スーパー戦隊 バトルロワイアル Part2at SFX
スーパー戦隊 バトルロワイアル Part2 - 暇つぶし2ch489:名無しより愛をこめて
08/09/03 21:58:12 36KOgPql0
板違いです
二次創作は以下の板でどうぞ
URLリンク(namidame.2ch.net)

490:◇5h3T6s3PXc氏へ業務連絡
08/09/05 14:55:27 m/ccudCd0
◆5h3T6s3PXc氏
放送まで時間がかかってしまいました。
まだ見ていて下さると良いのですが……

連絡事項は氏が以前投下なさった「奇妙な二人」についてです。
放送案が投下されたので、仮投下・一時投下専用スレッドの>>111>>116までを
再投下なさるかどうかの意思表示をお待ちしております。
出来れば週明けまでに本スレかしたらばのどちらかにレスを下さい。
週明けというのはあくまで目安ですが、週が明けた時点で氏からのご連絡がなく、
他の書き手氏が予約を申し出た際は、他の書き手氏の予約を優先させて頂くことをご了承下さい。

なお、投下の際には指摘点の修正をお願い致します。


491:名無しより愛をこめて
08/09/06 23:12:45 lXGjU8eS0
持続戦隊ホシュレンジャー参上

492:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:45:19 Z9Q5TBIY0
人差し指に灯した炎に口に咥えた煙草を近づける。
そのままゆっくりと息を吸い、紫煙を燻らせていく。
表情のないはずの顔に思考を満たした満足げな表情が僅かなりとも見えるのは気のせいだろうか。
辺りに広がる煙草独特の匂いに西堀さくらは露骨に顔をしかめて見せた。
「ここがどこだか分かっているんですか! 敵に気づかれたらどうするんです!?」
さくらの非難を聞いているのか、聞いていないのか、グレイはもう一度大きく息を吸い込んだ。
「隠れる必要などない。戦って奪い返せばいい…それだけのことだろう?」
事も無げにややくぐもった低い声を上げる。
二本の指の間に煙草を挟んだまま視線をさくらと合わせようともしない。
眉間にきつく皺を寄せ、さくらは目の前の黒い装甲の男を睨み付けた。
両者の間に流れる険悪なムードからは、二人が殺し合いを始めないのが不自然にすら思えてくる。
全ては1時間ほど前にはじまった。

「絶対に俺は助けに行くぞ! 絶対だ!!」
グレイの索敵により、何者かが『メガブルー』を呼び出し、殺し合いをはじめようとしていることはほぼ間違いがない事実であった。
あろうことか、そのための人質を用意して。
陣内恭介はすぐにでも助けに行くべきだと主張した。
人質はどちらも面識のない人物であったが、囚われの身で死と隣り合わせの恐怖を味わうものを見捨てておけるはずはなかった。
特に恭介はメガブルー…並木瞬を知っている。友の危機を見過ごすわけにはいかなかった。
「駄目だ。戦いには私が行く。お前たちはここに残れ」
先ほどまで黙していたグレイが急に口を開いた。
「おい! 貴様!! 戦いに行くんじゃない! 人質となったものたちを救出に行くんだ!! 


493:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:49:01 Z9Q5TBIY0
履き違えるな!!!」
傷の痛みを押してドギーがグレイを牽制する。
両者の視線が交わる。
「……どちらにしても貴様がいては足手まといだ。ここに残ってもらおう。異論は聞くつもりはない」
「なんだと!!」
「止めてください、二人とも!! 今ここで争っても仕方がないでしょう!?」
一触即発の雰囲気に耐え切れずシオンが場を収めようと必死で二人を説き伏せにかかる。
だが。両者の間の溝は埋まりそうもなかった。
それに、傍らの恭介はいまにも飛び出していきそうな雰囲気だ。
「守る…か…しかし、合って間もない連中をよくそこまで信頼できたものだな。
一人になったあの男にシオンとやつが二人掛かりで襲い掛かるとは思わなかったのか?」
グレイの問いかけにさくらは立ち止まらずに答えた。
「それはありえません。ドギー署長は怪我を負っています。なのにシオンさんは彼を見捨てることはせず、労わり共に行動しています。
こんな状況下でいくら実力者とはいえ怪我人を抱え込む決断はそうそうできるものではありません。そんな彼が今更恭介さんを襲う理由なんてあるはずがない…私はそう判断しました」
さくらもまたグレイの問いかけに目線をあわせようともしない。
「…むしろ、分からないのはあなたです。グレイ」
さくらは立ち止まりグレイと始めて正面から向き合った。
「…………―」
「私たちの星は様々な勢力の侵攻を受けてきました…宇宙、地底……そして異次元。
中でも激しかった戦いとして記録に残るのが私たちの住む三次元と隣り合わせに存在する裏次元からの侵略者…『次元戦団バイラム』」

494:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:50:00 Z9Q5TBIY0
「………………――」
「バイラムの詳細なデータはその根拠が我々人類をしていまだ立ち入れぬ領域の異次元にあること…それに組織壊滅後の今となっては殆どが謎のままです…直接相対した鳥人戦隊でさえ、その全貌を知るには至らなかった……
ですが、その戦いを生き抜いた者の僅かな証言から、人間を虫けらのように冷徹に処理する漆黒の殺戮マシーンが存在していたとの記録が後世の私たちに伝えられています…その者の名は…“グレイ”」
「…知っていたのか……」
正体を看破されても動じる素振り一つ見せない。刺す様なさくらの眼差しを一身に受けてもグレイは身じろぎもしなかった。
「何が目的なんです?! なぜ、あの二人と行動をともにしていたんです!!」
目的。
天を仰ぎながらグレイはその言葉の響きをひどく空虚に感じていた。

『次はあなたです…グレイ』

始まりの空間。全てが黒に包まれたその場所で。
『あなたがその気になれば…バイラムの再興もまたかなうでしょう…場合によってはその領袖となることも……―』
「…政治に興味はない。生身の連中の気苦労を散々見てきたものでな…」
『失礼。あなたはそんなことに関心を抱くような方ではありませんでしたね……それでは…
マリアを甦らせると言うのはいかがでしょう? あなたの腕の中で崩れた女の身体と心を今一度
現世に甦らせるのです……今度はあなたの永久の伴侶として』
―マリア。彼女の温もりが腕の中から消えていくその刹那までをグレイは克明に記憶している。
機械のグレイに忘却はありえない。恐らく何百年、何千年たってもあの瞬間を昨日のように鮮明に思い出すのだろう。それは、確かに痛みといえるのかもしれなかった。
「いかがです?」

495:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:50:49 Z9Q5TBIY0
男の誘いは甘美に満ちていた。男はグレイに期待していた。
無論、ゲームを率先して盛り上げるマーダーとして。
ガイ、ネジブルーに並ぶ純粋に戦いを愉しむ者として。
そのために彼がもっとも強い目的意識を持ってゲームに臨めるタイミングを選んだのだ。
だが。

「そうした誘いならばレッドホークを呼ぶべきだったな…ロンとやら。餌で釣るならばブラックコンドルでも用意してもらったほうが有難かったぞ」

グレイの返答はロンにとってひどく意外なものだった。
これまで、ロンの誘いに迷いを見せなかったのは明石暁をはじめほんの数人だけだったからだ。
「…フフ…だが安心しろ。私は戦いに乗ってやる……精々、貴様の始めたこの馬鹿げたゲームの駒として立ち回ってやろう…私は戦えさえすれば…後は……どうでもいい」
呆気にとられるロンを横目にグレイは人間で言う“笑み”に近い感情を見せた。
グレイにとってロンが何を画策しようがどうでもいいことだった。
参加者の多くが脅威を感じている金色の首輪も生命に関する執着が限りなく薄らいだ、今のグレイにはどうというものでもない。
「目的は何だと聞いているんです!! バイラムの再興ですか!?」
さくらの穿つ問いかけにグレイは淡々と答えた。
「組織はもう、関係ない。ラディゲはまだやるつもりらしいが、バイラムはもう終わりだ。
それは後の時代の貴様らの存在が証明している」
「時間軸のずれに気づいていたんですか!」
グレイの意外な返答にさくらは思わず聞き返していた。
「当然だ。あれだけ話の噛み合わない連中と喋っていれば馬鹿でも気づく。
加えて戦闘力の発揮にも制限が加えられているな。最初は身体の故障かと思ったが、
十分ほどの戦闘後、全身のあらゆる武装にきっかり二時間なんの反応もなかった。
シオンは私をそのままに修復したといった。
やつの腕は確かだ。原因は恐らくはこの首輪の効果だと考えて間違いあるまい」
「二時間…それが時間制限の正確な時間だと?」
「お前たち生身より時間には正確なはずだ」
確かにロボットであるグレイの時間を計る正確さは参加者の間でも随一だろう。
「それをなぜ私に?」
「…理由はない」
「納得できません」
再び両者の間に緊張が走る。

496:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:52:52 Z9Q5TBIY0
「お前の目的は私と争うことか? 人質の救出とやらが最大の目的だろう。私をやつらから遠ざける意図も合ったように感じられるな」
「それともう一つ…あなたを霧払いに人質を救出する腹です。異論はありませんよね?」
「無論」
その時だった。
天空に高揚した男の声が轟いたのは。

『皆さんおはようございます。この六時間いかがお過ごしだったでしょうか?
さて、定時の放送です。
皆さんの命に関わる事もお話しますのでよーく耳を傾けて下さいね―…』

「これは…!」
「あぁ…奴の声だ」
間違いなかった。このゲームの主催者ロンの丁寧だが陰湿な響きを持つ声が四方全てから聞こえてくる。

『皆さんの命に関わる事もお話しますのでよーく耳を傾けて下さいね。
まずは亡くなられた方からお知らせいたしましょう。
伊能真墨、ウルザード、小津麗、小津深雪、胡堂小梅、白鳥スワン、冥府神スフィンクス、妖幻密使バンキュリア、以上の八名になります。
皆さん、大変お楽しみのようで私としても嬉しい限りです。
お嘆きの方もいらっしゃるでしょうが、ご心配なく。
貴方が最後のお一人になればちゃーんと生き返らせて差し上げますよ…』

どこから聞こえてくるのか、全く方向がつかめない。参加者全員の頭に直接メッセージを流し込んでいるらしい。
その時だった。
「うっ!」
さくらの視界に一瞬歪が生まれ、こことは別の光景が現れる。

497:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:55:12 Z9Q5TBIY0
「これは…“ブラック”!?」
「!?」
ブラック。その言葉にグレイも一瞬反応する。
視界一杯に繰り広げられるボウケンブラック…伊能真墨の戦う姿。
やがて彼は変身を解かれ、地面へ這い蹲る。
必死でアクセルラーを起動させようともがく彼の頭上に迫る大きな足。
「そんな…!! 真墨…!!」
真墨の頭が強い圧迫を受けて徐々にひしゃげていく。そして、鮮血と共に爆ぜた。
「そんな…そんな……! 真墨が…真墨が……!!」
先ほどまでの冷静な態度をかなぐり捨てて叫ぶ。慟哭に支配され、我を失った。
「どうした?」
さくらのただならぬ様子にグレイが声をかけるが、茫然自失のさくらはそれに反応しない。
愕然とした。膝の力が抜ける。
そのまま地面に座り込んだ。あれほど警戒していたグレイに背を向けても全く意に介さない。
「そんな…本当に…死んでしまうなんて…」
「今の放送…仲間が混ざっていたのか?」
グレイはボウケンブラックを知らない。
だが、“黒を纏う戦士”の死に様は聞いていてあまり気持ちのいいものではなかった。

『……残る人数は三十四人、皆さんのご健闘をお祈りいたします。
それでは、また六時間後にお会いいたしましょう―…』

先ほどまでとは打って変わってさくらには強い動揺が生まれている。
とても戦いに臨める状態ではないのは明白だ。
「…行きましょう……」
さくらが小さく言葉を発する。
「何だと…?」
「行きましょう…私たちには人質となった方の救出という“目的”があります。こんなところで立ち止まっている暇はありません」

498:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:56:19 Z9Q5TBIY0
振り向いた顔は既に先ほどの毅然としたさくらだった。
仲間の死をまざまざと見せ付けられたショックなどおくびにもださない。
「…いいのか」
何に、対してなのか口にしたグレイにも分からない。
だが、さくらは自らに課せられたミッションに対しどこまでも忠実だった。
本物の機械であるグレイが驚くほどの冷静さで。
だが、その手は僅かに震えている。グレイはさくらのかすかな、ほんのかすかに残った恐怖を見てみぬ振りをした。

放送を終え、ロンは参加者全体に広がる、怒り、悲しみ、困惑に身を浸していた。
いつまでもそうしていたかった。
なんという心地よさだろう。これだから、他者を弄ぶのは止められない。
箱庭の憐れな囚われ人たちが迎えた最初の朝日。
しばしば生命誕生の象徴に例えられるその輝きを彼らはどのような思いでみつめているのか。
誰があの日輪に希望を見出せるだろう。
過ぎ去った命が夜と共に永遠に彼岸の向こうへ誘われるのを、とめることも出来ずにいるというのに―
「さぁて…蒔いた種が次の6時間でどのように成長するか…楽しみですねぇ……」
不敵な笑みを浮かべながら、金色のローブで自らの愉悦の表情を覆っていく。
これから、更に凄惨な死が満ちる予感に心を躍らせながら。

「最も惨めで残酷な死をあなたに…その約束きちんと果たさせて頂きましょう……―」

龍の悪意は、底を知れない―



499:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:57:35 Z9Q5TBIY0
【名前】西堀さくら@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:G5エリア 1日目 早朝
[状態]:健康 (ただし、ロンによる洗脳を受けており、いつでも傀儡になる危険性あり)
[装備]:アクセルラー
[道具]:ガラスの靴、虫除けスプレー、虹の反物の切れ端
[思考] 基本行動方針:仲間と合流し、ここから脱出する。
    第一行動方針:恭介たちと共闘して仲間を増やす。このゲームのルールを把握する。
    ※)裏行動方針:ロンの言われるままにいいように操られ、見苦しく惨めな死に様を晒す。
     ただし、本人にその自覚はなく洗脳行動も全て自分の意思であると思い込む。

【名前】グレイ@鳥人戦隊ジェットマン
[時間軸]:49話(マリア死亡)後
[現在地]:G5エリア 1日目 早朝
[状態]:健康?
[装備]:自らのパーツ全て
[道具]:遠距離射撃用ライフル(残弾数4発) 支給品一式
[思考] 基本行動方針:未定。第一行動方針を果たした後の行動は決めていない
    第一行動方針:自分の納得のいく形でシオンに借りを返す。
    現在はさくらと共に人質を救出すべくネジブルーの元へ。


500:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:58:22 Z9Q5TBIY0
お待たせしました。改めましてはじめまして。トリバレしたとのご意見を伺い、今後はこの名前で書かかて頂きます。
修正版をお送りします。内容も若干放送に合わせて変えました。
実は全員参加の放送SSも書いていたのですが、いかんせん構想が実力を超えていて間に合いませんでしたw
このままだと誰も書かないのかと思っていたので、◆Z5wk4/jklIの投下は安心しました。
最後のロンは未練たらしく没案を一部流用してますw
どなたかにおすがりする事になりますが、本スレへの投下を頂くと幸いです。
本当にお待たせして申し訳ありませんでした。



代理投下終了。

501:名無しより愛をこめて
08/09/08 12:09:53 N6iSQMOp0
投下&代理投下GJです。
ハードボイルドなグレイと、平静を装うさくら姐さんの描写が素晴らしいです。
さくら姐さんはついにカウントダウン開始!?
というか、ロン怖い、ロン怖いよw


502:名無しより愛をこめて
08/09/08 17:40:38 SlmZ4/hJ0
代理&投下乙!
グレイのロンの誘いを蹴るときの台詞がかっこいい。
さくらさんはロンの魔力から逃れられるのか……。
GJ!

503:名無しより愛をこめて
08/09/08 21:33:33 sZ86diIZ0
GJ!
放送が終わり、新展開!
さくらとグレイのクールコンビがネジブルーの野望を打ち砕けるのか?
普通なら安心してみていられるコンビですが、ロンの暗示で果たしてどう転ぶのか。
続きが非常に楽しみになる作品でした。

504: ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:20:46 t/ysGjtu0
ただいまより投下いたします。

505:龍と悪魔の契約 ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:22:20 t/ysGjtu0
ズシャン!!

 何かが砕ける音。何かが潰れる音。交じり合った二つの音は空気を震わせ、映士の鼓膜を震えさせた。
「ウメコ!!」
 映士は音の発生源となった女性の名前を叫び、彼女の元へと急ぎ駆け寄る。
 瞬く間にウメコの側へと移動する映士。だが、そのあまりにも無残な姿に助け起こそうとした映士の手は彼女に触れることなく止まる。
 倒れ伏すウメコの頭からは赤い鮮血が勢いよく噴き出し、大地を浸食していた。血の広がりは頭部を中心としたものだ。
 うつ伏せに倒れたウメコから彼女の表情をうかがい知ることはできないが、その顔が表情など作れないものであることは容易に想像ができる。
 映士は伸ばした手を肩口から首筋へと移動させ、脈を確認した。予想されたことだが、既に脈は途絶えている。
「ウメコ……」
 ボソリと死んでしまった仲間の名前を呟き、映士は呆然と佇む。
 思い出されるのはウメコの笑顔。極限状態でありながらも、恐怖に負けず、周りを元気にしてくれる強い笑顔。
 その笑顔を映士はおろか、彼女が語ったデカレンジャーの仲間たちも、もう二度と見ることができないと思うと、怒りと悲しみが心の底からこみ上げてくる。
「ちくしょ……ちくしょーーー!」
 映士はこみ上げる感情の赴くままに、空に向けて叫んでいた。



 映士はウメコから自分が貸していた銀色のジャケットを脱がす。
 そして、彼女の身を正すと、顔を隠すようそのジャケットを彼女へと掛けた。
 それが今、映士ができる精一杯の葬りだった。
「すまねぇな。この戦いが終わったら、必ず墓を造りに来る」
 手と手を合わし、黙祷を捧げる。
「……さて」
 やがて、ゆっくりと開かれた映士の眼。その眼は一刻前と比べ、鋭さが増していた。

―怪しいのはあの人形だ。―

 壬琴の言葉が頭によぎる。
 始めは壬琴に殴られたこともあり、冷静に考えられなかったが、今は違う。


506:龍と悪魔の契約 ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:23:12 t/ysGjtu0
(転送機能を持ったプレシャス。人形のような生命体。どちらもありうる話だぜ)
 映士はディパックから悪魔の姿を模した人形を取り出す。
(チマチマしたのは性に合わねぇ)
「おい、お前!お前がウメコを殺したのか!」
 人形に激しく詰問する映士。だが、人形は微動だにしない。
「答えろ!」
 声を張り上げるが、一切反応を返さない人形。だが、その程度のことは折込済みだ。
 映士は懐からスコープショットを取り出し、仕込まれたナイフを顕にする。
「いいか、今から3つ数える。それまでに動かないなら、お前をバラバラに切り裂いてやる!
 これは脅しじゃねぇ、お前が本当に人形であっても、それならそれで八つ当たりには丁度いいしな。
 いくぜ!……いーち!」
 映士はナイフをゆっくりと振り上げる。
「にーーー」
 左手は逃げられるようしっかりと人形の身体に食い込んでいる。
「さーーー」
 そして、映士は人形の額目掛け、ナイフを―
「ま、待つデビ。ビビデビが殺したわけじゃないデビ。ナ、ナイフを下ろすデビ~」
「やっぱりテメェ動けやがるのか」
 映士は力の限り、人形―ビビデビを地面に叩きつけた。
「ぐぇ」
 続けざまに、逃げようとするビビデビを踏みつけ、その動きを封じる。
「さて、話してもらうぜ。お前の目的をな」
「い、言うから少し緩めて欲しいデビ。これじゃあ、苦しくて喋られないデビよ」
「心配しなくても、しっかりと俺様には聞こえてる。さっさと洗いざらい喋りやがれ」
 更に体重を加える映士に、ビビデビは蛙が潰れたような悲鳴を上げた。
「ぐぇぇぇっ~、わ、わかったデビ~」
 ポツリとポツリと喋り始めるビビデビ。
 自分がネジレジアという組織の一員だったこと。
 組織崩壊の折に死んだと思ったが、気づくとロンの元に居たこと。
 ロンに命令され、殺し合いを円滑に進ませることができれば、ネジレジアの復興を約束されたこと。


507:龍と悪魔の契約 ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:24:14 t/ysGjtu0
 そして、隙を見て、ウメコと菜摘を適当な場所へ移動させたこと。
「なるほどな」
「ビビィ~、全部話したデビ。早く解放するデビ~」
「ふざけるんじゃねぇ!直接手を下したわけじゃねぇが、それでもお前はウメコの仇には違いねぇ」
 益々、足に力を込める映士。ビビデビの身体が大地へとめり込みはじめる。
 その時、映士の脳内に声が鳴り響いた。

―皆さんおはようございます。この六時間いかがお過ごしだったでしょうか? ―

(これはロンの声か。あの野郎、こんな術まで使いやがる)
 それはロンが参加者全員へと語りかける定時の放送。
 語られるは死者の名前と禁止エリア。
「なっ!」
 死者として挙がった聞き覚えのある名前に、ビビデビを拘束する足の力が緩まった。
 それ幸いとビビデビは飛び上がり、何事かショックを受けているような映士の顔を見た。
「まさか真墨まで」
「知り合いが死んだデビか?」
「うるせっ!」
 ロンの放送はしっかりとビビデビの耳にも届いていた。
 誰が生きようと死のうと、ビビデビにはどうでもいいことだが、それを聞いたであろう映士の様子は非常に滑稽で笑えた。
「ビビィ~!なら、お前が優勝すればいいデビ。優勝すれば、ロンが願い事を叶えてくれるデビ。どうしてもというなら、ビビデビが協力してやってもいいデビよ」
 ビビデビにとって、誰かを優勝させることが目的。それが映士でもビビデビには構わないのだ。
 しかし、それは映士にとって、魅力的な提案ではなく、火に油を注いだようなものだった。
「なら、お望み通り、ぶっ殺してやるぜ!」
 ナイフを手に、映士はビビデビへと襲いかかる。
「ちょ、ちょっと待つデビ。ビビデビは参加者に含まれていないデビ。ビビデビを殺しても仕方ないデビ」
「うるせぇ!」
 激昂しながらも映士の動きは洗練されていた。
 ビビデビの動きの先を読み、あっという間に彼の身体を、文字通り手中に収める。
「わ、わ、わ、わかった、わかったデビ。なら、お前らの脱出の手助けをしてやるデビ。だから、ビビデビを殺さないで欲しいデビ」


508:龍と悪魔の契約 ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:25:57 t/ysGjtu0
「脱出の手助けだ?お前に何ができる」
「ビビデビには女に使ったように転送能力があるデビ。それを使えば、お前たちを脱出させることができるデビ~」
 ビビデビの言葉に自然と映士の顔が引き締まる。
 ここがどこかわからなかったが、映士は今までの経験からここが結界を張られたような特殊な空間ではないかと感じていた。
 ビビデビは何かを知っている。そう確信した映士は話を合わせることにする。
「おい、それは本当か?」
「本当デビ。ここはロンが作った特殊な空間デビ。この中では外との繋がりは完全に絶たれているデビ。
 だから、この中から外への移動は流石のビビデビ様でも出来ないデビ~。けど……」
「けど?」
 言うべきかどうか迷うビビデビ。だが、今にも襲い掛かりそうな映士の怒りが込められた眼に、やがて意を決して言葉を紡いだ。
「けど、ひとつだけ、外界と繋がっている場所があるデビ。そこがお前達が最初にいたホールデビ。そこになら、ビビデビは飛ばすことができるデビ」
「つまり、お前の力を使えば、ここから脱出することは無理だが、高みの見物を決め込んでいるロンの野郎と戦うことは出来るってわけか。なるほどな。なら、さっさと俺様をホールまで転送しやがれ!」
「今は駄目デビ。転送には多大なエネルギーを消費するデビ。さっき、女を飛ばしたばかりだから、そうデビね……あと、2……いや、3時間は必要デビ」
 参加者たちと同様、首輪ならぬ足輪が付けられているビビデビには能力制限がある。
 今、転送能力を使うのは不可能だ。もっとも3時間というのは少しでも時間を稼ぎたいビビデビの嘘だが。
「テメェ、口から出任せ言ってるわけじゃねぇだろうな?」
「信じる信じないは勝手デビ。でも、ビビデビを殺したら、きっと後悔するデビ~」
「……ちっ、今はお前を信じるしかねぇってことか」
(ふぅ~、助かったデビ。隙を見て、逃げ出してやるデ……)
「ビビィーーーー!?」
 映士の放ったスコープショットのアンカーロープにより、ぐるぐる巻きに拘束されるビビデビ。
「何するデビか!?」
「まだ、完全に信じたわけじゃないからな。とりあえず、その状態でディパックの中に入ってな」
 映士は抗議の言葉を口にするビビデビを無視して、ディパックへと詰める。

509:龍と悪魔の契約 ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:26:47 t/ysGjtu0
「さて、あいつらと合流しねぇとな」
 壬琴と合流するため、東へと身体を向ける映士。
 ウメコと真墨のことで頭に血が昇り、思わずホールへと飛ばすよう言ってしまったが、考えてみれば、今の映士には首輪という枷がある。
 今のままで戦ってはホールで殺された男の二の舞だ。それにビビデビの言っていることが嘘ならば、そのまま逃げられてしまうところだった。
(冷静にならねぇとな。無駄死にじゃあ、死んでいった二人に申し訳が立たねぇ)
 映士は空を見上げ、そして、後ろを振り向き、横たわるウメコを見た。
 ここがロンの造った空間だというのなら、もうウメコには会えないかも知れない。
「……じゃあな」
 様々な想いを込めた別れの言葉を告げ、映士はその場から去っていった。



 映士のディパックの中、ビビデビは二重の意味で命拾いしたことにとりあえず胸を撫で下ろしていた。
 ビビデビは参加者に明らかにされていない首輪の機能の内、盗聴の機能についてはロンから聞かされていた。
 つまり、今までの会話はロンに筒抜けということは理解していたのだ。
(あいつは中々聡い奴デビ。本当に裏切るつもりなら、口に出して会話しないと分かってくれるはずデビ)
 強がりながらも、内心は冷や汗ものだ。ビビデビが映士に話した転送能力の詳細はロン自身がビビデビに話したものだ。
 その気になれば、ビビデビは脱出するための鍵になることができるとロンは言った。
 だが、ディパックに詰められる前にロンはこう付け加えた。

―好きに行動してもらって構いません。誰を贔屓しても、誰を陥れてもいいですよ。
  あなたは支給品として、参加者たちがよりよく殺し合いが出来るように手助けして上げてください。
  もし、頑として殺し合いに乗らない参加者がいたとしたら、その時は仕方ありませんがね。
  私は参加者の意志は最大限尊重するつもりですから。参加者の意志はね。―

 強調される参加者という言葉。ビビデビはロンが何が言いたいか理解していた。
 ビビデビは―参加者ではないということ。


510:龍と悪魔の契約 ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:28:41 t/ysGjtu0
【名前】高丘映士@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:J-4海岸 1日目 朝
[状態]:健康
[装備]:ゴーゴーチェンジャー
[道具]:スコープショット、ボウケンチップ、ビビデビ@電磁戦隊メガレンジャー、知恵の実、不明(確認済) 、基本支給品一式(映士、小梅)
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ロンを倒す。
第一行動方針:壬琴たちと合流し、ビビデビの処遇を決める。
第二行動方針:ガイと決着を着ける。

【名前】ビビデビ@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:星獣戦隊ギンガマンVSメガレンジャー後
[現在地]:映士のディパックの中
[状態]:健康。1時間強の間、能力発揮不可。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ロンに協力し、ネジレジアの復興。
第一行動方針:チャンスが来るまでおとなしくしておく。


511:龍と悪魔の契約 ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:29:52 t/ysGjtu0
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点、ご感想などありましたら、宜しくお願いします。

512:名無しより愛をこめて
08/09/09 14:38:23 C2EOfpB90
投下GJです!!
ふつふつとした映士の怒りが伝わってくる作品でした。
無駄死にはしないと誓う映士の決意がかっこよかったです。
映士の怒りを買ったビビデビと、脱出の為の鍵を握った映ちゃんが今後どうなって行くのか、
先の展開が楽しみです。
それにしても、相変わらずの速筆、お見それします。
GJでした。

513:名無しより愛をこめて
08/09/09 22:53:53 UAVSN1gO0
投下乙です。
映士の怒りはロンに届くのか。
ビビデビに対する脅しが余裕を感じさせました。
GJ!

514:名無しより愛をこめて
08/09/10 01:56:23 ke1TxT1mO
まさかもう投下していたなんて!
GJ!
う~む、辛いな映士。
ウメコの死体を無残な形のままにしておかず自分なりに葬う映士。
映士とともに改めてウメコに黙祷。
そしてただの支給品で終わりそうもなく面白い存在になったビビデビ。
すごく面白かったです!

515:名無しより愛をこめて
08/09/10 02:41:45 Or0AiJZmP
個人的にはこのスレはここで続いてほしいが、
他のロワ系スレの大半が創作発表板に移転してしまったので
このスレもスレストされてしまう前に移転準備進めた方がいいと思うんだぜ

516:名無しより愛をこめて
08/09/10 05:03:18 4zF4pcjz0
>>515
sfx:特撮![スレッド削除]
スレリンク(saku板:23番)


517:名無しより愛をこめて
08/09/10 06:49:53 ke1TxT1mO
そしてまとめ更新乙です!

518:名無しより愛をこめて
08/09/10 21:57:12 Ex89c7H10
板違いです
二次創作は以下の板でどうぞ
URLリンク(namidame.2ch.net)

519:名無しより愛をこめて
08/09/11 12:10:20 PQs9nq7T0
定期保守ご苦労様です

520: ◆MGy4jd.pxY
08/09/11 19:10:22 P5/huDd2O
大変申し訳ありません。
今日が期限ですが、もう少しかかりそうです。
前回のようなことは絶対にしませんので延長させて頂けないでしょうか。
よろしくお願いいたします。

521:名無しより愛をこめて
08/09/11 21:36:55 Gsa4tJQtO
>>520
了解です。楽しみにお待ちしています。

522:名無しより愛をこめて
08/09/12 03:44:58 M5DaaAbj0
>それに、傍らの恭介はいまにも飛び出していきそうな雰囲気だ。
>「守る…か…しかし、合って間もない連中をよくそこまで信頼できたものだな。
したらば投下版だと「奇妙な二人」は間にもう少し話があるんですが…まとめの方も本スレを踏襲している
のでここが省略されちゃってますね。


523: ◆MGy4jd.pxY
08/09/12 07:03:48 33lXipR/O
>>522
本当にすみません。
代理投下の際に抜けてしまったのだと思います。
確認不足でした。
ご指摘ありがとうごさいます。
作者氏は不快な思いをされたでしょう。申し訳ありませんでした。

まとめ氏にもお手数をおかけしますが、該当箇所の修正をお願いいたします。

すみませんでした。

524: ◆i1BeVxv./w
08/09/12 20:10:23 cM/ch8CR0
>>523
私もうっかりしてました。
該当箇所を修正いたしましたので、ご確認をお願いします。

525: ◆8ttRQi9eks
08/09/13 23:18:53 sjmzbMzO0
お二方ともそんなにお気になさらないでください。
拙作を代理でアップして本筋に加えて頂けて、本当にありがたいことだと思っています。
なのにお礼が遅れて申し訳ない。なかなかこれないんですよね…今日は超8だってのもあったんですがw
とにかく不快な気持ちは一切ありません。自身でアップできないのに522さんも含めて様々フォローをしてもらって
ありがたいと思いこそすれ、です。

526: ◆MGy4jd.pxY
08/09/14 23:39:43 5M6ESeZw0
>>525
温かいお言葉ありがとうございます。

もう少ししたら投下致します。


527:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:00:28 /Anf5pos0
遅くなりましたが投下します。

528:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:01:38 /Anf5pos0
   Q:ネジブルーのネジトマホークはどうしてそんなに鋭いの?
       A:メガブルーの頭を勝ち割るためだよ。
   Q:ネジブルーは誰に殺されたの?
       A:メガブルーだよ。
   Q:メガブルーと出合ったらどうやって殺すの?
       A:あぁ、そうだな~……




矛先をメガブルーに定め、凍てつく青き怒りを乗せ、ネジトマホークを縦横に振るう。
スーツの回路が火を吹いて破裂する音、それと共に耳を打つメガブルーの苦痛の声。
その声にネジブルーの奥底から表しようもない歓喜が沸き上がる。
さらにフルスイングでもう一撃。
かろうじて持ちこたえたメガブルーは、よろけながらも倒れまいと足を踏ん張る。
それでいい。簡単に倒れてしまっては面白みに欠ける。
「ほんと、楽しいよ、楽しいよ~。メガブルゥ~」
すぐには殺さない。いや、すぐに殺してなどなるものか。
少しでも多く、少しでも長い間苦しんでもらわなきゃね。
そう、俺の味わった悔しさや苦痛は、こんなものじゃ全然足りないんだよ。

メガブルーに苦痛を!メガブルーに屈辱を!!

ネジトマホークから放たれた青き光の刃が乱舞し、メガブルーの胸を、四肢を、胴体を切り裂く。
「ぐっ!あぁ~」
全身で苦痛を表現するように、メガブルーは体を折り曲げのた打ち回る。
「まず、仮面を割らなきゃね」
その脳天目掛けてネジトマホークを振り下ろした。
「が……ハッ」

529:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:02:32 /Anf5pos0
苦しげな声と、差し出した手が助けを求め虚空にさまよう。
ネジブルーはゆっくりと近づき、右足のつま先をメガブルーの顎へ引っ掛け蹴り起す。
「寝たふりなんてやってくれるねぇ」
まだ意識はある。仮面を通していても驚愕に満ちた視線をはっきりと感じる。
「メガブルー、これからだよ」
脳天に突き立てたネジトマホークを引き抜いた。
パキパキと音を立て、メガブルーの仮面が壊れていく。
どんな顔してるんだい?見せてくれよ~。
割れた仮面の断片を一つ一つ取り除く作業は、プレゼントの包みを開けるような期待と喜びをネジブルーに与えてくれた。
ようやく見えた。仮面の隙間から覗く、恐怖、苦痛、絶望を湛え、黒曜石のように輝く瞳が。
ヤメテクレ……殺サナイデクレ。
メガブルーの瞳が切に訴えていた。
「止めてくれ?殺さないでくれ?それじゃぁ足りないぜ。もっと必死に懇願しなきゃだめだよ」
指をクルクル回しながら仮面の隙間へ潜らせた。
「苦しみの声だって、もっともっと聞かせてくれ。絶望のこもった断末魔は絶対に忘れないでくれよ~」


§


いつまで笑っているつもりだろう。
放っておけば笑い死にするんじゃないかと思うほど、ネジブルーは気違いじみた笑い声をけたたましく上げ続けている。
「もういいわよ、ネジブルー」
「ヒャハハハハッハハハハッ、ヒャハハハヒャハハハハッ。メガブルー、お前は死んじゃうんだ!ヒャハハハハハハハハッ!!」
聞いていない。
美希だけでなく、誰が話かけたところできっと同じだろう。
思ったより、使えないかもしれない。
あわよくばネジブルーとメガブルーの戦いに何人か巻き添えになってくれればと思っていたが期待しない方が良さそうだ。
それはそれで構わない。
美希の狙いは他にもある。

530:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:03:42 /Anf5pos0
まず、利用できる人間の選定。
そして、血の着いた忍者刀の始末。
事をスムーズに運ぶために、疑われるのは極力避けたい。
味方同士となれば、名刺交換代わりに支給品を確認するだろう。
まさか私の支給品には最初から血が着いていたんです。と言うわけにもいかない。
だから隙を見てネジブルーのデイバックとすり替えようと思っていた。
おそらくネジブルーは倒される。
スフィンクスの支給品を美希が奪ったのと同じように、ネジブルーの支給品も有効利用と言う名の元に誰かに奪われる。
すり替えたデイバックの中には血の着いた忍者刀。
ただ、そこで問題なのが目の前のネジブルー様子だ。
メガブルーに異様な執着を抱いているだけで、ネジブルーは殺し合いに乗っているわけではない。
それにネジトマホークと言う立派な武器も持っているのに、わざわざ慣れない忍者刀で殺害するメリットがない。
では誰に支給された物なんだ?となれば、疑われるのは美希。
どうしようかしら。
参加者はまだ大勢いるし、ここに集まる人間を利用すると限らなくてもいいのよね。
拡声器といえど全エリアに伝わっている訳ではないだろうし。
都市は人が集まりやすいと踏んで選んだが、むしろ殺し合いに乗るつもりがないなら他のエリアで様子を伺っている可能性もある。
一つ仕掛けておいた方がいいかもしれない。
時計とあれを使えば……。
そうなると、ドロップにも手伝ってもらうことになるわね。

美希はクルリと身を翻し、ドロップの方を向いた。
この子といれば、この場を逃れてもしばらくは怪しまれずに誰かに近づける。
ドロップと手を組んでいる限り、美希は幼い子を守る優しい女性の皮を被っていられる。
ただいつ手を噛まれるかわからない。
なぜならドロップの望みは美希と同じ『最後の一人になる』だからだ。
「ドロップ」

531:名無しより愛をこめて
08/09/15 01:05:20 UVqGj+aWO





532:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:06:19 /Anf5pos0
美希が声をかけるとドロップはトコトコとこちらに歩いて来た。
「ちょっと下に降りてくるわ」
ドロップはコクンと頷き、少し眉をひそめネジブルーを見た。
「あれ……」
ドロップのさす『あれ』に目を向けると、まだメガブルーを殺す妄想の世界にどっぷり浸かっている。
「うるさいのは我慢してくれる?好きなようにさせておくといいわ。それより……」
美希はそっとドロップに囁いた。


§ 


「だめだよ~、我慢できない!なぁ、メガブルーはまだ来ないのかい?
さっきから俺のネジトマホークが叫んでしょうがないんだ。メガブルー、メガブルー、 メガブルーってね!……?」
美希の姿が見えない。ネジブルーの傍らにいるのはドロップだけだった。
資材の影でボンヤリと朝日を見つめているドロップに問い質す。
「あの女、どこへ行ったんだい?」
「偵察……」
ネジブルーを見ようともせずドロップは答えた。
「偵察ぅ?そりゃいいな」
待ちきれないネジブルーには、ある意味それは朗報だった。
「だけど見付かったらどうするんだ?」
「……ネジブルーに命令されたって言うって。メガブルーを連れて戻らなければドロップを殺すって」
「へぇ、そうか。ならメガブルーをどうやって殺すか、あの女が帰ってくるまでに考えておかなきゃね……」

 
§


瞬は地図を手に必死で身を隠す場所を探す。

どうする、砂漠を渡ってエリアの外れまで行くか?

533:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:08:23 /Anf5pos0
無理だ。ペットボトル2本の水で渡りきれっこない。
採石場で隠れようか?
いや、一箇所にいるのは危険だ。
逃げ続けるしかない。
誰かに見付かったらメガブルーに変身してでも逃げ切ってやる。


『皆さん――――』


瞬の思考を中断するようにロンの声が頭に流れ込んできた。
ハッと瞬は顔を上げる。
声を聞いているうちに肩が震えた。
自分ではその震えを抑えることが出来ない。

禁止エリア?だんだん逃げ場が無くなって行くのか!?
それに8人?8人ってなんだよ。
なんでそんなに死んでるんだ!
……ダメだ。逃げるなんて無理だ。
誰かに助けを求める?
人質を助けなかった俺を誰が助けてくれるっていうんだ。

殺し合いはとっくにもう始まっている。
その中で瞬はいわば指名手配状態。
瞬が描いたビジョン、無罪放免の道は閉ざされた。
「クッ、ハハハハッ」
涙と笑いがごちゃごちゃになる。
「どうするんだよ、俺。もう死んじまった8人みたいに、逃げられない。自分を狙うヤツから……」
砂の上に転がり、悔しさをぶつけるように何度も地面を叩く。
ちくしょう!ちくしょう!!
なんで俺なんだ?

534:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:10:32 /Anf5pos0
だいたいメガレンジャーに選ばれたのは健太じゃないか。
俺はなりたくてメガブルーになったんじゃない。
不公平だ……。
こんなの、俺はまだ17なんだ。
個展だって開いてない。デザイナーにだって手が届きそうだったのに。
なんで俺だけこんな目に合わなきゃならないんだよ。
冗談じゃない……。

― 殺るしかないんだ。そうじゃないと、次に名前を呼ばれるのは俺だ。

よろよろと立ち上がり瞬はタワーを目指した。
瞬が狙うのは漁夫の利。
人質など、所詮罠だ。
集まってくるのはどうせ殺し合いに乗ったヤツばかりだろう。
双方戦って傷ついたところで駆け付ける。
後は制限を逆手にとり邪魔な参加者を一掃する。
瞬は深く息を吐き出した。
「やってやるさ」
歩みを再開した瞬に恐怖はなかった。


§


「ドロップ、この兄が今お前を助けに行く」
ジルフィーザはひたすらドロップを目指し、タワーの外壁をよじ登る。
このタワーの外壁は幾つものキューブブロックを積み重ねた形状。
充分とはいえないが登るための足場にはなる。
そのわずかな足場で足を支え手に力を込め、ジルフィーザは頂を目指した。
すでに完成された数十階部分まで、タワー内の昇降機を使おうかとも考えたが、そこに罠が仕掛けてあるとも限らない。
戦力の温存と愛する弟のため、ジルフィーザはあえてロッククイラミングを決行した。

535:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:12:02 /Anf5pos0
ジルフィーザが登る一面は、朝日の当たらないビル全体の死角。
頂上付近まで下からはもちろん、上からも見つかりにくい一面だった。

手探りでぐらつく身体を支えながら、ジルフィーザは先程頭に流れ込んできたロンの声を反芻する。
告げられた8人の死者。
その中にドロップの名が無かったことはジルフィーザに束の間の安堵をもたらした。
だが、となればやはりドロップはここで捕らわれている。
おのれ!忌々しい制限など無ければ!!
そう、制限さえなければ、飛行してすぐにでも駆けつけている。
この怒り、頂上にたどり着いた暁にドロップを浚った相手に存分に返す。
全身全霊、己が持つすべての力を発揮し、塵一つとして残さぬわ!!

ジルフィーザの怒りが極限に達した頃、ロッククライミングも終了となる。
この階からは上階は未完成。
剥き出しの鉄骨と打ちっ放しのコンクリートの外壁を土台に鉄製の階段が設置されていた。
上を仰ぐと、九十九折りの鉄の階段の遙か上に揺らめく人影が見える。
「ドロップ!!」
ジルフィーザは階段を駆け上がった。それと同時に
「お前、メガブルーじゃないね~」
突然、ふざけた調子の声が聞こえた。
「墜ちろ!」
声の途端、不可視の力でジルフィーザの身体は階段から突き放された。
咄嗟に掴んだ階段の手すりがメキメキと土台から剥がれジルフィーザは宙づりになる。
「回れ!」
身体が回転を始める。
やむなく手を離したジルフィーザは地上へ向け急速に落下していく。
「おのれ!!」
風に逆らい翼を拡げた。
落下速度は強風となりジルフィーザの翼が軋む。
二、三度大きく羽ばたかせ体制を整える。
「うぬぅ!」
再びドロップの元へ羽ばたこうと旋回し上昇する。

536:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:15:47 /Anf5pos0
タワーの最上部でこちらを見ながらブルーのメガホンを構える男がいた。
かまわず目を凝らし、ドロップの姿を捜す。
「ドロップ、どこにいるのだ?」
兄の声に答えたのか、資材の影から小さな姿が現れた。
違う。
ジルフィーザの眼が憤怒の色に染まる。
あれはドロップでは無い。
無駄足を踏まされ男を縊り殺したいところだが、ここは本物のドロップの行方を捜さなければならない。
もし、次にこの男が目の前に現れれば生かしてはおかぬ。
射抜くように男を睨み付けた。
男はジルフィーザの視線を真っ向から受け再びメガホンを構えた。
「メガブルーを連れてこいよ~。墜ちろ!」
再び不可視の力がジルフィーザを包む。
ジルフィーザはその力に逆らわず、風に乗り地上へ降りていった。


§


「瞬の代わりにあの声の主を倒す、これは俺の役目だ。誰だって初出場の時は怖い。俺だって腰を抜かしたぐらいだ。
それなのに、えらそうに説教なんてしちまった。瞬を傷つけちまった責任。そいつを果たすには俺がやるしかねぇ」
「ならば、私も一緒に戦おう。あの者を傷つけたのは……俺の方だ」
「ティターン。じゃあ一つ頼みがある。お前には俺が戦ってる間に、人質を助け出してくれ」

タワーの入り口付近、そこで人目をはばからずに話す男が二人。
一人は黒装束に身を包み、銀色の犬を引き連れた大男。

537:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 01:17:29 /Anf5pos0
もう一人は痩躯ながら鍛えられた鋼のような精悍さを持つレスキュー服姿の男。
積み上げられた資材に隠れ、その二人を数分前から覗いている二人組。
青い長羽織を小粋に着こなす女、日向おぼろと、高き冒険者ボウケンブルーこと最上蒼太である。
「あの黒装束は見るからに怪しい、っちゅう感じで思わず隠れたけど……」
「人質を助ける相談をしてるみたいですね」
蒼太とおぼろは顔を合わせて頷きあった。

二人がJ-10エリア『叫びの塔』を目指している途中、メガブルーなる人物を呼ぶ声がエリアに轟いた。
ひとまずバリサンダーをFー5エリアの外れに隠しタワーへ急いだ二人。
一足先にいたのが、レスキュー服の男と黒装束。
「救出作戦とあれば……よし、うちらも合流しよう」
腕をまくって勇むおぼろ。蒼太は慌てて止める。
「もう一人。あそこのビルの上、学生服を着ています。こっちの彼は狙いが違うんじゃないかな」
蒼太はおぼろにスコープショットを握らせビルの上を示した。
ビルの上の少年の思い詰めた表情が蒼太には気がかりだった。
彼、高校生くらいかな?
人質救出のわりには怯えたように周りを警戒している。
野次馬には相応しくない切羽詰まった様子。
明らかに人為的につけられた頬の怪我。
そこから受ける印象は『彼は殺し合いに乗ろうとしている』
漁夫の利を狙うか、思いとどまるか。
できれば後者であって欲しい。

蒼太は死者を告げるロンの声を思い返す。

『皆さん―― まずは亡くなられた方からお知らせいたしましょう。伊能真墨……』

伊能真墨、ボウケンブラック。

538:名無しより愛をこめて
08/09/15 01:20:39 UVqGj+aWO



539:名無しより愛をこめて
08/09/15 01:21:56 G8zk/JmxO



540: ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 02:15:28 UVqGj+aWO
さるさんのため、残りは仮投下スレに投下致しました。


541:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 09:38:52 /Anf5pos0
彼のひねた笑顔と声が脳裏に浮かぶ。
『手を貸すぜ。金庫から頂くんだろ?』
先日の三国覇剣の一件ではこっそり先回りしてハイパープログラム社で蒼太を待っていてくれた。
まだ付き合いは浅かったが、それなりに上手くやっていけそうだった。
その真墨が、殺し合いの犠牲になった。
彼の死を確かめるすべもなく、一方的に薄笑いを浮かべたロンから告げられた。
中途半端な、やり場のない苛立ちと憤り。
あんな思いはもう味わいたくないし、誰にも味わわせたくない。
気持ちを落ち着けるように蒼太は右手の指輪に触れた。

おぼろがスコープを覗きながら蒼太の袖を引いた。
「あの子、メガブルーなん違うかな?なんや怪我もしてるし、一人でどうしようか思い詰めてるんちゃう?」
「彼がメガブルーか。う~ん、そうかもしれないけど」
少し考えてから
「僕には殺し合いに乗るかどうかで迷っているように見える」
と正直に言ってみる。
スコープショットを蒼太に渡しながら、おぼろは困り顔で言った。
「もしそうやったら、何とか思いとどまらせる事はできんやろか。
鷹介たちもそうやけど、あの年代の子らは良い意味でも悪い意味でも真っ直ぐやから、方向を間違えたらえらいことになる」
確かに、ブレーキのきかない年代。
思いとどまって欲しいと願うのではなくて、思いとどまらせる。
なるほどね。それが良い道標なのだろう。
「彼がメガブルーだとして、二人の話と彼の様子をみると。何か行き違いがあってあの二人が彼を傷つけてしまった。
そして二人はその償いをしようとしている。それを彼は知らないんでしょうね。下手したらあの二人も自分を狙ってると思っているかもしれませんね」
「そんな風に思ってるとしたら、余計良い結果にはならんな」
「まっ、直接本人に聞いてみましょう。おっと、おぼろさんはここを動かないで」
おぼろはここに残ってもらうつもりだ。男同士の方が話しやすいと思ったからだ。
「蒼太くん、あの子が殺し合いに乗ってしまってたらその時はどうするん?」
蒼太は二人の男を見遣る。

542:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 09:41:05 /Anf5pos0
自分を助けようとしている二人を知ったら思いとどまるかもしれない。そう思っている。
だが、それが彼に伝わらなければ……。
デイバックの上からヒュプノピアスに触れる。
「その時はちょっと荒っぽいやり方も必要かもしれませんね」
「荒っぽいやり方って……ちょっと蒼太くん!」
「危険なことはしませんよ」
そう言っておぼろに片手を振り、蒼太は少年のいるビルへ向かった。



§


ここを動かないでと言われたけど……。
蒼太がビルに入っていった後、おぼろは二人の男の様子を伺っておこうとそっと近付いた。
おぼろとしてはそっと近付いたつもりなのだが、すぐに男達に見つかってしまった。
「誰だ。出てこい!」
「バウ!バウ!」
銀色の犬がおぼろの後ろに回り込んで、足下にまとわりつく。
「うちは、べつに。ちょっとやめて!ほんまに」
「マーフィー。やめろ」
黒装束の男の声に銀色の犬はちょこんと座り込んだ。
「あんたは?」
レスキュー服の男がおぼろに厳しい視線を向ける。
おぼろはおずおずと口を開いた。
「うちは日向おぼろ。自分で言うのもなんやけど怪しい者じゃないで。
もちろん殺し合いなんか乗ってないし。今はここにはおらんけど、最上蒼太くん、ボウケンブルーと一緒にあの声を聞いて、急いで駆けつけたんや」
「そいつはどこへ行ったんだ?」
レスキュー服の男の眼がさらに厳しくなる。

543:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 09:45:41 /Anf5pos0
「そこのビルの上に学生服の男の子がたっとって……。あんたら話してた瞬て言う子やと思う。その子の所へ」
「何だって?瞬が来てるのか!どこだ」
おぼろが指を指すが、隠れてしまったのか距離があるからか人影があるかもはっきりしない。
「瞬、来ないと思ってたぜ」
表情を弛めレスキュー服の男が呟いた。
この人はあの子が殺し合いに乗ったかもしれないなんて考えてもいない。
本当にそうならそれでいい。
この二人には余計なことは言わずに蒼太を待とう。
「最上ってヤツ、信用できるんだよな」
声を穏やかにレスキュー服の男が尋ねてきた。
「うちは蒼太くんに命を助けてもらったから、信用するも何も……。もう少ししたら瞬って子連れてここに戻ってくると思う」
「そうか。それはそうと、いつから聞いてたんだ」
おぼろはほっとした。男は表情も穏やかになっている。
「黙って聞いてたんわ謝るわ。すんません。
でもあんたらも信頼できるかどうか解らんかったし。失礼やけど、特に黒装束の人なんか見るからに、なぁ」
おぼろは本人に同意を求めるように黒装束を見た。
黒装束の男は笑っているようで傷ついているような表情を浮かべた。
とりあえず、会話は掴んだ。本題を切り出そう。
「人質を助けようとしてるんやろ。それうちらにも手伝わせてくれる?」


§


話の腰を折るように、マーフィーは大きく遠吠えした。
「バウ!バウバオォォーーン!」
「マーフィー、どうしたのだ?」
「バウ!」
走り出したマーフィーを追いかけていったティターン。
戻ったティターンは纏に話を始める。

「ジルフィーザの話では白い服を着た少年で、ドロップではないと言っていた」

544:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 09:49:48 /Anf5pos0
ティターンがジルフィーザと行動を共にし、ジルフィーザが必死の思いでドロップを捜しているのはすでに聞いていた。
白い服の子供。何か引っかかる。纏は記憶をたぐり寄せる。
いや、確かマツリが一度連れていた炎を操る子供。
ドロップからサラマンデス変わる前、そんな姿をしていた。
また戻ったのか?わけがわからねぇ。
ティターンの話ではジルフィーザは俺を覚えちゃいなかった。ありえなくもねぇかもな。
いや、覚えてないんじゃねぇ。
それじゃ、辻褄が合わない。
「ティターン。何かのまじないで俺を忘れたんなら納得できる。だけどよ、ドロップまでわからねぇのは変だろ?」
「確かに」
「俺の考えはこうだ。ジルフィーザも俺もドロップも、違う時間ていうか、時代というかとにかくずれた時間から連れて来られたんだ。
さっき話しただろ。タイムレンジャーのヤツラ、あいつらと一緒に戦ったとき原始時代に飛ばされた。
そんな感じでジルフィーザは地球に来る前、ドロップはサラマンデスになる前、俺は平和が戻った時。なぁ、わかるか」
「信じられぬ話ではない、ならば、その子供がドロップだというのか?!」
「あぁ、ドロップだろう。瞬と声の主も、俺たちとおそらく同じだ。だから瞬はコイツを知らないんだ」
纏の言葉に深く頷くティターン。
「ただ、メガブルーを連れてこなければ上には上がれないようだ。呪文か何かでジルフィーザも近寄れなかったらしい」
「瞬を行かせるわけにはいかねぇ」
良策は浮かばない、上にも上れないとなれば、万事休す。
「こっちも人質を立てたらどうやろう。交換させるために下まで降りてこいって」
おぼろが進言する。
「メガブルーご指名のあいつが、人質になんか興味示すと思うか?」
「本人になってもろたら……」
「ダメだ!」
「ほんまに引き渡すわけやない。うちも含めて4人がかりならなんとかなるやろ。あの声の主さえ引きずり下ろしたら良いだけの話や」
その時、聞くはずのない声が割って入った。
「僕なら構いません。名案だと思いますけど……」
青いジャケットの男に連れられて、瞬がそこに立っていた。

纏を無視するように青いジャケットの男と言葉を交わす瞬。
「瞬、手紙読まなかったのか?」
なんとなくすっきりしない思いで纏は尋ねる。

545:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:02:47 /Anf5pos0
「手紙?」
瞬は怪訝な顔で纏を見つめた。
俺が守ると、安心させてやりたかったんだが……。
読んでもらえなかったのなら、行動で示せばいい。
ティターンも気持ちは同じなのだろう。
視線を合わせた二人は頷き会った。
纏は皆に告げる。
「まずは情報交換させてくれ。その後、俺とティターンで要救助、出場する」


§

再びマーフィーと共にジルフィーザを探し当てたティターン。
ドロップは本物であると、纏の考えをジルフィーザは半信半疑ながら信じたようだった。

「頼む!ジルフィーザ!!声の主に伝えてきてはくれないか。お前しか上空へたどり着けぬのだ」
「上空までまだおそらく飛べるであろう……忌ま忌ましい制限のお陰でドロップの身はお前に預けるしかないようだ」
ジルフィーザはそのまま空へ舞い上がりタワーの上部へ向かう。
「行ってくれるのか!」
安堵するティターンを振り返らずに、ジルフィーザは言った。
「弟のためだ……。先程別れた場所、そこで待とう」


§


朝日がタワーのガラスブロックを照らす。

546:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:06:36 /Anf5pos0
キラキラと煌めく光の中を、纏とティターンが立っていた。
暫時の間を経て、回転扉から声の主が姿を表した。

「お前、何者なんだ?なぜメガブルーを狙う」
纏は声の主に名を問う。
「俺の名かい?ネジブルーだよ。だけどそんなのどうだっていいだろ~。言うことを聞いてわざわざ降りてきてやったんだ。さぁ」
『いっちまってる』直接耳にしたネジブルーの声は、期待と興奮の混じった嫌な声色だった。瞬でなくても聞けば鳥肌の立つような。
「さぁ、人質を交換するんだろう~。俺の人質は、ほらあそこにいるよ」
ネジブルーは得物の先でタワーの三階辺りを差した。
窓ガラスの向こうに黒いスーツの女と子7、8才ぐらいの子どもの姿が見えた。
これでうまい具合に、人質とネジブルーに距離が出来た。
あそこなら自分が戦っている間に隙を見て救出してもらう事は可能だ。
「おい、聞いてるのか?メガブルーはどこだい」
痺れを切らしたネジブルーが催促を始めた。
さてと……。
一呼吸置いて纏はティターンと目配せを交わす。
ティターンは頷き、纏の横に並んだ。
「残念だけどな。メガブルーはここにはいねぇよ」
「何だって~。じゃあどこにいるんだい。早く教えろよ~」
ネジブルーは手にしたメガホンと斧をちらつかせるようにゆったりと手を動かした。
纏は脅しに屈しない強い眼差しでネジブルーを見据える。
要救助者は女性1名、子供1名、そして並樹瞬の合計3名。
一刻も早く救助しなければならない。
人の命は、地球の未来だ。
「メガブルーに手出しはさせねぇ。あいつは俺たちが守る!」
握り締めた拳をネジブルーへ向ける。
「手出しはさせないだって?」
「あぁ、お前の相手はこの俺だ!」
腕を組んだネジブルーは頷きながら、考えるような素振りを見せた。

547:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:09:45 /Anf5pos0
「へぇ~、そういうことか。最初から人質を交換する気なんてなかったんだな」
そう呟いたネジブルーの肩が小刻みに震えだした。
「もう少し、ましなことを思い付かなかったのか? ムカつき過ぎて笑っちゃうよ 。
フヒャハハハハッフヒャハハハハッ、ヒャハハハハッハッ !!」


§


俺がどんな思いでこの瞬間を待ってたと思うんだ?
なぁ、Dr.ヒネラー。
この気持ちは何なんだ?メガブルーだけじゃねぇ。ここにいるやつら、全員殺してやりたいよ。

ネジブルーは心の中でDr.ヒネラーに問いかける。
無論、心の中のDr.ヒネラーは答えない。
ネジブルーはDr.ヒネラーにより生み出された狂気の生命体だった。
メガブルーを敵視し、倒すためにプログラムされた存在。
こうして再び蘇るまで、ネジブルーを殺すという意志は所詮組み込まれたプログラム。
ネジブルーは、ただの操り人形だった。
だがここに来てからは違う。
メガブルーへの復讐。その確固たる意思はネジブルーだけの物だ。
そう、Dr.ヒネラーなどもういない。自分を縛る枷などないのだ。
作戦も、指示も、帰還命令もない。
ネジブルーは悟った。好きなようにやって構わないのだ、と。

「よってたかって、俺の楽しみを邪魔しやがって……」

メガブルー以外の存在に対する憎悪が湧き上がる。
その感情はより率直に、果たして彼の意思に破壊的に働きかける。

548:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:11:52 /Anf5pos0
「へぇ~、そういうことか。最初から人質を交換する気なんてなかったんだな」
そう呟いたネジブルーの肩が小刻みに震えだした。
「もう少し、ましなことを思い付かなかったのか? ムカつき過ぎて笑っちゃうよ 。
フヒャハハハハッフヒャハハハハッ、ヒャハハハハッハッ !!」


§


俺がどんな思いでこの瞬間を待ってたと思うんだ?
なぁ、Dr.ヒネラー。
この気持ちは何なんだ?メガブルーだけじゃねぇ。ここにいるやつら、全員殺してやりたいよ。

ネジブルーは心の中でDr.ヒネラーに問いかける。
無論、心の中のDr.ヒネラーは答えない。
ネジブルーはDr.ヒネラーにより生み出された狂気の生命体だった。
メガブルーを敵視し、倒すためにプログラムされた存在。
こうして再び蘇るまで、ネジブルーを殺すという意志は所詮組み込まれたプログラム。
ネジブルーは、ただの操り人形だった。
だがここに来てからは違う。
メガブルーへの復讐。その確固たる意思はネジブルーだけの物だ。
そう、Dr.ヒネラーなどもういない。自分を縛る枷などないのだ。
作戦も、指示も、帰還命令もない。
ネジブルーは悟った。好きなようにやって構わないのだ、と。

「よってたかって、俺の楽しみを邪魔しやがって……」

メガブルー以外の存在に対する憎悪が湧き上がる。
その感情はより率直に、果たして彼の意思に破壊的に働きかける。

549:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:22:07 /Anf5pos0
ネジブルーは己の意志を、すべてに対する憎悪という感情を手に入れた。


§


「邪魔する奴は皆殺しだ!!」

獣じみた咆哮を上げ、ネジブルーが光を放った。
それと同時にティターンの掌から光弾が走り攻撃を相殺する。
「チッ」
憎憎しげに舌打ちを鳴らし、ネジトマホークを構えるネジブルー。
カンマ数秒遅れて変身コードを入力した纏。
威勢と気迫を拳に載せ、クロスした腕を真っ直ぐ突き出し引く、さらに突き出し引き寄せた拳を胸の前で固く合わせ、叫んだ。

「着装!」

その身に纏うは火消しの心意気。
ゴーレッドが着装完了と共に己の信じる正義に敬礼する。

「よし!一気にカタをつけるぜ。ファイブレーザー!スティックモード!!」
大きく踏み込んで間合いを詰めるゴーレッドへ、ネジブルーが突進。
「お前も仮面を割ってやろうか~!?」
ゴーレッドはネジブルーの力強い斧の衝撃を剣で受けるも弾き飛ばされた。
続くティターンが組み手に持ち込もうとするが、スピードではネジブルーが上、軽くかわされ背中に手刀を叩き込まれる。
「グッ!」
「ティターン!」
ティターンへ気を取られたゴーレッドの顔面にネジトマホークが迫る。
上体を屈してかわし、報復とばかりに脇腹を切りつける。

550:名無しより愛をこめて
08/09/15 10:23:31 k605bzNV0
支援

551:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:27:36 /Anf5pos0
ステップを踏むように、数歩後退したネジブルー。
傍らに転がるソニックメガホンを手に取った。
「ヒャハハハハッ!回れ~回れ~」
ゴーレッドとティターンはぐるぐるとコマのように回り出した。
「うわぁぁぁっ!」
「くっ、ぐぁ!」
回りながらもゴーレッドはレスキューロープを手に取る。
「ヤァ!」
ソニックメガホン目掛けレスキューロープを伸ばす。
「無駄だよ~殴り合え!」
届かず。突如、身体は急激にティターン目掛けて突進する。
磁石が引き寄せられるように拳を突き出したお互いの身体がぶつかり合う。
鈍い音と衝撃がゴーレッドの脳を揺らした。
「このままじゃ埒があかねぇ」
その時。
「バウ!」
銀色の弾丸の如く駆けたマーフィーがネジブルー腕に飛びついた。
マーフィーを振り払おうとソニックメガホンを放したネジブルー。
「マーフィーすまねぇ!よし。ファイブレーザー、ガンモード」
ゴーレッドの銃撃に続き、ウラノスとガイアの怒りを手にティターンが追撃する。
ネジブルーは慌てる様子もなく、マーフィーの足を掴む。
「こいつはいい盾になるぜ~」
「何!」
「バャウーーーー!!」

552:名無しより愛をこめて
08/09/15 10:28:25 k605bzNV0
支援

553:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:36:09 k605bzNV0
数発の光弾を受け火花を散らすマーフィー。
咄嗟に駆け寄るティターンへネジブルーは容赦なくネジトマホークを振り下ろした。



§


外では纏とティターンが苦戦しているようだった。
瞬は外が見えない位置に座り、時間が経つのをじっと待っていた。
どっちでもいい。どちらが勝とうが負けようが。
制限があるのは知ってる。
ただそれが時間なのか回数なのかわからない。
相打ちに近い状態になった時、出て行けばいいのだ。
人質もおぼろも、きっと蒼太が手に掛けるのだろう。
それとも手伝わされるのだろうか。
ゾッと恐怖が込み上げる。
自分が救われる代わりに他の人間が死ぬ。
瞬はその時のことを心待ちに出来るほど冷酷ではない。
まだ何もしていないのに、罪悪感で押しつぶされそうだ。

普通におぼろと話している蒼太の神経を正直、疑う。
瞬を見つけ出した時……

蒼太は――



「おっと、なんで逃げるんだい?」
瞬の行く手に男が立ちはだかる。

554:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:36:59 k605bzNV0
掌にじっとり汗が滲む。
「逃げるなんて……俺は」
「そう。逃げる必要は無いんだ。心配はいらないよ。僕の目的は君と同じだからね」
再び男と視線が合う。
「言わなきゃわからないかな?」
自白を強いられるような酷薄な眼が瞬を見つめる。
「俺は生きて帰って、夢を叶えるんだ……」
瞬は思わずそう漏らしていた。
「そのために手段は必要だ。仲間も、ね」
酷く冷たい声で男は言った。スリルを楽しんでいるような声だった。


――こいつが俺の仲間。
どのみち一人でもやろうと思ってたんだ。
そうじゃなきゃ、帰れない。

ふと、おぼろと蒼太の会話が耳に飛び込んでくる。
その話を聞いて瞬は唖然とした。

「蒼太くん。気を付けて」
「おぼろさんも人質と合流したら打ち合わせたビルまで速く逃げてください」
出口へ向かう蒼太に瞬が駆け寄る。
「助けに行くって話が違うじゃないか」
蒼太の胸ぐらを掴む瞬。
「あんた。あほか!」
パン!おぼろが瞬の頬をひっぱたいた。
「……あんたのために、纏さんら必死に戦ってるっちゅうのに」
キッと睨み付けるおぼろを蒼太が片手で制す。
「話が違うって何のことだい。悪いジョークだよね?」
「なっ?!ジョーク?」
瞬は言葉をつまらせる。

555:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:37:45 k605bzNV0
「あぁ、悪いジョークだ。『君は夢を叶えるために生きて帰る』そう言ったけど、その手段が僕たちと違うなら本気で洒落にならないね」
蒼太は笑顔を見せた。だが眼は笑っていない。
「さっきから二人のことを一度も見ようとしないけど、一回よく見てみたらどうかな」
瞬は蒼太に窓辺まで引っ張られた。
それでも目を背ける瞬に、蒼太は溜息混じりで言った。
「君の願いは『最後の一人になって夢を叶える』か。
42人の屍と、その家族や仲間、悲しみで心を失った人たちの上でみる夢。そんな夢が本当にいいものだと思うかい?」
蒼太はそう言って部屋を出て行った。おぼろも後に続いた。

一人になって、初めて瞬は纏とティターンを見た。
ネジブルーの声と纏の怒声が瞬の耳を打った。

『馬鹿な奴らだ。メガブルー一人渡せば命を落とさずにすんだのにね』

『黙れ、たとえ、たった一つの命でも守らなきゃいけねぇ。
その未来を守るのが俺の責任なんだ。俺は絶対あきらめねぇ!!!』

次の瞬間、瞬は走り出していた。


「待ってください。……さっきのは悪いジョーク、です」
階段を降りる蒼太とおぼろに追いつくことが出来た。
おぼろは頷いてくれたが、蒼太は聞こえていないように瞬を無視して階段を駆け下りる。
瞬もそれに続く。
瞬の方針は決まった。
それをわかってもらいたかった。
「でも、夢は叶える。生きて返って、必ず……。

556:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:38:24 /Anf5pos0
数発の光弾を受け火花を散らすマーフィー。
咄嗟に駆け寄るティターンへ、ネジブルーは容赦なくネジトマホークを振り下ろした。



§


外では纏とティターンが苦戦しているようだった。
瞬は外が見えない位置に座り、時間が経つのをじっと待っていた。
どっちでもいい。どちらが勝とうが負けようが。
制限があるのは知ってる。
ただそれが時間なのか回数なのかわからない。
相打ちに近い状態になった時、出て行けばいいのだ。

ゾッと恐怖が込み上げる。
自分が救われる代わりに他の人間が死ぬ。
瞬はその時のことを心待ちに出来るほど冷酷ではない。
まだ何もしていないのに、罪悪感で押しつぶされそうだ。

普通におぼろと話している蒼太の神経を正直、疑う。
瞬を見つけ出した時……

蒼太は――



「おっと、なんで逃げるんだい?」
瞬の行く手に男が立ちはだかる。
掌にじっとり汗が滲む。
「逃げるなんて……俺は」

557:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:38:32 k605bzNV0
CGデザイナーになったら、個展の招待状は最上さんとおぼろさん、それとあの二人にも送ります」
振り返った蒼太が笑顔で頷く。蒼太の笑った顔を初めて見た気がした。
「オッケー。じゃ行こうか」
「はい」
返事をしたものの、瞬は考える。
ここで二人で飛び出すのが最善なのかと。
「いや、最上さんたちはもう少しここで待っていてください。俺達には制限がある。それが時間制限だとしたら少しでも戦力は温存しておいた方がいい」
ヒューゥ、蒼太が口笛を鳴らした。
「いい読みだね。CGデザイナーなんて辞めて卒業したらボウケンジャーに入らない?」
照れながら、低調に返した。
「遠慮しときます」
瞬は纏とティターンの元へ駆け出した。


愛情とか友情とか、夢の前なら後回しで構わないと思ってた。
ホントはそう言うの嫌いじゃないしな。
誰かを犠牲にして叶える夢なんて、俺の夢じゃない。
夢はあきらめさえしなきゃ叶えられるんだから。


「インストール、メガレンジャー!」

―3・3・5・Enter―

デジタイザーが輝き、粒子となった光が瞬の身体を廻る。

「あの刃のねじれ具合、もしかしてネジレシアか?トマホークスナイパー!!」
狙いは肩、マーフィーを盾に出来ない位置に銃弾を撃ち込む。
「メガブルゥ~。やっと来たね!」

558:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:39:17 k605bzNV0
待っていたかのようにネジトマホークを振るい銃弾を薙ぎ払う。
ゴーレッドは銃撃で応戦しながらメガブルーに顔を向ける。
「瞬、何できたんだ!ここは俺が……」
「わかったんです。俺、戦う責任も、あきらめないって意味も。でも話は後で。今は戦いに集中してください!」
「そうだな。後でゆっくり聞かせてもらうぜ!」
トマホークスナイパーとファイブレーザーの連射。
一方的な銃撃にネジブルーは防御に徹し、攻撃を繰り出せない状態に追い込む。
「ティターン!任せたぜ!!」
ゴーレッドが叫ぶ。
ティターンが天に向け高く伸ばした掌より出現した淡い光は、瞬く間に巨大な光源と化した。
ネジブルーへ向け光源を撃ち放つティターン。
轟く雷鳴が耳を劈き、逆巻く散光はネジブルーを焼き尽くしたかに思えた。
「遅いよ~」
爆風にのって、嘲笑を浮かべたネジブルーが飛び出した瞬間。
「今だ!」
ティターンが大きく両手を広げた。
「おう!」「はい!」
メガブルーが右、ゴーレッドが左から、ティターンの肩を踏台に跳ね上がる。
「シュート!」
空中でクロスし、前面に躍り出たゴーレッドが放つエネルギー光弾が、流星の如くネジブルーへ降り注ぐ。
メガブルーは数発くらい後退しながらも、ネジトマホークを縦横に振るい光弾を裁く。
そこへ後方から大きく一回転し反動を付けたメガブルーがネジブルーへ迫る。
「メガトマホーク!」
メガトマホークの鋭い刃がメガブルーの右肩を切り裂く。
そのまま左方へ回転し、次の一撃を横腹に打ち込む。
「遅いのはネジブルーお前だぜ!」

559:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:39:56 /Anf5pos0
   

560:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:40:04 k605bzNV0
わざと冷静な声で嘲笑を浴びせ、勝ち誇ったように高く跳躍する。
ネジブルーは悔しさに身を震わせ、右腕をメガブルーに向け吼えた。
「メガブルゥゥッ!!」
咆哮と共に放った青い光弾がメガブルーを追う。
冷静になれ。
メガブルーは光弾から眼を逸らさない。
そうだ。冷静になれば避けられないスピードじゃない!
着弾の寸前、空中で身を翻し体に回転させながら避けた。
頬を掠めた光弾が空しく中に散った。
「これで終わりだ!トマホークハリケーン!!」
そのまま降下のスピードと遠心力で破壊力を増した渾身の連撃を放つ。
その時、上空か稲光のような黄金の光が走った。

―ガキンッ!

ぶつかり合う金属音。
「ウァァァッ!!!」
一瞬の拮抗。弾かれたのはメガブルーだった。
上空より投擲された一振りの黄金の剣がメガブルーを止めた。
その剣を放ったのは……。

「楽しそうね~。ワタシも仲間に入っちゃおうかな♪」
ネジブルーに微笑みかけたのはコギャル風の怪人。
「助けてくれたのかい?」
「べつに~ワタシは何とかブルーに用があるだけよ」
「へぇ~気が合うねぇ」
「さぁ~どうかしら?」
ネジブルーをはぐらかすような言葉の後、コギャル風の怪人はぴょこんとゴーレッド達の方へ向きを変えた。

「せーの、どっか~ん!!」

561:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:40:57 k605bzNV0
ピンク色の閃光がの足下へ走る。
ゴーレッド達は爆風と轟音に包まれた。


§


フラビージョの姿を認めた蒼太はフォローに回るべく動いた。

爆風の中、眼を凝らす。
フラビージョが黄金の刀を振り上げメガブルーへ駆け寄っていた。
「間に合ってくれ!」
ダッシュで距離を詰める。
「た~め~し~ぎ~り~!!」
フラビージョの前に立ちはだかる蒼太。
振り下ろされた黄金の刀をアクセルラーのタービンで受け止めた。

「レディ、ボウケンジャー!」

そのまま下から突き上げるようにタービンを滑らせ刀を弾き返す。
迸る火花と高まるタービンの回転音。
今、蒼太の胸を打つのは冒険に対する期待ではなく、悪を排除する決意。
不適な笑みを浮かべ蒼太は叫ぶ。

「スタートアップ!!」

目も眩む光が蒼太を包み、瞬時にブルーのアクセルスーツへと姿を変える。
黄金の刀を弾き返されふらふらとよろけるフラビージョ。
「言ったよね?女の子がそんなもの振り回してたらダメだって」
ボウケンブルーはパンッと手を叩きステップを踏むように間合いを取った。
「女性相手にこういう事やりたくないだけど、ごめんね」

562:Chance or Death ◇MGy4jd.pxY 代理
08/09/15 10:41:43 k605bzNV0
右腕を後方へ退き、力強く突き出す。
拳に装着したブロウナックルから、旋風が渦を巻きフラビージョの体を舞い上げた。
「いやーん!って、そ~んな簡単にやられるフラビージョ様じゃないわよ♪」
フラビージョは蜂のように白い4枚の羽を高速で羽ばたかせ空中で止まった。
小刻みに羽音を鳴らしながら、ボウケンブルーを標的にシュシュッと高速で針を吐き出す。
「なかなかやるね」
蒼太は回転しながらブロウナックルを地へ向け出力を前回にする。
同じ高さに舞い上がる。
「なにそれ~。飛べるなんて聞いてな~い」
「サバイブレード!」
ボウケンブルーはサバイブレードで袈裟懸けに斬りつける。
「ぎゃ~~」
フラビージョはくるんくるんと二回転回り墜落。
そのすぐ横にはゴーレッド、メガブルー、ティターンと対峙するネジブルーがいた。


§


ゴーレッドの耳におぼろからの声が届く。
「こっちは大丈夫やで~。人質は無事やで!」
瞬が立っていたビルの上から聞こえるその声にゴーレッドは安堵した。

敵はすでに追いつめた。
ネジブルーとフラビージョはタワーを背に隣合わせで4人と対峙する。
時折言葉を交わしているのは最後の悪あがきだろう。
ゴーレッド、メガブルー、ティターン、ボウケンブルーの配置で囲んだ包囲網を少しずつ狭めていく。
メガブルーが前へ進みゴーレッドと並んだ。

たった数時間でいっぱしの戦士になったな。

563:名無しより愛をこめて
08/09/15 10:44:05 UVqGj+aWO
支援

564:名無しより愛をこめて
08/09/15 10:48:33 UVqGj+aWO



565:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:52:06 /Anf5pos0
メガブルーの姿をゴーレッドは誇りに思った。

「あきらめた方が良いぜ」
「ヒャハハハハハハッ、ヒャハハハハッ!」
ネジブルーが笑い出した。そしてネジブルーを抱えたフラビージョが高く高く跳躍した。
「ふざけんな、飛んだからって逃げられるとでも思ってんのか!」
メガブルーが叫ぶ。
「楽しいよ~。またお前らとやりあえるんだ。ヒャハハハハハハッ!全員は死なないでくれよ~」
笑いながら上昇を続ける二人に、4人がそれぞれの武器を構えた。
嫌な胸騒ぎがする。
ゴーレッドは辺りを注意深く見渡す。
アンチハザードスーツが警告を発した。
タワーの中に燻る微かな煙を発見したのだ。

ごく小さな火種が一本の道を辿るように、ぱちぱちと燃えている。
心臓が揺さぶられたように大きく鼓動した。
おそらくこれは、時限発火装置。

「逃げろ!」

素早く声に反応したのはボウケンブルー。
最高方にいたこともあっておぼろ達の方へいったはずだ。
ティターンは、マーフィーをそのままにしておけないのだろう。
入り口の近くのマーフィーも元へ。
この時、メガブルーはまだネジブルーに狙いを定めていた。

―― カッッ!!!!!!!!!

タワーの窓ガラスが真っ赤な閃光に染まった。

566:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:55:02 /Anf5pos0
一瞬、圧縮される空気。タワーの表面が軋むような音を鳴らした。

この威力、テルミット弾だ。
「瞬!」
上空を見上げるメガブルーにゴーレッドが手を伸ばした。

メガブルーを引き寄せ、ティターンを見遣る。周囲に淡い光の壁が見える。
ゴーレッドは安堵した。

―― パアァーーーン!!!!!!!

膨張した空気がタワーの何百枚とのいうガラスを砕く。

―― ゴォォォォォゥー!!!!!!!

爆音と共に灼熱に解けた鉄骨と、火球と化したコンクリートブロックが降り注ぐ。

「ウオォォォォォッッッーーーーー!」

ゴーレッドはファイブレーザーを力の限り振り回す。
ナイフのようなガラス片を粉砕し、鉄骨を弾き、コンクリートブロックを打ち砕く。
凄まじい風圧にも揺るがず、メガブルーの盾となり数年に匹敵する数十秒を耐えた。


§

瞬はその後ろ姿を一生忘れ無いだろうと思った。

567:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 10:57:16 /Anf5pos0
自分の命を、夢を守った男の背中だ。

「はぁーーー。さすがにキツかったぜ」
纏は放心状態で仁王立ちしたままだった。
「俺なんていっていいか。本当にありがとうございました」
瞬は深々と頭を下げる。
夢×命×未来の恩人だ。いくら下げても足りないぐらいだ。
「敬語なんて……やめろよ」
声の変化に気付き、瞬は顔を上げた。
「俺達…もう仲間だ…ろ……」
ガクンと纏の膝が折れ、そのまま地に倒れ込んだ。
「纏さん?!」
抱き起こした瞬の目に飛び込んで来たのは、纏の腹部に深く突き刺さった鉄骨の破片。
人質だった者を連れて帰ってきたおぼろが息を呑む。
蒼太とティターンも駆け寄る。
皆を止めるように、纏が口を開いた。
「心配すんな。こんなの……たいしたことない」
力なく言い、鉄骨を引き抜こうとした。
滲み出る血液で手が滑って、引き抜こうとするたび纏の口から血が溢れ出る。
瞬は纏の手を握り叫んだ。
「誰か、薬!なんでもいい!!この傷、どうすりゃいい」
助けを求め皆を見回す。
蒼太もティターンもおぼろも、悲痛な表情でただ纏を見つめている。
纏は大きく息を吐き出し、言葉を紡ぐ。
「瞬……朝メシ…まだだろ?俺のデイバックの中の……カレーパン、あれお前に……やるよ。他にも……何か……使えそうなら……お前が使えよ……」

568:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 11:01:25 /Anf5pos0
「何縁起でもないこと言ってんだよ!それに、朝からカレーパンなんていらねーよ」
「ははっ……それもそうだな。じゃ…後で……俺が作ってやる……」
瞬は黙って頷いた。
ゴボッ、纏の喉元が鳴った。
身体の中に溢れた血が、喉元まで上がって来ているのだ。
纏の瞼がゆっくりと閉じられていく。
「纏さん!纏さん!!」
瞬の声に薄く纏の瞼が開いた。
蒼太が瞬の肩にそっと手を掛け、首を横に振る。
それを見た瞬の視界が滲む。
瞬は涙が零れないように、声が震えないように、でも纏から視線を逸らさずに少し上を向いた。
「なんだよ……少し眠…らせろ……よ。瞬…お前のせいで………、俺…は……ろくに…寝て……ないんだ……」
「わかった。ゆっくり……」
眠ってください。最後の言葉が出てこなかった。
それを言ってしまったら終わる。瞬は奥歯を噛締め言葉を発せられずにいる。
ふっと纏は瞬の手を離し、力無く握った拳で、瞬の額を優しくトンと叩いた。
不覚にも涙が零れた。
「眠るがいい……」
ティターンが静かに瞬の言葉を引き継いだ。
マトイはその場を見渡し、ふっと微笑むと静かに眼を閉じた。
瞬の腕の中でマトイの力が少しずつ少しずつ抜けて行く。
まだ体は温かいのに、肌は色を失っていないのに、一秒前と何も変わらないのに……
纏はもう二度と目覚める事はないのだ。
マーフィーが淋しげに遠吠えする。
「纏…さん!!」
瞬の瞳から積を切ったような涙が溢れ出た。嗚咽を洩らしながら、瞬は小さな子供のように泣いた。


【巽纏 死亡】  残り33人

569:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 11:02:13 /Anf5pos0
【名前】冥王ジルフィーザ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:第1話前
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:健康。2時間能力発揮できません
[装備]:杖
[道具]:支給品一式(個別支給品は確認済)
[思考]
基本行動方針:ドロップを探し、ロンを殺す。
第一行動方針:ドロップの救出と、F-7エリアでドロップとティターン待つ。
備考:首輪の制限があることに気が付きました。

【名前】冥府神ティターン@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:Stage46(ン・マの依り代にされた)後
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:全身打撲。火傷。2時間能力発揮できません。
[装備]:ウラノスとガイアの怒り、黒装束(虹の反物@轟轟戦隊ボウケンジャー)
[道具]:マーフィーK-9@特捜戦隊デカレンジャー、支給品一式
[思考]
基本行動方針:命を守る
第一行動方針:ジルフィーザと合流する。
第二行動方針:スフィンクスを捜す。
備考:ティターンは虹の反物の特別な能力に気付いていません。首輪の制限があることに気が付きました。
   :纏からタイムレンジャー、サイマの情報を得ました。

570:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 11:04:17 /Anf5pos0
【名前】マーフィーK-9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:銃弾によりかなり破損しています。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:???
第一行動方針:ティターンと行動する。
第二行動方針:知り合いを探す。

【名前】並樹瞬@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第2話後
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:全身打撲火傷、応急処置済。2時間メガブルーに変身できません。
[装備]:デジタイザー。
[道具]:支給品一式(個別支給品は確認済)纏のデイバック
[思考]
基本行動方針:元の世界に戻って、夢を叶える
第一行動方針:纏の死に深い悲しみ。
備考:瞬はマトイから、×ドロップ、△冥王ジルフィーザ、○浅見竜也、○シオン、○ドモンの情報を得ました。
 変身制限があることを知りました。


571:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 11:10:40 /Anf5pos0
【名前】ネジブルー@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:41話(ネジビザールとして敗れた)後
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:全身に打撲、傷有り。2時間能力発揮出来ません。
[装備]:ネジトマホーク
[道具]:ソニックメガホン@忍風戦隊ハリケンジャー、闇のヤイバの忍者刀@轟轟戦隊ボウケンジャー (マシンはスキーの鍵は美希が持っています)
[道具]:支給品一式×2、詳細付名簿、スフィンクスの首輪、拡声器
[思考]
第一行動方針:メガブルーを殺す。 邪魔なヤツも殺す。
第二行動方針:フラビージョと逃げる。

【名前】ドロップ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:26話、サラマンデス覚醒前
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:健康、精神的に少し不安定。
[装備]:不明
[道具]:メメの鏡の破片、
[思考]
第一行動方針:不明

572:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 11:13:50 /Anf5pos0
【名前】真咲美希@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:物語中盤
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:健康
[装備]:マシンハスキー@特捜戦隊デカレンジャー(鍵のみ、タワーの損壊で壊れている可能性があります。ネジブルーの物とすり替えました)
[道具]:支給品一式×2、詳細付名簿、スフィンクスの首輪、
[思考]
基本方針:なつめを救うために勝ち残る 。
第一行動方針:利用できる者は利用する、そうでない者は殺す。

【フラビージョ@忍風戦隊ハリケンジャー】
[時間軸]:巻之十九、チューズーボ死後
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:打撲。能力発揮中。
[装備]:槍@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:聖剣ズバーン@轟轟戦隊ボウケンジャー、クロノチェンジャー@未来戦隊タイムレンジャー、支給品一式。
[思考]
基本行動方針:楽しそうなので戦いに乗った
第一行動方針:ネジブルーと逃げる。
第二行動方針:青いジャケットの優男(蒼太)と日向おぼろにはその内、復讐


573:代理投下感謝 ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 11:17:20 /Anf5pos0
【日向おぼろ@忍風戦隊ハリケンジャー】
[時間軸]:巻之三十、後
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:全身に軽い火傷、打撲。応急処置済み
[装備]:イカヅチ丸@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:蒼太と共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第二行動方針:首輪を何とかする
※首輪の制限に気が付きました。

【最上蒼太@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.3、後
[現在地]:F-5都市 1日目 早朝
[状態]:良好。2時間ボウケンブルーに変身できません。
[装備]:アクセルラー@轟轟戦隊ボウケンジャー、スコープショット@轟轟戦隊ボウケンジャー、バリサンダー@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:ヒュプノピアス@未来戦隊タイムレンジャー、スタッグブレイカー@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:おぼろと共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第二行動方針:おぼろを守る
※首輪の制限に気が付きました。

備考:冥王ジルフィーザ、巽マトイ、並樹瞬のいずれかの支給品にバイオ次元虫入りカプセルが含まれています。
   :F-5エリアタワーはテルミット弾により損壊しています。(倒壊の恐れ有り)

574:Chance or Death ◆MGy4jd.pxY
08/09/15 11:20:05 /Anf5pos0
代理投下感謝 !
以上です。誤字脱字、指摘、矛盾、感想等よろしくお願いいたします。

したらばの感想をくれた方もありがとうございました。

名前:名無し?ちょっとした冒険だな 投稿日: 2008/09/15(月) 02:35:42
纏兄さぁぁぁぁぁん!!!!!
超GJです!
思いを貫いて死んでいった纏兄さんが熱かった!
纏兄さん安らかに眠れ。
そして、きっと纏兄さんの思いを継いでくれ、いや、今の君ならきっと継げると信じてる、ガンバレ!瞬。
静かに熱い蒼太さんもかっこよかったです。
一言も嘘をつかずに瞬に誤解させるくだりは、あまりに彼らしいと感じました。さすが元スパイw
熱く、切ない良作でした。改めてGJを送らせて頂きたい。GJです!


携帯故、代理投下出来ずに申し訳ないです。
規制であちらに書き込めなかったので、先にこちらに。


575:名無しより愛をこめて
08/09/15 22:44:46 YaVpBph+0
GJ!
凄まじいバトルの末に倒れたマトイ。
死の瞬間まで熱いその姿が果たして残った皆にどんな影響を与えるのか?
しかし、瞬は改心の兆しが見えるものの、他のマーダーの方々はまだまだ好調。
事態が好転することはあるのでしょうか?
ジル兄さんのドロップとのニアミスするあたりも面白かったです。ここら辺が何かの伏線になったりするのかな?
感想はつきませんが、もう一度、GJ!

576: ◆i1BeVxv./w
08/09/15 23:39:44 YaVpBph+0
これより投下いたします。

577:Water Trap ◆i1BeVxv./w
08/09/15 23:40:32 YaVpBph+0
―コンコン
「アンキロベイルス!」
「入ってないキロ」
―コンコン
「アンキロベイルス!」
「入ってないキロ」
 菜摘は洞窟の中、アンキロベイルスを探すべく、無数に点在する岩のひとつひとつを調べていた。
 探す方法は単純だ。菜摘の予想では、アンキロベイルスは岩の中に囚われている。
 ひとつひとつ岩を叩いていけば、いずれアンキロベイルスが囚われている岩が見つかる。
 そう考えていた。
「ふう、おかしいわね。もうほとんどの岩は調べたのに」
 だが、話はそう甘くはなかった。探し初めてから30分程度の時が流れたが、依然、アンキロベイルスは見つからない。
 気づけば、足元を濡らす程度だった水位は、菜摘の膝の上にまで上がってきていた。
「ねぇ、アンキロベイルス、何か他に手がかりはないかしら」
 藁にもすがる思いで菜摘はアンキロベイルスから情報を得ようとする。
「そんなこと言われても、何もわからないキロ。菜摘が探しているような音は聞こえるけど、相変わらず何も見えないし」
「なら、どこから聞こえてくるかだけでもいいの。せめて方向さえわかれば」
「方向もなにも、ずっと一方向からしか聞こえてこないキロ」
「……一方向?」
「?、どうしたキロか、菜摘」
 捜索はそれなりに広範囲に及んだ。岩内部で反響しているのかと、あえて離れたところを探しもした。それなのに、方向が変わらないということはありえない。
「アンキロベイルス、聞こえてくる方向って、上?」
「違うキロ。聞こえてくるのは後ろからキロ」
「そう、後ろから。じゃあ、声の大きさはどうかしら?変わったりしたんじゃない?」
「それは変わったキロ。それがどうかしたキロ」
 聞こえてくる方向が上なら、地下という可能性もあったが、違うというなら。考えられることはただひとつ。
「もしかして」
 菜摘は再度、岩の調査を始める。ただし、今度は人間サイズが隠れられそうもない小さな岩ばかりを選んで探る。
 程なくして、菜摘は目的のものを見つけた。
「……あったわ」

578:Water Trap ◆i1BeVxv./w
08/09/15 23:41:50 YaVpBph+0
「何を見つけたキロ?」
 菜摘の目の前には赤色の3つのボタンが付いた銀色のブレスレットが置かれていた。
「やられたわ、私たち、ロンにはめられたみたいね。アンキロベイルス、今ははっきりと私の声が聞こえない?」
「そういえば」
「アンキロベイルス、あなたが聞こえていたのは通信機を通した私の声よ。どういうつもりか知らないけど、よっぽど私とあなたを会わせたくないみたいね」
 おそらくアンキロベイルスの後ろには菜摘が見つけたものと同じ通信機があるのだろう。
 それなら、一方向から聞こえるのも頷ける。
「菜摘に会えないでがっかりキロ」
「まあそう言わない。匂いまでは誤魔化せないでしょうから、海の近くということは確かだと思うわ。とりあえず、これは回収しておこうかしら。
 これがあれば、ダイノコマンダーがなくても、会話できるはずだろうし」
 菜摘は通信機に手を伸ばし、それを持ち上げた。

―カチリ

「なに、今の音」
「な、なんか嫌な音が聞こえてくるキロ」
 アンキロベイルスの言葉通り、鳴り響く地鳴り。それと同時に大地が震えた。
「きゃっ」
 バランスを崩し、足を滑らせる菜摘。水飛沫を上げ、水中へと沈む。
 急いで、体制を整えようとするが、揺れる地面に加え、いつの間にか発生した水流により、上手く立ち上がることができない。
「どうしたキロ、どうしたキロ、菜摘!」
 通信機から菜摘を心配する声が響く。
(アンキロベイルス……)
 その声に冷静さを取り戻した菜摘は水の流れに逆らうことを止め、その身を任した。そうすれば、やがて壁に当たり、身を立て直すチャンスを得られると考えたのだ。
 その予想通り、菜摘の身体は壁へと叩きつけられる。痛みに耐え、菜摘はその壁に沿い、立ち上がろうと上を目指した。だが、一向に水面に浮かぶことができない。
 菜摘は気づいていなかったが、鳴り響いた地鳴りはこの洞窟が沈み行く音だった。
 当然、水位は急速に上がり、既に菜摘が空気を得られる場所は失われていた。

579:Water Trap ◆i1BeVxv./w
08/09/15 23:42:47 YaVpBph+0
 意識が朦朧とし始める中、菜摘は最後の手段とばかりに、懐からアクセルキーを取り出す。そして、左手首に着けられたアクセルブレスに差し込もうとする。
(激走……アクセル……チェ)
 だが、それは叶わなかった。水に流された岩の欠片が菜摘を狙ったかのように襲い掛かる。
「ゴボッ」
 いくつかの欠片のうち、一際大きな欠片が菜摘の鳩尾へと当たった。わずかに残った空気の全てが菜摘の肺から無理矢理吐き出される。
 苦しい中、力を振り絞り、もう一度、アクセルキーをアクセルブレスに挿そうとするが、いつの間にか、アクセルキーは菜摘の手元から消えていた。
 どうやら、今の衝撃で離してしまったようだ。
(こ、ここまでなの)

―皆さんおはようございます。―

水の中だというのに、やけにはっきりと聞こえる声。
菜摘の意識は告げられる定期放送を最後まで聞くことなく、闇へと沈んでいった。



「菜摘~、起きるキロ、菜摘~」
 自分を呼ぶ声が聞こえる。この声は今日何度も聞いた。
「菜摘~、しっかりするキロ」
 声変わり前の男の子のような声。最初は少年がこの殺し合いの場にいるのかと思ったが、壬琴によれば、恐竜のアンキロサウルスに似ているらしい。
「起きないと、このまま放ってどこか行っちゃうキロよ」
 少し口は悪いが、中々に気が合いそうだ。菜摘は殺し合いの最中だというのに、新たな友人に会えることが楽しみで仕方なかった。
「菜摘~、菜摘~!」
「あ、アンキロベイルス、泣かないで」
「菜摘!」
 思わず搾り出した声に反応が返ってくる。
(夢じゃない。私、死んだんじゃなかったんだ)
菜摘はゆっくりと眼を開ける。
そこには心配そうにこちらを見遣るオレンジ色をした巨大生物がいた。
「やっと、やっと会えたキロ」

580:Water Trap ◆i1BeVxv./w
08/09/15 23:43:36 YaVpBph+0
「君が、アンキロベイルスなんだ」
「そうキロ、お前が菜摘キロ」
「ええ、そうよ」
 しばし、菜摘とアンキロベイルスとの間に心地よい沈黙が流れた。
 やがて、アンキロベイルスが口を開いた。
「良かったキロ、最後に菜摘に会えて」
「えっ」
 アンキロベイルスの巨体が大地へと倒れこむ。
「アンキロベイルス!」
 菜摘は急ぎ身を起こすと、アンキロベイルスに駆け寄る。多少、眩暈がしたが、そんなことに構っている暇はない。
「一体、どうしたっていうのアンキロベイルス。そういえば、あなた人間ぐらいの大きさだったはずじゃ」
 今のアンキロベイルスはざっと10mはある。おそらく本来のアンキロベイルスの大きさなのだろうが、話によると人間くらいの大きさだったはずだ。
「菜摘の……悲鳴が聞こえたと思ったら、途端に金色の首輪も…外れたキロ。元の大きさに戻ったら、沈みかけている島が見え……たから、きっとそこに菜摘がいると思って……駆けつけたキロ。へへっ、大当たりだったキロ」
 息も絶え絶えに事の顛末を説明するアンキロベイルス。
「でも、おかしいキロ。外れた途端、身体から力が抜けていってるキロ。もう………限界キロ」
「アンキロベイルス!」
「最後に、菜摘に会えてよかったキロ。……菜摘………ロンに負けるなキロ……」
 アンキロベイルスの眼がゆっくりと閉じられる。
 菜摘は何度も何度もアンキロベイルスの名を呼んだ。
 だが、もう二度と、アンキロベイルスが返事をすることはなかった。



 一頻り、涙を流した後、菜摘は立ち上がった。


581:Water Trap ◆i1BeVxv./w
08/09/15 23:44:39 YaVpBph+0
(たぶん、あの仕掛けはアンキロベイルスの首輪に連動していたのね。そして、この首輪を外すことは死に直結する)
 何とも恐ろしい仕掛けだ。ロンに逆らえば、この首輪で殺され、首輪をなんとか外したとしても、いずれ死が訪れる。
 生きて帰りたければ、ロンを信じ、最後の一人になるしかない。
(でも、そんなのごめんだわ)
 アンキロベイルスを殺したのは自分だ。
 自分がもうちょっと注意を払い、仕掛けに気付いていれば、こんなことにはならなかった。
 だからこそ、最後のアンキロベイルスの言葉を裏切るような真似はしたくない。
(負けないわよ、ロン)
 菜摘は静かな怒りを胸に、壬琴たちと合流するべく、道を歩き出した。

【アンキロベイルス 死亡】


【名前】志乃原菜摘@激走戦隊カーレンジャー
[時間軸]:最終回終了後
[現在地]:J-7海岸 1日目 朝
[状態]:軽い打撲
[装備]:アクセルブレス(アクセルキー紛失)
[道具]:ダイノコマンダー@爆竜戦隊アバレンジャー、クロノチェンジャー@未来戦隊タイムレンジャー、キーボーン@特捜戦隊デカレンジャー、ゲキファン@獣拳戦隊ゲキレンジャー、基本支給品一式
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。仲間を集めて状況を打開したい。 ロンに負けない。
第一行動方針:仲代、映士と合流。
第二行動方針:仲間(陣内恭介・シグナルマン)を探す。
備考:ダイノハープがないため、アバレブラックへの変身はできません。また、菜摘が変身できるほどのダイノガッツがあるかは不明です。
 アクセルキーは水中に沈んでいます。


582:Water Trap ◆i1BeVxv./w
08/09/15 23:45:27 YaVpBph+0
投下終了。
ご意見、指摘事項、矛盾点、感想などがあれば、お願いします。

583:名無しより愛をこめて
08/09/16 04:56:01 5ukEjuR5O
おぅorz
アンキロベイルス、イイヤツだったのに……。
最初は菜摘死亡かと思いましたが、アンキロベイルスがいってしまうとは!

菜摘は首輪解析の鍵になりそうですね。
しかし話のまとめかたが本当に上手い。さすがまとめ氏!
GJ!

584:名無しより愛をこめて
08/09/16 05:03:07 5ukEjuR5O
そしてまとめ更新ありがとうごさいます。

585:名無しより愛をこめて
08/09/16 17:15:53 fxTUiAWs0
またしても、ロンの策略によって悲劇が……
菜摘とアンキロベイルスの僅かな邂逅に和んだ分、すぐにやってきた別れには胸が痛みました。
変身手段を失った一方、首輪の持つもう一つの特性にきづいた菜摘がこれからどうなるのか、無事に合流を果たす事ができるのか、
今後の展開が楽しみです。
GJ!でした。

586:死者スレより愛をこめて@深雪さん
08/09/17 18:27:36 NEikg9H+O
「私たち家族は、幾多の苦難を勇気で乗り越えてきた。だから今度も、きっと……」

それに今は、書き手が命がけでSSを書いていてくれる。
書き手が勇気を示したのだ。

「このスレを落とすわけにはいかないわ!」

いつだってスレはそれに答えてくれる。
「保守!!」


587:名無しより愛をこめて
08/09/17 21:35:13 4Zw0PkZj0
書き手さ~ん……どこいっちゃったのぉ……
僕……保守……できるようになったよ……
1……2……3……保守。

588:名無しより愛をこめて
08/09/18 21:32:45 HY4pTvK3O
マトイ兄……、アンキロ……、両氏ともGJ!

そういえば男性の参加者が死ぬの久しぶりだな

589:第???話:死者スレは何処だ?!
08/09/19 18:53:35 +X9BcNsgO
「スレの保守はロワの未来!
どんな保守も厭わない!
ロワの平和を心に誓う!!
燃えるレス……ゲフン、ゲフン。さて、行くか」
 

590:暁【あかつき】の決意◇8ttRQi9eks代理投下
08/09/20 23:18:54 /YcAGlmW0
「約十分で変身が強制解除。アクセルラーの機能が完全に凍結されているな…やはり能力の発揮に制限が加えられていたか…」
明石暁は生身に還元された状態でディスプレイ画面を沈黙させるアクセルラーと向き合っていた。
「まぁ、ネオパラレルエンジンの換装が済んでいるだけマシだと言うべきか…」
アクセルテクターからわざわざサラマンダーの鱗を抜き取るような陰湿な奴だ。
あるいは、とアクセルラーの状態を確認したが流石にそこまで手は加えられていないようだ。
だが自分のアクセルラーは無事でも他のメンバーがそうだとは限らない。
「一刻も早く合流しないとな…」
その時だった。
龍が残酷な真実を告げたのは―


「真墨…!」
きつく握った拳が怒りとも悲しみとも取れぬ感情にわなわなと揺れる。
「俺は…また……守れなかった……」
マサキとキョウコ。
炎に包まれる彼らの姿を暁は一生忘れることはないだろう。
彼らを喪った後、恩人の牧野に請われてSGS財団が立ち上げる新たな探索チームのチーフとなった。
もう二度と戻るまいと思った道。もう二度と持つまいと思った仲間を彼は得た。
さくらと蒼太。
彼ら二人が加わり、チームがなんとか起ちあがった時、彼は決意したのだ。
二度と仲間を死なせない、と。
その決意は潰えてしまった。

「嗤え…ロン。俺はこの場の全員を殺してでも、お前の誘いに乗ってしまいそうだ…」

591:暁【あかつき】の決意◇8ttRQi9eks代理投下
08/09/20 23:19:40 /YcAGlmW0
自嘲の暗い笑みが唇を歪める。絶望の二文字が心を覆っていく。
…―チーフの責任ではありません―…
さくらが傍にいればまず間違いなくそういって慰めただろう。だが、暁は自分で自分を許せなかった。
「…いいだろう、俺は、殺し合いに乗ってやる……仲間を生き返らせるためにな…!
…邪魔をする奴は誰だろうと容赦はしない…!!」
この惨劇の舞台で人が戦うのは相手ではない。自分の心だ。
自分自身の闇に飲まれたとき、人は堕ちて行くのだろう―
ロンの狙いは全てそこに集約されている。
人は迷う。人は間違う。人は恐怖する。惨めで、弱くて、ちっぽけな存在だ。

だが、常にそうであるとは限らない。

時として人は恐怖を凌駕し、それを征服する。
「だが、ロン、覚えておけ! 俺はあくまでボウケンレッド! 熱き冒険者だ!! ボウケンジャーとして、お前の仕掛けたこの馬鹿げたゲームを終わらせてやる!!!」
殺し合いには乗る。だが、人は殺さない。
ひどく矛盾した、それでいて傲慢な理屈だ。
それは方法こそ違え、思考はこの世界の王たるロンと重なる。ロンの卑劣な罠にも彼の心は傷つきこそすれ、折れはしない。


592:暁【あかつき】の決意◇8ttRQi9eks代理投下
08/09/20 23:20:29 /YcAGlmW0
人は迷う。人は間違う。だが、人は光を目指す。
彼は既に一介のトレジャーハンターではない。
今の彼に悲しみに浸る暇はない。かつて、友を救えず冒険に背を向けた男はもういない。
二人の仲間が紅蓮に包まれたとき、『不滅の牙』は死んだのだ。
今ここにいるのは、さくらが慕い、真墨が目指した高みの男。
誰よりも熱く、高く、深く、強く、迅く―
ボウケンジャーのチーフ、熱き冒険者ボウケンレッドだ。
彼の心を折ることは、悪辣な龍にもできはしない。
そして、決して力に屈しない人の心に龍は誰よりも深い恐怖を抱いていた。
彼は、人の心に一度負けているのだから。

一旦は暴風に荒れ狂った心も今は冷静に今の状況を分析していた。
既にゲームが始まって6時間。真墨を含む8名の面々が命を落としている。
だが、暁はその死についてある疑念を持っていた。
真墨の死を目の当たりにして衝撃を受けはしたが、その疑問がゆえに彼の死を完全に鵜呑みにすることはなかった。
明石が先ほどまで行動を共にしていたヒカルことマジシャインは自分の知る彼ではなく、それ以前の時間から連れてこられた過去のヒカルだった。
このゲームの参加者は異なる時間軸から選抜されたメンバーで構成されている。
それは恐らく、ボウケンジャーの仲間たちも同じだろう。
―ここはどこなんでしょう、チーフ…僕たち五人以外にも人が大勢倒れていますけど…―
始まりの空間で蒼太は確かに“五人”と言った。すぐ傍で映士を含む仲間たちが倒れているにもかかわらずだ。あの時、彼は明らかに映士を勘定に含んでいなかった。
「蒼太は俺とは別の時間軸から連れてこられたということか…」
彼の髪の短さと、流行に敏感な彼がつけていた香水の匂い、菜月と真墨を仲間と認識していることから類推して5人体制となって間もない頃…ちょうど三国覇剣の事件の辺り、
ダークシャドウの台頭が著しくなってきた時期が彼の出身時間であろう。


593:暁【あかつき】の決意◇8ttRQi9eks代理投下
08/09/20 23:21:12 /YcAGlmW0
真紅の戦士が魂の化身を名乗るアカレッドという男の言によれば、
この世界は歴代のスーパー戦隊によって守り抜かれてきたのだと言う。
誰が欠けても歴史に重大な影響を及ぼすことは必至だ。
なにしろ、戦隊はチームワークが命なのだから。それは自分たちを省みれば容易に想像がつく。
だが、既に“こちら側”と思しき者たちが数名、このゲームの犠牲となっている。
(―彼らが死亡した時点で歴史に影響があるとするなら、ここにいる俺は何なんだ…―?)
このゲームの指す“死”については明らかな疑念がある。
無論、彼らは自分がいた時代よりも後からつれて来られているのかもしれない。
その可能性は否めない。
しかしそれでは一番前の時間軸から来た戦士が死んだ時点で俺たちは消えてしまう。
それではゲームにならない。どの時代の、誰が死んでも歴史に影響が出ない。
少なくともこの箱庭のメンバーは。ならば、その死はいったいどういう意味を持つのか―
命を弄ぶロンの力は計り知れない。計り知れないが、それゆえに希望もある。
「早く仲間たちと合流しないとな…!」


594:暁【あかつき】の決意◇8ttRQi9eks代理投下
08/09/20 23:21:59 /YcAGlmW0
このゲームにはクエスターガイも参戦している。彼自身の暴力性、攻撃性も脅威だが
仲間たちのアクセルラーに万一ネオパラレルエンジンが搭載されていなければ新たな犠牲者が出るのは必然だ。
特に映士合流前の時間軸から連れてこられた場合、クエスターの存在そのものを認識していないはずだ。
「流石にあれだけイカれた奴に警戒心を抱かないはずはないがな…」
それでも危険は大きい。今のところ、仲間の中でガイとまともに戦えるのは自分とシルバーだけだからだ。
真墨の死が全員に与えた影響は計り知れない。
菜月は大丈夫だろうか? さくらは責任を感じてはいないだろうか?
蒼太はクエスターを上手くやり過ごせるだろうか?
映士はかつての仇敵を前に平静でいられるだろうか?
「街へ、行こう」
ここは情報が少なすぎる。
明石の行く先は決まっていた。街には物資と人が集っているはずだ。
ロンは禁止エリアを市街地周辺に集中して特定している。
彼がそんな場所を無造作に選ぶとは考えづらい。何か、思惑があるのは間違いない。
ならば、それを見極め、罠に落ちようとする者を救う。
危険は承知の上。冒険にはつき物だ。

「待っていろ皆…今、行く。…真墨、必ずお前を蘇らせてやる…待っていろ、ロン―…
俺が望む死は唯一つ…お前だけだ―!」


595:暁【あかつき】の決意◇8ttRQi9eks代理投下
08/09/20 23:22:51 /YcAGlmW0
【名前】明石暁@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task46後
[現在地]:G-2遺跡 1日目 早朝
[状態]:健康。二時間変身不能。
[装備]:アクセルラー
[道具]:ラン様カード@爆竜戦隊アバレンジャー、アクセルテクター@轟轟戦隊ボウケンジャー
[思考]
基本方針:ミッションの達成(仲間と合流し、脱出する)
第一行動方針:仲間をこれ以上死なせない。
第二行動方針:ヒカルとの合流を取りやめ、禁止エリアへ赴く。
放送を聞いて参加者が街を目指すと彼は踏んでいます。


596:暁【あかつき】の決意◇8ttRQi9eks代理投下
08/09/20 23:24:57 /YcAGlmW0
代理投下をお願いします。
タイトルは『暁【あかつき】の決意』で。


------------------------------------
以上で代理投下を終わります。

597:名無しより愛をこめて
08/09/21 00:38:10 LG2al9cVO
投下&代理投下乙です
ついに不滅のマーダー誕生か!?
とちょっぴりドキドキしましたw
冷静に考察を進め、ロンの打倒を決意するチーフがかっこよかったです。
GJでした!

598:名無しより愛をこめて
08/09/21 07:41:56 o8+58wmdO
俺もちょっとドキドキしたw
熱いな、チーフ!
かっこ良かったです。
GJ! 次作も楽しみにしてます。

599:名無しより愛をこめて
08/09/23 19:27:24 yO2dKkTlO
保守

600:名無しより愛をこめて
08/09/24 01:19:26 Gk9Kgl800
遅ればせながらGJ!
殺し合いに乗りながら、乗らない。その矛盾した思考をどうどうと言い放つのが、チーフらしいと思いました。
今後、チーフがどう動くのかが非常に楽しみです。

601:名無しより愛をこめて
08/09/24 11:35:18 X4KtYror0
まとめ氏更新乙です。ありがとうございます

602: ◆MGy4jd.pxY
08/09/25 23:52:29 dBxaGJNuO
まとめ更新ありがとうごさいます。


そして申し訳ありません。
投下が一時間ほど遅れてしまいます。
お許しください。

603:名無しより愛をこめて
08/09/26 00:12:04 kdv4BdZpO
>>602
楽しみにしています。
支援はまかせろ!w

604:名無しより愛をこめて
08/09/26 00:19:14 kdv4BdZpO
wってなんだwってorz
すみません。最後のはうっかりによる間違いです。

605: ◆MGy4jd.pxY
08/09/26 02:08:29 J6a/aK/kO
アクセス規制につき仮投下スレに投下致しました。

>>604さん
ごめんなさいですorz

606:名無しより愛をこめて
08/09/26 09:22:35 XfBqshqE0
>>605
お気遣いありがとうございます。
仮投下に気付かず寝落ちしてしまった次第w
というわけで代理投下開始します。

607:ボウケンブラックを捜して…… ◇MGy4jd.pxY氏代理
08/09/26 09:24:10 XfBqshqE0
「シグナルマンさん!スモーキー!菜月ちゃんも落ちついて」
駆け出すシグナルマンを竜也が制した。
「チーキュの住民が危ないのだ!本官は行かなければっ!!」
シグナルマンが言い返す。
「そうだよ。竜也さん、何で止めるの?人質が危ないのに……」
「そうだニャ!」
菜月とスモーキーが竜也を睨んだ。
「だからって考えもなく行くのか?ちょっと、皆さん、落ちついて!」
「竜也、行かせてやるがいい」
ブクラテスが割って入る。
「何の手立てもなく行くなど、人質もろとも死ぬつもりか!わしは竜也とここに残らせて貰うわい」
樽のような腹を揺らせた。
ブクラテスの言葉に竜也はがっくり肩を落とした。
……俺は、行かないなんて言ってない。



「はぁ……」
竜也は大きく深呼吸して気持ちを落ちつけた。
先程聞こえてきた『メガブルー』を誘き出す声。
その声に走り出そうとするシグナルマンとスモーキー。
我が身の保身ばかり口にするブクラテス。
人質を按じているのか、今にも泣き出しそうな菜月。
ひとまず彼らを宥め、人質救出の為に考えを巡らせる。

シグナルマンと二人で行くとして……。
問題は後の二人と一匹。
ブクラテスは頑として動こうとしない。
菜月は勇気を振り絞ってスモーキーと行こうと意気込む。
だができれば、菜月を、もちろん怪我を負ったブクラテスも戦いに巻き込みたくない。


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