スーパー戦隊 バトルロワイヤル Part3at SFX
スーパー戦隊 バトルロワイヤル Part3 - 暇つぶし2ch13:補足
08/10/14 10:45:06 KaHWIS180
>>2
したらば避難所に議論スレがありますので、ご意見のある方は下記でお願いいたします。

したらば避難所 議論スレ
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)



14:名無しより愛をこめて
08/10/16 05:40:26 iDWupKt0O
保守ッと参上!

15:仄暗い井戸の底から ◆MGy4jd.pxY
08/10/18 10:45:35 5z0AniO/0
遅くなりました。いつも申し訳ありません。
投下します。


16:仄暗い井戸の底から ◆MGy4jd.pxY
08/10/18 10:46:34 5z0AniO/0
『馬鹿ヤロー!』
そんな檄を飛ばされた事がある。まだ小さな子供の頃だった。
俺は古井戸の上に板を渡しただけの粗末な蓋の上を飛び跳ねて遊んでいた。
1,2,3,4……。心の中で数を数えながら、繰り返し繰り返し飛ぶだけの単調な遊び。
俺は厭きもせず一人蓋の上を飛んで遊ぶ。
後一回、もう一回。
後もう一回でやめるつもりだったのに、朽ちた木の蓋はそれを待ってはくれなかった。

乾いた音。
それが足場だった蓋が割れた音だと気付いた時。
転落はすでに始まっていた。
割れた木片と共に、俺の体は吸い込まれるように井戸の底へ落ちて行く。
落ちた底は、深く狭く真っ暗だった。
俺は遥か遠くに見える青い空を見つめながら、井戸の片隅で、怖くて心細くて、ただ誰かが助けてくれるのを待っていた。
助けに来てくれたのは『おまわりさん』
ロープを伸ばし必死に俺を励まし、助けの手を差し延べた。
だけど、怖くてどうしようもなくて。一人では登れない。井戸の底から這い上がれない。
「助けて!ここまで来て助けてよ!!」
泣きじゃくり井戸の中で混乱する俺に、おまわりさんが件の激をとばしたのだ。

あれ以来、おれは暗くて狭い場所が苦手になった。
だが、それと同時にこの体験は、俺が警察官を目指すきっかけとなった出来事でもあった。

地球署に配属となった俺の持論は『この世に解けない謎は無い』
仲間や上司に恵まれ、順調で充実した日々を送っていた。
そう、昨日までは……。
あの日、井戸へ落ちた時のように『転落』は突然やってきた。
それは俺だけにではなく俺の大切な人達にも。

昨日まで、白鳥スワンさんはとても優秀な警察官だった。

17:仄暗い井戸の底から ◆MGy4jd.pxY
08/10/18 10:47:16 5z0AniO/0
そのスワンさんが誤って罪を犯し、その罪を償うために、また罪を重ねようとする。
矛盾した思考。歪んでいく論理。
それは、人一倍強い責任感を持ち、誇り高き警察官として生きてきたスワンさんが、罪の意識から逃れるために作りだした出口の無い迷路。
スワンさんはその出口の無い迷路に足を踏み入れ、理央さんに刃を向けた。
しかしその刃は、理央さんを貫く事無く……。
いや、貫かなくて済んだのは、スワンさんが再び罪を重ねる事を、運命が拒んだのではないだろうか。
そしてそれは、何も出来ずにただ呆然と見ていた俺にとっても唯一の救いだった。
「一体何が起こったというのだ!」
すぐ側にいる理央さんの声がやけに遠く聞こえた。

何が起こったのか解らなかった。
網膜に焼き付いているのは、赤い閃光と、溶けるように消えたスワンさんが見せた虚ろな瞳。
いつもなら、目の前で人が消えた、そのトリックにすぐ思考を巡らせていただろう。
『この世に解けない謎は無い』それが俺の持論だからだ。
状況を整理しようと思い出す。するとスワンさんの虚ろな瞳だけが鮮明に浮かび上がる。
動悸が荒くなり、心拍数が上がる。
その虚ろな瞳を思い浮かべることを体が拒否しているように息苦しくなる。
何故だかとても怖かった。
生気を無くした亡者のような虚ろな瞳は、理性も冷静さもすべて失わせていくように思えた。
思い起こす度に、閉塞感と爪先から滲み上がるような恐怖が、俺を包んだ……。





気が付けば、デカグリーンの変身は解除され、俺は理央さんの横で小さな子供のように膝を抱えて座っていた。
呆然とする俺に比べ、理央さんは冷静だった。

18:名無しより愛をこめて
08/10/18 10:48:08 AdTIwgkIO



19:仄暗い井戸の底から ◆MGy4jd.pxY
08/10/18 10:48:13 5z0AniO/0
冷静というだけで彼が冷たい人ではないだろうという事は、憐れみを含んだ表情から伺えた。
ただ一点を見つめる理央さん。スワンさんの消えた場所を見つめているその眼には、悼む思いが込められているように思えた。
「スワンは、誰かに消されたのだろうな」
「……ええ、おそらく」
理央さんはただ頷いただけで、それ以上何も話そうとしなかった。
殺された。その言葉を使わないのは俺に対する気配りだろう。

俺は署長やウメコに目の前で起こった事を告げるときのことを思った。
どう伝えればいいのだろう。
どこから?何から?日頃業務としてこなしているはずの手順がまるで浮かばない。
それ以前に伝えようにも通信さえ出来ない。
ここで成すすべのない自分。
加えて、目の前で何も出来ずにいた事実。なんという大失態だったと、自責の念が胸を締め付けた。
他愛もなく、いとも簡単に、痕跡さえ残さず、スワンさんは消去された。
ある意味、本当に始めて実感した『デリート』だったように思う。

「スワンは、俺を狙っていた。スワンを消した者は、俺を守ろうとしたのか?」
安堵と失望。
二つの感情が入り混じった声を理央さんは発した。
答えようのない質問に、俺は同じ質問を重ねて返そうとした。が―

『皆さん―――』

ロンの声がそれを遮った。
時計は6時ジャストを指していた。





ブドーは勅命を受けているかのように、背筋を伸ばし正座したまま粛々と定時放送に聞き入っていた。

20:仄暗い井戸の底から ◆MGy4jd.pxY
08/10/18 10:49:28 5z0AniO/0
放送にて呼ばれた名は9名。
「思わぬところで手間が省けた……」
思うままの言葉がつい口から漏れる。
しかし、予想以上の人数。
ブドーは焦燥を覚えすぐさま立ち上がり、センと理央へ向かい歩を進める。
あの二人だけは何としてでも自らの手で屠ってやるのだ。他の誰にもそれだけは邪魔はさせぬ。
歩きながらブドーが思うは、怨敵と認めた二人。

先程の場所から動いていない二人を見付けるのは容易かった。
だが二人の様子は怨敵と称するには無様な様子だった。

ブドーは落胆とも侮蔑ともつかない溜め息を漏らした。
焦燥に駆られ戻ってきてみれば放送の内容に落胆したのか理央は肩を振るわせセンは幼子のように膝を抱えて座り込んでいる。
「腑抜けたか!」
悔やまれるならば、何故這い上がろうとしないのか。
散って行った者の痛みを己の痛みとし、立ち上がろうとしないのか。
その怒りにも似た激情がブドーにライフルを握らせた。
「今のセンは翼を無くした鳥も同然」
一度、怨敵と認めたセン。
他の者に殺されるのであれば……。





「そんな……。ウメコまで……」
さっきの夢。ウメコが言った『さよなら』あれが本当のことだったんだ。
俺は言い表しようのない脱力感に襲われその場に膝を抱えて座り込んだ。
そしてやはり消え去ったスワンさんも、死者として名を連ねていた。

21:仄暗い井戸の底から ◆MGy4jd.pxY
08/10/18 10:51:27 5z0AniO/0
「許せない」
抱え込んだ拳を強く握りしめながら漏れた声は……。その声は自分でも驚くほど枯れていた。
「許せない。そう言って仇をとれば、死んだ者を慰められるとでもいうのか?」
理央さんの言葉にハッと正気に戻る。
仇討ち?自分では気付かなかったが、そんな顔をしていたのだろうか。
俺を見据える理央さんの眼が険しくなる。

「そんなわけ、ないじゃないですか」
仇討ちという名目で殺し合いに乗るつもりはない。
俺は無理して昼行灯の顔を作った。
そして理央さんに向け、と言うよりも自分の中のスワンさんとウメコに向けて言葉を紡いだ。
「スワンさんは、 新装備の開発が自分なりの戦いだ、そう言っていました。
いつも俺たちのために睡眠時間を削って、オイルまみれになりながら、ピットの中で懸命に戦っていた。そんな人だった。
ウメコはね、いつもゲンキに笑ってて、情に脆くて……。でも結構繊細で傷つきやすい。そんな女の子だった」
ウメコの笑顔が浮かんだ。
センさんと呼ぶウメコの声が蘇った。

なぁ、ウメコ。ウメコは知らなかっただろうけど……。俺、ウメコが好きだったよ。
俺にとってもみんなにとっても、無くしてはならない大切な笑顔だった。

「俺は思う。なぜ 死ななければならなかったのか。
誰が殺したのか。どうして殺したのか、それを突き止めなきゃならない。
そいつを捜しだして、明るい太陽の下で、ジャッジメントを下してやらなきゃならないんですよ」

だから、俺は立ち上がらなければならないのだ。
そして突き止めなければならないのだ。
だが、どこを捜せばいいのだろう。

22:仄暗い井戸の底から ◆MGy4jd.pxY
08/10/18 10:56:27 5z0AniO/0
俺はよろよろと起き上がり、ふらつく足を踏みだした。

「……悪いが、俺は一緒には行けぬ。俺はメレを捜さなければならない」
その時、理央さんはただ愛する者を守りたい男の顔をしていた。
「その人が……。あなたの」
大切な人なんですね。
最後の言葉を口にしようとした俺を、理央さんが突き飛ばした。
何が起こったのか解らなかった。
銃声が聞こえたような気がする。
混乱する俺を庇うように、理央さんが俺の肩を掴む。
俺は仰向けに押し倒された。
そして、銃声が響き。
理央さんの胸から赤い血が飛び散った。
ゆっくりと倒れていく理央さんの身体。
野を駆ける獅子のたてがみのような褐色の髪が扇状に目の前を流れ、理央さんは俺の視界から消えた。
その間、俺は仰向けに倒れたまま身動き一つできなかった。


俺の目に、突き抜けるような青空が映っている。
でも、何故だろう?
木々の隙間から見える空が、あの日、井戸の底から見た青空と重なって見える。
息苦しさに顔を横に向けると、血の気を失った理央さんの青白い顔が見えた。


あぁ……。判った。

俺は今、あの暗闇の中に……。井戸の底に居るのだ、と。




23:仄暗い井戸の底から ◆MGy4jd.pxY
08/10/18 10:57:15 5z0AniO/0
【名前】江成仙一@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:Episode.12後
[現在地]:C-8森 1日目 早朝
[状態]:左肘複雑骨折、全身打撲(応急処置済)。1時間強変身不能。
[装備]:SPライセンス
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:仲間たちと合流して脱出。
第一行動方針:トラウマに捕らわれ混乱しています。
備考
・制限が2時間であることを知っています。
・スワンの装備は消滅の緋色により消滅しました。基本支給品はB-9のどこかに散らばって置き去りにされています。
 炎の騎馬はセンと理央が確認できる距離に置かれています。

【名前】理央@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:修行その47 幻気を解き放った瞬間
[現在地]:C-8森 1日目 朝
[状態]:左胸に銃創。肩から脇の下にかけて浅い切り傷。ロンへの怒り。
[装備]:自在剣・機刃
[道具]:支給品一式。
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗った相手には容赦しない。
第一行動方針:気絶中
第二行動方針:ナイとメアを探す(どちらかは死んだと思っています)。
第三行動方針:メレと合流する。
※大体の制限時間に気付きました。


24:仄暗い井戸の底から ◆MGy4jd.pxY
08/10/18 11:00:10 5z0AniO/0
【名前】剣将ブドー@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第24章(ギンガマンに敗れた)後
[現在地]:C-8森 1日目 朝
[状態]:胸と腹に中程度のダメージ。肩に銃弾による傷。1時間強戦闘不能。
[装備]:ゲキセイバー@獣拳戦隊ゲキレンジャー、一つ目のライフル銃@魔法戦隊マジレンジャー、手裏剣少々@星獣戦隊ギンガマン
[道具]:筆と短冊。サイコマッシュ@特捜戦隊デカレンジャー。予備弾装(銃弾5発、催涙弾5発)。支給品一式(ブドー&バンキュリア)。真墨の首輪。
[思考]
基本方針:戦い、勝利する。
第一行動方針:他者に殺されるぐらいならば、この場でセンを殺す。
第二行動方針:リオを倒せるほどに強くなる。
第三行動方針:優勝を目指す。
※首輪の制限に気が付きました。






25:仄暗い井戸の底から ◆MGy4jd.pxY
08/10/18 11:02:34 5z0AniO/0
以上、指摘、矛盾、問題点、感想などよろしくお願いします。
そして投下が遅れた事をお許しください。



26:仄暗い井戸の底から ◆MGy4jd.pxY
08/10/18 11:34:29 5z0AniO/0
orz
訂正します。

>>20
放送にて呼ばれた名は9名。

放送にて呼ばれた名は8名。

重ね重ね申し訳ありませんでした。

27:仄暗い井戸の底から ◆MGy4jd.pxY
08/10/18 11:46:48 5z0AniO/0
そしてブドーの状態表の制限のところ1時間強戦闘不能。を削除し忘れておりました。


28:仄暗い井戸の底から ◆MGy4jd.pxY
08/10/18 12:15:03 5z0AniO/0
上記の訂正箇所、その他誤字を訂正し、したらば借投下スレ>>282>>285へ再投下しました。
よろしくお願い致します。

29:名無しより愛をこめて
08/10/18 16:06:37 TT3EH6z4O
せ、切ない……
スワンさん、そしてウメコを思うセンさんに涙しました。
果たしてこの暗い底からセンさんを引き上げてくれるお巡りさんは現れるのか?
はたまたこのまま落ちてしまうのか?
撃たれてしまったリオはどうなるのか?
次の展開が楽しみになりました。GJ!です。

30:名無しより愛をこめて
08/10/20 01:10:35 B6Yy2FEl0
遅ればせながらGJ!
様々な悲しみと絶望を一気に背負ったセンちゃん。
そして、リオと合流して動くかと思いきや、襲い掛かるブドーの銃弾と、まさに仄暗い井戸の底状態。
そこから這い上げれるのか、それとも沈められてしまうのか。
センちゃんの心理描写が加わって、より次回が気になる作品でした。

31:名無しより愛をこめて
08/10/20 03:09:15 0SeGBA0HO
感想ありがとうございました。

まとめ更新お疲れ様でした。
いつもお世話になります。

32:名無しより愛をこめて
08/10/23 19:44:46 IFWghG2xO



33: ◆i1BeVxv./w
08/10/23 22:42:30 FJuo6tIq0
ただいまより投下いたします。

34:ワシの占いは当たる ◆i1BeVxv./w
08/10/23 22:43:40 FJuo6tIq0
「っーーーーーーーーーーー、戻って来ないニャーーーー!」
 イライラが頂点に達し、スモーキーは怒声を上げた。
 菜月がスモーキーたちの元を離れ、数十分。
 すぐに戻ってくると言うブクラテスの言葉に従い、今まで待っていたが、もう限界だった。
 ただでさえ、スモーキーは知り合いの多くをこの6時間で亡くしている。
「もう我慢できニャイ。早く菜月を探しに行くニャー!」
 スモーキーの呼びかけに竜也とシグナルマンは頷き、踵を返した。
「待たんか!」
 ところがひとり、彼らの行動に納得していない男がいた。ブクラテスだ。
「お主たち、当面の目的は病院を探すことじゃ、菜月を探すことではないぞ!」
「そうは言っても―」
「どの道、こんなに時間が経てば、そう簡単には見つからんわい。それにワシらから離れていったのはあの嬢ちゃんの判断じゃ。
 ワシらがとやかく言う問題でもないわ。ほっとくがよい」
 ブクラテスの言葉は理屈の上では正論。竜也もシグナルマンも、反論の言葉を失ってしまう。
「ふざけるニャーーー!」
 だが、理屈で説き伏せられるほど、今のスモーキーの心中は穏やかではなかった。
「ここで何人死んでると思ってるニャー!今すぐ探しに行かないと、手遅れになるかも知れニャいのに、そんな理由で探しに行かないニャンて馬鹿げてるニャ!」
「ふん!馬鹿げてるじゃと?馬鹿げてるのはお主の方じゃ。あの嬢ちゃんの思惑によってはワシら全員が危険に晒されることにだって、ありうるのじゃぞ?」
「っ!菜月が何か企んでいるとでも言うのかニャ!!」
 今にもブクラテスに襲い掛からんとするスモーキー。スモーキーをシグナルマンが止め、竜也がブクラテスを宥める。
 だが、一向に二人の口喧嘩は終わろうとしない。
 論理的に攻めるブクラテスに対し、スモーキーは感情の赴くまま言葉を紡いでいる。
 これでは結論など出るはずがない。
 こんなとき、仲間であるユウリがいればと、竜也はふと思った。
 統率力と決断力に優れた彼女なら、この場もあっという間に治めてしまうのだろうと。
 しかし、未来へと帰った彼女のことを思い描いても仕方ない。現在(いま)のことは現在(いま)いる誰かが何とかするしかないのだ。

35:ワシの占いは当たる ◆i1BeVxv./w
08/10/23 22:44:52 FJuo6tIq0
「二人とも落ち着いて………二人とも落ち着いて!!!」
 竜也の制止の声に、ようやく二人の口が閉じられる。そして、シグナルマンを加えた三人の瞳が竜也に集まった。
「ふぅ」
 竜也は軽く息を吐き、自分の考えを述べる。
「菜月ちゃんを探しましょう」
「竜也、そう言ってくれると信じてたニャ」
「ふん、なんたる愚考じゃ」
 スモーキーは喜び、ブクラテスは苦渋の表情をつくる。竜也の予想通りの反応だ。
「ちょっと待って。話は最後まで聞いて欲しい。菜月ちゃんは探す。だけど、病院も引き続き探す」
「どういうことだ?」
「……危険を伴いますが、二手に分かれましょう。スモーキーの言う通り、今、菜月ちゃんを探しに行かなかったら手遅れになるかも知れない。
 でも、ここで歩みを止めたら、ブクラテスさんの腕だって手遅れになるかも知れない」
「そんな奴の腕ニャンて、どうでも―」
「それだけじゃない。俺は病院を見つけたら、人質を助けに向かおうと思ってる。
 菜月ちゃんも助けたいけど、今、この瞬間にも、菜月ちゃんや人質になった人のような状況に置かれている人がいるかも知れない。
 そんな人たちを助けるためには、ここで止まっているわけにもいかないんだ。
 ブクラテスさんもそう言いたかったんですよね?」
 同意を求める竜也に、ブクラテスは気まずそうに「ふん」とだけ返す。
 竜也はその態度に苦笑した。
「探しにいけるんニャら、文句はないニャ。で、どっちが俺様と行くニャ」
「本官が行こう」
 名乗りを上げるシグナルマン。竜也も頷き、同意の意思を示す。 
「それじゃあ早速―」
「待つんじゃ!」
 だが、またも上げられるブクラテスの制止の声。
「何ニャー、この期に及んで、まだ反対する気かニャー」
「ふん、別にもう止めはせんわ。が、無駄に時間を浪費するのも何じゃからのう」
 竜也とシグナルマンの支給品については、待っている間に確認済みだ。
 ブクラテスは竜也のディパックから支給品であるタロットカードを取り出した。

36:ワシの占いは当たる ◆i1BeVxv./w
08/10/23 22:45:48 FJuo6tIq0
「ワシには特技があってな。占いじゃ」
 ブクラテスはタロットカードを左手で軽くカットすると、地面に7枚のカードを並べた。
「ふむ……お嬢ちゃんは北東に向かって進んでいると出た。おぬしたちは北東に向かうとよいぞ」
 その言葉に3人とも困惑の表情を浮かべる。
「占いなんて、当てになるのかニャー?」
「なんの当てもなく探すよりかはマシじゃろう。それにワシの占いは当たると評判じゃ」
 ニヤリと不適な笑みを浮かべるブクラテス。
 ブクラテスに占いのスキルはない。姪のイリエスの見よう見まねで、それっぽく見せただけだ。
 しかし、その結果に間違いはない。菜月の動きは首輪探知機で観察していた。
 菜月が北東を目指したのは紛れもない事実。
(折角の衛兵がいなくなっては困るからのぉ)
 ブクラテスはどこまでもしたたかだった。



 合流場所を決めた後、竜也たちと別れて、森へと向かうシグナルマンとスモーキー。
 しかし、彼らはブクラテスが指し示した方向とは逆の方向へと進んでいた。
「いいのか、ブクラテスは北東と言っていたが」
「あんな奴の言うことなんて、信用できないニャー。俺様の勘と鼻は、菜月は北西に行ったと示してるニャ」
 スモーキーの言葉に根拠はない。ただ、気に入らない奴の言うことを聞くのが癪に障っただけだ。
(菜月、待ってろニャ。きっと俺様が探し出して見せるニャ)
 スモーキーは菜月に、死んでしまった麗を重ねていたのかも知れない。
 だからこそ、麗が得意とする占いをブクラテスが使ったことが気に入らず、逆の行動を取ってしまった。
 だが、結果的にスモーキーと菜月との距離は広がることになる。

―あの馬鹿者共め―

 同時刻、ブクラテスが叫んだ言葉だった。


37:ワシの占いは当たる ◆i1BeVxv./w
08/10/23 22:46:35 FJuo6tIq0
【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:D-5 都市 1日目 朝
[状態]:健康。
[装備]:Vコマンダー
[道具]:メレの支給品一式(中身は確認済み)
[思考]
基本行動方針:仲間を探す
第一行動方針:ブクラテスを病院へ連れて行く
第二行動方針:菜月が心配。後悔。
第三行動方針:仲間を探し、ユウリとアヤセの安否を確認する
第四行動方針:菜月の仲間と理央を探す
備考:クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。

【名前】スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:ボウケンジャーVSスーパー戦隊後
[現在地]:C-5 森 1日目 朝
[状態]:健康。マジランプの中。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ヒカルを探す
第一行動方針:強い怒りと悲しみ。菜月を探し出す。


38:ワシの占いは当たる ◆i1BeVxv./w
08/10/23 22:47:25 FJuo6tIq0
【シグナルマン・ポリス・コバーン@激走戦隊カーレンジャー】
[時間軸]:第36話以降
[現在地]:C-5 森 1日目 朝
[状態]:健康。少し凹み気味。
[装備]:シグナイザー
[道具]:けむり玉(残数2個)、ウィングガントレット@鳥人戦隊ジェットマン、メレの釵
 マジランプ+スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー、基本支給品とディパック
[思考]
基本行動方針:ペガサスの一般市民を保護。戦っている者がいれば、出来る限り止める。
第一行動方針:強い怒りと悲しみ。菜月を探し出す。その後、竜也たちと合流。
第二行動方針:乙女(メレ)に謝りたい。
第三行動方針:黒い襲撃者(ガイ)を逮捕する。

【名前】ブクラテス@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第12章(サンバッシュ敗北)後
[現在地]:D-5 都市 1日目 朝
[状態]:右腕切断。簡単な応急処置済み。
[装備]:めがね
[道具]:首輪探知機、毒薬(効能?)、タロットカード@鳥人戦隊ジェットマン、切断された右腕、基本支給品とディパック
[思考]
基本行動方針:とにかく生き残る。
第一行動方針:竜也とシグナルマンは利用できそうだ。
第二行動方針:首輪探知機とセンのことは伏せて置く。
備考
・センと同じ着衣の者は利用できると考えています。


39: ◆i1BeVxv./w
08/10/23 22:48:46 FJuo6tIq0
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点、ご感想などあれば、お願いします。

40:名無しより愛をこめて
08/10/24 10:25:30 a5MRdXya0
GJ!
熱いぜ!スモーキーと思いきや……。
だめだそっちは違うだろ!!思わず画面に突っ込んでしまいましたよ。
探知機の結果を占いで示すとは流石、どこまでもしたたかなブクラテス。

しかし、スモーキーとシグナルマンのコンビか。
面白いような、心配の種と言うか。勘違いブラザーズとでも名づけたくなるな。



41:名無しより愛をこめて
08/10/24 10:35:23 bOpOzPeD0
投下GJです。
ああ、せっかくの首輪探知機が裏目に…なんてこったい。
スモーキーのいら立ちもわかりますが、なんという不幸なすれ違い。
二手に分かれる事になった彼らがこれからどうなるのか。
今後の展開が気になります。

42: ◆8ttRQi9eks
08/10/24 22:40:46 ECE2+Lvd0
ユウリを思い出す竜也がよかったです。
こちらは延長をお願いします…申し訳ないです。

43:sage
08/10/24 23:41:04 3isMTb5OO
了解しました。

44:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 11:45:50 IdSIG4u40
光を背後にしても尚、辺りを白く消し飛ばすほどの閃光と割れんばかりの爆音に真咲美希は立ち止まる。
「派手にやったようね…これで何人か減ってくれるとあり難いんだけど…」
彼女は偵察に出たまま、あの場所に戻らなかった。
その判断は結果的に正しかったことになる。
あのまま、あそこにとどまれば自分達を救出に来た者たちとネジブルーの間で
まず間違いなく行われたであろう戦いに巻き込まれていた可能性が高いからだ。
加えて爆発の余波は強化スーツを持たない自分では回避できない恐れがある。
あの爆発を見る限り、ネジブルーは立派に陽動の役目を果たしてくれたのだろう。
出来れば彼とドロップには死んでいて欲しかった。
自分の諸行を知る者が生きていては後々の禍根になりかねない。
(また…誰か探さなくちゃ……)
美希は新たな生贄を求めて足早に歩を進めた。後ろは振り返らなかった。



早朝の朝は、痛いほど蒼く澄んでいた。

灰色の煙がどこまでも高く、高く上ってゆく―
たなびく煙を追いながら瞬は墓に見立てた、いささか不恰好な岩の前で手を合わせた。
「ごめんな、纏さん…手頃な石がなくて……」

あの戦いの後、蒼太はすぐにでもこの場所を移動すべきだと主張した。
ネジブルーの呼びかけに呼応した者たちが集ってくることは予想の範疇であり、
もし仮に戦場荒らしを目論む輩が出現すれば10分の制限時間を使い切った今の自分達は格好の標的になる、
と言うのが蒼太の意見だった。
数々の戦場を駆けたスパイの彼らしい迅速な判断だった。
しかし、瞬は頑なに反対した。
纏の遺体をそのままにして置くのは忍びなかったからだ。

45:名無しより愛をこめて
08/10/26 11:47:00 9WhByfx2O



46:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 11:48:49 IdSIG4u40
「…できれば火葬にしたかったけど…煙を立てるわけには行かないから……」
「わかってます。おぼろさんやドロップ君がいるのに、こんな俺の我侭に付き合ってくれただけでも感謝してます、蒼太さん」
瞬は笑顔で隣の蒼太に向き直った。
―無理して表情を作っている。
蒼太は一見して瞬の張り詰めた思いを汲み取ったが、彼に出来るのは共に墓前に手を合わせることだけだった。
「…俺、必ずここへ戻ってきます。このゲームが終わったら必ず…」
「そうだね。ちゃんとしたお墓、作ってあげなきゃね…」
「その約束、俺たちも加えさせてもらって良いかな? 二人とも」

声の方に顔を向ければ、長身の怪人―ティターンが神妙な面持ちでそこにたたずんでいる。
その背後には腕の中にドロップを抱えた日向おぼろの姿もある。
「もちろんですよ…あの人が繋いでくれたから俺はこうして皆さんと一緒にいられるんですから」
巽纏。
人を救うことに文字通り命を掛けた男。
だが、瞬は纏について何も知らない自分に今更ながら気づいていた。
共にすごした時間はほんの僅かで。交わした言葉はすれ違ってばかりで。
「カレーパン…美味かったよ…なんでも選り好みせずに食べてみるもんだな…これがあんたの言う気合で乗り切るって奴なのかな?……少し違うか…」
瞬は残された纏のディパックを背に立ち上がる。
状況は何も変わっていない。今にも首が胴から離れるかもしれない極限の空間に彼はいる。
しかし、彼は数時間前の彼とはまるで違っていた。
(行ってくるよ、纏さん。行って、全部終わらせてくる。それまで少し…待っててくれ)

「なんやあの子…始めておうた頃とは別人みたいやなぁ…」
おぼろは朝日を真っ直ぐに浴びる瞬の姿に、自分の知る若者達の姿を重ねていた。
「ドロップゥゥ……」
張り詰めていたのは瞬だけではない。ドロップは少し前からおぼろの腕の中で泥の眠りの最中だ。
無理もない。彼はまだほんの幼子なのだから。
「行こう…F-7エリアでジルフィーザが待っている」
ティターンの呼びかけに全員が力強く頷いた。


47:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 11:50:52 IdSIG4u40



「あっれれぇぇ~~~??? だぁ~~れもいないじゃん!! なんだっつーーんだよ!! 祭りは終わっちまったのかよ!」

拡声器の一件で人が集まるだろうと踏んでこのエリアに足を踏み入れたはいいが、既に爆心地と思しき場所はもぬけの殻。
あわよくば混乱に乗じて他人の至急品を分捕ってやろうと軽い気持ちでやってきたガイにとってこの結果はひどく不満なものだった。
こんなことなら寄り道などせずに当初の予定通りJ-10エリアを目指した方が良かった。
「あ~~あぁ~~…興ざめだぜぇ…聞くところによればボウケンジャーも一人減ったみてぇだしよ。ちゃんと俺の分は残るんだろうなぁ…高丘の名前はなかったようだけどよぉ―…」
無駄足を踏んだことへの不平不満をつらつらと人目もはばからず吐き出すガイの口調が途切れる。
―ガイは運命の悪戯に深く感謝した。
「―なぁ~んだ……ちゃあ~~んと残ってたじゃん! 俺の分!!」
眼前にはピンクのアクセルスーツを身に纏った一人の女性戦士―ボウケンピンクが立ち尽くしていた。
「あなたは、ガイ! そんな…本当に生きて……!?」
確かにクエスターは自分達の手で倒したはずなのに。
ガイの口角が見る見るうちに上がっていく。方角的に見て、彼女は放送を聞いて禁止エリアから逃れてきたのだろう。しかし、そんなことはガイにとってどうでもいいことだった。
「ハロォ~~、ボウケンピンクぅ!! 最初の生贄はお前だよぉぉ~~ん♪」




物の弾みとはいえ、厄介な人物と行動を共にせねばならなくなった事にフラビージョは憂鬱な気分に沈んでいた。
「メガブルゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!」
先ほどからずっとあの調子だ。


48:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 11:53:41 IdSIG4u40
あれではここに自分がいると吹聴して回っているようなもの。
いや、既に彼はそうして今度の事件を引き起こしたのだ。
「ねぇ? それ、どーーしても叫ばなきゃなんないのぉ?
よくよく見れば、彼もハリケンブルーやボウケンブルーと同じ青を纏う戦士だ。
それだけでも憂鬱なのに、意思の疎通も出来ない相手と行動を共にするのはあまり気乗りがしない。
「ねぇ、あんた自分の今の状況わかってんの?」
既に自分達はリミッターを越えた制限の中。
本来なら、爆心地にとって返して恨みあるボウケンブルーたちを一掃したいところだが、今の彼女は空も飛べなければ忍術も使えない。
それは当然、ネジブルーも同じはずなのだが―…
「メメェェェェェェェェガアアアアァァァァァァァァァブゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウルゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!」
フラビージョの問いかけも聞こえていないのか、ネジブルーは陶酔の境地にあった。
彼は歓喜に打ち震えていた。刃を交えたのはほんの僅かな時間。
だが、それだけで彼には今のメガブルー並樹瞬が手に取れた。
メガブルーはこの戦いで成長している。
かつて“自分を滅ぼしたメガブルー”とは差異があるのだが、彼にとって重要なのはそこではない。
ネジレンジャーは皆、個性の差異はあれど全員がある種の渇きを常に抱えている。
同じ色の裏返しの自分を征し、自らが唯一無二の存在となる。
ネジブルーの場合、障害が大きければ大きいほど、その渇きを満たす瞬間の高揚は一層際立つものとなる。
瞬の成長と比例してネジブルーもまた自らの闘争心を高めていった。
-まるで双子の兄弟が競い合うように。
だが、傍らのフラビージョにしてみればそんなネジブルーの高揚ははた迷惑以外のなにものでもない。
そうだ。彼は先ほどの戦いで考えなしに力を振るい、今や制限の真っ只中。


49:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 11:56:34 IdSIG4u40
しかもあつらえた様に二人きりのこの状況。とすればフラビージョがとるべき行動は唯一つ。
支給品の黄金の剣の塚を握る手に力が篭る。この剣の力は先の戦いで実証済みだ。
フラビージョは両手で剣を大きく掲げると、上段の構えから剣を勢いよく振り下ろした―
次の瞬間。閃光が、爆ぜた。
朝日が照らす昼の世界をも白い闇に包む破滅の一撃が地面を、大気を、大きく振るわせた。
古代レムリアの幻獣すら一刀のもとに切り捨てるほどの巨大な衝撃波がネジブルーめがけて放たれる。全くの無防備なネジブルーはそれを避ける暇などない。

「あんたみたいなのと一緒にいるとこっちまで迷惑なんだよねぇ…もう、仲良しはお終い☆
あんたはここであたしに殺されるの! 悪く思わないでよねぇ―……」





さくらはすぐに自分とガイの間に時系列の隔たりがあることに気づいた。
ガイはあの時、確かに死んだ。高丘映士ことボウケンシルバーにその身を切り裂かれて―
自分の目の前にいるこのクエスターガイは、過去の時間から連れてこられた存在だ。
恭介やグレイとの邂逅で得た情報からもその仮説は恐らく間違いないだろう。
だが―予期せぬ戦闘で疲弊した自分が、何やら手負いだとは言えガイに単独で勝てるとは思えない。
(ここは逃げるべきでしょうか…)
無駄な戦闘は避ける。
残り時間もあとわずかだ。さくらは早々に戦闘を切り上げる算段を固める。
専用のボウケンアームズ<ハイドロシューター>の引き金を強く引く。
「シューターハリケーン!!」
水を圧縮し、散弾銃のように目標を粉砕する―最も、破壊は期待していない。
その場から逃げ去るだけの目晦ましになれば十分だ。
だが、ガイがとった行動は予想外なものだった。
「うざったいんだよぉ!!」


50:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 11:58:15 IdSIG4u40
ガイはやにわにクエイクハンマーを取り出し空気の壁で攻撃を押しつぶす。
―水の攻撃はもう、懲り懲りだった。既にその手の攻撃に有効な防御手段は確保してある。
「そんな…!」
記憶の中のガイはそんな攻撃方法を持ってはいなかったはずだった。
「お前の攻撃なんざ屁でもないぜ、ボウケンピンク。妙な術を使うねーちゃんの方がよっぽど骨があったぜぇ~~!!」
こいつは、既に人を殺している。
さくらはガイの立ち振る舞いからその事実を読み取った。この空間で経験をつんだことが過去のガイに力を与えているのだ。
戦慄するさくらを更なる悲劇が襲った。
「!?」
ガイの戦闘意欲の高揚を反映して体内のゴードムエンジンがフル稼働を始める。
途端に呼応するようにアクセルスーツのあちこちから火花が上がり、システムがダウンを始めた。
「そんな…!? 制限時間はまだ…!」
しかし、それは制限時間ではなくゴードムエンジンの干渉によるパラレルエンジンのパワー供給が遮断されているために起こった異常だ。
「おんやぁ~~?」
ガイは飛びかかろうとした矢先の出来事に首を捻っている。
「パラレルエンジンは既にネオパラレルエンジンへの換装が行われたはず! それなのに…まさか!?」
―さくらの脳裏にアクセルテクターからサラマンダーの鱗が抜き取られていたことがよぎる。
「いい格好だなぁ~ボウケンピンク! なんだかしらねぇが…無様だぜぇ、お・ま・え」
スーツが鉛の様に重たい。強化スーツは本来の意義を失い、今はただ自由を縛る拘束具に等しい。
既に立っていることすら出来ず、両膝を地面へついたボウケンピンクにガイは容赦ない足蹴りを加えた。
ボウケンピンクは抵抗することも出来ずに地面へ手足を投げ出し、仰向けに倒れた。
鼻歌交じりにガイはクエイクハンマーを両腕で高々と掲げた。
「これでボウケンピンクもジ・エンドだな! さぁ~いこうだぜぇ~~!!」
何度も、何度もクエイクハンマーを仰向けのボウケンピンク目掛けて振り下ろす。
「うああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
巨大な衝撃が走る度、さくらの絶叫が辺りに轟いた―


51:名無しより愛をこめて
08/10/26 12:00:07 9WhByfx2O
支援

52:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 12:01:08 IdSIG4u40
装着者の肉体をあらゆる事象から防護する―強化服がこの場合仇となった。
衝撃を緩和することでさくらの身体には骨折も裂傷もない。
代償に、彼女は気絶することも絶命することも出来ないまま嬲りものになった。
限界値を越えた衝撃を吸収しきれず各部がショートし、白煙が上がる。
「そぉ~ら! もう一発!!」
ガイは一際大きく両腕を天高く振り上げると力任せに槌を振り下ろした。
「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
光の粒子と共にスーツが弾け飛び、ボウケンピンクは西堀さくらへとその姿を還元する。
苦悶の表情で悶えるさくらはスーツの飛散が衝撃との対消滅となり、致命傷を免れたものの
生身の身体ではどうすることもできない。
(チーフ…すみません……菜月…約束…守れそうもありません……)
―約束。
こんなところで死ぬわけには行かない。自分は大切な約束を守らなければならないのに。

菜月との約束。

チーフとの約束。


しかし―…それ以上に大切な約束があったはず―-―


大事な、大事な、とても大事な約束が―――…


53:名無しより愛をこめて
08/10/26 12:01:37 9WhByfx2O



54:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 12:01:59 IdSIG4u40




「なにそれ……あんた一体…―何者なのよ……」
戦慄。
仮にも暗黒七本槍の一柱を担う自分には似つかわしくないその感情にフラビージョの精神は支配されていた。
先ほどまでネジブルーだったはずの存在は禍々しい姿へ変貌を遂げていた。
鋭い爪。両肩から突き出した結晶体。
耳まで避けた真っ赤な顎【あぎと】からは鋸の様な牙が覗いている。
「これじゃまるで…まるで……」
恐怖に唇が震えた。一つの言葉が脳裏に浮かぶ。
「怪物じゃない…!」
「おやおや…寒いのかい? 震えているよ?? 無理ないよねぇ…僕は氷をイメージして作られたようだから…でも、安心して…すぐになんにもわかんなくなるよ…なぁぁ~~~んにもね……―」
容姿と異なり、ネジブルーの声は変わっていない。それが余計に不気味だった。
「嘘よ…あたしが見てんのはあんたの無様に飛び散った死体のはずなのに…なのになんで…!?」
既に決着はついているはずなのだ。
ネジブルーは既に10分の制限の中にあるはず。
黄金の剣の一撃は確かにネジブルーの頭を切り裂き、粉砕したはずだ。
そのはず、だったのだ。
「ふぅ~~ん…バラバラに飛び散りたいのかぁ…派手好きなんだねぇ……いいよぉ~…君のお願い聞いてあげる……君は僕を解き放ってくれた人だから」
フラビージョは決して開けてはならないパンドラの箱を開けてしまったのだ。

ネジレジアを統べる高次のエネルギー生命体ジャビウスⅠ世。
その細胞から天才Dr.ヒネラーによって創造されたのがメガレンジャーの影ネジレンジャー

55:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 12:04:10 IdSIG4u40
彼らは一様にヒネラーこと鮫島博士の歪んだ心のままに、その醜い容姿を鎧に包んでいる。
特筆すべきは彼らが装着されるスーツではなく、装着者そのものを強化すると言う理論体系で生み出されている点だ。
このゲームでは確かに参加者の力の発揮に10分と言う制限が設けられてはいる。
しかし、それは固有の武装や変身能力に限ったことだ。
クエスターガイの生来備わったアシュとしての悪魔の身体能力は失われることがなかったのと同様に、ネジブルーもまたその真の姿を晒すことは能力の発揮外の事象として扱われる。

かつての彼らの行動には制限が存在していた。
力の源であるジャビウスとヒネラーの間で密かに行われていた駆け引きの按配により、彼らの戦闘は半ば強制的に引き上げられていてしまっていたのだ。
だが、今はもう違う。
ヒネラーという枷をなくなった彼は檻から放たれた獣そのものだ。
ネジブルー、いやネジビザールは自らを解き放った馬鹿な小娘に向けて満面の笑みを返した。




「そろそろおネンネしなちゃいっ☆ ボウケンピンクぅ♪」
小銃グレイブラスターの照準をさくらの頭部に合わせ、ガイは引き金に指を掛ける。
万事休すだった。
傍らに転がったアクセルラーは黒煙を上げている。
恐らく、負荷に耐え切れず損壊してしまったのだろう。―もうボウケンピンクにはなれない。
ガイに生殺与奪を握られ、完膚なきまでに敗北したさくらに残された手段はただ一つしかなかった。
まずは一匹。湧き上がる歓喜の衝動を必死で抑えながらガイは引き金を引く指に力を込める。
「…さないで……く…だ…さい…―…」


56:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 12:05:40 IdSIG4u40
消え入るような声に引き金を引く指が止まる。
「あぁん?」
首を傾げるガイの目に信じられない光景が飛び込んできた。

「…殺さ…ないで……ください…お願い…します…―…」

さくらは命乞いをしていた。
「――!!」
憎むべきネガティブであり、仲間の仇敵であるクエスターに。
「私の完全な負けです…あなたにはもう、逆らいません…どんなことでも言うことを聞きます…ですから…命だけは助けて下さい!」
しばし呆気に取られていたガイは我に返ると、声を荒げた。
「なっ…何、言ってんだてめぇ!!!」
あまりの自体にむしろガイの方が動揺していた。思わず銃を持つ手が激昂に震える。
「お願いします。死にたくはないんです。命以外なら、支給品も食料も全てお渡しします…ですから…どうか! どうか!!…どうか命だけは取らないでください!!…お願いします!!!!」
ボウケンジャーのサブチーフという肩書きをかなぐり捨て、さくらは地面へ這いつくばった。
地面に平伏し、額を土に擦り付けて支給品が納まったディパックを、まるで神への供物が如く恭しく両手で捧げた。
「ふざけんなっ!! プライドないのか、てめぇはッッ!!!!!!」
ガイは嬲られた思いだった。こんな奴にヒョウガは殺されたと言うのか。
少なくとも、彼の宿敵であるアシュの監視者高丘の一族は例え絶命の瞬間でもこんな醜態は晒さない。あの高丘映士ならば間違いなく死を選ぶだろう。
「お願いします! どうか、命だけは―!!」
さくらは必死で叫び続けた。ここで死ぬわけには行かない。
…―こんなありきたりで、地味な死に様を晒すわけにはいかない―…
さくらは組織の命令に絶対服従だ。
それは特殊部隊時代からの刷り込みによるもので、ボウケンジャーとなった今も変わらない。
今の異常な状況下もさくらにとっては“ミッションを忠実に遂行しているだけ”なのだ。


57:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 12:07:01 IdSIG4u40
いつの間にか、命令する頭がすげ変わっていることに今のさくらは気づかない。

「舐めろ」

動揺から一転、ガイは抑えた声色で一言だけ呟いた。
その意味するところに考えが至るや、さくらの行動は素早かった。
掲げていたディパックを地面へ下ろすと即座にガイの足元にうずくまり、その足を両手で包むとその端正な顔を近づけていった。
「―――…」
ガイの足についた泥を舌で懸命に丁寧に舐め取り、上目遣いに瞳を潤ませ必死に訴えかける。
そんなさくらの姿をガイはその黄金の瞳で冷ややかに見つめていた。
ややあって。ガイは徐にグレイブラスターを取り出し、躊躇わずに引き金を――引いた。
パン。パン。パン。
乾いた音が朝の静寂を劈いて響いた。
弾は全てさくらの傍らに置かれたディパックを貫いていた。硝煙がゆっくりと立ち上っていく。
「失せろ」
ガイは先程と同じ、感情を読ませない低い声で言った。
もう、沢山だった。こんな無様な醜態が見たかったわけじゃない。
「助けて…下さるんですか……?」
さくらはガイの意思を汲み取れず、聞き返した。
「失せろっていってんだよ!! 何度も言わせんじゃねぇっっっ!!!!」
耐え切れず、ガイは地面へ向けて引き金を引く。
制限の中にないことが幸いだった。さくらに言い放った言葉とは裏腹にガイは
アシュの術で空間転移し、その場から逃げるように立ち去った。
最悪の気分だった。ほんの数分の戦いが、ガイの中から戦いへの高揚感を奪い去ってしまっていた。

「…ありがとうございます…ありがとう…ございます……」

見逃して頂いた。命が助かった。
安堵の気持ちとは裏腹にさくらの瞳からは涙が止まらなかった。
―自分が自分でなくなってしまった。
とめどなく流れる涙を流したまま、さくらはその場に仰向けに倒れた。


58:名無しより愛をこめて
08/10/26 12:08:23 9WhByfx2O
支援

59:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 12:10:32 IdSIG4u40



変貌したネジブルー、いやネジビザールがゆっくりとこちらへ近づいてくる。
「どうしたんだい…すぐに終わるさ…君が抵抗しなければねぇ~~~…」
落ち着くんだ。
剣が持つ手が震えるのをフラビージョは必死で堪えた。
相手が幾ら化け物でも今は制限の中。
特異な能力の全ては封殺されている。ゆえに彼が取れる攻撃手段は直接近づいてその鋭利な牙や爪で引き裂くと言う原始的な手段に限定される。
ならば、同じ制限下にあっても武器を持つ自分の方が有利なはず。
無論、身体能力は向こうの方が上だろうが、捕まらなければどうと言うことはない。
柄を握る手に力が篭る。
やれる-。自分はこんなところでは死なない。
「おりゃぁあ!!」
気合を込めたわりにいまいち緊張感のない声はいつもどおりだが、その声は僅かに上ずっていた。
剣の一撃が直にネジビザール型を袈裟懸けに切り裂いた-はずだった。
「え…なんで……??」
刃はネジビザールの身体を滑るように太刀筋が狂う。
「なんで! なんで!?」
二の太刀は首を掠め、三の太刀は胸を掠めた。
「あれれぇぇ? どうしたんだい?? さっきの痛いやつはもうしてこないのかい!?」
フラビージョは知らなかったが、古代レムリアの聖剣ズバーンは人間の想いの力をトリガーに
力を発動する。ゆえに、本来ならば邪な気持ちを抱いた者が扱える代物ではないのだ。
「どうして!! どうして斬れないのよぉぉっっ!!!」
狂乱するフラビージョが必死で剣を振り回せば振り回すほど、剣に埋め込まれたエメラルドグリーンの宝石は輝きを失い、黒ずんでいく。
今まではフラビージョが持つ暗黒七本槍の力で無理やりズバーンの力を歪めて引き出していたに過ぎないのだ。
その残り香ともいうべき力を、先程の一撃で消費したズバーンは既に深く沈黙していた。
「なんでなのよぉ!!!! なんで! なんで! なんで!!なんでぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」


60:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 12:12:25 IdSIG4u40
最後には癇癪を起こした子供のように剣をネジビザールへ投げつけた。
「くれるのかい? でも…いらないよぉ…こんな鈍ら刀…」
ネジビザールは怪訝な目つきで受け止めたズバーンをみやると、ぽいっと背後へ捨ててしまった。
地面に突き刺さったまま、ズバーンは動かない。
「いや…いや…!…来ないでよぉっっ!!!」

必ず、生き延びてボウケンブルーも、おぼろも、ハリケンジャーもみんな殺す。
楽しそうだから戦いに乗った。
宇宙忍郡ジャカンジャに参加したのも楽しそうだったから。
現に、地球を腐らせるという背徳的な行為にフラビージョは無邪気な喜びを見出していた。

早く、こいつを殺して―また楽しむんだ……人々が、敵が苦しむ姿を――…


「終わりだよ…君はここで死ぬんだ…さよなら、僕を解き放ってくれた人…」



混濁の意識が急速に光を取り戻していく。
その先にあったのは柔らかな女性の笑顔だった。
「あなたは…?」
まだ、かすかにけだるさの残る口調でさくらは目の前の女性に問いかけた。
「私は真咲美希。スクラッチ日本支社の責任者よ。でもって獣拳使い…今は引退してお母さんしてるけどね」
そういって微笑んだ顔は、今のさくらが失ってしまった最高の笑顔だった。
「真咲美希…人質にされていたんじゃ…?」
「えぇ…わたしはネジブルーってやつに人質にされて、そこから逃げてきたの。さっきの爆発聞いたでしょ? 間一髪だったわ。そうしたら、こんなところに人が倒れていたから。驚いたわ」
さくらは消え入りたいような恥ずかしさを感じた。
本来なら、自分が彼女を救うはずであったのに。これでは逆ではないか。
「お水、飲む? 喉渇いたでしょ」
そういって、自らのディパックを漁る美希をさくらはあわてて押し留めた。



61:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 12:14:18 IdSIG4u40
「待ってください! 助けていただいたのに、貴重な水まで譲っていただくわけには!」
「でも…あなたのは…」
そういって美希が指し示した先を視線の先には、銃創が走る無残なさくらのディパックが転がっていた。
「何があったか知らないけど、あなたの支給品はもう駄目ね。悪いとは思ったけど、調べさせてもらったわ」
そう言って、美希はさくらのアクセルラーを取り出した。
「これもあなたのでしょ? もう、壊れてしまっているようだけど…」

さくらは美希を知らなかったが、美希はさくらを知っていた。
世界に名だたる西堀財閥の令嬢にして、元自衛隊特殊部隊の射撃オリンピック候補。
そして、ボウケンジャーのサブチーフ。
同じキャリアウーマンとして美希には、さくらに通ずるものがあったのは確かだ。
しかし、先程の無様な醜態は彼女を深く失望させた。
ボウケンジャーやゲキレンジャーの面々から伝え聞いていたさくらの印象とは180度異なる醜聞。
今の自分は決して正しい白の中にいるとは言えないが、彼女の様に自分の命惜しさにやっていることではない。
娘を、なつめを守る。その為にこそ生き残る。
美希の行動は全てそこに集約されている。
―あなたはいつだって、明石暁のお荷物よ…西堀さくら―
あの時も、彼女は宇宙拳法使いパチャカマック12世に憑依され、結果的にではあるが地球を危機に追い込んだ。
そして、今もまたガイに敗れ、あろうことか命乞いをして生き延びた-
「あなた…SGSの人でしょ? だったら明石暁の関係者よね?」
「…はい。私達はプレシャス保護を目的として創設されたチームなんです……」
美希から渡されたアクセルラーを受け取り、さくらは応えた。
「そう…心配よね、彼……」
「はい……」
美希がさくらを助けたのは幾つか理由があった。
一つは、彼女がロンにとって最大の障壁であろう明石暁の関係者であったこと。
そして、さくらこそ美希が捜し求めていた愚者であろう確信を持ったからだ。
-惨めで最高に無様な死に様をあなたに-
「大丈夫。私がついてるわ…一緒に行動しましょう? 丁度、人からはぐれて心細かったの。


62:名無しより愛をこめて
08/10/26 12:14:42 9WhByfx2O



63:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 12:15:33 IdSIG4u40
あなたが一緒なら心強いわ」
美希は心底の思いをおくびにも出さず、笑顔でさくらに同行を申し出た。



<SIGN>

青かったはずの身体は鮮血に染まっていた。
かつてフラビージョであった肉片がそこら中に散らばっている。
最早、原形をとどめないその死肉を貪りながらネジビザールは自らを照らす日差しに手をかざした。

「美味しい、美味しい朝ごはんご馳走様。とてもお腹一杯だよ…爽やかな朝だねぇ…―」

一つの死が一つの命を成長させ、新たな悲劇を巻き起こしていく-…
惨劇の果てに何が待つかは、誰も知らない。


64:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 12:16:29 IdSIG4u40
【フラビージョ 死亡】
残り32人



【最上蒼太@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.3、後
[現在地]:F-5都市 1日目 朝
[状態]:良好。2時間ボウケンブルーに変身できません。
[装備]:アクセルラー@轟轟戦隊ボウケンジャー、スコープショット@轟轟戦隊ボウケンジャー、バリサンダー@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:ヒュプノピアス@未来戦隊タイムレンジャー、スタッグブレイカー@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:おぼろと共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第二行動方針:おぼろを守る。ジルフィーザと合流する。
※首輪の制限に気が付きました。

【日向おぼろ@忍風戦隊ハリケンジャー】
[時間軸]:巻之三十、後
[現在地]:F-5都市 1日目 朝
[状態]:全身に軽い火傷、打撲。応急処置済み
[装備]:イカヅチ丸@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:蒼太と共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第二行動方針:首輪を何とかする。ジルフィーザと合流する。
※首輪の制限に気が付きました。



65:名無しより愛をこめて
08/10/26 12:17:44 QDTdMSuC0



66:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 12:21:08 IdSIG4u40
名前】並樹瞬@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第2話後
[現在地]:F-5都市 1日目 朝
[状態]:全身打撲火傷、応急処置済。2時間メガブルーに変身できません。
[装備]:デジタイザー。
[道具]:支給品一式(個別支給品は確認済)纏のデイバック
[思考]
基本行動方針:元の世界に戻って夢を叶える前にこのゲームを終わらせる。
第一行動方針:纏の死に深い悲しみと強い決意。確実に成長。ジルフィーザと合流。
備考:瞬はマトイから、×ドロップ、△冥王ジルフィーザ、○浅見竜也、○シオン、○ドモンの情報を得ました。
 変身制限があることを知りました。

【名前】冥府神ティターン@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:Stage46(ン・マの依り代にされた)後
[現在地]:F-5都市 1日目 朝
[状態]:全身打撲。火傷。2時間能力発揮できません。
[装備]:ウラノスとガイアの怒り、黒装束(虹の反物@轟轟戦隊ボウケンジャー)
[道具]:マーフィーK-9@特捜戦隊デカレンジャー、支給品一式
[思考]
基本行動方針:命を守る
第一行動方針:ジルフィーザと合流する。
第二行動方針:スフィンクスを捜す。
備考:ティターンは虹の反物の特別な能力に気付いていません。首輪の制限があることに気が付きました。
   :纏からタイムレンジャー、サイマの情報を得ました。



67:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 12:22:42 IdSIG4u40
【名前】マーフィーK-9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:F-5都市 1日目 朝
[状態]:銃弾によりかなり破損しています。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:???
第一行動方針:ティターンと行動する。
第二行動方針:知り合いを探す。

【名前】ドロップ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:26話、サラマンデス覚醒前
[現在地]:F-5都市 1日目 朝
[状態]:健康。熟睡中。
[装備]:不明
[道具]:メメの鏡の破片、
[思考]
第一行動方針:不明

【名前】ネジブルー@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:41話(ネジビザールとして敗れた後)
[現在地]:F-5都市 1日目 朝
[状態]:全身に打撲、傷有り。2時間能力発揮出来ません。ネジビザールの本性を現しました。
[装備]:ネジトマホーク
[道具]:ソニックメガホン@忍風戦隊ハリケンジャー、闇のヤイバの忍者刀@轟轟戦隊ボウケンジャー(マシンハスキーの鍵は美希が持っています)
[道具]:支給品一式×2、詳細付名簿、スフィンクスの首輪、拡声器。
[思考]
第一行動方針:メガブルーを殺す。 邪魔なヤツも殺す。一人殺しました。
※ズバーンとフラビージョの支給品はF-5都市に放置しています。


68:名無しより愛をこめて
08/10/26 12:23:42 9WhByfx2O
支援

69:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 13:02:46 IdSIG4u40
【クエスター・ガイ@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.23以降
[現在地]:G-6都市 1日目 早朝
[状態]:全身に裂傷。かなりの重症のため時間制限に関わらず戦闘不能。要回復アイテム。
気分は最悪。興を削がれています。二時間の制限中。
[装備]:グレイブラスター@轟轟戦隊ボウケンジャー
[道具]:クエイクハンマー@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式(ペットボトル1/2本消費)、 天空の花@魔法戦隊マジレンジャー
 マージフォン@魔法戦隊マジレンジャー、操獣刀@獣拳戦隊ゲキレンジャー、何かの鍵、麗の支給品一式
 魔人マグダスの杖@星獣戦隊ギンガマン、3枚のメモ(杖の説明書、アイテムの隠し場所×2)、竜也の支給品一式(ペットボトル2本消費)
[思考]
基本行動方針:ロンやボウケンジャーを倒すついでにゲームに乗る
第一行動方針:使えそうな道具を作る。
第二行動方針:アイテムの確保。天空の花を持って、J-10エリア『叫びの塔』へ
第三行動方針:気に入らない奴を殺す。一人殺しました。

【名前】西堀さくら@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:G-6都市 1日目 朝
[状態]:健康 (ただし、ロンによる洗脳を受けており、いつでも傀儡になる危険性あり) 。
[装備]:アクセルラー(損壊、要修理)、スコープショット
[道具]:なし。一切を失いました。
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ここから脱出する。
第一行動方針:チーフ(明石暁)と合流する。
第二行動方針:美希と行動を共にする。
※)裏行動方針:ロンの言われるままにいいように操られ、見苦しく惨めな死に様を晒す。
 ただし、本人にその自覚はなく洗脳行動も全て自分の意思であると思い込む。



70:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/10/26 13:04:56 IdSIG4u40
名前】真咲美希@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:物語中盤
[現在地]:G-6都市 1日目 朝
[状態]:健康
[装備]:マシンハスキー@特捜戦隊デカレンジャー(鍵のみ、タワーの損壊で壊れている可能性があります。ネジブルーの物とすり替えました)
[道具]:支給品一式
[思考]
基本方針:なつめを救うために勝ち残る 。
第一行動方針:利用できる者は利用する、そうでない者は殺す。
第二行動方針:上記の遂行のために西堀さくらを利用する。




以上代理投下終了。

71:名無しより愛をこめて
08/10/26 13:14:34 IdSIG4u40
哀れ、フラビ!
だがフラビ以上に哀れにみえるのはさくらだ。
そして相変わらず怖いな~ネジブルー。
だけど『ネジビザール=死亡フラグ!?』と思ったのは俺だけじゃないはずw


指摘として。美希は前話でドロップと共に救出され瞬たちと合流しているようです。
もう一点は質問ですが。
ネジブルーの捕食にはかなり驚きました。
原作等で何かそういった設定があったのでしょうか?

72:名無しより愛をこめて
08/10/26 13:36:04 EOS2S9Hc0
美希については救出される前に逃亡、の方が正しいですね。
後で修正します。
また、ネジブルーの捕食行動はノリですw やつが普通に朝ごはん取るとは思えないので。
不快でしたら美希の部分と合わせて差し替えます。

73:名無しより愛をこめて
08/10/26 14:43:46 9WhByfx2O
投下&代理投下GJです。
さくら姐さん、堕ちるとこまで堕ちたな…
誇りも強さも使命感も逆にロンに利用されているのが哀しいです。

美希に関しては、前作でドロップと共にいる事が利用価値があると思っているようなので、
一緒にいる方が自然かな?とは思いました。

74: ◆8ttRQi9eks
08/10/26 23:19:37 EOS2S9Hc0
したらばに修正版を掲載しました。
皆さん、ご指摘ありがとうございました。
他にご感想&ご指摘ありましたらよろしくお願いします。

75:名無しより愛をこめて
08/10/27 10:32:41 J7GtiPHU0
重箱の隅で恐縮ですが、ガイが重症にも関わらず戦闘に積極的なのが気になりました。


76:名無しより愛をこめて
08/10/27 11:08:36 3qe+MO8p0
出会ったら戦うんじゃね?
基本、ボウケンジャー殺したい人だし。

77:名無しより愛をこめて
08/10/27 12:53:52 J7GtiPHU0
vs蒼太やvsメレを見る限り、戦いたいけど戦えないようだったから。

78:名無しより愛をこめて
08/10/27 13:04:47 YZrwegnrO
状況が不利なら、戦略的撤退もできる奴だからねぇ。
しゃべり方のせいでそうは見えないかもだけど。

79:名無しより愛をこめて
08/10/27 17:01:18 eRYGj2nx0
前作を読む限り、騒動に乗じて何か事を起こそうとはしてるんですよね。
ただガイの性格的に有利に戦えない状況で戦うタイプとは思えないので、そこが不自然と言えば不自然かな?
火事場泥棒とか不意打ちならやりそうですが。

後は、戦闘不能状態でもゴードムエンジンが稼動できるかどうかが若干疑問ではあります。

早いうちに指摘できなくて申し訳ありません。

80:名無しより愛をこめて
08/10/27 19:39:20 3qe+MO8p0
SS廃棄してもらったほうがいいかな?
個人的には制限下にないなら戦うようにも見えるけど。


81:名無しより愛をこめて
08/10/27 19:49:48 YZrwegnrO
っと、ちょっとたんま。

このままバラバラに意見を出しても◆8ttRQi9eks氏も行動を取りづらいでしょうし、議論スレに場所移しませんか?

82:名無しより愛をこめて
08/10/27 20:15:57 TnPCKqZYO
議論も無く破棄は行き過ぎでは?
続きは議論スレでよろしくお願いします。

83:名無しより愛をこめて
08/10/27 20:18:36 3qe+MO8p0
でも流れ的に指摘受けたら修正するか廃棄の二択だしな。今回は話の根幹部分だし。
指摘受けて訂正して、また突っ込みうけて訂正して…って地獄の行脚だよ?
これ以降は議論スレで。


84:名無しより愛をこめて
08/10/27 20:27:17 +rpjSIH70
ネジブルー(ネジビザール)の一人称って「俺」じゃなかったっけ?

85:名無しより愛をこめて
08/10/27 21:02:35 TnPCKqZYO
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

続きは議論スレにてお願いできませんでしょうか?


86:名無しより愛をこめて
08/10/28 01:47:27 5lOlat5B0
遅ればせながら、感想を。
さくらとガイ、ネジブルーとフラビの対比が見事でした。
特にさくらが足を舐める悲惨さとフラビの無邪気さゆえの自滅っぷりがよかったです。


87:名無しより愛をこめて
08/10/28 23:18:49 byGX3p1rO
議論スレにて作者氏より指摘箇所を修正の上再投下との返答がありました。

以上報告まで。

88:名無しより愛をこめて
08/10/29 14:41:05 j+uVXtqZ0
板違いです
バトルロワイヤル・二次創作は以下の板でどうぞ
見苦しい叩きあいも以下の板でお願いします
下記の板にはバトルロワイヤルスレッドが多数ありますので早急に移転してください
URLリンク(namidame.2ch.net)

89:名無しより愛をこめて
08/10/29 15:36:57 Ng0Ppp99O
ご意見のある方は議論スレまでどうぞ
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

90: ◆8ttRQi9eks
08/10/30 00:08:51 4XR9ZLoJ0
修正版をアップしました。
たびたびの修正申し訳ないです。

91:名無しより愛をこめて
08/10/30 16:37:47 b9+ftLUp0
志村ー!タイトル、タイトル。

92:名無しより愛をこめて
08/10/30 17:42:01 bUevqWLs0
遅くなりましたが、読了です。
修正版投下お疲れ様でした。
自分は問題ないと思います。
亡国の炎との対比の効いた良作でした。GJです!

それにしてもさくら姐さん、言い過ぎだw



93: ◆8ttRQi9eks
08/10/31 21:35:02 GMv5l3d30
ありがとうございます。
タイトルは「堕落」で。
それと申し訳ないのですが、さくらの支給品からスコープショットも外して下さい。
消し忘れました。

94:名無しより愛をこめて
08/10/31 23:18:52 6+ceuHVk0
さくら姐さんが可哀想過ぎて興奮する

95: ◆i1BeVxv./w
08/11/02 02:54:34 Ikf0SyM30
ただいまより投下いたします。

96:みどり色の罠 ◆i1BeVxv./w
08/11/02 02:55:59 Ikf0SyM30
「某、拙者の邪魔をするつもりか」
「そういう命令だから仕方ないネ」
 深い森の中、対峙する二人の怪人。
「拙者は剣将ブドー。一応、名を聞いておこう」
 一人は宇宙海賊バルバンの魔人。まるで日本の時代劇に出てきそうな武士の風貌をした男―剣将ブドー。
「幻獣バジリスク拳のサンヨ」
 一人は幻獣バジリスク拳使い。こちらは中国戦国時代の武将のような甲冑を身に纏った大男―四幻将サンヨ。
 互いに将の名を頂く二人は敵意をむき出しにし、相手の出方を窺っていた。
「いくヨ!」
 先に動いたのはサンヨだった。左掌に幻気の塊を作り出し、それを投げつける。
 ブドー目掛け、一直線に飛ぶ、幻気の塊。
「甘い」
 身体を反らし、あっさりと避けるブドー。しかし、サンヨも一発で終わるとは思っていない。
 質より量。下手な鉄砲数撃ちゃ当たると言わんばかりに、二発目、三発目を次々と撃ち出していく。
 だが、一発たりともブドーに命中することはなかった。
 ディパックからゲキセイバーを取り出したブドーは、ゲキセイバーを構えると、空中へと飛び上がる。
 逞しき匠の技を托す薬によって、手に入れたゲキワザ―ゲキセイバー翔翔斬。
 ブドーは滑空し、サンヨの懐へと飛び込むと、ゲキセイバーを振るった。
「てぇい!てぇい!てぇーい!」
「ぐぅ、げっ、痛い、痛いヨ」
 苦痛のあまり悲鳴を上げるサンヨ。しかし、それで攻撃の手を緩めるほど、ブドーはお人好しではない。
 むしろ、その攻撃は激しさを増し、サンヨの身体をバラバラにする勢いで切り刻んでいく。
「ゲンギ・大重鈍化!」
 苦し紛れにサンヨはゲンギを放つ。
 ゲンギ・大重鈍化―重力を操り、敵を何十倍もの重さにする技だ。
 ブドーに襲い掛かる不可視の攻撃。
「っ!」
 だが、それすらもブドーには通じなかった。
 第六感の赴くままに、攻撃の手を止め、身をかわす。
 刹那、地面に大きな凹みが生まれる。そして、その凹みはブドーの草履の先で止まっていた。

97:みどり色の罠 ◆i1BeVxv./w
08/11/02 02:57:00 Ikf0SyM30
「これをかわすかヨー!?」
 サンヨの技は実質、これで打ち止めのようなものだった。本来なら、サンヨにはまだまだ強力なゲンギはある。しかし―
(殺しちゃ駄目どころか、できるだけ傷つけるなとか、訳わからないヨ)
 一応、ブドーに使っていない技で殺傷力のばい小軽鋭化という技が残されているが、大重鈍化を避けたブドーに到底通用するとは思えない。
「うん?小軽鋭―ぐげっ!」
 呆けたサンヨに突き刺さる追撃の手裏剣。
「お、お前、相当やるヨ」
「ふん、当然だ。―双剣合身」
 一対のゲキセイバーを合わせ、一振りの剣とするブドー。
(と、とどめを刺すつもりだヨー。考えている暇はない。こ、こうなったら一か八かだヨ)
「シュリケンジャー!!まだかヨー!!!」
 サンヨは大声を張り上げ、その名前を呼ぶ。
 自分にブドーと戦うように命じた男の名前を。理央を助けるための時間稼ぎを命じた男の名前を。
「シュリケンジャー?」
 
―ブルルルル!!

 その言葉を合図にしたかのように、森に突如としてエンジン音が響き渡る。
(そういえば、センと理央の近くにはバイクが……)
「い、今の内だヨ」
 サンヨはエンジン音を聞くや否や、ブドーの気を引けたと思ったのだろう。一目散に逃げ出そうと踵を返す。
「逃がさん!」
 しかし、それを見逃すブドーではない。背中目掛け、ゲキセイバーを一閃する。
「なに!?」
 だが、それは止めの一撃とはならなかった。サンヨはその一撃を浴びると、高く、遠くへと飛んでいく。
「ひっ…か……か………っ…………た……………ヨ………………~!」
 次第に遠ざかっていくサンヨの声。
 ブドーは自分がまたも策略にはまったことに気付いた。
「ぬぅ、してやられたか」
 ゲンギ・小軽鋭化―大重鈍化とは逆に対象を何十倍もの軽さにする技。

98:みどり色の罠 ◆i1BeVxv./w
08/11/02 02:58:29 Ikf0SyM30
 サンヨはそれを自らに使うことで、ブドーからの逃走に成功したのだった。



 サンヨを逃がしたブドーは、エンジン音が聞こえた方向へと歩を進めた。
 案の定、そこからはセンの姿も、理央の姿も消えている。
 しかし、妙なことにバイクだけは残されていた。
「ふむ、バイクを使わなかったのか。ならば、サンヨのことなど放っておき、早急に追うべきであったか」
 何気ない風を装いながら、ブドーは辺りを注意深く確認する。
 一度、センには一杯食わされている。
 今回も逃げたと見せかけて、自分が去るのを待っているのではないかと。
 ブドーは五感を研ぎ澄ます。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の全てを使って、ここにいる何者かの気配を探る。
「………そこだ!」
 ブドーは一本の木目掛け、手裏剣を投げつける。
 予想通り、手裏剣が命中する瞬間、木から飛び出してくる一陣の風。
 それは残されたバイクへと降り立った。
「やれやれ、ミーの気配を察知するとは、中々やるね」
「お主がサンヨの言っていたシュリケンジャーか」
「そう、人呼んで、緑の光弾。天空忍者シュリケンジャーさ。変身はしてないけどね」
 ブドーはシュリケンジャーを観察する。
 見た目は髪をオールバックにまとめ、黒服で固めた軽そうな男だが、佇まいでかなりの腕であることがわかる。
 大体、察知した気配もわずかなもので、センとのことがなければ、見逃していたことだろう。
「ふん。理央とセンはどうした?」
「あの二人かい?あの二人なら逃げてもらったよ。北か、南か、東か、西か、どこかにね」
「そうか」
 予想通りの言葉だったが、ブドーはシュリケンジャーから明確に聞いた逃げたという言葉に何故か安堵を覚えた。
 幸か不幸か、センを狙った弾丸は理央へと命中した。命中した場所は左胸、心臓の位置、致命傷の可能性も充分ある。
 しかし、それでは真の意味で理央を倒したとはいえない。
 彼らが逃げ、そして、それを治療して、再び、自分の前に立ちはだかるのなら、それがもっとも望ましい。
(信念など不要。手段は選ばぬ。されど、我が未練、今だ消えずか)

99:みどり色の罠 ◆i1BeVxv./w
08/11/02 02:59:32 Ikf0SyM30
「それじゃあ、ミーはこれで失礼させてもらうよ」
 シュリケンジャーはバイクに跨ると、改めてエンジン音を轟かせる。
「待て、拙者がこのままお主を逃がすと思うのか?」
 制限時間が間近に迫っていることは承知していたが、ブドーは半ば反射的にゲキセイバーを突きつける。
 だが、シュリケンジャーは驚いた表情すら見せず、言葉を返した。
「Wait、今は戦うつもりはない。このまま、逃がしてくれないかな?」
「笑止」
「……いいのかい?そろそろ10分経つ。今、戦ったら、負けるのはユーだよ」
 その言葉にブドーの手が止まる。
「お主、制限を知っていたのか」
「当然だろ。今、ユーの相手をして、殺すのは簡単だよ。でも、ミーにはこの後、やることがあるからね。できれば、戦いたくないんだ。
 どうしてもと言うなら相手にならなくはないけど?」
 シュリケンジャーとブドーの視線が交錯する。
 ブドーはそのまま、一刻ほど考えると、静々とゲキセイバーを下ろした。
 今、シュリケンジャーと戦うことがどれほど自分にとって危険なのかは元より承知の上。
(それとも……見透かされていたか?)
「Don't worry、心配しなくても、その内、戦う機会はあるさ。ミーもMurderだからね。Murder同士は生き残っている限り、いつか戦うことになる。そうだろ?」
 シュリケンジャーは軽く手を振ると、エンジン音を響かせ、去っていった。
 バイクの上でシュリケンジャーはボソリと呟いた。
「サンヨとの戦いを見てれば、ユーが殺し合いに乗っていることはわかる。Murder減らしは自重しないとね」



「……………ここは」
 理央が眼を開けると、木々に囲まれた青い空がそこにはあった。
 太陽から発せられる光が、理央の眼を焼く。
「気が付きましたか」
 聞き覚えのある声に、急激に意識が覚醒していく。

100:みどり色の罠 ◆i1BeVxv./w
08/11/02 03:17:12 Ikf0SyM30
(そうか、俺はあいつを庇って……)
 理央は反射的に自らの左胸を見る。
 どこからか調達したのか、包帯が巻かれ、しっかりとした応急処置が行われていた。
 そのおかげか、左胸に痛みはない。
「世話になったようだな」
「いいんですよ。元々、俺を庇って受けた傷です」
 理央は改めてお礼を言おうと、身を起こし、そこで始めてセンの姿を確認した。
「お前」
 そこには木に身を持たれかけたセンがいた。
「良かったです。理央さんだけでも助けることができて。もう俺は駄目みたいですけど」
 だが、センの制服は血にまみれ、大きな染みを作っている。顔もどことなく青白かった。
「銃の奴にやられたのか!?」
 理央の問いにセンは首を振る。
「いえ、何故か銃撃はあれっきりでした。俺がやられたのはロンと一緒にいた怪物です」
「ロンと一緒にいた怪物……サンヨのことか」
「そういえば、そんな名前を名乗っていた気が……ゴホッ、グハッ」
 咳き込むセン。彼の口からは紫色をした血が吐き出されていた。
「理央……さん、お願いがあります。俺の代わりにサンヨを倒してください。まだ、俺たちが襲われた場所にいるはずです。
 あいつを放っておいたら、きっとまた犠牲者が出る。死ぬのは俺一人で終わらせたいんです」
 迷うべくもなかった。ロンとサンヨはこの殺し合いを開いた張本人。倒さないという選択肢はありえない。
 理央は無言で頷くと、踵を返す。
「セン、最後に、誰かに伝えたいことはあるか?」
「……それじゃあ、ドギー・クルーガーに宜しくとだけ」
「わかった。必ず伝えよう」
 理央はそのまま振り返らず、駆け出していった。



「大丈夫、菜月は強き冒険者だもん。大丈夫大丈夫」
 森に弱々しい女性の声が響く。

101:みどり色の罠 ◆i1BeVxv./w
08/11/02 03:18:47 Ikf0SyM30
 まるで呪文のように、大丈夫という言葉を繰り返しながら森を進むその女性の名は間宮菜月。強き冒険者、ボウケンイエローだ。
 真墨に会うため、精一杯の勇気を振り絞り、進んできたが、真墨を思い出せば、彼女の脳裏によぎるのは頭を潰される真墨の姿。
 竜也たちのおかげで癒されていた恐怖が鎌首をもたげ、自然とその声は大きくなった。
「大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈―な、なに?」
 歩く菜月の視界に入る人影。
 それはまるで死ぬ前の真墨のように倒れ伏していた。背格好から男性のようだが、顔はうつ伏せでわからない。
「ま…すみ?」
 おずおずとその倒れ伏した誰かに近づき、顔を確認しようと、菜月はしゃがみこむ。
 その時、突然男が動き出し、菜月の足が掴んだ。
「きゃっ!やっ、離して」
 振りほどこうと、足を激しく動かす菜月。その勢いで手はあっさりと剥がされる。
 よく見ると、その男性のシャツとパンツ一枚という格好だった。よく聞けば、呼吸も荒い。
「変態さん?」
 菜月は急ぎ立ち上がると、その場から逃げ出そうと大地を蹴った。
「ま…って」
 男が言葉を紡ぐ。
「いか……ないで………俺の話を…聞いて……」
 次の言葉で菜月の足は止まった。
「だい……じょうぶ?」
 自分への危機感より、相手への心配が買った。
 先程まで、自分に使っていた言葉で相手へと問いかける。
 男は菜月が耳を傾けていることがわかると、少しだけ表情をやわらかくすると、懸命に言葉を繋げた。
「頼む……理央さんに……つたえて……あいつは利用しようと」
 だが、そこまでだった。男の意識は闇へと沈み、最初に菜月が見た時と同じように大地へと倒れ伏す。
「ちょっと、しっかりして!」
 残された菜月は涙を浮かべながら、男の身体を揺らす。


102:みどり色の罠 ◆i1BeVxv./w
08/11/02 04:47:25 Ikf0SyM30
 だが、菜月の必死の介抱にも関わらず、男の意識は戻らなかった。



「はぁ、もういないよネ」
 一時、ブドーから逃げ出したサンヨだったが、また同じ場所へと舞い戻っていた。
 頭を砕かれた迅き冒険者が目印の場所。
 理由は、それがシュリケンジャーの命令だったからだ。
 シュリケンジャーが理央とセンを逃げるまでの時間を稼ぎ、その後、この場にて合流する。
 簡単だろとシュリケンジャーは言ったが、結果は散々なものだ。
 体中を切り刻まれ、危うく、殺られるところだった。死なないけど。
「あれ、なんか死体の位置が変わっているような気がするヨ~。まあ、そんなことはいいかヨ」
 真墨の死体はうつ伏せから、仰向けに変わり、その服は乱れていた。
 だが、サンヨは特に関心を持つことはなく、ただ、シュリケンジャーへの愚痴を吐き出した。
「あいつ、ロンより人使い荒いヨ」
「あいつとは誰のことだ」
 サンヨの身が固まる。
 それは今サンヨがもっとも会いたくない相手の声だ。
 自分の予想が外れていることを祈りながら、恐る恐るサンヨは振り返る。
「げっ、理央」
「見つけたぞ、サンヨ。センの仇、とらせてもらうぞ」
(な、な、な、なんのことだヨ。そ、そ、そ、それより、サンヨ、今は制限中だヨ。や、や、や、ヤバイヨ)
 怒りに身を焦がす理央。
 恐れに身を振るわせるサンヨ。
 そんなふたりを遠くから見詰めている男がいた。
(さーて、見せてもらおうか。黒獅子の力と、サンヨの末路を)
 男は江成仙一の顔で、笑みを浮かべた。

 数分前―

「冷凍剣、プリーズ!」

103:みどり色の罠 ◆i1BeVxv./w
08/11/02 04:48:15 Ikf0SyM30
 シュリケンズバットから発せられた凍気が理央の身体をたちまち凍らせた。
「さてと」
 シュリケンジャーは凍らせた理央の身体からたちまち銃弾を取り出す。
 ハリケンジャーたちの身体から宇宙サソリを取り出した時に比べれば、簡単な作業だ。
「宇宙サソリ……あの時、ロンはディパックをランダムに渡していたようだけど、意図的に渡していたのかも知れないね」
 シュリケンジャーは取り出した銃弾をその辺に捨てると、ディパックから支給品を取り出し、今度はそれを理央の傷口に埋め込んでいく。
「説明書もないのに、これを判別して、使える参加者なんて、ミーぐらいだからな」
 全てを終えたシュリケンジャーは理央を解凍し、傷を隠すように包帯を巻くと、理央の目覚めを、木に身体をもたれかけ待つ。
 変身を解いたその姿は既に柿生太郎のものではなく、血まみれのジャケットを着た江成仙一に変わっていた。 
 勿論、顔も血もシュリケンジャーのものではない。純然たるフェイクだ。
 制服と顔をいただいた本物の江成仙一は催眠術で眠らせ、匂いや色で判別されないように血は転がっていた死体から新鮮(?)なものを調達した。
 ついでに死体が着ていた防弾チョッキも下に着込んでいる。
 準備は万端だ。
(サンヨが殺せるようなら、その力、利用させてもらうよ。理央、サンヨの話では、ユーは今回の参加者の中でトップクラスの実力者らしいからね)
 理央の力を利用して、他の参加者を殲滅させる準備はこれで整った。罪悪感はない。理央は報いを受けるべきことをして来ている。
(精々、働いてくれよ。君の中の宇宙サソリが君を殺すまでね)

104:みどり色の罠 ◆i1BeVxv./w
08/11/02 04:49:17 Ikf0SyM30
【名前】シュリケンジャー@忍風戦隊ハリケンジャー
[時間軸]:巻之四十三後
[現在地]:C-8森 1日目 午前
[状態]:健康。顔は江成仙一です。1時間30分変身不可
[装備]:シュリケンボール、スワン製防弾チョッキ@特捜戦隊デカレンジャー、SPD隊員服(セン)
[道具]:包帯、基本支給品一式
[思考]
基本方針:殺し合いに乗る(一時的に保留)
第一行動方針:七海とおぼろを五体満足で帰還させる。
第二行動方針:それがだめならアレの消滅を願う。
第三行動方針:サンヨが殺せるか試す。その後、方針を再決定。
備考
・サンヨと江成仙一から一通りの情報を得ました。具体的な制限時間も知っています。
・シュリケンジャーはロンが何らかの方法で監視していることに気づきました。
・炎の騎馬はC-7エリアに隠しています。
・シュリケンジャーの支給品は宇宙サソリ@忍風戦隊ハリケンジャーと包帯でした。

【名前】サンヨ@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:ロンと一緒
[現在地]:C-8森 1日目 午前
[状態]:全身打撲、無数の刺し傷と切り傷、右腕切断。1時間ゲンギ使用不能
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ロンの指示に従う。
第一行動方針:理央から逃げる。
第二行動方針:ロンの指示に従い、シュリケンジャーに協力する。
備考
・制限が2時間であることを知っています。


105:みどり色の罠 ◆i1BeVxv./w
08/11/02 04:51:13 Ikf0SyM30
【名前】理央@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:修行その47 幻気を解き放った瞬間
[現在地]:C-8森 1日目 午前
[状態]:左胸に銃創。肩から脇の下にかけて浅い切り傷。ロンとサンヨへの怒り。宇宙サソリを植えつけられました。
[装備]:自在剣・機刃
[道具]:支給品一式。
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗った相手には容赦しない。
第一行動方針:サンヨを倒す。
第二行動方針:ナイとメアを探す(どちらかは死んだと思っています)。
第三行動方針:メレと合流する。
※大体の制限時間に気付きました。

【名前】江成仙一@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:Episode.12後
[現在地]:C-7森 1日目 午前
[状態]:催眠術により気絶中。制服を奪われアンダーシャツとパンツのみ。左肘複雑骨折、全身打撲(応急処置済)。
[装備]:SPライセンス
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:仲間たちと合流して脱出。
第一行動方針:理央に注意を喚起する。
備考
・制限が2時間であることを知っています。
・SPDの制服はシュリケンジャーに奪われました。


106:みどり色の罠 ◆i1BeVxv./w
08/11/02 04:53:01 Ikf0SyM30
【名前】間宮菜月@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task14後
[現在地]:C-7森 1日目 午前
[状態]:健康。
[装備]:アクセルラー、スコープショット、
[道具]:未確認、竜也のペットボトル1本
[思考]
基本行動方針:仲間たちを探す
第一行動方針:変態さん(仙一)を介抱する。
第二行動方針:真墨の遺体を捜す。

【名前】剣将ブドー@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第24章(ギンガマンに敗れた)後
[現在地]:B-9森 1日目 午前
[状態]:胸と腹に中程度のダメージ。肩に銃弾による傷。1時間戦闘不能
[装備]:ゲキセイバー@獣拳戦隊ゲキレンジャー、一つ目のライフル銃@魔法戦隊マジレンジャー、手裏剣少々@星獣戦隊ギンガマン
[道具]:筆と短冊。サイコマッシュ@特捜戦隊デカレンジャー。予備弾装(銃弾5発、催涙弾5発)。支給品一式(ブドー&バンキュリア)。真墨の首輪。
[思考]
基本方針:戦い、勝利する。
第一行動方針:リオを倒せるほどに強くなる。
第二行動方針:優勝を目指す。
※首輪の制限に気が付きました。

107: ◆i1BeVxv./w
08/11/02 05:25:10 Ikf0SyM30
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点、ご感想などあれば、お願いします。

108:名無しより愛をこめて
08/11/02 12:14:31 jLhBiTjx0
GJ!
シュリケンが思った以上に黒い…
リオ様はロンへの有効打なのに…時限爆弾抱えちゃった……
次回の話でサンヨは生き残れるのか非常に気になります。
面白かったです。

109:名無しより愛をこめて
08/11/02 16:16:25 HdPBCs4fO
投下GJ!です。
リ、リオ様ピーンチっ!
センさんがー!!と思いきや…シュリケンジャーが変装していたとは。
シュリケンジャー、ステルスとして、かなり優秀ですね。流石、忍者だ。
リオVSサンヨの戦いの行方もかなり気になります。

それにしても、シュリケンジャーがやったとバレたら、彼女が大暴れしそうなw
今後の展開が楽しみです!GJでした!

110:名無しより愛をこめて
08/11/02 16:22:20 V1sabhqOO
シュリケンジャー手強いマーダーになったな。
策略が凄いですね。面白かったです。

菜月の「変態さん?」に吹いたw


111:名無しより愛をこめて
08/11/03 14:10:14 IWFDbtazO
まとめ更新乙です。
いつもありがとうごさいます。

112:名無しより愛をこめて
08/11/04 16:05:47 Gv7tjpL10
まとめ更新お疲れ様です。いつもありがとうございます。

遅くなってしまいましたが、次の煽り文ができましたので投下します。

113:名無しより愛をこめて
08/11/04 16:06:48 Gv7tjpL10
011.献身と勘違い
世の中色んな人がいるものです。
  例えば、芋ようかんで巨大化する人とか、命を二つ持ってくる人とか、脈が無くても生きてる人とか。

012.黒獅子の誇り
  男の想いはすれ違う。ただその誇り高さゆえに。

013.地獄から来た恐竜野郎
  運命を決めるコイン。そのコインさえ些細なきっかけで変わるもの。
  弾かれたコインを手に男は夜風の中を不敵にときめく。

014.オールド・ジェネレーションズ
  油断大敵、怪我一生。
  仲間だからって安心してはいけません。悲しいけどこれ殺し合いなのよね。

015.夢×命×未来
  少年はまだ知らない。戦う意味を。生命の未来を。
  それゆえに引いた引き鉄は少年に出会いをもたらした。

114:名無しより愛をこめて
08/11/04 16:07:32 Gv7tjpL10
016.冒険者達、西へ
  腕に着けるは戦友(とも)の形見、胸に秘めるは小さな強がり。
  青年と少女は西へと旅立つ。ただ仲間の姿を追い求めて。

017.太陽と不滅の牙
  禍々しき遺跡の只中に男が二人。
  彼らを待つのは邂逅か、血塗れた未来か……

018.阿修羅の如く
  抗う事が勇気でも。貫く事が正義でも。
  今はただ血塗れた道を進み続ける。その思い、阿修羅の如く。

019.龍の陰謀(はかりごと)
  さあ、箱庭は閉じられた。
  光も救いも希望さえ、今は届かぬ彼方へと。
  悪意の道をいざ進め。

020.サーガイン Is murder?
  目と目があったその日から恋に花咲く事がある。
  目と目があったその日から誤解に花咲く事もある。

115:名無しより愛をこめて
08/11/04 16:08:54 Gv7tjpL10
では、失礼しました。

116:名無しより愛をこめて
08/11/04 19:11:45 tH/vDpJJ0
乙!
相変わらずセンスいいな。
いずれこの煽りもまとめサイトで見れるようになったらいいな。
続きもよろしく!

117:名無しより愛をこめて
08/11/04 19:49:46 nvY7WKmuO
GJ!
良い煽り文をつけてもらえると燃えてくる。
これからも楽しみにしてます。
もう一度GJ!

118: ◆i1BeVxv./w
08/11/05 04:24:40 9A3ycarF0
煽りGJです。
次回更新の折はまとめサイトにも組み入れさせていただければと思います。

それではただいまより投下いたします。

119:ネジレてキレてツイてる男 ◆i1BeVxv./w
08/11/05 04:25:42 9A3ycarF0
 無数に飛び散った肉片の中心で血まみれの怪物は恍惚の笑みを浮かべていた。
 自分の肉体を押し込めていたスーツが破壊されたことで、怪物―ネジビザールは一種の開放感を味わっていたのだ。
 ネジトマホークという武器ではなく、自らの爪と牙を使って相手を引き裂くのはやはり快感が段違いだ。
「彼女を引き裂いただけでこれだけ気持ちいいんだ~。メガブルー、君だったらもっと気持ちいいんだろうね~、ヒャハハ」
 30分ほどそうしていただろうか。身体に付いた血が液体から固体へと変わり、多少の不快感を与える。
「そろそろ邪魔になってきたね、コレ」
 ネジビザールは身体に力を込める。
 彼は氷の怪物。物体を凍らせるのはお手のものだ。
 ネジビザールは凍らせることで、血を身体から剥がそうと考えた。
 しかし、いくら力を込めようとも、血が凍ることはない。聡いネジビザールはすぐにその原因を思いつく。
「なるほどねぇ~、これが制限ってやつか。中々面白いことを考え付くよ」
 ミンチになった女がピーチクパーチク騒いでいたのはこのことだったのだろう。
 だが、ネジビザールにとっては狩りを面白くするための単なるカンフル剤だ。
 女ももうちょっと楽しむ心があれば、もう少し長生きできたのにと、ネジビザールはまた笑う。
「さて、凍らせることができないんなら、ふき取らないとね」
 女の服は彼女と一緒にバラバラになり、血にまみれてしまった。
 ならばと、ネジビザールは女のディパックを手にする。引き裂いて、タオル代わりに使おうと考えたのだ。
 しかし、その必要はなかったようだ。女のディパックにはどこからか調達したのか、好都合なことにタオルが入っていた。
「あの女は最初から最後まで役に立ってくれるね。それともオレがツイてるのかな~。どっちが正しいかはアレを確認すればわかるか」
 ネジビザールはタオルで血を拭いつつ、自分のディパックに眼を向ける。
 彼はキレてはいるが、頭の切れも決して悪い男ではない。メガブルーへの執着を除けば、割と冷静な方だ。

120:ネジレてキレてツイてる男 ◆i1BeVxv./w
08/11/05 04:26:31 9A3ycarF0
 ネジビザールは自分のディパックの中身が美希の手によって、すり替えられていることに気付いていた。
 美希がテルミット弾を使って、爆発を引き起こしたのも知っている。美希が自分とメガブルーたちとの同士討ちを狙って、協力したこともだ。
 にも関わらず彼が美希を自由にさせておいたのは、面白そうだったからの一言につきる。
 策士を気取っている奴の鼻っ柱を叩き折るのは中々の快感だ。今回もここぞというタイミングで種明かしをし、美希を切り刻んでやるつもりだった。
 ただ残念なことに美希はどこかに言ってしまったが。
「まあそれはいいや~。さて、バイクの代わりに何を入れてくれたのかな?」
 一頻り、身体を拭き終えたネジビザールは自らのディパックの確認を始めた。
 中には血の付いた忍者刀と首輪。そして―
「名簿?……………へぇ~、これはこれは。ヒャハハハハッ!いいね~、バイクと交換にしては充分過ぎるものだよ」
 その名簿には参加者たちの写真や性格、思考が詳細に書かれていた。勿論、自分のものもある。
 なるほど、これを見ていたから、自分と交渉しようと思ったわけだ。
 だが、そんなことがどうでもよくなるほど、あることが記載された名簿の1ページはネジビザールを激しく興奮させた。
「こいつが、こいつが、こいつが、メガブルー、メガブルー、メガブルゥゥゥゥーーーーーなんだねぇぇぇぇ!」
 参加者の一人、並木瞬のページ。
 そこには彼の写真と共に、はっきりと彼がメガブルーであることが書かれていた。
「フフフフフフフフフフフフッ!!!ヒャハハハハハハハッ!!!意外と二枚目じゃないか。この綺麗な顔が苦痛に歪むと思うと………フヒャハハハハッ!フヒャハハハハッ!ゲヒャッ!」
 ネジビザールは笑った。それこそ、呼吸ができなくなるほどに。笑い死にしそうなほど。
「ウヒャハハッハハッハハッ!ウヒャハハッハハッハハッ!」
 笑って
「フヒフヒウヒヒヒヒヒヒッ!グヒフヒウヒヒヒヒヒヒッ!」
 笑って
「GYAHAHAHAHAHAHAHHAHARAHAHHAAAAAAAAAAAAA!!!」
 笑った。



「10時ピッタリだね」
 ネジビザールは今しがた禁止エリアになったG-5エリアを抜け、H-5エリアへと入った。
「笑いすぎて危うく間に合わないところだったよ」


121:ネジレてキレてツイてる男 ◆i1BeVxv./w
08/11/05 04:28:26 9A3ycarF0
 一歩間違えば、首輪が爆発し、死が待っているというのに、ネジビザールに慌てた様子は見られない。
                                                  ・・・・・・
「さて、オレの勘だと、ヤツはこの辺りにいるはずなんだけど。どうかな~?ねぇ、ネジシルバー?」
 詳細付き名簿を見たネジビザールはメガブルー以外に知り合いがいることにようやく気が付いた。
 それが他の誰かだったら、寄り道はしなかったかも知れない。
 しかし、そいつはメガブルーとは比べるべくもないが、ほんのちょっぴり、ネジビザールがメガブルー以外に殺したいと思える人間だった。
「北西は大体見て回ったし、拡声器の届く範囲だったら、あいつも来るはずだからね~。
 東ならメガブルーと合流するといい~。もっと楽しくなるから。でも、できれば先に会いたいな~、ネジシルバー。
 君の首を持っていた時のメガブルーの顔から楽しみたいからね」
 ネジビザールはまた笑いそうになるのを、グッと堪える。いつ誰と会うかも知れない。しばらくは善良そうな顔をしているのがいいだろう。
 なぜなら、今、彼は人間の姿になっているのだから。
 肌の色はうっすらと赤みを帯びた黄色。髪と瞳の色は黒く、唇に閉ざされた歯を外面から覗き見ることはできない。
 ネジレンジャーの共通の能力に人間への擬態がある。自らを弱体化する能力は制限の対象にならないのか、彼は制限中にも関わらず人間への擬態に成功した。
 その姿は誰かを真似るものではない。ただ、その個人にあった人間の姿へと擬態するだけだ。
 だが、彼の姿は何故か並木瞬に似たものになっていた。
「待ってろよ、ネジシルバー。君にされたことと同じことを君にしてあげるよ」
 彼の顔はどことなく並木瞬に似ていた。彼をよく知らない者ならば、彼を並木瞬と誤解するかも知れない。
 しかし、本物の彼を知るものなら、気付くことだろう。
 彼はこれほどまでに邪悪には笑わないと。


122:ネジレてキレてツイてる男 ◆i1BeVxv./w
08/11/05 04:29:30 9A3ycarF0
【名前】ネジブルー@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:41話(ネジビザールとして敗れた後)
[現在地]:H-5海岸 1日目 昼
[状態]:全身に打撲、傷有り。人間に擬態中。その間のスペックは能力を発揮しない限り、人間と変わりありません。
[装備]:ネジトマホーク、クロノチェンジャー@未来戦隊タイムレンジャー
[道具]:ソニックメガホン@忍風戦隊ハリケンジャー、闇のヤイバの忍者刀@轟轟戦隊ボウケンジャー
[道具]:支給品一式×3、詳細付名簿、スフィンクスの首輪、拡声器。
[思考]
基本行動方針:メガブルーを殺す。
第一行動方針:メガブルーを苦しめるためにネジシルバー(早川裕作)を殺す。
※ズバーンとマシンハスキーはF-5都市に放置しています。


123: ◆i1BeVxv./w
08/11/05 04:42:38 9A3ycarF0
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点、ご感想などあれば、お願いします。

セルフ議論スレ行きな点が一点。
制限期間中の人間への変身は制限に引っかからないのか?
自己解釈だと、バンキュリアやヒカルは本来の姿ではないのに、人間態時は能力制限に引っかかっていないので、その状態下で能力を発揮しない限りはありなのかなと。
あと擬態中の姿は他のネジレンジャーは各々適当な姿だったので、似てなくても良かったのですが、双子ネタがあったので似せてみました。
問題があるようでしたら、修正いたしますので、議論スレにて。

124:名無しより愛をこめて
08/11/05 17:18:58 l2sb+M0OO
素早い投下!そして心からGJ!!
キレてるくせに冷静なネジビザールはまさに脅威。
シルバー。逃げて、逃げてぇー!


個人的には変身は問題無いかと思います。
首輪も幻気で出来ているので機械仕掛けとは違い、その辺りの制限はランダムで良いのでは無いでしょうか?


125:名無しより愛をこめて
08/11/05 19:46:57 1nI2jC7F0
時間軸のずれの問題で瞬は裕作さんを知らないよな。
それはそれとしても美希にとってアキレス腱かも>ネジブルー

126:名無しより愛をこめて
08/11/05 20:31:30 m37EeZNxO
相変わらず早い投下GJ!です。
ネジブルーもといネジビザール怖い、怖いよw
裕作さんもただ騙されるたまではないでしょうがどうなることやら…
ステルスする気満々なのがかなり怖いです。
ネジビザールの狂気が伝わってくる作品でした。GJ!

制限期間中の人間への変身ですが、自分はありだと思います。
おっしゃる通り、ヒカル先生やナイメアの事がありますし。

127: ◆MGy4jd.pxY
08/11/07 20:55:21 S6diC9PBO
したらばにも書きこみましたが間に合わないかもしれませんので延長をお願いします。

128:名無しより愛をこめて
08/11/08 11:05:59 9UqzPLOV0
了解です。楽しみにお待ちしております。

129:◇8ttRQi9eksの代理投下
08/11/10 10:36:18 4EPfqI6D0
歩くたび、身体が揺れるたび、左肩の刺し傷が疼く。
屍と化した身体から失われたのは熱と血液で、痛覚は生前のまま。
メレは当て所もない歩みに疲労の色を濃くしていた。
…-理央もまた、かつてはこのような深い絶望に沈んでいたのであろうか-…
「少し…疲れたわね……」
道の脇に腰を落とし、ディバッグからペットボトルを取り出したが、既に水は尽きている。
これでは顔も洗えないではないか。
「理央様…」
益々重くなる気持ちを抱えながら、縋る様に愛しいその名を呼ぶ。
そっと、右手で傷口を隠すように肩を抱く。
そうしているとあの時の温もりが蘇ってくるような気がしたのだ。

始まりの空間でロンが自らを指名したその時。
普段の寡黙な彼からは想像も出来ない熱い眼差しで見つめられ、面食らったのを覚えている。

『大丈夫だ、メレ…どれだけの距離を隔てようと、ロンが何を策していようと、
必ず、お前を守る! だから…生き残れ、どんな手段を使っても!!』

他の参加者の目を全く意に介さず、メレの身体を掻き抱き、彼は耳元でそう告げたのだ。
冷たい身体に彼の熱が伝わるのが心地よかった。
この瞬間がいつまでも続けばいいと、埒でもない事を本気で願った。
すぐに別離が訪れるのを知らないではないのに―…


「あんな理央様…初めてだった……」
メレは知る術もないが、彼と理央の微妙な時間軸のずれが新鮮な驚きを与えていた。
放送の中に幸いにして理央の名はなかった。
実力者たる彼がそうやすやすと首をとられはしないことは承知している。
しかし、これはロンの仕掛けたゲーム。


130:◇8ttRQi9eksの代理投下
08/11/10 10:37:39 4EPfqI6D0
幻技の件と言い、不透明なルールの中でどんな不測の事態が起こるか知れない。
自分達は他の参加者よりも主催との縁が悪い意味で深い。
ロンが何かしら仕掛けてくるのは確実なのだから。
「…理央様…会いたい……」
口を突いて出るのは彼の名ばかり。このゲームでメレが心から信用できるのは彼だけだ。
しかし、同時にメレは一人でいることの限界を感じ始めていた。
既にゲームが始まって6時間あまりが経過し、参加者達は各々の思惑の下にいくつかのグループを
結成している。
メレ自身もそうした連中をいくつか見てきた。
だが、下手な相手と組めば寝首をかかれる恐れがある。人選は慎重に行わなければならないだろう。
自然、知り合いを回想する形になる。
「え~と…私の知り合いは―…」
まずは、理央。
彼は完全にメレの味方だ。
しかも、嬉しい誤算でこのゲームに参加させられている彼はメレに対し親愛の情が深い。
あの熱い眼差しは恋人を見るそれだ。
自然と口角が緩んでいく。メレにとっては、理央こそ生きる糧。
彼のためなら命も惜しみはしない。大袈裟でもなんでもなくメレは本気でそう思っている。
死への恐怖は既に死人であるメレにはない。
怖いのは彼を失うことだ。

二人目はサンヨ。
こいつは話にならない。自分と同じ四幻将の一角だが、彼は元々ロンに近い。
今回も彼に追随して動いていると観るのが自然だ。
どうみても敵。出会い次第、消しておいた方が無難だろう。


131:◇8ttRQi9eksの代理投下
08/11/10 10:38:50 4EPfqI6D0
そして-…真咲美希。
彼女は名前と来歴を知るくらいで直接相対した経験は殆どない。
メレが知っているのは彼女が激獣拳時代の理央の修行仲間であるということ。
そして、今はゲキレンジャーを支援するスクラッチの重役に収まっているという事くらいだ。
過去の理央を知ると言う点で羨ましさを感じることはあるが、彼女がどんな女性なのか
あまり過去を語りたがらない理央に聞くのは憚られてメレは殆ど知らない。
死んではいないようだが、理央と違い実戦から離れて久しい彼女を戦力とするのは少々不安が残る。
メレとしてはもっと頼りになる戦力がほしかった。

「…理央様以外ろくな奴がいないわね…後は…こいつらか-…」

轟轟戦隊ボウケンジャー。
宇宙拳法使いパチャカマック12世との戦いで成り行きとはいえ、共に戦った経験がある。
ただし、メレは全員の人とな理央知っているわけではない。
メレが知っているのは大胆にも直接臨獣殿に乗り込んできた
ボウケンレッド=明石暁
ボウケンピンク=西堀さくら
この両名だけだ。
しかもさくらはあの時、パチャカマックに憑依されていたことを加味すれば実質的に
メレが面識を持つのは明石暁だけだ。
結論からいえば、明石暁の印象はメレの中でそう悪いものではない。
獣拳使い以外で理央と生身で戦える人間が存在していようとは思ってもみなかったからだ。
マクによる撹乱の後が癒えていなかったとはいえ、臨獣殿に乗り込む度胸もある。
加えて、仲間のために敢えて黒をとるその人間性にも惹かれるものを感じた。
常に傍らに自身を慕う女性が控えているという理央との共通項が、
明石暁へのシンパシーにも似た感情になっているのかもしれなかった。
自身よりも仲間を第一に考える男。それが、メレの中で確立した明石暁の人物像だ。
味方に出来れば彼ほど頼もしい人物はいない。
始まりの空間での一件を見る限りでは彼が殺し合いに乗っていない可能性は高い。



132:◇8ttRQi9eksの代理投下
08/11/10 10:39:54 4EPfqI6D0
西堀さくらに関して言えば、パチャカマックの憑依と言う点を除外しても腕はメレと互角に立つ。
直接拳を交えたメレの感触は悪くない。
しかし、彼らが自分に対しどういうスタンスで臨んで来るかは想像がつかない。
あまり信用するのは考え物だ。
考え物ではあるが、同時にロンに対し戦いを挑むのに彼らの助けは、癪ではあるが是非とも必要だ。
無論、最後を締めるのは自分と理央であろうという根拠のない自信がメレにはあったのだが…

「決めた! こいつらを従えて理央様の下へはせ参じる!! そしてロンを倒すっ!!」

勢いよくその場に立ち上がり、拳を天に突き上げ、叫ぶ。
メレの中では既に崩壊した臨獣殿に代わり、ボウケンジャーを下僕とした理央(と自分)の組織プランが出来上がっている。
素敵な将来の青写真の完成にすっかり気を良くしたメレは意気揚々と歩き出した。
「ふん、ふふ~~ん♪ 待っててくださいね、理央様ぁ?」
ただ、そのプランをどう実現するかは全くの白紙であるのだが-
今のメレに必要なのは自らを突き動かす動機の方だった。

§

…―自分はよくよく、死神に嫌われているらしい―…
殺し合いの只中にあって、グレイは相反するその事実にため息をついた。
廃墟と化したタワーが陽光を背に影に溶け入る様は余計にうらぶれて見える。
まるで今の自分を見ているようで、内心酷く不快な思いがした。
F5エリア-兵どもが夢の跡。



133:◇8ttRQi9eksの代理投下
08/11/10 10:40:44 4EPfqI6D0
辺りを白く消し飛ばすほどの閃光と割れんばかりの爆音が轟いたのは、さくらとあんな形で分かれてからすぐ後のことだった。
既に戦いが始まっていることを察知し、駆けつけたのだがすでにそこはもぬけの殻。
ほんの僅かな時間のずれで彼はガイともすれ違っている。
本来なら幸運なのだが、本人はそれがちっとも愉快ではない。
「あんな小競り合いがなければ…今頃は戦いの只中に在れたものを」
グレイは紫煙を燻らせながら、瞑想する。
確かにさくらの行動は異様だった。
仲間の死を見せ付けられて心に闇が生まれたか。元々あぁするつもりだったのか。
「それにしては行動が極端すぎる…」
あるいは―思い至った一つの答にグレイは思考を更に深める。
さくらは何らかの意思により傀儡にされていて自分でも分からないままに動かされている。
「だが、何のためだ?」
自分のようにロンに魅入られたマーダーか。それにしては先ほどの行動は無謀すぎた。
あまりに計画性に欠ける上、戦力差を埋める智恵が全く見当たらない。
彼女の全てを知るわけではないが、そんな無計画なタイプではないはず。
ならば、このゲームでさくらが司る役割はなんだというのか―そして、
…―自分が果たすべき役割はなんなのか―…
思考という名の無限の宇宙から帰還した彼は、確かな一つの答えを胸に歩き出した。


§


職業柄、同僚の死はそう珍しいものではない。
今の地位に至るまで多くの仲間の死を見てきた。
肩書きに重みを感じるのは、それだけ多くの死を経た先に今の自分がいるからだ。
だから、彼女たちの死も決して特別ではない。
けれど胸に沸き起こる慟哭をドギークルーガーは抑え切れずにいた。


134:◇8ttRQi9eksの代理投下
08/11/10 10:48:54 4EPfqI6D0
「スワン…! ウメコ…!!」
その二人の名を喉の奥から搾り出す。
守れなかった。大切な女性(ひと)を。掛け替えのない部下を。
もう二度と戻らない笑顔を想った。
もう二度と聞けない声を必死に思い止めようともがいた。
傍らのシオンと恭介は掛ける言葉も見つからずに立ち尽くすドギーを見つめている。
たった数時間で最愛の女性と部下を失ってしまった彼に言えることなど、何もなかった。
「元気を出してくださ――…」
それでもシオンが声を上げたその瞬間。

「見るに耐えんな、ドギークルーガー…戦士の女々しい有様など無様以外の何者でもない…」

「お前…!」
我を失っていたドギーは不意に叩きつけられた侮蔑の言葉に現実への帰還を果たした。
低くくぐもった声の先に、グレイがいた。
ここを発つ前と比べ、やや傷ついた姿で。
「お前! 少しは気遣いってもんがねーのかよ!! この人は今なぁ!…あれ、さくらさんはどうしたんだ、姿が見えないけど??」
当然その傍らに存在するべき人物の不在に恭介は疑問を投げかけた。
「まさか…お前―! さくらさんを!!」
考え付く結論は唯一つ。恭介は激情に突き動かされるまま、アクセルチェンジャーを構える。
「慌てるな、阿呆が…シオン、無事で何よりだ」
今にも飛び掛らんとする恭介を尻目にグレイはシオンへと向き直る。
「グレイさん…何があったんです?」
シオンの目にも恭介ほどではないが、困惑の表情が浮かんでいる。
「…今からする話を信じる、信じないはお前達の勝手だ…もしも信じられないなら俺を倒すなり、なんなり好きにしろ……―」


135:◇8ttRQi9eksの代理投下
08/11/10 10:49:30 4EPfqI6D0


グレイは事の顛末を語った。
放送を境にさくらが豹変したこと。
彼女が殺し合いに乗ったこと。そして自分が彼女を殺していないこと、全てを。
「そんな…! さくらさんが…そんなことするなんて…!!」
「…………………………………………」
シオンは告げられた事実に困惑の色合いを深めた。
ドギーは貝の様に押し黙ったまま、何事か思案している。
「俺は信じねぇぞ! そんな下手な作り話で俺たちを動揺させようなんて随分セコイ真似してくれるじゃねぇか!!」
いきり立つ恭介は先ほどから臨戦態勢の構えを解いてはいない。
人よりも大きな瞳はきつくグレイを睨んだまま。
彼の脳裏には暴虐な殺戮マシーンに無残な仕打ちを受けるさくらの姿がありありと浮かんでいた。
「…止めるんだ、恭介君。こいつは恐らく嘘を言っていない」
すっと水平に伸ばした右腕で恭介とグレイの間にドギーが割ってはいる。
「ドギーさん! あんた、こんな奴のいうことを信じるってのか!?」
非難の声を上げる恭介に向き直り、ドギーは告げた。
「こいつがさくら君を殺したなら、わざわざ偽ってまで言い訳する必要はない。
俺たちを殺したいなら問答無用で強襲すればいいだけの話だ。作り話なんて必要ない」
「だ・だけど…!!」
「恭介さん…僕もドギーさんの意見に賛成です」
更にシオンが間に入る。
「シオン! お前までこんなやつのいうことを信じるってのか!?」
「…恭介さん、僕だってさくらさんが殺し合いに乗ったなんてこと信じたくはないけど…グレイさんは、嘘は言ってはいないと思う。だって…グレイさん制限中でしょ?」
「なに…!?」
今度は恭介がグレイの方へ向き直った。
「あぁ…今の私は武装一切を使えない…今、お前達と交戦すればまず勝ち目はないだろうな…」
「丸腰でわざわざ戻ってきたわけか…目的はなんだ?」


136:◇8ttRQi9eksの代理投下
08/11/10 10:50:21 4EPfqI6D0
「…その前にお前達に確認しておきたい…6時の放送…あれを聞いてまだ、人を信じられるか?」
ドギーの問いかけにグレイは問いかけで答えた。
「これから先も人は死ぬ。恐らく…シオン、恭介、お前達の仲間も名を連ねて行くだろう…それでも他人を信用できるか?」
全員が言葉を失った。
「これから先に待つのはそういう世界だ。あるいはあの女のように殺し合いに乗るか、場合によってはこの場で命を絶つ方が楽かもしれん…それでも他人を信用できるか? 
ここにいる連中と生死を共に出来るか!?」
グレイは本心を明かす前に答えを聞きたかった。
彼らがどの様な選択をしようと、彼の成すべきことは決まっていたのだが。

「…随分とキャラに合わない言動をしてくるじゃないか…俺はSPD…それも地球署の署長だぞ? 警察官として成すべきことをなす! ただ、それだけだ」
立場を違えども、意見を違えども二人は戦士であるお互いの人格は認めている。
同じ愛する者を喪失したことが皮肉にも彼らの絆を深めたのかもしれない。
だから、どちらかが堕ちるときはもう一方がそれを死と言う形で押し留めるだろう。
「僕も…例え竜也さんやドモンさんに会えなくなっても…僕は皆さんと戦うなんて事は絶対にしない!!! …ロンの思い通りになんて絶対にならない!!!!!」
彼が橋渡しをしなければ、自分達はここに集ってはいないであろう。
グレイは闇に沈んでいたままだったかもしれない。彼はグレイの恩人だった。
「恭介…お前はどうだ?」
最後に。恭介の視線とグレイの赤い視線が交わる。
恭介は言葉を選びながらゆっくりと心底の思いを紡いでいく。
「…俺は…ドギーさんほど強い信念があるわけじゃない…シオンほど、会って間もないやつを信じきれるほど純粋でもない…俺は一般市民だからな…」
恭介の言葉にグレイは何も言わずじっと耳を傾けていた。
「…………………………………………」
「……俺は…一般市民なんだよ……」




137:◇8ttRQi9eksの代理投下
08/11/10 11:38:30 4EPfqI6D0
彼はそう繰り返した。偽らざる、恭介の気持ちだった。
「だけどよ…俺は…一般市民であることを貫くぜ。どこまでも普通であってみせる-! 
俺は瞬が心配だ。裕作さんが心配だ。菜摘が心配だ。シグナルマンが心配だ。あいつらが殺されたら…きっとわけわかんなくなっちまう…だけど、それで他人を襲うことなんてことだけはしない!! そんなこと絶対にしない!!!」
肩を震わせ、恭介は言い切った。胸の動悸が激しい。
そっと、恭介の肩に手が置かれた。ドギークルーガーの大きな手だった。
「これだけのことを言わせたんだ…お前の心底も聞かせてもらおうか…」
ドギーの視線とグレイの視線が深く交わる。

「私は…戦う」


掛け替えのない仲間の命を奪われ、我を失った女の悲しみを見た。
愛する人と信頼する部下を失った男の慟哭を聞いた。
もう、奪い奪われる光景は沢山だった。
―――竜…――――
腕の中で崩れた人の言葉が脳裏に木霊する。
あの絶望を、慟哭を、もう味わいたくはなかった。
目の当たりに、したくなかった。
「本来なら…私はバイラムと共に滅び去るべきだった…だから、私は生ける屍も同じだった…
ドギークルーガー…私はお前との戦いで全て終わりに出来ると思った…宿敵との決着を奪われ、死に場所を失った憐れなガラクタ…だが、そんなガラクタにもしなければならないことがある―…」
彼は戦う。そう、今まで彼は戦ってきた。
戦うために生まれた。幾多の戦場を駆けた。
バイラムの幹部達は仲間と呼べるほどの絆を結んではいなかった。
個々が強くなりすぎた彼らは仲間と言うものを必要としなくなっていた。
だから、裏次元人に体力も知力も圧倒的に劣るはずの男が、たかだか肉体を十数倍に高める程度の強化服を纏っただけで自分と対等に渡り合うことに驚愕を覚えた。


138:◇8ttRQi9eksの代理投下
08/11/10 11:39:18 4EPfqI6D0
彼の強さの源を知りたくなった。
それが愛ゆえに、だと言うことをグレイは身をもって知ることとなる。
自分が永遠にそれを喪失した瞬間に。
「私達は同士だ。個々の力ならば私達に力及ばないはずの人間がバイラムを打倒したように…人の絆は何よりも脆く、何よりも強い―…私はそれに賭けてみたいのだ…お前達と一緒に」
何度叩き落されても、立ち上がり、羽ばたいて見せた漆黒の翼が脳裏に鮮明に蘇る。
あの不敵な笑みがありありと浮かんでいく。
彼はこんな自分を笑うだろうか。
グレイは知らない。彼もまた、愛ゆえに死んだ事を。
かつての彼のように自分は何かを守るために戦えるだろうか―
誰ともなく腕が伸びる。
時代も立場も異なる者達の手が垣根を越えて交差する。
そして、重なった。
「しかし、お前の口からそんな提案を聞くとは思わなかったな…」
「全くだぜ…俺たちは即席戦隊だな!」
「恭介さん、なんかカップ麺みたいですよ、それ…どうせなら“ドリーム戦隊”とか言えませんか?」
「おっ! そりゃあいい!! えーと、赤は俺。緑はシオン。ブルーはドギーさん。ブラックはグレイだな!」
「…私がブラックか……」
「なんだ? 嫌なの?」
「…いや、別に……」
「でも、やっぱ女の子がほしいよなー…さくらさんの穴は痛いって言うか…」


「だったらあたしがその穴を埋めてあげようじゃない…た・だ・し…あんたら全員あたしと理央様のために働いてもらうわ!! ロンを倒すためにね! ありがたく思いなさい!!」



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