スーパー戦隊 バトルロワイアル Part2at SFX
スーパー戦隊 バトルロワイアル Part2 - 暇つぶし2ch400:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 21:08:48 YdAv1eUS0
「ウメコ!お前、何やってんだ?!」
映士は叫んだ。
ウメコは笑っていた。いたずらを見つけられた子供のように、ただ無邪気な笑顔で笑っていた。
そして……


   ▽  ▽  ▽


ウメコを捜し始めてから二時間近く経つ。
映士の後を追って菜摘、壬琴の二人は、アンキロベイルス捜索をひとまず中断し、ウメコ捜索に加わった。
言葉を交わし情報を交わし、共に行動したこの二時間で映士は『口はともかく、悪いヤツ等じゃねぇ』と感じ始めていた。
怪我をした小梅が、そう遠くには行けまい。
その三人の憶測は見事に外れ、一向に小梅は見つからなかった。
時間が立てば立つほど小梅の危険は色濃くなる。
30分ほど前から三人は海岸近くの公園を拠点とし、三方に分かれウメコを捜していた。
市街地方面を捜索した映士は空振りに終わったのを落胆しつつ。
「アイツ等が見つけてくれてりゃ、いいんだが」
そんな微かな期待を抱き、合流地点の公園へ急いだ。

「こっちにはいなかったわ。そっちも、だめだったみたいね」
公園のフェンス越しに菜摘が叫んだ。
一足先に戻っていたのは菜摘一人。壬琴の姿は見えない。
「ったく。一体どこへ行っちまいやがったんだ!」
口にした苛立ちが身体と直結。
条件反射のように、映士は公園の入り口にあったゴミ箱を思いっきり蹴飛ばした。
「ちょっと!気持ちは分かるけど大人気ないわよ」
菜摘に言われるまでもない。
ゴミ箱を蹴っ飛ばしたところで、小梅が見つかるわけでも気持ちが落ち着くわけでもない。
苛立ちが増すだけだった。

401:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 21:09:47 YdAv1eUS0
顔を上げると、ごみ箱の転がった先に険しい顔でこちらを見ている壬琴がいた。
そして映士は、溜まっていた汚水の飛沫が掛かった壬琴の白いスーツを見て『大人気なかった』と改めて思った。

(コイツ等には付き合ってもらった礼ぐらいは言わねぇと、と思ってたのに俺様とした事がやっちまった……。しかもよりによって白かよ)
すまなねぇな。天性の俺様気質の映士には珍しく、謝罪の言葉を素直に口に出しかけた時。
それを遮ったのは、壬琴の辛辣な視線と言葉。
「手がかりもなく走り回ったあげく、苛立ち紛れに八つ当たりか?」
純白のスーツに着いた汚れを払いながら、壬琴は映士に向け遠慮なく冷たい視線を浴びせる。
その視線に謝罪の言葉など、即座に彼方へ吹き飛んだ。
確かに悪いのは自分だ。しかし、映士に壬琴の冷たい視線を受け流す余裕はない。
小梅が見つからない焦りも拍車を掛け、映士の口から出たのは本心と掛け離れた皮肉まじりの謝罪。
「悪かったな、走り回るしか能がなくてよ。他に何か方法あんのか!」
映士はデイバックをかなぐり捨てる。
落ちた拍子に人形が「ビビィ~」と小さな音を鳴らし、パンは四方に転がり大きく形を変えた。
それに映士は構わず壬琴の前へつかつかと進み寄った。
「笑ってねぇで、答えやがれ!」
壬琴は半ば呆れたように、フンと映士を鼻先で笑っている。
その態度に映士は、さらに皮肉で返した。
「いい方法が思いつかねぇのか?ならこれ使えよ。誰でも大天才になれるぜ」
映士が壬琴に向かって投げつけたのは、葡萄によく似たプレシャス『知恵の実』
アホのアクタ神が食べて天才になった件のプレシャスである。
一緒に投げつけられた支給品詳細に目を通した壬琴の口元が見る見る歪む。
「……おもしれぇじゃねぇか」
「だろ、使えよ」
「だが自分に使おうという知恵はなかった訳か。哀れだな」
「何だと!」
映士は壬琴に掴みかかろうとしたが、菜摘がそれを許さない。
菜摘が映士と壬琴の仲裁に入るのはこれで三度目。
すっかりタイミングを掴んだ菜摘は、既のところで二人を制す。

402:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 21:11:02 YdAv1eUS0
「いーかげんにしなさいよ。壬琴!映士。あなたもよ」
「キロキロ~!二人ともいい加減にするキロ!」
映士は壬琴の胸倉に伸ばし掛けた手を、大きく後ろへ振り回し、溜息をついた。

「壬琴、手を洗って来たらどう?映士は、散らかした荷物片付けて」
菜摘は壬琴を遊具の向こうにある水飲み場へ追いやり、辺りに散らばったバックの中身を拾い始めた。
この人形なんだろう?とブツブツ言う声を背に、映士は心の中で言い損ねた礼を切り出すタイミングを計っていた。
そして口に出しかけた時。アンキロベイルスの呟きが聞こえた。
「きっともうその辺りにはいないキロ。こっちも早く助けに来て欲しいキロ~」
「ついでといっちゃあなんだけど、あなたの事もちゃんと捜してるでしょ。でも、どこ行ったんだろうね。もう二時間も捜してるのに……」
菜月の声が少し沈んだ。
これ以上、こいつらに付き合ってもらう訳にはいかねぇ。映士はわざとぶっきらぼうに言い放つ。
「付き合ってくれなんて頼んだ覚えはねえぜ」
「急にどうしたの?」
上手く言えないもどかしさに歯軋りした。
驚いた菜摘に背を向け『付き合わせちまって悪かった』映士は口の動きだけで言ってみた。
声には出せない。いつもそうだ。
そして次に出る一声は決まっている。周囲の人間を撥ね付ける言葉だ。
「もういい。後は俺様一人で捜す。お前らはさっさとアンキロベイルスを捜してやれよ」
映士は無意識に、傷ついた子供のように鼻にくしゃっと皺を寄せた。
「あれ?ちょっと、何拗ねてんの?映士ってほんと素直じゃないね。くくっ、あははっ」
菜摘の声に少しも嘲笑めいたものは感じられなかった。
「ねぇ、良い方へ考えようよ。三人いるんだもの。そうすればきっと良い方法だって思いつくわよ」
笑い飛ばされた事で菜摘の言葉が、気が抜けた心へ素直に沁みた。
「そうだな」
映士は呟き、照れ隠しに空を仰いだ。
白んできた空には雲一つない。
夜明け前の、まだ冷たい空気を胸いっぱいに吸い込むと、やけに清々しい気持になった。

403:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 21:13:46 YdAv1eUS0
「仲代のヤツを呼んでくる」
映士は空から菜摘へ、視線を落とした。
菜摘の代わりにそこに居たのは、悪魔をデフォルメした人形とコロッケパンだった。
  
「菜摘……?」
たった数秒、空を仰いでいた間に菜摘の姿が消えていた。
菜摘の居たはずの場所には人形とコロッケパンがあるだけ。
(目を離したのは一瞬だ。一体何がどうなってやがる)
人形とコロッケパン、小梅と菜摘がぐるぐる頭を駆け巡る。
放心した映士の肩を、戻って来た壬琴が掴んだ。
「おい!菜摘が……」
消えちまった。と発する前に、壬琴の拳が映士の頬を殴りつけた。
手加減なしの痛烈な一撃。映士は切れた唇を手の甲で拭った。
「何しやがる!」
「菜摘に何をした?」
壬琴は震える手で人形を掴み言った。
「俺様じゃねぇ!俺は何もしてねぇ!!」
「信じられるとでも思うか?」
壬琴が大声で怒鳴り、手にした人形を放り投げた。
人形は十数メートル後ろの雑草だらけの地面に転がった。
正直に話したとして、壬琴を納得させられるとは思えなかった。
それほどまでに壬琴は全身で怒りを表にしている。
胸倉を捕まれ引き寄せられた。
争う時間が惜しいのと疑われている悔しさとが胸で入り混じる。
「やめろ!」
映士は壬琴の手を掴み引き離そうとした。
「そのままでいい。聞け」
急に声のトーンを落とし、壬琴が言った。
「俺がお前達から目を離して、呑気に手を洗っていたとでも思っているのか?」
壬琴はそのまま胸を掴んだ力を弱めずに言葉を続ける。

404:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 21:15:03 YdAv1eUS0
「怪しいのはあの人形だ。お前が余程の馬鹿でない限り、わざわざ自分から疑われるような真似はしないはずだ。
俺はアンキロベイルスを捜す。今、菜摘と繋がっているのはヤツだけだからな。
二時間後、俺達はここに戻る。
お前はウメコとやらを捜し、あれがなんなのか突き止めろ」
映士は壬琴の言う『あれ』、悪魔をデフォルメした人形に目をやる。
雑草の隙間から覗く二つの目が、じっとこちらを見ているようだった。
「表情が固いぜ」
壬琴に指摘され、映士は自分の頬を撫でた。
(人形が怪しい?……なら、よく考えたら俺様の殴られ損じゃねぇか)
映士は公園を去る壬琴の背中を睨んだ。


   ▽  ▽  ▽


(ビッッ!)
ビビデビは強く頭を掴まれ、危うく声を出しそうになった。
そして頭からさかさまにバックに詰め込まれた。
映士の自分に対する扱いがぞんざいな気がしたが、それも仕方がないとビビデビは思っていた。
(ビビィ~!自棄になってるデビ~。今は我慢してやるデビ~)
ビビデビは気晴らしに、菜摘を飛ばしてやった後の二人の様子を思い出す。

405:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 21:18:54 YdAv1eUS0
特に傑作だったのはビビデビの横を通り過ぎる際に映士に放った壬琴の捨て台詞。
『菜摘が見つからなければ殺す』
見つからなければだと?
足を負傷した小梅は空へ向けて、菜摘は海へ向けて飛ばしてやった。
運が良ければもう死んでいるかもしれない。
もしそうだったら?
(ビビィィィ~!ビビビィィ~!)
しばらくは込み上げる笑いを押える事に専念しなければならないようだ。
まだ、笑うわけにはいかない。
こんな暗闇の中で、笑うわけにはいかない。
ビビデビには見えていた。再びネジレシアで笑う自分の姿が……
それが現実となるまでは、笑うわけにはいかないのだ。


   ▽  ▽  ▽


「ん、冷った~い。何!」
目の前に広がるのは荒々しい波と岩肌。
岩肌に当たった波しぶきが絶え間なく体に降り掛かってくる。
菜摘がいたのは頭上の岩壁にぽっかりと穴の開いた半洞窟の中。
「洞窟……って、なんでこんな所に!?」
「どうしたキロ?」「……た…ロ」
「とうしたもこうしたも、私だって解んないわよ」
たった今までいた公園とは、まったく違う景色に囲まれていたのだ。
(どういう事?さっきまで映士と喋ってて……)
菜摘は状況を思い返した。
拗ねた映士を慰めようと、わざと視線を合わせずに荷物を片付けていた。

406:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 21:20:27 YdAv1eUS0
怪しいのは、あの時。ウメコの人形を持ち上げ目を合わせた時、フッと意識が遠のいた。
「あの子悪魔みたいな人形が絶対怪しい。きっとウメコって子がいなくなったのもあの人形のせいね!」
そうと解ればこんな所でグズグズしてはいられない。
「早く戻らなくちゃ!」
「オイ!菜摘。何かオカシイキロ。声が二重に聞こえるキロ!」「…こ……るキロ…」
言われてみれば、アンキロベイルスの声が二重に聞こえている。
「声が反響してるんじゃない?洞窟みたいな所だから……」
ふと自分で出した答えに疑問が生じた。
なぜ、アンキロベイルスの声だけ?どうして自分の声は二重に聞こえないのか?
「ちょっと待って」
菜摘はダイノコマンダーを外し、大声で叫んだ。
「アンキロベイルス!聞こえる~?オッケー!」
「…こえ…るキロ…オ…ケ……ロ」
通信を切っても微かだが確かに声が聞こえる。
アンキロベイルスはここにいる。
菜摘は洞窟内を見渡す。
明るくなりかけた空の光を、透き通った海が反射していた。
その光にぼんやりと照らされた、怪獣のような奇怪な形をした岩の群。
この中の内の一つかしら?
菜摘は再びダイノコマンダーを装着しアンキロベイルスに話しかけた。
「ねぇ、爆竜っていうぐらいだから、相当大きな物を予想してるんだけど、あなた大きさはどれくらいなの?」
「ビルぐらいの大きさだキロ」
「……そんな大きな物が隠れられそうな場所はないわよ」
「金色の首輪をつけられて、今は人間ぐらいの大きさになってるキロ!」
「それならそうと早く言いなさい!」

407:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 21:21:51 YdAv1eUS0
(急がなきゃね)
足元の水位が、僅かだが上がってきている。
潮が満ちる前に、この岩の中からアンキロベイルスを見つけ出さなければならない。
菜摘はダイノコマンダーをアクセルブレスに付け替えた。


   ▽  ▽  ▽


小梅は痛む身体を引きずりながら、海岸を目指していた。
手元に地図もなく、方向が正しいのかさえも解らない。
頼りは、刑事の感と潮の香り。
挫いた足と新たに負った傷を誤魔化しのせいでのおかげで休みながら進しかなく、映士の元へ戻るのに随分時間がかかっていた。
もう少し進んでみよう。あと少し進んでから休もう。
待っていてくれるかもしれないから。
映士に、伝えなければならない。
小梅の支給品、悪魔をデフォルメした人形のことを。
(あの人形、変だよね。映士さん持ってなきゃいいけど……)
散らばった支給品の回収を始め、あの人形を手に取った時、身体が中に浮いたような感覚に囚われた。
はっと我に返ると、何故か小梅の身体は空中に浮き上がっていた。
そして次の瞬間、地面に引き寄せられるように落下し始める。
悲鳴を上げる事も出来ず、息を呑むしかなかった。
だが運よく落ちた先は木々が生い茂る場所。
交差した枝葉がネットのように身体を包み、落下速度が緩まったところで無事着地。
幸運にも負った傷といえば、擦過傷と軽い刺し傷程度。
立ち止まらなければならないほどの深い傷は負わずに済んだ。
傷が深くないとはいえ……。

408:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 21:22:36 YdAv1eUS0
「……もういないかな?映士さん」
痛む足と見覚えのない景色が弱気を誘う。
小梅はか細い声で呟く。
やがて東の空に陽光が登り始める。
不安を掻き消すように暗闇が晴れていく。
心持ち晴れやかになったところで、耳に飛び込んできたのが……
『メガブル~…… 』
狂喜として叫ぶ男の声。
(子どもを人質に取るなんてサイテー!)
『ヒャハハハハッハッ!』
リフレーンする笑い声が爽やかな空気を掻き乱す。
それに気を取られて、後ろから近づく足音に気付くのが遅れた。
少し先に見える教会の方から、男が近づいて来る。
誰?向こうは気付いたかもしれない。
咄嗟に身を隠そうとしたが……
「きゃっ」
挫いた足に力が入らず小梅は転んだ。
(痛いな~。今日、何度目だろう。そんな場合じゃないや、見つかる!)
背の高い、小梅とさほど年格好の変わらない若い男。
悲しみ、痛み、虚しさ、負の感情を凝縮した眼。
(この人、殺し合いに乗ってる……)
身体を傾け、男から見えない位置で、ポケットのシグザウエルを右手でしっかり握る。
小梅に気づいた男と、銃を構えた小梅。
視線がかち合う。
くにゃり。瞬く間に男は表情を変え、丸腰だとでもいう風に両手を上げる。

409:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 22:01:49 YdAv1eUS0
(あれ?)
危うく銃を落しかけた。
人なつこい笑顔。先程の眼差しは幻だったのだろうか。
「怪我してんのか?見せてみなよ」
それがドモンの第一声だった。

「ごめんね。ドモンさん。でもあんまり怖い顔で歩いてるから……」
「殺し合いに巻き込まれてんのにさ、へらへら笑いながら歩いてる方が変だ」
そうか、と小梅は一人納得する。
その間、ドモンは緩んでいた小梅の足のテーピングを巻き治す。
グラップラー=格闘家と名乗るだけあってケガの処置も慣れた様子。
穏やかな口調とタイムレンジャーと言う肩書きも手伝って、小梅はドモンを信用してしまった。
雑談、談笑、いつしか乗せられるように変身アイテムの話になり、小梅はSPライセンスを取り出しドモンに見せた。
「へぇ、これが?」
ドモンは小梅の手からSPライセンスを取り上げた。
「ちょっと、ドモンさん」
少しあわてて取り返そうとするとドモンはSPライセンスを小梅の手の届かない位置まで掲げた。
この人、何してるんだろう。
小梅は最初に見たドモンの眼差しを思い出した。
(まさか、ううん、からかってるだけだよね)
「ウメコさん、変身に制限があるのをもちろん知らないよな」
「制限?」
「あぁ、二時間に一度しか戦えない。さっきの話じゃまだ戦ってないみたいだし。だから、これ持ってられると困るんだ」
持ってられると困る。小梅に変身されると困る。
意図を飲み込んだ小梅は、顔から血の気が引くような気がした。
ドモンはそのまま振りかぶってSPライセンスを思いきり遠くへ投げた。

小梅は走った。
教会へ向かって走った。
一歩事に全身を激痛が走る。

410:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 22:02:33 YdAv1eUS0
後をドモンが早足で追ってくる。
ドモンは殺し合いに乗っていたのだ。
(なのに簡単に信用してしまうなんて)
カッと全身が熱くなる。
走りながらどうするべきかを考える。
まずはドモンの拘束、もしくは自分の安全の確保。
SPライセンスは後で回収するしかない。
胸の奥で警告音が鳴っている。
シグザウエルだけでは、変身したドモンに太刀打ち出来ない。
すぐに変身しないのは、制限のせいか?
小梅ぐらいなら、素手で充分だと思われているのかもしれない。
ドモンはグラップラー。接近戦なら障害物のある建物の中なら仕掛けにくい。
建物の中が有利だと思えた。
教会まであと少し。
その先は海へ続く砂浜。
(何だろう?とても嫌な感じがする)
小梅は不自然に放置された黒い物を目にした。
「深雪さん、だよ」
背後からドモンの冷たく静かな声。
「……この人、あなたが殺したの?」
慣れた手つきでシグザウエルの撃鉄を起こす。
ドモンとの距離は10メートルほど。
射撃に自信はないが、当たらない距離ではない。
生身の人間を撃たなければならないかもしれない。緊張が全身を支配した。
「俺を救うために……死んだんだ。一番愛していた男の首輪を爆発させて……」
ドモンの肩が震えていた。
「俺は決めたんだ。深雪さんに家族との幸せな生活をプレゼントするって。そのためなら 」
ドモンは悲しい決意を湛えた目で、小梅に向かって一歩踏み出した。

小梅は思う。
その時ドモンさんの心は壊れてしまったんだ。だから殺し合いに乗ったんだ。と……。

411:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 22:03:12 YdAv1eUS0
私は殺されるわけにも逃げるわけにもいかない。今、ドモンを止めなければ、ドモンはまた誰かを狙う。

それが、もし自分を捜している仲間だったら?
それが、さっき助けてくれた映士だったら?
それが、センだったなら?

(ううん、誰だろうと関係ない。危険とわかっていても、人々を守るためなら飛び込んでいく。それが私たちデカレンジャーの使命)


「だめよ、動かないで、話を聞いて!」
小梅は叫んだ。
私が止めて見せる。仲間のため、そしてドモンのために……
「命がけでドモンさんを救った人の心を踏みにじるなんてひどいよ」
「……深雪さんの心を、踏みにじるだって?」
「そうよ、あなたには生きてほしい!殺し合いなんてしないで、タイムレンジャーで、そのままでいて欲しいかったと思うよ」
とても悲しそうに笑い、ドモンが答えた。
「そうかもしれないな。もし、そうだとしても俺は殺し合いを降りない。さっきも言っただろ?深雪さんの家族の幸せは俺が必ずロンに叶えてもらう」
「だめ!目を背けないで!私たちに殺し合いをさせてるのはロンなんだよ。そんなの聞いちゃダメだよ」
ドモンは首を振った。
「ねぇ、ドモンさん。一緒にロンと戦おう。深雪さんが、愛する人が望むのがそれだったら?」
「深雪さんは死んだ!それは、もう、どうにもならないんだ。俺が勝ち残らなきゃ……。もう、どうにもならないんだよ!」
小梅にだって、ドモンの気持ちは気持ちは痛いほどわかる。
でもどんな理由があろうとも、殺し合いを許す理由には成り得ない。
「どうにもならないなんて、悲しいこと言わないでよ!ドモンさんは、タイムレンジャー、タイムイエローじゃない!」
ドモンの足が止まった。
悲痛な表情と、眼に浮かんだ迷い。小梅は祈るような思いで言葉を紡ぐ。
「もうやめよう。殺し合いなんてやめよう」
「やめろ!!!俺は……俺が、深雪さんを……」
顔つきが険しくなる。ドモンは構えるように足を踏ん張った。
(解ってもらえないの?)
くっと悔しさが小梅の胸に突き上げる。

412:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 22:04:14 YdAv1eUS0
右手が上着の胸元に触れた。
武器を取り出そうとしてる。小梅にはそう見えた。
「やめて!」

パン!

射抜かれたようにドモンが膝を突いた。右脚を押さえた指の隙間から血が滲み出る。
小梅は威嚇のつもりだった。撃った瞬間ドモンが倒れ込んできた。だから当たったのだ。
「傷が、痛んだ隙をついて撃ってくるなんて……」
「え?傷……武器は……」
「一瞬でも、ウメコさんの話を聞こうとした俺が、馬鹿だったのか?」
聞くのが怖かった。嘘をついてるのはドモンだと思いたかった。
でも、ドモンは何も手にしていない。
右脚から流れる血がドモンの両手を赤く染めていく。
「そうか、殺し合いに乗ったのはウメコさんもなのか。なら遠慮はいらねぇよな!」
「待って!違う」
もはやドモンは小梅の言葉など耳にしようとはしない。
激情に駆られ吼えるのみ。
「ちくしょう!何が殺し合いはやめてだよ。何がタイムイエローじゃないだよ!」
全身が竦み上がった。
「そんなつもりじゃ……」
「お前のようなヤツに深雪さんの幸せな未来を潰されてたまるか!」
ドモンは身を翻した。
小梅の目に、ドモンが獣を狩る肉食獣のように見えた。
ドモンの腕が小梅の首に伸びる。
振り切っても、振り切っても、真っ赤な両手が追いかけてくる。

嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!嫌!

413:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 22:05:55 YdAv1eUS0
怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!

ごく近い距離で、シグザウエルを構えた。銃口は心臓を狙っていた。狙って小梅は引き金を引いた。

パンッ!

銃弾はドモンの胸に黒い穴を開け、刹那、花火のように赤い血を撒き散らした。

「殺されそうになったんだから、これはデリートだよね。返り血、嫌…だな。早く綺麗にしなきゃ。綺麗に……」


   ▽  ▽  ▽


ふらつく足取りで小梅は教会の裏手の集会室へ回った。
まだ震える手に、張り付いたように握られたシグザウエルから指を剥がした。
小さな備え付けのキッチンで水道を捻り、丁寧に手を洗った。
血の付いた頬も流した。
水は冷たく手が痺れるようだった。
だが砕けそうな心をもう少しだけ止めておくには、その冷たさが必要だった。

私、自分で殺しておいて綺麗にしなきゃなんて……。何考えてたんだろう。

現職のスペシャル・ポリスが事態を鎮圧することも出来ず、冷静な判断を失い、剰え、まだ罪を犯していない人物を射殺。
それが白日の下にさらされれば、小梅だけでなく共に招致された仲間にまで追及が及ぶだろう。
SPDの築きあげてきた信頼は失墜。仲間達の誇りも未来も汚してしまう。

414:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 22:06:40 YdAv1eUS0
センはどうなるだろう?
(ずっと私を見守ってきてくれたセンさん。誰よりも優しくて、誰よりも温かい……私が犯してしまった罪がセンさんの未来を閉ざす。そんなの、ダメだ)
事実が伝わるのならまだいい。
進んで殺し合いに乗ったのではない、と。
生き延びるために誰かを犠牲にしたのではない、と。
誰が証明してくれるのだろう。
誰が信じてくれるのだろう。
晴れることのない疑惑を……

ならば、ドモンを殺してしまった事を隠して生きていくか。
非常事態だったと、緊急避難だったと言い聞かせて生きていけるか……
無理だ。
自分こそが正義。そんな顔をしてドモンを疑い死なせた。否、殺した。
血を迸らせながら、最後まで愛する人を思い、倒れたドモン。
撃った銃の反動、滑った血の感触、硝煙の臭い、忘れられることはない。
目を閉じるたび甦り、眠れる日は訪れないように思えた。

引き金を引いた時から、恐怖に負けた時から、決まっていたんだ。
もう私には、愛も、勇気も、正義もない。



   ▽  ▽  ▽


「足を伸ばしてみたが、この辺りにもいねぇな」
落胆の溜息をつくのも惜しいように、映士は海岸を走る。
脳裏を過ぎるのは、少し前に聞いた殺し合いを仕掛ける声。

415:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 22:09:51 YdAv1eUS0
(そんなヤツにウメコが殺されちまってたら……。そんなこと考えててもしかたがねぇ。約束まで時間はある。もう少し捜してみるか)
海岸の先に教会の十字架が見えた。
映士は目標地点に海岸沿いに建つ教会を選んだ。



   ▽  ▽  ▽


不思議だったのは、あんなに痛かった足が階段を登り切るまでちっとも痛みを感じなかった。
小梅は教会の脇に高くそびえる鐘楼の頂きに立つ。

「ウメコ!お前何やってんだ?!」

映士の声が響く。
怒っているようで、それでいてとても優しい声だった。
瞳いっぱいに溜まった涙がすぐに映士の姿を隠してくれたので決意は揺らがなかった。
ウメコは朝の空気を吸い込み瞳を閉じる。瞼の裏はオレンジ色に染まった。

「一つ、非道な悪事を恨み。二つ、不思議な事件を追って。
……三つ、未来の科学で捜査。四つ、よからぬ宇宙の悪を。五つ、一気にスピード退治。六つ、無敵が何かいい……
さよなら、デカレンジャー」

小梅は眩しい光の中へ飛び込んだ。
恐怖はなかった。
見えるのは朝日に照らされた木々の緑。
(明るい。明るいよ、センさん。光に包まれて逝けるならいい。なんて都合良すぎるかな……)
最後に見えたのが、綺麗なグリーンで良かったと思う。

416:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 22:12:05 YdAv1eUS0
センの色、鮮やかなグリーン。

「え!違っ……」

映士から死角の木の陰、シグザウエルを構えたドモンの姿が見えた。


   ▽  ▽  ▽


(深雪さん、またあなたに救われた……)
ドモンは木の陰で深雪の壊れたマージフォンを握っている。
小梅が放った二発目の銃弾は、確かにドモンの胸部に命中した。
しかし命中したのは心臓ではなく、内ポケットに入れていたマージフォン。
マージフォンが盾となり、真っ直ぐ心臓へ向かっていた弾道をそらした。
銃弾は左胸の筋肉を深く抉り、血を飛び散らせ身体を離れた。
その強い痛みと着弾時の衝撃で、そのままドモンは気を失った。
左胸の痛みで目を覚ましドモンは、落ちていたシグザウエルを拾い後を追った。
そして小梅を捜しあてた時……
小梅は空中に身体を投げた。
ドモンは小梅から目を逸らし銃を構えなおした。標的変更、撃つのなら追ってきた男だ。
銃口を向けたが焦点が定まらず視界が揺れる。
(クソ!深雪さん、もう少し待っててください)
ドモンは太陽に背を向け歩き出した。足下を伸びる黒く長い影を追うようにして。


   ▼  ▼


「どうして?!?!?!じゃあ私何のために!!!」


417:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 22:12:48 YdAv1eUS0
螺旋を描きながらウメコは落ちていく。
朝露に濡れた地面はもう目の前だった。

ズシャン!!心が砕け散る衝撃と、頭蓋骨が叩きつけられる衝撃が同時にウメコを襲った。

「あ。…嫌……ァが黒……」


   ▼


ウメコが最後に見たのは綺麗なグリーン?
いいえ、赤黒い色です。
ウメコが最後に聞いたのは映士の声?
さぁ、誰が言った言葉だったのか……

「これにて一件、コンプリート」

【胡堂小梅 死亡】

418:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 23:07:03 YdAv1eUS0
【名前】志乃原菜摘@激走戦隊カーレンジャー
[時間軸]:最終回終了後
[現在地]:J-7海岸 1日目 早朝
[状態]:健康
[装備]:アクセルチェンジャー、ダイノコマンダー@爆竜戦隊アバレンジャー
[道具]:キーボーン@特捜戦隊デカレンジャー、ゲキファン@獣拳戦隊ゲキレンジャー、基本支給品一式
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。仲間を集めて状況を打開したい。
第一行動方針:潮が満ちるまでに洞窟内にいるはずのアンキロベイルスを捜す。
第二行動方針:仲代、映士と合流。
第三行動方針:仲間(陣内恭介・シグナルマン)を探す。
備考:ダイノハープがないため、アバレブラックへの変身はできません。また、菜摘が変身できるほどのダイノガッツがあるかは不明です。

【名前】仲代壬琴@爆竜戦隊アバレンジャー
[時間軸]:ファイナルアバレゲーム 死亡後
[現在地]:J-6海岸 1日目 早朝
[状態]:健康。菜摘に振り回され、若干調子が出ない?
[装備]:ダイノマインダー、ゲキファン@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本方針:コイン占いにより殺し合いには乗らないと決める。ロンを倒し、このゲームを破壊する。
第一行動方針:志乃原菜摘、アンキロベイルスを探す。
第二行動方針:映士と合流、
第三行動方針:人形(ビビデビ)に疑心。



419:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 23:07:35 YdAv1eUS0
【名前】アンキロベイルス@爆竜戦隊アバレンジャー
[時間軸]:第43話『アバレキラーは不滅!?』後
[現在地]:J-7海岸 1日目 早朝
[状態]:健康。
[思考]
第一行動方針:早く助けてもらう

【名前】高丘映士@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:J-4海岸 1日目 早朝
[状態]:健康
[装備]:ゴーゴーチェンジャー
[道具]:ボウケンチップ、ビビデビ@電磁戦隊メガレンジャー、知恵の実、不明(確認済) 、基本支給品一式(映士、小梅)
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ロンを倒す。
第一行動方針:ウメコに何が?
第二行動方針:ビビデビを探る。
第三行動方針:ガイと決着を着ける。
備考:ウメコの支給品はビビデビでした。


420:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 23:13:39 YdAv1eUS0
【名前】ドモン@未来戦隊タイムレンジャー
[時間軸]:Case File20後
[現在地]:J-4海岸 1日目 早朝
[状態]:左胸部に銃創。右足に銃創。全身打撲。魔法薬(気づかず治る傷治し薬)の影響で回復中。30分変身不能。
[装備]:クロノチェンジャー
[道具]:基本支給品一式、拳銃(シグザウエル)、深雪のディパック(中身は?)
[思考]
基本行動方針:優勝して、深雪に幸せな家庭をプレゼントする。
備考:ドモンのデイパックは燃え尽きました。グラップラー時代のプロテクターはロンに回収されました。変身に制限があることに気が付きました。
    拳銃(シグザウエル)はウメコの支給品です。


【名前】ビビデビ@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:聖獣戦隊ギンガマンVSメガレンジャー後
[現在地]:映士のディパックの中
[状態]:健康。2時間の間、能力発揮不可。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ロンに協力し、ネジレジアの復興。
第一行動方針:チャンスが来るまで人形のフリ。

ウメコのSPライセンスはJ-4海岸のどこかで放置されています。

421:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 23:15:17 YdAv1eUS0
以上です。
放送前の大事な時期に申し訳ありませんでした。
指摘、矛盾、感想等よろしくお願いします。

422:さよなら、デカレンジャー ◆MGy4jd.pxY
08/08/11 23:18:38 YdAv1eUS0
以上です。
放送前の大事な時期に申し訳ありませんでした。
指摘、矛盾、感想等よろしくお願いします。

423:名無しより愛をこめて
08/08/11 23:48:07 7xTonC4aO
投下GJです。
ウメコ、なんて報われない…
これでこそロワという感じでした。
間に合わなかった映士の心境やいかに。
鬼気迫るドモンが恐ろしくも悲しかったです。
ウメコへの合掌も兼ねて。重ねてGJです!!

424:名無しより愛をこめて
08/08/12 13:55:46 XkF5aLv30
投下乙
ウメコもそうですが、ドモンの追い詰められっぷりも描写が凄かったです。
映示を待つのはウメコの死体。
最後にジャッジメントを持ってくる演出もよかった。
GJ!

425:名無しより愛をこめて
08/08/13 11:46:54 hc/SCWLH0
投下乙。
戦隊ロワ初の自殺。しかも勘違いというのが悲惨さに拍車をかけました。
GJです。
矛盾点かどうかは微妙なんですが、拡声器を使ったとはいえ、ネジブルーの声って20km?先にも届くものなのでしょうか。


426: ◆MGy4jd.pxY
08/08/13 13:05:15 nLozXAYOO
皆様感想ありがとうごさいます。

拡声器……確かに届くのかと言われると現実的にはありえない距離ですよね。
流れに関係ある部分でもないので、修正したほうがよろしいでしょうか?


427:名無しより愛をこめて
08/08/13 21:45:45 C8vcQ9My0
遅ればせながらGJ!
菜摘にはアンキロとの出逢いとプラスに働いたビビデビの能力でしたが、ウメコが見事に悲惨な目に。
誤殺のショックによる自殺。結果的にドモンが手を汚さなかったのが唯一の幸いでしたが、果たしてこの状態で戻れるのかどうなのか。
何気に映士と壬琴がいいコンビっぽいのも面白かったです。
各々の人物描写を見事に描ききった作品だと思いました。

>>426
拡声器の範囲の件ですが、今回の放送が届くかどうかはさておき、聞こえた範囲をはっきりさせておいた方がいいかも知れません。
ここで聞こえたのにここで聞こえないのはおかしいという矛盾点が生まれるかも知れませんし。
場所はここか、議論版でどうでしょうか?


428:名無しより愛をこめて
08/08/14 04:44:34 xDLyywroO
まとめ更新乙です。
>>427
感想ありがとうごさいます。

ではとりあえず本スレにて。
意見が割れたら移動しますか。

ネジブルーの声が聞こえたのは都市全域ぐらいが妥当でしょうか?
拡声器の効果=使った地域全体(都市ならば都市全体、森なら森。砂漠とオアシスは一つと考える)に聞こえる。


429:428 ◆MGy4jd.pxY
08/08/14 09:47:52 qq663jFO0
ageてしまったorz
申し訳ありません。

430:名無しより愛をこめて
08/08/14 10:31:28 6rbOfWWCO
>>429
ドンマイですw
自分は地域全域ぐらいが妥当かなと思います。

431:名無しより愛をこめて
08/08/14 17:47:16 6rbOfWWCO
と、肝心な事を。
遅くなりましたが、投下乙です。
この状況下でも冷静な壬琴と、明るく振る舞う菜摘、
素直に感謝を言葉に出来ない映士の描写がとても彼ららしいと思いました。
追い詰められたウメコとドモンの鬼気せまる描写も素晴らしかったです。
GJ!!

432:名無しより愛をこめて
08/08/16 09:33:39 9zSmMFR+0
それでは他に意見もないようなので、拡声器の範囲は地域全体ということにしたいと思います。
お手数ですが、MGy4jd.pxYさん、修正をお願いできますでしょうか?

433:名無しより愛をこめて
08/08/16 15:48:39 OIrCG3ar0
そろそろ放送か……

434:名無しより愛をこめて
08/08/16 15:57:59 ++Tgpk/+0
めちゃめちゃやられる戦隊モノヒロイン 
URLリンク(www.yourfilehost.com)
URLリンク(www.yourfilehost.com)
URLリンク(www.yourfilehost.com)


435: ◆MGy4jd.pxY
08/08/16 16:27:25 D8fk+3Y20
>>432
了解しました。修正版を一時投下スレに投下いたします。

>>433
いよいよですね。


436:名無しより愛をこめて
08/08/16 16:33:01 D8fk+3Y20
死者スレ投下の方、キャラ支給品紹介してくれている方、お二人ともGJ!

437:名無しより愛をこめて
08/08/16 16:51:55 90Odm/XT0
>>433
結局誰が書くんだ?
さくらとグレイ関係を動かしたいからそろそろあげて欲しい。

438:名無しより愛をこめて
08/08/16 17:33:15 X7A0rYr4O
>>435
修正版投下乙でした。

439:名無しより愛をこめて
08/08/16 17:45:48 X7A0rYr4O
放送に関しては、放送案のある方に仮投下スレに投下して頂いて、
複数の場合は、投票で決定するというのはいかがでしょうか?

440:名無しより愛をこめて
08/08/16 18:41:43 bnubp8+DO
具体的な話は、現在の予約が投下されてからするのが筋ではないでしょうか?


441:名無しより愛をこめて
08/08/16 18:54:56 X7A0rYr4O
>>440
それは勿論ですね。
現在のご予約が投下されてから、どなたのご予約も入らないようでしたらということで。
期間やルールなど細かな事はそれから決めていければと思います。
失礼しました。

442:名無しより愛をこめて
08/08/16 19:17:13 bnubp8+DO
>>>441
こちらこそ失礼致しました。
書き込みの仕方が悪かったです。
申し訳ありません。
放送案の投票には賛成致します。


443:名無しより愛をこめて
08/08/16 19:21:35 X7A0rYr4O
>>442
いえこちらこそ、書き方が悪かったです。
ご指摘ありがとうございました。

444:名無しより愛をこめて
08/08/18 10:44:18 BYoA9mNw0
保守

445:名無しより愛をこめて
08/08/19 00:04:39 YAJtg14dO
保守

446: ◆i1BeVxv./w
08/08/19 00:10:41 lJnQFy6y0
ただいまより投下いたします。

447:蠢くモノ ◆i1BeVxv./w
08/08/19 00:12:13 lJnQFy6y0
 砂漠エリアを渡り、採石場エリアを捜索したジルフィーザであったが、結局、ドロップを探し出すことはできなかった。
 空を見れば、日が昇り、黒から青へとその色を変えようとしている。
(一体、どこへいるというのだ、ドロップ)
 平静を装ってはいるが、内心、ジルフィーザは焦りを感じ始めていた。



 ジルフィーザ、ティターン、マーフィーの二人と一匹は都市エリアへと到着する。
 G-7エリア。砂漠、採石場、海岸、3つのエリアに隣接しているそこは、まるで林のようにビルが立ち並んでいた。
 しかし、その建物のどれもが掃除という言葉を知らないのか、汚れで真っ黒に染まっている。
「なんだこれは」
 その中のひとつの建物の前でジルフィーザは思わず足を止めた。
 まるで隕石でも直撃したかのように瓦礫の山と化したビル。
 ボロボロといっても建物の外面を残している他の建物と違い、原形を留めず破壊されている。
「何者かが、ここで戦ったのか」
 ジルフィーザは適当な破片を拾い上げる。その破片は一部が黒く焼け焦げていた。
(焦げ……炎……ドロップか?いや、これは炎の痕というより……)
 ドロップが関わっているか、否か、判断しようとするジルフィーザにティターンの声が掛けられる。
「その……ひょっとして、これにドロップが関わっているのか、疑っているのか?」
「そうだ。ドロップは子供とはいえ、まったくの無力というわけでもない。ドロップは炎を使う。もしやと思ってな」
 それを聞いたティターンは苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべた。
「ジルフィーザ、じ、実は……これをやったのは俺なんだ」
 この場所はメガブルーに襲われたティターンが反撃に雷光を落とした場所。
 思わずやってしまったが、改めてこの有様を見ると、明らかにやり過ぎだ。
「どういうことだ?貴様、殺し合いには乗っていないのではなかったのか」
「乗ってはいない。この時は、このビルの屋上から撃たれたので、つい、反撃してしまった。今は反省している」
「つい……か」

448:蠢くモノ ◆i1BeVxv./w
08/08/19 00:13:02 lJnQFy6y0
 言葉でいくら取り繕うとも、攻撃した事実は変わらない。ティターンはジルフィーザが疑惑の眼を向けていると感じ、萎縮した。
 しかし、ジルフィーザはまったく別のことを考えていた。
 ビルの破壊を『つい』というなら、ティターンはどれほどの力を秘めているというのか。
 少なくとも、自分と一戦交えた時は実力の半分、いや、三分の一も出していなかったのではないか。
(伊達に冥府の神を名乗っているわけではないということか)
 ジルフィーザはティターンに興味を持つ。ティターンが一体何者なのかと。
 だが、今は一刻を争う。頭を垂れるティターンを一瞥すると、ジルフィーザは踵を返した。
「もう、ここに用はない。先を急ぐぞ」
「ああ、わかっ……ちょっと待ってくれ、ジルフィーザ!」
「どうした」
 若干、嘆息混じりながら、ジルフィーザはティターンに視線を戻す。何やら慌てているようだが。
「いつの間にかマーフィーがいないんだ。さっきまでは一緒にいたのに」
 確かに言われて見れば、その場からマーフィーは消え去っていた。
 しかし、ジルフィーザには微々たる問題。気にせずに歩みを再開する。
「待ってくれ、ジルフィーザ」
 ティターンが制止の声を上げるが、ジルフィーザは止まらない。
 元々、ティターンが同行することを許しただけで、共に行動すると約束したわけではない。
 ジルフィーザは振り返らず、北へと進んで行った。



 ティターンは離れていくジルフィーザの背中を無念ながらも見送り、いなくなったマーフィーの捜索を始める。
 思えば、マーフィーには出会った頃から何かを探しているかの様子が見て取れた。
 ジルフィーザがドロップを捜索しているかのように、マーフィーにも探している誰かがいるのかも知れない。
 そして、マーフィーはその誰かを探しに行った。
「マーフィー!」
 ティターンは大声でマーフィの名を叫ぶ。マーフィーの俊足なら、もはやこの場にはいないかも知れない。
 しかし、ティターンは駄目元でも叫ばずにはいられなかった。
「バウ!」
 だが、意外にもその声に呼応する声が聞こえる。この声は紛れもなくマーフィーの声。

449:蠢くモノ ◆i1BeVxv./w
08/08/19 00:14:07 lJnQFy6y0
 ティターンは声が聞こえた方向へと走り出す。
「マーフィー!」
「バウ!」
 再び、名を呼べば、またもそれに応える声。
(近い。この角を曲がれば……)
 だが、ティターンが角を曲がるより先に、銀色の塊がティターンの胸へと飛び込んでくる。
 勿論、その銀色の塊はマーフィーだ。
「マーフィー、無事だったか。心配したんだぞ」
 ティターンはじゃれつくマーフィーをなだめながら、無事を確認する。
「勝手に離れちゃあ駄目じゃないか。さあ、ジルフィーザを追おう」
 大地へとマーフィーを降ろし、移動を促すティターン。
 だが、マーフィーはティターンが示す方向とは逆方向へと視線を向けた。
「やっぱりお前も誰かを探しているのか?」
「バウ」
 肯定とも取れる鳴き声と共に、マーフィーは歩き出す。
 ティターンはマーフィーの後を追いながら、思考をめぐらせていた。
(探している誰かがいるのなら、マーフィーに協力したい。だが、ジルフィーザの探し人も一刻を争う。俺はどちらを優先すべきか)
「バウ!」
 ティターンの思考を遮り、またも鳴き声を上げるマーフィー。
 見れば、その視線の先にはティターンらに支給されたものと同じディパックが鎮座していた。
「これは……お前、ひょっとして、これを知らせたかったのか?」
「バウ」
 ティターンはディパックを手に取り、状態を確認した。見れば、微かに焦げが見て取れる。
 場所も考慮すれば、自ずとこれが誰のディパックかは見当がつく。
「あの時、俺を撃った人間のものか」
 再び刺激されるティターンの罪悪感。
 ディパックの中身には幾日か分の食料が入っていることは自分のディパックで確認済みだ。
 冥府神である自分は長い期間、栄養補給を行えなくても平気だが、人間はそういうわけにはいかないだろう。
「できれば、あの人間に返したいが」
 ティターンとしては何気ない一言のつもりだった。

450:蠢くモノ ◆i1BeVxv./w
08/08/19 00:15:04 lJnQFy6y0
 だが、マーフィーはその言葉に反応し、顔を北西へと向け、吠えた。
「もしかして、お前、あの二人がどこにいるのかわかるのか?」
「バウ!」
 小気味よい返事。
 ジルフィーザも気になる。怪物の姿をした自分からは届けたとしても受け取ってもらえないかも知れない。
 だが、マーフィーの返事がティターンに勇気をくれた。
「よし、案内してくれ」



 とあるビルの一室。瞬とマトイの二人はそれぞれソファーの上に身を横たえていた。
 鋭気を養うための休憩だったが、それは瞬には逆効果だった。
(眠れない)
 仮初めとはいえ、マトイという仲間を得たことで、瞬は落ち着きを取り戻した。
 だが―
 瞬は隣でぐうすかと眠るマトイを見る。
(こんな状況だっていうのに、よく眠れるもんだ)
 レスキュー隊員であるマトイにとって、どんな状況下でも眠れるのは必須スキルなのだが、瞬は知る由もない。
(こいつ、本当に信用していいのか?) 
 冷静になった瞬はマトイに疑惑を持つ。
 レスキュー隊と思わしき服と、自分を助けたことで疑いもなく信用してしまったが、マトイが殺し合いに乗っていないという保障はない。
 確かに助けられはしたが、後々利用するために生かしているのかも知れない。手負いの参加者なら、もし自分の仲間にならなかった場合の処理も簡単に終わる。
 大体、黒装束との経緯も不可解だ。マトイは黒装束に手当てを頼むと言われたと瞬に説明した。
 だが、そんな奴が、生きていたことが奇跡と思えるほどの攻撃を行うだろうか?身を案じるなら、同行するのが筋ではないのか?
(本当はこいつと黒装束はグルなんじゃないか?片方が適当に痛めつけて、片方が甘い言葉で篭絡する。ありえる手だ)
 時間は瞬にマトイに対する疑心暗鬼を育てていく。
 瞬はデジタイザーを見た。考えてみれば、やたらむやみに変身するなというのも下手に反抗されるのを恐れているからかも知れない。
 首輪のせいとは言っていたが、自分で直接確認したわけでもない。
(やっぱりこいつはここで……)

451:蠢くモノ ◆i1BeVxv./w
08/08/19 00:15:51 lJnQFy6y0
 瞬は決意し、デジタイザーのキーに手を添えた。

―ガチャ!

 押そうと瞬間、耳に届く、不審な物音。
「誰だ!」
 思わず、瞬は大声を上げ、音のした方向を見た。その声にマトイも身を起こした。
「どうした」
「今、誰かいたんだ。窓の方から物音が聞こえて」
 一瞬だが、瞬は窓に映る人影を見ていた。身の丈2mはある大男の影を。
「ホントか。……よし」
 マトイは瞬が示した先へと、レスキューロープを手に、慎重に近づいていく。
「瞬、もしもの時は俺を置いて逃げろ。いいな」
(言われなくても、そうするさ)
 本音は口には出さず、瞬は頷くことで返答する。
 マトイはそれを確認して、ゆっくりと窓を開け、外の様子を確認した。
「……おい、ちょっと来て見ろ」
「何ですか、何があったんですか」
「いいから来い!」
 罠かと警戒しながらも、渋々マトイに従い、移動する瞬。
「これを見ろ」
 マトイは窓の外にあったものを手に取り、瞬に押し付ける。
「見覚えはあるか?」
 已む得ず手に取り、恐る恐る中身を確認すると、以前確認したものとまったく同じものが入っていた。
「……たぶん、俺のディパックです」
「なら、あいつが見つけて返しに来たのかも知れねぇなぁ」
「あいつって、黒装束の奴ですか」
「ああ。おっと、こうしちゃいられねぇ。おい!まだ近くにいるんだろ!出て来いよ!!」
 エリア全体に届きそうなほどの大声を上げるマトイ。
「ちょっと、大声を上げるなんて、何考えてるんですか!」

452:蠢くモノ ◆i1BeVxv./w
08/08/19 00:16:46 lJnQFy6y0
「瞬が聞こえた物音があいつなら、まだ遠くには行ってないはずだろ。もしかしたら、ちゃんと受け取るか、様子を見てるかも知れねぇしな。合流するなら絶好のチャンスってやつだ」
 瞬に意図を伝えると、再び大声を上げるマトイ。
(ふざけるなよ。あいつが友好的な奴とも知れないし、他の奴に気づかれるかも知れない)
 マトイの警戒心のなさに危機感を覚える瞬。その時、マトイを超える大声がエリア全体に響き渡った。
「メガブルウゥゥゥゥッ~!どこにいるんだ?早く出て来いよ~」
「な、なんだこれ……」
 瞬は呆気にとられていた。内容は理解できる。
 どっかのイカレタ殺戮者が人質をとって、自分の最も殺したい相手を誘き寄せようとしている。
 それは瞬にとって、別にどうでもいい。見知らぬ誰かが、人質を捕られようが、殺されようが、それはテレビで見るニュースと同じでどうでもいいこと。
 問題は殺戮者が呼び出しているのが自分ということ。
「おい、瞬!このメガブルーって、お前のことだよな!!」
「………」
「おい、瞬!」
「知らない……俺は知らない!」
 瞬は部屋のドアを開けると、一目散にその場から逃げ出した。
 マトイが制止の声を上げるが、関係ない。とにかく誰の声も聞こえないところまで、逃げ出したかった。
 傷の痛みも気にせずに瞬は走って走って走った。
 やがて、身体が限界を向かえた頃、瞬は足をもつれさせて転んだ。
「っわ!」
 頭から大地へと突っ込む瞬。幸いにして、転んだ場所は砂地だったため、身体へのダメージは少ない。
 だが、例え転んだ場所がコンクリートの上だったとしても、今の瞬には関係なかっただろう。
「わけがわからねぇよ。俺がメガブルーになって、まだ数週間しか経っていない。戦ったのだって、たったの二回じゃないか。
 なんで、なんで俺だけこんな目に合うんだよ。メガレンジャーは他にもいる。なんで、俺なんだよ」
 瞬は声に出して、自分の身に起きた不条理を嘆き、呪い、そして、俯きながら涙を流した。



 部屋にひとり残されたマトイは、自分の対応を後悔していた。
「戦士としての心構えを説くより、要救助者として守ってやった方が良かったかも知れねぇな」

453:蠢くモノ ◆i1BeVxv./w
08/08/19 00:17:43 lJnQFy6y0
 メガブルーという戦士に変身できることから、この場から脱出するための仲間としてマトイは瞬を見てしまった。
 しかし、瞬との話の内容を顧みれば、瞬はメガブルーを辞めたがっていた。戦いも数える程度しかしていない。
 そんな奴に、こんな切迫した状況で、いきなり戦えというのは酷な話だ。
「危険な場所に飛び込むんだ。誰だって、最初の頃は怖ぇし、信念とか、守りたいものがはっきりしてない時は勇気だって出せねぇからな」
 マトイは自分の失敗をひとりごちつつも、これからの行動に思いを馳せていた。
 瞬を追いたいのは山々だが、メガブルーを呼び出す声もマトイの興味を引いた。人質として名前を連ねたドロップの名前。しかも聞き間違いじゃなければ、子供と言っていた。
 名簿を確認した時から気になっていたことだが、ドロップは成長してサラマンデスと名乗っていたはずだ。
 それなのになぜドロップとなっているのか。それにそもそもサラマンデスは死んだはず。
「同姓同名の別人って線もありえるかもな」
 マトイは自分のディパックを担ぐ頃には、声のした方へと向かうことを決めていた。
 もし、人質に捕られたのが自分の知っているドロップなら罠という可能性も充分ある。
 だが、もし1%でも要救助者がいる可能性があるのなら、向かうべきだ。
 それに、メガブルーはいつまで待っても現れることはない。ならば、それを知る自分がメガブルーの代わりに向かうべきだ。
 そして、声の主を倒し、瞬にもう安心だと伝えてやれば、瞬も安心して戻ってくるはずだ。
「待ってろよ、瞬」
 瞬が戻ってきたときのために、簡単なメモを記し、マトイは外へと出た。
 そんなマトイにふと影が差す。マトイが振り向くとそこには銀色の犬を引き連れた黒装束の男が立っていた。
「お前は……まあ、いいや。今は一刻を争う。進みながら話すぞ」
 黒装束の男は肯くと、マトイと共に走り出した。



「待っていろ、ドロップ」
 ティターンと別れた後、当てもなく彷徨っていたジルフィーザにもメガブルーを呼ぶ殺戮者の声は届いていた。
 最初は血に飢えた殺戮者の戯言と気にも留めなかったが、ドロップの名前が聞こえた途端、彼の瞳は怒りに染まった。

454:蠢くモノ ◆i1BeVxv./w
08/08/19 00:18:49 lJnQFy6y0
 本来なら翼を広げ、一刻も早く駆けつけたかったが、小癪な能力制限がある。
 抑えられていた力が身体の中に戻っているのはわかるが、今その力を発揮することは本末転倒だ。
 血が滲みそうなほど歯を食い縛り、ジルフィーザは愛する弟のために走った。


 
 太陽が昇る。
 冷たい夜は終わりを告げ、温かい朝が来る。
 だが、降り注ぐ太陽の光はある参加者にとって、導火線へ火を点ける行為であった。
 ディパックの奥底でそれは蠢き始める。
 密閉されたカプセルの中、それは凍らせられながらも恐るべき生命力を見せていた。
 それはロンが戯れに入れた支給品。一度暴れだせば、何者の命令も聞かず、ただ殺戮のみを行う存在。
 裏次元よりもたらされし虫がゆっくりと目覚めようとしていた。


【名前】冥王ジルフィーザ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:第1話前
[現在地]:F-7都市 1日目 早朝
[状態]:健康。怒り心頭。
[装備]:杖
[道具]:支給品一式(個別支給品は確認済)
[思考]
基本行動方針:ドロップを探し、ロンを殺す。
第一行動方針:ドロップの救出と、人質に捕った相手の殺害。
備考:首輪の制限があることに気が付きました。


455:蠢くモノ ◇i1BeVxv./w:代理
08/08/19 00:25:00 sQtFlk5f0
【名前】巽マトイ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:未来戦隊タイムレンジャーvsゴーゴーファイブ後
[現在地]:G-7都市 1日目 早朝
[状態]:健康
[装備]:ゴーゴーブレス、レスキューロープ
[道具]:支給品一式(個別支給品は確認済)
[思考]
基本行動方針:みんなを救う、気合いで乗り切る
第一行動方針:メガブルーの代わりに人質を助ける。
第二行動方針:仲間を見付けてロンを倒す
備考:変身制限があることに気が付きました。

【名前】冥府神ティターン@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:Stage46(ン・マの依り代にされた)後
[現在地]:G-7都市 1日目 早朝
[状態]:健康
[装備]:ウラノスとガイアの怒り、黒装束(虹の反物@轟轟戦隊ボウケンジャー)
[道具]:マーフィーK-9@特捜戦隊デカレンジャー、支給品一式
[思考]
基本行動方針:命を守る
第一行動方針:マトイと行動する。
第二行動方針:ジルフィーザと合流する。
第三行動方針:スフィンクスを捜す。
備考:ティターンは虹の反物の特別な能力に気付いていません。首輪の制限があることに気が付きました。

456:蠢くモノ ◇i1BeVxv./w:代理
08/08/19 00:26:08 sQtFlk5f0
【名前】マーフィーK-9@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:G-7都市 1日目 早朝
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:???
第一行動方針:ティターンと行動する。
第二行動方針:知り合いを探す。

【名前】並樹瞬@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:第2話後
[現在地]:G-8砂漠 1日目 早朝
[状態]:全身打撲、応急処置済。どうしようもない恐怖。
[装備]:デジタイザー
[道具]:支給品一式(個別支給品は確認済)
[思考]
基本行動方針:元の世界に戻って、夢を叶える
備考:瞬はマトイから、×ドロップ、△冥王ジルフィーザ、○浅見竜也、○シオン、○ドモンの情報を得ました。
 変身制限があることを知りました。

備考:冥王ジルフィーザ、巽マトイ、並樹瞬のいずれかの支給品にバイオ次元虫入りカプセルが含まれています。

457:蠢くモノ ◇i1BeVxv./w:代理
08/08/19 00:26:53 sQtFlk5f0
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点、感想などがあれば、ご指摘宜しくお願いします。



458:名無しより愛をこめて
08/08/19 05:39:04 YAJtg14dO
保守したあと寝てしまったorz

GJ!
マトイの思い、瞬の恐怖、ティターンの優しさ、ジルフィーザの怒り……
そして誰かのバックの中でひっそりとうごめく次元虫。
それぞれの丁寧な心理描写と展開の練り上げ、おかしな言い方かもしれませんが「手に汗握る繋ぎ」でした。
もう一度GJ!


459:名無しより愛をこめて
08/08/19 17:02:57 Kdb40E5T0
投下&代理投下GJです!
疑心暗鬼と恐怖に駆られる瞬の姿が哀れでした。
ジルフィーザは果たしてドロップを救う事ができるのか・・・
レスキューとしてのマトイ兄さんの想いが熱かったです。
最後の次元虫には得体の知れない恐ろしさを感じました。
相変わらず描写が秀逸で、思わずハラハラしました。
重ねてGJです!

460:名無しより愛をこめて
08/08/19 17:14:40 ekDXHqw10 BE:163438823-2BP(1)
投下及び代理投下乙!

各人動き出し、放送後の動きが期待持てます。
ティターンとマーフィに期待ですが、ネジブルーの拡声器が物語のキーとなって興味深いです。
次元虫……誰につくのか、どちらにしろ波乱が……

GJ!

461: ◆i1BeVxv./w
08/08/20 22:44:45 GPP7HuUn0
ただいまより投下いたします。

462:贖罪 ◆i1BeVxv./w
08/08/20 22:45:32 GPP7HuUn0
「これは」
 理央は森の中、首と胴が分かれた死体と対峙していた。
 トイレに行ったナイとメアの帰りがあまりに遅く、探しに出た結果、見つけたものだ。
「鋭利な刃物で落とされたか」
 切り口を見れば、どのような方法で殺されたかは一目瞭然。
 だが、ただ刃物を使っただけではこうも見事には切れない。
 それなりの腕を持ったものが迷いを持たず、鋭利な刃物を振り下ろした。
 その切り口は殺し合いに乗った者が確実に潜んでいることを示していた。
「ブドーの仕業か?いや、奴は心も刀も折れていた。それに、いかに奴の腕が立つとはいえ、ゲキセイバーを瞬時に扱えるとは思えん」
 実際、手を下したのはブドーなのだが、理央はそのことには気づかない。
 ブドーの支給品も、その後の顛末も知らぬ理央がそう結論付けるのは無理からぬことだが。
「それにしてもこの姿……」
 理央は死体にまったく見覚えがなかった。
 ロンから送り出された参加者全員を事細かに覚えているわけではない。だが、こんな参加者はいなかったことは断言できる。
 しかし、どことなく雰囲気が似ている参加者は知っている。
「ナイとメア、どちらかの正体といったところか。だとすれば、もう一方は襲われ、逃げたか」
 用心深く周りを観察する理央。やがて、理央は東の方角へと歩み始めた。
 その方角の木に擦ったような切り傷がいくつか見て取れたからだ。殺戮者か、ナイとメアが移動する時に擦ったものだろう。
「すまない、メレ。お前と合流するのはもう少し先になる」
 理央はナイとメアを助け、殺戮者を倒すため、森の奥へと進んで行った。



 漆黒の暗闇の中、ふと眩しい光が灯る。その光の中には、いつも明るく元気な女の子の姿があった。
「一つ、非道な悪事を恨み。二つ、不思議な事件を追って。
 ……三つ、未来の科学で捜査。四つ、よからぬ宇宙の悪を。五つ、一気にスピード退治。六つ、無敵が何かいい……」
 女の子はお馴染みの口上を述べる。だが、その口調はいつもの彼女とは違い、どことなく覇気がない。
 そのことを疑問に思っていると、彼女はどことなく湿った声で呟いた。
「さよなら、デカレンジャー」
 その言葉と同時に、溶ける様に光へと女の子は消えていく。


463:贖罪 ◆i1BeVxv./w
08/08/20 22:46:38 GPP7HuUn0
「ウメコー!」
 センは思わず、大声を張り上げていた。



「はっ!」
 センが眼を開けると、そこには光に照らされた木々たち。
 意識が急速に覚醒する。思い出されるブクラテスとの邂逅、サンヨとの戦い。
 センは自分が夢を見ていたことを自覚した。
「夢か……それにしてもなんて夢だ」
 自分の仲間であるウメコがデカレンジャーに別れを告げる夢。
 いつもなら笑い飛ばせなくもないが、今、この場で見る夢としてはこれ以上ない悪夢だ。
 センは上体を起こし、首を振って、嫌な考えを振り払う。
 そこでふと、自分の身体に施された処置に気づいた。
 打撲は水を含ませた布が当てられ、左肘の骨折は副え木で固定されている。
「気がついた?」
 聞き覚えのある女性の声に、センは視線を向けた。
 そこにはセンの思った通りの姿があった。
「スワンさん。無事……というわけじゃないみたいですね」
 一瞬、安堵の表情を見せたセンの顔がたちまち曇る。
 スワンのトレードマークと言うべき白衣は真っ黒に染まり、身体のいたるところに応急処置の後が見られた。
 この数時間、自分と会うまで、スワンがどれほど苦難の道を歩んだか、想像に難しくない。
「でも、スワンさんと会えてよかったです」
 自分の正直な気持ちを語るセン。まだまだ油断は出来ないが、これからは自分が守ればいい。
「私もセンちゃんに会えてよかった」
 だが、スワンの表情はどことなく沈んでいた。セン以外の誰かなら、傷を負った痛みのせいと思ったかも知れない。
 しかし、センはスワンの瞳から光さえ消えていることを見抜く。まるで死人のような眼だ。
(何かおかしい)
「……ねぇ、センちゃん。私を殺してくれないかしら」
「なっ!なにを言ってるんですかスワンさん!!」

464:贖罪 ◆i1BeVxv./w
08/08/20 22:47:39 GPP7HuUn0
「大丈夫よ。私にはきっとデリート許可が出るわ。だって私、人を殺してしまったんですもの」
 スワンは今までの経緯をセンにポツリポツリと語り始めた。
 人間香水を支給されたこと。それをロンへの反撃の狼煙として燃やしたこと。
 理央に殺人者と罵られ、殺されかけたこと。その後、シュリケンジャーと出会い、人間香水の意味を教えられたこと。
 耳を塞ぎたくなる事実にセンは苦悶の表情を浮かべた。
 だが、センは冷静さを失わなかった。
 事情はわかった。センは言葉を慎重に選び、スワンの説得を試みる。
「スワンさん。亡くなられた方には残酷かも知れませんが、あなたのせいじゃない。
 過失致死には問われるかも知れませんが、デリート許可は下りないでしょう」
「でも、殺してしまったことには変わりないでしょ」
「……っぅ…………そうですけど……裁かれる時は今じゃない。ここから脱出した後です」
「………」
「とにかく、俺はスワンさんを殺すつもりはありませんし、誰かに殺させるつもりもありません。だから、スワンさん、死んじゃ駄目です」
「そう。……じゃあ、仕方ないわね」
 うな垂れるスワンを見て、センはとりあえず死ぬことは諦めてくれたと思い、胸を撫で下ろす。
 しかし、スワンはボソリと呟いた。
「エマージェンシー」
 デカメタルに包まれ、一瞬の内にデカスワンへと変身したスワンはセンを突き飛ばした。
 そして、大地に転がっていた剣、デュエルボンドソードを手に取ると、それをセンに向けた。
「何をするんですか、スワンさん!」
「仕方ないの。私を殺してくれないなら、私は優勝するしかないの」
 センが疑問に思っている暇もなく、振り下ろされる剣。センは地面に転がり、紙一重でそれを避ける。
(スワンさんは本気だ。本気で俺を殺そうとしている)
 殺気は感じなかったが、迷いもなく振り下ろされた剣に、スワンが本気であることを悟るセン。
 考えている間にもデカスワンはセンへと次々と斬撃を放って来る。
 センはそれをなんとかそれを避け続けるが、満身創痍の状態で、変身している相手に対応するのは不可能に近い。
 已む得ず、センは自らのSPライセンスを握り締めた。
「エマージェンシー!デカレンジャー!!」

465:贖罪 ◆i1BeVxv./w
08/08/20 22:48:52 GPP7HuUn0
 センのコールを受け、転送されたデカメタルがセンの身体に装着し、センをデカグリーンへと変える。
 デカグリーンは左腰に装備されたディーロッドを手に取り、デュエルボンドソードを受け止めた。
 盛大に飛び散る火花。デカグリーンは力を込め、デュエルボンドソードを跳ね除けると、そのまま後方転回し、デカスワンと距離をとった。
「スワンさん、やめてください!」
 デカグリーンの制止の声に、前へ出ようとしていたデカスワンの動きが止まる。
「デカグリーンになったのね、センちゃん。いいわよ、やめてあげるわ」
 デカスワンはデュエルボンドソードから手を放す。カランと音を経て、地面へと転がるデュエルボンドソード。
 だが、デカグリーンが安堵したのも束の間、デカスワンはまるで白鳥が羽根を広げるように手を広げると、デカグリーンに言い放った。
「さあ、センちゃん、私を殺しなさい」
 そのまま、ゆっくりとデカスワンは前へと進む。
 隙だらけのその様は、ハッタリでもなんでもなく、スワンが死を求めていることを明確に語っている。
 確かに前へと進み、ディーロッドをその胸に突き立てれば、殺すことは容易だろう。 
 だが、デカグリーンにそんなことが出来ようはずもない。
 前へ進むデカスワンとは対照的に、デカグリーンは威圧されたかのように後ろへと下がる。
 だが、やがてデカグリーンは屹立する木に邪魔され、後ろに下がれなくなった。
 二人の距離が間近に迫った時、デカスワンはディーロッドを手に取り、自分の心臓へと導く。
「センちゃん、さあ」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
 荒くなるデカグリーンの呼吸。
 子供の頃、古井戸に落ち、暗闇に閉じ込められた時もここまでの恐怖を感じたことはなかった。
 だが、恐怖に溺れている暇はない。デカグリーンは勇気を振り絞り、右手を引く。
「そう、できないのね」
「ハァ、ハァ、ハァ、できません。スワンさんもわかるはずです。俺たちに人を殺すことは―」
 デカグリーンの言葉は、頭部を襲ったデカスワンの蹴りによって遮られた。脳を揺らされ、大地へと倒れこむデカグリーン。
「もういいわ。ドゥギーならきっと私を殺してくれる。センちゃんを殺せば、私は立派な犯罪者ですもの。デリートの対象にだってなるわよね」

466:贖罪 ◆i1BeVxv./w
08/08/20 22:49:42 GPP7HuUn0
 罪を償うために人を殺す。矛盾した台詞を吐きながら、デカスワンは再び、デュエルボンドソードに手を伸ばした。
「きゃっ!」
 手元から火花が飛び散り、デカスワンはデュエルボンドソードを取り落とす。
 何者かがデカスワンを攻撃したのだ。
「誰!?」
 デカグリーンではない。光弾はまったく別の方向から飛んできた。
「しぶとい奴だ。まさか生きていたとはな」
「あなたは!」
「今度こそ……止めを刺してやる」
 デカスワンの傷が疼く。太陽の光を背にして佇むのは、自分の身体にいくつもの傷を刻み込んだ男―理央。
 デカスワンは本能的に後ずさった。以前、戦った時にはまったく歯が立たなかったのだ、当然だろう。
「いくぞ」
 理央は手に持った武器、自在剣・機刃をキバショットからキバクローへと変え、デカスワンに迫る。
「っ!」
 デカスワンは理央の頭部へと向けて、ハイキックを放った。
 怯えているというのに、その蹴りは鋭く、理央でさえ昏倒させるほどの威力が込められていた。
 無論、当たればだが。
「ぐ……っぁ」
 変身している者と変身していない者には歴然とした能力の差がある。
 だが、理央の獣拳使いとしての経験はその差を埋めて有り余るものだった。
 理央はデカスワンの蹴りを身体を捻ることで避け、そのままその回転を利用し、キバクローの一撃を腹にめり込ませた。
 スーツに隠されて外観からはわからないが、デカスワンの口からは赤黒い血が吐かれる。
「ふっ」
 理央が手を離すと、デカスワンの身体は崩れ落ち、大地へと突っ伏した。
 理央はその姿を見遣り、機刃を再び、キバショットに変形させ、彼女の首輪に狙いを定める。
「同じ愚は犯さん」
「させるか!」
 理央が撃つより早く、意識を取り戻したデカグリーンが、彼を後ろから羽交い絞めにし、動きを封じた。
 先程まで、デカスワンに殺されかけていたというのに邪魔をするとは、理央にとっては予想外の行動。
 力を込めるが、流石に変身中のデカグリーンを振りほどくほどの力は、今の理央にはない。

467:贖罪 ◆i1BeVxv./w
08/08/20 22:51:07 GPP7HuUn0
「なぜ邪魔をする?あいつはロンのスパイ。助ける価値はない」
「違う!スワンさんは俺たちの仲間だ。確かにスワンさんは人を殺してしまった。それが誰かにとって、大事な人だったかも知れない。
 だけど、それはスワンさんの意思じゃない。真に裁かれるべきはスワンさんをそんな状況に陥れた人物……ロンだ!」
 振りほどこうとしていた理央の動きが止まる。
「スワンはロンに利用されていたということか」
「そうだ。スワンさんの支給品は人間香水と亡国の炎。スワンさんはこれを使うことをよしとせず、その場で破壊した。
 だけど、人間香水はその名の通り人間で作られた香水で、作られてから24時間以内なら復活は可能だったんだ。
 スワンさんはそれに気づかず、人間香水にされた人を結果的に殺してしまった」
「………」
「あなた、理央さんですよね。あなたと会ったとき、スワンさんはまだそのことに気づいていなかった。
 でも、あなたに襲われた後、スワンさんは確認に行き、そのことに気づいた。そして、後悔し、錯乱してしまった」
 理央はデカスワンを見た。先程までの厳しいものではなく、憐れみをもった視線で。
(こいつも俺と同じ……か)
 理央は自分の方が罪は深いことは承知している。だが、理央はスワンに親近感を持ち始めていた。
「……離せ。もうスワンに危害は加えない」
 デカグリーンは理央の言葉に安心し、力を緩めようとした。
「離さないで!」
 怒号が響き渡る。
 ぬるりと、まるでゾンビのように立ち上がるデカスワン。
 いつの間に拾ったのか、三度、その手にはデュエルボンドソードが握られていた。
「うん。あなたがいいわ。私を虐めたあなたなら、罪悪感なんてなさそうだもん」
 デュエルボンドソードを脇に構え、理央目掛け、身体ごと突っ込んでいくデカスワン。
 理央はデカグリーンに拘束され、動けなかった。デカグリーンも反応が遅れ、動けなかった。
 その場で動けたのはデカスワンひとり。


468:贖罪 ◆i1BeVxv./w
08/08/20 22:51:59 GPP7HuUn0
 だが、その時、不思議なことが起こった。
 唐突に無数の赤く丸い光を放ち出すデカスワンの身体。
 いや、いつの間にかその変身は解け、白鳥スワンの姿へと戻っていた。
 そして、剣が理央の身体に届こうとした頃、スワンの身体はまるで溶けるように―虚空へと消え去った。
 それは一瞬の出来事。理央もセンも何が起こったのかわからない。
 ただ、ひとつの事実として、白鳥スワンはこのバトルロワイヤルから脱落した。



「ふむ、やはりライフルは勝手が違うな。当たるには当たったが狙った箇所からは程遠い」
 理央たちから離れること数m。そこに剣将ブドーの姿はあった。忍び足で少しずつ、理央たちとの距離を離している。
 バンキュリアを殺した後、ブドーはライフルの鍛錬を行っていた。
 手裏剣や弓矢なら心得があるが、ライフルを扱うのは初めて。使い方は理解したが、果たしてどれほどの精度で撃てるものか。
 試し撃ちできるものはないかとスコープを覗いて辺りを見回していた時、思わぬものが視界に入ってきた。
「これはなんたる僥倖」
 その時、スコープに見えたのは宿敵と見定めたセンの姿。しかも、しばらく様子を窺っていれば、理央も姿を現した。
 ブドーはどちらかを仕留める絶好のチャンスと消滅の緋色をライフルに込める。
 これならば、未熟な腕でも当てさえすれば、確実に相手を仕留めることが可能。
「弾は一発。さて、どちらを狙ったものか」
 二兎を追うものは一兎をも得ない。制限もある。
 ここは確実に一人を仕留め、その後、深追いせずに撤退するのが賢い考えであろう。
 ブドーはスコープを覗き、チャンスを待った。
 すると、理央がセンに羽交い絞めにされ、動きを封じられた。しかも、ブドーの位置からは丁度正面。
 ブドーは引き金に指を掛ける。
 しかし、そこで邪魔が入る。女が理央とセンに向けて、剣を握った。このままでは理央もセンも女の犠牲になるのは明らかだった。
 そして、ブドーは引き金を引いた。
「未練よな。この歳にもなれば、性格はそう簡単には変えられぬか」
 信念など不要。手段など選ばぬ。
 そう誓ったばかりだというのに、自分以外の手で理央とセンが死ぬのが我慢ならなかった。


469:贖罪 ◆i1BeVxv./w
08/08/20 22:53:05 GPP7HuUn0
「まあよかろう。優勝に近づいたのは確かなこと。理央とセンの居場所も知れた。今は制限が終わるまで、ゆるりと待つとしよう」
 理央とセンから充分離れたと判断すると、ブドーはその場に腰を据える。
 そして、腹ごしらえと、支給されたライスバーガーを食べ始めた。
「うむ。中々である」
 残された理央やセンの気も知らず、ブドーは舌鼓を打った。

【白鳥スワン 消滅】
残り34名


【名前】江成仙一@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:Episode.12後
[現在地]:C-8森 1日目 早朝
[状態]:左肘複雑骨折、全身打撲(応急処置済)。デカグリーンに変身中。
[装備]:SPライセンス
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:仲間たちと合流して脱出。
第一行動方針:スワンさんはどうなった?
備考
・制限が2時間であることを知っています。
・スワンの装備は消滅の緋色により消滅しました。基本支給品はB-9のどこかに散らばって置き去りにされています。
 炎の騎馬はセンと理央が確認できる距離に置かれています。


470:贖罪 ◆i1BeVxv./w
08/08/20 22:54:00 GPP7HuUn0
【名前】理央@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:修行その47 幻気を解き放った瞬間
[現在地]:C-8森 1日目 早朝
[状態]:健康。肩から脇の下にかけて浅い切り傷。ロンへの怒り。1時間強変身不能。
[装備]:自在剣・機刃
[道具]:支給品一式。
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗った相手には容赦しない。
第一行動方針:スワンはどうなった?
第二行動方針:ナイとメアを探す(どちらかは死んだと思っています)。
第三行動方針:メレと合流する。
※大体の制限時間に気付きました。

【名前】剣将ブドー@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第24章(ギンガマンに敗れた)後
[現在地]:C-8森 1日目 早朝
[状態]:胸と腹に中程度のダメージ。肩に銃弾による傷。能力発揮済。1時間強戦闘不能。
[装備]:ゲキセイバー@獣拳戦隊ゲキレンジャー、一つ目のライフル銃@魔法戦隊マジレンジャー、手裏剣少々@星獣戦隊ギンガマン
[道具]:筆と短冊。サイコマッシュ@特捜戦隊デカレンジャー。予備弾装(銃弾7発、催涙弾5発)。支給品一式(ブドー&バンキュリア)。真墨の首輪。
[思考]
基本方針:戦い、勝利する。
第一行動方針:休憩しつつ、理央とセンの様子を窺う。
第二行動方針:リオを倒せるほどに強くなる。
第三行動方針:優勝を目指す。
※首輪の制限に気が付きました。


471:贖罪 ◇i1BeVxv./w代理
08/08/20 23:31:15 mPU0QBOlO
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点、感想などがあれば、ご指摘宜しくお願いします。
最後の最後で投下できなかったorz

472:名無しより愛をこめて
08/08/20 23:37:15 TplPGwcZ0 BE:490315436-2BP(1)
投下乙です。
センとスワンさん、合流できたのに、残ったのは不幸のみ……。
ブドーの己の信念を捨てきれない未練の描写もうまかったです。
一つ目のライフルの効果を忘れたのでスワンさんがどうなったのか、興味深いです……。
GJ!

473:名無しより愛をこめて
08/08/20 23:42:03 z0jAU51jO
投下&代理投下乙です!
うわぁぁっ、スワンさん。
不思議な事が起こってしまったか……。センちゃんに感情移入してしまって胸が痛い。
そしてなんという速さでの投下、クオリティの高さ、面白かったです。
GJ!

474:名無しより愛をこめて
08/08/21 00:17:56 UQPKm8NLO
投下GJです!
ああ、スワンさん…
せめてもの救いはセンや理央を手にかけずにすんだ事でしょうか。
目の前でスワンさんが消え、そしてこれからウメコの死を知るセンの気持ちを思うと切なくなりました。
それにしても相変わらずの速筆、そして細やかな描写、お見事でした。
GJです!

475:名無しより愛をこめて
08/08/23 19:08:29 bh7A0uwJO
保守

476:お知らせ
08/08/24 02:10:55 5jXc+o19O
いよいよ第一回放送ですね。
そこで>>439で提案していだだいたように放送案を募集します。
放送案のある方は、今日から一週間をめどに仮投下スレへ放送案を投下してください。
(複数の場合は投票にて決定)
以上、よろしくお願いいたします。

477:名無しより愛をこめて
08/08/25 16:50:56 PaosJpMQO
保守

478:名無しより愛をこめて
08/08/27 08:32:34 YNsZL0IXO
保守

479:名無しより愛をこめて
08/08/28 08:07:09 5DQT7hWI0
板違いです
二次創作は以下の板でどうぞ
URLリンク(namidame.2ch.net)

480:名無しより愛をこめて
08/08/29 17:32:12 BqhgT1H8O
保守

481:名無しより愛をこめて
08/08/30 10:50:24 BCLS6gbs0
保守

482:名無しより愛をこめて
08/08/30 12:58:40 SQf4bP2YO
保守

483:名無しより愛をこめて
08/09/01 18:00:06 8oP/HPTd0
保守をするのも私だ。

484:名無しより愛をこめて
08/09/01 19:46:34 4VAGz0NT0
散ればこそ 華美しく 名を残し 今一度の……保守

485:名無しより愛をこめて
08/09/02 23:40:32 yywW76vgO
保守……それは聖なる力。
保守……それは未知への冒険。
保守…そして、それは勇気の証!

486: ◆Z5wk4/jklI
08/09/03 00:14:10 XbiX5QOPO
保守乙ですw
放送案を本投下させて頂きます。

487: ◆Z5wk4/jklI
08/09/03 00:15:40 XbiX5QOPO
定刻六時00分00秒、頭と胴を分かたれたバンキュリアの首輪から、にわかに金色のもやが放たれた。
吐き出されたもやは一つ所に集まると、ある男の姿を映し出した。
このバトルロワイアルの主催者にして、悪趣味な児戯の仕掛け人たる無間龍、ロン。
彼は、捉えどころなくゆらゆらと揺れる写し身の向こう側で軽く咳払いをした。
『皆さんおはようございます。この六時間いかがお過ごしだったでしょうか?
さて、定時の放送です。
皆さんの命に関わる事もお話しますのでよーく耳を傾けて下さいね。
まずは亡くなられた方からお知らせいたしましょう。
伊能真墨、ウルザード、小津麗、小津深雪、胡堂小梅、白鳥スワン、冥府神スフィンクス、妖幻密使バンキュリア、以上の八名になります。
皆さん、大変お楽しみのようで私としても嬉しい限りです。
お嘆きの方もいらっしゃるでしょうが、ご心配なく。
貴方が最後のお一人になればちゃーんと生き返らせて差し上げますよ。
そう、あの小津勇のようにね。
お察しの方もいらっしゃるでしょうが、ええ、その通りです。
ウルザード、いえ、小津勇は私が生き返らせました。
皆さんの殺し合いをより楽しく進める為の役割を期待していたのですが、早々にやられてしまったようで少しばかり残念です。
まあ、もっともこれで私の力もお分かり頂けた事でしょうが。
ああ、それからこれより二時間ごとに禁止エリアを設けさせていただきます。
会場の中をただ逃げ回る、というのも一興かもしれませんが少々面白みにかけますし、少しばかり趣向を凝らせていただきました。
まず、七時に都市Fー4、九時に都市Gー5、十一時に都市Fー6が禁止エリアになります。
足を踏み入れれば、二十秒で首輪が爆発するように仕掛けを施させていただいていますので、うっかり首輪と一緒に首を飛ばさないよう重々お気をつけ下さい。
残る人数は三十四人、皆さんのご健闘をお祈りいたします。
それでは、また六時間後にお会いいたしましょう』
その言葉を合図にしたように、もやはまるで何もなかったように掻き消える。
後には、言葉を発する事も動く事も出来ないバンキュリアの姿と、参加者達の抱くそれぞれの思いだけが残された。

488:名無しより愛をこめて
08/09/03 03:11:33 gObES/cIO
第一回放送 投下乙でした。
内容も解りやすくて助かります。

さて、これを聞いた参加者たちどうするかな。
今後の展開を楽しみにしつつ、投下した氏に盛大なGJを送ります。
GJ!

489:名無しより愛をこめて
08/09/03 21:58:12 36KOgPql0
板違いです
二次創作は以下の板でどうぞ
URLリンク(namidame.2ch.net)

490:◇5h3T6s3PXc氏へ業務連絡
08/09/05 14:55:27 m/ccudCd0
◆5h3T6s3PXc氏
放送まで時間がかかってしまいました。
まだ見ていて下さると良いのですが……

連絡事項は氏が以前投下なさった「奇妙な二人」についてです。
放送案が投下されたので、仮投下・一時投下専用スレッドの>>111>>116までを
再投下なさるかどうかの意思表示をお待ちしております。
出来れば週明けまでに本スレかしたらばのどちらかにレスを下さい。
週明けというのはあくまで目安ですが、週が明けた時点で氏からのご連絡がなく、
他の書き手氏が予約を申し出た際は、他の書き手氏の予約を優先させて頂くことをご了承下さい。

なお、投下の際には指摘点の修正をお願い致します。


491:名無しより愛をこめて
08/09/06 23:12:45 lXGjU8eS0
持続戦隊ホシュレンジャー参上

492:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:45:19 Z9Q5TBIY0
人差し指に灯した炎に口に咥えた煙草を近づける。
そのままゆっくりと息を吸い、紫煙を燻らせていく。
表情のないはずの顔に思考を満たした満足げな表情が僅かなりとも見えるのは気のせいだろうか。
辺りに広がる煙草独特の匂いに西堀さくらは露骨に顔をしかめて見せた。
「ここがどこだか分かっているんですか! 敵に気づかれたらどうするんです!?」
さくらの非難を聞いているのか、聞いていないのか、グレイはもう一度大きく息を吸い込んだ。
「隠れる必要などない。戦って奪い返せばいい…それだけのことだろう?」
事も無げにややくぐもった低い声を上げる。
二本の指の間に煙草を挟んだまま視線をさくらと合わせようともしない。
眉間にきつく皺を寄せ、さくらは目の前の黒い装甲の男を睨み付けた。
両者の間に流れる険悪なムードからは、二人が殺し合いを始めないのが不自然にすら思えてくる。
全ては1時間ほど前にはじまった。

「絶対に俺は助けに行くぞ! 絶対だ!!」
グレイの索敵により、何者かが『メガブルー』を呼び出し、殺し合いをはじめようとしていることはほぼ間違いがない事実であった。
あろうことか、そのための人質を用意して。
陣内恭介はすぐにでも助けに行くべきだと主張した。
人質はどちらも面識のない人物であったが、囚われの身で死と隣り合わせの恐怖を味わうものを見捨てておけるはずはなかった。
特に恭介はメガブルー…並木瞬を知っている。友の危機を見過ごすわけにはいかなかった。
「駄目だ。戦いには私が行く。お前たちはここに残れ」
先ほどまで黙していたグレイが急に口を開いた。
「おい! 貴様!! 戦いに行くんじゃない! 人質となったものたちを救出に行くんだ!! 


493:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:49:01 Z9Q5TBIY0
履き違えるな!!!」
傷の痛みを押してドギーがグレイを牽制する。
両者の視線が交わる。
「……どちらにしても貴様がいては足手まといだ。ここに残ってもらおう。異論は聞くつもりはない」
「なんだと!!」
「止めてください、二人とも!! 今ここで争っても仕方がないでしょう!?」
一触即発の雰囲気に耐え切れずシオンが場を収めようと必死で二人を説き伏せにかかる。
だが。両者の間の溝は埋まりそうもなかった。
それに、傍らの恭介はいまにも飛び出していきそうな雰囲気だ。
「守る…か…しかし、合って間もない連中をよくそこまで信頼できたものだな。
一人になったあの男にシオンとやつが二人掛かりで襲い掛かるとは思わなかったのか?」
グレイの問いかけにさくらは立ち止まらずに答えた。
「それはありえません。ドギー署長は怪我を負っています。なのにシオンさんは彼を見捨てることはせず、労わり共に行動しています。
こんな状況下でいくら実力者とはいえ怪我人を抱え込む決断はそうそうできるものではありません。そんな彼が今更恭介さんを襲う理由なんてあるはずがない…私はそう判断しました」
さくらもまたグレイの問いかけに目線をあわせようともしない。
「…むしろ、分からないのはあなたです。グレイ」
さくらは立ち止まりグレイと始めて正面から向き合った。
「…………―」
「私たちの星は様々な勢力の侵攻を受けてきました…宇宙、地底……そして異次元。
中でも激しかった戦いとして記録に残るのが私たちの住む三次元と隣り合わせに存在する裏次元からの侵略者…『次元戦団バイラム』」

494:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:50:00 Z9Q5TBIY0
「………………――」
「バイラムの詳細なデータはその根拠が我々人類をしていまだ立ち入れぬ領域の異次元にあること…それに組織壊滅後の今となっては殆どが謎のままです…直接相対した鳥人戦隊でさえ、その全貌を知るには至らなかった……
ですが、その戦いを生き抜いた者の僅かな証言から、人間を虫けらのように冷徹に処理する漆黒の殺戮マシーンが存在していたとの記録が後世の私たちに伝えられています…その者の名は…“グレイ”」
「…知っていたのか……」
正体を看破されても動じる素振り一つ見せない。刺す様なさくらの眼差しを一身に受けてもグレイは身じろぎもしなかった。
「何が目的なんです?! なぜ、あの二人と行動をともにしていたんです!!」
目的。
天を仰ぎながらグレイはその言葉の響きをひどく空虚に感じていた。

『次はあなたです…グレイ』

始まりの空間。全てが黒に包まれたその場所で。
『あなたがその気になれば…バイラムの再興もまたかなうでしょう…場合によってはその領袖となることも……―』
「…政治に興味はない。生身の連中の気苦労を散々見てきたものでな…」
『失礼。あなたはそんなことに関心を抱くような方ではありませんでしたね……それでは…
マリアを甦らせると言うのはいかがでしょう? あなたの腕の中で崩れた女の身体と心を今一度
現世に甦らせるのです……今度はあなたの永久の伴侶として』
―マリア。彼女の温もりが腕の中から消えていくその刹那までをグレイは克明に記憶している。
機械のグレイに忘却はありえない。恐らく何百年、何千年たってもあの瞬間を昨日のように鮮明に思い出すのだろう。それは、確かに痛みといえるのかもしれなかった。
「いかがです?」

495:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:50:49 Z9Q5TBIY0
男の誘いは甘美に満ちていた。男はグレイに期待していた。
無論、ゲームを率先して盛り上げるマーダーとして。
ガイ、ネジブルーに並ぶ純粋に戦いを愉しむ者として。
そのために彼がもっとも強い目的意識を持ってゲームに臨めるタイミングを選んだのだ。
だが。

「そうした誘いならばレッドホークを呼ぶべきだったな…ロンとやら。餌で釣るならばブラックコンドルでも用意してもらったほうが有難かったぞ」

グレイの返答はロンにとってひどく意外なものだった。
これまで、ロンの誘いに迷いを見せなかったのは明石暁をはじめほんの数人だけだったからだ。
「…フフ…だが安心しろ。私は戦いに乗ってやる……精々、貴様の始めたこの馬鹿げたゲームの駒として立ち回ってやろう…私は戦えさえすれば…後は……どうでもいい」
呆気にとられるロンを横目にグレイは人間で言う“笑み”に近い感情を見せた。
グレイにとってロンが何を画策しようがどうでもいいことだった。
参加者の多くが脅威を感じている金色の首輪も生命に関する執着が限りなく薄らいだ、今のグレイにはどうというものでもない。
「目的は何だと聞いているんです!! バイラムの再興ですか!?」
さくらの穿つ問いかけにグレイは淡々と答えた。
「組織はもう、関係ない。ラディゲはまだやるつもりらしいが、バイラムはもう終わりだ。
それは後の時代の貴様らの存在が証明している」
「時間軸のずれに気づいていたんですか!」
グレイの意外な返答にさくらは思わず聞き返していた。
「当然だ。あれだけ話の噛み合わない連中と喋っていれば馬鹿でも気づく。
加えて戦闘力の発揮にも制限が加えられているな。最初は身体の故障かと思ったが、
十分ほどの戦闘後、全身のあらゆる武装にきっかり二時間なんの反応もなかった。
シオンは私をそのままに修復したといった。
やつの腕は確かだ。原因は恐らくはこの首輪の効果だと考えて間違いあるまい」
「二時間…それが時間制限の正確な時間だと?」
「お前たち生身より時間には正確なはずだ」
確かにロボットであるグレイの時間を計る正確さは参加者の間でも随一だろう。
「それをなぜ私に?」
「…理由はない」
「納得できません」
再び両者の間に緊張が走る。

496:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:52:52 Z9Q5TBIY0
「お前の目的は私と争うことか? 人質の救出とやらが最大の目的だろう。私をやつらから遠ざける意図も合ったように感じられるな」
「それともう一つ…あなたを霧払いに人質を救出する腹です。異論はありませんよね?」
「無論」
その時だった。
天空に高揚した男の声が轟いたのは。

『皆さんおはようございます。この六時間いかがお過ごしだったでしょうか?
さて、定時の放送です。
皆さんの命に関わる事もお話しますのでよーく耳を傾けて下さいね―…』

「これは…!」
「あぁ…奴の声だ」
間違いなかった。このゲームの主催者ロンの丁寧だが陰湿な響きを持つ声が四方全てから聞こえてくる。

『皆さんの命に関わる事もお話しますのでよーく耳を傾けて下さいね。
まずは亡くなられた方からお知らせいたしましょう。
伊能真墨、ウルザード、小津麗、小津深雪、胡堂小梅、白鳥スワン、冥府神スフィンクス、妖幻密使バンキュリア、以上の八名になります。
皆さん、大変お楽しみのようで私としても嬉しい限りです。
お嘆きの方もいらっしゃるでしょうが、ご心配なく。
貴方が最後のお一人になればちゃーんと生き返らせて差し上げますよ…』

どこから聞こえてくるのか、全く方向がつかめない。参加者全員の頭に直接メッセージを流し込んでいるらしい。
その時だった。
「うっ!」
さくらの視界に一瞬歪が生まれ、こことは別の光景が現れる。

497:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:55:12 Z9Q5TBIY0
「これは…“ブラック”!?」
「!?」
ブラック。その言葉にグレイも一瞬反応する。
視界一杯に繰り広げられるボウケンブラック…伊能真墨の戦う姿。
やがて彼は変身を解かれ、地面へ這い蹲る。
必死でアクセルラーを起動させようともがく彼の頭上に迫る大きな足。
「そんな…!! 真墨…!!」
真墨の頭が強い圧迫を受けて徐々にひしゃげていく。そして、鮮血と共に爆ぜた。
「そんな…そんな……! 真墨が…真墨が……!!」
先ほどまでの冷静な態度をかなぐり捨てて叫ぶ。慟哭に支配され、我を失った。
「どうした?」
さくらのただならぬ様子にグレイが声をかけるが、茫然自失のさくらはそれに反応しない。
愕然とした。膝の力が抜ける。
そのまま地面に座り込んだ。あれほど警戒していたグレイに背を向けても全く意に介さない。
「そんな…本当に…死んでしまうなんて…」
「今の放送…仲間が混ざっていたのか?」
グレイはボウケンブラックを知らない。
だが、“黒を纏う戦士”の死に様は聞いていてあまり気持ちのいいものではなかった。

『……残る人数は三十四人、皆さんのご健闘をお祈りいたします。
それでは、また六時間後にお会いいたしましょう―…』

先ほどまでとは打って変わってさくらには強い動揺が生まれている。
とても戦いに臨める状態ではないのは明白だ。
「…行きましょう……」
さくらが小さく言葉を発する。
「何だと…?」
「行きましょう…私たちには人質となった方の救出という“目的”があります。こんなところで立ち止まっている暇はありません」

498:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:56:19 Z9Q5TBIY0
振り向いた顔は既に先ほどの毅然としたさくらだった。
仲間の死をまざまざと見せ付けられたショックなどおくびにもださない。
「…いいのか」
何に、対してなのか口にしたグレイにも分からない。
だが、さくらは自らに課せられたミッションに対しどこまでも忠実だった。
本物の機械であるグレイが驚くほどの冷静さで。
だが、その手は僅かに震えている。グレイはさくらのかすかな、ほんのかすかに残った恐怖を見てみぬ振りをした。

放送を終え、ロンは参加者全体に広がる、怒り、悲しみ、困惑に身を浸していた。
いつまでもそうしていたかった。
なんという心地よさだろう。これだから、他者を弄ぶのは止められない。
箱庭の憐れな囚われ人たちが迎えた最初の朝日。
しばしば生命誕生の象徴に例えられるその輝きを彼らはどのような思いでみつめているのか。
誰があの日輪に希望を見出せるだろう。
過ぎ去った命が夜と共に永遠に彼岸の向こうへ誘われるのを、とめることも出来ずにいるというのに―
「さぁて…蒔いた種が次の6時間でどのように成長するか…楽しみですねぇ……」
不敵な笑みを浮かべながら、金色のローブで自らの愉悦の表情を覆っていく。
これから、更に凄惨な死が満ちる予感に心を躍らせながら。

「最も惨めで残酷な死をあなたに…その約束きちんと果たさせて頂きましょう……―」

龍の悪意は、底を知れない―



499:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:57:35 Z9Q5TBIY0
【名前】西堀さくら@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:G5エリア 1日目 早朝
[状態]:健康 (ただし、ロンによる洗脳を受けており、いつでも傀儡になる危険性あり)
[装備]:アクセルラー
[道具]:ガラスの靴、虫除けスプレー、虹の反物の切れ端
[思考] 基本行動方針:仲間と合流し、ここから脱出する。
    第一行動方針:恭介たちと共闘して仲間を増やす。このゲームのルールを把握する。
    ※)裏行動方針:ロンの言われるままにいいように操られ、見苦しく惨めな死に様を晒す。
     ただし、本人にその自覚はなく洗脳行動も全て自分の意思であると思い込む。

【名前】グレイ@鳥人戦隊ジェットマン
[時間軸]:49話(マリア死亡)後
[現在地]:G5エリア 1日目 早朝
[状態]:健康?
[装備]:自らのパーツ全て
[道具]:遠距離射撃用ライフル(残弾数4発) 支給品一式
[思考] 基本行動方針:未定。第一行動方針を果たした後の行動は決めていない
    第一行動方針:自分の納得のいく形でシオンに借りを返す。
    現在はさくらと共に人質を救出すべくネジブルーの元へ。


500:◇8ttRQi9eks氏の代理投下
08/09/08 01:58:22 Z9Q5TBIY0
お待たせしました。改めましてはじめまして。トリバレしたとのご意見を伺い、今後はこの名前で書かかて頂きます。
修正版をお送りします。内容も若干放送に合わせて変えました。
実は全員参加の放送SSも書いていたのですが、いかんせん構想が実力を超えていて間に合いませんでしたw
このままだと誰も書かないのかと思っていたので、◆Z5wk4/jklIの投下は安心しました。
最後のロンは未練たらしく没案を一部流用してますw
どなたかにおすがりする事になりますが、本スレへの投下を頂くと幸いです。
本当にお待たせして申し訳ありませんでした。



代理投下終了。

501:名無しより愛をこめて
08/09/08 12:09:53 N6iSQMOp0
投下&代理投下GJです。
ハードボイルドなグレイと、平静を装うさくら姐さんの描写が素晴らしいです。
さくら姐さんはついにカウントダウン開始!?
というか、ロン怖い、ロン怖いよw


502:名無しより愛をこめて
08/09/08 17:40:38 SlmZ4/hJ0
代理&投下乙!
グレイのロンの誘いを蹴るときの台詞がかっこいい。
さくらさんはロンの魔力から逃れられるのか……。
GJ!

503:名無しより愛をこめて
08/09/08 21:33:33 sZ86diIZ0
GJ!
放送が終わり、新展開!
さくらとグレイのクールコンビがネジブルーの野望を打ち砕けるのか?
普通なら安心してみていられるコンビですが、ロンの暗示で果たしてどう転ぶのか。
続きが非常に楽しみになる作品でした。

504: ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:20:46 t/ysGjtu0
ただいまより投下いたします。

505:龍と悪魔の契約 ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:22:20 t/ysGjtu0
ズシャン!!

 何かが砕ける音。何かが潰れる音。交じり合った二つの音は空気を震わせ、映士の鼓膜を震えさせた。
「ウメコ!!」
 映士は音の発生源となった女性の名前を叫び、彼女の元へと急ぎ駆け寄る。
 瞬く間にウメコの側へと移動する映士。だが、そのあまりにも無残な姿に助け起こそうとした映士の手は彼女に触れることなく止まる。
 倒れ伏すウメコの頭からは赤い鮮血が勢いよく噴き出し、大地を浸食していた。血の広がりは頭部を中心としたものだ。
 うつ伏せに倒れたウメコから彼女の表情をうかがい知ることはできないが、その顔が表情など作れないものであることは容易に想像ができる。
 映士は伸ばした手を肩口から首筋へと移動させ、脈を確認した。予想されたことだが、既に脈は途絶えている。
「ウメコ……」
 ボソリと死んでしまった仲間の名前を呟き、映士は呆然と佇む。
 思い出されるのはウメコの笑顔。極限状態でありながらも、恐怖に負けず、周りを元気にしてくれる強い笑顔。
 その笑顔を映士はおろか、彼女が語ったデカレンジャーの仲間たちも、もう二度と見ることができないと思うと、怒りと悲しみが心の底からこみ上げてくる。
「ちくしょ……ちくしょーーー!」
 映士はこみ上げる感情の赴くままに、空に向けて叫んでいた。



 映士はウメコから自分が貸していた銀色のジャケットを脱がす。
 そして、彼女の身を正すと、顔を隠すようそのジャケットを彼女へと掛けた。
 それが今、映士ができる精一杯の葬りだった。
「すまねぇな。この戦いが終わったら、必ず墓を造りに来る」
 手と手を合わし、黙祷を捧げる。
「……さて」
 やがて、ゆっくりと開かれた映士の眼。その眼は一刻前と比べ、鋭さが増していた。

―怪しいのはあの人形だ。―

 壬琴の言葉が頭によぎる。
 始めは壬琴に殴られたこともあり、冷静に考えられなかったが、今は違う。


506:龍と悪魔の契約 ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:23:12 t/ysGjtu0
(転送機能を持ったプレシャス。人形のような生命体。どちらもありうる話だぜ)
 映士はディパックから悪魔の姿を模した人形を取り出す。
(チマチマしたのは性に合わねぇ)
「おい、お前!お前がウメコを殺したのか!」
 人形に激しく詰問する映士。だが、人形は微動だにしない。
「答えろ!」
 声を張り上げるが、一切反応を返さない人形。だが、その程度のことは折込済みだ。
 映士は懐からスコープショットを取り出し、仕込まれたナイフを顕にする。
「いいか、今から3つ数える。それまでに動かないなら、お前をバラバラに切り裂いてやる!
 これは脅しじゃねぇ、お前が本当に人形であっても、それならそれで八つ当たりには丁度いいしな。
 いくぜ!……いーち!」
 映士はナイフをゆっくりと振り上げる。
「にーーー」
 左手は逃げられるようしっかりと人形の身体に食い込んでいる。
「さーーー」
 そして、映士は人形の額目掛け、ナイフを―
「ま、待つデビ。ビビデビが殺したわけじゃないデビ。ナ、ナイフを下ろすデビ~」
「やっぱりテメェ動けやがるのか」
 映士は力の限り、人形―ビビデビを地面に叩きつけた。
「ぐぇ」
 続けざまに、逃げようとするビビデビを踏みつけ、その動きを封じる。
「さて、話してもらうぜ。お前の目的をな」
「い、言うから少し緩めて欲しいデビ。これじゃあ、苦しくて喋られないデビよ」
「心配しなくても、しっかりと俺様には聞こえてる。さっさと洗いざらい喋りやがれ」
 更に体重を加える映士に、ビビデビは蛙が潰れたような悲鳴を上げた。
「ぐぇぇぇっ~、わ、わかったデビ~」
 ポツリとポツリと喋り始めるビビデビ。
 自分がネジレジアという組織の一員だったこと。
 組織崩壊の折に死んだと思ったが、気づくとロンの元に居たこと。
 ロンに命令され、殺し合いを円滑に進ませることができれば、ネジレジアの復興を約束されたこと。


507:龍と悪魔の契約 ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:24:14 t/ysGjtu0
 そして、隙を見て、ウメコと菜摘を適当な場所へ移動させたこと。
「なるほどな」
「ビビィ~、全部話したデビ。早く解放するデビ~」
「ふざけるんじゃねぇ!直接手を下したわけじゃねぇが、それでもお前はウメコの仇には違いねぇ」
 益々、足に力を込める映士。ビビデビの身体が大地へとめり込みはじめる。
 その時、映士の脳内に声が鳴り響いた。

―皆さんおはようございます。この六時間いかがお過ごしだったでしょうか? ―

(これはロンの声か。あの野郎、こんな術まで使いやがる)
 それはロンが参加者全員へと語りかける定時の放送。
 語られるは死者の名前と禁止エリア。
「なっ!」
 死者として挙がった聞き覚えのある名前に、ビビデビを拘束する足の力が緩まった。
 それ幸いとビビデビは飛び上がり、何事かショックを受けているような映士の顔を見た。
「まさか真墨まで」
「知り合いが死んだデビか?」
「うるせっ!」
 ロンの放送はしっかりとビビデビの耳にも届いていた。
 誰が生きようと死のうと、ビビデビにはどうでもいいことだが、それを聞いたであろう映士の様子は非常に滑稽で笑えた。
「ビビィ~!なら、お前が優勝すればいいデビ。優勝すれば、ロンが願い事を叶えてくれるデビ。どうしてもというなら、ビビデビが協力してやってもいいデビよ」
 ビビデビにとって、誰かを優勝させることが目的。それが映士でもビビデビには構わないのだ。
 しかし、それは映士にとって、魅力的な提案ではなく、火に油を注いだようなものだった。
「なら、お望み通り、ぶっ殺してやるぜ!」
 ナイフを手に、映士はビビデビへと襲いかかる。
「ちょ、ちょっと待つデビ。ビビデビは参加者に含まれていないデビ。ビビデビを殺しても仕方ないデビ」
「うるせぇ!」
 激昂しながらも映士の動きは洗練されていた。
 ビビデビの動きの先を読み、あっという間に彼の身体を、文字通り手中に収める。
「わ、わ、わ、わかった、わかったデビ。なら、お前らの脱出の手助けをしてやるデビ。だから、ビビデビを殺さないで欲しいデビ」


508:龍と悪魔の契約 ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:25:57 t/ysGjtu0
「脱出の手助けだ?お前に何ができる」
「ビビデビには女に使ったように転送能力があるデビ。それを使えば、お前たちを脱出させることができるデビ~」
 ビビデビの言葉に自然と映士の顔が引き締まる。
 ここがどこかわからなかったが、映士は今までの経験からここが結界を張られたような特殊な空間ではないかと感じていた。
 ビビデビは何かを知っている。そう確信した映士は話を合わせることにする。
「おい、それは本当か?」
「本当デビ。ここはロンが作った特殊な空間デビ。この中では外との繋がりは完全に絶たれているデビ。
 だから、この中から外への移動は流石のビビデビ様でも出来ないデビ~。けど……」
「けど?」
 言うべきかどうか迷うビビデビ。だが、今にも襲い掛かりそうな映士の怒りが込められた眼に、やがて意を決して言葉を紡いだ。
「けど、ひとつだけ、外界と繋がっている場所があるデビ。そこがお前達が最初にいたホールデビ。そこになら、ビビデビは飛ばすことができるデビ」
「つまり、お前の力を使えば、ここから脱出することは無理だが、高みの見物を決め込んでいるロンの野郎と戦うことは出来るってわけか。なるほどな。なら、さっさと俺様をホールまで転送しやがれ!」
「今は駄目デビ。転送には多大なエネルギーを消費するデビ。さっき、女を飛ばしたばかりだから、そうデビね……あと、2……いや、3時間は必要デビ」
 参加者たちと同様、首輪ならぬ足輪が付けられているビビデビには能力制限がある。
 今、転送能力を使うのは不可能だ。もっとも3時間というのは少しでも時間を稼ぎたいビビデビの嘘だが。
「テメェ、口から出任せ言ってるわけじゃねぇだろうな?」
「信じる信じないは勝手デビ。でも、ビビデビを殺したら、きっと後悔するデビ~」
「……ちっ、今はお前を信じるしかねぇってことか」
(ふぅ~、助かったデビ。隙を見て、逃げ出してやるデ……)
「ビビィーーーー!?」
 映士の放ったスコープショットのアンカーロープにより、ぐるぐる巻きに拘束されるビビデビ。
「何するデビか!?」
「まだ、完全に信じたわけじゃないからな。とりあえず、その状態でディパックの中に入ってな」
 映士は抗議の言葉を口にするビビデビを無視して、ディパックへと詰める。

509:龍と悪魔の契約 ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:26:47 t/ysGjtu0
「さて、あいつらと合流しねぇとな」
 壬琴と合流するため、東へと身体を向ける映士。
 ウメコと真墨のことで頭に血が昇り、思わずホールへと飛ばすよう言ってしまったが、考えてみれば、今の映士には首輪という枷がある。
 今のままで戦ってはホールで殺された男の二の舞だ。それにビビデビの言っていることが嘘ならば、そのまま逃げられてしまうところだった。
(冷静にならねぇとな。無駄死にじゃあ、死んでいった二人に申し訳が立たねぇ)
 映士は空を見上げ、そして、後ろを振り向き、横たわるウメコを見た。
 ここがロンの造った空間だというのなら、もうウメコには会えないかも知れない。
「……じゃあな」
 様々な想いを込めた別れの言葉を告げ、映士はその場から去っていった。



 映士のディパックの中、ビビデビは二重の意味で命拾いしたことにとりあえず胸を撫で下ろしていた。
 ビビデビは参加者に明らかにされていない首輪の機能の内、盗聴の機能についてはロンから聞かされていた。
 つまり、今までの会話はロンに筒抜けということは理解していたのだ。
(あいつは中々聡い奴デビ。本当に裏切るつもりなら、口に出して会話しないと分かってくれるはずデビ)
 強がりながらも、内心は冷や汗ものだ。ビビデビが映士に話した転送能力の詳細はロン自身がビビデビに話したものだ。
 その気になれば、ビビデビは脱出するための鍵になることができるとロンは言った。
 だが、ディパックに詰められる前にロンはこう付け加えた。

―好きに行動してもらって構いません。誰を贔屓しても、誰を陥れてもいいですよ。
  あなたは支給品として、参加者たちがよりよく殺し合いが出来るように手助けして上げてください。
  もし、頑として殺し合いに乗らない参加者がいたとしたら、その時は仕方ありませんがね。
  私は参加者の意志は最大限尊重するつもりですから。参加者の意志はね。―

 強調される参加者という言葉。ビビデビはロンが何が言いたいか理解していた。
 ビビデビは―参加者ではないということ。


510:龍と悪魔の契約 ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:28:41 t/ysGjtu0
【名前】高丘映士@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:J-4海岸 1日目 朝
[状態]:健康
[装備]:ゴーゴーチェンジャー
[道具]:スコープショット、ボウケンチップ、ビビデビ@電磁戦隊メガレンジャー、知恵の実、不明(確認済) 、基本支給品一式(映士、小梅)
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ロンを倒す。
第一行動方針:壬琴たちと合流し、ビビデビの処遇を決める。
第二行動方針:ガイと決着を着ける。

【名前】ビビデビ@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:星獣戦隊ギンガマンVSメガレンジャー後
[現在地]:映士のディパックの中
[状態]:健康。1時間強の間、能力発揮不可。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ロンに協力し、ネジレジアの復興。
第一行動方針:チャンスが来るまでおとなしくしておく。


511:龍と悪魔の契約 ◆i1BeVxv./w
08/09/09 00:29:52 t/ysGjtu0
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点、ご感想などありましたら、宜しくお願いします。

512:名無しより愛をこめて
08/09/09 14:38:23 C2EOfpB90
投下GJです!!
ふつふつとした映士の怒りが伝わってくる作品でした。
無駄死にはしないと誓う映士の決意がかっこよかったです。
映士の怒りを買ったビビデビと、脱出の為の鍵を握った映ちゃんが今後どうなって行くのか、
先の展開が楽しみです。
それにしても、相変わらずの速筆、お見それします。
GJでした。

513:名無しより愛をこめて
08/09/09 22:53:53 UAVSN1gO0
投下乙です。
映士の怒りはロンに届くのか。
ビビデビに対する脅しが余裕を感じさせました。
GJ!

514:名無しより愛をこめて
08/09/10 01:56:23 ke1TxT1mO
まさかもう投下していたなんて!
GJ!
う~む、辛いな映士。
ウメコの死体を無残な形のままにしておかず自分なりに葬う映士。
映士とともに改めてウメコに黙祷。
そしてただの支給品で終わりそうもなく面白い存在になったビビデビ。
すごく面白かったです!

515:名無しより愛をこめて
08/09/10 02:41:45 Or0AiJZmP
個人的にはこのスレはここで続いてほしいが、
他のロワ系スレの大半が創作発表板に移転してしまったので
このスレもスレストされてしまう前に移転準備進めた方がいいと思うんだぜ

516:名無しより愛をこめて
08/09/10 05:03:18 4zF4pcjz0
>>515
sfx:特撮![スレッド削除]
スレリンク(saku板:23番)


517:名無しより愛をこめて
08/09/10 06:49:53 ke1TxT1mO
そしてまとめ更新乙です!

518:名無しより愛をこめて
08/09/10 21:57:12 Ex89c7H10
板違いです
二次創作は以下の板でどうぞ
URLリンク(namidame.2ch.net)

519:名無しより愛をこめて
08/09/11 12:10:20 PQs9nq7T0
定期保守ご苦労様です

520: ◆MGy4jd.pxY
08/09/11 19:10:22 P5/huDd2O
大変申し訳ありません。
今日が期限ですが、もう少しかかりそうです。
前回のようなことは絶対にしませんので延長させて頂けないでしょうか。
よろしくお願いいたします。

521:名無しより愛をこめて
08/09/11 21:36:55 Gsa4tJQtO
>>520
了解です。楽しみにお待ちしています。

522:名無しより愛をこめて
08/09/12 03:44:58 M5DaaAbj0
>それに、傍らの恭介はいまにも飛び出していきそうな雰囲気だ。
>「守る…か…しかし、合って間もない連中をよくそこまで信頼できたものだな。
したらば投下版だと「奇妙な二人」は間にもう少し話があるんですが…まとめの方も本スレを踏襲している
のでここが省略されちゃってますね。


523: ◆MGy4jd.pxY
08/09/12 07:03:48 33lXipR/O
>>522
本当にすみません。
代理投下の際に抜けてしまったのだと思います。
確認不足でした。
ご指摘ありがとうごさいます。
作者氏は不快な思いをされたでしょう。申し訳ありませんでした。

まとめ氏にもお手数をおかけしますが、該当箇所の修正をお願いいたします。

すみませんでした。

524: ◆i1BeVxv./w
08/09/12 20:10:23 cM/ch8CR0
>>523
私もうっかりしてました。
該当箇所を修正いたしましたので、ご確認をお願いします。

525: ◆8ttRQi9eks
08/09/13 23:18:53 sjmzbMzO0
お二方ともそんなにお気になさらないでください。
拙作を代理でアップして本筋に加えて頂けて、本当にありがたいことだと思っています。
なのにお礼が遅れて申し訳ない。なかなかこれないんですよね…今日は超8だってのもあったんですがw
とにかく不快な気持ちは一切ありません。自身でアップできないのに522さんも含めて様々フォローをしてもらって
ありがたいと思いこそすれ、です。


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