おにゃのこが改造されるシーン素体12人目at SFX
おにゃのこが改造されるシーン素体12人目 - 暇つぶし2ch924:名も無き改造人間たち1・親友(23/40)
09/03/04 22:28:35 4dYIR1J40

 この少女の左隣にいたのは若いカップルだった。二人は、残り少ない時間を惜しむ
ように、愛を語り合い、交わり、また愛を語り合っていた。当然なのかどうかは
わからないが、その男性が反対隣のこの少女と性的交渉をもつことはなかった。
 初めて気づいたのはどれぐらい前だったか、左側からかすかなあえぎ声とくちゃ、
くちゃ、くちゃという音が定期的に聞こえるようになった。両隣である、カップルと
わたしが寝静まったのを見計らって、「自分を慰め」ているのだった。

 こんな風に女が受け身にならざるを得ない環境だと忘れてしまいそうになるが、
女の子だって性欲はある。周囲でさんざん「見せつけ」られていた彼女は、
激しい欲求不満に陥っていたに違いない。そんな彼女に、この生殖細胞移植機が
どんな意味をもつのだろう。全く予想もしていなかった快楽にひとたび溺れて
しまったら、もう引き返すことはほとんど不可能に違いない。あれほど焦がれていた
快感に飲み込まれながら人間でなくなるのは、多少なりとも幸福だろうか…
 …ここまで考えたとき、奇妙なことに気づく。ガイダンスの中に、洗脳がどのように
なされるのかのはっきりした情報はない。なのになぜかわたしはそれを知っていて、
それに対する「心の準備」がちゃんとできあがっていた。
 それがなぜだったのかをはっきり思い出す前に、奇妙な後悔の念が浮かんでくる。
 わたしは早々と彼女を救う手段などないとあきらめてしまった。だが、本当に
そういう手段はなかったのか。例えば…
 わたしは侵略者にインストールされた知識を検索し始めた。

 ―そう。まったくないこともないんだ。例えば、感覚を遮断する物質を
それとなく彼女に注入すれば…彼女はわたしと同じ条件に置かれることになる。
つまり、洗脳を免れることも不可能ではない。

925:名も無き改造人間たち1・親友(24/40)
09/03/04 22:29:14 4dYIR1J40
 ……そうだ!手はあったのだ。…いやだ!なんであんなに簡単にあきらめちゃったん
だろう!ちゃんと考えれば、もっとちゃんと考えてさえいれば……

「……あぁぁぁぁぁ!お願い!もうやめて!!いっちゃぅぅ!!いっちゃうよぅ!!」

 わたしは、急速にその皮膚の色を変えながら、信じられない声を上げて快楽に
身をよじる少女を見ながら、激しい後悔に襲われると同時に、奇妙にも、
何か漠然とした大きな希望が心に芽生えかけていることに気づいた。

 ―感覚遮断剤の注入と洗脳の経過の予告…それって、まさにわたしが
されたことではないのか?…わたしが今、やれたかもしれないことを、さっき親友が
わたしのためにやってくれた……とは…考えられないだろうか??

 肉体改造の完了を待たず、少女の洗脳は終わってしまったらしい。昆虫に限りなく
近づいた、無表情なモノの肉体を、なおも注射針と光線が作りかえ続ける。
やがて肉体改造も終了し、手術台の上には青い皮膚、同心円上の模様の入った
乳房、太い触角、赤い複眼、ブーツのような足、そして漏斗のようないやらしい
女性器を備えた、異形の化け物―今のわたしと同じ―が横たわっていた。
 わたしは定型文の指示を発した。すらりとした足と豊満な乳房、清楚な顔立ちは
そのままの、おぞましくも美しい「奴隷生物」が立ち上がり、「主」への忠誠を
心からの賛意をもって誓っていた。
 わたしは「引き継ぎ」を終え、「主」に指示された次の任務にそそくさと向かった。
さっき思いついた仮説を早く確かめられる機会を、わたしは待ちわびていた。

926:名も無き改造人間たち1・親友(25/40)
09/03/04 22:30:07 4dYIR1J40

 チャンスはすぐに来た。次の任務は親友と同じ部署だったのだ。とはいえ、
うかつなことはできない。すべてはわたしの思いこみで、彼女がやはり正真正銘の
完成した奴隷生物だという可能性も十分あるからだ。
 任務は、工場で生成されたムカデ型ロボットの足を束ね、箱に詰めるという
地味な作業だった。人間の処刑とか改造とか、胸の痛む仕事でなくてほっとした。
…といっても、この仕事も結局は人間の拉致の手助けなのだが。
 とてもいやだったのは、彼女を犯していたあの男も同じ部署だったことだ。
これでは確かめようがないし、もうこの男とは関わりたくなかった。
 親友を見ると、彼女が彼女のままならば当然感じそうな不快感を見せることもなく、
黙々と作業に従事している。わたしはその一事が、もう決定的な絶望の証のように
感じ、そんな動揺を押し殺しながらやはり黙々と作業を続けた。
 そうして二時間ほど経ったときのことだ。あのいやな男が、アームを束ねる
バンドを収納していたカバーに足を滑らせた。二十センチほどの、黄色くて細長く、
内側がぬるぬるしているカバーはたしかに危ない代物だった。改造人間は基本的に
この種の不注意をしないようにできているのだが、改造直後の調整期にある場合、
まれにこういう事故は生じうる。
 不運、いや…幸運なことに、男の転んだ先には鋭い金属板が立てかけてあった。
男は金属板にもろにつっこみ、生殖器から右の腰のあたりまで、つまり右足一本
まるごと、ざっくりと切断された。蟻男は奇声を上げながら激痛にのたうち回る。
複雑な感情はないが、こういう原始的な反応は残さないと生体維持に都合が悪いのだ。
 わたしは「修理班」を無線で呼び出しながらも、内心残酷な喜びで満たされていた。
いい気味だ。親友を、あんな目にあわせたんだ。このくらい当然の罰だ。
 そう。それほど大した罰でもない。痛みそのものは人間だった頃に劣らず激しい
だろうが、このくらいで改造人間の生命が危険にさらされることはないのだから。

927:名も無き改造人間たち1・親友(26/40)
09/03/04 22:31:00 4dYIR1J40
 そのときだ。わたしの前にいた親友の肩が小刻みに震え始めたのがわかった。
 震えは止まず、だんだん大きくなった。そして「修理班」が到着したとき、
かすかに「ぷ」という声がたしかに漏れた。
 わたしは思わず耳を澄ました。「修理班」は意に介さずに男を担ぎ出していく。
その横で、声は断続的に続き、少しずつ大きくなった。
「…ぷっ……ぷっ……くっ…くっ…くくくく、ぷぷぷぷ…」
 「修理班」が部屋を立ち去ると、親友は腰を折り、お腹を抱え始めた。
「…あはっ…あはっ…あはははは!…見た!?見た!?…さっきの格好!
くくく、あは…ば、バナナの皮で…つ…つるんって…!!」
 最後の一言でわたしも冷静な判断力が飛び去り、わたしの方にも芽生えていた
笑いの衝動に身を任せた。
「…あは!…み、み、見たよ!…ば、バナナの皮!…あは…あは!」
 笑いすぎて息ができない。後はもう二人でお腹を抱えながら、その場に
うずくまり、色々と溜まっていたものをすべて放出するまで無心に笑い続けた。
 それから二人は想像上の涙をぽろぽろとこぼしながら、固く抱き合った。
「…くすン。よかっタ!…洗脳、されてないね!」
「…されなかったよ!…麻酔薬とか、説明とか、色々やってくれたおかげだよ!」
 この倉庫には八時間後の交代時間まで誰も来ない。声も漏れない。それは
二人とも分かっていた。だから心おきなくお互いの感情をさらけだすことができた。
わたしたちは抱き合い、手をつなぎ、大きな試練を二人でくぐり抜けられたことを
喜び合った。肉体は醜く改造されてしまった。感情もいくらか削られてしまった。
でも、ちゃんと大事なものを守り抜けた。人間の良心を失わず、宇宙人の手先に
なることに抵抗できたのだ。

 いくらか落ち着いてくると、親友に聞きたいこと、言いたいことがいくつもあった
ことを思い出し、とりあえずノルマの作業に戻りつつ、親友に話しかけた。

928:名も無き改造人間たち1・親友(27/40)
09/03/04 22:37:16 4dYIR1J40
「わたしはあなたのおかげでこうやって人間でいられてる…心はね。でも、
あなたは?どうして洗脳されなかったの?…あの男の助けがあったとも思えないし…」
「あの男は完全な奴隷。宇宙人ノ手先よ!…だケど、たしかに、あいツのおかげと
言えなくもないわ。…あいつの乱暴でへたくソな責めでめちゃくちゃにされたせいで、
あそこがすっかりダメになっちゃったのよ。多分、心と体の両方デ。だから何にも
感じなかった。痛みハ別だけどね」
 痛々しい話だ。そして、痛みに対して全く無防備だった親友の感情が、わたしより
少し多めにすり減っているのが分かり、なお痛ましかった。こんなあけすけな
物言いをする子じゃなかった。話し方もちょっとだけ変だ。それに、「笑い」は
普通にできるけど、「微笑み」を忘れてしまったようだ。わたしに合わせて無理に
作ろうとしているけど、とてもぎこちない。
 そんな思いはしかし心に秘め、話を続けた。
「わたし…あなたと同じことができたはずなのに、思いつけなかった!あのお姉さんも
救うことができたのに…」
「仕方なイわ。わたしヨりも時間がなかっタんだし。それに…」
「…それに?」
「…あのお姉サんは、わたしじゃなかっタでしょ?」
「………そうだね」
 その通りだった。親友は改造素体がわたしだから、真剣に、真剣に、対応策を
考えたのだ。そして多分、立場が逆だったら、わたしは間違いなく同じこと思いつき、
実行していた。ある意味、ひどい話だが、事実だ。わたしたちはそういう仲なのだ。
 わたしはもう一つ気になっていたことを聞いた。
「そういえば、さっきの含み笑い、我慢できなかったのは分かるんだけど、でも、
まだ『修理班』がいたのに、大丈夫なの?」

929:名も無き改造人間たち1・親友(28/40)
09/03/04 22:38:16 4dYIR1J40
「大丈夫。あいつら、感情をなくしたと同時に感情を読み取る力を失っているのよ。
初期調整中のノイズだくらいにしか思っていないわ」
 その通りなのだろう。だけど…
「だけど!あいつらはいいとして、わたしは?万が一にもわたしが洗脳されているとは
思わなかったの?いくらなんでもばれるわ。…そんなに、あの作戦に自信があったの?」
「ちがう!」
 親友はとても強く抗弁した。
「ちがうよ!自信なんて全くなかった!ただわたしはね、もしもあなたが人間の心を
失っていたら、わたしも…」
「もういいよ!」
 わたしは親友が皆まで言い終える前に、その手をぎゅっとつかみ、先を続けるのを
制止した。…そのせりふは、とても嬉しいものだけど、でも、人間が口にしては
ならないせりふだと思えたのだ。

 怪しまれてはいけないので、わたしたちは侵略者の片棒をかつぐノルマを黙々と
こなしながらもおしゃべりを続けていた。話は二人の「これから」に移っていた。
「性的刺激ガ感情消去のカギ。処置は中断していルだけで、新しい刺激が来れバ
いつでも再開さレるわ。二人とも今は無感覚だケど、これがいつまでも続く保証は
なイ。だから、誘われても、断らなきゃ、だめよ」
 改造人間たちは場所を問わず、見境なく「交尾」をする。オスの蟻男も、メスの
蜂女も共にだ。とはいえ強引にではなく「自由契約」だ。断れば必要以上に
強制してはこない。改造人間たちはみな強力な生物兵器でもある。万一衝突が
起きれば大惨事になる。それは互いに了解されているのだ。
「だけど、いつまでモ断り続けていタら怪しまれる。いずれどウにかしないと
いケない。…手はいくツかあると思う。改造人間ノ解剖学をよク研究して、
いい方法を探しマしょう」

930:名も無き改造人間たち1・親友(29/40)
09/03/04 22:39:05 4dYIR1J40
 親友は感情が削られた分、頭の回転が速くなったようだ。でもいつまでも聞き役は
くやしいので、こちらから別の計画を振る。
「それより、こちらから討って出る計画は?とてもいやで、悲しいことだけど、
この身体をうまく使えば、ふつうの人間にはできないことができるよ。…例えば、
このムカデロボットに紛れて地球に戻って、ロボットたちから人間を助ける。どう?」
 親友は少し考えて、それから意外な返事を返してくる。
「ねえ。いずれローテーションで、わたシたちにもあの『処刑者』の仕事が
回っテくるわね?」
 考えたくない話だ。何でそんなことを急に言うんだろう?わたしが黙って親友の
顔を見つめると、親友はにんまりと笑った。「にんまり」は消されていないようで、
ぞっとするくらい自然な笑みだった。やっぱり少し前とは違う。改造人間の
冷たい心が、ちょっとだけ入ってしまった気がする。
「あまり気に病まなくトも大丈夫。『反逆指数』の評価基準は読んダ?なんだカ
あやふやデ、どうとでも運用できソう。こちらの裁量デ、ロクデナシのケダモノ男を
反逆者に仕立てることなんて、簡単そウよ」
 感情が削られたせいなのか、あの男から受けた心の傷がとても深いからなのか、
親友の語気には何とも言えないすごみがあった。わたしはふと、さっきの
「バナナの皮」は彼女がわざとあの危険な場所に置いたのではないかと思えてきた。
それに、もしかしたら、わたしの横の男のあの改造失敗は…
 …詳しくは聞くまい。いまさらどうでもいいことだ。でも、少なくとも今の
話は、彼女の人間の男どもへの復讐ではあっても、わたしたちをこんなにした宇宙人への
復讐ではない。いったい、何が言いたいんだろう?わたしは親友を見つめるしかなかった。
「…もちろん、処刑は口実。本当の目的は別にあルの。ねえ。考えてミて!
不穏分子のもとにユっくり近づきながら、あノ無味無臭の感覚遮断剤を、
まき散らして歩クの。通り道にいる改造素体たチに、マんべんなく…」

931:名も無き改造人間たち1・親友(30/40)
09/03/04 22:40:40 4dYIR1J40
「…………あ!」
 わたしはまるっきり意表をつかれた。それが意味するのは…
「反乱だわ!」
「そうよ。大規模なナ反乱軍がかなリお手軽に調達できル。どこまでうまクいくかは
わかラない。ひょっとするト、簡単に馬脚を現すようナ素体は外した方が無難かも。
少数精鋭デ…」
「いいえ!全員よ!見捨てていい人間なんていないよ!」
「…いいワ。詳しいことはまた考えましょウね!」

 いつのまにか交代の時間だった。わたしたちは倉庫を出て、交代の改造人間に
進捗状況を報告する。次の部署は離ればなれだ。さっきとは違う。ここはもう
恐ろしい敵のまっただ中。これからずっとこの中で敵を欺き、場合によっては
味方を欺きながら生きていかなくてはいけない。心細かった。もうちょっとだけ、
親友と話していたかった。次にいつ会えるかすら分からないのだから。
 だけど、声をかけるわけにはいかない。脳波通信も傍受されかねない。
でも、ちょっとだけ、つながりの余韻が欲しい。そんな念を込めて親友の背中を
見送る。
 わたしたちは双生児のような親友だ。わたしの思いは彼女の思いだ。彼女は、
振り向くことはしないで、代わりに、そっと手を上に出し、Vサインを作ってくれた。
二人が同じ思いであること。そしてお互いがお互いのそんな気持ちをちゃんと
わかっていることを、その仕草は示してくれた。よかった。二人なら、
やっていけそうだ!わたしの心に勇気が湧いてきた。

 奇跡だろうか?チャンスはとても早くやってきた。地球時間で丸一日経つか
経たないかの間に、「処刑者」のローテーションが回ってきたのだ。しかも、
親友とペアという配置だ!作戦もちゃんと練っていないけど、でも、
二人ならなんとでもなるという大きな自信があった。

932:名も無き改造人間たち1・親友(31/40)
09/03/04 22:41:20 4dYIR1J40
 
 少し早く来すぎたのか、親友はまだ姿を現してはいなかった。わたしの気は
せいていた。親友はなんだか慎重な作戦を提案していたが、わたしの意見は違った。
チャンスのある内に、少しでも多くの可能性の種を蒔いておくのが一番なのだ。
 わたしは素体収容室に降り立つと、巡回するふりをしながら無味無臭の
感覚遮断ガスを全身から散布して回った。仕事中に体内プラントで合成した改良型で、
改造用生殖細胞に触れたときに初めて効力を発するタイプだ。
 散布を無事始められて、わたしはほっとため息をついた。わたしに言わせれば、
「少数精鋭の反乱軍」なんていう親友の計画は、慎重なようでいて実は相当な楽観論だ。
侵略者の正体が何なのかすら、改造された今でもさっぱりわからない。次に何が
起こるかもわからない。そんな中では、今できる最大のことを、できるときに
やらないとダメなのだ。これがどんな結果になるかは何とも言えない。でも、
大きな混乱が起きることはたしかだ。わたしたち二人にできるのは、多分そこまでだ。
 そんなことを考えながらなおも散布を続けている内に、ようやく親友が姿を
現した。わたしの方を見ながら、2メートルほど近づいたあたりであのぎこちない
「微笑み」を浮かべ、それからVサインを出してくれた。思わずゆるみそうになる
頬を引き締める。たしかに今周りにいる素体たちは仲間になってくれる可能性が高い。
だが、簡単に無防備になってはならない。未改造の改造素体こそ、最大の警戒対象だ。
それは、精巧な感情検出器を備えた、未来の改造人間なのだ。
 そんなことを考えている内に、親友の腕が下げられ、その顔がぞっとするほど
無表情で無機的なものに変わった。昆虫の顔!そして次の瞬間、親友の乳首から
何かが高速で発射され、わたしに命中した。わたしの手足は麻痺し、その場に
崩れ落ちた。

933:名も無き改造人間たち1・親友(32/40)
09/03/04 22:42:38 4dYIR1J40

 その後一分と経たないうちに「修理班」が駆けつけ、麻痺したままのわたしを
連行し始めた。その間、親友…は、わたしのすぐ横にいた二十代前半の女性の局部を
無造作にまさぐり、それから脳波で管理者に連絡した。イレギュラーに、その女性は
床に吸い込まれ、あの暗いトンネルの中へ消えていった。それから、少し遅れて
到着した「調査班」に指示を出した。わたしが例の薬品を散布したまさにその区画を
「調査班」は正確に突き止め、管理者にデータを送信した。
 親友…に何が起きてしまったのはほとんど明らかだったが、わたしの意識は
その現実を拒んだ。わたしは「調査班」に連行されながら、顔を引きつらせつつ
笑顔を作り、話しかけた。
「ねえ。冗談はやめようよ。あ、ひょっとしてわたしが洗脳されたかもしれないと
思って、用心したの?大丈夫だよ!わたしはわたしのままだよ!そこにいるのは、
ひょっとして『お仲間』?一日で反乱軍を組織した?すごいね!」
 我ながら、楽観論どころではない。妄想だ。だが、舌は止まらない。
「見てくれた?昨夜一晩で合成したんだ。生殖細胞との接触で活性化するんだよ!」
 「親友」の表情がほんの少し変わる。その特性までは検知できなかったんだろう。
「ねえ!黙ってないで何か言ってよ!早く麻痺を解除してよ!今敵が来たら
わたし、捕まっちゃうよ!」
 「親友」はようやく口を開いた。わたしの方を見もせずに。
「ワタシハ幸運ダッタ…」
 わたしは馬鹿話をやめ、「親友」をじっと見た。「幸運」って?
「『管理者』ハ中枢ヲ持たナイこんぴゅーたダ。ソノ機能ハ、地球侵略ニ有用ナ
でーたヲひタスラ収集シ、蓄積シ、重ミ付ケすルダケダ。ダガそノ成果ハメザマシイ
モのダ。管理者ニハ、地球人ノ行動ぱたーんヲ理解シテ予測すルコトハデキなイ。
ダガ、個別ノ事例ヲ着実ニ収集スルコトニよッテ、高イ精度ノ予測ガ可能ダ。

934:名も無き改造人間たち1・親友(33/40)
09/03/04 22:43:15 4dYIR1J40
 ワタシニトッて好適ダッタのハ、カツテ『Vさいん』ヲ用イた『不良品』ガ
一体検出サレテイタことダ。ソノトキ以来、管理者ハ『Vさいん』ヲ掲ゲタ
奴隷生物ヲ必ズ『再検査』ニ回ストいウ事項ヲまにゅあるニ付加シタノダ。
昨日ノワタシノ『Vさいん』モすぐニ奴隷生物六百六十五号ノ目ニトまリ、
ワタシハ直チニ再検査ニカケラれタ」
 あんなはっきりした含み笑いは見逃すくせに、さりげないVサインは見逃さない。
気持ちが悪い。アメーバみたいな不気味なシステム…。
「不運ダッタのハ…」
 今度は「不運」か…。わたしはなんだか意識がうつろになった気がしてきた。
話している間にも「修理班」と「親友」は歩き続け、わたしたちは今やあの
改造手術室の前まで来ていた。
「…不運ダッタのハ、オ前トイう不良品ノ検出ト確保ガココマデ遅延シテシまッタ
コトだ。…ヤムヲ得ナカッタ。ワタシハ興味深イ事例ダッた。快楽洗脳ノ中断状態ヲ
維持シタママ、十数時間ノ間、痛覚刺激再処置、全身ノ生体解剖、各種脳内物質ノ
投与等、多方面カラノ分析ガナサれタ。サラニソノ後生殖細胞ノ再移植ト活性化ヲ
何度モ施シ、入念ナ快楽洗脳ガヤハリ十数時間続イた。最終的ニワタシノ洗脳ガ
完了シ、オ前トイう不良品ノ存在ガ『管理者』二明ラカにナッタノハ、
二十数時間モ後ノコトニナッテしマッタノダ」
 淡々とした口調に耳を傾ける内、想像上の涙がぽろぽろとこぼれ始めた。わたしが
「反乱軍」を夢想し、嬉々として新型感覚遮断剤を調合していたとき、親友は
十何時間もの間、拷問に等しい人体実験を受け、そして、それから「快楽洗脳」を
受けさせられたのだ。心の傷のせいで、そして、多分わたしを守るという
強い意志の力で、洗脳は十何時間も長引いた。でも結局最後に、親友の
人間の心は強引に洗い流されてしまったのだ。

935:名も無き改造人間たち1・親友(34/40)
09/03/04 22:44:01 4dYIR1J40
「ワタシノ情報ヲ得ルと『管理者』ハ直チニ、オ前ヲ素体収容室ヘ配置シた。
ソしテオ前ガ準備シテイルデあロウ感覚遮断剤ノ検出ノ準備ヲ始メタ。
コレハワレワれニトッてノ新タナ前進デあル。オ前ノ行動ノ分析ニヨリ、
『不良品』ノ製造確率ハマタ大キク低下スルコトだロウ」
 陰鬱な気持ちが襲った。クモの網にかかった蝶々のように、わたしたちがもがき、
あがき、こざかしい知恵を使えば使うほど、網はわたしたちにより強く絡まる。
アメーバのようなコンピュータは新しい反応を学習し、同じ過失を二度は繰り返さない。
親友が思いついた手を別の誰かが思いついても、それがうまくいく見込みもうない…
 改造手術室の中では、先ほど姿を消した若い女性が、早くも半ば蜂女化して
横たわっていた。その目にはほぼ完全な人間の感情と、強い意志の光が宿っていた。
「負けない!こんな体になっても…人間の心だけは失わないわ…絶対!」
 なんだか痛々しい。「修理班」がその姿を冷静に観察し、報告する。
「感覚遮断剤ノ効果ヲ確認。続イテ、改良型生殖細胞ノてすとニ入ル」
 わたしはぞっとする。あまりにも早い。これが敵の力なのだ。
 未だ白い皮膚がところどころ残る半蜂女の股間に新しいカプセルが装着される。
「何?何なの?………………」
 装置が作動する。何が起きつつあるか察した女性は、唇をかみしめ、まだ人間のままの
目をつぶり、衝き上げてくる波をこらえようとしている。やがて目から血が流れ、複眼が
形成されても、まだ身じろぎ一つせず、唇をぐっと噛みしめている。
 だが、張りつめた糸はやがて切れてしまう。満潮になったダムが決壊する。

936:名も無き改造人間たち1・親友(35/40)
09/03/04 22:44:38 4dYIR1J40
 ―正直、そこまでの性的快楽というものがどんなものであるのか、わたしの
貧弱な経験では想像がつかない。だが目の前にいる女性がそういうものを感じつつ
あるというのは多分間違いがないが、実感が湧かないのだ。だがそれは起きている。
唇を噛み、眉間にしわを寄せ、全身を固くしていた女性のからだががくんと弓なりになる。
こらえきれなくなった女性はもはやじっとしていることができなくなり、体をくねらせ
快感を逃がそうとする。息づかいが激しくなり、触角はぶるぶると痙攣し、全身からは
大量の粘液が流れ出す。半ば放心状態で粘液にまみれた両足をこすり合わせる。
 ―もう、だめだ…
 暗澹たる気持ちのわたしの心を、狂おしい女性の声がさらにかき乱す。
「いやだ!……はあ……はあ……いやだ!いやだ!いやだぁぁぁぁぁあああ!」
 これまでにない激しい痙攣が全身を襲う。がっくりと脱力した女性の目に、
かすかにまだ人間の心が残っている。あえぎながら、か細い声が漏れる。
「…ごめん…ごめんね…ごめん……あたし………あたし………あ……た……」
 声が途切れると、そこにはもうあの昆虫の顔しか残らない。おきまりの復唱が
始まるが、それはもう何の感情もわたしに掻き立てない。
 最後の「ごめん」とは誰に対して言っていたのだろう。きっと、収容室にいる恋人か、
友達に対してだったに違いない。他の皆が怪物にされても、たとえ体が改造されても、
心だけは絶対に失わないでいよう。友達でいよう。そんな約束をしたに違いない。
収容室の至る所でなされ、そして、約束をした当人ですら、それが叶うとは
思っていない約束。……いや!少なくともわたしたちの約束は、いったんは
叶ったのだ!少なくとも一瞬、わたしたちは叶った約束を喜び、困難だけど
たしかに開けた未来に立ち向かおうと、新しい約束を結んだのだ…

 やるせない無力感が心を覆う。そんなわたしの気持ちに追い討ちをかけるような
言葉が、以前親友だった改造人間から発される。

937:名も無き改造人間たち1・親友(36/40)
09/03/04 22:46:30 4dYIR1J40
「一ツ質問ニ答エヨ。オ前ヲ捕縛シタ際ノアノ表情筋ノ配置ト『Vさいん』ハ
『管理者』ガオ前ノ捕縛ニ最適ナ行動ぱたーんトしテ算出シタモのダ。
改造人間同士ガ真剣ニ戦イ合ウ事態ハ非常ニ危険ダ。ソれヲ回避スル手段トしテ
算出シタのダ。ダガ、『管理者』モワタシモ、イカナル機構デソレガ有効ナのカ、
マッタク不明ナママそレヲ行使シタ。地球人ノ行動ぱたーんノ集積でーたカラ、
タダソレガ最適ダト理由モナク導カレタノダ。答エヨ。アノ行動ぱたーんハ何カ?」
 見えない涙があふれるのは何度目だろう。親友には、もう、こんな簡単なことも
理解できなくなってしまったのだ。…そして、もう、すぐ、わたし自身が、同じような
不気味な生き物に、今度こそ完全に変わってしまうのだ…

 あのかわいそうな女性…わたしのせいで改造される順番がひどく早まって
しまった、不幸な女性…だったモノが、無表情に「復唱」を終え、何かの任務に
出かけていった。「修理班」が空になったベッドに淡々とわたしの体を固定する。
基本情報をインストールされ、知りうる情報をほぼ知り尽くしているわたしに、
もはやガイダンスは不要だ。改良型生殖細胞が装着され、痛覚刺激専用のダミー針が
無造作に降りてきて、全身に突き刺さる。
「ぎゃあっ!」
自分でも信じられないぐらいの悲鳴を上げる。意識が一瞬点滅し、感情が削られたのが
予感される。こんなにも痛いものなのか!親友は、これに耐えたのか…
「ぐっ!」
 間欠的に襲いかかる激痛に思考を途切れさせながらも、わたしは、果たして自分に
親友のまねができたのだろうかと思いめぐらす。だが、多分わたしがあのときの
親友だったら、やっぱりできたに違いないと思う。同じ絶望的な状況でも、
あのときと今では違いすぎるのだ。

938:名も無き改造人間たち1・親友(37/40)
09/03/04 22:47:12 4dYIR1J40

「ひいいいいいいっ!」
 最後の激痛と共に、痛覚メニューの終了が告げられた。自分の心が荒涼たる砂漠に
近づいたことをおぼろげに察する。…だが、多分今ならまだわたしは人間だ。がさつで、
無神経で、「空気の読めない」社会不適合者にしかなれないかもしれないが、十分人間だ。
「あ、あ、あ、あ…」
 だが休む間もなく快楽の刺激が襲う。さっきまでここに寝ていたあの女性が何を感じて
いたのか、今やわたしは実感している。荒れ狂う快感のうねり。意識をかき乱し、
飲み尽くそうとする野蛮な欲動。
 …なんとかしなくては。親友は十五時間ももちこたえたのだ。こんな…
「あふぅ」
 ……こんなに早くイってしまったら…
 わたしはさっきの女性のまねをして唇を固く噛みしめ、全身を固く硬直させる。
荒々しいうねりに翻弄されないように。いやらしい触手に、心の中まで侵入されない
ように。気持ちを遠くに向け、そして、あのつまらない男にもてあそばれた
悪夢の日々を想起する。その連想がわたしの情欲に一気に水をかける。わたしは
不快感の中に軽い満足感を見いだす。まだ、まだ大丈夫。わたしの心は
わたしのままだ…。
 そのとき、唐突に改造生殖細胞のカプセルが除去されるのを感じる。思わず
下半身に目を向けると、カプセルを妙な仕方で自分のあそこにあてがっている
「親友」がいた。
 「親友」が何をしているか、すぐにわかった。カプセルの中身に一種の形状記憶
繊維を組み合わせることで、「親友」のあそこに、まるで蟻男のようなペニスが
形成されていたのである。

939:名も無き改造人間たち1・親友(38/40)
09/03/04 22:47:45 4dYIR1J40
「親密ナぱーとなーニヨル刺激ノ方ガ快楽ガ倍増スル。単純ナ動物的習性ダ」
 改造された性器が初めて「正しく」使用される。彼女の疑似ペニスの鋭い先端が
表面の皮膚を文字通り指し貫き、内部に侵入する。世界を覆っていた膜がぺろりと
向けたような奇怪な快感が全身を駆け抜け、わたしは意味のない叫びを上げる。
「おお…おおおおお……」
深く挿入された疑似ペニスはわたしの内部で膨張する。快楽の受容体が一息に
拡大し、圧倒的な快楽のうねりがわたしを襲う。
「ああああああああああ」
 心の中にもうほとんど感情が残っていないことに気がつく。存在しない感情を
認識したからではない。感情のネットワークが押し戻していた、あの「服従の
喜び」と「反逆の恐怖」を、もはや希薄になった感情が跳ね返せなくなってきている
ことに、突然気づいたのだ。
 わたしはその不気味な、人間の心とはまったく異質な制御システムの存在感を
強く感じ始めた。
 「服従の喜び」とりあえず呼ばれているが、本当のところ、それは人間の喜びや
その他一切の感情とはまったく異質な力だ。機械とも動物とも違う、不気味な
何物かの運動に同調して動く、衝動であり引力。
 同じことは「反逆の恐怖」にも言える。それは人間的な恐怖とはまったく
異質の、未知の非物質的斥力だ。
 全く相容れない制御システムだから、人間的感情が肉体と心を制御している間は、
何かよそよそしいデータのようにしか感じられない。だが、感情がある程度希薄になり、
もう心を構築できなくなると、感情を吹き飛ばすように新しい制御システムが心の中心を
乗っ取る。そうなってしまうと、もう感情を感じることも、読み取ることも、
理解することもできなくなる…。

940:名も無き改造人間たち1・親友(39/40)
09/03/04 22:48:15 4dYIR1J40
 体の上の生き物は、お互いの体からとめどなく流れ出す粘液を塗りつけるように
肉体を密着させ、ゆっくりとなで回す。
「オ前とワタシハ、密接ナ交友関係ヲ結ンダぱーとなーデアリ、ソノ親密サハ
幾タビカ、マるデ男女ノヨうニ肉体的交渉を持ツマデニ至ッテいタ。ソノワタシガ
このヨウニ、オ前ニ刺激ヲ与エテイル。オ前ハ快感ヲ感ジルに違イナイ」
 …ばか!…ばか!
 たしかに全部本当だ。とても自然な成り行きだったけど、でもそんなに何度も
じゃない。彼女の部屋で一度、わたしの部屋で一度、素体収容室で一度。今を
除けば、それで全部だ。
 …でも…でも全部本当のことだからって…それをそのまま言葉にして、どうするの!!
 わたしの中の人間の知識があきれ、嘆く。だが、今のわたしの心は荒野だった。
繊細な感受性はほとんどすり切れてしまっていた。そんなわたしには、親友の
あきれるほどわかりやすい言葉が、強く訴えた。感動により、快感が倍増する。
 ―もう…だめだ…―。
 もう引き返せない。できるのは、運命のときをほんの少しでも遅らせること
だけだ。残りわずかな人間としての意識―わたしは最後に何を思えばいいんだろう。

 そのとき、自分の上で腰を動かしている浅ましい生き物が、やっぱり、それでも、
自分の親友なのだ、という事実に突然気がついた。そして、あのとき親友が
言いかけた言葉が、今のこの自分ならば、とても素直に言えそうな気がしてきた。
「…ねエ」
 改造人間は黙っている。わたしは、自分自身の声が相当程度無機的になってしまって
いることに気づく。

941:名も無き改造人間たち1・親友(40/40)
09/03/04 22:48:48 4dYIR1J40
「ねエ。聞いテ。あノとキ、言いかケたよね―『もしもあなたが人間の心を失って
いたら、わたしも…』。仮定ガ現実になっちゃっタけど、ワたシからも、今なら言えルよ!
わタシはね、あなたガ人間ノ心ヲ失うなら、わたしも……わたしも…人間の心なんて……
…いらないよ!」
「…………」
「…………」
 親友は何も言わず、わたしも黙っていた。それから親友は腕をわたしの後ろに回し、
ぎゅっと抱きしめた。そしてわたしにそっと口づけをして、そして、そして、
たしかにはっきりとこういった。

「…ありがと!」

 幻聴じゃなかった。単なる機械的な反応でもなかった。その一言だけは、
昔と変わらない深い情愛がたしかに籠もっていた。感情が枯れ果て、
「服従の喜び」と「反逆の恐怖」が心の中心にしっかり場を占めても、
洗い流されずに残った、かすかな人間らしさ。侵略者の触手を跳ね返す力は
ないけれど、吹き飛ばされることもなく残ったかけら。それが、そこにはあった。

 もう、すぐ、わたしは自分でも理解できない異質な怪物に変貌する。
異物を押し返す感情の壁はとても薄くなって、今にも破れそうだ。
未知の暴力はすぐそこに迫り、心の中心に居座るときを待っている。
もう抵抗できない―だけど、だけど、そんな未知の世界に、
今の、この「うれしさ」を持って行けない?持っていって、やはり怪物に
なってしまった親友と、大事な宝石のようにそれを守り続けるぐらいの希望は持てない?
 ―持てるに決まっている!さっきの親友の言葉がその証拠だ。そしてわたしたちは、
双生児よりもよく似た友達だ。だから希望はあるのだ。うれしい。うれしい。うれしい!

 ―その感情が、人間としてのわたしの最後の意識を、温かく色取った。(了)

942:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/03/04 22:49:27 4dYIR1J40
以上スレ無駄遣いご容赦ください。それでは…

943:名無しより愛をこめて
09/03/11 12:42:30 in81AstI0
大作投下お疲れ。マイペースで十分ですから無理せずにどうぞ

944:maledict ◆sOlCVh8kZw
09/03/12 21:05:36 3MOobl3d0
溜まっていた過去ログをまだちゃんと読めてないんですが、
遅ればせながら初投稿の>>392様、>>816=マッキー様、お疲れ様でした。
羽生様とショッカー代理人様もです。
殺伐としていつつもコンスタントに新作が載っていたんだと再認識しました。
ちゃんと読めたら感想とか書かせてください。

>>943
ありがとうございます。まだ忙しいですが昨年後期よりはましで、ネット環境も回復したので
また投下したいと思います。


最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch