スーパー戦隊 バトルロワイアル Part2at SFX
スーパー戦隊 バトルロワイアル Part2 - 暇つぶし2ch616:名無しより愛をこめて
08/09/26 11:38:46 s0QDmnKJ0
板違いです
二次創作は以下の板でどうぞ
URLリンク(namidame.2ch.net)

617:代理投下感謝! ◆MGy4jd.pxY
08/09/26 11:39:57 af+zO12y0
心配など無用ですね。あなたは強き冒険者、ボウケンイエローなのですから」
立ち去るロンを菜月は表情なく見ていた。
「何をすべきか……。そんなの解らない」
菜月には、どうすればいいかなど解らない。
ただ今は……。
「お別れも言えないなんて、そんなの嫌だよ。でも……」
何も言わずに別れてしまった竜也たちが胸を掠める。
「ごめんなさい。すぐに戻るから……」
来た道を振り返り、小さく頭を下げ菜月は許しを請う。

真墨に、お別れを……。
真墨は、サンヨに殺された。
そして、まだ、この森にそのサンヨがいる。
二つの思いが、走る菜月の中で渦巻いていた。


【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:D-5 都市 1日目 朝
[状態]:健康。
[装備]:Vコマンダー
[道具]:メレの支給品(中身は不明) マジランプ+スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー
[思考]
基本行動方針:仲間を探す
第一行動方針:菜月が心配。後悔。
第二行動方針:ブクラテスを病院へ連れて行く
第三行動方針:仲間を探し、ユウリとアヤセの安否を確認する
第四行動方針:菜月の仲間と理央を探す
備考:クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。他の参加者のバックの中か、どこかに隠されているかは不明です。


618:代理投下感謝! ◆MGy4jd.pxY
08/09/26 11:41:05 af+zO12y0
【名前】間宮菜月@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task14後
[現在地]:C-5 都市 1日目 朝
[状態]:健康。
[装備]:アクセルラー、スコープショット、
[道具]:未確認、竜也のペットボトル1本
[思考]
基本行動方針:仲間たちを探す
第一行動方針:真墨の遺体を捜す。

【名前】スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:ボウケンジャーVSスーパー戦隊後
[現在地]:D-5 都市 1日目 朝
[状態]:健康。マジランプの中。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ヒカルを探す
第一行動方針:強い怒りと悲しみ。


619:代理投下感謝! ◆MGy4jd.pxY
08/09/26 11:41:41 af+zO12y0
【シグナルマン・ポリス・コバーン@激走戦隊カーレンジャー】
[時間軸]:第36話以降
[現在地]:D-5 都市 1日目 朝
[状態]:健康。少し凹み気味。
[装備]:シグナイザー
[道具]:けむり玉(1個使用済み)数は不明、その他は不明。メレの釵。
[思考]
基本行動方針:ペガサスの一般市民を保護。戦っている者がいれば、出来る限り止める。
第一行動方針:ブクラテスを病院へ連れて行く
第二行動方針:乙女(メレ)に謝りたい。
第三行動方針:黒い襲撃者(ガイ)を逮捕する。

【名前】ブクラテス@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第12章(サンバッシュ敗北)後
[現在地]:D-5 都市 1日目 朝
[状態]:右腕切断。簡単な応急処置済み。
[装備]:めがね
[道具]:首輪探知機。毒薬。切断された右腕。基本支給品とディパック
[思考]
第一行動方針:竜也とシグナルマンは利用できそうだ。
第二行動方針:首輪探知機とセンの伏せて置く。
備考
・センと同じ着衣の者は利用できると考えています。


。。

620: ◆MGy4jd.pxY
08/09/26 11:45:11 af+zO12y0
以上です。
矛盾、問題点、指摘、よろしくお願いします。

代理投下感謝!です。

621:名無しより愛をこめて
08/09/26 13:17:51 kdv4BdZpO
投下乙です。
竜也、相変わらず振り回されてるなw
菜月とスモーキーの嘆きは胸に刺さりました。
そして、ロン!!お前はどこまで……
サンヨと菜月が邂逅を果たすか否か、出会った時、彼女がどんな行動に出るかも気になります。
切なさと危うさに満ちた良作でした。
GJです!

622: ◆8ttRQi9eks
08/09/29 19:55:56 dQ0UOxtw0
今更ですが、代理投下をして頂きまして真にありがとうございました。
たまにしか来れないのですが、悪いことばかりでなく何かしら更新がありますw
菜月はやっぱり精神的に不安定コースですね。
この先、どんな凄惨な場面に遭遇するのか、しないのか楽しみです。

623: ◆i1BeVxv./w
08/10/01 01:00:50 V+Lg8NJs0
したらばにも記載いたしましたが、予約延長をお願いします。

624:名無しより愛をこめて
08/10/01 04:12:30 womjjoDjO
了解しました。楽しみにしております。

625: ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:04:08 V+Lg8NJs0
遅くなりましたが、投下いたします。


626:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:05:56 V+Lg8NJs0
 それはサーガイン、裕作、ヒカルの3人が、海岸を経由して、ようやく市街地へ入ろうとしたときのことだった。
 突如として、脳内に響く、耳障りな声。定時に行われるロンの放送である。
 死亡者、挑発、禁止エリア。楽しげに言葉が紡がれていく。
「おのれ、ドモン!」
 やがて放送が終わり、まず一声を上げたのはサーガインだった。
「深雪殿を俺から引き離しておきながら、何たる様だ!」
 激昂したかのように声を荒げるサーガイン。だが、その内心は月を映す水面の如く、落ち着いていた。
 サーガインにしてみれば、ロンの放送は取るに足らない内容だった。
 フラビージョ、シュリケンジャーの名前が呼ばれたわけでもなく、告げられた名の中で、面識があったのは小津深雪ただひとり。 
 その小津深雪に対しても死を悲しむほど、情を持っているわけでもない。
「この上はその責任、奴を見つけ出し、力ずくでも取らせてくれよう!」
 そうはいっても、裕作とは深雪に惚れていると勘違いされて繋がった間柄。
 その誤解は解けたといっても、いかにも心配していると見せておいた方が印象はいいだろう。
 打算の上、サーガインは演技を続ける。だが、そんなサーガインを尻目に裕作は別の方を向いていた。
(ヌッ!?)
 だが、裕作の態度に不満を持っても、それを指摘するわけにも行かない。
 あくまで冷静にサーガインは裕作に問いかけた。
「どうした、裕作殿?」
「あれを見な」
 神妙そうな声で促した裕作の視線の先には、まるでぬけがらのような有様のヒカルの姿があった。
 言葉を失い、膝は折れ、呆然と虚空を見詰めている、
「無理もねぇ。今の放送で知り合いのほとんどがやられちまったみたいだからな」
 この殺し合いに招かれたヒカルの元々の知り合いは10人。その内、敵対する勢力を除けば、生き残っているのはたったの2人。
 心情を察すれば、その悲しみと絶望は計り知れないだろう。もっとも―
「しばらくはそっとして……って、おい」
 ―サーガインには関係ないが。
 裕作の制止の言葉も聞かず、サーガインはヒカルへと近づいていく。
 知り合いが死んで、悲しむのは別にいい。戦う意欲をなくすというなら、それは色々と好都合だ。

627:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:07:14 V+Lg8NJs0
 しかし、折角、渾身の演技をしていたというのに、関心を持っていかれるとは面白くない。
 それに一応、仲間という面目で行動している以上、腑抜けに用はない。
「ふん!」
「ぐっ!」
 少なからずの恨みを込めて、サーガインはヒカルを殴った。
 突然、殴られたヒカルは当然、非難の眼をサーガインへと向ける。
「ふむ、怒る余裕はまだあるようだな。何を腑抜けておるのだ。そんなことしている時間が俺たちにあると思うのか。さあ、ヒカルよ、立ち上がれ!」
「……立ち上がって、ボクは何をすればいいんだい?ボクはブレイジェルから麗と深雪さんのことを頼まれた。
 それなのに二人を守ることができなかった。ボクは何もできなかったんだ」
「ふん、腑抜けらしい言葉だ。ならば、ドモンに会えばよかろう」
「ドモン?深雪さんと一緒に行動している男かい」
「そうだ、少なくとも深雪殿の死に様はドモンが知っていよう。そして、もしドモンがその死に関わっているのなら、その手で仇を取れば気も晴れよう」
(それにドモンを殺せば、首輪も手に入る)
 サーガインは心の中で本音を付け加えると、今まで北へと向けていた足を南へと変え、歩き出した。
「すまねぇな、たぶん、あいつはあいつなりにあんたを元気づけているんだ。許してやってくれ」 
 サーガインに続いて、裕作がヒカルに声を掛ける。
「だが、仇を取るかどうかは別として、ドモンに会いに行くっていうのは俺も賛成だ。
 もしかしたらだが、あんたがこれからどうするべきかの答えを持っているかも知れねぇからな」
 ヒカルはサーガインと裕作の言葉をわずかな時間、黙考した後、裕作と共にサーガインの後を追った。



「ウメコさんは死んだか」
 放送を聞き終えたドモンはそんなことをボソッと呟いた。
 ウメコはどういうわけか、教会から身を投げ、ドモンが手を下すまでもなく勝手に死んだ。
 何故、ウメコがそのような行動に至ったか、多少は気になったが、そんなことはどうでもよかった。
 直ぐに思考を別の事柄へと切り替える。
「深雪さん、待っていてください」
 ドモンはウメコから奪ったシグザウエルに眼を向けた。
 ウメコは殺せなかった。その後、現れた男もドモンは殺せなかった。

628:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:08:25 V+Lg8NJs0
「今度こそ、俺の手で誰かを……」
 既に決意はしている。
 こんな状況に陥れたロンに憤りは感じているが、この状況を打開できる力を持っているのもロンであることは確かだ。
 ロンの言葉を信じ、優勝するしか道はない。
 しかし、決意はしていても、いざとなれば自分は本当に人を殺すことができるのか。それはわからなかった。
 現にウメコの説得に心は揺れ、躊躇いを見せてしまった。
「誰か一人、一人でも殺すことができれば、きっと、きっと」
 ドモンは自分の弱さを克服するため、さながら幽鬼のように、獲物を求めて彷徨っていた。



 ヒカルたちが南へと歩き出してから一時間ほどの時が流れた。
 時間が解決してくれるとはよく言ったもので、何も考えることができなかった放送直後と違い、ヒカルは冷静さを取り戻しつつあった。
 そんな中、ヒカルが思考を巡らせていたのはロンが告げたウルザードについてであった。
(ロンはブレイジェルをウルザードとして復活させたと言っていたが、果たして本当なんだろうか?いや、嘘を吐く必要性が見当たらない。
 ウルザードと聞いて、反応できるのは、今となってはボクぐらい。何か狙いがあるなら、ボクに対してということになる。
 けど、わざわざボクだけに嘘を吐く意味があるとは思えない。
 それなら単純に事実を語っただけということになるけど……普通に復活させるだけじゃなく、ウルザードとして復活させたということは、ロンは呪縛転生を使いこなせるということなのか?)
 ヒカルはその沈着冷静な性格上、考えすぎるきらいがあった。
 ある一つの事柄から様々な推論を構築するその傾向はヒカルの長所でもあり、短所でもある。
 だが、今回はそれは短所となった。

―パン!―

 銃声が轟き、途端にヒカルの左肩が爆ぜた。
 突然のことに、ヒカルは悲鳴を忘れ、血に赤く染まっていく左肩を見た。
 普段なら考えに没頭していたとしても、周りへの警戒を怠ることなどない。
 不意討ちにも瞬時に対応し、その時に最適な行動を取っていたはずだ。

629:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:10:18 V+Lg8NJs0
 だが、麗と深雪を失った悲しみは知らず知らずの内にヒカルから余裕を奪っていた。

―パン!―

 放たれる二発目の銃弾。
 その銃弾は未だ呆けるヒカルの眉間を真っ直ぐに狙っていた。
「ふん!」
 しかし、その銃弾は命中することなく弾かれた。
 ヒカルと襲撃者の間に入ったサーガインが鋼の身体を盾としたのだ。
「ヒカル、何をボサッとしている!」
 叱責すると同時に、サーガインはドライガンを構え、銃弾が放たれた方向へと無数の熱風弾を放った。
「クロノチェンジャー!」
 どこかで聞いた覚えのある声が聞こえたかと思うと、黄色い影が熱風弾を避けつつ、サーガインへと突進してくる。
「お前は!」
 サーガインの胸から火花が上がる。襲撃者が携えた剣で切り裂いたのだ。
 はっきりと確認できた襲撃者の姿に、サーガインは怒声を上げた。
「ぬぅぅっ!……ドモン!貴様ァ、血迷ったか!」
 そこに立っていたのはサーガインが呼んだ通り、タイムイエローへと変身したドモンであった。
 ダブルベクターを構え、サーガインも気圧されそうなほどの激しい殺気を放っている。
「どうやら冗談というわけではなさそうだな。貴様、最初から殺しあいに乗るつもりだったというわけか?」
「………」
「なんとか言ったらどうだ!」
 怒りと共に、ドライガンを向けるサーガイン。しかし、引き金が引かれるより早く、タイムイエローの蹴りがドライガンごとサーガインの手を蹴り上げる。
 そして、タイムイエローは続けざまにダブルベクターを振るった。
「ぐぅぅっ!」
 たまらず尻餅を着き、苦悶の声を上げるサーガイン。
「問答無用という訳か。ふん、ならばあの時の決着を今、着けてくれる!」
「……こいよ」
 サーガインは両肩の巌流剣に手を添える。
 タイムイエローはその様子を満足気に見詰め、改めてダブルベクターを構えた。

630:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:11:35 V+Lg8NJs0
「待ちな」
「裕作殿」
 静かに、しかし、どこか雄々しさを感じさせ、二人へと近づく裕作。
「ここは俺に任せろ。お前は力を発揮すると厄介なことになるからな、ヒカルの手当てをしてやってくれ」
 いつの間にか、ヒカルはサーガインたちから数m離れた位置に移動していた。
 サーガインとタイムイエローが小競り合いをしている間に、裕作が行ったのだろう。
「それに俺も、そろそろ自分にどんな制限が掛かっているか試す時だ」
「ということはやはりおぬしも」
 裕作が頷くと、サーガインは指示に従い、ヒカルの元へと下がる。サーガインにしてみれば、裕作の力を知るいい機会だ。
 その様子をタイムイエローは黙って見ていた。
「待たせたな。律儀に待ってくれるとは、根っから腐ってるわけじゃあなさそうだ」
「………」
「愛想がないね。俺が遠巻きに見てたときにはそんな奴には見えなかったんだけどなぁ」
 不意に裕作の顔が真剣なものに変わる。
「………ひとつ、聞いておきたい。深雪さんを殺したのはお前か?」
「違う!俺は……」
「………」
「………」
「……なるほどね。わけありってことか」
「うっ、うわぁぁぁぁぁぁっ!」
 咆哮と共にダブルベクターを振り上げるタイムイエロー。
 裕作は右手に携えたケイタイザーのボタンを押した。

―M・E・G・A・MEGA!!―

「インストール!メガシルバー!!」
 銀色の光を放ち、一瞬の内に裕作は変身を終え、メガシルバーへと変わる。
 右手には銃剣一体の武器、シルバーブレイザーが装備され、振り下ろされたダブルベクターを受け止めていた。
「どういうわけがあるのか、教えてもらうぜ」
 メガシルバーはダブルベクターを跳ね上げると、がら空きになった胸を目掛け、蹴りを放った。

631:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:12:45 V+Lg8NJs0
 タイムイエローが怯んだ隙に、メガシルバーは距離を取り、シルバーブレイザーを構えなおす。
 一方のタイムイエローもダブルベクターの先をメガシルバーに向け、彼を牽制する。
 一歩、二歩、三歩、じりじりと横移動を行う両者。
 やがて、その動きは迅速なものへと変わり、足場を平面の大地から、ゴツゴツした岩場へと移していく。
 先に動いたのはメガシルバーだった。大地を蹴って、タイムイエローに上空からの一撃を試みる。
「ベクターハーレー!」
 そうはさせまいと対空射撃を行うタイムイエロー。
 だが、メガシルバーは空中で身体を回転させ、ベクターハーレーを避ける。
 そして、同時に、回転で威力を増した一撃をタイムイエローに撃ち込んだ。
「とりゃっ!」
 まるで血が噴き出るかのように、大量の火花がタイムイエローのスーツから飛び散る。
 続いて、メガシルバーは居合斬りのようにシルバーブレイザーを構えると、すれ違い様にタイムイエローを斬りつける。
「ぐっ、くそっ!」
 痛みを堪え、後ろからメガシルバーを組み伏せようとするが、振り向いたメガシルバーの手に握られたシルバーブレイザーはガンモードへと変わっていた。
「シルバーブレイザー・ガンモード!」
 打ち込まれる無数の光弾。
 メガシルバーとタイムイエローの戦いは、メガシルバーの方が一枚上手だった。
 スーツや武器の性能、精神状態など、勝負を決めるのは様々な要因が重なり合うが、今回、二人の勝負を決めたのは事前情報の差だった。
 タイムイエローにとって、メガシルバーは初めて戦う相手。
 しかし、メガシルバーにとっては戦うのは初めてでも、タイムイエローがどんな技を持ち、どんな戦い方をするかは事前にサーガインから情報を得ていた。
(タイムイエローと戦うのなら、接近戦はNG。だが、遠距離戦では時間が掛かりすぎて、俺がNGだ。
 だから、着かず離れず、蝶のように舞、蜂のように刺すのさ)
「はぁ、はぁ、はぁ」
 息を荒げ、大地に膝を着くタイムイエロー。
「決まりだな」
「……俺は諦めるわけにはいかないんだ。深雪さんのために……俺は負けるわけにはいかないんだ!
 うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!」

632:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:13:41 V+Lg8NJs0
「本当は体力が尽きるまで待った方がいいんだろうが、残念だがもう時間だ。……決めさせてもらうぜ!」
 メガシルバーはシルバーブレイザー・ガンモードの引き金を引いた。
 放たれる光弾をものともせず、突進してくるタイムイエロー。
 メガシルバーは真正面から迎え撃つ。
「ブレイザーインパクト!」
 それは一瞬の出来事だった。
 タイムイエローのダブルベクターがメガシルバーに届くより早く、ガンモードからソードモードへと変えたシルバーブレイザーをメガシルバーはタイムイエローに見舞った。
 その勢いのまま、タイムイエローに背を向けるメガシルバー。いや、メガシルバーへの変身は解除され、早川裕作の姿に戻っている。
 タイムイエローの意識はまだあった。ダブルベクターを振り下ろせば、早川裕作を殺すのは容易い。
(これでひ……とり、め)
 薄れいく意識と共に、タイムイエローは右手を振り下ろした。



「やれやれ、どうやら変身は2分30秒のままか」
「大丈夫か、裕作殿」
 戦いを終えた裕作の元へサーガインと手当てを終えたヒカルが駆け寄る。
「ああ、バッチリだ」
 サムズアップで無事であることを示し、返事をする裕作。
「しかし、危ないところであった。ドモンの手は裕作殿に振り下ろされていた。
 変身が解除されず、その手に剣が握られたままだったら、死んでたかも知れん」
「まあ、そこはあれだ。俺の絶妙な匙加減って奴だ」
 ドモンは裕作の後ろで気を失っていた。
 タイムイエローへの変身は解け、傷だらけだが、呼吸は案外しっかりしている。
 サーガインはその様子を見て、裕作の万能ぶりに感嘆の溜息を漏らした。
「傷の具合はどうだ」
「大丈夫です。銃弾は魔法で消しましたし、血止めも行いました」
「魔法か……便利なもんだ」
 裕作はヒカルの無事に安堵すると、台車を持ってくる。そして、フェンダーソードでドモンが持っていたディパックを裂き、丈夫な紐を精製する。
「何をするつもりだ」


633:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:14:48 V+Lg8NJs0
「こいつを縛り上げるんだよ」
 裕作はドモンを台車に乗せると、紐でその身体と両手を括り付ける。
「これでよしっと」
「なるほど、俺と同じ要領で、ドモンが動けなくとも移動させることができるわけだな」
「その通りだ。っと、これの管理は任せるぜ」
 裕作はサーガインにドモンの持ち物一式を渡した。装備していたクロノチェンジャーとシグザウエル、マージフォンも全てサーガインに渡す。
 サーガインは好都合と、内心ほくそ笑み、それを受け取ろうとする。
「ちょっと待ってくれ」
「なんだ」
 自分の不穏な考えがばれたのかと、サーガインはわずかながら動揺した。
 しかし、それは取り越し苦労だった。ヒカルはクロノチェンジャーとシグザウエルには眼もくれず、マージフォンを手に取った。
「これは深雪さんのマージフォン。傷ついた痕もある。やはり彼が深雪さんを……」
 怒りの篭もった視線をドモンに向けるヒカル。今にも彼を殺しそうな雰囲気を醸し出す。
「……たぶん、違うな。こういっちゃなんだが、形見として持っていただけだろう。何にせよ、こいつが起きるまでは結論を出すのは尚早だ」
「………」
 納得がいかない様子だったが、ヒカルは口を紡いだ。
(ふう、どうもこいつは精神状態が不安定だな。折を見て、別行動を取った方がいいかも知れん)
 サーガインはヒカルを横目に、マージフォン以外のドモンの持ち物をディパックへと納めていく。
(うん、これは?)
 その内のひとつが、自分の持っているものと若干異なる状態であることにサーガインは気付いた。
(どういう意味だ、これは)
 サーガインは視線をドモンに移す。
 サーガインがドモンを探そうと思った理由のひとつに、深雪の死体の場所を知りたかったということがある。
 首輪の解除のため、死体から首輪を回収するつもりだったのだ。
 しかし、”それ”はサーガインの第六感を刺激した。
(どうやら俺も、深雪殿がどういう経緯で死んだかを知ったほうがよさそうだな)



 ドモンは夢を見ていた。


634:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:15:33 V+Lg8NJs0
 その夢の中でドモンは深雪と会話する自分を見ていた。
 なんとも微妙な顔で会話する自分に、それが深雪さんに家族がいると知ったときの頃の自分だとドモンは理解した。
「それじゃあヒカルさんというのも深雪さんの身内なんですか」
「ええ。血の繋がりはありませんが、勇さんの弟子で頼りになる人です。きっと麗を探し出し、守ってくれるはずです」
 それは希望を胸にしていた頃のこと。
 自分も深雪もこれから訪れる不幸な運命を夢にも思わなかった。
(深雪さん、麗さんは死んだ。ヒカルさんは麗さんを守ることができなかったんだ。
 俺と同じ。ヒカルさんは大切な人を守ることができなかったんだよ)
 何故、そんなことが今更思い出されたのか、ドモンはその夢から眼をそむけようと、深い闇に意識を沈めた。


【名前】ドモン@未来戦隊タイムレンジャー
[時間軸]:Case File20後
[現在地]:I-4海岸 1日目 朝
[状態]:気絶中。身体に無数の切り傷と打撲と火傷(中程度のダメージ)。2時間変身不能。
[装備]:木造の台車(裕作のお手製)
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:優勝して、深雪に幸せな家庭をプレゼントする。
備考:変身に制限があることに気が付きました。 ウルザードに受けた傷はほとんど治りました。


635:想い、それぞれ ◇i1BeVxv./w氏の代理投下
08/10/02 06:27:09 PSTuXKiL0
【名前】ヒカル@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:Stage35後
[現在地]:I-4海岸 1日目 朝
[状態]:左肩に銃創。応急処置済み。
[装備]:グリップフォン、シルバーマージフォン
[道具]:基本支給品一式、月間宇宙ランド(付録なし)@激走戦隊カーレンジャー、ゼニボム×3@特捜戦隊デカレンジャー
[思考]
基本方針:ブレイジェルの遺志を継ぎ、殺し合いを止める?
第一行動方針:ドモンに小津深雪のことを聞く。
第二行動方針:ティターンに対して警戒。
第三行動方針:冷静すぎる明石に微妙な気持ちを抱きました。
備考:サーガイン、裕作と情報交換を行いました。

【名前】五の槍サーガイン@忍風戦隊ハリケンジャー
[時間軸]:巻之四十三中(ガインガイン敗北後、サンダールに敗れる前)
[現在地]:I-4海岸 1日目 朝
[状態]:健康。クグツの胸部に凹みと斬撃の痕。
[装備]:巌流剣、ドライガン@忍風戦隊ハリケンジャー、
[道具]:基本支給品一式×3(サーガイン、勇、深雪)、クロノチェンジャー、拳銃(シグザウエル)
[思考]
基本行動方針:ロンの打倒
第一行動方針:首輪を手に入れて、解除方法を模索する。
第二行動方針:しばらく裕作、ヒカルと共に行動。
備考:2時間の制限に気づきました。サーガインの場合、2時間制限中はまともにクグツを操縦できません。
 深雪のディパックは解体されました。ヒカルと情報交換を行いました。



636:想い、それぞれ ◇i1BeVxv./w氏の代理投下
08/10/02 06:30:07 PSTuXKiL0
【名前】早川裕作@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:34話後
[現在地]:I-4海岸 1日目 朝
[状態]:健康。2時間変身不能。
[装備]:ケイタイザー
[道具]:フェンダーソード@激走戦隊カーレンジャー、火竜の鱗@轟轟戦隊ボウケンジャー、他1品
[思考]
第一行動方針:サーガインの力になる
第二行動方針:ドモンが起きるのを待つ
備考:2時間の制限に気づきました。自分にも適用されることを予想しています。ヒカルと情報交換を行いました。
 メガシルバーの変身制限時間は2分30秒のままです。


279 名前: ◆i1BeVxv./w 投稿日: 2008/10/01(水) 22:24:29
以上、投下終了です。
誤字、脱字、矛盾点、感想などがありましたら、宜しくお願いします。


代理投下終了!
遅くなってすみませんでした。

637:名無しより愛をこめて
08/10/02 06:35:42 PSTuXKiL0
GJ!
揺れるヒカルと、同じ痛みで繋がるドモン。
この二人の出会い。これからが強烈に楽しみになってくる引きでした!
二転三転するバトルも、かっこいい裕作さんとちょっと腹黒いサーガイン、面白かったです。


638:名無しより愛をこめて
08/10/02 11:27:24 6ivMANQ0O
投下&代理投下GJです。
裕作さんかっこいい!!
サーガインも上手く立ち回っていてなかなか順調ですね。
果たして首輪の謎に近づけるか否か。
ドモンが目覚めた時、ドモンとヒカル、二人はどうなるのか、先の展開が気になります。
バトルの描写も相変わらずお見事!GJです!

639:名無しより愛をこめて
08/10/02 20:56:30 0FjHfxcs0
あー、毎回毎回面白いなぁ…
元々割と殺伐とした世界のライダーと違って戦隊世界は善悪が比較的はっきり分かれてて
明瞭勝つ明るい作風なんだよね。まるでないわけじゃないけど。
だからロワで“極限”を描くと鮮烈に映る。
この路線でもっともっと壮絶な展開を期待してしまうのは自分の中にロンを感じますね。
いや、面白かった! 長い割に具体性を持たせられないけど、本当にGJ!


640:名無しより愛をこめて
08/10/03 10:41:20 iWxiE0g20
板違いです
バトルロワイヤル・二次創作は以下の板でどうぞ
下記の板にはバトルロワイヤルスレッドが多数ありますので早急に移転してください
URLリンク(namidame.2ch.net)


641:名無しより愛をこめて
08/10/03 23:30:21 mXx2V3xrO
>>636
投下乙です。守るものを失ったヒカル先生とドモンの対比に胸が痛みました。GJです!


僭越ながら煽り文という物を書いてみたので投下します。


642:名無しより愛をこめて
08/10/03 23:36:53 mXx2V3xrO
000.オープニング
さあ、殺戮の宴を始めましょう。
入場料?皆さんの命で結構ですよ。
001.正義ノミカタ
哀れ日向おぼろ!!乙女の命は華と散るのか!?その時、颯爽と一陣の蒼き影が!
その姿、かっこよすぎる。
002.赤と黒
不敵な男の不敵な言葉。残酷な龍は求める。その代償を
003.災魔とニンジャ男は探すーーー守るべき弟の姿を。
男は探すーーー共に歩むべき者を。
004.君にかけるおまじない
幸せの絶頂で突き落とされた少女は、それでも少年を守りたいと願う。
その邂逅が何をもたらすか知るよしもなく。
005.Blue
その心を占めるのは狂気?狂喜?狂飢?
狂人たる男は探し続ける、愛しい愛しい敵の姿を……
006.戦う交通安全リターンズ!
月給19万3千円の善良なる一般市民だって、戦う時は戦います。
007.決意
男は静かに決意する。自分の宿命との決別を。
008.危ない遊び
コインは決める。数多の者の運命を。
コインは決める。男の歩むべき道を。
コインは決める。弾かれる事さえなく……
009.ミッドナイト・ドッグファイト
深夜に繰り広げられる烈しき闘争。
男達は思う。それぞれに愛しき女の面影を。
010.シオンの主義
一人一人、正義の形は違うもの。
だが、今は共に歩もう。
守る為に、倒す為に、誇りの為に。

643:名無しより愛をこめて
08/10/03 23:37:51 mXx2V3xrO
ではお目汚し失礼しました

644:名無しより愛をこめて
08/10/04 10:10:05 MFOwhBgV0
面白い趣向だな。
これ以降も頼む。

645:642
08/10/04 10:37:14 C8YaZwte0
>>644
ありがとうございます。頑張りますw

646:名無しより愛をこめて
08/10/04 12:18:16 Wspm03PYO
煽り文超GJ!
改めてまとめ読み直してこよう。

647:名無しより愛をこめて
08/10/06 01:30:49 BA9KoVmwO
懐かしいな。
失礼な話だが正直、もう駄目だと思ってたロワがいつの間にか持ち直して、
投下まであってるのを見た時は、びっくりするのと同時に嬉しかったもんだ。
そのうち、人気投票なんかも出来たらいいな。

648:名無しより愛をこめて
08/10/06 21:57:29 n905+dzNO
保守

649:名無しより愛をこめて
08/10/07 01:12:50 tCt+eHekO
そろそろ次スレの時期?
まだ早いかな?

650:名無しより愛をこめて
08/10/07 12:26:21 ZNrtPJv40
>>647
住人としてはそんな風に言われたら嬉しい事この上ないぜ!
いつか出来るといいな。

>>649
今回は内容が濃かったようだな。そろそろかな?


651:名無しより愛をこめて
08/10/07 12:27:48 ZNrtPJv40
sage忘れ失礼

652:名無しより愛をこめて
08/10/07 13:53:43 WXiVq0eq0
今、479KBか。前回はどれくらいで立てたんだっけ?

653:名無しより愛をこめて
08/10/08 12:19:12 pAoE5dEHO
まとめ氏更新乙です。いつもありがとうございます。

>>652
うーん、今くらいじゃないかな?


654:名無しより愛をこめて
08/10/08 12:53:31 A2PLIk3/O
まとめ更新乙です!
新スレは予約のどちかが投下後でいいのかな?

655:名無しより愛をこめて
08/10/09 00:10:57 2sbnIOqXO
>>654
PCに触れたら挑戦してみようと思います。
もし、容量が足りないようでしたら明日にでも立てようと思いますが……

656:名無しより愛をこめて
08/10/09 00:13:14 w8IP56fE0
雑談する容量としてはまだ充分だけど、投下するには少ないかもね。
たしか前回も足りないかもということで、立てられたようだし。
今週末ぐらいを目安に立てればいいんじゃないかな。

657:名無しより愛をこめて
08/10/09 00:37:50 2sbnIOqXO
>>656
了解です。
それぐらいを目処に立てようと思います。
ありがとうございます。

658:名無しより愛をこめて
08/10/10 00:44:43 TMHMqZTmO
色々あるけど、出来ればこのロワにはずっとここにいて欲しいな。
あの議論、読み手も参加していいのかな?

659:名無しより愛をこめて
08/10/10 00:54:26 DdEYjaoM0
いいんじゃね?

660:名無しより愛をこめて
08/10/10 06:29:11 Io7oMmWIO
>>658 659
ぜひ参加して下さい。

661:名無しより愛をこめて
08/10/10 06:31:44 Io7oMmWIO
とりあえずしたらば議論スレに御意見を頂けるとありがたいです。

662:名無しより愛をこめて
08/10/10 12:22:18 TMHMqZTmO
>>661
あれで良かったのか不安ですが議論スレに意見を書かせて貰いました。
ありがとうございました。

663:名無しより愛をこめて
08/10/10 17:09:56 Io7oMmWIO
貴重な御意見ありがとうごさいました。
読み手さんがいてくれたということ。
勇気を出して意見をレスしてくれたこと。
正直うれしかった。

664:名無しより愛をこめて
08/10/11 14:22:11 A98Qc5GA0
議論スレでのご意見ありがとうございました。

次スレ立て挑戦してみます。
◆MGy4jd.pxY氏 テンプレお借りします。

665:名無しより愛をこめて
08/10/12 18:30:39 OptufxbBO
スレ立て乙です。誘導しておきますね。

スレリンク(sfx板)

666: ◆MGy4jd.pxY
08/10/14 10:36:16 6TMgvN7u0
予約スレにも書き込みましたが、先週末から体調不良で思うように進んでおりません。
申し訳ありませんが延長をお願い致します。


667: ◆MGy4jd.pxY
08/10/14 10:37:33 6TMgvN7u0
>>664
遅くなりましたがスレ立て乙です。


668:名無しより愛をこめて
08/10/14 12:49:01 KaHWIS180
>>666
了解しました。
楽しみにお待ちしておりますが、お体は大切です。
あまりご無理をなさらず、お体をおいとないください。

669: ◆i1BeVxv./w
08/10/17 13:28:22 n77o0L0e0
遅くなりましたが、ただいまより投下いたします。


670:西堀さくら ◆i1BeVxv./w
08/10/17 13:29:36 n77o0L0e0
「一体、何を企んでいる」
 人質の救出のため、歩みを進めていた私はグレイの突然の問いかけに足を止めました。
「企んでいるとは?」
「メガブルーとやらを呼ぶ声は明らかに北から聞こえてきた。だが、お前は一向に北へと向かう気配がない」
 グレイの指摘は尤もでした。
 私はドギーさんたちの下を発ってから、ずっと東へと歩いていた。
 これでは何時まで経っても目的地に辿り着けるわけがありません。
 ただし、目的地が―
「いいんですよ、ここで」
 ―本当に北だった場合の話ですが。
「どういうことだ」
「……気が変わりました。ここがどこだかご存知ですか?あと数時間で禁止エリアになる場所です。
 こんな場所、好き好んで通る人なんていませんよね」
「貴様……」
 流石にグレイは察しが早い。
 そう、私が目指す場所はここで合っています。
 首輪が爆発するかも知れない危険エリア。しかも、今いる場所は奥まった路地裏です。
 誰にも見られないで何かをするにはこれ以上、好都合な場所はありません。
「先程の放送を聞き、殺し合いに乗ったということか」
「ええ、そう捉えてもらって構いません」
 事実上の宣戦布告にグレイが戦闘態勢をとる。
 私は駆け出し、グレイから距離を取ると、素早く物陰に身を隠しました。
 お互いに戦える時間が10分と解っている以上、先に変身した方が不利。実力が拮抗しているのならなおさらです。
 10分間で相手を倒すより、10分間逃げ回る方が容易ですから。
 ただ、当然、グレイもそれは理解しているでしょう。長期戦は覚悟しなければいけません。
 しかし、そのための禁止エリアでもあります。ここに足止めをすることができれば、それだけでゲームオーバーです。
 本音を言えば、もう少し時間を稼ぎたかったところですが、なんにせよ、しばらくはグレイも様子を見るは―
 その時、響いたのは銃声の音。
 グレイは右腕に内蔵された銃―ハンドグレイザーで、私のいる方向への発砲を開始しました。
 予想外です。まさか、10分で私を倒す方を選ぶとは。
 グレイの知能を過大評価してしまったのでしょうか?いえ、グレイは私が思っている以上の強者と考えた方がよさそうです。

671:西堀さくら ◆i1BeVxv./w
08/10/17 13:30:23 n77o0L0e0
 とにかく、相手が戦いを開始したのなら、こちらはいかに時間を稼ぐか。
 グレイが実力者なら、ほんの数秒程度で有利に立てるほど、甘い相手ではない。
 そう判断した私はその場からの逃走を始めました。
 その途端、銃声が止まります。私の動きに気付き、追跡を開始したのでしょうか。
 私は後方に気を配りながら、前へと進みます。
 しかし、それが間違いでした。突如として、前方の壁が破壊されたかと思うと、そこから何者かの腕が飛び出してきます。
 後方にばかり気を取られていた私は、あっさりとその腕に首を捕まえられました。
 そのまるで万力のような握力に私の呼吸はたちまちか細いものに変わる。
 その腕の主は言うまでもなく、グレイです。
 私はいざという時のために手に持っていたアクセルラーを使おうとボタンを押します。
 しかし、タービンを回そうとしたその手は、グレイの左手に抑えられてしまいました。
 迂闊でした。ここまで力の差が歴然としてあるとは。
 生殺与奪を握られ、為す術のない私の瞳をグレイは赤く発光した眼で訝しげに見る。
「貴様、なぜ突然考えを変えた?放送を聞いた時はそんなことを考えてるようには見えなかったが」

「……なぜ?」

 そういえば私はなぜ殺し合いに乗ることにしたのでしょうか。
 少なくとも放送の直後までは人質の救出を目的にしていたはずです。
 ここに来たこともそうです。最初は相手に仲間がいる可能性を考え、出来るだけ人目につき辛い場所を選んで移動していただけのはずです。
 グレイに訪ねられるまで、そんな思惑などなかった。それなのに何故?なぜ?ナゼ?
 その時、突然、グレイの腕から火花が飛び散りました。
「ヌゥ」
 思わず私から手を離すグレイ。
 一体、何が起こったのか。私は必死に呼吸を整えつつ、顔を上げ、状況の確認を試みました。
「あなたは」
「やあ、久しぶりだね、シンデレラ」
 そこには真っ白い姿の怪物が立っていました。一見すると優雅にも見えますが、その顔は醜悪。
 普通の人間の感性では間違いなく、彼を怪物と呼ぶでしょう。
 私はその怪物に見覚えがありました。しかし、一体、どこから。

672:西堀さくら ◆i1BeVxv./w
08/10/17 13:31:18 n77o0L0e0
「君を守るため、ボクは戦おう」
 そう言うと、怪物はサーベルを手に、グレイに襲い掛かります。
 私は呆気にとられつつ、与えられたわずかな時間を使い、怪物がどこから現れたかに考えを巡らせました。
 そして、気付きます。
「私の……支給品?」
 ガラスの靴―シンデレラの呪いが封じ込められた危険なプレシャス。
 彼はガラスの靴に封じ込められた怪物。通称、王子様。そして、ガラスの靴は私の支給品。
 その存在を私は最初から認識していました。そして、ガラスの靴がどんなに危険なプレシャスかを私は知っています。
 それなのに、何故、私はガラスの靴に何の対処もしなかったのでしょうか?
 普段の私からは考えられないミスです。
「とにかく、ガラスの靴は危険なプレシャス。破壊しないと」
 気持ちを切り替え、私はアクセルラーのタービンを回しました。
「ボウケンジャー、スタートアップ!」
 瞬時に私の身体にはアクセルスーツが装着され、私はボウケンピンクになります。
 それと同時にハイドロシューターを転送、構え、敵を狙いました。
「はっ!」
 寸分の狂いなく、私が放った水の弾は―
「グッ」
「いいサポートだ、シンデレラ」
 ―グレイの背中に命中しました。
 怯んだ隙を狙い、王子様はサーベルでグレイを切り裂き、そして、間合いを広げると、手を掲げ、雷を放ちました。
 白い雷光がグレイの身体を包みこみ、火花を散らせます。

 冷静に考えてみましょう。

 ガラスの靴は確かに危険なプレシャスです。ですが、彼は私を助けるために現れました。少なくとも現状では味方のようです。
 ならば、倒すべきはグレイの方。
 彼は私に不信感を持っています。そのような存在は早めに消えてもらうべきでしょう。
     ・・・・
 そして、偶然にもここに邪魔者は存在しません。

673:西堀さくら ◆i1BeVxv./w
08/10/17 13:32:19 n77o0L0e0
「アクセルテクター!」
 私はアクセルテクターの転送を行い、その身に装着します。
 グレイを破壊するほどの攻撃力は、ハイドロシューターやサバイバスターにはありません。
 10分間の時間稼ぎを行うのもいいですが、王子様の協力もあり、今は私たちの方が優勢。
 ここは機を逃さず、攻勢を掛けるべきです。
「デュアルクラッシャー・ドリルヘッド」
 私はデュアルクラッシャーを手に握ると、王子様に向けて、指示を出します。
「王子様、グレイの動きを止めてください!」
「任せろ」
 グレイは王子様のサーベルによる攻撃に防戦一方。
 身体の至るところに刃の痕を刻まれ、煙を上げてます。
「さあ、ボクの愛の炎を味わうがよい」
 グレイを囲むように立ち昇る業火。その攻撃に、ついにグレイは膝を折る。
 それを見るや否や、王子様はグレイに駆け寄り、彼を羽交い絞めにしました。
「今だ、シンデレラ」
 言われなくてもわかっています。
 止めです。グレイ!
「ゴー!」
 デュアルクラッシャーから放たれるドリルの一撃。例えグレイといえども、破壊は免れません。
 しかし、グレイはそれを待っていました。
 グレイは羽交い絞めを振り払うと、即座に王子様を盾にします。
「なっ、うぎゃぁぁっ!」
 轟音が鳴り響き、王子様の身体が一瞬にして粉々に砕け散ります。
 そして、グレイはそれを見遣ると、私に向けて、グレイギャノンの照準を合わせました。
 その動きの素早さを見るに、彼はわざと劣勢に見せて、私の攻撃を誘っていたのでしょう。
「全て計算ずくだったわけですか」
 変身は私の方が長く保ちます。
 彼が私たちと互角に戦えるようなら、私は時間切れを待つ戦略を取っていたはずです。それを見越して、このような戦略をグレイは取った。
 戦闘でも、戦略でも、彼の方が一枚上手だったようです。
 そして、運でも。

674:西堀さくら ◆i1BeVxv./w
08/10/17 13:36:15 n77o0L0e0
「………」
「………」
 沈黙が場を支配します。
 私はデュアルクラッシャーの反動で、発射と同時に吹き飛ばされていました。
 今の私は体制を崩し、グレイギャノンを構える彼を見上げるような有様です。
 おそらくアクセルテクターからはサラマンダーの鱗が抜かれているのでしょう。
 デュアルクラッシャーの反動に耐えられなかったことが何よりの証拠です。
 そして、サラマンダーの鱗を有しないアクセルテクターでは彼の攻撃は防げない。
 グレイギャノンが発射されれば、私は王子様と同じく、粉々になるしかありません。
「………」
 ですが、何故かグレイは沈黙を保ったまま、グレイギャノンを下ろしました。
「一体、どういうつもりですか?」
「……貴様の行動は腑に落ちないことが多すぎる」
 そう言うと、グレイは踵を返しました。私に止めを刺さず、ここから立ち去るつもりのようです。
「待ちなさ―」
「フン」
 大地に向けて発射されるハンドグレイザー。
 吹き上げられた砂埃が煙幕となり、グレイの姿を隠します。
 私は急ぎ立ち上がり、グレイを探しますが、時既に遅し、どこにもグレイの姿はありません。
 時計を見れば、まだ彼が制限を受けるまで、3分程度あります。身を隠すには十分な時間でしょう。
「逃げられましたか」
 口では強がりを言いますが、彼のグレイギャノンの引き金が引かれていれば、私は生きていなかった。
 逃げられたのではなく、見逃してもらったと言う方が正しい。
 この勝負は完全に私の敗北です。
「せめて、アクセルテクターが使える状態だったら」
 私は悔やみつつ、アクセルテクターを解除し、そのコア部分の蓋を開けました。
 そこには予想通り、サラマンダーの鱗は入っていません。
 しかし―
「これは」
 サラマンダーの鱗に代わり、そこには予想外のものが入っていました。

675:西堀さくら ◆i1BeVxv./w
08/10/17 13:37:16 n77o0L0e0
 それは1枚の紙切れ。紙切れにはこう書かれています。

―さくら、菜月、蒼太、映士、お前たちの中の誰が何時これに気付くかわからないが、これを読んでいるということは、ロンのトラップに負けなかったということだろう。
  俺は6時の放送が終わった後、これを書いている。俺は今G2エリアにいる。そして、これから街に向かうつもりだ。
  もし、近くにいるようなら、お前たちも街に向かえ。まずは合流することが先決だ。
  もし、何らかの理由で動けないのなら、今の状況を書いて、アクセルテクターに入れろ。
  変身していられる時間はおおよそ10分。一度、変身するとしばらくは変身できないようだ。
  だが、ずっと変身できないわけではあるまい。
  変身できるようになれば、アクセルテクターを転送し、メッセージを確認する。
  俺はお前たちと必ず合流し、ロンを倒し、そして、ここから必ず脱出する。それが今回のミッションだ。―

「チーフ……」
 チーフからの手紙に私の胸はいっぱいになりました。
 そして、この手紙が示すのは、チーフが近くにいるという事実。
「チーフに会える……」
 私は今来た道を戻ることにしました。
 人質の救出に向かいたいのは山々ですが、グレイと別れ、満足な装備も持たず、変身できない今の私では戦力として数えることはできません。
 ここは放送を聞いた他の誰かに任せるしかないでしょう。
 そうです。優先するべきはチーフとの合流。チーフならきっと、ロンの企みを阻止するはずです。
 彼は熱き冒険者。どんな困難にも負けることはありません。

 だからこそ―

「見苦しく惨めな死に様を……見せ付けなきゃいけませんね」
 私は自分が口にした言葉を気に留めることなく、チーフを求め、大地を踏みしめました。

【ガラスの靴 破壊】


676:西堀さくら ◆i1BeVxv./w
08/10/17 13:38:09 n77o0L0e0
【名前】西堀さくら@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:G5エリア 1日目 朝
[状態]:健康 (ただし、ロンによる洗脳を受けており、いつでも傀儡になる危険性あり) 。ボウケンピンクに変身中。
[装備]:アクセルラー、スコープショット
[道具]:虫除けスプレー、虹の反物の切れ端、アクセルテクター@轟轟戦隊ボウケンジャー
[思考] 基本行動方針:仲間と合流し、ここから脱出する。
    第一行動方針:チーフ(明石暁)と合流する。
    第二行動方針:恭介たちと共闘して仲間を増やす。このゲームのルールを把握する。
    ※)裏行動方針:ロンの言われるままにいいように操られ、見苦しく惨めな死に様を晒す。
     ただし、本人にその自覚はなく洗脳行動も全て自分の意思であると思い込む。

【名前】グレイ@鳥人戦隊ジェットマン
[時間軸]:49話(マリア死亡)後
[現在地]:G5エリア 1日目 朝
[状態]:健康?多少の傷(ダメージ軽微、戦闘に支障なし)。2時間戦闘不能
[装備]:自らのパーツ全て
[道具]:遠距離射撃用ライフル(残弾数4発) 支給品一式
[思考] 基本行動方針:未定。第一行動方針を果たした後の行動は決めていない
    第一行動方針:自分の納得のいく形でシオンに借りを返す。
    第二行動方針:西堀さくらに違和感。とりあえず北へ。


677:◇i1BeVxv./w 氏の代理投下
08/10/17 14:10:49 LBVZHDeY0
――――――――――――――――
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点、ご感想などあれば、お願いします。


慣れないことはするもんじゃないorz



678:名無しより愛をこめて
08/10/17 14:24:57 LBVZHDeY0
GJ!
とうとうロンの撒いた悪の種子が息吹始めた!
少しずつズレていくさくらと、現実と混乱した世界を象徴するような王子様。
精神が崩れていく不安定さが面白かったです。


679:名無しより愛をこめて
08/10/17 16:24:24 GcF1a48L0
投下&代理投下GJです!
ああ、ついに導火線に火が……!!
意識することができないまま、行動を操られるさくら姐さん。
その乖離した心理描写が巧みで面白かったです。
チーフと再会した時、どんな悲劇が生まれるか楽しみです。
(こういう風に書くとなんかロンのようですがw)
面白かった!

680:名無しより愛をこめて
08/10/17 18:03:17 FJf8G+Fb0
この状況下でもさくらへの違和感を優先し、殺さないグレイの判断。
なかなか痺れました。通信手段がない中でなかなかの妙案です、チーフ。
…この後が楽しみで仕方ないですねw

681:名無しより愛をこめて
08/10/20 20:42:04 /TjFsj1s0
age


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