにサーガインはデイバックの中身をヒカルへ渡した。

308: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 00:28:02 PQxHz/lF0
「すまない、裕作。サーガイン」
「礼を言う必要はないぜ。支給品っても、役に立ちそうなのは食料ぐらいだからな」
別れて行動する方針は決まったが、ドモンにどう伝えるのだろう。
ドモンは一人殺せば後は一緒だと思っており、『二人であいつらを……』とまで言っていたぐらいだ。
あいつらとは勿論、裕作とサーガイン。
「ヒカル、俺たちと別れるのをドモンにどう説明する?」
「最初の一人、そのハードルを越えるのにずいぶん焦っているようだからね」
裕作もヒカルも顎に手をあて思案する。
「ドモンは単細胞だ。まず、怪しまれずにクロノチェンジャーを取り返し、その後、一人一人確実に殺すためとでも言えばよかろう」
「キミたちを……」
「徒を思い、嘘の一つもつけぬようでは師としては失格よ」
サーガインの奴、なかなかいいこと言う。ヒカルの目が心なしか潤んで見えた。
「わかる、わかるよ。サーガインの言葉にグッときたんだろ」
ヒカルは案外涙もろいのかもしれない。
だが男は涙を見せぬ物。裕作は最大のエールを込めて、思い切りヒカルの背中を叩いた。

デイバックを背に裕作は歩き出す。サーガインもそれに続く。
「ありがとう。出会えたのが、キミたちで良かった」
背後でヒカルのくぐもった声が聞こえた。
気障な台詞もヒカルが言うと絵になるもんだな、と。裕作は一人笑った。


 ▽


誰も居なくなった取調室でドモンは太陽を見つめていた。

309:名無しより愛をこめて
08/12/25 00:28:34 ik/kfBYbO



310: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 00:30:49 PQxHz/lF0
雲ひとつない青空が鉄格子の向こうに広がっているのに、湿っぽい部屋で拘束されたままヒカルを待っている自分が皮肉に思える。
足音が聞こえてきた。一人、二人分の足音が通り過ぎ、少し遅れて聞こえてきた足音はドアの前で止まった。
重い扉が開き、ヒカルが顔を覗かせた。
「ヒカルさん!」
ヒカルは静かに、とでも言うように人差し指を口へ当てる。
「あいつらは?」
「裕作は知り合いを、サーガインは明石を捜しに行ったよ」
二人とも出て行った。どういうことだろう?
ドモンはヒカルの意図がわからず眉をひそめた。
ヒカルはドアのほうを見つめながら柔らかな笑みを浮かべた。
「彼らにはキミが殺し合いを止めるよう説得すると言った。だから、しばらく二人で行動させてくれと……」
「そうか……」
「二人が戻ってくるまであまり時間がない。それまでに深雪さんの所へ案内してくれるかい?」
「深雪さんの所へ?」
都合よく一人づつ別れたってのに。まず、あいつらを殺すんじゃないのか。
意気込んでいたのは自分だけだったのか。
落胆が胸を駆け抜け、ドモンは視線を床に落とした。
「先にしっかりと目に焼き付けておきたいんだ。深雪さんの姿をね。ボクの意思が揺るがないように」
ヒカルはドモンの後に回り、拘束を解きながら答えた。
「わかったよ……」
ドモンは俯いて拘束の跡が残る手首を摩る。
この程度の拘束、本当は外そうと思えばすぐに外せた。

目が覚めた時、また殺せなかったことにドモンは愕然とした。
殺しそこねた相手から感じるのは、殺し合いに乗った理由を理解しようと言う意識。
ドモンは自己嫌悪に陥った。
同時に深雪の死が齎した悲しみと絶望と、守れなかった罪悪感が、改めて押し寄せてきた。
ドモンの目の前に打ちひしがれた男がいた。

311:名無しより愛をこめて
08/12/25 00:34:17 ik/kfBYbO
支援

312: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 00:34:53 PQxHz/lF0
その男、ヒカルも、自分と同じ、否、それ以上の悲しみと絶望を抱いている。
ドモンが思いを吐露するのであればヒカル以外に考えられなかった。
二人で話せる機会は無いものかと様子を窺いながら、突き放された時を想像し、気落ちと、持ち直しを繰り返した。
そうしているうちにドモンは考え至った。
二人で勝ち残り、最後にヒカルを優勝させればいい、と。
その考えは強烈にドモンの心を掴んだ。
ヒカルはドモンの告白に、協力しようと言った。思いが通じたと思ったのだが……。

「行こう。キミのクロノチェンジャーはここにある」
デイバックを軽く上に持ち上げ、急かすようにヒカルが言った。
ドモンは何も言葉が思いつかず、黙って頷いた。

考えすぎだろうか。
ヒカルの態度は肯定にも否定にも受け取れる。
なんといえばいいのだろう。
ヒカルと自分の間に共通する何かが感じられない。
殺意と言えるような何かを、ヒカルは身に纏っていないように思えた。



 ▽



「深雪さん……」
嗚咽を堪えているのか、ヒカルの肩が震えていた。
深雪の手を握り、動かないままのヒカルにドモンは呟いた。
「早く、幸せな家族をプレゼントしてやらなきゃ。最初の第一歩さ、誰か一人、誰か一人殺せば……」

「……だ。ドモン」

313:名無しより愛をこめて
08/12/25 00:36:31 ik/kfBYbO



314:支援感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 00:38:01 PQxHz/lF0
ヒカルが首を振った。言葉は良く聞き取れなかった。否定の言葉と受け取らずにドモンはもう一度繰り返した。
「最初の一人。それができれば……」
「本当にそう思うか?ボクにはとてもそうは思えない」
強く頭を振り、ヒカルはドモンを見据えた。
「ロンの手で蘇ったウルザードには、ブレイジェルであった頃の面影など微塵も無かった。
もし生き返ったとしても、それはロンの操り人形なんだ。それが本当に幸せな家族と呼べるだろうか?」
「ウルザードは殺し合いを進めるために蘇らせたんだ。願いを叶えるのとは訳が違う。ちゃんと生き返らせてやる。そう言ってただろ。悔しいが今はそれに縋るしかない」
「ボクたちに残された道はそれだけだろうか。ドモン。深雪さんが命を懸けてウルザードを倒した意味を考えてみてくれ」
ドモンはヒカルの言いたいことを察した。
先程から感じたヒカルとの隔たりの正体も同時に悟った。
だが、まだ認めたくはなかった。焼け焦げた深雪の顔、赤黒く変色した白い肌を、もう一度元の姿に。幸せな家族に戻さなければならない。
「ヒカルさん。何が言いたいんだ?それじゃまるで俺を説得してるように聞こえるぜ」
「その通りだよドモン。深雪さんは死んだ。静かに眠らせて……」
「嫌だね!勝ち残れば深雪さんに幸せな家族をプレゼントしてあげられるんだ」
ドモンは大声を張り上げた。自分に人が殺せるか、張り上げた声ほどの自信はまだなかった。
だが、深雪をこんな姿にしたのは、自分が弱かったからだ。
自分が深雪を守れていれば……。
なのにウメコの言葉に、ヒカルの言葉に揺れる。引き返そうとしている自分に無性に腹が立った。
「死ぬ前にキミに託した思い、残されたボクたちがその思いを受け継ぐ。本当に誰かのために戦うこと、諦めずに道を切り開く勇気を。
その思いは裕作やサーガインには伝わっている」
「だから二人と別れたのか。あいつらを逃がしたのか」
「逃がしたんじゃない。キミが生かされたんだ」
「それでいいのか?深雪さんや旦那さん、麗さんだって戻ってこないんだぜ!」
ヒカルに怒鳴っているのは八つ当たりだった。弱い自分と、守りきれなかった現実を思うと消えてしまいたい気持ちに駆られる。

315: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 00:41:08 PQxHz/lF0
「あんたは、あんただけは俺と同じ気持ちだと思った」
「キミにはボクの気持ちなど、ボクの苦しみなど百分の一もわからない。ブレイジェルも深雪さんも、麗もずっとずっと前から大切な存在だった。だからこそ……」
ヒカルは深雪の手をそっと地に置き、大きく息を吐いた。
「静かに、眠らせてあげるんだ」

全身から力が抜けて行くような感じがした。
深雪のスカートだった物が風に靡いている。美しかった深雪の顔は判別できないほど焼け爛れている。
深雪さんが眠るのはこんな場所じゃない。
やっとわかった。
第一歩など踏み出さなくても、もう戻れない所に来ている。

「だからこそ、取り戻してやる。あんたを優勝させるよ。そのためなら俺はどうなったっていい。命なんて惜しくない……」
「いい加減にしてくれないか!何を言ってるんだ!!
深雪さんに命を救って貰っておいて、裕作とサーガインだって命を狙ったキミを殺さなかった。
それどころかこうして引き返すチャンスをくれた!それなのに命が惜しくないだって?ならなぜ深雪さんの代わりにキミが死ななかったんだ!」
ヒカルはドモンの胸ぐらを掴み強く揺すった。
「三人の名が呼ばれた時、ボクが同じことを考えなかったと思うか?
キミの言う第一歩、どうしても殺し合いに乗せたいというなら!ボクがその一歩を踏み出すとしたら標的にキミを選ぶ!
キミのせいで深雪さんは死んだんだ!そしてブレイジェルは二度も命を絶たれた!ボクには簡単だ!彼らの命と引き替えにキミの命を奪うことなんて……」
歯を食いしばり、ドモンの胸を叩くと、ヒカルは手を放し膝を折った。
「すまない。キミを責めるつもりはなかった。本当はキミの話に心が揺れた。それを思いとどまらせてくれたのは祐作とサーガインだ」
「……あいつらが麗さんの代わりになるのか」
ヒカルと麗を話す深雪は二人を温かく祝福する思いに溢れていた。
「麗……」
その名を唱えるヒカル。固く閉じられた瞼が愛しい人を亡くした悲しみを物語っていた。
「ボクがどんな思いでキミに殺し合いを止めさせようと決断したかわかるかい?もう一度考え直してくれ」

316: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 00:42:38 PQxHz/lF0
「もう一度考えるのはヒカルさん、あんただ。俺の思いは変わらない。教会で待ってる」
ドモンはクロノチェンジャーをデイバックから取り出し、教会へ重い足を運ぶ。
海外沿いの遊歩道でひっそりと白い花が揺れていた。
小さな清楚な花だった。まるで深雪が笑っているように見えた。



 ▽



説得は失敗、ドモンも殺せぬとは、腑抜けが!

サーガインは、二人を着けていた。
最初から明石の所へ向かう気など無い。深雪の首輪を奪うため後をつけ、様子を一部始終見ていた。
二人は言い争い、やがてドモンは教会の方へ、ヒカルは反対の方へ歩いて行った。
「さて……」
サーガインは一息つき、嫌な笑いを浮かべると深雪の死体に近づいた。
触れた感触は冷たい。もはや一切の温もりはなく、硬直が始まっていた。
「ふんっ!!」
サーガインは深雪の腹を足で踏み付け、髪の毛を鷲づかみにし、深雪の身体を起こす。
巌流剣で首を切断すれば早いが能力を発揮した後が厄介だ。
ドライガンで死体を粉々に砕き、首輪を奪おうかとも思ったが音を聞き付け二人のどちらかが戻ってくる可能性もある。
どちらもサーガインの役には立たない。殺してしまえばすむだけの話だが。

「骨が折れるな。だが、仕方あるまい」
深雪の胸元を掴み、力任せに左右へ引いた。
ビリッ。
服が破れ薄い鎖骨と胸元があらわになった。

317:名無しより愛をこめて
08/12/25 00:43:57 ik/kfBYbO




318: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 00:47:09 PQxHz/lF0
「チッ」
思うようにいかない苛立ちに舌打ち、硬直の進んだ顎関節と肩に手を掛け、一気に引き裂いた。
ぶちっブチブチッ 。
さらに力を入れる。筋繊維がゴム状にのび、反動で深雪の手がびくんと動いた。
焼焦げて炭化した顔がガサガサと崩れだす。
「顔を踏み潰したほうが、早いかもしれんな」
その時、サーガインの瞼を白い物が覆った。手に取るとそれは白い花びらだった
風に乗った花びらが紙吹雪の如く顔の横を掠める。
振り返ると白い花を両手に抱えたヒカルが呆然と立ち尽くしていた。
「サーガイン……。キミは、一体何を……?」
ヒカルは酸欠状態の金魚のようにパクパクと口を動かした。
「何?見ればわかるであろう。首輪を貰うのだ。首輪を外して解析すれば深雪殿も喜ぶであろう?」
体制を変え、再び腹を踏みつけ深雪の首を捩切ろうとした。
「これは裕作どのも知ってのこと。首輪が外れれば貴様の命も助かる」
無論、祐作は知らない。そう言えば納得するとは思わなかったが、腑抜けっぷりに拍車が掛かるのは見物だと無情に言い放った。
パサリ。
風に大量の花びらが舞う。
ヒカルが花束を落とし、絶叫を迸らせながらこちらへ突進するのが見えた。
走りながらヒカルはチケットを切りマジシャインへと姿を変える。
サーガインは咄嗟に巌流剣を抜き、深雪の首を切断し首輪を抜き取った。
「もう深雪殿にようはない。おまえの好きにするがいい」
振り向きざまに向かってくるマジシャインへ深雪の頭部を放り投げた。
「なぜ、なぜ!こんなことができるんだ! 」
マジシャインは変わり果てた深雪の頭部を胸に抱き、怒りに震えている。
「深雪さんを思っているからこそ、ボクはドモンを説得しようと思った。キミたちにもボクの思いは伝わっていると思っていた!!」

319: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 00:51:52 PQxHz/lF0
5分で終わらせてやる。
その後は人目に付かぬところで制限をやり過ごせばいい。
サーガインは辺りに目を配る。
ドモンは教会へ向かった。下手に戦って今ドモンに戻ってこられても困る。
砂浜に続く岩場なら、身を隠す場所にもなろう。
サザザッ。
サーガインは擦り足で後へさがり、適度な間合いをとる。
両手に巌流剣を構えるサーガインを意に介さずマジシャインは深雪の頭部を身体の元へ戻した。
マジシャインはゆっくりと立ち上がり、サーガインへ近付く。
背中に携えた殺意をサーガインは鼻先で薄く笑う。
サーガインはそのままじりじりと下がりながら、背後に聳える岩場を確かめ、そこまで一気に走り寄る。

「ロンを倒すためだというのに。ヒカル、貴様俺を殺す気か?ドモンを説得するつもりが唆されたとは」
武器も持たず、マジシャインは無様に拳を振り上げる。
「やはり腑抜けか……」
体当たりするように間合いを詰め、右の一刀を横へ薙ぎ払いざま左の一刀を斜め上に切り上げる。
「ウワァァァッ!!」
火花をあげマジシャインの身体が沈んだ。
「何が起こったのかもわかっていまい。先に変身したのはヒカル、貴様だ。もう死ね!貴様如き巌流剣の錆にもならぬがな!!」
躊躇うことなく袈裟懸けに斬りつける。
刹那、マジシャインの装甲が光に包まれた。

「プロミネンスアタック!」

風が走った。
右半身に衝撃が走り、次いでサーガインは苦痛の叫びをあげた。
「グァァッ!!!」
「ボクの名前を気安く呼ぶな……。おまえは深雪さんの、ドモンの、ボクの思いを殺した!天空聖者の名に架けてボクがおまえを終わらせる!!」

320: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 00:53:53 PQxHz/lF0
地面を転がる屈辱。
すかさず立ち上がりサンジェル目掛け刀を伸ばす。
「その姿なら少しは相手になるかもしれんな」
サンジェルは右手を胸に、呪文の詠唱を始める。
顕在した光が太陽の如く煌めいた。

「プロミネンスシュート!」

咄嗟に左に身を交わすサーガイン。
光球は左頬を掠めた。瞬時、焼け付くような熱さがサーガインの身体を巡る。
頬を押さえ思わず片膝をついた。
「グッ!」
呻きを漏らした瞬間サンジェルの姿が消えた!?
否、後ろ―――
悟った時すでにサンジェルはサーガインを羽交い締めにし、凄まじい勢いで地を蹴り太陽に向かい跳躍した。

「プロミネンスドロップ!!!」

構える隙さえ与えられずサーガインは地に叩き付けられる。衝撃に前後不覚に陥る。
揺れる視界。ふらふらと二、三歩たたらを踏み、やっと留まったところで両手に握る巌流剣が左一刀であることに気付いた。
フッとサンジェルの幻影が視界を過ぎった。
視点を合わせると何故かサンジェルの顔が自分の胸の辺りに見えた。
「なっ!?」

321: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 01:00:33 PQxHz/lF0
身体を走る衝撃に背を弓なりに反らせば……。左肩に納まるはずの巌流剣が、サーガインの腹から背に納まりきらず突き抜けていた。



 ▽



激情、その言葉が一番近いものかもしれない。
使命でもなく、悪を倒すでもなく、敵を打つでもなく、まさしく激情に駆られ湧き上がった殺意が、身体の奥底からボクを操っていた。
サーガインを殺す。それ以外に考えることなどできなかった。
何の迷いも躊躇いもなく、巌流剣でサーガインの身体を貫いた。
深雪の側であることも、戻ってきたドモンの姿が見えたことも、すべてフィルター越しの景色のように、とても遠く不確かだった。

明確だったのはサーガインに対する殺意。
己の命を救うためなら他人に対してどれほど残酷にもなれる。
ボクはサーガインと同じだ。 深雪さんのためじゃない。 悔しくて悲しくて、それを我慢できなかったのはボクだ。

いつの間にか、ボクとドモンは砂浜の上に二人座って海を眺めていた。
どうしてきたんだ?そう聞こうとした。立ち上がったドモンの手に、ボクが摘んだのと同じ白い花が握られていた。
ドモンは深雪さんに花を供えに来たんだ。

「可笑しいかい?ドモン。キミが躊躇した第一歩をボクは簡単に越えてしまったよ」
ドモンは笑った。正確に言うと笑い飛ばした。
「あ~ぁ、ひでぇよ、ヒカルさん。先に殺っちまうなんてさ。誘ったのは俺だぜ」
ドモンは波打際で倒れたサーガインに目をやり、優しい声でボクに語りかけた。
「戻ってきてサーガインのやったことを知った時、俺はあいつを殺そうと思った。だからサ-ガインは俺が殺したのも同じだ」

322: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 01:04:22 PQxHz/lF0
「違う。キミは……。まだ戻れる」
ボクの言葉など聞こえないように、ドモンはデイバックから形の崩れたアップルパイを取り出し、二つに割ると片方をボクへ差し出した。
ボクは黙ってそれを受け取った。

「食べよう、ヒカルさん。まだ先は長いぜ。まぁ、美味いとは思えないだろうけど……」
そうだ。ボクらは生き延びなければならない。
ボクらの願いが叶うまで、後どのくらいかかるかわからない。
「「いただきます」」
二人の声が重なる。
「ククッ。ハハハ」
突然笑い出したボクを、ドモンが心配そうに見つめた。
「いただきますの意味を思いだしたんだ。
知らないのかい?食べ物に関わるすべての人への感謝の言葉だと前に薪人が教えてくれた。
そして、あなたの命をいただいて、私の命にさせていただきますという意味もあるんだ」
ボクはサーガインを見て、笑った。
「他の命を奪い亡くした者を取り戻そうとする。今のボクたちに とてもお似合いの言葉だと思わないか?」

崩れたアップルパイを一切れ口に入れた。
「なんでだろうな、こんな時なのに……」
ドモンは言葉を詰まらせた。
その先はわかる。こんな時なのに、崩れてお世辞にも美味そうには見えないアップルパイなのに……。
悔しいほど、舌が痺れるほど、美味かったから。


323:名無しより愛をこめて
08/12/25 01:08:06 ik/kfBYbO
支援…できるか!?

324: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 01:13:17 PQxHz/lF0
 ▽


「馬鹿め……。このサーガインまだ死んではいない!!!」
コックピットの中でサーガインが叫ぶ。
運よくヒカルが貫いたのは傀儡のみ 。サーガイン本体のいるコックピットに影響は無かった。
とはいえ一度能力を発揮したため傀儡を動かせぬ状態。
サーガインは波打際で俯せに倒れたままかろうじて動かせる目を駆使して辺りを伺う。

「ヌハハハハ!とんだお人よしだな。俺のデイバックをそのまま置いていくとは!
サーガインはあの時ヒカルにドモンの荷物を渡すと見せ掛け、小津勇の支給品を残し自分の基本支給品を渡したのだ。
一つ悔しいのは深雪の首輪を奪われたこと。
「まぁ、首輪はいずれ手に入ろう。ウメコとやらの死体も近くにある。……しかし 」
動けず、蛙のような格好で波打際に倒れているのは屈辱の極みだった。
俯せに倒れているのでサーガインはやはりorzの状態なのだが、体制など気にならなかった。身体の底から笑いが沸きあがるのを止められない。
「俺はロンの犯した最大の失態を握ったのだ。殺し合いの餌、ロンの宣う甘言を根底から覆す最大の失態をな!」
深雪の死に様、後からロンが持ってきた小津勇のデイバック。そしてサーガインの第六感。
デイバックの中の小津勇の支給品、サーガインの物と若干異なる状態の物の『鍵』を掴んだと思った。
おそらくドモンは気が付かなかったであろう。
偉大なる科学者、サーガインでだからこそ些細な異変を見逃さなかった。
「ロンめ、早々に俺をここに連れてきたことを後悔することになったな……。ん?」

ザッパ~ン。

「ぬお!」
サーガインが倒れていたのは岩場近くの波打ち際だった。

325:名無しより愛をこめて
08/12/25 01:17:59 ik/kfBYbO



326: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 01:22:12 PQxHz/lF0
波の穏やかな砂浜と違い、岩を叩く波は飛沫をあげ、真っ白な泡が深い蒼海に散る。
男の海、日本海さながらの波がサーガインの身体を叩きつける。
波の音はうるさく不愉快だったが別にどうというものでもない。
重い傀儡が波にさらわれる心配はまずないので身の危険の心配もいらなかった。
再び思考を巡らせようと目を瞑る。
「ヒカル、ドモン。この敵は必ず取らせて貰うぞ」
などと一人呟きながら数分。一際大きな波音が轟いた。

ザッパ~ン。チャポ。

「ぬぅ、チャポ。だと?」
爪先を冷たい物が触れた。目を開けるとコックピットに水溜りができている。
無論、設計上は浸水などするはずが無い。コックピット内の安全は自分の命に繋がるのだから。
だが見る見るうちに水溜りは大きくなる。
脱出しようと開閉ボタンを押す。
俯せで倒れているせいでフェイスマスク部分に作られたコックピットの扉が開かない。
甲虫のような細い腕では、頭部を押し上げて脱出も不可能だ。
浸水の箇所を防ごうとサーガインは夢中で手を伸ばした。
フェイスマスクの左頬の部分。サンジェルにつけられた傷が亀裂となり水の浸入を防げない。
バチバチと稲光にも似た眩しい光がコックピットに走った。途端、傀儡内部の光がシャットダウンした。
僅かにアイマスクの隙間から太陽の光が差し込む。
しかし、その光もすぐ波に消された。
暗いコックピットに水音だけがチャプチャプと不気味に響く。
「このまま、死んでたまるか!ゴブッ」
コックピットを満たす水は、もうサーガインの鼻先まで来ていた。
海水を飲み込んだ喉が、鼻が、焼けたように痛い。
「暗黒七本槍・五の槍 サーガイン。この俺が、こんな惨めな死に様などありえんっ……!ゴブオッ、ゴポッ、コポッ……コポ……」
海水がサーガインの身体を満たし、その重い体がぷかりと浮くまで、時間はそうかからなかった。


【サーガイン 死亡】
残り30人

327: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 01:27:52 PQxHz/lF0
【名前】ドモン@未来戦隊タイムレンジャー
[時間軸]:Case File20後
[現在地]:I-4海岸 1日目 午前
[状態]:身体に無数の切り傷と打撲と火傷(中程度のダメージ)。
[装備]:クロノチェンジャー
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ヒカルを優勝させ、深雪に幸せな家庭をプレゼントする。
第一行動方針:ヒカルと共に行動。
備考:変身に制限があることに気が付きました。 ウルザードに受けた傷はほとんど治りました。

【名前】ヒカル@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:Stage35後
[現在地]:I-4海岸 1日目 午前
[状態]:左肩に銃創。応急処置済み。胸に刺傷。2時間魔法(マジシャイン、サンジェル変身不可)使用不可
[装備]:グリップフォン、シルバーマージフォン
[道具]:基本支給品×3(サーガイン、小津深雪、ヒカル)月間宇宙ランド(付録なし)@激走戦隊カーレンジャー、ゼニボム×3@特捜戦隊デカレンジャー
[思考]
基本方針:ドモンと共に優勝を目指す。
第一行動方針:深雪の首輪を奪おうとした祐作に不信感。
第二行動方針:ティターンに対して警戒。
第三行動方針:冷静すぎる明石に微妙な気持ちを抱きました。
備考:サーガイン、裕作と情報交換を行いました。マジシャインの装甲(胸部)にひび割れ。勇、深雪、ウメコの死に様をドモンから聞いています。


328: ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 01:28:14 PQxHz/lF0
【名前】早川裕作@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:34話後
[現在地]:I-4海岸 1日目 午前
[状態]:健康。
[装備]:ケイタイザー
[道具]:フェンダーソード@激走戦隊カーレンジャー、火竜の鱗@轟轟戦隊ボウケンジャー、木製の台車(裕作のお手製)、他1品
[思考]
第一行動方針:瞬を捜す
第二行動方針:
備考:2時間の制限に気づきました。ヒカルと情報交換を行いました。メガシルバーの変身制限時間は2分30秒のままです。
    ヒカルがドモンを殺し合いを止めるよう説得していると思っています。勇、深雪、ウメコの死に様をドモンから聞いています。
  


共通事項
※サーガインの持ち物。基本支給品一式(小津勇)、拳銃(シグザウエル)はデイバックに入ったまま、I-4海岸、岩場近くの波打際、サーガインの死体の側に放置されています。
  小津勇の支給品に関して『何か』(サーガイン曰く「俺はロンの犯した最大の失態を握ったのだ。殺し合いの餌、ロンの宣う甘言を根底から覆す最大の失態をな!」)があるようです。



329:名無しより愛をこめて
08/12/25 01:31:28 ik/kfBYbO
シ・エ・ン

330:これより至極の天罰はない ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 01:33:10 PQxHz/lF0
以上、投下終了です。
途中代理投下感謝します。
前回の破棄を含めて長々とキャラの拘束を申し訳なく思っています。
指摘点、誤字脱字等よろしくお願いします。
感想が頂ければとてもうれしいです。


自分は本年度これで最後の投下となります。
書き手、読み手の皆様とも良いお年を。
来年もよろしくお願い申し上げます。

331:これより至極の天罰はない ◆MGy4jd.pxY
08/12/25 01:34:18 PQxHz/lF0
おっとタイトルは『これより至極の天罰はない』です。

332:名無しより愛をこめて
08/12/25 01:47:28 ik/kfBYbO
GJーーー!青い服のサンタさんが最高のクリスマスプレゼントを持って来たー!

さて、まずは一言、心の叫びをば。
サーガインーーー!!!!ってェェェェーーー!!??
こ、これはヒカル先生が悪い…と言えるのか!?
サーガインの自業自得はまず間違いないですがw
それにしてもまさかヒカル先生が一線を踏み越える事になるとは。
(実際には越えてないと言えるかもですが)
ヒカルとドモンの奉仕サラマンダー?コンビがこれからどうなるか楽しみです。
話の展開のさせ方、まとめ方、そしてオチwが秀逸でした。面白かったです!



333:名無しより愛をこめて
08/12/25 01:50:53 ik/kfBYbO
おっと、肝心な事を。

聖夜に良いお話を読ませて頂きました。
良いお年を。こちらこそ来年も宜しくお願いします!

334:名無しより愛をこめて
08/12/26 00:11:34 AEgtWTdt0
GJ!
揺れ動くヒカルの心の描写や、結果的にヒカルを奉仕マーダーにした挙句、自業自得の目に合うサーガインの描写が非常に秀逸な作品でした。
しかし、悲壮な空気が漂う中、サーガインが特に悲壮感が感じられないのが、彼の人徳かなと思いました。
さて、ヒカル、ドモン組みはもちろんですが、サーガインを失った裕作がどうでるかも気になりますね。

最後に、今年は鬱で面白い数多くの作品をありがとうございました。
よいお年をお迎えください。

335:名無しより愛をこめて
08/12/26 21:54:02 GV9XVgUa0
サーガイン年を越せなかったか…
遅れましたが、投下お疲れです!
ある程度安定期に入ってたグループの崩壊。
今年最後まで波乱含みのまま、真の決着は来年へ持越しですね。
さて…どうなるやら…

336:名無しより愛をこめて
08/12/27 23:38:34 ogQohrLC0
まとめ氏の作品が楽しみだ~。

337:名無しより愛をこめて
08/12/27 23:42:16 taH0K4Bo0
俺も楽しみダー!!!!
今日くるかな?

338:名無しより愛をこめて
08/12/28 03:04:59 mbjTqlnSO
wktkが止まらんとはこの事だな。
とりあえず、あれだ。正座して待ってよう。

339: ◆i1BeVxv./w
08/12/28 23:33:59 NVrI0UYs0
今回、本当に遅くなり、期待していただいた皆さんには申し訳ありません。
ただいまより投下いたします。

340:優勝候補 ◆i1BeVxv./w
08/12/28 23:34:31 NVrI0UYs0
「東よし、北よし、西よし、南よしと」
 スコープショットを覗き、四方を警戒する蒼太。
 ここは工場の屋上。マーフィーの修理が詰めの段階に入り、助手がいらなくなった頃、蒼太は偵察という建前の元、屋上への階段を上った。
(そう建前なんだよね)
 徐に蒼太は懐からメモ帳を取り出すと、ペンを握り、文章を綴り始める。
 スパイ時代からの癖で、蒼太は仕事相手のデータを調べずにはいられない。
 本来なら愛用のパソコンに入力したいところだが、ないものは仕方ない。
 勿論、ここを脱出した後に入力してもいいのだが、仲間のひとりの行動が蒼太に不信感を抱かせていた。
(真咲美希、激獣拳の使い手。要注意人物)
 美希は彼を観察していたが、彼も美希を観察していた。
 スパイである蒼太は自分に対する視線が持つ意味に聡い。
 彼女が蒼太に向ける眼は自分をスパイだと知っている眼だ。
(結構怪しいんだよね、彼女。他の人を見る眼もまるで値踏みしているような。それでいて、時折悲しそうな表情もしてたし。
 ……瞬くんを向かわせたのは早計だったかな)
 無論、考えすぎかも知れない。こんな状況だ。少し慎重な人間であれば、本当に相手が信用すべき相手かどうか、不信感を持っても仕方がない。
(と、いうより、この状況じゃあ、誰も信用するべきじゃないけど。
 ボウケンジャーの仲間たちだって、ティターンが言ってた通り、時間軸が違えば敵になる可能性があるしね。
 ただひとつだけ例外があるとすれば)
 蒼太は懐に隠した支給品を、服の上から擦った。
 ヒュプノピアス。刺した相手を自在に操れるこれを使えば、その一人は確実に"信用できる相手"になる。
(まっ、使わないけどね)

―なら、何故捨てるなり、壊すなりしないで持ち続けているのです?―
 
 ふと、ロンの言葉が頭を過ぎった。
 蒼太は思い出す。


341:優勝候補 ◆i1BeVxv./w
08/12/28 23:35:20 NVrI0UYs0
 それは蒼太がA-1エリアの地下迷宮でショットアンカーを使い、壁面を這いあがった時のこと。



「お疲れ様です」
 開口一番。這い上がった蒼太にまず掛けられた言葉がそれだった。
「ロン。ということは僕の思惑はバレバレだったわけか」
 蒼太は特に驚いた様子もなく、淡々と言葉を返す。対してロンも、同じく淡々と言葉を紡いだ。
「ええ、あなたが何の考えもなく命を捨てる人とは思えなかったもので。
 ああ、でもおぼろさんには何もしてませんよ?」
「そりゃ、どうも」
 蒼太はゆっくりと態勢を整える。その間、蒼太はわざと隙を見せたりしたが、ロンは意味ありげに笑うだけで何もしない。
(やっぱりね)
「で、目的は済んだんでしょ?わざわざ、僕を待っていた理由は?」
「ふふっ、他の方ならこのまま戻ってもよかったのですがね。折角だからあなたとお話しておこうかと思いまして」
「それは光栄だね。女性からの誘いだったら、なお良かったけど」
「変わりましょうか?」
 ロンが金色の靄に包まれると、たちまちその姿が女性の姿に変わった。
 黒髪の短髪に緑色の三つ編み。チャイナドレスがチャームポイントのメレの姿だ。
「へぇ、そんなこともできるんだ。たしか、その姿はメレさんでしたね。でも、ノーサンキュー。話すなら元の姿で」
「そうですか」
 一瞬にして、ロンは自らの姿に戻る。
「便利な能力だ。その能力でこの中の誰かを焚きつけたりしてるのかな」
「今はまだしてませんよ。今はまだ、個人の自由に任せている状態です」
「今はまだ……か」
「ええ、今はまだです。機を見計らっているのですよ。あなたがその懐にあるヒュプノピアスを使う時を見計らっているようにね」
「……お見通しってわけだ」
 蒼太は懐からヒュプノピアスを取り出す。
「おっと、私には使わないで下さいよ。折角用意した物が無駄になってしまいますから」
「元から使う気はないよ。確かに君になら、あんまり良心は痛みそうにないけどね」


342:優勝候補 ◆i1BeVxv./w
08/12/28 23:36:49 NVrI0UYs0
「良心?クククッ、いや、失礼。まさか、あなたからそんな言葉が出ようとは」
 失礼と言いながらも、堪え切れないといった様子で笑い続けるロン。
「何かおかしい?」
「いえ、なら、何故捨てるなり、壊すなりしないで持ち続けているのです?
 それはあなたのスパイとしての経験が、いつか使うときが来ると予感しているからではないのですか?」
「やっぱり、僕の経歴は知っているようだね。でも、僕はもう二度と自分がスリルに酔うために人を傷つけないと誓ったんだ」
 蒼太の決意を込めた言葉に、またも、ロンはクククッと嘲笑った。
「それは平和な世界だからこそ言える理屈だと思いますがね。
 いえいえ、責めているのではありません。むしろ、あなたには期待しているんですよ。
 なぜなら私は、あなたを優勝候補だと思っていますからね」
「優勝候補?」
「ええ、そうです。単純に強いだけでは、この殺し合いは勝ち抜けません。
 血の気の多い者は人減らしには役に立ちますが、やがて自滅するものですよ。
 それより、人心掌握に長け、攻め時、引き際を知り、相手を利用する狡賢さを持つそんな人物こそが勝ち残れる。
 その全ての条件を満たしている参加者、それがあなただと思っています」
「………」
 無言になる蒼太だったが、やがて、ロンに負けないほど顔をニヤつかせる。
「……ふふっ、ははははっ。随分と買い被ってくれたものだ。
 そうやって、皆をその気にさせているんですか?駄目ですよ。僕はひっかからない」
 ロンの顔の前で蒼太はわざわざ指を振った。
 その挑発的な態度に、ロンは不快を顕にする。と、思いきや、ロンの笑みは変わらなかった。
「やはり、あなたは期待できますね。ですが、脱出不可能とわかったとき、どういう行動をとるんでしょうね?」
 ロンは意味ありげな台詞を吐き、踵を返す。
 そして、蒼太のマネをするかのように、指を振り、言葉を紡いだ。
「ヒントをひとつだけ。もし、首輪を外す方法を見つけたとしても、決してあなた自身で試してはいけません。
 もっとも邪魔になる方で試すことをお勧めしますよ」


343:優勝候補 ◆i1BeVxv./w
08/12/28 23:37:21 NVrI0UYs0
 ロンはそれだけ言うと、金色の靄になり、そのまま消えていった。



「優勝候補……か」
 確かにこんな異常な状況においても、蒼太の胸は高鳴っている。
 それが冒険魂によるものなのか、それとも、スパイ時代にも味わったことのないスリルによるものなのか。
 蒼太にも、それははっきりわからなかった。
「いけないいけない、こんなこと考えてちゃ、ロンの思うつぼだ。
 さて、そろそろマーフィーの修理も終わった頃かな」
 蒼太はメモ帳を閉じると、それを懐に収め、立ち上がった。
「おっと、いけないいけない」
 建て前といっても、表向きは屋上に来たのは偵察のためだ。
 しっかりと役目は果たしておくべきだろう。
「何もないと思うけど」
 蒼太は再度、スコープショットを構える。
 東を見て、北を見て、西を見て、そして、蒼太は南を見た。
「!?、あれは」 
 スコープショットが南に人影を捉えた。
 蒼太は急ぎ、時計を確認する。
「8時58分。まずい!」
 蒼太が警戒を甘くしていた理由はここにある。
 西は既に禁止エリアになり、南も数十分で禁止エリアになる場所。
 そんな所に今更留まる参加者はいないと考えたのだ。
 だが、今まさに禁止エリアになろうとしている場所に誰かがいる。
「ボウケンジャー、スタートアップ!」


344:優勝候補 ◆i1BeVxv./w
08/12/28 23:43:09 NVrI0UYs0
 蒼太はボウケンブルーに変身すると、一目散に人影の方へと向かって行った。


 
「よっしゃ!マーフィーちゃんの修理、か!ん!りょ!う!やぁぁぁ!はぁぁぁ。肩凝ったぁ」
 工場内におぼろの威勢のいい声が木霊した。
 それに呼応するかのようにマーフィーがバウッと鳴く。
「いやぁ、しかし、大変やったで。見たことのないテクノロジーがふんだんに使われとったからな」
「バウッ?」
 マーフィーの内部機構には、今の地球の科学を越える技術が使われていた。
 カラクリ巨人などの技術を理解するおぼろにとっても、それは相当難解な代物だった。 
 こんなものを造れるとしたら、規格外の超天才か、ジャカンジャのような宇宙人かのどちらかだろう。
「それでも直してしまうんやけどね。まあ、うちにかかれば、ざっとこんなもんやで」
 自慢げに胸を張るおぼろ。だが、その言葉に応えるのはマーフィーしかいない。
 おぼろは胸を張ったまま、屋上へ行った蒼太を思い、天井を見上げた。
 ネジブルーを追い払ったとはいえ、ある者は人質救出のため、ある者は漁夫の利を得るため、彼の放送に惹かれてこのエリアに集まってくる可能性は未だ0ではない。
 そして、目的はどうあれ、ここから脱出するためにはいずれ接触も必要になってくるだろう。
「ほんま、蒼太くんは頼りになるわ」
 おぼろは蒼太にマーフィーの修理完了報告のため、屋上への階段を上り始める。
「それにしてもマーフィーちゃんって、戦闘用みたいやけど、一体何者なんやろうな」
「バウゥ」
 修理の過程で、おぼろはマーフィーの内部に隠された砲身やトリガーを眼にしていた。
 それはマーフィーの本来の用途は武器ということを示している。
 もっともロックを解除するためにはキーになる何かが必要で今のままでは使えそうにないが。
「まあ、それも蒼太くんと相談すればええか」
 扉が開き、新鮮な空気が部屋へと入りこんでいく。
 おぼろは軽く深呼吸を行い、灰を空気で満たすと、眼を開けた。
「……あれ?蒼太くん」
 しかし、そこに蒼太の姿はなかった。辺りを見回すが、どこにも見えない。
「おーい、蒼太くーん!どこやー!まさか、誰かに……」

345:優勝候補 ◆i1BeVxv./w
08/12/28 23:43:53 NVrI0UYs0
「バウッ!!」
 いつの間にか横にいたマーフィーが南に向って、勢いよく吠える。
 つられておぼろも南を見るが、おぼろの眼には何も見えない。
「バゥゥッッ」
 マーフィーは落ちていたスコープショットを口で掴むと、おぼろの手に握らせる。
「おっ、マーフィーちゃんも気がきくなぁ」
「バウッ♪」
 おぼろはマーフィーの頭を撫でると、スコープショットを覗いた。
 そこには―
「おっ、蒼太くん、おったわ。っと、あれ誰や?」
 おぼろの眼には蒼太に担がれる女性の姿が映っていた。



 工場の机の上に、マーフィーに代わり、女性が載せられる。
 気休めながらもベッド代わりに、蒼太のジャケットなどの服を下に敷いてだ。
 女性―西堀さくらは自分を心配する声を聞きながら、今後の行動について、考えていた。
(潜入成功ですね)
 蒼太は自分がさくらを発見したと思っているだろうが、実際は違う。
 さくらが蒼太に発見させたのだ。
 さくらは自らのスコープショットで蒼太の存在を確認していた。
 ただ会うだけなら、工場に向かえばいい。
 だが、さくらはある目的のため、賭けに出た。
 その賭けは成功した。ギリギリだったが、目論見通り、蒼太は自分の存在に気付き、変身して、自分を助けた。
 そう、変身してだ。
(今の私の戦闘手段はスコープショットに仕込まれたナイフしかありません。あとは徒手空拳。
 変身を封じなければ、私と蒼太くんとのパワーバランスはあまりに開きすぎてます)
 これでおおよそ2時間、蒼太は変身することはできない。
 それまでにチーフを探し、隙を見て、蒼太を殺そうとする。そうすれば―

346:優勝候補 ◆i1BeVxv./w
08/12/28 23:46:30 NVrI0UYs0
(チーフに見苦しく惨めな死に様を晒す。仲間を殺そうとして、逆に殺されれば、それは惨めでしょうね)
 さくらは蒼太に殺されようとしていた。


【最上蒼太@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.3、後
[現在地]:F-5都市 1日目 午前
[状態]:良好。2時間ボウケンブルーに変身できません。
[装備]:アクセルラー@轟轟戦隊ボウケンジャー、スコープショット@轟轟戦隊ボウケンジャー、ヒュプノピアス@未来戦隊タイムレンジャー
[道具]:バリサンダー@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:さくらの介抱。
第二行動方針:おぼろと共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第三行動方針:おぼろを守る。ジルフィーザと合流する。
※首輪の制限に気が付きました。
※時間軸のずれを知っています。

【日向おぼろ@忍風戦隊ハリケンジャー】
[時間軸]:巻之三十、後
[現在地]:F-5都市 1日目 午前
[状態]:全身に軽い火傷、打撲。応急処置済み
[装備]:イカヅチ丸@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:さくらの介抱後、蒼太と共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第二行動方針:首輪を何とかする。ジルフィーザと合流する。
※首輪の制限に気が付きました。
※時間軸のずれを知っています。

347:代理
08/12/28 23:59:32 wwAm/Dqp0
【名前】西堀さくら@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:F-5都市 1日目 午前
[状態]:健康 (ただし、ロンによる洗脳を受けており、いつでも傀儡になる危険性あり) 。
[装備]:アクセルラー(損壊、要修理)、スコープショット
[道具]:なし。
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ここから脱出する。
第一行動方針:チーフ(明石暁)と合流する。その後、蒼太に殺される。
第二行動方針:夢の啓示で今の自分を再確認。裏方針が表に。(ロンの存在については気づいていません)
※)裏行動方針:ロンの言われるままにいいように操られ、見苦しく惨めな死に様を晒す。
 ただし、本人にその自覚はなく洗脳行動も全て自分の意思であると思い込む。

【名前】マーフィーK-9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:F-5都市 1日目 午前
[状態]:修復完了。本調子ではないが、各種機能に支障なし。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:???
第一行動方針:蒼太たちと一緒に行動する。




投下乙です!
遂に顔見知りと合流を果たした姐さん。
これからどうなるかワクワクです。もう一度、お疲れでした。



348:代理
08/12/29 00:13:14 OCntz73i0
あれ? でもさくらって確かスコープショットも失ってませんでしたっけ??

349: ◆i1BeVxv./w
08/12/29 00:34:13 byL9T4bE0
失礼しました。どうやら参照先をミスしたようです。
該当箇所に関しては、修正いたします。
遅くなったうえにミスとは申し訳ないです。

350:名無しより愛をこめて
08/12/29 00:50:29 RBXYFCttO
投下&代理投下GJです!

美希さんの様子に気が付くとはさすが蒼太さん。
仲間さえ敵かも知れないと考える冷静さ、
冒険魂とスリルの区別を付けられないアンバランスさが非常な彼らしいと思いました。
相変わらずヒュプノピアスを捨てられない事がどこか危ういですね。
それにしてもロンは相変わらずw
ロンと蒼太さんの心理戦が面白かったです!


351:名無しより愛をこめて
08/12/29 01:31:17 9nz79J1MO
うぉぉぉぉっ!!!
蒼太とさくらの今後がめちゃくちゃ楽しみになってきた。
展開予想が止まらないぜ!
蒼太、本領発揮と言ったところですね。
まさしく優勝候補だw
しかしいつも本当に簡潔にすっきり纏めて読後感最高です!
面白かった、この一言では表しきれないほどGJ!でした。

352: ◆8ttRQi9eks
08/12/31 01:07:51 4X1zzKKx0
これより投下します。

353: ◆8ttRQi9eks
08/12/31 01:08:41 4X1zzKKx0
――僕の大きな宿業が彼女の存在を小さくしてしまった…




「具合、どうですか?」
関西弁特有の尻の上がったイントネーションで日向おぼろは西堀さくらの手を握った。
ひどく、脈が荒い。
相当過酷な局面を迎えたであろうことがそれだけでも如実に伝わってくる。
「ありがとう…ございます…わたしは西堀さくら。蒼太君と同じボウケンジャーのメンバー・ボウケンピンクです」
さくらは自分を心配そうな面持ちで見つめるおぼろに微笑みかけた。
「あたしは日向おぼろ。メカニックや。蒼太君には世話になっとる」
お互いに自分が何者であるかを確認しあう。
―他人に容易に心を許さない蒼太が行動を共にする女性。
ならば、彼女は殺し合いには乗っていないのだろう。
さくらもおぼろもお互いに同じ認識を相手に対し共有した。
「それにしても、何があったんです? さくらさんがこんな目に遭うなんて…」
それに、どうしてあんな場所にいたのか。
自分の知るさくらならばあんな無謀な真似は絶対にしない。
さくらは二人に自分がグレイに戦いを挑んだこと、そしてガイに屈服したことだけを
上手く避けて今の自分の状況を説明した。



354: ◆8ttRQi9eks
08/12/31 01:10:04 4X1zzKKx0
「あいつ…僕らのパラレルエンジンを機能不全に出来たのか…」
知らなかったとはいえ、戦闘を避けることの出来た幸運に蒼太は胸をなでおろした。
過去に一度蒼太とおぼろはガイと遭遇している。
万が一、ガイから見て過去に位置する自分が戦っていればあっという間に殺されてしまっていただろう。
「それにしても僕らに6人目の仲間がいるなんて知りませんでしたよ。それに菜月ちゃんの正体も知ってるなんて…さくらさんは僕より相当後の時代から来たんですね」
「えぇ。でも高丘さんのことはともかく、菜月の正体については伏せておきましょう。
彼女も蒼太君のように自分の過去を知る以前から連れてこられた可能性があります。真墨のことで相当動揺しているでしょうし…無駄に混乱させるのは酷です」
蒼太との時間軸のずれを解消すべく会話を続けていく中で自然、さくらは蒼太の知らない未来の情報を幾つか伝えた。恭介の時と違い、蒼太とはできるだけ情報の伝聞を密にしておく必要がある。
自分がいなくなった後、明石を支えるのは彼なのだから。
「そうですね…彼、残念でしたね……」
「…………………………………………」
伏せ目がちに蒼太が呟いた。
場の空気が沈黙の重みに沈んでいく―

「ふ・二人とも元気だしいな! そやっ! さくらさん、喉渇いてるやろ? 今水を持ってくるからちょっと待っててや!!」

耐え切れず、おぼろが空元気に声を張り上げた。
「そんな! 待ってください!! 助けていただいたのに、貴重な水まで譲っていただくわけには!」
をさくらはあわてておぼろを押し留めた。
「何言ってんの! 困った時はお互い様やないの。すぐ取りに行って来るから待っててや!!」
静止するさくらを振り切り、おぼろは自らの支給品を取りに部屋を去った。



355: ◆8ttRQi9eks
08/12/31 01:11:13 4X1zzKKx0

「優しい方ですね…おぼろさん」
さくらはおぼろの背中を見送りながら呟いた。
「えぇ。彼女のおかげで僕も随分助けられてますよ…それより、さくらさん、チーフからの指令なんですが…どうします?」
「そう、ですね…ガイの目的が蒼太君の話どおりだとすれば
一刻の猶予もないですね…本当はチーフが来るまで動くべきではないのでしょうけど…-」
さくらはガイとの遭遇だけは避けたかった。
「僕も出来るならチーフを待ちたいですけど…」
蒼太はここで出来た、分かれた仲間達も心配だった。
特に美希の挙動に違和感を覚える。なにやら不吉な胸騒ぎを覚えるのだ。
これが取り越し苦労ならそれに越したことはないのだが。
「さくらさんの話通りなら僕らのアクセルラーじゃガイには敵わない事になるし…その高丘映士…でしたっけ? 彼がいてくれるなら話は別ですけど…」
自分のアクセルラーにはご他聞に漏れずネオパラレルエンジンは搭載されていなかった。
やがて来るであろう明石のアクセルラーの状態は知れない。
ならば、いつ来るか分からない明石よりも早く仲間達と合流してガイを打ち滅ぼす。
それが一番の得策だと蒼太は思っていた。
「…すみません…わたしが不甲斐ないばっかりに…」
ガイを逃がしてしまったのは重ね重ね、様々な意味で痛恨事だった。
まさか、彼にそんな目的があったとは知らなかったのだ。
「さくらさんの所為じゃありませんよ! 元気出してください!!」
「ありがとう蒼太君…」
さくらは少し疲れたような微笑を浮かべた。その表情を蒼太はじっと見つめていた。
「蒼太…くん?」

「さくらさん…折り入ってお話したいことがあります」



356: ◆8ttRQi9eks
08/12/31 01:12:17 4X1zzKKx0

§


「水♪ 水♪ 水は~っと!」
鼻歌交じりにおぼろは自らの支給品を漁った。
サバイバルの生命線ともいうべき水を他者へ譲渡することに何の躊躇いも持たない。
彼女は嬉しかった。
ずっとどこか影を引きずっていた蒼太がさくらの存在に心から安堵した表情を見せたからだ。
それはきっと、彼の本当の顔なのだろうとおぼろは思う。
「バウッ!」
おぼろの浮かれた様子につられたのか、マーフィーもどこかはしゃいだ様子で足元にじゃれ付いてくる。
「なんや、あんたも嬉しいんか? 調子いい奴やな~…待っとれ、今オイル出したるさかい」
笑顔に顔をほころばせ、上機嫌でおぼろはマーフィーを抱き上げた。
「バウッ! バウッ!!」
好物にありつけることに病み上がりもなんのその。
まるで本当に生きている犬のようにマーフィーは大きく左右に尾を振った。

§

「“ヒュプノピアス”…ですか」
蒼太から手渡されたそれを手のひらに見つめながらさくらは息を呑んだ。
「えぇ。どうやらロンが心理的な揺さぶりを参加者に…僕にかけるためによこした支給品です。
これを使えばどんな相手でも従順な操り人形にすることが可能です」
「そんなことが…」
「僕はこれを捨て去る勇気が持てなかった…恥ずかしいんですけどね、おぼろさんにも内緒にしてるんですよ…」
自嘲気味に蒼太が笑う。無意識に指輪をさするのはこういう時の彼の癖だ。
「どうして、それをわたしに?」


357:名無しより愛をこめて
08/12/31 22:52:28 LHzrK3/R0
「僕がこのゲームで心から信頼できるのはたった二人。チーフと…さくらさん、あなた方だけです。
なんか厄介ごと押し付けるみたいで申し訳ないんですけど、さくらさんに持ってて欲しいんです。
人を操る悪魔の道具を、信頼の証の象徴にして欲しいんです、それとロンへの反旗の印に。
それを安心してできるのはさくらさんだけです。受け取ってくれますよね?」
縋る様な蒼太の表情に、さくらは彼もまた平静を装いながらも張り詰めていたことを悟った。
「…わかりました。これはわたしがお預かりします」
さくらは蒼太の申し出を快諾した。
「良かったぁ~…! 断られたらどうしようかと思いましたよ! さくらさん、お願いします」
「心得ました」
さくらは力強く頷いた。

§

「お水、美味しかったです」
いささか復調したのか、さくらは発見された時よりも顔色が良くなった。
「そうかぁ♪ いやぁ、さくらさんに早う元気になってもろうて皆と合流せなあかんからな。
“くえすたー”が愛を枯らすなんてけったいな企みなんて絶対阻止したる!」
無邪気に微笑むおぼろの姿にさくらは何故、蒼太が彼女と行動を共にしているか分かる気がした。
蒼太はまた偵察に出るといって場を外した。
恐らく、出会って間もないおぼろとさくらの親交を深めて欲しいという彼なりの心遣いなのだろう。
それは実に都合が良かった。
「あたしは戦闘こそからっきしやけど、メカに関しては自信があるんやで! あんたのアクセルラーとかいう道具もきっと修理してみせる!! そしたら一緒にロンを倒すんや!!!」
「ありがとうございます。おぼろさんには何から何までお世話をして頂いて…」
「なに言うてるんや! あたしらもう仲間やないの。水臭いこと言わんといてぇな」
さくらの肩をバンバンと叩きおぼろは笑った。

358:名無しより愛をこめて
08/12/31 22:54:10 LHzrK3/R0
「これがアクセルラーかぁ…こうやって見るのははじめてやけど、うちの知ってる子たちが使ってるのと構造自体はそう違わんなぁ…ただ、このパラレルエンジンとかいう装置は結構曲者やな…
修理できるといいんやけど……」

初めて見る他の変身装具を手にあちこちをみつめるおぼろの背後にゆらりと影が立つ。
「なぁ、さくらさん…――」
振り返ろうと、頭を振ったおぼろが見たのは感情のかけらも感じさせない冷徹な表情をしたさくらだった。
仮にも忍風館の卒業生であるおぼろに気配を一切感じさせることもなく、一気に間合いをつめ
利き腕を強く捻る。
不意を突かれたおぼろは成す術もなくあっという間に押さえ込まれ、壁際に押し付けられた。
「な・なにするんやっ!?」
狼狽するおぼろの耳に震えた声が聞こえてくる。
「ごめんなさい……!」
さくらは右腕に掲げたヒュプノピアスをおぼろの背中に突き刺した―


359:名無しより愛をこめて
08/12/31 22:55:13 LHzrK3/R0
「…――ッッ!!」
途端、全身に激痛が走る。
「痛ぃいいい!! 痛いいいい!! 痛いいいいいーーーーー!!!!!!!!」
本来、30世紀の囚人を押さえ込むための精神への拘束具として開発されたそれは対象の感情を一切無視し、完全に隷属させる。
その時生じる電磁波の奔流は直接神経を掻き毟るような凄まじい痛みを伴う。

「痛い痛いいいいぃぃい痛い痛い痛いいいいいぃぃいい痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!」

地面を転げまわり、激痛にのたうつおぼろをさくらは涙を流しながらみつめていた。
「ごめんなさい…これしか…これしか方法がなかったんです……」
最も惨めで無様な死に様を晒す。
明石暁は仲間を心から信頼している。
帝国の真珠の時も、ガラスの靴の時も彼はさくらを信頼してくれた。
―だから、蒼太が絆の証にしたいといったこれでそれを裏切る。
なんて浅はかで、なんて思慮のない、なんて無様な企み。
蒼太は仲間の裏切りに敏感だ。きっと、自分を許さないだろう。
それでいい。
彼の怒りが大きければ大きいだけ、惨めに敗れる自分の姿は一層無様さを増すのだから。
「ごめんなさい…ごめんなさい……」
だが、そのために結果として何の関係もないおぼろを巻き込んでしまった。
彼女は愚かなまでに出会って間もない自分を信頼してくれたのに―

「痛いいいいーーーーー!!! 痛い痛い痛いーーーーーー!!!痛い痛い痛い痛いーーーーー!!!!」

なぜ、彼女がこんなことをするのか。
なぜ、あんなに悲しい顔をしているのか。


360:名無しより愛をこめて
08/12/31 22:58:00 LHzrK3/R0
おぼろには何も、分からなかった。

「殺すことはしません…きっと解放しますから……少しの間だけ、わたしの言うことを聞いてください……」




そして、全てが暗闇に閉ざされた。

§

「蒼太君、やっぱり私いけません」


「何でです? やっぱりチーフを待つんですか?」
偵察から戻った蒼太に出会いがしら、さくらはそう告げた。
「はい。それもありますが、わたしにはあなた達と行動を共にする資格がないんです」
「はい? すみませんが、言ってる意味がよく分からないんですけど…」

「わたし、殺し合いに乗ったんです」

事も無げにさくらはそう言ってのけた。まるでなんでもない事の様に。
いつものように真面目な表情で。いつもの冷静な口調で。
「実際に参加者も一人、襲いました。殺しこそしていませんが、殺意があったことは事実です。
それと、わたしガイから逃れたといいましたけど…あれ、嘘です。
本当は土下座して命乞いをして、何とか生き延びたんです」
悪夢を見ているようだった

361:名無しより愛をこめて
08/12/31 22:59:10 LHzrK3/R0
さくらは今の自分を包み隠さず蒼太に告げた。
危険なプレシャスと分かっていながら、保身のためになんの処置も施さなかったこと。
グレイを罠にはめようと画策した時の暗い興奮。
ガイとの舌戦で感じた侮蔑の言葉を吐いたことでの爽快感。
ざらついた砂利を舐めった舌の感覚。命を見過ごしてもらった時の安堵。
聞くに堪えない赤裸々な告白の数々に蒼太は眩暈を覚えた。
悪夢だった。
嘘だと、叫ぶことすら出来なかった。
何も出来ないままただ、その言葉に聞き入るしかできなかった。

「ですから、わたしには一緒に行く資格がないんです。今の話で理解して頂けましたよね?」

さくらの表情は変わらない。
自分がどんな話をしているか、分かっているのか。
築き上げてきた信頼が音を立てて崩れる音を蒼太は聞いた。
そして―…その視線は目の前にいつもの姿勢でたたずむさくらに釘付けにされていて、背後に迫る危機に全く気がついていなかった。
瞳の輝きを失ったおぼろが蒼太の背後に迫っていた。
彼女はイカヅチ丸を握っていた。このまま、無防備な蒼太を気絶させ捕縛する。
そうすればこの場を制するのはさくらだ。
後は、明石が来るのを待てばいい。

ゆっくりと、おぼろがイカヅチ丸を天に翳していく。
あと、少しで、全て準備が整う。


362:名無しより愛をこめて
08/12/31 23:00:01 LHzrK3/R0
おぼろがイカヅチ丸を蒼太の後頭部めがけて、振り下ろそうとした。その時。
カチッ。
いつの間にか蒼太の手に握られていたスイッチが乾いた音を室内に響かせた。
「え…?」
それを合図にしたように、おぼろの動きが止まる。


「よくわかりましたよ…さくらさん。どうやら、僕ら…行く道が違っちゃったみたいですね」

ヒュプノピアスはただそれだけでは不完全な代物だ。
リモコン端末とその発信機が対になって初めてその効果を発揮する。
蒼太がさくらに預けたのは発信機の部分だけで人を操るだけの力はない。
さくらはおぼろを操っていたように思っていたがその実、蒼太がおぼろをさくらの命令に従っているように動かしていただけに過ぎなかったのだ。
「おぼろさん…変なことさせて、すいませんでした」
蒼太が振り向くこともなく、おぼろに告げる。

「なんも…あたしこそ、また助けてもらって……」

さくらがピアスを使えば、すぐに端末にその情報が伝わる。
いわば、蒼太はさくらを試したのだ。
それが、彼自身の前歴で培われた深い業であり、真の信頼を求める渇きでもあった。
「さくらさんが色々黙ってたように…僕も全部話してませんでした―…でも、これでお互い、腹を割って話すことが出来そうですね」
そう言って、蒼太は懐に手をやる。
そして、一旦は預けたはずのヒュプノピアスを取り出しさくらの眼前に掲げた。


363:名無しより愛をこめて
08/12/31 23:03:59 LHzrK3/R0
「さくらさん…ヒュプノピアスを、嵌めてください…―」
振り絞るように蒼太はさくらに求めた。
「蒼太君っ! わたしは…!!」

「黙れっっ!!」

普段の彼からは想像も出来ないほどの激しい一喝にさくらは一瞬押し黙る。
「僕からの命令はこうです…“今後、一切の行動は全て明石暁の命令に従うこと”
彼になら…さくらさんも自分を預けられるでょう?」
瞳に涙を滲ませ、血の吐くような思いで蒼太は言の葉を喉の奥から搾り出した。
心から信頼する相手にむけねばならない刃は、諸刃となって蒼他の心をずたずたに引き裂いていく。
「さくらさん…お願いですから自分で嵌めてください……僕に…僕にさせないで下さいっ!!」

…―ヒントをひとつだけ。もし、首輪を外す方法を見つけたとしても、決してあなた自身で試してはいけません。 もっとも邪魔になる方で試すことをお勧めしますよ――…

脳裏に蘇る声と蒼太は必死に戦っていた。これまでにないほど、感情をあらわにして。
輻射熱と耳鳴りで今にも倒れてしまいそうだった。
蒼太の嘆願にさくらは押し黙ったまま。
今や、二人が培ってきた絆は霧散の如く消滅してしまっていた。

「蒼太くん…」
二人の今にも破られんとする均衡を見つめながら、おぼろはただ両者を交互に見やるだけだ。
永遠に続くかと思われた均衡を破ったのはさくらだった。
「………――」
そっと前へと足を進める。


364:名無しより愛をこめて
08/12/31 23:04:50 LHzrK3/R0
「さくらさん…」
分かってくれた。蒼太の顔に安堵の表情が浮かぶ。
大丈夫。
まだ、彼女との絆は完全に途切れてはいない―

そうだ。

まだ、やり直せる…



このゲームが終わったら、きっと―…
「蒼太くんっっっ!!! 危ないッッ!!!!!」

希望の幻に心を奪われていた蒼太の意識が急速に現実へと引き戻される。
すぐ近くにいるはずのおぼろの声がなぜか遠く聞こえた。
「えっ…?」
すぐには分からなかった。
しかしすぐに下腹部に焼け付くような痛みが走り、喉の奥から血があふれ出していく。
ずぶり、と体内から鈍い輝きを放つナイフが引き抜かれると蒼太の体は工場の冷たい地面に沈んだ。
「…さくら……さん?」

目の前には荒い息で両手を真っ赤に濡らすさくらが佇んでいた。
「ハァ…ハァ…ハァ……―」
さくらが手にしていたのはスコープショットに含まれる幾つかのツールのうち、ナイフだけを抜き取ったものだった。
ガイとの戦闘の後、破壊されたディパックから使えそうなものがないか精査した。
望遠鏡など大方のアタッチメントは死んでいたが、唯一ナイフだけが生き残っていた。
アクセルラーを失ったさくらにとってそれが唯一の武器だった。
ガイやグレイといった強敵たちと渡り合うにはあまりに矮小な力。


365:名無しより愛をこめて
08/12/31 23:07:04 LHzrK3/R0
そして、育んできた絆を断ち切るには十分すぎる力。

「蒼太くんっ!」
おぼろがさくらを突き飛ばし、蒼太へ駆け寄る。
上半身を起こし、意識が朦朧とする彼を必死に引きとめようと叫び続ける。
「蒼太くんっ! 蒼太くんっ!!」
ナイフを持った相手を背にしたまま、あまりに無防備に。
成す術もなく泣き叫ぶその姿をさくらは呆然と見つめていた。
「どうしてや…」
嗚咽の中におぼろの鋭い声が混ざる。
「どうして蒼太君を刺したんやっ! 仲間やろ、あんた!? 蒼太君はなぁっ! 蒼太君はあんたを心から信頼しとったんやで! それなのに…なんでやっ!!!」
わたしだって信頼している。
蒼太くんを心から信頼している。だからこそ、彼に最期を看取って欲しかった。
あの人と二人で見送って欲しかった。ただ、それだけなのに―…

「さくらさん…逃げて…逃げて…下さい…―」

息も絶え絶えに、それでも蒼太はさくらを赦そうとしていた。
それが、仲間への最後の温情なのか、過去の罪への償いなのか、蒼太にも分からない。
「蒼太くん!? なんで、こないなやつ庇うんやっっ!!」
おぼろが悲しみとも怒りとも取れる声で叫ぶ。
蒼太は微笑っていた。
ひどく、哀しく。
さくらはそっと、袂を分かったかつての仲間に背を向ける。
最早、ここにはいられなかった。彼女はまた居場所をなくしたのだ。



366:名無しより愛をこめて
08/12/31 23:07:58 LHzrK3/R0
「…今は逃げたらえぇ…でもな、憶えときっ! あたしがあんたを必ず追い詰めたる!!
もう、あんたの居ていい場所なんてこの世界のどこにもないんやっ!!」

怒りにわななきながら、らんらんと怒りに輝く瞳に涙を一杯に溜めて。
日向おぼろはこれまで経験したことのない憎悪の感情に支配されていた。
絶対に、この女だけは、許しておけない。
このゲームで最も忌むべき行為に手を染めた彼女を。
糾弾し続ける。

追い詰めて、追い詰めて。

惨めな最期を遂げるまで。


§



どこをどのくらい走ったのか―
おぼろの最後の言葉を背に受けたまま、さくらは当て所もなく彷徨い続けていた。
―やがて、鼻を突く血の臭いに気づく。
目の前に広がる光景に、さくらは驚愕した。あたり一面に肉片と思しき破片が散乱する地獄絵図。
その中心に頭蓋が覗く首と目と目が合う。
「これは…!」


367:名無しより愛をこめて
08/12/31 23:08:43 LHzrK3/R0
彼女をさくらは知っていた。
時の魔神クロノスが呼び寄せた最後の巫女―フラビージョ。
生前の彼女とは一度刃を交えた経験がある。
まさか、こんな形で再会するとは思っても見なかったが。
くまなく辺りを見回すが、彼女をこんな姿にした張本人は既にこの場を去ったらしい。
「!」
フラビージョの生首の更に奥。血塗れた剣が地面へ深々と突き刺さっている。

「ズバーン!」

やはり、彼もこの世界へ誘われていたのだと、さくらは思わず駆け寄った。
「良かった! 無事だったんですね!!」
彼の本質を知るさくらは仲間を道行きにすべくその柄へ手を、かけた。
「なっ―!!? ああああああああああああああああああああああああああ――…ッッ!!!!」
刹那、さくらの全身を電流が刺し貫いた。
立っていることすらかなわず、さくらは無様に地面へと転げた。
「ズ・ズバーン…?」
古代レムリアの宝剣は清き心の持ち主にしか従わない。
邪なる者がその手を触れれば剣はこれを、自ら、拒絶する。

「わたしは…とうとうズバーンにまで見捨てられてしまったんですね……」

どこまでも、どこまでも堕ちていく。




368:名無しより愛をこめて
08/12/31 23:11:43 msKTlmIjO



369:名無しより愛をこめて
08/12/31 23:11:57 LHzrK3/R0
【最上蒼太@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.3、後
[現在地]:F-5都市 1日目 午前
[状態]:瀕死の重症。2時間ボウケンブルーに変身できません。
[装備]:アクセルラー@轟轟戦隊ボウケンジャー、スコープショット@轟轟戦隊ボウケンジャー、ヒュプノピアス@未来戦隊タイムレンジャー
[道具]:バリサンダー@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:おぼろと共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第二行動方針: おぼろを守る。ジルフィーザと合流する。※首輪の制限に気が付きました。
※時間軸のずれを知っています。

【日向おぼろ@忍風戦隊ハリケンジャー】
[時間軸]:巻之三十、後
[現在地]:F-5都市 1日目 午前
[状態]:全身に軽い火傷、打撲。応急処置済み
[装備]:イカヅチ丸@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:西堀さくらに激しい怒り。どんな手を使っても絶対に追い詰めて見せる。
第二行動方針:首輪を何とかする。ジルフィーザと合流する。蒼太と共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
※首輪の制限に気が付きました。
※時間軸のずれを知っています。


370:名無しより愛をこめて
08/12/31 23:12:38 LHzrK3/R0
【名前】西堀さくら@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:F-5都市 1日目 午前
[状態]:健康 (ただし、ロンによる洗脳を受けており、いつでも傀儡になる危険性あり) 。
[装備]:アクセルラー(損壊、要修理)
[道具]:なし。
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ここから脱出する。
第一行動方針:チーフ(明石暁)と合流する。その後、蒼太に殺されようとしていたが失敗。
第二行動方針:夢の啓示で今の自分を再確認。裏方針が表に。(ロンの存在については気づいていません)
※)裏行動方針:ロンの言われるままにいいように操られ、見苦しく惨めな死に様を晒す。
 ただし、本人にその自覚はなく洗脳行動も全て自分の意思であると思い込む。



【名前】マーフィーK-9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:F-5都市 1日目 午前
[状態]:修復完了。本調子ではないが、各種機能に支障なし。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:???
第一行動方針:蒼太たちと一緒に行動する。


370 : ◆8ttRQi9eks:2008/12/31(水) 01:23:21
いつもすみませんが、本スレへの投下をお願いします…
私もこれが本年最後の作品になりそうです。
それでは良い、お年を。


371:名無しより愛をこめて
08/12/31 23:15:07 LHzrK3/R0
以上、代理投下終了。
投下お疲れ様です。代理投下スレにて指摘させていただきました。
よろしくお願いいたします。

372:名無しより愛をこめて
08/12/31 23:40:33 B2pJkZNZO



373: ◆8ttRQi9eks
09/01/02 01:06:40 ssDMhM6d0
したらばに修正版をアップしました。
重ねてご意見、ご感想をいただければ幸いです。
新年早々にお騒がせして申し訳ない。

374: ◆8ttRQi9eks
09/01/02 01:29:32 ssDMhM6d0
また、代理投下をして頂きありがとうございました。
タイトルは「シンライノアカシ」で。

375:名無しより愛をこめて
09/01/02 14:08:55 zWp+zFmT0
投下&代理投下&修正投下乙です。
決定的にすれ違う蒼太とさくら。おぼろさんの叫びが哀しいですね。


さて、新しい煽り文が出来上がりましたので投下します。
前回から大変遅くなってしまいました。どうかご容赦を。




376:名無しより愛をこめて
09/01/02 14:10:13 zWp+zFmT0
021 ワイルドスワン・クールブレイン
漆黒の夜空を焦がすのは反撃の狼煙。
  炎は確かに彼女の運命を引き寄せた。たとえそれが望まぬ運命であったとしても。

022 冥王星を継ぎし者
  少年は夜をひた走る。夜より深い闇を抱えて。

023 走・想・蒼太
  その胸を高鳴らせるのは冒険への想い。
  男はバイクを走らせる。信頼と不穏をその身に抱えて。
  
024 青い炎とレスキュー魂
  己の夢だけを見つめる少年に、遙かな未来はまだ遠く。
  ただ生きようともがく少年に男の声は届かない

025 奇縁
  邂逅を果たした男が二人。すれ違う時の矛盾を抱え、並び立つ。
  影から見つめる女が一人。時の矛盾に踊る愚か者を求め、流離う。

377:名無しより愛をこめて
09/01/02 14:11:34 zWp+zFmT0
026 最期に見た夢
  愛しい者の面影はあまりに遠く。
  少女は逝く。最後の邂逅さえ許されずに。

027 喜劇役者
  さあ喜劇の幕が上がります。
  黒き獅子と白き舞姫(エトワール)の今宵の舞台。とくとご覧あれ。

028 独白
  眠れぬ夜に思うこと。
  道化は独り、呟き、嘯き、嘲笑う。恐れる事など何もないと。
  

029 相思相愛?
  男は誓う。愛しい人を守ってみせると。
  女は願う。愛しい人にもう一度会いたいと。
  龍は嗤う。まがい物の騎士を野に放ち。

030 勘違いは狂いに変わる
  生真面目な善意が信頼を生むとは限らない。
  時には、至極真っ当な怒りを生むことだってあるのだ。

378:名無しより愛をこめて
09/01/02 14:15:08 zWp+zFmT0
まったく我ながら速さが足りないぜ。
では、失礼しました。

379:名無しより愛をこめて
09/01/02 22:07:04 ktOHnYYIO
煽り文投下GJでした。
良い煽り文は書き手の琴線を震わせる。今年も楽しみにしています!
もう一度GJ!でした~

380: ◆i1BeVxv./w
09/01/04 04:38:55 5YnKEuvf0
煽り文GJです。
いい煽り文を書いていただけるように、いい作品を書きたいと思います。
それでは、只今より投下いたします。

381:不信なんてぶっ飛ばせ! ◆i1BeVxv./w
09/01/04 04:40:29 5YnKEuvf0
 ブクラテスは東へと向かって歩いていた。
 本当なら南に進みたかったのだが―
「やれやれ、禁止エリアとはなんとも厄介じゃのぉ」
 南に進んでも、自分の走力では周りの全てが禁止エリアに囲まれる方が早いだろう。
 それに放送の主がまだうろついていないとも限らない。
「今度こそ、いい輩が見つかるといいがのう」
 江成仙一、浅見竜也、素材こそ良かったものの、片や早々に重症を負い、片や下らない感傷に牙を失った。
 もしかすると、ブクラテスの眼鏡に適う参加者はこの場にはいないのかも知れない。
 だが、それならそれでいい。ようは生き残れさえすればいいのだ。
「わしはついとるわい。これさえあれば、逃げ続けることはたやすいからのう」
 ブクラテスの手に握られた首輪探知機。これがある限り、ブクラテスが不意討ちを受ける可能性は0に等しい。
「おっ、早速反応があったわ」
 首輪探知機の上部に丸い点がふたつ灯る。
 ふたつ、つまりは二人。組んでいるのなら、殺し合いに乗っている可能性は低そうだ。
「ふむ、それではどこか物陰に隠れて様子を窺うとするかの」
 ブクラテスは手頃な隠れ場所がないか、辺りを見回す。
「おおっ、あそこがいいわい」
 ブクラテスはいくつかある建物から、ブラインドが下がった建物に眼を付けた。
 あの隙間から覗けば、気付かれずに観察できることだろう。
「さて……ん!なんじゃと!!」
 再び、首輪探知機を眼にすれば、首輪探知機の上部に灯っていたふたつの点はいつの間にか、ブクラテスからわずかな距離にまで迫っていた。
「速すぎる!速すぎるぞ!」
 首輪探知機の範囲は半径2~3kmといったところだ。
 それだけの距離があればと、余裕を持って行動していたのだが、どうやら対象の速度は並々ならぬもののようだ。
「いかん!こりゃいかんぞ!!」
 ブクラテスは慌てて建物へと向かう。

382:不信なんてぶっ飛ばせ! ◆i1BeVxv./w
09/01/04 04:41:11 5YnKEuvf0
 幸いにして、目的の建物はすぐ近く。瞬く間に手がドアノブへと届いた。

―ガチャリ―

「な、なんじゃとぉーーー!」
 だが、その建物の鍵はガッチリと閉まっていた。
「………はっ!」
 呆けている場合ではない。直ぐに身を隠さないと。
「このままだと、見つか―」
 どうやらブクラテスが台詞を言い終わるより闖入者の行動の方が速かったようだ。
 建物のガラスに、今まで映ってなかった人影が映っていた。
「ぬっ、ぐっ」
 ブクラテスはゆっくりと振り向く。
 そこには黄色のスーツを着た小柄な闖入者の姿があった。
(ぬぅう、なんとかこいつを懐柔してみるか。いや……)
 闖入者の肩には身ぐるみを剥いだ男が担がれている。どうやら反応があった二つの内の一つはこの男のようだ。
 状況から察するに、明らかにこの人物は殺し合いに乗っている。
(考えろ、考えるのじゃ)
 ブクラテスは生き残るため、必死に頭を回転させた。 



 がらんどうとなった室内を竜也はぼんやり見つめていた。
 殺し合いに連れてこられた時はどうなるかと思ったが、菜月と会い、スモーキーと会い、シグナルマンと、メレと、ブクラテスと会った。
 みんな、それぞれ癖は強かったが、殺意をもった人物はいなかった。
 それは幸運なことだったのだろうが、そのことで逆に気が緩んでいたのかもしれない。
 誰の何の力にもなれず、みんな竜也の元を去って行った。
 ひとりになった自分はいったいこれからどうするべきなのだろうか?
 目的はある。まずは放送の主からの人質の救出。そして、最終的にはシオンたちと合流し、ここから脱出する。
 だが、具体的な方法が何かあるわけでもない。しかも、仲間のドモンは殺し合いに乗ったという。

383:不信なんてぶっ飛ばせ! ◆i1BeVxv./w
09/01/04 04:41:45 5YnKEuvf0
(一体、どうすればいいんだ。ユウリ、アヤセ、ドモン、シオン、みんな教えてくれ)
 悩み苦しむ竜也。
 その時、竜也の耳に何者かの足音が届いた。
(ブクラテスさん?いや、彼が戻ってくるわけない)
 ならば一体誰なのか。 
 竜也がいる場所は病院。ここに向かっているということは目的は治療と考えるのが妥当だ。
 そして、足音はひとつ。 
(ということは怪我をしたのは当人か)
「っ」
 いつの間にか竜也は拳を握り締めていた。
 それは無意識の行動だった。竜也は殺し合いに乗ったわけではない。相手が敵だと決まったわけでもない。
 だが、竜也は何故かそうせずにはいられなかった。
 やがて、病医の扉が開く。

―ガチャ―

「……ブクラテスさん?」
「なんじゃ竜也、起きたのか」
 そこに立っていたのは、去ったはずのブクラテスだった。
「ブクラテスさん、一体どこに行ってたんですか!俺、てっきり……」
「てっきり、なんじゃ。ワシはちょーっと偵察に出とっただけじゃぞ。
 お前のディパックを持っていったのだって、ついでに中身を確認しようと思ってのことじゃ。
 ワシの占いに間違いはないとはいえ、もしもということもあるからのぉ」
 素知らぬ顔で、さも自分が竜也のことを思って、行動していたかのように言葉を紡ぐブクラテス。
「………」
 今までの竜也だったら、信じたかもしれないが、一度、不信感を持った竜也にはその言動が胡散臭く思えた。
「微妙な顔しとるのぉ。おっと、それよりじゃ。来てくれ竜也、お嬢ちゃんが帰ってきおったわい」
「菜月ちゃんが!?」
「そうじゃ、お土産を抱えての」

384:不信なんてぶっ飛ばせ! ◆i1BeVxv./w
09/01/04 04:42:24 5YnKEuvf0
 そんな台詞を吐いたブクラテスは、どことなく疲れた風に見えた。



(こりゃ、まずい、まずいぞぉ)
 ブクラテスは竜也を案内する道すがら、必死に頭を回転させていた。
 現れた人物がボウケンイエローに変身した菜月だったのはいい。
 菜月が戦力として計算できるというのはうれしい誤算だ。
 しかし、菜月が連れて来た人物がまずい。
(まさか、センを連れてくるとは。今は意識を失っとるようじゃが、ワシがセンを見捨てたことが知られたら、面倒なことになりかねん。
 とりあえずこいつらと別れるまで、誤魔化すしかないの)
 センには人を呼んでくると言って、その場を離れた。
 それが建前である以上、ブクラテスには誤魔化すか、逃げるかしか道はなかった。



「菜月ちゃん!」
「竜也さん」
 病院から、1分程度走ったところに、菜月の姿はあった。
 竜也は急ぎ駆け寄り、菜月の容姿を確認する。見たところ、菜月に外傷は見られない。
 竜也はほっと胸を撫で下ろした。
「よかった、無事だったんだね」
「うん。心配かけてごめんなさい」
 菜月はぺこりと頭を下げる。
「いや、菜月ちゃんが無事ならそれでいいよ。でも、シグナルマンとスモーキーが」
「うん、おじいちゃんに聞いた。菜月を探しに北西に行っちゃったって」
「……菜月ちゃんは北東に行ってたの?」
「うん、そうだよ」
(ブクラテスさんの占いは当たっていたってことか)
 竜也は今までは気休めと、特に気にしていなかったが、占いはそんなに当たるものなのだろうか。

385:不信なんてぶっ飛ばせ! ◇i1BeVxv./w 氏の代理投下
09/01/04 09:05:19 r20URCwW0
 勿論、宇宙人であるブクラテスには地球の常識をあてはめるのはナンセンスなのかも知れないが。 
「竜也さん?」
「あっ、ごめん。で、その人は」
 竜也は菜月の傍らで倒れ伏す、男に視線を移した。
 パッと見、下着姿のその男は変質者に見えるが―
「変態さんだよ」
 ―そのものだった。
「変態?」
「うん、息を荒くして、菜月の足を掴んだの」
「………………菜月ちゃん、それは」
 そんな奴を連れてくるのはどうなんだと、思わずツッコミを入れようとする竜也。
 だが、菜月の次の言葉に、そのツッコミは飲み込まれる。
「で、話を聞いてくれって。理央さんっていう人に伝えてくれって。そう言って、気を失っちゃったの」
「理…央……」
 竜也には聞き覚えがある名前だった。
 
―理央様を見つけて、私の元に連れてきなさい。―

 メレが竜也を踏みつけながら紡いだ言葉だ。
(この人もひょっとして、理央の関係者か?)
 よく見れば、倒れ伏す男の身体は傷だらけだ。
 息が荒かったのも、下着姿なのも、よくよく考えれば、戦いの結果なのではないか。
「とりあえず、病院まで運ぼう」
 竜也は徐に男に近づくと、担ぎあげる。
 その長身に相応しく、ずっしりと肩に重みが圧し掛かってくる。
「重い。菜月ちゃん、よくここまで運んでこれたね」
「うん、菜月じゃ運べなかったから、ボウケンイエローに変身して、運んで来たんだ。でも、突然変身が解けちゃったの」
「へぇ、菜月ちゃんも変身できるんだ」
 そういえば、お互いの戦力の確認はまるでしていなかったことに思い当たる。
 殺し合いが行われている以上、身を守る術の確認ぐらいはしておくべきなのに。


386:不信なんてぶっ飛ばせ! ◇i1BeVxv./w 氏の代理投下
09/01/04 09:06:15 r20URCwW0
(病院に着いたら、確認しよう。それにしてもイエローか。本当にドモンは……)
 またも仲間の安否に思いを馳せ、呆ける竜也。
 そんな竜也を横目に、ブクラテスは気が気ではない。
(何とか、何とかせんと。………………………まずはこいつがどうするつもりか確認せんと始まらんか)
「のぉ、竜也、どうするつもりじゃ?センはまだ起きないみたいじゃが、起きるまで待つか?」 
「そうですね………!」
 竜也は眼を見開き、ブクラテスを見た。
「な、なんじゃ?」
「……ブクラテスさん、なんでこの人の名前知っているんですか?センって、この人のことですよね」
「うぐごが!」
(しもうた。うっかりセンの名前を。ど、どうする。なにかいい言い訳は……)
 立て続けの予想外の事態に、ブクラテスはかつてないほど動揺し、混乱する。
 竜也もセンが名前だと確証があったわけではなかったが、ブクラテスの反応に、自分のカマ掛けが間違ってなかったことを悟る。
「もしかして、この人がブクラテスさんの言っていた右腕を切り落とした元仲間ですか」
(おおっ、なんというグッドアイディアじゃ、竜也。その手があったか)
 続けてのカマ掛けはブクラテスに有利に働いた。この場を打開するアイディアと、ブクラテスは竜也の提案に肯こうとする。
「そ……」
「違いますよ」
 ブクラテスの言葉を遮り、竜也でも、菜月でもない声がした。
「あっ、気がついたんだ」
「はい、まだクラクラしますけど、たぶん、もう大丈夫です」
 それは苦しげながらも、どことなく柔和な笑みを浮かべるセンだった。
 一般人なら、丸一日は眠っているはずなのだが、流石はセンといったところだろう。
「竜也さん、でしたっけ」
「はい」
「自己紹介とかしたいところだけど、それは道すがら、今は一刻を争います。北東に向かいましょう」
「そ、それは大変じゃ、ワシは行くべきだと思うぞ」
 有耶無耶にするチャンスと、ブクラテスは詳細も聞かず、センに同意する。
「でも、人質を取っている奴がいるみたいなんです」 
 メガブルーを誘い出すために人質を取った男が南にいることを、竜也は話す。

387:不信なんてぶっ飛ばせ! ◇i1BeVxv./w 氏の代理投下
09/01/04 09:07:03 r20URCwW0
「竜也、よくよく考えてみるのじゃ。あれから4時間近く経っている。奴は猶予は3時間と言っていたはずじゃ。
 もう手遅れ―いや、いかにも好戦的そうな男だったのいうのに何の連絡もないということは、誰かが救出に動いたのかも知れんな。
 とにかく、ここはセンと一緒に行くべきじゃ」
「……わかりました。俺も理央という人は気になりますし」
 竜也はブクラテスに文句はあったが、言っていることは正論だ。やむなく、ブクラテスの言葉に同意する。
 (よし)
 竜也を納得させたことにほっと胸を撫で下ろす。
 ただし―
「でも、ブクラテスさん、あとで聞かせてもらいますよ、センさんを知っていたわけ」
「ぬごぉ」
 有耶無耶にはできていなかった。



「つまり、センさんと理央さんを助けた何者かが、センさんを眠らせて、服を奪っていったと」
「迂闊だったよ。俺も聞かれるままに色々答えちゃったからね。助けられたからって、油断したのがまずかった。
 俺を殺さなかったってことは、そいつは殺し合いとは別の目的があるんだと思う。
 そして、そいつの目的には理央さんが絡んでいる」
 竜也はセンと共に理央を探すため、北東へと向かっていた。
 道すがら、センから今までの経緯と、理央を探す目的を聞く。
「たぶん、俺の服を奪ったことと、質問の内容を考えると、俺に変装して、理央さんを騙そうとしてるんだと思う」
「変装って、菜月の顔が、竜也さんになっちゃうってこと」
「そういうことになるかな」
 菜月の質問に柔和な笑みを浮かべるセン。
 これで下着姿だったらまた変質者だが、一刻を争うといってもそこは改善を行った。
 今のセンは銀色のスーツを身に纏っていた。
 メレのディパックの中にあった支給品。ネジシルバーのスーツだ。
 ネジシルバーが何者かというのを、竜也たちは知る由もないが、服を奪われたセンにとって、渡りに船だった。
「とにかく急ごう。俺は理央さんをメレさんに会わせたい」
 未だ竜也の胸の内には不信と迷いが渦巻いていた。


388:不信なんてぶっ飛ばせ! ◇i1BeVxv./w 氏の代理投下
09/01/04 09:07:37 r20URCwW0
 だが、自分の迷いを断ち切るために、誰かの力になってやりたいと思っていた。
「しかし、年寄りには堪えるわい」
 速度的な理由から竜也の背におぶさるブクラテス。
「ブクラテスさんには占いで理央さんの行方を捜してもらいますんで、少し我慢しててください」
 ブクラテスがセンと共に行動していたことは聞いた。
 ブクラテスが竜也たちにその事を一言も言わなかったということは、センを見捨てたことと同義だ。
 竜也は流石にブクラテスに怒りを覚えたが、センは刑事である自分は覚悟ができており、自分のことを伏せたブクラテスの判断は必ずしも間違っていないと、ブクラテスを庇った。 
 そう言われたら、竜也も何も言えない。 
(しかし、刑事さんか。宇宙警察地球署って、言ってたけど)
 竜也には聞き覚えのない単語だったが、警察というだけでなぜだか安心感が生まれてしまうのは日本人だからだろうか。
 だが、揺れ動く竜也にはそんなささいなことでも行動するエネルギー源となった。
「今度こそ、俺は……」
「竜也くん、何か言ったかい?」
「いえ、急ぎましょう」
 竜也は走る。自分の思いを固めるために。
 傍らでは黄色と緑色の戦士が共に歩んでいた。




389:不信なんてぶっ飛ばせ! ◇i1BeVxv./w 氏の代理投下
09/01/04 09:08:28 r20URCwW0
【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:D-6 都市 1日目 午前
[状態]:健康。
[装備]:Vコマンダー
[道具]:基本支給品(メレ)
[思考]
基本行動方針:どちらを選べばいいのかわからない(全員の蘇生ために乗るor誰も殺さない)
第一行動方針:センの力になる。
第二行動方針:ドモン、ブクラテスに不信。
第三行動方針:仲間を探し、ユウリとアヤセの安否を確認する
第四行動方針:菜月の仲間と理央を探す
備考
・クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。
・メレの支給品はネジシルバースーツとネジブレイザー(仮称)でした。

【名前】江成仙一@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:Episode.12後
[現在地]:D-6 都市 1日目 午前
[状態]:ネジシルバースーツを装着(メット未装着)。左肘複雑骨折、全身打撲(応急処置済)。
[装備]:ネジシルバースーツ。ネジブレイザー(仮称)。SPライセンス
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:仲間たちと合流して脱出。
第一行動方針:理央に注意を喚起する。
備考
・制限が2時間であることを知っています。
・SPDの制服はシュリケンジャーに奪われました。
・ネジシルバースーツは多少丈夫なだけで特殊な効果はありません。ただし、制限時間もありません。


390:不信なんてぶっ飛ばせ! ◇i1BeVxv./w 氏の代理投下
09/01/04 09:09:05 r20URCwW0
【名前】間宮菜月@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task14後
[現在地]:D-6 都市 1日目 午前
[状態]:健康。1時間30分変身不能。
[装備]:アクセルラー、スコープショット、
[道具]:未確認、竜也のペットボトル1本
[思考]
基本行動方針:仲間たちを探す
第一行動方針:センと竜也のサポート。
第二行動方針:真墨の遺体を捜す。

【名前】ブクラテス@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第12章(サンバッシュ敗北)後
[現在地]:D-6 都市 1日目 午前
[状態]:右腕切断 簡単な応急処置、消毒済み
[装備]:めがね
[道具]:首輪探知機、毒薬(効能?)、タロットカード@鳥人戦隊ジェットマン、切断された右腕、基本支給品とディパック
[思考]
基本行動方針:とにかく生き残る。
第一行動方針:新たな仲間を捜す。
第二行動方針:首輪探知機のことは伏せて置く。
備考
・センと同じ着衣の者は利用できると考えています。


391:不信なんてぶっ飛ばせ! ◇i1BeVxv./w 氏の代理投下
09/01/04 09:10:03 r20URCwW0


393 : ◆i1BeVxv./w:2009/01/04(日) 05:34:24
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点、指摘事項、ご感想などがありましたら、よろしくお願いします。
なお、ネジブレイザー(仮称)の件ですが、ネジシルバーの剣では、文章にしづらく、
何より味気ないかなと思って付けたもので、劇中では特に名称は付けられていません。
不都合があれば、そこは修正したいと思っております。

2008年内に投下できればと考えてましたが、年の瀬はなんだかんだとありました。。。


___________________________________________


以上代理投下終了。

392:不信なんてぶっ飛ばせ! ◇i1BeVxv./w 氏の代理投下
09/01/04 09:22:48 r20URCwW0
あけまして投下乙です!
菜月との再会にはドキドキしました。
菜月、センと共に歩き出した竜也。いよいよ始動開始ですね!
なにげに立場が危うくなってきたブクラテスも面白かったです。
新年からGJでした!

ネジブレイザーに関して……
その呼び方、とても良いと思います。

しかし祐作さんは本当にお手製品の好きなお方だw


393:名無しより愛をこめて
09/01/04 16:34:06 ounR0vhS0
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

投下&代理投下GJです!!
ブクラテスピーンチ!!かと思ったら、センさんがお人好しだったおかげでなんとか
当面の危機は乗り越えた模様。ジト目で竜也に睨まれてるのが目に浮かぶようですがw
ガンバレ竜也!仲間への不信をぶっとばせ!
センさんと竜也という何気に実力者の二人が揃いましたが、精神面、肉体面が本調子じゃないなか
どんな活躍を見せてくれるのか楽しみです。
新年早々から読めるとは幸せでした。面白かったです!GJ!!




394: ◆LwcaJhJVmo
09/01/07 15:45:34 1PhXHE0T0
これより、
クエスター・ガイ、ネジブルーを投下します。

395:ねじれた斧の惨劇 ◆LwcaJhJVmo
09/01/07 15:47:00 1PhXHE0T0
「ったくあのアマ!!」
 ガイは壁に向かってグレイブラスターをぶん投げた。それだけでは足らないらしく、今度は拳で壁を殴った。
 そして、そのまま壁にもたれかかって崩れ落ちる。
「ふざけんじゃねぇぞ……ボウケンピンクゥゥゥゥゥゥッ!!」
 あの時のボウケンピンクの無様な醜態……思い出すだせばストレスが溜まる一方だった。
 ボウケンジャーの中でも特に冷静に状況を判断できるボウケンピンクがあの様だ。青や黄色はもっと醜い姿を披露しているかもしれない。そんな姿を見れば、ボウケンピンクの姿と重なり、余計にイライラするだけだろう。
「だが高丘ァ……テメェなら……」
 ガイは標的として最も適切な人物の名を呟くと、グレイブラスターを拾い上げ、強く握った。

──

 ネジブルーはメガブルー─並樹瞬を求めて歩き続ける。
 だが彼の勘とは裏腹に、その付近にメガブルーはいない。禁止エリアという厄介なシステムの向こう側に、彼はいるのだ。
「いい加減出てきてくれよ、メガブルゥゥゥゥゥゥゥ!! 何か面白い作戦でもあるのかい? ヒャッハハハハハ!!!」
 人間の姿になっても、彼の考える事は今までと同じだ。メガブルーを殺す。
「ネジシルバーでもいいよぉぉぉ!! 俺も面白い作戦を考えたんだ!!」
 そのまま、彼は気が狂ったように笑い続けた。

──

396:ねじれた斧の惨劇 ◆LwcaJhJVmo
09/01/07 15:47:35 1PhXHE0T0
 ガイが叫びの塔を目指しながら、ついでに高丘を捜そうとしていたときに、近くからおかしな笑い声が聞こえてきた。
「ヒャッハハハハハ!!!」
 ボウケンピンクもある意味、そうだと言えるのだが、このバトルロワイアルというものは人を狂わせる何かがあるのだろうか。
ガイは高校生ほどの人間が五月蝿く地面を叩いている姿を見て地面につばを吐いた。
「クソガキィ!! うるせェんだよ!!」
 ストレス解消の意味も踏まえて、腹の底から大きな声でネジブルーに向かって怒声を浴びせた。ネジブルーもすぐにガイに気付く。ネジブルーは自分の快楽の一時を邪魔されたことで、玩具を取り上げられた赤子のように不機嫌な表情をする。
「なんだいお前は? 俺の楽しい時間を邪魔しようというのかい!?」
「おうよぉ! テメェみてぇにうるせぇガキはとっとと眠ってもらわねえとな!」
 ガイはグレイブラスターでネジブルーを狙撃した。弾丸が何発もネジブルーから少し離れたところに向かって放たれた。
「どこを狙ってるんだい? どうやらその身体のキズが邪魔してるようだね」
 ネジブルーは人間の擬態を解いて青いねじれたマスクの姿に変身した。
「なんだよ……バケモン仲間かよ」
 グレイブラスターをやけくそで撃ってみるが、命中する気配はなかった。距離が遠すぎるのだ。本当にただの高校生ならばこんなことにはならないのに……。ガイは自分の運命を呪った。
「まずはその傷口をズタズタに引き裂いてやるよ……!!」
 ネジブルーはネジトマホークをがっしりと握り、ガイの下へ走り出した。
 そして、ネジトマホークをガイに振り下ろそうと、その刃先を天に向けた。
「おい!! 待て待て。お前なんとかブルーを捜してたまさか放送の野郎か!!?」
 ネジブルーの手が、ガイの肩の寸前で止まった。
「知っているのかい!?」
「知らねえけどよ……オテツダイでもしようと思ってよ」
「お手伝い?」
「迷子の子猫ちゃんを一緒に捜してやろうと思ってよぉ─」
 ネジブルーの手がその真下に動いた。ガイの左肩を強烈な斧の一撃が襲った。


397:ねじれた斧の惨劇 ◆LwcaJhJVmo
09/01/07 15:48:06 1PhXHE0T0
「いてェェェェェェェェェェ!!!」
 左肩を押さえて膝をつき、断末魔が響いた。
「てぇん……めぇ……」
「そんな体の仲間なんて足手まとい。人質にする価値もなさそうだしね」
「こんの……やろう……!!」
 上目遣いになったガイに、ネジトマホークの強烈な一撃が近づいていく。
 だが、ガイはそれを右手のグレイブラスターで撃ち落した。
「痛ッ!! ……よくも俺の手に傷を……!!」
 ネジブルーは、グレイブラスターが握られているガイの右手に踵落としした。痛みに耐え切れず、その手はグレイブラスターを離してしまう。
「これでお前に武器はなくなったねぇ……お返しだよ」
 ネジブルーは再びネジトマホークを手に取ると、ガイの頭を割るように打撃を食らわした。意識なんて簡単に吹っ飛んでしまうくらいの痛みだ。
 そして、その体中の装甲にネジトマホークの刃を落としていく。─そんな猟奇的な殺し方が、彼にとって快感なのだ。
「さて、お前は誰かなぁ?」
 ネジブルーは手持ちの詳細付名簿を開いた。
「クエスター・ガイ……ずいぶんと強そうな名前じゃないか。でもまさかこんなに弱いとはねぇ……思わず笑っちゃうよ!!」
 ネジブルーは、反論することができなくなったガイを一度、軽蔑したような目で見ると、そのページを切り離し、紙くずのようにその辺りに捨てた。
「さて……お前は何かいいものを持っているのかな……?」
 そして、ネジブルーは彼の持ち物を漁りだす。
「たくさん持っているじゃないか!! こんなやつによく手に入ったねぇ……ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
 ネジブルーは彼の支給品全てを自分の持ち物にして、メガブルーとネジブルー─二つの標的を捜しに歩き出した。
 その顔は、再び邪悪な偽りの人間の姿へと変化していた。

【クエスター・ガイ@轟轟戦隊ボウケンジャー 死亡】
残り29人



398:ねじれた斧の惨劇 ◆LwcaJhJVmo
09/01/07 15:51:37 1PhXHE0T0
【名前】ネジブルー@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:41話(ネジビザールとして敗れた後)
[現在地]:H-5海岸 1日目 午前
[状態]:全身に打撲、傷有り。人間に擬態中。その間のスペックは能力を発揮しない限り、人間と変わりありません。二時間戦闘不可。
[装備]:ネジトマホーク@電磁戦隊メガレンジャー、クロノチェンジャー@未来戦隊タイムレンジャー、グレイブラスター@轟轟戦隊ボウケンジャー
[道具]:ソニックメガホン@忍風戦隊ハリケンジャー、闇のヤイバの忍者刀@轟轟戦隊ボウケンジャー、支給品一式×3、支給品一式(ペットボトル1/2本消費)、竜也の支給品一式(ペットボトル2本消費)
詳細付名簿、スフィンクスの首輪、拡声器、クエイクハンマー@忍風戦隊ハリケンジャー、天空の花@魔法戦隊マジレンジャー、マージフォン@魔法戦隊マジレンジャー、操獣刀@獣拳戦隊ゲキレンジャー、
何かの鍵、麗の支給品一式、魔人マグダスの杖@星獣戦隊ギンガマン、3枚のメモ(杖の説明書、アイテムの隠し場所×2)
[思考]
基本行動方針:メガブルーを殺す。
第一行動方針:メガブルーを苦しめるためにネジシルバー(早川裕作)を殺す。
※ズバーンとマシンハスキーはF-5都市に放置しています。

──

以上、投下終了します。
指摘、感想、修正点などお願いします。

399: ◆LwcaJhJVmo
09/01/07 18:56:15 1PhXHE0T0
状態表にミスがありました。申し訳ありません。

【名前】ネジブルー@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:41話(ネジビザールとして敗れた後)
[現在地]:H-7海岸 1日目 昼
[状態]:全身に打撲、傷有り。人間に擬態中。その間のスペックは能力を発揮しない限り、人間と変わりありません。二時間戦闘不可。
[装備]:ネジトマホーク@電磁戦隊メガレンジャー、クロノチェンジャー@未来戦隊タイムレンジャー、グレイブラスター@轟轟戦隊ボウケンジャー
[道具]:ソニックメガホン@忍風戦隊ハリケンジャー、闇のヤイバの忍者刀@轟轟戦隊ボウケンジャー、支給品一式×3、支給品一式(ペットボトル1/2本消費)、竜也の支給品一式(ペットボトル2本消費)
詳細付名簿、スフィンクスの首輪、拡声器、クエイクハンマー@忍風戦隊ハリケンジャー、天空の花@魔法戦隊マジレンジャー、マージフォン@魔法戦隊マジレンジャー、操獣刀@獣拳戦隊ゲキレンジャー、
何かの鍵、麗の支給品一式、魔人マグダスの杖@星獣戦隊ギンガマン、3枚のメモ(杖の説明書、アイテムの隠し場所×2)
[思考]
基本行動方針:メガブルーを殺す。
第一行動方針:メガブルーを苦しめるためにネジシルバー(早川裕作)を殺す。
※ズバーンとマシンハスキーはF-5都市に放置しています。

400:名無しより愛をこめて
09/01/07 20:24:30 9QFjuPxc0
拝読いたしました。

正直に申しますと、ガイの行動に違和感を感じました。
ガイは自分が今まともに戦える状況では無い事を、今までの戦いの中で自覚しています。
そんな状態で、いくら苛立っているとはいえ、わざわざ戦いを挑むでしょうか?
ご回答をお願いします。

以降は避難所の議論スレでお願いします。
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

401:『キラリ☆宝物』 ◆MGy4jd.pxY
09/01/08 19:27:40 t8eDOkfD0
シグナルマン投下します。


402:『キラリ☆宝物』 ◆MGy4jd.pxY
09/01/08 19:28:19 t8eDOkfD0
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」

シグナルマン・ポリス・コバーンは絶叫を放った。
全身に嵌め込まれた信号機を燃えたぎる血潮のように赤く光らせ、己の足を完全に制止させる為に。

「本官は、本官!!!!????……がっ!!!!」
――――ドガッ!!

シグナルマンの声は激突音に掻き消された。
全速力で駆けたスピードと、群立した木々に警戒を怠った報い。
頭から大木に激突したシグナルマンは脳天を押さえその場に蹲った。

「前、前、前、前!前、前、前、前!!しっかり前見て走れよテメー!!いきニャり木に頭突きってどうなってんだ!?」
激突の衝撃で地に転がった魔法猫ことスモーキーがガラの悪い野次を飛ばす。
「な~~、何でもない!」
平静を装おうとしたが意志とは裏腹に、変に気の抜けたような裏返った声が出た。
「ニャんでもない訳ないだろ!!おい、ニャんだこりゃ。木が倒れてるじゃねぇか?!」
スモーキーのツッコミは至極当然。
哀れな森の木は、破砕機の如きシグナルマンの石頭と激突の末、僅かな根本だけを残し無惨にも薙ぎ倒されていた。

「細かいことは気にするんじゃない!ちょっと地図を確かめるために立ち止まっただけなのだ!」
「ア゛~~~~!?立ち止まっただぁ?」
不躾な視線を投げつけてくるスモーキーはガン無視。
シグナルマンはおもむろにデイバックから地図を取り出し現在地を『探るフリ』に没頭する。
探るフリ、あまりにも不自然な言い訳。
スモーキーにも脳天の痛みにも、秩序無き森林伐採にも、すべてに構うことなくシグナルマンはなぜそんな真似を始めたのか。

403:『キラリ☆宝物』 ◆MGy4jd.pxY
09/01/08 19:28:51 t8eDOkfD0
菜月と合流を果たすべく、何とか北東を目指したシグナルマンがなぜこのような行動をとったか。
それは……。

(ほ、本官としたことが!!B―5エリアからさらに北東へ進んでしまったら、菜月ちゃんに合流出来るはずが無いではないかッ!)

そう、菜月はブクラテスたちと共に居た所から北東にいるはずなのだ。
そこからスモーキーの出鱈目な指示で辿りついたのがB―5エリア。
最初の地点からかなり森を北へ進んでしまったうえ、さらにその位置から北東に進んでは、菜月と合流どころかどんどん離れてしまうことになる。

(と……とにかく、もう一度引き返えさなければ!!!)

冷静に考えればそのまま南下すれば良いだけなのだが。
シグナルマンは混乱していた上に、元々彼は何と言うか、まあ、その……。

その点に関しましては、自称『優秀なる警察官』であるシグナルマンが、チーキュなどというへんぴな地へ左遷……。
もとい、御栄転した経緯を考えてもらえばご理解頂けるかと。

おや、賢明な魔法猫スモーキーが彼の優秀さを察知したのかスッと目を細め尊敬の眼差しを向け……。
否、向けるはずが無い。

「おまえ、迷ったニャ……」
「ははははははは!!!!心配するな!本官が必ず菜月ちゃんを捜し出してみせる!」

スモーキーの言葉を遮り、ランプごとデイバックに詰め込みながら、シグナルマンは高らかに笑い、猛烈な勢いで森を引き返した。




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