スーパー戦隊 バトルロワイアル Part2at SFX
スーパー戦隊 バトルロワイアル Part2 - 暇つぶし2ch520: ◆MGy4jd.pxY
08/09/11 19:10:22 P5/huDd2O
大変申し訳ありません。
今日が期限ですが、もう少しかかりそうです。
前回のようなことは絶対にしませんので延長させて頂けないでしょうか。
よろしくお願いいたします。

521:名無しより愛をこめて
08/09/11 21:36:55 Gsa4tJQtO
>>520
了解です。楽しみにお待ちしています。

522:名無しより愛をこめて
08/09/12 03:44:58 M5DaaAbj0
>それに、傍らの恭介はいまにも飛び出していきそうな雰囲気だ。
>「守る…か…しかし、合って間もない連中をよくそこまで信頼できたものだな。
したらば投下版だと「奇妙な二人」は間にもう少し話があるんですが…まとめの方も本スレを踏襲している
のでここが省略されちゃってますね。


523: ◆MGy4jd.pxY
08/09/12 07:03:48 33lXipR/O
>>522
本当にすみません。
代理投下の際に抜けてしまったのだと思います。
確認不足でした。
ご指摘ありがとうごさいます。
作者氏は不快な思いをされたでしょう。申し訳ありませんでした。

まとめ氏にもお手数をおかけしますが、該当箇所の修正をお願いいたします。

すみませんでした。

524: ◆i1BeVxv./w
08/09/12 20:10:23 cM/ch8CR0
>>523
私もうっかりしてました。
該当箇所を修正いたしましたので、ご確認をお願いします。

525: ◆8ttRQi9eks
08/09/13 23:18:53 sjmzbMzO0
お二方ともそんなにお気になさらないでください。
拙作を代理でアップして本筋に加えて頂けて、本当にありがたいことだと思っています。
なのにお礼が遅れて申し訳ない。なかなかこれないんですよね…今日は超8だってのもあったんですがw
とにかく不快な気持ちは一切ありません。自身でアップできないのに522さんも含めて様々フォローをしてもらって
ありがたいと思いこそすれ、です。

526: ◆MGy4jd.pxY
08/09/14 23:39:43 5M6ESeZw0
>>525
温かいお言葉ありがとうございます。

もう少ししたら投下致します。


527:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:00:28 /Anf5pos0
遅くなりましたが投下します。

528:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:01:38 /Anf5pos0
   Q:ネジブルーのネジトマホークはどうしてそんなに鋭いの?
       A:メガブルーの頭を勝ち割るためだよ。
   Q:ネジブルーは誰に殺されたの?
       A:メガブルーだよ。
   Q:メガブルーと出合ったらどうやって殺すの?
       A:あぁ、そうだな~……




矛先をメガブルーに定め、凍てつく青き怒りを乗せ、ネジトマホークを縦横に振るう。
スーツの回路が火を吹いて破裂する音、それと共に耳を打つメガブルーの苦痛の声。
その声にネジブルーの奥底から表しようもない歓喜が沸き上がる。
さらにフルスイングでもう一撃。
かろうじて持ちこたえたメガブルーは、よろけながらも倒れまいと足を踏ん張る。
それでいい。簡単に倒れてしまっては面白みに欠ける。
「ほんと、楽しいよ、楽しいよ~。メガブルゥ~」
すぐには殺さない。いや、すぐに殺してなどなるものか。
少しでも多く、少しでも長い間苦しんでもらわなきゃね。
そう、俺の味わった悔しさや苦痛は、こんなものじゃ全然足りないんだよ。

メガブルーに苦痛を!メガブルーに屈辱を!!

ネジトマホークから放たれた青き光の刃が乱舞し、メガブルーの胸を、四肢を、胴体を切り裂く。
「ぐっ!あぁ~」
全身で苦痛を表現するように、メガブルーは体を折り曲げのた打ち回る。
「まず、仮面を割らなきゃね」
その脳天目掛けてネジトマホークを振り下ろした。
「が……ハッ」

529:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:02:32 /Anf5pos0
苦しげな声と、差し出した手が助けを求め虚空にさまよう。
ネジブルーはゆっくりと近づき、右足のつま先をメガブルーの顎へ引っ掛け蹴り起す。
「寝たふりなんてやってくれるねぇ」
まだ意識はある。仮面を通していても驚愕に満ちた視線をはっきりと感じる。
「メガブルー、これからだよ」
脳天に突き立てたネジトマホークを引き抜いた。
パキパキと音を立て、メガブルーの仮面が壊れていく。
どんな顔してるんだい?見せてくれよ~。
割れた仮面の断片を一つ一つ取り除く作業は、プレゼントの包みを開けるような期待と喜びをネジブルーに与えてくれた。
ようやく見えた。仮面の隙間から覗く、恐怖、苦痛、絶望を湛え、黒曜石のように輝く瞳が。
ヤメテクレ……殺サナイデクレ。
メガブルーの瞳が切に訴えていた。
「止めてくれ?殺さないでくれ?それじゃぁ足りないぜ。もっと必死に懇願しなきゃだめだよ」
指をクルクル回しながら仮面の隙間へ潜らせた。
「苦しみの声だって、もっともっと聞かせてくれ。絶望のこもった断末魔は絶対に忘れないでくれよ~」


§


いつまで笑っているつもりだろう。
放っておけば笑い死にするんじゃないかと思うほど、ネジブルーは気違いじみた笑い声をけたたましく上げ続けている。
「もういいわよ、ネジブルー」
「ヒャハハハハッハハハハッ、ヒャハハハヒャハハハハッ。メガブルー、お前は死んじゃうんだ!ヒャハハハハハハハハッ!!」
聞いていない。
美希だけでなく、誰が話かけたところできっと同じだろう。
思ったより、使えないかもしれない。
あわよくばネジブルーとメガブルーの戦いに何人か巻き添えになってくれればと思っていたが期待しない方が良さそうだ。
それはそれで構わない。
美希の狙いは他にもある。

530:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:03:42 /Anf5pos0
まず、利用できる人間の選定。
そして、血の着いた忍者刀の始末。
事をスムーズに運ぶために、疑われるのは極力避けたい。
味方同士となれば、名刺交換代わりに支給品を確認するだろう。
まさか私の支給品には最初から血が着いていたんです。と言うわけにもいかない。
だから隙を見てネジブルーのデイバックとすり替えようと思っていた。
おそらくネジブルーは倒される。
スフィンクスの支給品を美希が奪ったのと同じように、ネジブルーの支給品も有効利用と言う名の元に誰かに奪われる。
すり替えたデイバックの中には血の着いた忍者刀。
ただ、そこで問題なのが目の前のネジブルー様子だ。
メガブルーに異様な執着を抱いているだけで、ネジブルーは殺し合いに乗っているわけではない。
それにネジトマホークと言う立派な武器も持っているのに、わざわざ慣れない忍者刀で殺害するメリットがない。
では誰に支給された物なんだ?となれば、疑われるのは美希。
どうしようかしら。
参加者はまだ大勢いるし、ここに集まる人間を利用すると限らなくてもいいのよね。
拡声器といえど全エリアに伝わっている訳ではないだろうし。
都市は人が集まりやすいと踏んで選んだが、むしろ殺し合いに乗るつもりがないなら他のエリアで様子を伺っている可能性もある。
一つ仕掛けておいた方がいいかもしれない。
時計とあれを使えば……。
そうなると、ドロップにも手伝ってもらうことになるわね。

美希はクルリと身を翻し、ドロップの方を向いた。
この子といれば、この場を逃れてもしばらくは怪しまれずに誰かに近づける。
ドロップと手を組んでいる限り、美希は幼い子を守る優しい女性の皮を被っていられる。
ただいつ手を噛まれるかわからない。
なぜならドロップの望みは美希と同じ『最後の一人になる』だからだ。
「ドロップ」

531:名無しより愛をこめて
08/09/15 01:05:20 UVqGj+aWO





532:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:06:19 /Anf5pos0
美希が声をかけるとドロップはトコトコとこちらに歩いて来た。
「ちょっと下に降りてくるわ」
ドロップはコクンと頷き、少し眉をひそめネジブルーを見た。
「あれ……」
ドロップのさす『あれ』に目を向けると、まだメガブルーを殺す妄想の世界にどっぷり浸かっている。
「うるさいのは我慢してくれる?好きなようにさせておくといいわ。それより……」
美希はそっとドロップに囁いた。


§ 


「だめだよ~、我慢できない!なぁ、メガブルーはまだ来ないのかい?
さっきから俺のネジトマホークが叫んでしょうがないんだ。メガブルー、メガブルー、 メガブルーってね!……?」
美希の姿が見えない。ネジブルーの傍らにいるのはドロップだけだった。
資材の影でボンヤリと朝日を見つめているドロップに問い質す。
「あの女、どこへ行ったんだい?」
「偵察……」
ネジブルーを見ようともせずドロップは答えた。
「偵察ぅ?そりゃいいな」
待ちきれないネジブルーには、ある意味それは朗報だった。
「だけど見付かったらどうするんだ?」
「……ネジブルーに命令されたって言うって。メガブルーを連れて戻らなければドロップを殺すって」
「へぇ、そうか。ならメガブルーをどうやって殺すか、あの女が帰ってくるまでに考えておかなきゃね……」

 
§


瞬は地図を手に必死で身を隠す場所を探す。

どうする、砂漠を渡ってエリアの外れまで行くか?

533:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:08:23 /Anf5pos0
無理だ。ペットボトル2本の水で渡りきれっこない。
採石場で隠れようか?
いや、一箇所にいるのは危険だ。
逃げ続けるしかない。
誰かに見付かったらメガブルーに変身してでも逃げ切ってやる。


『皆さん――――』


瞬の思考を中断するようにロンの声が頭に流れ込んできた。
ハッと瞬は顔を上げる。
声を聞いているうちに肩が震えた。
自分ではその震えを抑えることが出来ない。

禁止エリア?だんだん逃げ場が無くなって行くのか!?
それに8人?8人ってなんだよ。
なんでそんなに死んでるんだ!
……ダメだ。逃げるなんて無理だ。
誰かに助けを求める?
人質を助けなかった俺を誰が助けてくれるっていうんだ。

殺し合いはとっくにもう始まっている。
その中で瞬はいわば指名手配状態。
瞬が描いたビジョン、無罪放免の道は閉ざされた。
「クッ、ハハハハッ」
涙と笑いがごちゃごちゃになる。
「どうするんだよ、俺。もう死んじまった8人みたいに、逃げられない。自分を狙うヤツから……」
砂の上に転がり、悔しさをぶつけるように何度も地面を叩く。
ちくしょう!ちくしょう!!
なんで俺なんだ?

534:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:10:32 /Anf5pos0
だいたいメガレンジャーに選ばれたのは健太じゃないか。
俺はなりたくてメガブルーになったんじゃない。
不公平だ……。
こんなの、俺はまだ17なんだ。
個展だって開いてない。デザイナーにだって手が届きそうだったのに。
なんで俺だけこんな目に合わなきゃならないんだよ。
冗談じゃない……。

― 殺るしかないんだ。そうじゃないと、次に名前を呼ばれるのは俺だ。

よろよろと立ち上がり瞬はタワーを目指した。
瞬が狙うのは漁夫の利。
人質など、所詮罠だ。
集まってくるのはどうせ殺し合いに乗ったヤツばかりだろう。
双方戦って傷ついたところで駆け付ける。
後は制限を逆手にとり邪魔な参加者を一掃する。
瞬は深く息を吐き出した。
「やってやるさ」
歩みを再開した瞬に恐怖はなかった。


§


「ドロップ、この兄が今お前を助けに行く」
ジルフィーザはひたすらドロップを目指し、タワーの外壁をよじ登る。
このタワーの外壁は幾つものキューブブロックを積み重ねた形状。
充分とはいえないが登るための足場にはなる。
そのわずかな足場で足を支え手に力を込め、ジルフィーザは頂を目指した。
すでに完成された数十階部分まで、タワー内の昇降機を使おうかとも考えたが、そこに罠が仕掛けてあるとも限らない。
戦力の温存と愛する弟のため、ジルフィーザはあえてロッククイラミングを決行した。

535:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:12:02 /Anf5pos0
ジルフィーザが登る一面は、朝日の当たらないビル全体の死角。
頂上付近まで下からはもちろん、上からも見つかりにくい一面だった。

手探りでぐらつく身体を支えながら、ジルフィーザは先程頭に流れ込んできたロンの声を反芻する。
告げられた8人の死者。
その中にドロップの名が無かったことはジルフィーザに束の間の安堵をもたらした。
だが、となればやはりドロップはここで捕らわれている。
おのれ!忌々しい制限など無ければ!!
そう、制限さえなければ、飛行してすぐにでも駆けつけている。
この怒り、頂上にたどり着いた暁にドロップを浚った相手に存分に返す。
全身全霊、己が持つすべての力を発揮し、塵一つとして残さぬわ!!

ジルフィーザの怒りが極限に達した頃、ロッククライミングも終了となる。
この階からは上階は未完成。
剥き出しの鉄骨と打ちっ放しのコンクリートの外壁を土台に鉄製の階段が設置されていた。
上を仰ぐと、九十九折りの鉄の階段の遙か上に揺らめく人影が見える。
「ドロップ!!」
ジルフィーザは階段を駆け上がった。それと同時に
「お前、メガブルーじゃないね~」
突然、ふざけた調子の声が聞こえた。
「墜ちろ!」
声の途端、不可視の力でジルフィーザの身体は階段から突き放された。
咄嗟に掴んだ階段の手すりがメキメキと土台から剥がれジルフィーザは宙づりになる。
「回れ!」
身体が回転を始める。
やむなく手を離したジルフィーザは地上へ向け急速に落下していく。
「おのれ!!」
風に逆らい翼を拡げた。
落下速度は強風となりジルフィーザの翼が軋む。
二、三度大きく羽ばたかせ体制を整える。
「うぬぅ!」
再びドロップの元へ羽ばたこうと旋回し上昇する。

536:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:15:47 /Anf5pos0
タワーの最上部でこちらを見ながらブルーのメガホンを構える男がいた。
かまわず目を凝らし、ドロップの姿を捜す。
「ドロップ、どこにいるのだ?」
兄の声に答えたのか、資材の影から小さな姿が現れた。
違う。
ジルフィーザの眼が憤怒の色に染まる。
あれはドロップでは無い。
無駄足を踏まされ男を縊り殺したいところだが、ここは本物のドロップの行方を捜さなければならない。
もし、次にこの男が目の前に現れれば生かしてはおかぬ。
射抜くように男を睨み付けた。
男はジルフィーザの視線を真っ向から受け再びメガホンを構えた。
「メガブルーを連れてこいよ~。墜ちろ!」
再び不可視の力がジルフィーザを包む。
ジルフィーザはその力に逆らわず、風に乗り地上へ降りていった。


§


「瞬の代わりにあの声の主を倒す、これは俺の役目だ。誰だって初出場の時は怖い。俺だって腰を抜かしたぐらいだ。
それなのに、えらそうに説教なんてしちまった。瞬を傷つけちまった責任。そいつを果たすには俺がやるしかねぇ」
「ならば、私も一緒に戦おう。あの者を傷つけたのは……俺の方だ」
「ティターン。じゃあ一つ頼みがある。お前には俺が戦ってる間に、人質を助け出してくれ」

タワーの入り口付近、そこで人目をはばからずに話す男が二人。
一人は黒装束に身を包み、銀色の犬を引き連れた大男。

537:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:17:29 /Anf5pos0
もう一人は痩躯ながら鍛えられた鋼のような精悍さを持つレスキュー服姿の男。
積み上げられた資材に隠れ、その二人を数分前から覗いている二人組。
青い長羽織を小粋に着こなす女、日向おぼろと、高き冒険者ボウケンブルーこと最上蒼太である。
「あの黒装束は見るからに怪しい、っちゅう感じで思わず隠れたけど……」
「人質を助ける相談をしてるみたいですね」
蒼太とおぼろは顔を合わせて頷きあった。

二人がJ-10エリア『叫びの塔』を目指している途中、メガブルーなる人物を呼ぶ声がエリアに轟いた。
ひとまずバリサンダーをFー5エリアの外れに隠しタワーへ急いだ二人。
一足先にいたのが、レスキュー服の男と黒装束。
「救出作戦とあれば……よし、うちらも合流しよう」
腕をまくって勇むおぼろ。蒼太は慌てて止める。
「もう一人。あそこのビルの上、学生服を着ています。こっちの彼は狙いが違うんじゃないかな」
蒼太はおぼろにスコープショットを握らせビルの上を示した。
ビルの上の少年の思い詰めた表情が蒼太には気がかりだった。
彼、高校生くらいかな?
人質救出のわりには怯えたように周りを警戒している。
野次馬には相応しくない切羽詰まった様子。
明らかに人為的につけられた頬の怪我。
そこから受ける印象は『彼は殺し合いに乗ろうとしている』
漁夫の利を狙うか、思いとどまるか。
できれば後者であって欲しい。

蒼太は死者を告げるロンの声を思い返す。

『皆さん―― まずは亡くなられた方からお知らせいたしましょう。伊能真墨……』

伊能真墨、ボウケンブラック。

538:名無しより愛をこめて
08/09/15 01:20:39 UVqGj+aWO



539:名無しより愛をこめて
08/09/15 01:21:56 G8zk/JmxO



540: ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 02:15:28 UVqGj+aWO
さるさんのため、残りは仮投下スレに投下致しました。


541:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 09:38:52 /Anf5pos0
彼のひねた笑顔と声が脳裏に浮かぶ。
『手を貸すぜ。金庫から頂くんだろ?』
先日の三国覇剣の一件ではこっそり先回りしてハイパープログラム社で蒼太を待っていてくれた。
まだ付き合いは浅かったが、それなりに上手くやっていけそうだった。
その真墨が、殺し合いの犠牲になった。
彼の死を確かめるすべもなく、一方的に薄笑いを浮かべたロンから告げられた。
中途半端な、やり場のない苛立ちと憤り。
あんな思いはもう味わいたくないし、誰にも味わわせたくない。
気持ちを落ち着けるように蒼太は右手の指輪に触れた。

おぼろがスコープを覗きながら蒼太の袖を引いた。
「あの子、メガブルーなん違うかな?なんや怪我もしてるし、一人でどうしようか思い詰めてるんちゃう?」
「彼がメガブルーか。う~ん、そうかもしれないけど」
少し考えてから
「僕には殺し合いに乗るかどうかで迷っているように見える」
と正直に言ってみる。
スコープショットを蒼太に渡しながら、おぼろは困り顔で言った。
「もしそうやったら、何とか思いとどまらせる事はできんやろか。
鷹介たちもそうやけど、あの年代の子らは良い意味でも悪い意味でも真っ直ぐやから、方向を間違えたらえらいことになる」
確かに、ブレーキのきかない年代。
思いとどまって欲しいと願うのではなくて、思いとどまらせる。
なるほどね。それが良い道標なのだろう。
「彼がメガブルーだとして、二人の話と彼の様子をみると。何か行き違いがあってあの二人が彼を傷つけてしまった。
そして二人はその償いをしようとしている。それを彼は知らないんでしょうね。下手したらあの二人も自分を狙ってると思っているかもしれませんね」
「そんな風に思ってるとしたら、余計良い結果にはならんな」
「まっ、直接本人に聞いてみましょう。おっと、おぼろさんはここを動かないで」
おぼろはここに残ってもらうつもりだ。男同士の方が話しやすいと思ったからだ。
「蒼太くん、あの子が殺し合いに乗ってしまってたらその時はどうするん?」
蒼太は二人の男を見遣る。

542:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 09:41:05 /Anf5pos0
自分を助けようとしている二人を知ったら思いとどまるかもしれない。そう思っている。
だが、それが彼に伝わらなければ……。
デイバックの上からヒュプノピアスに触れる。
「その時はちょっと荒っぽいやり方も必要かもしれませんね」
「荒っぽいやり方って……ちょっと蒼太くん!」
「危険なことはしませんよ」
そう言っておぼろに片手を振り、蒼太は少年のいるビルへ向かった。



§


ここを動かないでと言われたけど……。
蒼太がビルに入っていった後、おぼろは二人の男の様子を伺っておこうとそっと近付いた。
おぼろとしてはそっと近付いたつもりなのだが、すぐに男達に見つかってしまった。
「誰だ。出てこい!」
「バウ!バウ!」
銀色の犬がおぼろの後ろに回り込んで、足下にまとわりつく。
「うちは、べつに。ちょっとやめて!ほんまに」
「マーフィー。やめろ」
黒装束の男の声に銀色の犬はちょこんと座り込んだ。
「あんたは?」
レスキュー服の男がおぼろに厳しい視線を向ける。
おぼろはおずおずと口を開いた。
「うちは日向おぼろ。自分で言うのもなんやけど怪しい者じゃないで。
もちろん殺し合いなんか乗ってないし。今はここにはおらんけど、最上蒼太くん、ボウケンブルーと一緒にあの声を聞いて、急いで駆けつけたんや」
「そいつはどこへ行ったんだ?」
レスキュー服の男の眼がさらに厳しくなる。

543:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 09:45:41 /Anf5pos0
「そこのビルの上に学生服の男の子がたっとって……。あんたら話してた瞬て言う子やと思う。その子の所へ」
「何だって?瞬が来てるのか!どこだ」
おぼろが指を指すが、隠れてしまったのか距離があるからか人影があるかもはっきりしない。
「瞬、来ないと思ってたぜ」
表情を弛めレスキュー服の男が呟いた。
この人はあの子が殺し合いに乗ったかもしれないなんて考えてもいない。
本当にそうならそれでいい。
この二人には余計なことは言わずに蒼太を待とう。
「最上ってヤツ、信用できるんだよな」
声を穏やかにレスキュー服の男が尋ねてきた。
「うちは蒼太くんに命を助けてもらったから、信用するも何も……。もう少ししたら瞬って子連れてここに戻ってくると思う」
「そうか。それはそうと、いつから聞いてたんだ」
おぼろはほっとした。男は表情も穏やかになっている。
「黙って聞いてたんわ謝るわ。すんません。
でもあんたらも信頼できるかどうか解らんかったし。失礼やけど、特に黒装束の人なんか見るからに、なぁ」
おぼろは本人に同意を求めるように黒装束を見た。
黒装束の男は笑っているようで傷ついているような表情を浮かべた。
とりあえず、会話は掴んだ。本題を切り出そう。
「人質を助けようとしてるんやろ。それうちらにも手伝わせてくれる?」


§


話の腰を折るように、マーフィーは大きく遠吠えした。
「バウ!バウバオォォーーン!」
「マーフィー、どうしたのだ?」
「バウ!」
走り出したマーフィーを追いかけていったティターン。
戻ったティターンは纏に話を始める。

「ジルフィーザの話では白い服を着た少年で、ドロップではないと言っていた」

544:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 09:49:48 /Anf5pos0
ティターンがジルフィーザと行動を共にし、ジルフィーザが必死の思いでドロップを捜しているのはすでに聞いていた。
白い服の子供。何か引っかかる。纏は記憶をたぐり寄せる。
いや、確かマツリが一度連れていた炎を操る子供。
ドロップからサラマンデス変わる前、そんな姿をしていた。
また戻ったのか?わけがわからねぇ。
ティターンの話ではジルフィーザは俺を覚えちゃいなかった。ありえなくもねぇかもな。
いや、覚えてないんじゃねぇ。
それじゃ、辻褄が合わない。
「ティターン。何かのまじないで俺を忘れたんなら納得できる。だけどよ、ドロップまでわからねぇのは変だろ?」
「確かに」
「俺の考えはこうだ。ジルフィーザも俺もドロップも、違う時間ていうか、時代というかとにかくずれた時間から連れて来られたんだ。
さっき話しただろ。タイムレンジャーのヤツラ、あいつらと一緒に戦ったとき原始時代に飛ばされた。
そんな感じでジルフィーザは地球に来る前、ドロップはサラマンデスになる前、俺は平和が戻った時。なぁ、わかるか」
「信じられぬ話ではない、ならば、その子供がドロップだというのか?!」
「あぁ、ドロップだろう。瞬と声の主も、俺たちとおそらく同じだ。だから瞬はコイツを知らないんだ」
纏の言葉に深く頷くティターン。
「ただ、メガブルーを連れてこなければ上には上がれないようだ。呪文か何かでジルフィーザも近寄れなかったらしい」
「瞬を行かせるわけにはいかねぇ」
良策は浮かばない、上にも上れないとなれば、万事休す。
「こっちも人質を立てたらどうやろう。交換させるために下まで降りてこいって」
おぼろが進言する。
「メガブルーご指名のあいつが、人質になんか興味示すと思うか?」
「本人になってもろたら……」
「ダメだ!」
「ほんまに引き渡すわけやない。うちも含めて4人がかりならなんとかなるやろ。あの声の主さえ引きずり下ろしたら良いだけの話や」
その時、聞くはずのない声が割って入った。
「僕なら構いません。名案だと思いますけど……」
青いジャケットの男に連れられて、瞬がそこに立っていた。

纏を無視するように青いジャケットの男と言葉を交わす瞬。
「瞬、手紙読まなかったのか?」
なんとなくすっきりしない思いで纏は尋ねる。

545:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:02:47 /Anf5pos0
「手紙?」
瞬は怪訝な顔で纏を見つめた。
俺が守ると、安心させてやりたかったんだが……。
読んでもらえなかったのなら、行動で示せばいい。
ティターンも気持ちは同じなのだろう。
視線を合わせた二人は頷き会った。
纏は皆に告げる。
「まずは情報交換させてくれ。その後、俺とティターンで要救助、出場する」


§

再びマーフィーと共にジルフィーザを探し当てたティターン。
ドロップは本物であると、纏の考えをジルフィーザは半信半疑ながら信じたようだった。

「頼む!ジルフィーザ!!声の主に伝えてきてはくれないか。お前しか上空へたどり着けぬのだ」
「上空までまだおそらく飛べるであろう……忌ま忌ましい制限のお陰でドロップの身はお前に預けるしかないようだ」
ジルフィーザはそのまま空へ舞い上がりタワーの上部へ向かう。
「行ってくれるのか!」
安堵するティターンを振り返らずに、ジルフィーザは言った。
「弟のためだ……。先程別れた場所、そこで待とう」


§


朝日がタワーのガラスブロックを照らす。

546:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:06:36 /Anf5pos0
キラキラと煌めく光の中を、纏とティターンが立っていた。
暫時の間を経て、回転扉から声の主が姿を表した。

「お前、何者なんだ?なぜメガブルーを狙う」
纏は声の主に名を問う。
「俺の名かい?ネジブルーだよ。だけどそんなのどうだっていいだろ~。言うことを聞いてわざわざ降りてきてやったんだ。さぁ」
『いっちまってる』直接耳にしたネジブルーの声は、期待と興奮の混じった嫌な声色だった。瞬でなくても聞けば鳥肌の立つような。
「さぁ、人質を交換するんだろう~。俺の人質は、ほらあそこにいるよ」
ネジブルーは得物の先でタワーの三階辺りを差した。
窓ガラスの向こうに黒いスーツの女と子7、8才ぐらいの子どもの姿が見えた。
これでうまい具合に、人質とネジブルーに距離が出来た。
あそこなら自分が戦っている間に隙を見て救出してもらう事は可能だ。
「おい、聞いてるのか?メガブルーはどこだい」
痺れを切らしたネジブルーが催促を始めた。
さてと……。
一呼吸置いて纏はティターンと目配せを交わす。
ティターンは頷き、纏の横に並んだ。
「残念だけどな。メガブルーはここにはいねぇよ」
「何だって~。じゃあどこにいるんだい。早く教えろよ~」
ネジブルーは手にしたメガホンと斧をちらつかせるようにゆったりと手を動かした。
纏は脅しに屈しない強い眼差しでネジブルーを見据える。
要救助者は女性1名、子供1名、そして並樹瞬の合計3名。
一刻も早く救助しなければならない。
人の命は、地球の未来だ。
「メガブルーに手出しはさせねぇ。あいつは俺たちが守る!」
握り締めた拳をネジブルーへ向ける。
「手出しはさせないだって?」
「あぁ、お前の相手はこの俺だ!」
腕を組んだネジブルーは頷きながら、考えるような素振りを見せた。

547:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:09:45 /Anf5pos0
「へぇ~、そういうことか。最初から人質を交換する気なんてなかったんだな」
そう呟いたネジブルーの肩が小刻みに震えだした。
「もう少し、ましなことを思い付かなかったのか? ムカつき過ぎて笑っちゃうよ 。
フヒャハハハハッフヒャハハハハッ、ヒャハハハハッハッ !!」


§


俺がどんな思いでこの瞬間を待ってたと思うんだ?
なぁ、Dr.ヒネラー。
この気持ちは何なんだ?メガブルーだけじゃねぇ。ここにいるやつら、全員殺してやりたいよ。

ネジブルーは心の中でDr.ヒネラーに問いかける。
無論、心の中のDr.ヒネラーは答えない。
ネジブルーはDr.ヒネラーにより生み出された狂気の生命体だった。
メガブルーを敵視し、倒すためにプログラムされた存在。
こうして再び蘇るまで、ネジブルーを殺すという意志は所詮組み込まれたプログラム。
ネジブルーは、ただの操り人形だった。
だがここに来てからは違う。
メガブルーへの復讐。その確固たる意思はネジブルーだけの物だ。
そう、Dr.ヒネラーなどもういない。自分を縛る枷などないのだ。
作戦も、指示も、帰還命令もない。
ネジブルーは悟った。好きなようにやって構わないのだ、と。

「よってたかって、俺の楽しみを邪魔しやがって……」

メガブルー以外の存在に対する憎悪が湧き上がる。
その感情はより率直に、果たして彼の意思に破壊的に働きかける。

548:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:11:52 /Anf5pos0
「へぇ~、そういうことか。最初から人質を交換する気なんてなかったんだな」
そう呟いたネジブルーの肩が小刻みに震えだした。
「もう少し、ましなことを思い付かなかったのか? ムカつき過ぎて笑っちゃうよ 。
フヒャハハハハッフヒャハハハハッ、ヒャハハハハッハッ !!」


§


俺がどんな思いでこの瞬間を待ってたと思うんだ?
なぁ、Dr.ヒネラー。
この気持ちは何なんだ?メガブルーだけじゃねぇ。ここにいるやつら、全員殺してやりたいよ。

ネジブルーは心の中でDr.ヒネラーに問いかける。
無論、心の中のDr.ヒネラーは答えない。
ネジブルーはDr.ヒネラーにより生み出された狂気の生命体だった。
メガブルーを敵視し、倒すためにプログラムされた存在。
こうして再び蘇るまで、ネジブルーを殺すという意志は所詮組み込まれたプログラム。
ネジブルーは、ただの操り人形だった。
だがここに来てからは違う。
メガブルーへの復讐。その確固たる意思はネジブルーだけの物だ。
そう、Dr.ヒネラーなどもういない。自分を縛る枷などないのだ。
作戦も、指示も、帰還命令もない。
ネジブルーは悟った。好きなようにやって構わないのだ、と。

「よってたかって、俺の楽しみを邪魔しやがって……」

メガブルー以外の存在に対する憎悪が湧き上がる。
その感情はより率直に、果たして彼の意思に破壊的に働きかける。

549:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:22:07 /Anf5pos0
ネジブルーは己の意志を、すべてに対する憎悪という感情を手に入れた。


§


「邪魔する奴は皆殺しだ!!」

獣じみた咆哮を上げ、ネジブルーが光を放った。
それと同時にティターンの掌から光弾が走り攻撃を相殺する。
「チッ」
憎憎しげに舌打ちを鳴らし、ネジトマホークを構えるネジブルー。
カンマ数秒遅れて変身コードを入力した纏。
威勢と気迫を拳に載せ、クロスした腕を真っ直ぐ突き出し引く、さらに突き出し引き寄せた拳を胸の前で固く合わせ、叫んだ。

「着装!」

その身に纏うは火消しの心意気。
ゴーレッドが着装完了と共に己の信じる正義に敬礼する。

「よし!一気にカタをつけるぜ。ファイブレーザー!スティックモード!!」
大きく踏み込んで間合いを詰めるゴーレッドへ、ネジブルーが突進。
「お前も仮面を割ってやろうか~!?」
ゴーレッドはネジブルーの力強い斧の衝撃を剣で受けるも弾き飛ばされた。
続くティターンが組み手に持ち込もうとするが、スピードではネジブルーが上、軽くかわされ背中に手刀を叩き込まれる。
「グッ!」
「ティターン!」
ティターンへ気を取られたゴーレッドの顔面にネジトマホークが迫る。
上体を屈してかわし、報復とばかりに脇腹を切りつける。

550:名無しより愛をこめて
08/09/15 10:23:31 k605bzNV0
支援

551:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:27:36 /Anf5pos0
ステップを踏むように、数歩後退したネジブルー。
傍らに転がるソニックメガホンを手に取った。
「ヒャハハハハッ!回れ~回れ~」
ゴーレッドとティターンはぐるぐるとコマのように回り出した。
「うわぁぁぁっ!」
「くっ、ぐぁ!」
回りながらもゴーレッドはレスキューロープを手に取る。
「ヤァ!」
ソニックメガホン目掛けレスキューロープを伸ばす。
「無駄だよ~殴り合え!」
届かず。突如、身体は急激にティターン目掛けて突進する。
磁石が引き寄せられるように拳を突き出したお互いの身体がぶつかり合う。
鈍い音と衝撃がゴーレッドの脳を揺らした。
「このままじゃ埒があかねぇ」
その時。
「バウ!」
銀色の弾丸の如く駆けたマーフィーがネジブルー腕に飛びついた。
マーフィーを振り払おうとソニックメガホンを放したネジブルー。
「マーフィーすまねぇ!よし。ファイブレーザー、ガンモード」
ゴーレッドの銃撃に続き、ウラノスとガイアの怒りを手にティターンが追撃する。
ネジブルーは慌てる様子もなく、マーフィーの足を掴む。
「こいつはいい盾になるぜ~」
「何!」
「バャウーーーー!!」

552:名無しより愛をこめて
08/09/15 10:28:25 k605bzNV0
支援

553:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:36:09 k605bzNV0
数発の光弾を受け火花を散らすマーフィー。
咄嗟に駆け寄るティターンへネジブルーは容赦なくネジトマホークを振り下ろした。



§


外では纏とティターンが苦戦しているようだった。
瞬は外が見えない位置に座り、時間が経つのをじっと待っていた。
どっちでもいい。どちらが勝とうが負けようが。
制限があるのは知ってる。
ただそれが時間なのか回数なのかわからない。
相打ちに近い状態になった時、出て行けばいいのだ。
人質もおぼろも、きっと蒼太が手に掛けるのだろう。
それとも手伝わされるのだろうか。
ゾッと恐怖が込み上げる。
自分が救われる代わりに他の人間が死ぬ。
瞬はその時のことを心待ちに出来るほど冷酷ではない。
まだ何もしていないのに、罪悪感で押しつぶされそうだ。

普通におぼろと話している蒼太の神経を正直、疑う。
瞬を見つけ出した時……

蒼太は――



「おっと、なんで逃げるんだい?」
瞬の行く手に男が立ちはだかる。

554:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:36:59 k605bzNV0
掌にじっとり汗が滲む。
「逃げるなんて……俺は」
「そう。逃げる必要は無いんだ。心配はいらないよ。僕の目的は君と同じだからね」
再び男と視線が合う。
「言わなきゃわからないかな?」
自白を強いられるような酷薄な眼が瞬を見つめる。
「俺は生きて帰って、夢を叶えるんだ……」
瞬は思わずそう漏らしていた。
「そのために手段は必要だ。仲間も、ね」
酷く冷たい声で男は言った。スリルを楽しんでいるような声だった。


――こいつが俺の仲間。
どのみち一人でもやろうと思ってたんだ。
そうじゃなきゃ、帰れない。

ふと、おぼろと蒼太の会話が耳に飛び込んでくる。
その話を聞いて瞬は唖然とした。

「蒼太くん。気を付けて」
「おぼろさんも人質と合流したら打ち合わせたビルまで速く逃げてください」
出口へ向かう蒼太に瞬が駆け寄る。
「助けに行くって話が違うじゃないか」
蒼太の胸ぐらを掴む瞬。
「あんた。あほか!」
パン!おぼろが瞬の頬をひっぱたいた。
「……あんたのために、纏さんら必死に戦ってるっちゅうのに」
キッと睨み付けるおぼろを蒼太が片手で制す。
「話が違うって何のことだい。悪いジョークだよね?」
「なっ?!ジョーク?」
瞬は言葉をつまらせる。

555:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:37:45 k605bzNV0
「あぁ、悪いジョークだ。『君は夢を叶えるために生きて帰る』そう言ったけど、その手段が僕たちと違うなら本気で洒落にならないね」
蒼太は笑顔を見せた。だが眼は笑っていない。
「さっきから二人のことを一度も見ようとしないけど、一回よく見てみたらどうかな」
瞬は蒼太に窓辺まで引っ張られた。
それでも目を背ける瞬に、蒼太は溜息混じりで言った。
「君の願いは『最後の一人になって夢を叶える』か。
42人の屍と、その家族や仲間、悲しみで心を失った人たちの上でみる夢。そんな夢が本当にいいものだと思うかい?」
蒼太はそう言って部屋を出て行った。おぼろも後に続いた。

一人になって、初めて瞬は纏とティターンを見た。
ネジブルーの声と纏の怒声が瞬の耳を打った。

『馬鹿な奴らだ。メガブルー一人渡せば命を落とさずにすんだのにね』

『黙れ、たとえ、たった一つの命でも守らなきゃいけねぇ。
その未来を守るのが俺の責任なんだ。俺は絶対あきらめねぇ!!!』

次の瞬間、瞬は走り出していた。


「待ってください。……さっきのは悪いジョーク、です」
階段を降りる蒼太とおぼろに追いつくことが出来た。
おぼろは頷いてくれたが、蒼太は聞こえていないように瞬を無視して階段を駆け下りる。
瞬もそれに続く。
瞬の方針は決まった。
それをわかってもらいたかった。
「でも、夢は叶える。生きて返って、必ず……。

556:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:38:24 /Anf5pos0
数発の光弾を受け火花を散らすマーフィー。
咄嗟に駆け寄るティターンへ、ネジブルーは容赦なくネジトマホークを振り下ろした。



§


外では纏とティターンが苦戦しているようだった。
瞬は外が見えない位置に座り、時間が経つのをじっと待っていた。
どっちでもいい。どちらが勝とうが負けようが。
制限があるのは知ってる。
ただそれが時間なのか回数なのかわからない。
相打ちに近い状態になった時、出て行けばいいのだ。

ゾッと恐怖が込み上げる。
自分が救われる代わりに他の人間が死ぬ。
瞬はその時のことを心待ちに出来るほど冷酷ではない。
まだ何もしていないのに、罪悪感で押しつぶされそうだ。

普通におぼろと話している蒼太の神経を正直、疑う。
瞬を見つけ出した時……

蒼太は――



「おっと、なんで逃げるんだい?」
瞬の行く手に男が立ちはだかる。
掌にじっとり汗が滲む。
「逃げるなんて……俺は」

557:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:38:32 k605bzNV0
CGデザイナーになったら、個展の招待状は最上さんとおぼろさん、それとあの二人にも送ります」
振り返った蒼太が笑顔で頷く。蒼太の笑った顔を初めて見た気がした。
「オッケー。じゃ行こうか」
「はい」
返事をしたものの、瞬は考える。
ここで二人で飛び出すのが最善なのかと。
「いや、最上さんたちはもう少しここで待っていてください。俺達には制限がある。それが時間制限だとしたら少しでも戦力は温存しておいた方がいい」
ヒューゥ、蒼太が口笛を鳴らした。
「いい読みだね。CGデザイナーなんて辞めて卒業したらボウケンジャーに入らない?」
照れながら、低調に返した。
「遠慮しときます」
瞬は纏とティターンの元へ駆け出した。


愛情とか友情とか、夢の前なら後回しで構わないと思ってた。
ホントはそう言うの嫌いじゃないしな。
誰かを犠牲にして叶える夢なんて、俺の夢じゃない。
夢はあきらめさえしなきゃ叶えられるんだから。


「インストール、メガレンジャー!」

―3・3・5・Enter―

デジタイザーが輝き、粒子となった光が瞬の身体を廻る。

「あの刃のねじれ具合、もしかしてネジレシアか?トマホークスナイパー!!」
狙いは肩、マーフィーを盾に出来ない位置に銃弾を撃ち込む。
「メガブルゥ~。やっと来たね!」

558:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:39:17 k605bzNV0
待っていたかのようにネジトマホークを振るい銃弾を薙ぎ払う。
ゴーレッドは銃撃で応戦しながらメガブルーに顔を向ける。
「瞬、何できたんだ!ここは俺が……」
「わかったんです。俺、戦う責任も、あきらめないって意味も。でも話は後で。今は戦いに集中してください!」
「そうだな。後でゆっくり聞かせてもらうぜ!」
トマホークスナイパーとファイブレーザーの連射。
一方的な銃撃にネジブルーは防御に徹し、攻撃を繰り出せない状態に追い込む。
「ティターン!任せたぜ!!」
ゴーレッドが叫ぶ。
ティターンが天に向け高く伸ばした掌より出現した淡い光は、瞬く間に巨大な光源と化した。
ネジブルーへ向け光源を撃ち放つティターン。
轟く雷鳴が耳を劈き、逆巻く散光はネジブルーを焼き尽くしたかに思えた。
「遅いよ~」
爆風にのって、嘲笑を浮かべたネジブルーが飛び出した瞬間。
「今だ!」
ティターンが大きく両手を広げた。
「おう!」「はい!」
メガブルーが右、ゴーレッドが左から、ティターンの肩を踏台に跳ね上がる。
「シュート!」
空中でクロスし、前面に躍り出たゴーレッドが放つエネルギー光弾が、流星の如くネジブルーへ降り注ぐ。
メガブルーは数発くらい後退しながらも、ネジトマホークを縦横に振るい光弾を裁く。
そこへ後方から大きく一回転し反動を付けたメガブルーがネジブルーへ迫る。
「メガトマホーク!」
メガトマホークの鋭い刃がメガブルーの右肩を切り裂く。
そのまま左方へ回転し、次の一撃を横腹に打ち込む。
「遅いのはネジブルーお前だぜ!」

559:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:39:56 /Anf5pos0
   

560:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:40:04 k605bzNV0
わざと冷静な声で嘲笑を浴びせ、勝ち誇ったように高く跳躍する。
ネジブルーは悔しさに身を震わせ、右腕をメガブルーに向け吼えた。
「メガブルゥゥッ!!」
咆哮と共に放った青い光弾がメガブルーを追う。
冷静になれ。
メガブルーは光弾から眼を逸らさない。
そうだ。冷静になれば避けられないスピードじゃない!
着弾の寸前、空中で身を翻し体に回転させながら避けた。
頬を掠めた光弾が空しく中に散った。
「これで終わりだ!トマホークハリケーン!!」
そのまま降下のスピードと遠心力で破壊力を増した渾身の連撃を放つ。
その時、上空か稲光のような黄金の光が走った。

―ガキンッ!

ぶつかり合う金属音。
「ウァァァッ!!!」
一瞬の拮抗。弾かれたのはメガブルーだった。
上空より投擲された一振りの黄金の剣がメガブルーを止めた。
その剣を放ったのは……。

「楽しそうね~。ワタシも仲間に入っちゃおうかな♪」
ネジブルーに微笑みかけたのはコギャル風の怪人。
「助けてくれたのかい?」
「べつに~ワタシは何とかブルーに用があるだけよ」
「へぇ~気が合うねぇ」
「さぁ~どうかしら?」
ネジブルーをはぐらかすような言葉の後、コギャル風の怪人はぴょこんとゴーレッド達の方へ向きを変えた。

「せーの、どっか~ん!!」

561:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:40:57 k605bzNV0
ピンク色の閃光がの足下へ走る。
ゴーレッド達は爆風と轟音に包まれた。


§


フラビージョの姿を認めた蒼太はフォローに回るべく動いた。

爆風の中、眼を凝らす。
フラビージョが黄金の刀を振り上げメガブルーへ駆け寄っていた。
「間に合ってくれ!」
ダッシュで距離を詰める。
「た~め~し~ぎ~り~!!」
フラビージョの前に立ちはだかる蒼太。
振り下ろされた黄金の刀をアクセルラーのタービンで受け止めた。

「レディ、ボウケンジャー!」

そのまま下から突き上げるようにタービンを滑らせ刀を弾き返す。
迸る火花と高まるタービンの回転音。
今、蒼太の胸を打つのは冒険に対する期待ではなく、悪を排除する決意。
不適な笑みを浮かべ蒼太は叫ぶ。

「スタートアップ!!」

目も眩む光が蒼太を包み、瞬時にブルーのアクセルスーツへと姿を変える。
黄金の刀を弾き返されふらふらとよろけるフラビージョ。
「言ったよね?女の子がそんなもの振り回してたらダメだって」
ボウケンブルーはパンッと手を叩きステップを踏むように間合いを取った。
「女性相手にこういう事やりたくないだけど、ごめんね」

562:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:41:43 k605bzNV0
右腕を後方へ退き、力強く突き出す。
拳に装着したブロウナックルから、旋風が渦を巻きフラビージョの体を舞い上げた。
「いやーん!って、そ~んな簡単にやられるフラビージョ様じゃないわよ♪」
フラビージョは蜂のように白い4枚の羽を高速で羽ばたかせ空中で止まった。
小刻みに羽音を鳴らしながら、ボウケンブルーを標的にシュシュッと高速で針を吐き出す。
「なかなかやるね」
蒼太は回転しながらブロウナックルを地へ向け出力を前回にする。
同じ高さに舞い上がる。
「なにそれ~。飛べるなんて聞いてな~い」
「サバイブレード!」
ボウケンブルーはサバイブレードで袈裟懸けに斬りつける。
「ぎゃ~~」
フラビージョはくるんくるんと二回転回り墜落。
そのすぐ横にはゴーレッド、メガブルー、ティターンと対峙するネジブルーがいた。


§


ゴーレッドの耳におぼろからの声が届く。
「こっちは大丈夫やで~。人質は無事やで!」
瞬が立っていたビルの上から聞こえるその声にゴーレッドは安堵した。

敵はすでに追いつめた。
ネジブルーとフラビージョはタワーを背に隣合わせで4人と対峙する。
時折言葉を交わしているのは最後の悪あがきだろう。
ゴーレッド、メガブルー、ティターン、ボウケンブルーの配置で囲んだ包囲網を少しずつ狭めていく。
メガブルーが前へ進みゴーレッドと並んだ。

たった数時間でいっぱしの戦士になったな。

563:名無しより愛をこめて
08/09/15 10:44:05 UVqGj+aWO
支援

564:名無しより愛をこめて
08/09/15 10:48:33 UVqGj+aWO



565:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:52:06 /Anf5pos0
メガブルーの姿をゴーレッドは誇りに思った。

「あきらめた方が良いぜ」
「ヒャハハハハハハッ、ヒャハハハハッ!」
ネジブルーが笑い出した。そしてネジブルーを抱えたフラビージョが高く高く跳躍した。
「ふざけんな、飛んだからって逃げられるとでも思ってんのか!」
メガブルーが叫ぶ。
「楽しいよ~。またお前らとやりあえるんだ。ヒャハハハハハハッ!全員は死なないでくれよ~」
笑いながら上昇を続ける二人に、4人がそれぞれの武器を構えた。
嫌な胸騒ぎがする。
ゴーレッドは辺りを注意深く見渡す。
アンチハザードスーツが警告を発した。
タワーの中に燻る微かな煙を発見したのだ。

ごく小さな火種が一本の道を辿るように、ぱちぱちと燃えている。
心臓が揺さぶられたように大きく鼓動した。
おそらくこれは、時限発火装置。

「逃げろ!」

素早く声に反応したのはボウケンブルー。
最高方にいたこともあっておぼろ達の方へいったはずだ。
ティターンは、マーフィーをそのままにしておけないのだろう。
入り口の近くのマーフィーも元へ。
この時、メガブルーはまだネジブルーに狙いを定めていた。

―― カッッ!!!!!!!!!

タワーの窓ガラスが真っ赤な閃光に染まった。

566:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:55:02 /Anf5pos0
一瞬、圧縮される空気。タワーの表面が軋むような音を鳴らした。

この威力、テルミット弾だ。
「瞬!」
上空を見上げるメガブルーにゴーレッドが手を伸ばした。

メガブルーを引き寄せ、ティターンを見遣る。周囲に淡い光の壁が見える。
ゴーレッドは安堵した。

―― パアァーーーン!!!!!!!

膨張した空気がタワーの何百枚とのいうガラスを砕く。

―― ゴォォォォォゥー!!!!!!!

爆音と共に灼熱に解けた鉄骨と、火球と化したコンクリートブロックが降り注ぐ。

「ウオォォォォォッッッーーーーー!」

ゴーレッドはファイブレーザーを力の限り振り回す。
ナイフのようなガラス片を粉砕し、鉄骨を弾き、コンクリートブロックを打ち砕く。
凄まじい風圧にも揺るがず、メガブルーの盾となり数年に匹敵する数十秒を耐えた。


§

瞬はその後ろ姿を一生忘れ無いだろうと思った。

567:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:57:16 /Anf5pos0
自分の命を、夢を守った男の背中だ。

「はぁーーー。さすがにキツかったぜ」
纏は放心状態で仁王立ちしたままだった。
「俺なんていっていいか。本当にありがとうございました」
瞬は深々と頭を下げる。
夢×命×未来の恩人だ。いくら下げても足りないぐらいだ。
「敬語なんて……やめろよ」
声の変化に気付き、瞬は顔を上げた。
「俺達…もう仲間だ…ろ……」
ガクンと纏の膝が折れ、そのまま地に倒れ込んだ。
「纏さん?!」
抱き起こした瞬の目に飛び込んで来たのは、纏の腹部に深く突き刺さった鉄骨の破片。
人質だった者を連れて帰ってきたおぼろが息を呑む。
蒼太とティターンも駆け寄る。
皆を止めるように、纏が口を開いた。
「心配すんな。こんなの……たいしたことない」
力なく言い、鉄骨を引き抜こうとした。
滲み出る血液で手が滑って、引き抜こうとするたび纏の口から血が溢れ出る。
瞬は纏の手を握り叫んだ。
「誰か、薬!なんでもいい!!この傷、どうすりゃいい」
助けを求め皆を見回す。
蒼太もティターンもおぼろも、悲痛な表情でただ纏を見つめている。
纏は大きく息を吐き出し、言葉を紡ぐ。
「瞬……朝メシ…まだだろ?俺のデイバックの中の……カレーパン、あれお前に……やるよ。他にも……何か……使えそうなら……お前が使えよ……」

568:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 11:01:25 /Anf5pos0
「何縁起でもないこと言ってんだよ!それに、朝からカレーパンなんていらねーよ」
「ははっ……それもそうだな。じゃ…後で……俺が作ってやる……」
瞬は黙って頷いた。
ゴボッ、纏の喉元が鳴った。
身体の中に溢れた血が、喉元まで上がって来ているのだ。
纏の瞼がゆっくりと閉じられていく。
「纏さん!纏さん!!」
瞬の声に薄く纏の瞼が開いた。
蒼太が瞬の肩にそっと手を掛け、首を横に振る。
それを見た瞬の視界が滲む。
瞬は涙が零れないように、声が震えないように、でも纏から視線を逸らさずに少し上を向いた。
「なんだよ……少し眠…らせろ……よ。瞬…お前のせいで………、俺…は……ろくに…寝て……ないんだ……」
「わかった。ゆっくり……」
眠ってください。最後の言葉が出てこなかった。
それを言ってしまったら終わる。瞬は奥歯を噛締め言葉を発せられずにいる。
ふっと纏は瞬の手を離し、力無く握った拳で、瞬の額を優しくトンと叩いた。
不覚にも涙が零れた。
「眠るがいい……」
ティターンが静かに瞬の言葉を引き継いだ。
マトイはその場を見渡し、ふっと微笑むと静かに眼を閉じた。
瞬の腕の中でマトイの力が少しずつ少しずつ抜けて行く。
まだ体は温かいのに、肌は色を失っていないのに、一秒前と何も変わらないのに……
纏はもう二度と目覚める事はないのだ。
マーフィーが淋しげに遠吠えする。
「纏…さん!!」
瞬の瞳から積を切ったような涙が溢れ出た。嗚咽を洩らしながら、瞬は小さな子供のように泣いた。


【巽纏 死亡】  残り33人

569:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 11:02:13 /Anf5pos0
【名前】冥王ジルフィーザ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:第1話前
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:健康。2時間能力発揮できません
[装備]:杖
[道具]:支給品一式(個別支給品は確認済)
[思考]
基本行動方針:ドロップを探し、ロンを殺す。
第一行動方針:ドロップの救出と、F-7エリアでドロップとティターン待つ。
備考:首輪の制限があることに気が付きました。

【名前】冥府神ティターン@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:Stage46(ン・マの依り代にされた)後
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:全身打撲。火傷。2時間能力発揮できません。
[装備]:ウラノスとガイアの怒り、黒装束(虹の反物@轟轟戦隊ボウケンジャー)
[道具]:マーフィーK-9@特捜戦隊デカレンジャー、支給品一式
[思考]
基本行動方針:命を守る
第一行動方針:ジルフィーザと合流する。
第二行動方針:スフィンクスを捜す。
備考:ティターンは虹の反物の特別な能力に気付いていません。首輪の制限があることに気が付きました。
   :纏からタイムレンジャー、サイマの情報を得ました。

570:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 11:04:17 /Anf5pos0
【名前】マーフィーK-9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:銃弾によりかなり破損しています。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:???
第一行動方針:ティターンと行動する。
第二行動方針:知り合いを探す。

【名前】並樹瞬@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第2話後
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:全身打撲火傷、応急処置済。2時間メガブルーに変身できません。
[装備]:デジタイザー。
[道具]:支給品一式(個別支給品は確認済)纏のデイバック
[思考]
基本行動方針:元の世界に戻って、夢を叶える
第一行動方針:纏の死に深い悲しみ。
備考:瞬はマトイから、×ドロップ、△冥王ジルフィーザ、○浅見竜也、○シオン、○ドモンの情報を得ました。
 変身制限があることを知りました。


571:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 11:10:40 /Anf5pos0
【名前】ネジブルー@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:41話(ネジビザールとして敗れた)後
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:全身に打撲、傷有り。2時間能力発揮出来ません。
[装備]:ネジトマホーク
[道具]:ソニックメガホン@忍風戦隊ハリケンジャー、闇のヤイバの忍者刀@轟轟戦隊ボウケンジャー (マシンはスキーの鍵は美希が持っています)
[道具]:支給品一式×2、詳細付名簿、スフィンクスの首輪、拡声器
[思考]
第一行動方針:メガブルーを殺す。 邪魔なヤツも殺す。
第二行動方針:フラビージョと逃げる。

【名前】ドロップ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:26話、サラマンデス覚醒前
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:健康、精神的に少し不安定。
[装備]:不明
[道具]:メメの鏡の破片、
[思考]
第一行動方針:不明

572:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 11:13:50 /Anf5pos0
【名前】真咲美希@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:物語中盤
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:健康
[装備]:マシンハスキー@特捜戦隊デカレンジャー(鍵のみ、タワーの損壊で壊れている可能性があります。ネジブルーの物とすり替えました)
[道具]:支給品一式×2、詳細付名簿、スフィンクスの首輪、
[思考]
基本方針:なつめを救うために勝ち残る 。
第一行動方針:利用できる者は利用する、そうでない者は殺す。

【フラビージョ@忍風戦隊ハリケンジャー】
[時間軸]:巻之十九、チューズーボ死後
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:打撲。能力発揮中。
[装備]:槍@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:聖剣ズバーン@轟轟戦隊ボウケンジャー、クロノチェンジャー@未来戦隊タイムレンジャー、支給品一式。
[思考]
基本行動方針:楽しそうなので戦いに乗った
第一行動方針:ネジブルーと逃げる。
第二行動方針:青いジャケットの優男(蒼太)と日向おぼろにはその内、復讐


573:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 11:17:20 /Anf5pos0
【日向おぼろ@忍風戦隊ハリケンジャー】
[時間軸]:巻之三十、後
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:全身に軽い火傷、打撲。応急処置済み
[装備]:イカヅチ丸@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:蒼太と共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第二行動方針:首輪を何とかする
※首輪の制限に気が付きました。

【最上蒼太@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.3、後
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:良好。2時間ボウケンブルーに変身できません。
[装備]:アクセルラー@轟轟戦隊ボウケンジャー、スコープショット@轟轟戦隊ボウケンジャー、バリサンダー@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:ヒュプノピアス@未来戦隊タイムレンジャー、スタッグブレイカー@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:おぼろと共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第二行動方針:おぼろを守る
※首輪の制限に気が付きました。

備考:冥王ジルフィーザ、巽マトイ、並樹瞬のいずれかの支給品にバイオ次元虫入りカプセルが含まれています。
   :F-5エリアタワーはテルミット弾により損壊しています。(倒壊の恐れ有り)

574:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 11:20:05 /Anf5pos0
代理投下感謝 !
以上です。誤字脱字、指摘、矛盾、感想等よろしくお願いいたします。

したらばの感想をくれた方もありがとうございました。

名前:名無し?ちょっとした冒険だな 投稿日: 2008/09/15(月) 02:35:42
纏兄さぁぁぁぁぁん!!!!!
超GJです!
思いを貫いて死んでいった纏兄さんが熱かった!
纏兄さん安らかに眠れ。
そして、きっと纏兄さんの思いを継いでくれ、いや、今の君ならきっと継げると信じてる、ガンバレ!瞬。
静かに熱い蒼太さんもかっこよかったです。
一言も嘘をつかずに瞬に誤解させるくだりは、あまりに彼らしいと感じました。さすが元スパイw
熱く、切ない良作でした。改めてGJを送らせて頂きたい。GJです!


携帯故、代理投下出来ずに申し訳ないです。
規制であちらに書き込めなかったので、先にこちらに。


575:名無しより愛をこめて
08/09/15 22:44:46 YaVpBph+0
GJ!
凄まじいバトルの末に倒れたマトイ。
死の瞬間まで熱いその姿が果たして残った皆にどんな影響を与えるのか?
しかし、瞬は改心の兆しが見えるものの、他のマーダーの方々はまだまだ好調。
事態が好転することはあるのでしょうか?
ジル兄さんのドロップとのニアミスするあたりも面白かったです。ここら辺が何かの伏線になったりするのかな?
感想はつきませんが、もう一度、GJ!

576: ◆i1BeVxv./w
08/09/15 23:39:44 YaVpBph+0
これより投下いたします。

577:Water Trap ◆i1BeVxv./w
08/09/15 23:40:32 YaVpBph+0
―コンコン
「アンキロベイルス!」
「入ってないキロ」
―コンコン
「アンキロベイルス!」
「入ってないキロ」
 菜摘は洞窟の中、アンキロベイルスを探すべく、無数に点在する岩のひとつひとつを調べていた。
 探す方法は単純だ。菜摘の予想では、アンキロベイルスは岩の中に囚われている。
 ひとつひとつ岩を叩いていけば、いずれアンキロベイルスが囚われている岩が見つかる。
 そう考えていた。
「ふう、おかしいわね。もうほとんどの岩は調べたのに」
 だが、話はそう甘くはなかった。探し初めてから30分程度の時が流れたが、依然、アンキロベイルスは見つからない。
 気づけば、足元を濡らす程度だった水位は、菜摘の膝の上にまで上がってきていた。
「ねぇ、アンキロベイルス、何か他に手がかりはないかしら」
 藁にもすがる思いで菜摘はアンキロベイルスから情報を得ようとする。
「そんなこと言われても、何もわからないキロ。菜摘が探しているような音は聞こえるけど、相変わらず何も見えないし」
「なら、どこから聞こえてくるかだけでもいいの。せめて方向さえわかれば」
「方向もなにも、ずっと一方向からしか聞こえてこないキロ」
「……一方向?」
「?、どうしたキロか、菜摘」
 捜索はそれなりに広範囲に及んだ。岩内部で反響しているのかと、あえて離れたところを探しもした。それなのに、方向が変わらないということはありえない。
「アンキロベイルス、聞こえてくる方向って、上?」
「違うキロ。聞こえてくるのは後ろからキロ」
「そう、後ろから。じゃあ、声の大きさはどうかしら?変わったりしたんじゃない?」
「それは変わったキロ。それがどうかしたキロ」
 聞こえてくる方向が上なら、地下という可能性もあったが、違うというなら。考えられることはただひとつ。
「もしかして」
 菜摘は再度、岩の調査を始める。ただし、今度は人間サイズが隠れられそうもない小さな岩ばかりを選んで探る。
 程なくして、菜摘は目的のものを見つけた。
「……あったわ」

578:Water Trap ◆i1BeVxv./w
08/09/15 23:41:50 YaVpBph+0
「何を見つけたキロ?」
 菜摘の目の前には赤色の3つのボタンが付いた銀色のブレスレットが置かれていた。
「やられたわ、私たち、ロンにはめられたみたいね。アンキロベイルス、今ははっきりと私の声が聞こえない?」
「そういえば」
「アンキロベイルス、あなたが聞こえていたのは通信機を通した私の声よ。どういうつもりか知らないけど、よっぽど私とあなたを会わせたくないみたいね」
 おそらくアンキロベイルスの後ろには菜摘が見つけたものと同じ通信機があるのだろう。
 それなら、一方向から聞こえるのも頷ける。
「菜摘に会えないでがっかりキロ」
「まあそう言わない。匂いまでは誤魔化せないでしょうから、海の近くということは確かだと思うわ。とりあえず、これは回収しておこうかしら。
 これがあれば、ダイノコマンダーがなくても、会話できるはずだろうし」
 菜摘は通信機に手を伸ばし、それを持ち上げた。

―カチリ

「なに、今の音」
「な、なんか嫌な音が聞こえてくるキロ」
 アンキロベイルスの言葉通り、鳴り響く地鳴り。それと同時に大地が震えた。
「きゃっ」
 バランスを崩し、足を滑らせる菜摘。水飛沫を上げ、水中へと沈む。
 急いで、体制を整えようとするが、揺れる地面に加え、いつの間にか発生した水流により、上手く立ち上がることができない。
「どうしたキロ、どうしたキロ、菜摘!」
 通信機から菜摘を心配する声が響く。
(アンキロベイルス……)
 その声に冷静さを取り戻した菜摘は水の流れに逆らうことを止め、その身を任した。そうすれば、やがて壁に当たり、身を立て直すチャンスを得られると考えたのだ。
 その予想通り、菜摘の身体は壁へと叩きつけられる。痛みに耐え、菜摘はその壁に沿い、立ち上がろうと上を目指した。だが、一向に水面に浮かぶことができない。
 菜摘は気づいていなかったが、鳴り響いた地鳴りはこの洞窟が沈み行く音だった。
 当然、水位は急速に上がり、既に菜摘が空気を得られる場所は失われていた。

579:Water Trap ◆i1BeVxv./w
08/09/15 23:42:47 YaVpBph+0
 意識が朦朧とし始める中、菜摘は最後の手段とばかりに、懐からアクセルキーを取り出す。そして、左手首に着けられたアクセルブレスに差し込もうとする。
(激走……アクセル……チェ)
 だが、それは叶わなかった。水に流された岩の欠片が菜摘を狙ったかのように襲い掛かる。
「ゴボッ」
 いくつかの欠片のうち、一際大きな欠片が菜摘の鳩尾へと当たった。わずかに残った空気の全てが菜摘の肺から無理矢理吐き出される。
 苦しい中、力を振り絞り、もう一度、アクセルキーをアクセルブレスに挿そうとするが、いつの間にか、アクセルキーは菜摘の手元から消えていた。
 どうやら、今の衝撃で離してしまったようだ。
(こ、ここまでなの)

―皆さんおはようございます。―

水の中だというのに、やけにはっきりと聞こえる声。
菜摘の意識は告げられる定期放送を最後まで聞くことなく、闇へと沈んでいった。



「菜摘~、起きるキロ、菜摘~」
 自分を呼ぶ声が聞こえる。この声は今日何度も聞いた。
「菜摘~、しっかりするキロ」
 声変わり前の男の子のような声。最初は少年がこの殺し合いの場にいるのかと思ったが、壬琴によれば、恐竜のアンキロサウルスに似ているらしい。
「起きないと、このまま放ってどこか行っちゃうキロよ」
 少し口は悪いが、中々に気が合いそうだ。菜摘は殺し合いの最中だというのに、新たな友人に会えることが楽しみで仕方なかった。
「菜摘~、菜摘~!」
「あ、アンキロベイルス、泣かないで」
「菜摘!」
 思わず搾り出した声に反応が返ってくる。
(夢じゃない。私、死んだんじゃなかったんだ)
菜摘はゆっくりと眼を開ける。
そこには心配そうにこちらを見遣るオレンジ色をした巨大生物がいた。
「やっと、やっと会えたキロ」

580:Water Trap ◆i1BeVxv./w
08/09/15 23:43:36 YaVpBph+0
「君が、アンキロベイルスなんだ」
「そうキロ、お前が菜摘キロ」
「ええ、そうよ」
 しばし、菜摘とアンキロベイルスとの間に心地よい沈黙が流れた。
 やがて、アンキロベイルスが口を開いた。
「良かったキロ、最後に菜摘に会えて」
「えっ」
 アンキロベイルスの巨体が大地へと倒れこむ。
「アンキロベイルス!」
 菜摘は急ぎ身を起こすと、アンキロベイルスに駆け寄る。多少、眩暈がしたが、そんなことに構っている暇はない。
「一体、どうしたっていうのアンキロベイルス。そういえば、あなた人間ぐらいの大きさだったはずじゃ」
 今のアンキロベイルスはざっと10mはある。おそらく本来のアンキロベイルスの大きさなのだろうが、話によると人間くらいの大きさだったはずだ。
「菜摘の……悲鳴が聞こえたと思ったら、途端に金色の首輪も…外れたキロ。元の大きさに戻ったら、沈みかけている島が見え……たから、きっとそこに菜摘がいると思って……駆けつけたキロ。へへっ、大当たりだったキロ」
 息も絶え絶えに事の顛末を説明するアンキロベイルス。
「でも、おかしいキロ。外れた途端、身体から力が抜けていってるキロ。もう………限界キロ」
「アンキロベイルス!」
「最後に、菜摘に会えてよかったキロ。……菜摘………ロンに負けるなキロ……」
 アンキロベイルスの眼がゆっくりと閉じられる。
 菜摘は何度も何度もアンキロベイルスの名を呼んだ。
 だが、もう二度と、アンキロベイルスが返事をすることはなかった。



 一頻り、涙を流した後、菜摘は立ち上がった。


581:Water Trap ◆i1BeVxv./w
08/09/15 23:44:39 YaVpBph+0
(たぶん、あの仕掛けはアンキロベイルスの首輪に連動していたのね。そして、この首輪を外すことは死に直結する)
 何とも恐ろしい仕掛けだ。ロンに逆らえば、この首輪で殺され、首輪をなんとか外したとしても、いずれ死が訪れる。
 生きて帰りたければ、ロンを信じ、最後の一人になるしかない。
(でも、そんなのごめんだわ)
 アンキロベイルスを殺したのは自分だ。
 自分がもうちょっと注意を払い、仕掛けに気付いていれば、こんなことにはならなかった。
 だからこそ、最後のアンキロベイルスの言葉を裏切るような真似はしたくない。
(負けないわよ、ロン)
 菜摘は静かな怒りを胸に、壬琴たちと合流するべく、道を歩き出した。

【アンキロベイルス 死亡】


【名前】志乃原菜摘@激走戦隊カーレンジャー
[時間軸]:最終回終了後
[現在地]:J-7海岸 1日目 朝
[状態]:軽い打撲
[装備]:アクセルブレス(アクセルキー紛失)
[道具]:ダイノコマンダー@爆竜戦隊アバレンジャー、クロノチェンジャー@未来戦隊タイムレンジャー、キーボーン@特捜戦隊デカレンジャー、ゲキファン@獣拳戦隊ゲキレンジャー、基本支給品一式
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。仲間を集めて状況を打開したい。 ロンに負けない。
第一行動方針:仲代、映士と合流。
第二行動方針:仲間(陣内恭介・シグナルマン)を探す。
備考:ダイノハープがないため、アバレブラックへの変身はできません。また、菜摘が変身できるほどのダイノガッツがあるかは不明です。
 アクセルキーは水中に沈んでいます。


582:Water Trap ◆i1BeVxv./w
08/09/15 23:45:27 YaVpBph+0
投下終了。
ご意見、指摘事項、矛盾点、感想などがあれば、お願いします。

583:名無しより愛をこめて
08/09/16 04:56:01 5ukEjuR5O
おぅorz
アンキロベイルス、イイヤツだったのに……。
最初は菜摘死亡かと思いましたが、アンキロベイルスがいってしまうとは!

菜摘は首輪解析の鍵になりそうですね。
しかし話のまとめかたが本当に上手い。さすがまとめ氏!
GJ!

584:名無しより愛をこめて
08/09/16 05:03:07 5ukEjuR5O
そしてまとめ更新ありがとうごさいます。

585:名無しより愛をこめて
08/09/16 17:15:53 fxTUiAWs0
またしても、ロンの策略によって悲劇が……
菜摘とアンキロベイルスの僅かな邂逅に和んだ分、すぐにやってきた別れには胸が痛みました。
変身手段を失った一方、首輪の持つもう一つの特性にきづいた菜摘がこれからどうなるのか、無事に合流を果たす事ができるのか、
今後の展開が楽しみです。
GJ!でした。

586:死者スレより愛をこめて@深雪さん
08/09/17 18:27:36 NEikg9H+O
「私たち家族は、幾多の苦難を勇気で乗り越えてきた。だから今度も、きっと……」

それに今は、書き手が命がけでSSを書いていてくれる。
書き手が勇気を示したのだ。

「このスレを落とすわけにはいかないわ!」

いつだってスレはそれに答えてくれる。
「保守!!」


587:名無しより愛をこめて
08/09/17 21:35:13 4Zw0PkZj0
書き手さ~ん……どこいっちゃったのぉ……
僕……保守……できるようになったよ……
1……2……3……保守。

588:名無しより愛をこめて
08/09/18 21:32:45 HY4pTvK3O
マトイ兄……、アンキロ……、両氏ともGJ!

そういえば男性の参加者が死ぬの久しぶりだな

589:第???話:死者スレは何処だ?!
08/09/19 18:53:35 +X9BcNsgO
「スレの保守はロワの未来!
どんな保守も厭わない!
ロワの平和を心に誓う!!
燃えるレス……ゲフン、ゲフン。さて、行くか」
 

590:暁【あかつき】の決意◇8ttRQi9eks代理投下
08/09/20 23:18:54 /YcAGlmW0
「約十分で変身が強制解除。アクセルラーの機能が完全に凍結されているな…やはり能力の発揮に制限が加えられていたか…」
明石暁は生身に還元された状態でディスプレイ画面を沈黙させるアクセルラーと向き合っていた。
「まぁ、ネオパラレルエンジンの換装が済んでいるだけマシだと言うべきか…」
アクセルテクターからわざわざサラマンダーの鱗を抜き取るような陰湿な奴だ。
あるいは、とアクセルラーの状態を確認したが流石にそこまで手は加えられていないようだ。
だが自分のアクセルラーは無事でも他のメンバーがそうだとは限らない。
「一刻も早く合流しないとな…」
その時だった。
龍が残酷な真実を告げたのは―


「真墨…!」
きつく握った拳が怒りとも悲しみとも取れぬ感情にわなわなと揺れる。
「俺は…また……守れなかった……」
マサキとキョウコ。
炎に包まれる彼らの姿を暁は一生忘れることはないだろう。
彼らを喪った後、恩人の牧野に請われてSGS財団が立ち上げる新たな探索チームのチーフとなった。
もう二度と戻るまいと思った道。もう二度と持つまいと思った仲間を彼は得た。
さくらと蒼太。
彼ら二人が加わり、チームがなんとか起ちあがった時、彼は決意したのだ。
二度と仲間を死なせない、と。
その決意は潰えてしまった。

「嗤え…ロン。俺はこの場の全員を殺してでも、お前の誘いに乗ってしまいそうだ…」

591:暁【あかつき】の決意◇8ttRQi9eks代理投下
08/09/20 23:19:40 /YcAGlmW0
自嘲の暗い笑みが唇を歪める。絶望の二文字が心を覆っていく。
…―チーフの責任ではありません―…
さくらが傍にいればまず間違いなくそういって慰めただろう。だが、暁は自分で自分を許せなかった。
「…いいだろう、俺は、殺し合いに乗ってやる……仲間を生き返らせるためにな…!
…邪魔をする奴は誰だろうと容赦はしない…!!」
この惨劇の舞台で人が戦うのは相手ではない。自分の心だ。
自分自身の闇に飲まれたとき、人は堕ちて行くのだろう―
ロンの狙いは全てそこに集約されている。
人は迷う。人は間違う。人は恐怖する。惨めで、弱くて、ちっぽけな存在だ。

だが、常にそうであるとは限らない。

時として人は恐怖を凌駕し、それを征服する。
「だが、ロン、覚えておけ! 俺はあくまでボウケンレッド! 熱き冒険者だ!! ボウケンジャーとして、お前の仕掛けたこの馬鹿げたゲームを終わらせてやる!!!」
殺し合いには乗る。だが、人は殺さない。
ひどく矛盾した、それでいて傲慢な理屈だ。
それは方法こそ違え、思考はこの世界の王たるロンと重なる。ロンの卑劣な罠にも彼の心は傷つきこそすれ、折れはしない。


592:暁【あかつき】の決意◇8ttRQi9eks代理投下
08/09/20 23:20:29 /YcAGlmW0
人は迷う。人は間違う。だが、人は光を目指す。
彼は既に一介のトレジャーハンターではない。
今の彼に悲しみに浸る暇はない。かつて、友を救えず冒険に背を向けた男はもういない。
二人の仲間が紅蓮に包まれたとき、『不滅の牙』は死んだのだ。
今ここにいるのは、さくらが慕い、真墨が目指した高みの男。
誰よりも熱く、高く、深く、強く、迅く―
ボウケンジャーのチーフ、熱き冒険者ボウケンレッドだ。
彼の心を折ることは、悪辣な龍にもできはしない。
そして、決して力に屈しない人の心に龍は誰よりも深い恐怖を抱いていた。
彼は、人の心に一度負けているのだから。

一旦は暴風に荒れ狂った心も今は冷静に今の状況を分析していた。
既にゲームが始まって6時間。真墨を含む8名の面々が命を落としている。
だが、暁はその死についてある疑念を持っていた。
真墨の死を目の当たりにして衝撃を受けはしたが、その疑問がゆえに彼の死を完全に鵜呑みにすることはなかった。
明石が先ほどまで行動を共にしていたヒカルことマジシャインは自分の知る彼ではなく、それ以前の時間から連れてこられた過去のヒカルだった。
このゲームの参加者は異なる時間軸から選抜されたメンバーで構成されている。
それは恐らく、ボウケンジャーの仲間たちも同じだろう。
―ここはどこなんでしょう、チーフ…僕たち五人以外にも人が大勢倒れていますけど…―
始まりの空間で蒼太は確かに“五人”と言った。すぐ傍で映士を含む仲間たちが倒れているにもかかわらずだ。あの時、彼は明らかに映士を勘定に含んでいなかった。
「蒼太は俺とは別の時間軸から連れてこられたということか…」
彼の髪の短さと、流行に敏感な彼がつけていた香水の匂い、菜月と真墨を仲間と認識していることから類推して5人体制となって間もない頃…ちょうど三国覇剣の事件の辺り、
ダークシャドウの台頭が著しくなってきた時期が彼の出身時間であろう。


593:暁【あかつき】の決意◇8ttRQi9eks代理投下
08/09/20 23:21:12 /YcAGlmW0
真紅の戦士が魂の化身を名乗るアカレッドという男の言によれば、
この世界は歴代のスーパー戦隊によって守り抜かれてきたのだと言う。
誰が欠けても歴史に重大な影響を及ぼすことは必至だ。
なにしろ、戦隊はチームワークが命なのだから。それは自分たちを省みれば容易に想像がつく。
だが、既に“こちら側”と思しき者たちが数名、このゲームの犠牲となっている。
(―彼らが死亡した時点で歴史に影響があるとするなら、ここにいる俺は何なんだ…―?)
このゲームの指す“死”については明らかな疑念がある。
無論、彼らは自分がいた時代よりも後からつれて来られているのかもしれない。
その可能性は否めない。
しかしそれでは一番前の時間軸から来た戦士が死んだ時点で俺たちは消えてしまう。
それではゲームにならない。どの時代の、誰が死んでも歴史に影響が出ない。
少なくともこの箱庭のメンバーは。ならば、その死はいったいどういう意味を持つのか―
命を弄ぶロンの力は計り知れない。計り知れないが、それゆえに希望もある。
「早く仲間たちと合流しないとな…!」


594:暁【あかつき】の決意◇8ttRQi9eks代理投下
08/09/20 23:21:59 /YcAGlmW0
このゲームにはクエスターガイも参戦している。彼自身の暴力性、攻撃性も脅威だが
仲間たちのアクセルラーに万一ネオパラレルエンジンが搭載されていなければ新たな犠牲者が出るのは必然だ。
特に映士合流前の時間軸から連れてこられた場合、クエスターの存在そのものを認識していないはずだ。
「流石にあれだけイカれた奴に警戒心を抱かないはずはないがな…」
それでも危険は大きい。今のところ、仲間の中でガイとまともに戦えるのは自分とシルバーだけだからだ。
真墨の死が全員に与えた影響は計り知れない。
菜月は大丈夫だろうか? さくらは責任を感じてはいないだろうか?
蒼太はクエスターを上手くやり過ごせるだろうか?
映士はかつての仇敵を前に平静でいられるだろうか?
「街へ、行こう」
ここは情報が少なすぎる。
明石の行く先は決まっていた。街には物資と人が集っているはずだ。
ロンは禁止エリアを市街地周辺に集中して特定している。
彼がそんな場所を無造作に選ぶとは考えづらい。何か、思惑があるのは間違いない。
ならば、それを見極め、罠に落ちようとする者を救う。
危険は承知の上。冒険にはつき物だ。

「待っていろ皆…今、行く。…真墨、必ずお前を蘇らせてやる…待っていろ、ロン―…
俺が望む死は唯一つ…お前だけだ―!」


595:暁【あかつき】の決意◇8ttRQi9eks代理投下
08/09/20 23:22:51 /YcAGlmW0
【名前】明石暁@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task46後
[現在地]:G-2遺跡 1日目 早朝
[状態]:健康。二時間変身不能。
[装備]:アクセルラー
[道具]:ラン様カード@爆竜戦隊アバレンジャー、アクセルテクター@轟轟戦隊ボウケンジャー
[思考]
基本方針:ミッションの達成(仲間と合流し、脱出する)
第一行動方針:仲間をこれ以上死なせない。
第二行動方針:ヒカルとの合流を取りやめ、禁止エリアへ赴く。
放送を聞いて参加者が街を目指すと彼は踏んでいます。


596:暁【あかつき】の決意◇8ttRQi9eks代理投下
08/09/20 23:24:57 /YcAGlmW0
代理投下をお願いします。
タイトルは『暁【あかつき】の決意』で。


------------------------------------
以上で代理投下を終わります。

597:名無しより愛をこめて
08/09/21 00:38:10 LG2al9cVO
投下&代理投下乙です
ついに不滅のマーダー誕生か!?
とちょっぴりドキドキしましたw
冷静に考察を進め、ロンの打倒を決意するチーフがかっこよかったです。
GJでした!

598:名無しより愛をこめて
08/09/21 07:41:56 o8+58wmdO
俺もちょっとドキドキしたw
熱いな、チーフ!
かっこ良かったです。
GJ! 次作も楽しみにしてます。

599:名無しより愛をこめて
08/09/23 19:27:24 yO2dKkTlO
保守

600:名無しより愛をこめて
08/09/24 01:19:26 Gk9Kgl800
遅ればせながらGJ!
殺し合いに乗りながら、乗らない。その矛盾した思考をどうどうと言い放つのが、チーフらしいと思いました。
今後、チーフがどう動くのかが非常に楽しみです。

601:名無しより愛をこめて
08/09/24 11:35:18 X4KtYror0
まとめ氏更新乙です。ありがとうございます

602: ◆MGy4jd.pxY
08/09/25 23:52:29 dBxaGJNuO
まとめ更新ありがとうごさいます。


そして申し訳ありません。
投下が一時間ほど遅れてしまいます。
お許しください。

603:名無しより愛をこめて
08/09/26 00:12:04 kdv4BdZpO
>>602
楽しみにしています。
支援はまかせろ!w

604:名無しより愛をこめて
08/09/26 00:19:14 kdv4BdZpO
wってなんだwってorz
すみません。最後のはうっかりによる間違いです。

605: ◆MGy4jd.pxY
08/09/26 02:08:29 J6a/aK/kO
アクセス規制につき仮投下スレに投下致しました。

>>604さん
ごめんなさいですorz

606:名無しより愛をこめて
08/09/26 09:22:35 XfBqshqE0
>>605
お気遣いありがとうございます。
仮投下に気付かず寝落ちしてしまった次第w
というわけで代理投下開始します。

607:ボウケンブラックを捜して…… ◇MGy4jd.pxY氏代理
08/09/26 09:24:10 XfBqshqE0
「シグナルマンさん!スモーキー!菜月ちゃんも落ちついて」
駆け出すシグナルマンを竜也が制した。
「チーキュの住民が危ないのだ!本官は行かなければっ!!」
シグナルマンが言い返す。
「そうだよ。竜也さん、何で止めるの?人質が危ないのに……」
「そうだニャ!」
菜月とスモーキーが竜也を睨んだ。
「だからって考えもなく行くのか?ちょっと、皆さん、落ちついて!」
「竜也、行かせてやるがいい」
ブクラテスが割って入る。
「何の手立てもなく行くなど、人質もろとも死ぬつもりか!わしは竜也とここに残らせて貰うわい」
樽のような腹を揺らせた。
ブクラテスの言葉に竜也はがっくり肩を落とした。
……俺は、行かないなんて言ってない。



「はぁ……」
竜也は大きく深呼吸して気持ちを落ちつけた。
先程聞こえてきた『メガブルー』を誘き出す声。
その声に走り出そうとするシグナルマンとスモーキー。
我が身の保身ばかり口にするブクラテス。
人質を按じているのか、今にも泣き出しそうな菜月。
ひとまず彼らを宥め、人質救出の為に考えを巡らせる。

シグナルマンと二人で行くとして……。
問題は後の二人と一匹。
ブクラテスは頑として動こうとしない。
菜月は勇気を振り絞ってスモーキーと行こうと意気込む。
だができれば、菜月を、もちろん怪我を負ったブクラテスも戦いに巻き込みたくない。

608:ボウケンブラックを捜して…… ◇MGy4jd.pxY氏代理
08/09/26 09:24:34 XfBqshqE0
「どうするかな……」
考えが浮かばないまま時間は過ぎる。
全員、押し黙ったまま、竜也が口を開くのを待っていた。

(こんな時、ユウリならすぐ判断を下せるんだけど。
せめてドモンやシオン、マトイさんの誰かと合流できたら……。
結局、都市に向かうしかないかな)
ブクラテスは不服かも知れないが、怪我の治療もしなければならない。
最初に決めたようにとりあえず病院を探す。
そこを拠点に、動いていけば仲間とも合流できるかもしれない。
「ブクラテスさんの治療と、作戦を練るためにもまず都市で病院を探す。それでいいかな?」
皆が頷く。
「これだけ待たせて、そんな提案だけニャのか……」
誰かが呟いた。
竜也は聞こえないふりをし、それは言わないでくれと心の中で呟いた。



意気込んでいたわりに、都市へ向かう菜月の足どりは遅々と捗らないようだった。
気が急くシグナルマンにブクラテスを預け、竜也は菜月と足並みを揃えた。
「菜月ちゃん、疲れた?」
声をかけると菜月は首を振った。
「ううん。大丈夫、ありがと……ただ、ね」
そう言いながら伏せた瞳は悲しい色に満ち、透けるように白い頬は、強き冒険者としては儚なすぎると思えた。
「ただ?」
竜也は問い返す。
「菜月はね、悲しいなって思ったの。殺し合いを始めた誰かがいるんだってことが……」
菜月は竜也の顔を見上げた。


609:ボウケンブラックを捜して…… ◇MGy4jd.pxY氏代理
08/09/26 09:25:38 XfBqshqE0
大丈夫だという証に、竜也は力強く頷く。
「だから、止めて見せるよ。誰も犠牲にならないうちに……」
わざと明るい調子で言ってみせた。
「そうだね……」
菜月が微笑み返した時だった。

『皆さんおはようございます。この六時間いかがお過ごしだったでしょうか?
さて、定時の放送です――――』

否応なしに聞こえてきたロンの声。
焦らすように、竜也たち参加者を煽る口調で、残酷な現実を突き付ける。

『まずは亡くなられた方からお知らせいたしましょう。 伊能真墨―――』

もう、殺された人がいる。
驚愕と、殺し合いに乗った者への怒り、ドモンたちの名が呼ばれなかった安堵が折混ざり竜也を包んだ。
だが、竜也はすぐに安堵したことを恥じた。

――真墨と、蒼太さんと、チーフに、さくらさん。

ロンが告げた最初の名は、伊能真墨。
出会ってすぐに菜月が口にした人物だった。
「真……墨?」
菜月は張り付いたように立ち竦む。

610:ボウケンブラックを捜して…… ◇MGy4jd.pxY氏代理
08/09/26 09:26:13 XfBqshqE0
「嘘、……こんなの、信じないよ。だって誰も犠牲にならないように……。菜月たち、これから……」
菜月の肩が震え出す。
嘘だ。とは言えない。
竜也は菜月にかける言葉が見つからない。
すがるように目を向ける菜月。その細い肩を、支えるだけしかできない。

『 皆さん、大変お楽しみのようで私としても嬉しい限りです』

すべての参加者を嘲弄するロンの声は、まだ終わることなく続く。
菜月は否定するように首を横に振り、地に伏せ耳を塞いだ。
竜也は菜月の肩を抱き寄せ、シグナルマンは拳を握りしめた。
「ニャ……俺様だって、信じないぜ。麗や、あいつらが、こ……殺されただニャんて」
スモーキーは視点が定まらず、うわずった声をあげる。
ロンの声が追い討ちをかけるように響く。

『お嘆きの方もいらっしゃるでしょうが、ご心配なく。
貴方が最後のお一人になればちゃーんと生き返らせて差し上げますよ 』

生き返らせる。
その言葉に目を見開いたスモーキーと、肩を震わせながら顔を上げた菜月。
その頬を大粒の涙が伝う。
ぺたりと地に座り込み、頬を流れる涙を拭おうともせず、呆然と空を見つめ、菜月は言葉を紡ぐ。
「生き返らせるって、本当に真墨は……」
「麗も?……ミンナ死んだのか?」
二人の言葉にシグナルマンは目頭を抑え、ブクラテスは傷ついた腕に目を落とした。
「真墨……。死んじゃったの?」
菜月の手からスモーキーが滑り落ちる。
ゴツンと音を立ててスモーキーは転がったまま、やり場のない怒りを空に向かって放った。
「畜生!ダンナ、一体何やってんだ!!ダンナのバカヤロー!!!」

611:名無しより愛をこめて
08/09/26 09:29:36 kdv4BdZpO



612:ボウケンブラックを捜して…… ◇MGy4jd.pxY氏代理
08/09/26 09:30:36 XfBqshqE0
スモーキーの悲しそうな声が、言葉の毒を消しさっていた。
「身体が自由になってりゃ!俺様が!!畜生!」
「スモーキー……」
竜也はそっとスモーキーを拾い上げた。
「おい、竜也!」
シグナルマンが大声で竜也を呼んだ。
振り返ると、菜月は泣きながら駆け出していた。
「菜月ちゃん!どこに行くんだよ。菜月ちゃん!!」
竜也は追いかけるが、ブクラテスに腕を掴まれた。
「皆バラバラになってどうするんじゃ!どうせ、すぐに戻ってくるじゃろう」
どんどん遠くなる後ろ姿。
胸に悔しさが込み上がる。
竜也は地に拳を叩き付けた。



菜月は薄暗い森の中を走る。
「真墨……」
その名を呼びながら。
やがて、気が付けば辺りは霧に包まれていた。
涙と霧で視界が滲む。
足を止め、涙を拭った菜月は、ゆらゆらと揺れる人影に気付く。
「菜月……」
もう聞くはずがない真墨の声で、影が菜月に語りかける。
影は徐々に形を作る。
より鮮明に真墨の痩躯を、そして苦痛に満ちた表情を作り上げる。

613:名無しより愛をこめて
08/09/26 09:31:47 klnCAvdB0



614:名無しより愛をこめて
08/09/26 09:31:47 kdv4BdZpO




615:ボウケンブラックを捜して…… ◇MGy4jd.pxY氏代理
08/09/26 09:32:40 XfBqshqE0
「真墨?!」
駆け寄り、真墨へ手を伸ばした。
手が届こうかと言うところで、真墨だった影が四方に霧散する。
そして再び一箇所に集まった霧は金色のフードを被った男の形となった。
「ロン……」
菜月の全身に緊張が走る。
しかし、ロンは何をする訳でもなく、悠然と笑みを浮かべているだけだった。
「ボウケンブラックを捜しに、ですか?」
「……真墨は、どこにいるの?」
「この先に、彼はいますよ。サンヨと言う男に、頭を潰されてね……」
サンヨ、頭、潰されて……。
ロンの一言一言が胸に跡を刻む。
「サンヨも、すぐ近くにいますよ」
不意に、興味深い、そんな眼でロンが菜月の瞳を覗く。
ロンの瞳に吸い込まれるように、菜月の視界が金色に包まれた。
暗転。
真っ暗闇の中、真墨の断末魔が菜月の耳を打ち、潰された真墨の姿が濁流となって菜月の中に流れ込んだ。



悪夢から覚めるように、絶叫と共に菜月は目を開けた。
キョロキョロと辺りを見渡すが、真墨の姿も、ロンの姿もない。
目の前には朝日が森を優しく照らしている。
胸を押さえ、菜月は深く息をついた。
「さぁ、もう何をすべきか解ったでしょう?」
菜月の耳元でロンが静かに告げる。
「守られているばかりでは生き残れませんよ?

616:名無しより愛をこめて
08/09/26 11:38:46 s0QDmnKJ0
板違いです
二次創作は以下の板でどうぞ
URLリンク(namidame.2ch.net)

617:代理投下感謝! ◆MGy4jd.pxY
08/09/26 11:39:57 af+zO12y0
心配など無用ですね。あなたは強き冒険者、ボウケンイエローなのですから」
立ち去るロンを菜月は表情なく見ていた。
「何をすべきか……。そんなの解らない」
菜月には、どうすればいいかなど解らない。
ただ今は……。
「お別れも言えないなんて、そんなの嫌だよ。でも……」
何も言わずに別れてしまった竜也たちが胸を掠める。
「ごめんなさい。すぐに戻るから……」
来た道を振り返り、小さく頭を下げ菜月は許しを請う。

真墨に、お別れを……。
真墨は、サンヨに殺された。
そして、まだ、この森にそのサンヨがいる。
二つの思いが、走る菜月の中で渦巻いていた。


【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:D-5 都市 1日目 朝
[状態]:健康。
[装備]:Vコマンダー
[道具]:メレの支給品(中身は不明) マジランプ+スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー
[思考]
基本行動方針:仲間を探す
第一行動方針:菜月が心配。後悔。
第二行動方針:ブクラテスを病院へ連れて行く
第三行動方針:仲間を探し、ユウリとアヤセの安否を確認する
第四行動方針:菜月の仲間と理央を探す
備考:クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。他の参加者のバックの中か、どこかに隠されているかは不明です。


618:代理投下感謝! ◆MGy4jd.pxY
08/09/26 11:41:05 af+zO12y0
【名前】間宮菜月@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task14後
[現在地]:C-5 都市 1日目 朝
[状態]:健康。
[装備]:アクセルラー、スコープショット、
[道具]:未確認、竜也のペットボトル1本
[思考]
基本行動方針:仲間たちを探す
第一行動方針:真墨の遺体を捜す。

【名前】スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:ボウケンジャーVSスーパー戦隊後
[現在地]:D-5 都市 1日目 朝
[状態]:健康。マジランプの中。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ヒカルを探す
第一行動方針:強い怒りと悲しみ。


619:代理投下感謝! ◆MGy4jd.pxY
08/09/26 11:41:41 af+zO12y0
【シグナルマン・ポリス・コバーン@激走戦隊カーレンジャー】
[時間軸]:第36話以降
[現在地]:D-5 都市 1日目 朝
[状態]:健康。少し凹み気味。
[装備]:シグナイザー
[道具]:けむり玉(1個使用済み)数は不明、その他は不明。メレの釵。
[思考]
基本行動方針:ペガサスの一般市民を保護。戦っている者がいれば、出来る限り止める。
第一行動方針:ブクラテスを病院へ連れて行く
第二行動方針:乙女(メレ)に謝りたい。
第三行動方針:黒い襲撃者(ガイ)を逮捕する。

【名前】ブクラテス@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第12章(サンバッシュ敗北)後
[現在地]:D-5 都市 1日目 朝
[状態]:右腕切断。簡単な応急処置済み。
[装備]:めがね
[道具]:首輪探知機。毒薬。切断された右腕。基本支給品とディパック
[思考]
第一行動方針:竜也とシグナルマンは利用できそうだ。
第二行動方針:首輪探知機とセンの伏せて置く。
備考
・センと同じ着衣の者は利用できると考えています。


。。

620: ◆MGy4jd.pxY
08/09/26 11:45:11 af+zO12y0
以上です。
矛盾、問題点、指摘、よろしくお願いします。

代理投下感謝!です。

621:名無しより愛をこめて
08/09/26 13:17:51 kdv4BdZpO
投下乙です。
竜也、相変わらず振り回されてるなw
菜月とスモーキーの嘆きは胸に刺さりました。
そして、ロン!!お前はどこまで……
サンヨと菜月が邂逅を果たすか否か、出会った時、彼女がどんな行動に出るかも気になります。
切なさと危うさに満ちた良作でした。
GJです!

622: ◆8ttRQi9eks
08/09/29 19:55:56 dQ0UOxtw0
今更ですが、代理投下をして頂きまして真にありがとうございました。
たまにしか来れないのですが、悪いことばかりでなく何かしら更新がありますw
菜月はやっぱり精神的に不安定コースですね。
この先、どんな凄惨な場面に遭遇するのか、しないのか楽しみです。

623: ◆i1BeVxv./w
08/10/01 01:00:50 V+Lg8NJs0
したらばにも記載いたしましたが、予約延長をお願いします。

624:名無しより愛をこめて
08/10/01 04:12:30 womjjoDjO
了解しました。楽しみにしております。

625: ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:04:08 V+Lg8NJs0
遅くなりましたが、投下いたします。


626:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:05:56 V+Lg8NJs0
 それはサーガイン、裕作、ヒカルの3人が、海岸を経由して、ようやく市街地へ入ろうとしたときのことだった。
 突如として、脳内に響く、耳障りな声。定時に行われるロンの放送である。
 死亡者、挑発、禁止エリア。楽しげに言葉が紡がれていく。
「おのれ、ドモン!」
 やがて放送が終わり、まず一声を上げたのはサーガインだった。
「深雪殿を俺から引き離しておきながら、何たる様だ!」
 激昂したかのように声を荒げるサーガイン。だが、その内心は月を映す水面の如く、落ち着いていた。
 サーガインにしてみれば、ロンの放送は取るに足らない内容だった。
 フラビージョ、シュリケンジャーの名前が呼ばれたわけでもなく、告げられた名の中で、面識があったのは小津深雪ただひとり。 
 その小津深雪に対しても死を悲しむほど、情を持っているわけでもない。
「この上はその責任、奴を見つけ出し、力ずくでも取らせてくれよう!」
 そうはいっても、裕作とは深雪に惚れていると勘違いされて繋がった間柄。
 その誤解は解けたといっても、いかにも心配していると見せておいた方が印象はいいだろう。
 打算の上、サーガインは演技を続ける。だが、そんなサーガインを尻目に裕作は別の方を向いていた。
(ヌッ!?)
 だが、裕作の態度に不満を持っても、それを指摘するわけにも行かない。
 あくまで冷静にサーガインは裕作に問いかけた。
「どうした、裕作殿?」
「あれを見な」
 神妙そうな声で促した裕作の視線の先には、まるでぬけがらのような有様のヒカルの姿があった。
 言葉を失い、膝は折れ、呆然と虚空を見詰めている、
「無理もねぇ。今の放送で知り合いのほとんどがやられちまったみたいだからな」
 この殺し合いに招かれたヒカルの元々の知り合いは10人。その内、敵対する勢力を除けば、生き残っているのはたったの2人。
 心情を察すれば、その悲しみと絶望は計り知れないだろう。もっとも―
「しばらくはそっとして……って、おい」
 ―サーガインには関係ないが。
 裕作の制止の言葉も聞かず、サーガインはヒカルへと近づいていく。
 知り合いが死んで、悲しむのは別にいい。戦う意欲をなくすというなら、それは色々と好都合だ。

627:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:07:14 V+Lg8NJs0
 しかし、折角、渾身の演技をしていたというのに、関心を持っていかれるとは面白くない。
 それに一応、仲間という面目で行動している以上、腑抜けに用はない。
「ふん!」
「ぐっ!」
 少なからずの恨みを込めて、サーガインはヒカルを殴った。
 突然、殴られたヒカルは当然、非難の眼をサーガインへと向ける。
「ふむ、怒る余裕はまだあるようだな。何を腑抜けておるのだ。そんなことしている時間が俺たちにあると思うのか。さあ、ヒカルよ、立ち上がれ!」
「……立ち上がって、ボクは何をすればいいんだい?ボクはブレイジェルから麗と深雪さんのことを頼まれた。
 それなのに二人を守ることができなかった。ボクは何もできなかったんだ」
「ふん、腑抜けらしい言葉だ。ならば、ドモンに会えばよかろう」
「ドモン?深雪さんと一緒に行動している男かい」
「そうだ、少なくとも深雪殿の死に様はドモンが知っていよう。そして、もしドモンがその死に関わっているのなら、その手で仇を取れば気も晴れよう」
(それにドモンを殺せば、首輪も手に入る)
 サーガインは心の中で本音を付け加えると、今まで北へと向けていた足を南へと変え、歩き出した。
「すまねぇな、たぶん、あいつはあいつなりにあんたを元気づけているんだ。許してやってくれ」 
 サーガインに続いて、裕作がヒカルに声を掛ける。
「だが、仇を取るかどうかは別として、ドモンに会いに行くっていうのは俺も賛成だ。
 もしかしたらだが、あんたがこれからどうするべきかの答えを持っているかも知れねぇからな」
 ヒカルはサーガインと裕作の言葉をわずかな時間、黙考した後、裕作と共にサーガインの後を追った。



「ウメコさんは死んだか」
 放送を聞き終えたドモンはそんなことをボソッと呟いた。
 ウメコはどういうわけか、教会から身を投げ、ドモンが手を下すまでもなく勝手に死んだ。
 何故、ウメコがそのような行動に至ったか、多少は気になったが、そんなことはどうでもよかった。
 直ぐに思考を別の事柄へと切り替える。
「深雪さん、待っていてください」
 ドモンはウメコから奪ったシグザウエルに眼を向けた。
 ウメコは殺せなかった。その後、現れた男もドモンは殺せなかった。

628:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:08:25 V+Lg8NJs0
「今度こそ、俺の手で誰かを……」
 既に決意はしている。
 こんな状況に陥れたロンに憤りは感じているが、この状況を打開できる力を持っているのもロンであることは確かだ。
 ロンの言葉を信じ、優勝するしか道はない。
 しかし、決意はしていても、いざとなれば自分は本当に人を殺すことができるのか。それはわからなかった。
 現にウメコの説得に心は揺れ、躊躇いを見せてしまった。
「誰か一人、一人でも殺すことができれば、きっと、きっと」
 ドモンは自分の弱さを克服するため、さながら幽鬼のように、獲物を求めて彷徨っていた。



 ヒカルたちが南へと歩き出してから一時間ほどの時が流れた。
 時間が解決してくれるとはよく言ったもので、何も考えることができなかった放送直後と違い、ヒカルは冷静さを取り戻しつつあった。
 そんな中、ヒカルが思考を巡らせていたのはロンが告げたウルザードについてであった。
(ロンはブレイジェルをウルザードとして復活させたと言っていたが、果たして本当なんだろうか?いや、嘘を吐く必要性が見当たらない。
 ウルザードと聞いて、反応できるのは、今となってはボクぐらい。何か狙いがあるなら、ボクに対してということになる。
 けど、わざわざボクだけに嘘を吐く意味があるとは思えない。
 それなら単純に事実を語っただけということになるけど……普通に復活させるだけじゃなく、ウルザードとして復活させたということは、ロンは呪縛転生を使いこなせるということなのか?)
 ヒカルはその沈着冷静な性格上、考えすぎるきらいがあった。
 ある一つの事柄から様々な推論を構築するその傾向はヒカルの長所でもあり、短所でもある。
 だが、今回はそれは短所となった。

―パン!―

 銃声が轟き、途端にヒカルの左肩が爆ぜた。
 突然のことに、ヒカルは悲鳴を忘れ、血に赤く染まっていく左肩を見た。
 普段なら考えに没頭していたとしても、周りへの警戒を怠ることなどない。
 不意討ちにも瞬時に対応し、その時に最適な行動を取っていたはずだ。

629:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:10:18 V+Lg8NJs0
 だが、麗と深雪を失った悲しみは知らず知らずの内にヒカルから余裕を奪っていた。

―パン!―

 放たれる二発目の銃弾。
 その銃弾は未だ呆けるヒカルの眉間を真っ直ぐに狙っていた。
「ふん!」
 しかし、その銃弾は命中することなく弾かれた。
 ヒカルと襲撃者の間に入ったサーガインが鋼の身体を盾としたのだ。
「ヒカル、何をボサッとしている!」
 叱責すると同時に、サーガインはドライガンを構え、銃弾が放たれた方向へと無数の熱風弾を放った。
「クロノチェンジャー!」
 どこかで聞いた覚えのある声が聞こえたかと思うと、黄色い影が熱風弾を避けつつ、サーガインへと突進してくる。
「お前は!」
 サーガインの胸から火花が上がる。襲撃者が携えた剣で切り裂いたのだ。
 はっきりと確認できた襲撃者の姿に、サーガインは怒声を上げた。
「ぬぅぅっ!……ドモン!貴様ァ、血迷ったか!」
 そこに立っていたのはサーガインが呼んだ通り、タイムイエローへと変身したドモンであった。
 ダブルベクターを構え、サーガインも気圧されそうなほどの激しい殺気を放っている。
「どうやら冗談というわけではなさそうだな。貴様、最初から殺しあいに乗るつもりだったというわけか?」
「………」
「なんとか言ったらどうだ!」
 怒りと共に、ドライガンを向けるサーガイン。しかし、引き金が引かれるより早く、タイムイエローの蹴りがドライガンごとサーガインの手を蹴り上げる。
 そして、タイムイエローは続けざまにダブルベクターを振るった。
「ぐぅぅっ!」
 たまらず尻餅を着き、苦悶の声を上げるサーガイン。
「問答無用という訳か。ふん、ならばあの時の決着を今、着けてくれる!」
「……こいよ」
 サーガインは両肩の巌流剣に手を添える。
 タイムイエローはその様子を満足気に見詰め、改めてダブルベクターを構えた。

630:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:11:35 V+Lg8NJs0
「待ちな」
「裕作殿」
 静かに、しかし、どこか雄々しさを感じさせ、二人へと近づく裕作。
「ここは俺に任せろ。お前は力を発揮すると厄介なことになるからな、ヒカルの手当てをしてやってくれ」
 いつの間にか、ヒカルはサーガインたちから数m離れた位置に移動していた。
 サーガインとタイムイエローが小競り合いをしている間に、裕作が行ったのだろう。
「それに俺も、そろそろ自分にどんな制限が掛かっているか試す時だ」
「ということはやはりおぬしも」
 裕作が頷くと、サーガインは指示に従い、ヒカルの元へと下がる。サーガインにしてみれば、裕作の力を知るいい機会だ。
 その様子をタイムイエローは黙って見ていた。
「待たせたな。律儀に待ってくれるとは、根っから腐ってるわけじゃあなさそうだ」
「………」
「愛想がないね。俺が遠巻きに見てたときにはそんな奴には見えなかったんだけどなぁ」
 不意に裕作の顔が真剣なものに変わる。
「………ひとつ、聞いておきたい。深雪さんを殺したのはお前か?」
「違う!俺は……」
「………」
「………」
「……なるほどね。わけありってことか」
「うっ、うわぁぁぁぁぁぁっ!」
 咆哮と共にダブルベクターを振り上げるタイムイエロー。
 裕作は右手に携えたケイタイザーのボタンを押した。

―M・E・G・A・MEGA!!―

「インストール!メガシルバー!!」
 銀色の光を放ち、一瞬の内に裕作は変身を終え、メガシルバーへと変わる。
 右手には銃剣一体の武器、シルバーブレイザーが装備され、振り下ろされたダブルベクターを受け止めていた。
「どういうわけがあるのか、教えてもらうぜ」
 メガシルバーはダブルベクターを跳ね上げると、がら空きになった胸を目掛け、蹴りを放った。

631:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:12:45 V+Lg8NJs0
 タイムイエローが怯んだ隙に、メガシルバーは距離を取り、シルバーブレイザーを構えなおす。
 一方のタイムイエローもダブルベクターの先をメガシルバーに向け、彼を牽制する。
 一歩、二歩、三歩、じりじりと横移動を行う両者。
 やがて、その動きは迅速なものへと変わり、足場を平面の大地から、ゴツゴツした岩場へと移していく。
 先に動いたのはメガシルバーだった。大地を蹴って、タイムイエローに上空からの一撃を試みる。
「ベクターハーレー!」
 そうはさせまいと対空射撃を行うタイムイエロー。
 だが、メガシルバーは空中で身体を回転させ、ベクターハーレーを避ける。
 そして、同時に、回転で威力を増した一撃をタイムイエローに撃ち込んだ。
「とりゃっ!」
 まるで血が噴き出るかのように、大量の火花がタイムイエローのスーツから飛び散る。
 続いて、メガシルバーは居合斬りのようにシルバーブレイザーを構えると、すれ違い様にタイムイエローを斬りつける。
「ぐっ、くそっ!」
 痛みを堪え、後ろからメガシルバーを組み伏せようとするが、振り向いたメガシルバーの手に握られたシルバーブレイザーはガンモードへと変わっていた。
「シルバーブレイザー・ガンモード!」
 打ち込まれる無数の光弾。
 メガシルバーとタイムイエローの戦いは、メガシルバーの方が一枚上手だった。
 スーツや武器の性能、精神状態など、勝負を決めるのは様々な要因が重なり合うが、今回、二人の勝負を決めたのは事前情報の差だった。
 タイムイエローにとって、メガシルバーは初めて戦う相手。
 しかし、メガシルバーにとっては戦うのは初めてでも、タイムイエローがどんな技を持ち、どんな戦い方をするかは事前にサーガインから情報を得ていた。
(タイムイエローと戦うのなら、接近戦はNG。だが、遠距離戦では時間が掛かりすぎて、俺がNGだ。
 だから、着かず離れず、蝶のように舞、蜂のように刺すのさ)
「はぁ、はぁ、はぁ」
 息を荒げ、大地に膝を着くタイムイエロー。
「決まりだな」
「……俺は諦めるわけにはいかないんだ。深雪さんのために……俺は負けるわけにはいかないんだ!
 うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!」

632:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:13:41 V+Lg8NJs0
「本当は体力が尽きるまで待った方がいいんだろうが、残念だがもう時間だ。……決めさせてもらうぜ!」
 メガシルバーはシルバーブレイザー・ガンモードの引き金を引いた。
 放たれる光弾をものともせず、突進してくるタイムイエロー。
 メガシルバーは真正面から迎え撃つ。
「ブレイザーインパクト!」
 それは一瞬の出来事だった。
 タイムイエローのダブルベクターがメガシルバーに届くより早く、ガンモードからソードモードへと変えたシルバーブレイザーをメガシルバーはタイムイエローに見舞った。
 その勢いのまま、タイムイエローに背を向けるメガシルバー。いや、メガシルバーへの変身は解除され、早川裕作の姿に戻っている。
 タイムイエローの意識はまだあった。ダブルベクターを振り下ろせば、早川裕作を殺すのは容易い。
(これでひ……とり、め)
 薄れいく意識と共に、タイムイエローは右手を振り下ろした。



「やれやれ、どうやら変身は2分30秒のままか」
「大丈夫か、裕作殿」
 戦いを終えた裕作の元へサーガインと手当てを終えたヒカルが駆け寄る。
「ああ、バッチリだ」
 サムズアップで無事であることを示し、返事をする裕作。
「しかし、危ないところであった。ドモンの手は裕作殿に振り下ろされていた。
 変身が解除されず、その手に剣が握られたままだったら、死んでたかも知れん」
「まあ、そこはあれだ。俺の絶妙な匙加減って奴だ」
 ドモンは裕作の後ろで気を失っていた。
 タイムイエローへの変身は解け、傷だらけだが、呼吸は案外しっかりしている。
 サーガインはその様子を見て、裕作の万能ぶりに感嘆の溜息を漏らした。
「傷の具合はどうだ」
「大丈夫です。銃弾は魔法で消しましたし、血止めも行いました」
「魔法か……便利なもんだ」
 裕作はヒカルの無事に安堵すると、台車を持ってくる。そして、フェンダーソードでドモンが持っていたディパックを裂き、丈夫な紐を精製する。
「何をするつもりだ」


633:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:14:48 V+Lg8NJs0
「こいつを縛り上げるんだよ」
 裕作はドモンを台車に乗せると、紐でその身体と両手を括り付ける。
「これでよしっと」
「なるほど、俺と同じ要領で、ドモンが動けなくとも移動させることができるわけだな」
「その通りだ。っと、これの管理は任せるぜ」
 裕作はサーガインにドモンの持ち物一式を渡した。装備していたクロノチェンジャーとシグザウエル、マージフォンも全てサーガインに渡す。
 サーガインは好都合と、内心ほくそ笑み、それを受け取ろうとする。
「ちょっと待ってくれ」
「なんだ」
 自分の不穏な考えがばれたのかと、サーガインはわずかながら動揺した。
 しかし、それは取り越し苦労だった。ヒカルはクロノチェンジャーとシグザウエルには眼もくれず、マージフォンを手に取った。
「これは深雪さんのマージフォン。傷ついた痕もある。やはり彼が深雪さんを……」
 怒りの篭もった視線をドモンに向けるヒカル。今にも彼を殺しそうな雰囲気を醸し出す。
「……たぶん、違うな。こういっちゃなんだが、形見として持っていただけだろう。何にせよ、こいつが起きるまでは結論を出すのは尚早だ」
「………」
 納得がいかない様子だったが、ヒカルは口を紡いだ。
(ふう、どうもこいつは精神状態が不安定だな。折を見て、別行動を取った方がいいかも知れん)
 サーガインはヒカルを横目に、マージフォン以外のドモンの持ち物をディパックへと納めていく。
(うん、これは?)
 その内のひとつが、自分の持っているものと若干異なる状態であることにサーガインは気付いた。
(どういう意味だ、これは)
 サーガインは視線をドモンに移す。
 サーガインがドモンを探そうと思った理由のひとつに、深雪の死体の場所を知りたかったということがある。
 首輪の解除のため、死体から首輪を回収するつもりだったのだ。
 しかし、”それ”はサーガインの第六感を刺激した。
(どうやら俺も、深雪殿がどういう経緯で死んだかを知ったほうがよさそうだな)



 ドモンは夢を見ていた。


634:想い、それぞれ ◆i1BeVxv./w
08/10/01 22:15:33 V+Lg8NJs0
 その夢の中でドモンは深雪と会話する自分を見ていた。
 なんとも微妙な顔で会話する自分に、それが深雪さんに家族がいると知ったときの頃の自分だとドモンは理解した。
「それじゃあヒカルさんというのも深雪さんの身内なんですか」
「ええ。血の繋がりはありませんが、勇さんの弟子で頼りになる人です。きっと麗を探し出し、守ってくれるはずです」
 それは希望を胸にしていた頃のこと。
 自分も深雪もこれから訪れる不幸な運命を夢にも思わなかった。
(深雪さん、麗さんは死んだ。ヒカルさんは麗さんを守ることができなかったんだ。
 俺と同じ。ヒカルさんは大切な人を守ることができなかったんだよ)
 何故、そんなことが今更思い出されたのか、ドモンはその夢から眼をそむけようと、深い闇に意識を沈めた。


【名前】ドモン@未来戦隊タイムレンジャー
[時間軸]:Case File20後
[現在地]:I-4海岸 1日目 朝
[状態]:気絶中。身体に無数の切り傷と打撲と火傷(中程度のダメージ)。2時間変身不能。
[装備]:木造の台車(裕作のお手製)
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:優勝して、深雪に幸せな家庭をプレゼントする。
備考:変身に制限があることに気が付きました。 ウルザードに受けた傷はほとんど治りました。



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