08/11/10 10:48:54 4EPfqI6D0
「スワン…! ウメコ…!!」
その二人の名を喉の奥から搾り出す。
守れなかった。大切な女性(ひと)を。掛け替えのない部下を。
もう二度と戻らない笑顔を想った。
もう二度と聞けない声を必死に思い止めようともがいた。
傍らのシオンと恭介は掛ける言葉も見つからずに立ち尽くすドギーを見つめている。
たった数時間で最愛の女性と部下を失ってしまった彼に言えることなど、何もなかった。
「元気を出してくださ――…」
それでもシオンが声を上げたその瞬間。
「見るに耐えんな、ドギークルーガー…戦士の女々しい有様など無様以外の何者でもない…」
「お前…!」
我を失っていたドギーは不意に叩きつけられた侮蔑の言葉に現実への帰還を果たした。
低くくぐもった声の先に、グレイがいた。
ここを発つ前と比べ、やや傷ついた姿で。
「お前! 少しは気遣いってもんがねーのかよ!! この人は今なぁ!…あれ、さくらさんはどうしたんだ、姿が見えないけど??」
当然その傍らに存在するべき人物の不在に恭介は疑問を投げかけた。
「まさか…お前―! さくらさんを!!」
考え付く結論は唯一つ。恭介は激情に突き動かされるまま、アクセルチェンジャーを構える。
「慌てるな、阿呆が…シオン、無事で何よりだ」
今にも飛び掛らんとする恭介を尻目にグレイはシオンへと向き直る。
「グレイさん…何があったんです?」
シオンの目にも恭介ほどではないが、困惑の表情が浮かんでいる。
「…今からする話を信じる、信じないはお前達の勝手だ…もしも信じられないなら俺を倒すなり、なんなり好きにしろ……―」