スーパー戦隊 バトルロワイアル Part2at SFX
スーパー戦隊 バトルロワイアル Part2 - 暇つぶし2ch250:名無しより愛をこめて
08/06/25 11:21:19 6hnslon30
投下乙&代理投下終了!遅くなって申し訳ありませんでした。

ウメコどこ行った!
そして、ウメコを思う映士が良かったです!
新たに登場したロンの刺客ビビデビ。
いやらしさがロンのミニチュア版のようで今後が楽しみです。
アバレーサーが定着した壬琴、菜摘の「意外とお茶目な人よ」には笑いました。
GJ!



251:名無しより愛をこめて
08/06/25 19:23:02 qD4emHao0
投下&代理投下 GJです!
遅くなりましたが、感想と疑問点をば
◆MGy4jd.pxY氏
圧倒的な力を持たないが故のナイメアの狡猾さが魅力的でした。
デュエルポンドでの戦い方は、頭脳派のセンちゃんならでは。
迫力のあるバトル描写にハラハラドキドキしました。
ナイメアの会話シーンは、別の意味でドキドキしましたw

疑問点ですが、センちゃんと戦った際に、サンヨの腕が地面に転がったと思ったのですが、状態表の記載にはないようでした。
もし、私の読み間違いだったら、申し訳ありません。

◆i1BeVxv./w氏
相変わらずの速筆、お見それしました。
本当にウメコはいったいどこへ!?
頑張るウメコがかわいらしかったです。
すっかり馴染んだアンキロベイルスと菜摘に和みました。
アバレーサー訂正する気は無いのね。仲代先生w
菜摘に振り回されつつも、冷静な仲代先生はかっこよかったです。

すみません。一点気付いた点を。
菜摘の状態表が抜けてしまっているようです。


252: ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 21:46:10 9ADf8aQwO
感想そして指摘感謝致します。
いつもありがとうございます。
昨日受けた指摘はしたらばにて訂正しております。
そして確かにサンヨの右腕切断を記載しておりませんでした。
詰めが甘すぎました。失礼致しました。

253: ◆MGy4jd.pxY
08/06/26 12:14:27 9HvQ1FHX0
先ほど指摘箇所と状態表、誤字を訂正したものを仮投下スレに投下しました。
よろしくお願いいたします。

254:名無しより愛をこめて
08/07/01 12:05:36 2GV7cWGDO
まとめ氏更新おつかれさまです

255:名無しより愛をこめて
08/07/02 16:13:48 zwIch99W0
更新乙です!


256: ◆MGy4jd.pxY
08/07/06 14:17:13 NY/YHrDKO
大変申し訳ありませんが、延長をお願いできますでしょうか?

257:名無しより愛をこめて
08/07/06 15:03:12 IzMLIqseO
>>256
了解しました。
楽しみにお待ちしております。

258:名無しより愛をこめて
08/07/06 22:26:10 b9fy1R7J0
最近の戦隊が多いな

259:名無しより愛をこめて
08/07/06 23:01:53 1uBXp3oi0
あんまり古いの多くすると書ける人がいなくなっちゃうんで

260: ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:11:59 eDwjc/u70
投下します。

261:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:13:03 eDwjc/u70
「おーーーい!ローーーン!」
 日が昇り、光に照らされる森にサンヨの声が響き渡る。
 もう幾度同じ言葉を吐いただろうか。
 首輪を外してもらうため、懸命に声を張り上げても、一向にロンは反応を返さない。
 制限時間の2時間は過ぎ、当面の不安はなくなったとはいえ、また力を使えば、同じ不安に苛まれる。
 そうならないためにも、一刻も早く、ロンに首輪を外してもらわなければならないのだが。
「もしかして、あいつらの言ってた通り、サンヨ、ロンに見切られたのかヨ」
 ふと脳裏に不安がよぎる。サンヨを強襲したナイとメアが言った言葉。

―アハハ、弱っち~。だからロンにも見切られるんだよ―

 自分はロンの不死身の部分を司っている。だから、ロンに見切られるわけない。そう考えていた。
 だが、逆にロンが不死身に興味をなくしたとしたらどうだろうか?
 ロンは常日頃から退屈であることに辟易していた。
 もし、不死身でなくなる方法を見つけたのなら、サンヨを見切る理由にならないだろうか
「……そんなわけないネ。また、誰かにちょっかいかけてるに違いないヨ」
 サンヨは首を横に振り、自分の考えを振り払う。
 ロンの悪癖は知っている。ゲームの途中であっても、より楽しくなる方法を見つけたのなら、参加者への介入も厭わない。
 きっと今頃は誰かを駒にするために甘言を囁いているのだろう。だから、反応がないのだ。
 サンヨが知っている情報を総合すれば、そう考えるのが最も現実的だ。
「慌てることはないヨ。ロンが気づくまで、ゆるりと待つとするヨ」
 不安を押し殺し、手近な場所へと腰を下ろす。次の瞬間、聞き覚えのある声がサンヨの耳に届いた。
「その必要はありません」
 サンヨが声の聞こえた方を向くと、眼に映ったのはフードを身に纏った金髪の男の姿。
 紛れもないロンの姿だ。
「ロン、待ってたヨ~!さあ、早く首輪を外すヨ~!」
 捲くし立てるように喋り、ロンへと詰め寄るサンヨ。だが、そんなサンヨとは対照的に、ロンはゆっくりと言葉を返す。
「首輪を?何故ですか?」
 その態度に、ロンがナイとメアとのやり取りを聞いていなかったのだと、サンヨは判断した。
 サンヨはその時のことを簡単にまとめて話すと、首輪を外すように迫る。

262:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:13:53 eDwjc/u70
「ロン、とにかく首輪を外すヨ。サンヨにハンデは必要ないヨ。サンヨなら外しても大丈夫のはずだヨ」
「大丈夫なら、自分で外せばいいじゃないですか」
「何言ってるヨ。これはロンじゃなきゃ外せないはずヨ。サンヨが無理矢理外そうとしたら爆発しちゃうヨ」
 この首輪はロンが用意したもの。サンヨが外し方などわかるはずがないと言うことは分かっているはずだ。
 一体、ロンは何を言っているのか。長い眠りの影響で、まだ、寝惚けているとでもいうのか。
「……ふっ、冗談ですよ。少しからかってみただけです。ただ、やはり今は外すことは出来ません。あなたが言った通り、ハンデは必要ですからね」
 ニヤリと笑うロン。その表情を見て、サンヨはこれ以上の議論は無駄だと悟った。
 考えても見れば、ロンが自分の進言を聞いて、予定を変えるなどありえない話だ。
 しかし、どうしても確認をしておかなければならないことがひとつだけある。
「じゃあ首輪は外さなくていいヨ。でも、一個だけ確認ネ」
「なんですか?」
「ロンは不死身でいることをやめたいわけじゃないヨネ」
 サンヨにとっては核心に迫る質問。
 首輪は厄介だが、いざとなれば無理矢理引っこ抜くことも出来ないわけじゃない。
 凄く痛いだろうが、サンヨは不死身なのだから死にはしない。
 だが、この首輪が不死身を無効化するとしたら、その方法は執れないのだ。
「不死身?……な、何を言ってるのですか。大体、不死身でなくなる方法なんてあるんですか?」
「サンヨはロンの不死身の部分を司っているヨ。だから、サンヨを殺すことが出来れば、ロンは不死身じゃなくなるはずヨ。
 ロンはサンヨを殺す方法を見つけたんじゃないかヨ?例えばこの首輪とか怪しいネ」
 サンヨの言葉に、ロンは彼らしくもなく、動揺した姿を見せる。俯き、何事かブツブツと呟いている。
「どうかしたのかヨ?」
「い、いえ、なんでもありません。それより、今のことはあなたの考えすぎです。首輪はただのハンデキャップ。それだけです」
「ン………」
 サンヨはロンの眼を覗きこむ。ロンらしからぬ行動は自分の推測が当たっている証拠なのではないかと。
「………」
「………」
「そうネ。サンヨの考えすぎネ」

263:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:14:42 eDwjc/u70
 眼なんて覗いたところで、ロンの本音などわかりようもない。
 それに、ロンのことだ、サンヨの反応を楽しむために動揺しているように見せかけたのかも知れない。
 ロンの思惑が何にせよ、所詮、自分はロンのバックアップ。ロンの指示に従うしかないのだ。
(考えるだけ時間の無駄だヨ)
 諦めに似たサンヨの結論に、ロンは安堵したかのような溜息を吐いた。
「それじゃあ、サンヨはこれからどうすればいいヨ?まだ、様子見かヨ?」
「それなんですが、あなたのために一緒に行動する仲間を用意しました。今後は彼の指示に従って行動しなさい」
「ナ~カ~マ?」
「ええ、その名はシュリケンジャー。覚えていませんか。緑色をしたパワフルな男のことを」
「忘れたヨ~。でも、ロンは緑が好きネ」
 メレとシュリケンジャーを重ねるサンヨ。ロンはサンヨの指摘に少々顔を歪め、話を続ける。
「まあいいです。どの道、彼は常時変身した姿でいるわけではありませんからね。今は広間にいた時とはまったく異なる姿になってますよ。
 ですから、シュリケンジャーには、彼の方からあなたに話しかけるよう言っておきました。
 ラッキーなことに、シュリケンジャーはこの近くまで来ています。まもなく会えることでしょう」
 ロンは「とぅ」っと、掛け声を上げると、高くそびえる木の枝へとその身を移した。
「それでは私は帰らせてもらいますよ。サンヨ、あなたの健闘を祈ります」
 ロンは手で敬礼のようなサインを送ると、踵を返し、木々の枝を渡りながら、何処かへと姿を消した。
「ロンにしては珍しい帰り方ネ……まあいいかヨ。ロンの言うとおり、シュリケンジャーを探すヨ」
 不安が解消されたサンヨはどことなく晴れやかな顔で、西へとのっそりと歩き出した。



「不死身……まさか、そんな存在が……しかし、御前様の例も……」
 サンヨから数メートル離れた後、ロンは木陰へとその身を隠した。
 いや、既にその口から発せられる声はロンのそれではない。
 姿こそロンだが、その声は二十の顔を自在に使い分ける男の声。
 そう今までサンヨと話していたロンは天空忍者シュリケンジャーが変装していたものであった。
 目的はロンの手先であるサンヨから情報を引き出すため。

264:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:15:45 eDwjc/u70
 ロンの隣に鎮座し、名簿順に呼ばれなかったサンヨがロンの手先であることは最初から明らかだった。
 優勝を目指すシュリケンジャーにとっても、主催者の情報は仕入れておきたいところ。
 そのためのロンへの変装だったが、結果は予想を超えたものだった。
 シュリケンジャーはサンヨとの会話で得た情報を反芻する。
 まずは首輪の情報。無理矢理外せば爆発し、ロンしか外すことができない。
 また、サンヨにはこれが何らかのハンデを与えている。
 多少サンヨの言い回しが妙であったが、今は特に気にすることではないだろう。
 優勝を目指している限り、首輪はただの飾り。冷凍剣なら外せるかも知れないが、危険を侵してまで試す必要はない。
 次にロンは常に参加者たちを監視しているということ。
 サンヨは大声でロンの名前を叫んでいた。
 最初は広間へと通じる道が近くにあるのかと思ったが、サンヨの動きは一定せず、適当に歩いているようだった。
 そして、サンヨは自分の現状を話す時、その時の様子を「聞いてなかったのか」と訊ねていた。
 おそらく、常時盗聴していて、必要があれば好きな場所に出てこれるといったところではないだろうか。
 考えてみれば、不特定多数を動かそうというのに、まったく監視しないわけがない。
 それに参加者を様々な場所に飛ばせたのだ。好きな場所に移動するなど朝飯前だろう。
 だが、この情報も優勝を目指す限りシュリケンジャーにはあまり関係ない。
 問題は3つ目、サンヨが不死身であり、ロンもまたその恩恵で不死身であるということ。
 本来なら情報を引き出した後、サンヨは始末するつもりだった
 だが、もしこの情報が真実なら、この殺し合いは優勝という餌をぶら下げているだけのデキレースということになる。
 倒そうとしたところで返り討ちに合う可能性が高い。
 しかし、サンヨはこうも言っていた。

―ロンはサンヨを殺す方法を見つけたんじゃないかヨ?―

 少なくともサンヨにはデキレースということは知らされていないということがわかる。
 そして、同時にふたつの疑問が浮かんだ。

265:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:16:27 eDwjc/u70
 仮にデキレースだとすると、サンヨに知らせていないのは何故?
 仮にデキレースではないとすると、不死身でなくなる危険を侵してまでサンヨを参加させているのは何故?
 どちらにせよロンの真意がわかるまで、優勝を目指すのは保留にして置いた方がいいだろう。
 だが、シュリケンジャーも真意がわかるまで座するつもりはない。
 確認する方法は単純にして難解。サンヨを殺せるか試すことだ。
 自らの手で実行するのは止めたほうがいいだろう。
 どちらに転んでもいいようにサンヨは第三者。出来れば敵対する第三者に殺させるのが最適な手段だ。
 差し当たって重要なのはロンがサンヨと自分の合流を許すかどうかだ。
(もし、ロンが優勝したときの約束を守る気があるなら、サンヨをどう扱おうとも放っておくはずだ。
 逆にデキレースになることを望むなら、何らかの手を打ってくる可能性が高い)
 それはシュリケンジャーにとって一種の賭け。真相に近づき過ぎれば待っているのは死。
 だが、優勝を目指すにしても、ロンを打破するにしても、そのことはどうしても確認せざる得ない。
「さて、次はどの顔にしようかな?」
 もう充分時間は置いた。もうサンヨと合流しても疑われることはないだろう。
 優勝を目指す可能性がある以上、もはや鷹介の顔を借りる必要はない。
 むしろ、おぼろを殺さなければならないのなら、知り合い以外の顔で殺してやるのがせめてもの情けだ。
「……この顔にさせてもらうか」
 数十分後、シュリケンジャーはサンヨとの合流を果たす。
 サンヨはあっさりとシュリケンジャーを仲間と認め、一緒に行動することを了承した。


266:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:18:24 eDwjc/u70
【名前】サンヨ@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:ロンと一緒
[現在地]:B-8森林 1日目 早朝
[状態]:全身打撲、無数の刺し傷
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ロンの指示に従う。
第一行動方針:ロンの指示に従い、シュリケンジャーに協力する。
備考
・サンヨの支給品はデュエルボンドソード、マジカルチェーン@魔法戦隊マジレンジャーでした。
・制限が2時間であることを知っています。

【名前】シュリケンジャー@忍風戦隊ハリケンジャー
[時間軸]:巻之四十三後
[現在地]:B-8森林 1日目 早朝
[状態]:健康。顔は柿生太郎です
[装備]:シュリケンボール
[道具]:確認済み
[思考]
基本方針:殺し合いに乗る(一時的に保留)
第一行動方針:七海とおぼろを五体満足で帰還させる。
第二行動方針:それがだめならアレの消滅を願う。
第三行動方針:サンヨが殺せるか試す。できれば敵対する誰か。その後、方針を再決定。
備考
・シュリケンジャーは変身に制限があることに気付きましたが、具体的な時間は気づいていません。
・シュリケンジャーはロンが何らかの方法で監視していることに気づきました。

267:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:19:15 eDwjc/u70
【名前】サンヨ@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:ロンと一緒
[現在地]:B-8森林 1日目 早朝
[状態]:全身打撲、無数の刺し傷、右腕切断。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ロンの指示に従う。
第一行動方針:ロンの指示に従い、シュリケンジャーに協力する。
備考
・サンヨの支給品はデュエルボンドソード、マジカルチェーン@魔法戦隊マジレンジャーでした。
・制限が2時間であることを知っています。

【名前】シュリケンジャー@忍風戦隊ハリケンジャー
[時間軸]:巻之四十三後
[現在地]:B-8森林 1日目 早朝
[状態]:健康。顔は柿生太郎です
[装備]:シュリケンボール
[道具]:確認済み
[思考]
基本方針:殺し合いに乗る(一時的に保留)
第一行動方針:七海とおぼろを五体満足で帰還させる。
第二行動方針:それがだめならアレの消滅を願う。
第三行動方針:サンヨが殺せるか試す。できれば敵対する誰か。その後、方針を再決定。
備考
・シュリケンジャーは変身に制限があることに気付きましたが、具体的な時間は気づいていません。
・シュリケンジャーはロンが何らかの方法で監視していることに気づきました。


268:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:21:04 eDwjc/u70
投下終了。
状態表が修正前の方を参照してましたので、再度投下いたしました。
誤字、脱字、矛盾点、ご感想、他指摘事項などありましたら、宜しくお願いします。

ドギーにギャバン隊長とか言わせるため、烈堂にしようとも思ったけど、戦隊じゃないので自重。

269:名無しより愛をこめて
08/07/07 21:35:53 xLobRrct0
投下乙
シュリケンジャーの変装技能をこう活かすとは。
新たな情報を手に入れた彼はどう動くか。
GJ!

270:名無しより愛をこめて
08/07/07 22:38:52 D97MgwUOO
GJです。
ああ、なんだかサンヨが気の毒になってきたw
サンヨを上手く騙したシュリケンジャーの運命やいかに!?
重ねてGJでした。

271:名無しより愛をこめて
08/07/08 03:38:52 TFEJPoBSO
GJ!
シュリケンジャーが、まさかロンに変身するとは!
サンヨ同様すっかり騙されました。
面白かったです!


272:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:45:33 pk3D7anR0
いつもながらの延長。誠に申し訳ありませんでした。
ただいまより投下します。

273:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:46:58 pk3D7anR0
A―1エリア中央。そこにはメモの通り他の木と違う色、血のように赤い葉を付けた一本の木があった。
その木の下、不自然に盛られた枯葉の前で二人は顔を見合わせた。
「ここやな。ロンの姿が見当たらんけど……まさか?」
枯れ草に、とばかりに傍にあった枝で草むらを突く。
「僕が調べますよ。おぼろさんは休憩して下さい。女性にはキツいコースだったでしょう」
「そや、ほんまキッツイコースやったわ~って……。休憩やったら蒼太くんが取るべきやで。うちは、ただ乗せて貰ってただけやし」
ニコッと笑っておぼろを座らせる蒼太。その笑顔が失笑なのか、それとも微笑なのかと、少し複雑な思いが胸を突く。
確かにキツいコースだった。スーパートライアル・エンデューロ・inA―1森と呼んでもいいくらい。
ツーリングなんて生易しい物には程遠い。
見渡す限りの自然林。その中にもちろん舗装された道路など無い。
ジェットコースターさながらのアップダウンコース、振り落とされないように必死で蒼太にしがみつくのがおぼろには精一杯。
『ひゃぁ~』だの『ぎゃー』だの、女らしさ等とはかけ離れた叫び声を上げ続け、辿り着いた頃には、顔面蒼白で声を発するのもやっとだった。
我ながら百年の恋も冷めるわ、おぼろは苦笑いを浮かべる。
「帰りは飛ばす必要もありませんから、ゆっくり帰りましょう」
蒼太は山盛りの枯葉と積もる土を払いのけた。
そこには一畳程度大きさの所々錆び付いた扉があった。
「地下へ続く扉。入って来いって事ですね」
冷静でそっけない声と裏腹に、蒼太の表情は生き生きとして、まるで秘密基地へ急ぐ少年のようだった。
「この中でロンが待ってるちゅうんかな……」
蒼太はおぼろの言葉に頷き、鉄錆た円形の取手に手を掛け勢いよく引いた。
ギィーッと、錆び付いた音が鼓膜を震わせ、カビの臭いが鼻を掠める。
先を行く蒼太が、アクセルラーをライトがわりに奥を照らす。
二人は一段一段、足元を確かめ、ゆっくりと降りて行った。

十段、二十段、その先も階段は続く。
前後は闇に包まれ、閉塞感とカビの臭いで胸がいっぱいになる。
もう戻ろう、蒼太に切り出しかけた時、ライトの先で石造りの重厚な扉が二人を待ち構えていた。

「開けますよ」
蒼太が扉に手を掛け、おぼろは固唾を呑んで見守る。

274:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:48:12 pk3D7anR0
この奥でロンが最高のアイテムを用意して待っている。
すぐ近くに、ロンがいる。
得体の知れないロン。殺し合いの為の最高のアイテム。
怖い。薄い胸を打つ心臓の音が速くなる。
蒼太は体重を乗せ重い扉を押し開けていく。
コゴッと重い音を立て扉が開いた。
おぼろはその先にある物を見るのが怖くて思わず目を閉じた。

扉の向こうは静寂に包まれている。
(……あれ?てっきりロンが「ようこそ」とか言うてくるかと思ったんやけど)
おぼろの耳に飛び込んだのはロンの声ではなく、蒼太の怪訝な声。
「ここは……」
ようやく、おぼろは目を開け辺りを見回す。
広い部屋、縦横の長さは有に30メートル近くある。いや、部屋と言うには奇妙な空間。
扉の前に床は四畳程しか無く、その先は切り取られたように底が見えない闇の世界が広がっている。
部屋の中央に闇の中からテーブル状に台座が伸びており、台座の上にはストーンサークルのように石柱が数十本並ぶ。
石柱は赤褐色の一本だけを除き、後は墓石のように黒く磨かれていた。
こちらの床から台座までは、30センチ四方のブロック状に形の整った石が連なる。
部屋の反対側には、こちらと同じく石造りの扉と炎の灯る燭台がある。
向こうの扉まで行くには、ブロックを連ねた石橋を渡り、石柱の間を通り抜けるしか無い。

「何でしょう、あれ」
蒼太が頭上を指した。ひらひらと一枚の紙が落ちて来る。
二人は床の端まで走り寄り、紙を掴もうとした。その時……
ゴドンッ!
背後で足元を震わす音を立て扉が閉まった。
「何!何やの!」
おぼろは悲鳴を上げた。
だが蒼太は冷静だった。手にした紙にサッと目を通しおぼろに差し出す。

275:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:49:34 pk3D7anR0
「おぼろさん、これを」
そこにはメモと同じ筆跡で、こう書かれてあった。

――ようこそいらっしゃいました。ここに、あなたにふさわしい最高のアイテムをご用意しました。
私があなたの為に選んだアイテムです。
ですが、そのような素晴らしい物を、ただ渡したのではあまりにも不公平すぎると思いませんか?
最高のアイテムを手に入れるにあたり、あなたにはゲームをしていただきます。
ルールは至って簡単。あなたは駒の一つとなり、空所へ移動し他の駒を一つ飛び越し消す事が出来る。
ただし一度移動した場所へ戻る事は出来ず、後方へ移動は出来ない。
空所から通路を通り盤上を移動できるのは5秒間だけです。
5秒経って、空所中心のボタンを押さなければ、または通路にいた場合、あなたは駒と同じように盤上から消えて頂かなければなりません。
制限時間は、扉が閉まってから10分。
そしてゲームをクリアしなければ出口へは辿り着けません。
一つだけ色の違う駒、それを最後に飛び越えれば、最高のアイテムはあなたの物です――

おぼろはチェスのような盤の上に、所々乱立された駒を眺め溜息をついた。
「なぁ、蒼太くん。やっぱりやめとこ?」
怖気事いたおぼろは、精一杯可愛らしく言って見た。
「こんなもん、手詰まりになるように作ってあるに決まってる。消えて頂くやなんて、命賭けてまでやる必要ないわ。肝心のロンもおらんのやし」
蒼太は扉に手を当て、困ったような笑顔を作った。
「……残念ですけど。この扉、中からは開かないみたいです」
「え!そんならゲームをやるしかない、っちゅうわけ?」
「そうなりますね」
蒼太は手を差し出す。
「せやかて、こんな細いとこ……」
戻れないとあれば進むより他に道は無い。
ぶつくさ言いながらも、おぼろは慎重に足を進める。
おぼろの足元を気遣いながら蒼太が言った。

276:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:50:59 pk3D7anR0
「だけど、消えて頂きますと言うのは脅しじゃないかな?僕とおぼろさんの二人で命を賭けて競い合うなら解りますが……
ロンの狙いは、参加者に殺し合いをさせる事です。もしかしたら、狙いは他にあるかも知れませんね」

盤全体を縁どる通路は細く幅20センチ程だが、移動する為の通路幅は1メートルある。
十字に区切られたマスの大きさは一辺1.2メートルの正方形、移動するのに与えられた5秒は充分な時間。
「よっしゃ!いくで」
まず盤の下方に点在する駒を消すべく左端の空所へ進み、中心のボタンを踏み付ける。
ガコン!何かが落ちる音はしたもの得に何も変わらない。
だが、次に進むべく通路に出た時。
ボタンから亀裂が走り、床は扉のように開き外れ落ちた。
そして、二人が渡って来たブロックも手前から一つ、同じように闇に消えて行った。
「こう言う事……」
「ですね。一個進むごとに、一個退路が塞がれる。進むしか道は無い」
「……ほんま、嫌らしい仕掛けやな」
「ですね」

一手。二手。その後も順調に進み、駒は残り10個となった。
そして駒を一つ落とす度、出口へ続くブロックが一つ押し出される。
「……結構時間はかかったけど、わりかし順調やな」
扉が閉じてから既に7.8分経過している。
「急ごか?」
駆け出そうとした足がふらつき、よろけた身体を蒼太が支えてくれた。
「大丈夫ですか?おぼろさん、随分疲れているみたいですけど……」
「うん。まぁ、それはそうやねんけど。もう時間も無いしな」
「後は僕一人でやります。おぼろさんは出口に続くブロックの上で休んでいて下さい。どこへ動けはいいか、指示して貰えれば……」
正直、息も上がっていた。蒼太の申し出は有り難かった。
駒を落とす変わりに、向こうへ伸びるブロックは、随分出来上がっていたので落ちる心配は無い。
残り時間も少ない。自分が足手まといになるよりは……
おぼろは素直に頷いた。

277:名無しより愛をこめて
08/07/09 21:51:09 7N/BVBkL0
 

278:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:53:00 pk3D7anR0
「ありがとう。じゃあ、うちは少し休ませて貰うわ。次はちょうど通路の前の空いた場所へ行けばいいし」
「了解しました。では」
蒼太に手を引かれおぼろは胸の中でカウントを取りながら出口へ向かう通路へ急ぐ。
5秒、4秒、3秒。
数えた所でおぼろは通路へ足を踏み入れる。
「蒼太さん、急いで」
手を離した時、通路の中心から一本の線がツーッと走った。
「え?」
蒼太の足元の床が真っ二つに開く。
足場を失った蒼太の身体が沈む。
咄嗟に伸ばしたおぼろの右手が蒼太の袖を掴み、間一髪で蒼太が握り返し、二人の手は繋がった。
おぼろは両足で通路を挟み、左手でへりを掴み身体を支える。
「なんで?まだ5秒経ってなかったやん。うちが休もうなんて思ったばっかりに、ごめんやで」
「ルール違反は許されないか。迂闊でした」
蒼太はポケットからアクセルラーを取り出そうと身体をよじった。
少し動かれただけでも、体が持って行かれそうになり腕が軋む。
滲み出る汗で手が滑る。
おぼろは再度腕に力を篭めた。
「頑張って!」
その時、おぼろの背後で声がした。

「その手を離しなさい。そうすれば、これはあなたに差し上げます。ほら、帰り道も作ってあげましょう」
その声を合図にしたかのように、盤の上の駒が轟然と一斉に下へ落ちた。
出口まで繋がった橋を、ロンが悠々と歩いてくる。
天空の花を燭台の明かりに翳し、水晶のようにキラキラと輝く光りを楽しみながら……
「さぁ、その手を振り解きなさい。」
おぼろは答えなかった。ただ全力で、ありったけの力で蒼太を引き上げようとした。
「これは『天空の花』と言い伝えられてきた物。天空の花は10年に一度人間の愛を凍らせる秘宝。
人の心など、脆く弱い。愛を亡くした参加者たちは、我先にと殺しあうでしょう。
今、最上蒼太の手を離し、私の前で殺し合いに乗ったと証明すれば、これはあなたにお渡しします。
決心が着かないのであれば、他の誰かに渡すとしましょう。殺し合いに乗った誰かに……ね。 」

279:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:54:46 pk3D7anR0
蒼太はおぼろを見つめた。
「そんな物、殺し合いに乗るようなヤツに渡しちゃダメですよ。おぼろさん……」
言い終えた蒼太は、笑いながら握っていた手を離した。
最初におぼろに向けた笑顔と同じ笑顔で、彼の姿がどこまでも続く闇に取り込まれていく。
「あかん!蒼太く……!」
蒼太の名を言い終えない内に、床が扉のように閉じられ、蒼太は視界から消えた。
おぼろは元に戻った通路に突っ伏し、そのまま、息を吐くことさえ躊躇っていた。
握っていた蒼太の手の感触がまだ右手に残っている。

「では改めて、ようこそバトルロワイヤルの宴に……」
ロンが楽しげにおぼろに語りかける。
「どうしたのです?そんな悲しい顔をして。 最高のアイテムを求めて来たのでしょう」
天空の花を、そっと握らせた。
「罠かどうか確かめに来た、とでも言いたいのですか?いいえ、あなたは心の何処かで勝ち残りたいと思っていた。
だから最高のアイテムを求めて来たのです。ここに来るのを決めた時、心の奥底であなたは殺し合いに乗ったのです」
おぼろはうつろな眼をしたまま、首を横に振り否定の意を示す。
「認めたく無い。それは解ります。でもそれがあなたの本心なのですよ。そして、最上蒼太は殺し合いに乗ったあなたに、天空の花を託し落ちた」
蒼太の名を聞いた瞬間、おぼろの瞳から大粒の涙がこぼれた。
「今だ本当の愛を掴もうとしないおぼろさん。あなたの選択は正しいのです。愛など不必要なのです。
この天空の花、これこそ、あなたにとって最高のアイテム。
あなたは愚かな参加者たちの見物を楽しんだ後、止めを刺しに行けばいい。
さぁ、日向おぼろさん。日付が変わるまでに天空の花を持ってのJ-10エリア『叫びの塔』へ行くのです」

ダンッ!
ロンの言葉を遮るように、おぼろは拳で床を叩き付けた。

280:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:55:18 pk3D7anR0
自分をこんな状況へ追い込んだロンに対する怒り、蒼太を助けられなかった自分への憤りを込め叩き付けた。
「いつまで、あほな事を喋ってんねん……うちは、そんな所いかへん」

(しっかりしいや)
おぼろの後輩であるハリケンジャーたちに、何度も発破を掛けてきた。
その言葉を、今は自分の胸に刻む。
そして震える足を腕で抑え、立ち上がりロンを睨んだ。
たとえここで首輪を発動させられても、ロンに屈するのだけは嫌だった。
「首輪を外し、ここから脱出して、ロンを倒す。それが、うちらのミッション……
蒼太くんが託した最後のミッション。 うちは、うちは絶対に完了させる!」
ロンは口元に手を当て、哀れみを含んだ眼差しをおぼろに向けた。
「首輪を外す、脱出、私を倒す?クックククッ。まぁ今の所、あなたはそう思っていた方が幸せでしょうね」
「どういう、意味や?」
「時機に、わかりますよ……」
金色のもやになり、ロンは掻き消えた。

おぼろは重い足取りで扉へと向かった。
扉を押し開け、地上へ続く階段へと進む。
「蒼太くん……」
振り返り、蒼太の名を一度だけ呼んだ。
声は空しく、深淵に吸い込まれた。
惨めに泣き崩れぬうちに、おぼろは階段を駆け上がる。
必ずミッションを完了させると心に硬く誓いながら……


281:名無しより愛をこめて
08/07/09 21:55:20 7N/BVBkL0
   

282:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:55:56 pk3D7anR0




「まったく、ほんまに冗談や無いでぇ!」
「落下途中でボウケンブルーに変身したんです。後はブロウナックルの風圧で落下を防いで……」
自分でもすごい剣幕だとは思う。
蒼太が困って、必死になだめようとしてくれているのも分かるが、今は止められなかった。
てっきりもうだめだと思っていたおぼろは、ひょっこり顔を出した蒼太に顎が外れるほど驚いた。
何事も無かったように、バリサンダーを走らせる蒼太の背で無事を喜び。
ほっとした後は、沸々と怒りが込み上げて来て、街の手前でバリサンダーを止めさせた。
そして今、二人は事の顛末を話しているのだ。
一頻り捲し立て、少しすっきりした所で、蒼太がバツ悪そうに切り返す。
「自分から接触して殺すつもりなら、最初からこんな殺し合いを仕組む必要はない。僕が手を離せば、あの場でおぼろさんに何かされる事は無いと確信していましたし…
ああでもしないと、ね。天空の花を殺し合いに乗るような奴には渡せないでしょう?」
「それは、そうやったかもしれんけどな」
「落ちる前に笑ってたでしょう。一応合図のつもりだったんですよ」
「合図やったら、もっと解りやすくやってもらわな」
「すみません。おぼろさん」
「もし、変身するのが間に合えへんかったらどうするつもりやったん?」
「その事で、ちょっと……」

蒼太は崖を上がる最中、後一歩の所で強制的に変身前の姿に戻ったと言う。
そして、おぼろを助けたフック型のショットアンカーを使い、何とか上って来のだと。
「変身できる時間は、およそ10分。それが解っただけでも、収穫でしたよ」
「この首輪、そんな力も制限してるってわけやな。どこまでやらしい奴やねん!」
おぼろは怒り心頭だった。
「首輪を外す、脱出、私を倒す?クックククッ。まぁ今の所、あなたはそう思っていた方が幸せでしょうね。やて。うちがこんな首輪、絶対外したる!」
「おぼろさんに、そんな事を?」
蒼太の表情が微かに翳った。
「蒼太くん?」

283:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:56:58 pk3D7anR0
「いえ、なんでもありません」
そう言って、蒼太が見せたのは、悟られまいと作ったような笑顔だった。
「うちが出て行った後、なんかあったん?」
それ以上、追求して欲しくないのか、蒼太は聞こえていないようにおぼろがずっと握っていたままの天空の花に視線を移す。
「でも、信じられませんね。そんな綺麗な物が、愛を凍らせてしまうなんて」
おぼろは、改めて天空の花を良く見た。
儚い硝子細工のようで無造作にデイバックに突っ込む事が出来ず、つい包むように持っていた。
頭上に掲げクルクルと回す。月の光を反射して花びら一枚一枚が青く煌いた。
「J-10エリアの『叫びの塔』へ持って行けやて。愛を凍らせる、か。信じられないちゅうより信じたくないな」
フーッと長いため息を落とした。
その後ろで。
「信じられねぇ……信じたくねぇよな」
何者かの声が聞こえ、おぼろは蒼太と共にハッとそちらを振り返った。
「よぉ、ボウケンジャー」
蒼太は、何者だという不審に眉をひそめ身構えた。
「そんなに、苦労して手に入れた天空の花を、俺に奪われちまうなんてよ!」
ドン!地響きと共に振動波が地を走る。
「グッ!」
「うわっ!」
二人左右に弾かれた。
「くっそ!痛ってぇな~」
痛いのはこっちや!と思いながら、おぼろは衝撃で飛ばされてしまった天空の花に手を伸ばす。
その男は蒼太の後ろにあるバリサンダーを見やりチッと舌打ちした。
蒼太はスコープショットを構える。
「悪いな。今は相手にしてやれねえんだよ!愛を凍らせた後で、ゆっくり遊んでやるぜ」

284:名無しより愛をこめて
08/07/09 21:57:38 7N/BVBkL0
   

285:名無しより愛をこめて
08/07/09 21:59:31 7N/BVBkL0
      

286: ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 22:18:13 NPqd0F2vO
さるさん規制のため、残りはしたらばに投下致しました。

287:ミッションスタート!最高のアイテムを追え!代理投下
08/07/09 22:23:16 7N/BVBkL0
ドン!もう一度クエイクハンマーを地に叩きつけた。
衝撃に二人は再度弾かれる。
天空の花を手に、その男は都市の方向へ駆けて行った。

どこかへ身を隠したか、遠くへ行ってしまったか?
二人は男の姿を見失ってしまった。
「あいつ、クエイクハンマー使った後、痛いって言っとったな」
「クエイクハンマー?」
「そう、あれは吼太の武器や。その後、痛いって言ってたやろ?」
その言葉に頷いて、悔しげに男の消えた方を見ながら蒼太は言った。
「えぇ、今は相手にしてやれないとも……。それに、僕がボウケンジャーと知っていましたね」
蒼太は名簿を取り出す。広間で自分の名を呼ばれるまでに、参加者ほとんどの名前と顔を記憶したらしい。
「最初の方で、名前を呼ばれていた。これだ!」
指した名は、クエスター・ガイ。蒼太には心当たりがないようだった。
「蒼太くんのことを知ってるヤツ。あれが変身した姿なんか、あのままの姿かどうかは、わからんけど……」
おぼろは考えを整理するため、一呼吸置いた。
「見るからに粗野で好戦的なヤツ。なのに、戦わず逃げた。おそらく、ごっつい傷を負うてるんやわ」
次の言葉を蒼太が繋ぐ。
「戦える状態であれば、天空の花を奪うついでに、僕らを倒してバリサンダーを奪うはずだ」
「そうや。そんな手負いの状態なら、J-10エリアまで行くのもしんどいんちゃう?だから焦らんでも良いと思う。先回りして、二人であいつから天空の花を取り戻そ!」
「……おぼろさん?」
俄然やる気を出したおぼろに、蒼太が戸惑う。
おぼろはキリッと、ひどく厳しい顔を作った。
「そう、うちも蒼太くんをサポートする。この、一鍬ちゃんのイカヅチ丸でな。愛を凍らせるやなんて絶対に阻止したる。さぁ、ミッションスタートや!」
「了解!天空の花を回収する。ですね」
「ほな、蒼太くん行くでぇ~」

その時から、おぼろの中でイカヅチ丸が『身を守るための武装』ではなく『愛を守るための武装』となった。


288:ミッションスタート!最高のアイテムを追え!代理投下
08/07/09 22:23:59 7N/BVBkL0

【日向おぼろ@忍風戦隊ハリケンジャー】
[時間軸]:巻之三十、後
[現在地]:C-4森 1日目 黎明
[状態]:全身に軽い火傷、打撲。応急処置済み
[装備]:イカヅチ丸@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:蒼太と共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第二行動方針:首輪を何とかする
※首輪の制限に気が付きました。


【最上蒼太@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.3、後
[現在地]:C-4森 1日目 黎明
[状態]:良好。1時間半ボウケンブルーに変身できません。
[装備]:アクセルラー@轟轟戦隊ボウケンジャー、スコープショット@轟轟戦隊ボウケンジャー、バリサンダー@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:ヒュプノピアス@未来戦隊タイムレンジャー、スタッグブレイカー@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:おぼろと共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第二行動方針:おぼろを守る
※首輪の制限に気が付きました。



289:ミッションスタート!最高のアイテムを追え!代理投下
08/07/09 22:24:20 7N/BVBkL0


【クエスター ガイ@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.23以降
[現在地]:C-4森 1日目 黎明
[状態]:全身に裂傷。かなりの重症のため時間制限に関わらず戦闘不能。要回復アイテム。
    ただし、精神的には高揚感あり。戦いを心底楽しんでいます。
[装備]:グレイブラスター@轟轟戦隊ボウケンジャー、釵一本@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[道具]:クエイクハンマー@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式(麗のものは全て搾取済み) 天空の花
[思考]
基本方針:ロンやボウケンジャーを倒すついでにゲームに乗る
第一行動方針:天空の花を持って、J-10エリア『叫びの塔』へ
第二行動方針:気に入らない奴を殺す。一人殺しました。
参考:1本目のペットボトルを半分消費しました。




290:ミッションスタート!最高のアイテムを追え!代理投下
08/07/09 22:24:52 7N/BVBkL0



171 :ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY:2008/07/09(水) 22:01:20
以上です。誤字脱字、指摘、感想等よろしくお願いします。



代理投下終了

291:名無しより愛をこめて
08/07/09 22:30:29 7N/BVBkL0
読了。
投下乙!
ロンの干渉を撥ね退けるおぼろさんと蒼太。
決意も新たにですが、クエスターガイがそうはさせない。
いいところでの引き、今後が楽しみです。GJ!

292:名無しより愛をこめて
08/07/10 01:40:02 sS0mL83A0
蒼太のアクセルラーは恐らくネオパラレルエンジンの換装が済んでないから
ガイと戦うのは辛そうですね。いくら、相手が手負いだとはいえ。
しかも時間軸的に彼はクエスターを知らない。

293:名無しより愛をこめて
08/07/10 11:38:19 lAQHBLJrO
投下&代理投下GJです。
手負いの身で、おぼろさん達から天空の花を奪うとは、流石クエスター。
考えがあったとはいえ、自ら蒼太が手を離す時や、おぼろさんがロンに誘惑された時は、ハラハラしました。
おぼろさんの決意をせせら笑うロンの言葉に、これからのロワの行方が気にかかりました。
相変わらず心理描写がお見事です。GJ!

294:名無しより愛をこめて
08/07/12 21:04:37 mrgJGRVGO
まとめ更新乙です。いつもありがとうごさいます。

295:名無しより愛をこめて
08/07/16 08:16:10 u5Wb0E3sO
保守です

296:名無しより愛をこめて
08/07/17 01:59:26 T/g6x+l20
もう終わりかね

297: ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 02:44:51 l276KCGdO
保守がてら、進行報告を。
9割書き上がりました。
明日の夜には、投下できると思います。

298:名無しより愛をこめて
08/07/17 09:34:20 4a/hTks/0
>>297
了解。楽しみにしています

299:名無しより愛をこめて
08/07/17 10:38:39 25K9MbGN0
>>297
楽しみにしております。

300: ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 17:22:02 Bfm2oN6d0
すみません。もう、午前まわっていましたね。
本日の夜に投下いたします。
まぎらわしくて申し訳ありません。

301: ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 23:06:38 ZhSaeQJO0
ただ今から投下いたします

302: ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 23:07:15 ZhSaeQJO0
「なあ、疲れてニャイのか?黄色いの」
「平気だよ。猫さん疲れた?」
「黄色いのが持って歩いてるのに、俺様が疲れるわけないニャ」
なんとか合流を果たした竜也達一行は、一路南へと向かっていた。
「もう少し歩けば都市部に入るから、屋根のある所を探して休もうか」
「菜月は大丈夫だよ、それより竜也さんとシグナルマンさんは休まなくて大丈夫?」
明るく振舞ってはいても時折暗い表情を覗かせる菜月を気遣った竜也だったが、逆に彼女に気遣われてしまった。
取り付く島のなかったメレにさんざん振り回された竜也は苦笑しつつ、気遣われたもう一人、シグナルマンの様子を窺った。
「本官は、取り返しのつかない事を……」
初めて顔をあわせた時からずっと、シグナルマンは自省を繰り返していた。
「えーい、いつまで落ち込んでるニャ、いい加減立ち直るニャ」
「いっぱい謝ったらきっとメレさんも許してくれるよ。わざとじゃないんだもん」
(いや、それはどうかな?)
竜也は内心で呟く。あの様子では、まず聞く耳は持ってないだろう。
下手をすれば、出会い頭にシグナルマンに殴りかかってきそうだ。
「いーや、本官の注意が足りなかったんだ。もっと注意深く生きている可能性を考えるべきだった」
シグナルマンの気持ちは分からなくもない。脈も鼓動も無かった時点で、手遅れだったと考えるのが普通だ。
それでも息を吹き返したのは、一時的に仮死状態にでも陥っていたのか、それとも特殊な種族――例えばシオンのような異星人――だったのか。
だが、その前に……
「本官はどうやって彼女に謝ればーーー!!」
「「「しーっっっ!!」」」
……ところかまわず叫びだすのはやめて欲しいところだった。

303:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:07:38 4a/hTks/0
 

304:一時の休息 ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 23:08:03 ZhSaeQJO0


都市部に入って最初に目に付いたのは、ずいぶんとバトルロワイアルにはそぐわない建物だった。
立てかけられた看板には、『24時間営業』『天然湯掛け流し』のうたい文句が並ぶ。
「「「健康ランド?」」」
「また、のん気な物が……まあいいや。休憩するにはちょうど良いし。お邪魔します、と」
閉じていた自動ドアをこじ開けると中に滑り込む。
「真っ暗だね」
「とりあえず俺とシグナルマンで中を見て回ってくるから、菜月ちゃん、ここで待っててくれる?」
「うん、分かった」
こくりと頷くと一段高くなった場所に腰掛け、じっと外を見つめる。
その後ろ姿はひどく頼りなげに見えた。
「スモーキー、頼んだな」
「おう、俺様に任せとけニャ」

305:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:08:34 4a/hTks/0
   

306:一時の休息 ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 23:08:39 ZhSaeQJO0


ちょうどロビーを境目に左右に別れ、竜也は建物の中を見て回った。
事務所らしき場所にあったブレーカーを下ろすと、虫の羽音のようなとともに明かりが灯る。
どうやら電気は通っているようだ。少し迷うが、照明関係のブレーカーは再度あげておく。
窓から差し込む街灯に光と非常灯で手元は見える。周囲のビルに明かりらしい明かりが見えない以上、ここだけ煌々としていては不自然だ。
最後に裏手にあった従業員用と思わしきドアの施錠を確認すると、いくつか見つけ出した非常用の懐中電灯を手にロビーへ戻る。
折り良くシグナルマンも戻ってきたところだった。目で尋ねると首を振る。
「菜月ちゃん、お待たせ。誰もいないみたいだしここで休憩しようか」
ずらりと並んだ下駄箱の鍵の一つをいじくっていた菜月は、ぱっと顔を上げて笑みを見せる。
「お帰りなさい。じゃあ菜月このままスモーキーと見張ってるから、二人ともお風呂行ってきていいよ」
自分達を気遣ったのか、強気に振舞う菜月に竜也は笑いかけると首を振る。
「今度は、俺が見張るよ。後から入るから」
「でも……」
「いいから、ね。菜月ちゃんより先に入ったりしたら、ユウリに怒られそうだ」
おどけたように手を顔の前で合わせて促す。
「……うん。ありがとう竜也さん。じゃあ猫さん一緒に入ろう」
「おう!!」「ちょっと待った!!」
威勢よく応じたスモーキーだったが、シグナルマンに止められ菜月の手を離れた。
「君は、オスじゃないのか?」
スモーキーは身をすくませると、おずおずとシグナルマンを見上げた。
「本官の職務はチーキュの交通安全を守ることだが、痴漢を働く不埒物を逮捕するのも職務のうちと考えている」
「き、黄色いの、俺様、急に見張りがしたくなったから一人で入ってこいニャ」
「えー」
二人と一匹のやりとりを見て、竜也は肩をすくめた。

307:一時の休息 ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 23:09:10 ZhSaeQJO0


浴場の扉を開けると、たちこめた湯煙で視界が霞む。
思わず湯船に駆け込みたくなるが、このままでは湯を汚す事になってしまう。
まずは、蛇口をひねると湯で手桶を満たす。
肩口からゆっくりとかけていくと熱い湯が全身を伝い、薄汚れてはっきりしなくなっていた身体を元の青い色に戻していく。
すでに湯船に肩まで浸かっていた竜也は、その光景を見ながら呟いた。
「錆びないのかな……」



暖かい湯に身体をすべり込ませると、張り詰めていた気持ちが緩んでいく。
自分以外誰もいない湯船の中はひどく広く感じて、菜月は膝を抱え込んだ。
一人になるのはまだ怖い。
天井から水滴の落ちる音にびくりと肩を震わせる。
(早くみんなに会いたいな……)
さくらさんに。チーフに。蒼太さんに。――真墨に。
早く会って無事を確かめたい。そうすればきっと、この震えも収まる。恐ろしさも消えてなくなってくれる。
目元を熱く感じて、菜月は掌に湯を掬うとぱしゃりと顔にかけた。
もう、上がろう。湯船の縁に手を掛けバスタオルを巻き付けると、垂らしたままだった髪からぱたぱたと雫が落ちた。
脱衣所に足を向けようとしたその時、微かに物の触れ合う音がした。
「……露天風呂、の方?」
足音を忍ばせると、そっと露天風呂の扉に手をかけた。

308:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:09:55 4a/hTks/0
   

309:一時の休息 ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 23:10:09 ZhSaeQJO0


一般に、女性よりも男性の方が風呂から上がる時間は早いという。
竜也とシグナルマンも御多分に洩れず、菜月が湯から上がった時には既に身支度を整えていた。
「ああ、いいお湯だった。これであれがあれば最高なんだが」
「あれ?」
「コーヒー牛乳」
「探せばあるんじゃないかな」
電気の切れている状態で、どれほど放置されていたか分からない。飲めるかどうかは微妙なところだが。
「本官、今、持ち合わせがないからなー」
勝手に入浴している以上、今更ではあるのだが、妙なところで生真面目らしい。

『きゃーーーーーー!!』
『なんじゃ、お主は!!』

突如、菜月の悲鳴と男の声が響き渡る。
二人は一瞬顔を見合わせると、女湯の脱衣所へ駆け込む。
シグナルマンが扉の前で僅かに逡巡するが、竜也はそれにかまわず浴場に飛び込んだ。
勢いのままたたらを踏んだ竜也と、続けて飛び込んだシグナルマンが目にしたのは、
「これ!娘、手桶を投げつけるでない!ワシは何もせん。落ち着けーーー!!」
「菜月ちゃん。ストップ、ストップ!!」
菜月に盛大に手桶をぶつけられる異星人と思わしき片腕の男の姿だった。

310:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:10:26 iA6t3PaAO



311:一時の休息 ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 23:11:23 ZhSaeQJO0


「やれやれ、酷い目におうたわい」
休憩室らしい広間の畳に座り込むと、ブクラテスと名乗った男は溜息をついた。
怒っているのか、警戒しているのか、怯えているのか、スモーキーを抱きしめたまま、ブクラテスから大きく距離をとった位置に菜月が座り込む。
二人の間に割り込む形で竜也が座った。
「えっと、何から聞けばいいのか。ドアにこじ開けた跡は無かったけどどうやって中に?」
「裏口が開いておったから、普通に入っただけじゃが?」
「でも、鍵が。あ、入った後で閉めたのか
そうじゃと頷く。傷に障ったのか顔を顰めた。
「その腕は?」
「飛ばされてそうそう殺し合いにのった奴に遭遇しての。命からがら逃げ出して病院を探しておったんじゃが、なかなか見つからんのであそこで痛みを癒しておったんじゃ」
「だからってなんで女湯に。せめて、シグナルマンが入った時に出てきてくれてれば」
こんな騒ぎにならなかったのに。言外に非難を込めると、ブクラテスが首を捻った。
「誰も来んかったぞ」
そんな、まさか。と先程から自販機をいじっているシグナルマンに、目を向ける。
「すまない。女湯を覗くのはいけないと思って、浴場には入らなかった」
――全員に盛大に突っ込まれたのは言うまでもない。

312:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:12:29 4a/hTks/0
    

313:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:12:54 iA6t3PaAO



314:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:14:09 iA6t3PaAO



315:一時の休息 代理
08/07/17 23:21:58 4a/hTks/0


「コーラで良かったかな?」
「お、どうも。持ち合わせないいんじゃ?」
「非常時だから勘弁してもらった……少し反省した……」
受け取るとひやりとした感触が手に伝わる。少なくとも数日放置されていたという事はなさそうだ。
プルタブを開け、胃に流し込む。口の中で炭酸が弾けた。
「すまない事をしてしまった」
スモーキーを胸に抱えこんだまま眠る菜月に目をやると、シグナルマンは深い溜息を吐いた。
「まあ、菜月ちゃんに何も無くて良かったよ。俺もうっかりしてた」
もし、ブクラテスに彼女に危害を加える気があったらと思うと、ぞっとしなかったが。
「さて、これからどうする?」
「本官はペガサスの一般市民を保護しなければ。できればメレさんにも謝りたいんだが」
「俺は仲間を探したい。それに菜月ちゃんの仲間も探してあげなきゃな」
「だが、怪我人を放ってはおけない。あの傷はきちんと手当しなくては」
頷くと竜也は地図を広げ、中央を指し示した。
「とりあえず、朝になったら街の中心部に行こう。病院なんかはだいたい中心街にあるはずだから。それに人も集まりやすい」
「了解した」

316:一時の休息 代理
08/07/17 23:23:18 4a/hTks/0


どうやら、上手くいったようじゃな。
寝たふりをしながら二人の会話に聞き耳を立てていたブクラテスは、内心でひとりごちた。
彼らに話した事にほとんど嘘はない。だが、伏せておいた事もある。
実のところ、ブクラテスは竜也達が建物の中に足を踏み込んだ時から、首輪探知機によってその存在に気付いていた。
それでも逃げ出さずデイバックの底に探知機を隠してあそこに潜んでいたのは、センの代わりになる者が必要だったから。
戦う力を持たず、怪我を負った自分がいつまでも単独行動をしていては、遠からず殺し合いに乗った者の餌食になる。
センと同じ着衣の者を探したが、そんなに簡単に見つかるわけもなかった。
それ故にとどまった。
そして、あの場で菜月の姿を垣間見たブクラテスは賭けにでた。
ああまで怯えていた娘がのん気にも風呂に入ろうなどと考えるとは思えない。
大方、先程までの自分のようにお人よしの人間を見つけて、守られているのだろう。
あの娘は足手まといにしかならないだろうが、その連れは利用できるかも知れない。
そう考えるとブクラテスは菜月の注意をひくために、そっと物音を立てた。



そして、今に至る。
思ったとおり、娘の連れはお人よしそうな人間だった。
あまり抵抗も無く自分を受け入れ、あまつ、病院へ連れていこうとさえしている。
とりあえずは、信用しても良さそうだった。
だが、首輪探知機の事、そして置き去りにしてしまったセンの事は伏せておく事にした。
もう、先程のような危うい場に首を突っ込みたくはなかった。
センの事は考えると気がとがめたが、これ以上、足手まといは増やせない。
――恨むでないぞ、セン――
心の中で小さく詫びると、ブクラテスは身体を休めるために睡魔に身を委ねた。


317:一時の休息 代理
08/07/17 23:23:40 4a/hTks/0
【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:D-5 都市 1日目 早朝
[状態]:健康。湯上り。
[装備]:Vコマンダー
[道具]:メレの支給品(中身は不明)
[思考]
基本行動方針:仲間を探す
第一行動方針:ブクラテスを病院へ連れて行く
第二行動方針:仲間を探し、ユウリとアヤセの安否を確認する
第三行動方針:菜月の仲間と理央を探す
備考:クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。他の参加者のバックの中か、どこかに隠されているかは不明です。

【名前】間宮菜月@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task14後
[現在地]:D-5 都市 1日目 早朝
[状態]:健康。まだ僅かに怯えあり。湯上り。就寝中。
[装備]:アクセルラー、スコープショット、マジランプ+スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー
[道具]:未確認、竜也のペットボトル1本
[思考]
基本行動方針:仲間たちを探す
第一行動方針:竜也の仲間を探す

【名前】スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:ボウケンジャーVSスーパー戦隊後
[現在地]:D-5 都市 1日目 早朝
[状態]:健康。マジランプの中。就寝中。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ヒカルと麗を探す
第一行動方針:菜月を守る

318:一時の休息 代理
08/07/17 23:24:28 4a/hTks/0

【シグナルマン・ポリス・コバーン@激走戦隊カーレンジャー】
[時間軸]:第36話以降
[現在地]:D-5 都市 1日目 早朝
[状態]:健康。少し凹み気味。湯上り。
[装備]:シグナイザー
[道具]:けむり玉(1個使用済み)数は不明、その他は不明。メレの釵。
[思考]
基本行動方針:ペガサスの一般市民を保護。戦っている者がいれば、出来る限り止める。
第一行動方針:ブクラテスを病院へ連れて行く
第二行動方針:乙女(メレ)に謝りたい。
第三行動方針:黒い襲撃者(ガイ)を逮捕する。

【名前】ブクラテス@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第12章(サンバッシュ敗北)後
[現在地]:D-5 都市 1日目 早朝
[状態]:右腕切断。簡単な応急処置済み。湯上り。
[装備]:めがね
[道具]:首輪探知機。毒薬。切断された右腕。基本支給品とディパック
[思考]
第一行動方針:竜也とシグナルマンは利用できそうだ。
第二行動方針:首輪探知機とセンの伏せて置く。
備考
・センと同じ着衣の者は利用できると考えています。




319:一時の休息 代理
08/07/17 23:24:56 4a/hTks/0


176 : ◆Z5wk4/jklI:2008/07/17(木) 23:20:32
以上です。
誤字脱字、矛盾点の指摘、ご感想などよろしくお願いいたします。


----------------------------------------------------

代理投下終了します。

320:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:29:39 4a/hTks/0
読了。

温泉での遭遇に和みましたw
ブクラテス、ある意味自業自得。
GJ!

321:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:33:56 iA6t3PaAO
投下、代理投下乙でした。
なかなか順調だな。ブクラテス。最初に菜月と出会ったのが良い具合に転びましたね。しかし癒しチームだなぁ。シグナルマン、竜也、スモーキーのやり取りが微笑ましい!
良繋ぎでしたGJ!

322:名無しより愛をこめて
08/07/18 00:25:23 VAZ/lKFU0
GJ!
終始和やかなムードの中に潜むブクラテスの知略が光ります。
癒しとこれからに対する危機感がいいバランスでした。
しかし、浴場を用意するとは一体ロンは何を考えているのか。

323: ◆Z5wk4/jklI
08/07/20 17:04:38 Xi9c+LZmO
支援&代理投下&ご感想ありがとうございました。
したらば避難所に、挿し絵スレを立てられたらと思っているのですが、
皆さんのご意見をお伺いできますでしょうか?

324:悲願は我が胸に有り ◆MGy4jd.pxY
08/07/22 21:27:49 8ldzuWH30
挿絵スレ楽しみにしております。
では投下させて頂きます。


325:悲願は我が胸に有り ◆MGy4jd.pxY
08/07/22 21:29:32 8ldzuWH30
細身のギラサメに比べ幅広の刀身、日本刀よりも柳葉刀に酷似した一振り。
黒く磨き上げられた柄から刀へ渡り、蒼く彩る鮮やかな鮫の意匠を施した剣。
左右対成す双剣を合わせ一本の剛剣とした『ゲキセイバー』それが、ブドーの支給品の一つであった。

おおよそ扱いの難しい性質を主催者が考慮したのであろうか。
ゲキセイバーに添えられたように入っていたのが『逞しき匠の技を托す薬』
詳細によれば、一度この薬を手に掛けると、如何様に未熟な者でも優れた技術が身に付く薬……との事。
二刀から一刀流、変幻自在の攻撃を鍛錬もせず操れるとあらば、配られた支給品の中でも上等の部類だろう。
だが、ブドーにとって妖刀ギラサメは己が半身ともいえる程の代物。それ以外の刀を、振るう気は毛頭ない。
己の腕を極限まで磨く為、妖刀ギラサメ一振りを手に、戦いに身を投じる所存。

もし、これから出合う者の中に、このゲキセイバーの使い手がいるとしたなら、その者に渡し、悔いなき勝負を挑むつもりであった。


  *  *  *


セン、ブラクテスと別れ一時間余り。
ブドーの歩は進み、鬱蒼とした巨木群に囲まれるC―6エリアへ。
一向に姿を表さぬ他の参加者に業を煮やしたブドーは、木々の梢から差し込む光を忌々しげに踏み付けるように歩く。

「誰もおらぬのか!こうも参加者と出会わぬのでは……」

苛立ち紛れに、ギラサメを振るった。
が……。重い。愛刀が、ギラサメを持つ腕が鉛のように重い。
何故だ?しばし、眉をひそめ逡巡した後、はっと思い辺り首輪に触れた。
ブドーはブクラテスのような戦闘に向かぬ者が呼ばれたかが、先刻から頭の片隅で気にはなっていた。

326:悲願は我が胸に有り ◆MGy4jd.pxY
08/07/22 21:30:20 8ldzuWH30
広間にはブクラテス同然、どう贔屓目に見ても戦いようのない女、女ならまだしも子供までいた。
ブクラテスとて、たまたまセンに助けられたが、あのままセンが来なければ『殺し合い』と言うに及ばず、ただ無惨に殺されるのみ。
力のある者と力なき者。両者が行う、一方的な殺戮では無い殺し合い。
圧倒的な戦闘能力の違いを埋めるからくりに、ようやく合点がいった。
首輪により力を封じ、弱者が強者を斬り屠る。
合点はいったが、釈然としない思いが首を擡る。

「おのれ……。ギラサメを思うように扱えぬとは。だが、これも再び蘇った拙者に課せられた試練!」

幸か不幸か、辺りに参加者は見受けられない。
ならば、今はただ、鍛え上げるのみ。
ブドーは己を奮い立たせ、ギラサメを構えた。

その時、不意にブドー心の内の弱さに付け込むのかのように、胸の奥からメドウメドウの言葉が沸上がって来た。

―― あんたは見限られたのよ。バルバンにも、運にも ――

一瞬、ブドーの焦点が揺れた。
とはいえ、ブドーが狼狽えたのは、その一瞬だけであった。

(戯言であったな。メドウメドウ。拙者は運に見限られてなどおらぬ。
拙者は、死して尚、もう一度この世に舞い戻った。
お主は違う。運に見限られていたのは、お主の方でござる!)

327:悲願は我が胸に有り ◆MGy4jd.pxY
08/07/22 21:30:57 8ldzuWH30
虚空を見据えギラサメを握り直し構えた。
ブドーは内心のメドウメドウへ向け一喝した。

「もはや、ダイタニクスの復活は、バルバンの為ではない!今は亡き、我らブドー軍団が悲願!!」
拙者はその為に再び生を受けたのだと、悲願を達成こそ魔人衆へのせめてもの手向けだと。
その思いを強く身体に刻み付ける為、虚空へ向けギラサメを振った。
真一文字に煌めく閃光。
心の内からメドウメドウが霧散し、ブドーは己の弱さに打ち勝ったと感じた。
そして、次に眼前に浮かぶは、ギンガレッドの姿。
我が身を貫いた閃光と赤い牙。その幻影を一刀両断に切捨てる。
最後に新たなる敵、センを思い浮かべる。
昼行灯のような風体。目に物見せてくれると横一閃にギラサメを払う。

「ゼヤァーッ!」

掛け声と共に、ビュッと風を切る鈍い音を鳴らし、ギラサメは紺碧の鞘へ納められた。
ブドーの背後にて、ドウと若木が倒れた。
一拍遅れて、舞い落ちる緑葉が四散する。

「この若木の如く、参加者全員、必ずや倒して見せる!」

ズシリと腕に重いギラサメが、ブドーの気概に答えるかのように、月光を刀身に受け煌めいた。

―― 御大将!せめて……。最後のご奉公を! ――

魔人衆達の声が、幾度も蘇っては耳朶を打った。

328:悲願は我が胸に有り ◆MGy4jd.pxY
08/07/22 21:32:00 8ldzuWH30
眼の奥に、一人また一人、魔人衆が戦いに散った日。最後の光景が、鮮やかに蘇っていた。
ブドーはギラサメ掲げ、空を仰いだ。

「ブドー軍団の者たちよ。務め、ご苦労であった。お前達は静かに眠っておれ。
ダイタニクス復活は、必ずや拙者が成し遂げてくれようぞ!
我らが悲願のため、拙者、後はもう存分に戦うのみ!」

声高らかに、ブドーは空へ宣誓した。
ようやく傾きかけた月が、ブドーの顔を蒼白く照らす。
ダイタニクス復活、ブドー軍団の悲願を達成する。
何物にも代え難き、決意を浮かべたその顔を。



329:悲願は我が胸に有り ◆MGy4jd.pxY
08/07/22 21:33:38 8ldzuWH30
【名前】剣将ブドー@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第24章(ギンガマンに敗れた)後
[現在地]:C-6森林 1日目 黎明
[状態]:健康。能力発揮済。30分程度戦闘不能。
[装備]:妖刀ギラサメ、ゲキセイバー @獣拳戦隊ゲキレンジャー
[道具]:筆と紙、逞しき匠の技を托す薬@魔法戦隊マジレンジャー
[思考]
基本方針:戦う。
第一行動方針:優勝を目指す。
第二行動方針:仙一と再会時には必ず殺す。
第三行動方針:ゲキセイバーの持ち主がいれば渡し、戦う。


330:名無しより愛をこめて
08/07/22 21:34:14 lL19Q6fg0
 

331:悲願は我が胸に有り ◆MGy4jd.pxY
08/07/22 21:36:43 8ldzuWH30
※首輪の制限に気が付きました。



短文です。以上です。指摘、矛盾、感想等よろしくお願いいたします。

332:名無しより愛をこめて
08/07/22 21:43:27 lL19Q6fg0
投下乙です。
剣将ブドーの決意がこの上なくかっこよかったです。
覚悟が決まったマーダーの彼の行く末が楽しみです。GJ!

333:名無しより愛をこめて
08/07/22 22:38:04 BeHf9gLd0
GJ!
制限に気付き、今までの戦いの日々を思い出すブドー。
刀を振りながら迷いを文字通り振り切り、恐るべきマーダーに変貌する様子が鬼気迫り、これからのブドーに期待が持てました。

334:名無しより愛をこめて
08/07/22 22:58:42 Hw60wLd/0
マーダー役を託されたガイ、グレイ、ブドーそれぞれにドラマがあるのがいいですね。
まぁ、意外なお方が殺る気マンマンだったりもしますが…

335: ◆Z5wk4/jklI
08/07/23 08:26:22 76GcpdDCO
投下乙です。
魔人衆の事を思い、心の中のメドウメドウ達と対峙するブドーがかっこ良かったです。
GJ!


挿し絵、支援絵スレを立てました。
ご入り用の方はお使い下さい。

336: ◆i1BeVxv./w
08/07/25 00:22:49 xISC03ux0
ただいまより投下いたします。


337:ポジティブ ◆i1BeVxv./w
08/07/25 00:23:30 xISC03ux0
「ハァハァ、どーうやらまいたみたいだな」
 荒い息を吐きつつ、ガイは路地裏へと身を潜める。そして、ボウケンブルーから奪取したアイテムを見て、ニヤリと笑った。
「へへっ、天空の花か。いいもん手に入れたぜ」
 次なる獲物を求め、彷徨った末に聞こえた声。その声に耳を澄ませば、愛を凍らせるという素敵なプレシャスの情報。
 ガイは迷わず行動し、プレシャス―天空の花を手に入れることに成功した。
「しかし、使うためにはJ-10エリア、よりにもよってマップの一番端まで持っていかなきゃいけないなんてよ。
 一応、傷は洗ったが、乗り物か、回復アイテムか、どーうにかして手に入れないと無理があるぜ。
 畜生、あの時バイクまで手に入れることが出来てたら」
 ガイの身体に刻まれた傷が疼く。
 青い女に全身に刻まれた傷。人間より強力な生命力を持つアシュでなければ、既に事切れていてもおかしくないほどの傷だ。
 ボウケンブルーを強襲したとき、ガイは天空の花だけではなく、ボウケンブルーの全て、その命までも奪うつもりだった。
 だが、傷の痛みはガイの高揚した精神を強制的に落ち着かせ、撤退という選択肢をとるに至った。
「まっ、考えてみりゃあ、あの場で下手に戦ったら、返り討ちにあってたかも知れないしな。ツキはまだ落ちちゃいねーぜ」
 ガイの辞書に凹むという文字はない。ポジティブシンキング。ガイの特長のひとつだ。



 痛む身体を引き摺りつつ、常人の徒歩よりは少し早い速度でガイは東へと進んでいた。
 犬も歩けばなんとやら。傷を癒すために休むより、ガイは事態が動くことを期待し、移動することを選んだ。
 風景が変わっていく内に、ガイは自分の選択が間違っていないと確信する。
 そこは都市エリアと記載されるだけあって、無人ではあるが商店の類が散在していた。
 わざわざ支給品を用意している以上、回収されている可能性もあるが、探せば乗り物や傷薬もあるかも知れない。
「よっしゃ、ちょいと調べてみるか」
 ガイはいくつかある商店の中から、どことなく古びた感じのする建物を選び、その戸を開けた。

338:ポジティブ ◆i1BeVxv./w
08/07/25 00:24:08 xISC03ux0
「邪魔するぜー」
「ふっ!」
 敷居を跨いだ瞬間、ガイの顔面に何者かの足が現れる。
 ガイがそれを自分に放たれた蹴りだと知覚すると同時に、ガイの顔は中身のないアルミ缶程にへこんだ。
 悲鳴を上げる間もなく、その勢いでガイの身体は後方へと吹き飛ばされていく。
 しかし、ガイも然る者、大地に倒れはしたものの、瞬時に体制を建て直し、建物内にいるであろう敵に向かって構えをとった。
 脳が揺らされ、軽い脳震盪を起こしてはいるが、気にしている場合ではない。
「奇遇ね」
「誰だ!」
「あら、たった数時間前の出来事も忘れたの?それとも知能は未開の原始人レベルなのかしら」
 挑発的な言葉を発しながら、ゆっくりとその姿を現す敵。ガイはその姿に見覚えがあった。
「お前!?あのときの女ぁ~」
 それはガイがこのゲームを始まって、最初に出会った女。幻獣フェニックス拳のメレだった。
「まさか、また会えるとはね。しかも……」
 メレはガイの傷だらけの身体を見遣り、不敵な笑みを浮かべた。
「随分といい格好になったじゃない」
「うっせぇ!貴様程度に遅れをとるガイ様じゃねーんだよ」
 口では威勢のいいことを言ったものの、以前に戦った時の感触ではメレとの腕はほぼ互角。
 見れば左肩に刺し傷の痕こそあるものの、それ以外は最初に出会った時と遜色のない格好をしている。
(こいつ、あの後からまったく戦ってねぇみたいだな)
 武器は豊富にあるが、今の状況ではどう考えてもガイの方が不利。
(こりゃあ適当に相手して逃げるのが一番だな)
 ガイは腰に携えていた釵を手に取り、そのままメレに向かって放り投げた。
 ジャムの可能性があるグレイブラスターを除けば、ガイにとっては唯一の飛び道具。
「喰らいやがれ!」
 ガイとしてはこれに当たるなり、避けるなりした隙を狙って、逃亡を計るつもりだった。
「あら、返してくれるの?」
「ゲッ!?」
 しかし、ガイの予想は裏切られる。メレは飛ぶ釵の柄を握ると、それを反転させ、そのままガイに斬りかかっていった。
(やっべ!思ったより、技のキレが落ちてやがる)

339:ポジティブ ◆i1BeVxv./w
08/07/25 00:24:41 xISC03ux0
 動揺するガイ。そのせいか、回避行動をとるのが数秒遅れる。だが、真剣勝負の場においてそれは命取り。
「あんたのせいでね!」
 左の肩口からガイは胸を切り裂かれ―
「あの後、私がどんな目にあったと思っているのよ!」
 腹に真一文字の斬撃が走り―
「あんな屈辱、許せない!」
 そして、柄尻の部分でこめかみを打ち据えられる。
「っ、がぁ」
 流石のガイも、2度も脳を揺らされる攻撃には耐えられず、今度は完全に意識を飛ばされ、地面へと倒れこむ。
 数秒して、ガイは胸の痛みに意識を覚醒させた。見れば、メレの足が仰向けに倒れるガイの胸に食い込んでいる。
(本格的にやばいな、こりゃ)
 次々と罵詈雑言をガイにぶつけるメレ。その声はどこか遠くに聞こえた。脳を揺らされたのだから、当然であろう。
 しかし、それでもなお、ガイの脳は休むことを知らなかった。
(あの時、きっちりとどめを刺しておきゃあな。っと、今はそれどころじゃねぇな。打開策を考えねぇと)
 揺らされたことで逆に活性化されたのか、ガイは現状を打開するための策を考え、考え、考える。
「あんた、聞いてるの!?」
 反応を示さないガイに苛立ったのか、メレは再び蹴りを放った。
 その拍子でガイの身体が横に向き、偶然にもガイの耳は大地へと付けられる。
(うん!?これは)
 何かに気づくガイ。そして、自分が何をすべきか、ガイは答えを見つけた。
「どうやら話す気力もないようね。いいわ、止めを刺してあげる」
 その言葉の通り、釵を振り上げるメレ。
(こうなりゃ、一か八かだ)
「ジャムるなよ!」
 ガイはグレイブラスターを取り出すと、急ぎ、その引き金を引いた。
 すると、青の女と戦っていた時が嘘のようにグレイブラスターの口径から無数の弾丸が発射される。
「よっしゃあ、制限は終わってたみたいだな」
「何?あんた、どこに撃ってるの?」
 ガイの行動に、思わず呆気にとられ、手を止めるメレ。
 何故なら、逆転の一手と思われたグレイブラスターの銃口がメレとは全然違う方向に向けられていたからだ。

340:ポジティブ ◆i1BeVxv./w
08/07/25 00:25:12 xISC03ux0
「狙いもまともに付けられないみたいね」
 メレは無理矢理自分を納得させ、再度、釵を振り上げようとする。
 だが、もう遅い。ガイの目論みは既に成功していた。
「何、この音?」
「へへっ、来やがったぜ」
 こちらに徐々に近づいてくる音。それはバイクのエンジン音。先程、地面を伝わり、ガイの耳に届いた音だ。
 そして、この音がメレにも聞こえているということはガイの目論みが成功した証。自分が狙った相手が到着した証だ。
 メレは視界にバイクに乗った一組の男女を捉えた。
「あいつらは」
「俺の仲間さ。どーやら気づいてくれたようだな」
「あんた、それを狙って……」
 メレの動揺が彼女の足からガイの身体へと通じる。
「さっきのお返しだ!」
 隙ありとばかりに、ガイはグレイブラスターを短剣へと変えると、メレの足を切り裂く。
 悲鳴を上げ、ガイから離れるメレ。
(絶好のチャーンス!)
 ガイは素早く立ち上がると、踵を返し、メレがいる方向とは逆方向へと走り出す。
「あばよ、緑の姉ちゃん!」
 メレはガイを追おうと手を伸ばすが、すぐにバイクに乗った男女の方に向き直った。
 負傷した足で逃げるガイを追い、挟み撃ちにされるより、ガイを逃がし、正面から戦った方がいいと判断したのだろう。
 その判断は正しい。ただし、バイクに乗った男女、最上蒼太と日向おぼろが本当にガイの仲間だったらの話だが。
(へへっ、上手くいったぜ。騙されやすい姉ちゃんだ。後は精々潰しあいな)
 こうして、ガイは見事にメレから逃亡することに成功した。



 一時間後、ようやくガイは手頃な建物を見つけ、その中で休息をとっていた。

341:ポジティブ ◆i1BeVxv./w
08/07/25 00:26:50 xISC03ux0
 薬はなかったが、町工場らしきその建物にはネジや金属部品、加工のための工具が用意されていた。
 流石にクエスターロボ級の物を造るのは無理だが、単純な物ならばこと足りそうだ。
「ローラースケートでも造るか?まあ、それは後で考えるとして……じゃじゃーん!」
 ガイが効果音と共に取り出したのはディパック。ガイのものではない。青の女のものでもない。
 逃げるときのドサクサに紛れて確保したメレのディパックだ。
「実はしっかり確保してるもんねー」
 ディパックをひっくり返し、机の上に中身をぶちまける。
 その中から自分のディパックとは共通していないものをガイは選別する。
 ガイのディパックと共通していないものはU字型磁石がくっついたような杖と3つの紙だった。
「何々、魔人マグダスの杖?おー、中々使えそうじゃねぇか」
 まずはひとつ目。魔人マグダスの杖とその説明書。武器としても道具としても中々優秀な支給品のようだ。
「後はと」
 ふたつ目とみっつ目はどちらも特別な支給品の隠し場所が書かれた紙だった。
「えーと、暗黒の鎧。これを着れば天下無双の使い手になれます。場所はG-3遺跡エリアの祠か。
 あと、闇の三ツ首竜。説明は書かれてねぇな。場所はA-10森林エリアの境界線付近?
 ちっ、どっちもとんでもない位置にありやがる。ロンは緑の姉ちゃんを動かしたかったのか?」
 最初に支給された参加者はメレではなく、浅見竜也なのだが、ガイはそれを知る由もない。
「さーてと、支給品の確認も終わったし、次はどうしようかね」
 叫びの塔があるJ-10エリア、暗黒の鎧があるG-3エリア、闇の三ツ首竜があるA-10エリア。
 ガイが今いるD-4エリアからはどこもそれなりの距離があり、どの支給品もそれなりに強力そうではある。
 その時、ガイの耳が誰かの声を捉えた。耳を澄まし、その内容を聞き取る。
 それはメガブルーという標的を戦いへと誘う狂人の声。
「……中々面白いこと考える奴がいるじゃねーか。この機に乗じるのもありっちゃあーありか」
 ガイは考える。自分がこれからどうするべきか。
 どんどん浮かぶ様々な行動案。ただ、その中に自分の運命を悲観する案はひとつもない。
 常に前向き。ガイはどこまでもポジティブだった。

342:ポジティブ ◆i1BeVxv./w
08/07/25 00:27:32 xISC03ux0
【クエスター ガイ@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.23以降
[現在地]:D-4都市 1日目 早朝
[状態]:全身に裂傷。かなりの重症のため時間制限に関わらず戦闘不能。要回復アイテム。それでも頭の回転は絶好調。
[装備]:グレイブラスター@轟轟戦隊ボウケンジャー
[道具]:クエイクハンマー@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式(ペットボトル1/2本消費)、 天空の花@魔法戦隊マジレンジャー
 マージフォン@魔法戦隊マジレンジャー、操獣刀@獣拳戦隊ゲキレンジャー、何かの鍵、麗の支給品一式
 魔人マグダスの杖@星獣戦隊ギンガマン、3枚のメモ(杖の説明書、アイテムの隠し場所×2)、竜也の支給品一式(ペットボトル2本消費)
[思考]
基本行動方針:ロンやボウケンジャーを倒すついでにゲームに乗る
第一行動方針:使えそうな道具を作る。
第二行動方針:アイテムの確保orネジブルーの放送を利用する。or天空の花を持って、J-10エリア『叫びの塔』へ
第三行動方針:気に入らない奴を殺す。一人殺しました。
参考:1本目のペットボトルを半分消費しました。

【メレ@獣拳戦隊ゲキレンジャー】
[時間軸]:修行その46 ロンにさらわれた直後
[現在地]:D-4都市 1日目 早朝
[状態]:鳩尾に打撲。左肩に深い刺し傷。両足に軽めの裂傷。
[装備]:釵一本@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[道具]:なし
基本行動方針:理央様との合流。理央様に害を成す者は始末する。
第一行動方針:ガイの仲間(蒼太とおぼろ)を撃退する。
第二行動方針:ゲンギが使えない原因を調べる。それまで撤退。
第三行動方針:青と白の鎧を身に纏った戦士(シグナルマン)とガイに復讐する。
備考:リンリンシーの為、出血はありません。脈や心臓の鼓動も元々ありません。支給品一式はシグナルマンに回収されました。


343:ポジティブ ◆i1BeVxv./w
08/07/25 00:28:05 xISC03ux0
【日向おぼろ@忍風戦隊ハリケンジャー】
[時間軸]:巻之三十、後
[現在地]:D-4都市 1日目 早朝
[状態]:全身に軽い火傷、打撲。応急処置済み
[装備]:イカヅチ丸@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:蒼太と共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第二行動方針:首輪を何とかする
※首輪の制限に気が付きました。

【最上蒼太@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.3、後
[現在地]:D-4都市 1日目 早朝
[状態]:良好。30分程度ボウケンブルーに変身できません。
[装備]:アクセルラー@轟轟戦隊ボウケンジャー、スコープショット@轟轟戦隊ボウケンジャー、バリサンダー@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:ヒュプノピアス@未来戦隊タイムレンジャー、スタッグブレイカー@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:おぼろと共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第二行動方針:おぼろを守る
※首輪の制限に気が付きました。

344:ポジティブ ◆i1BeVxv./w
08/07/25 00:30:48 xISC03ux0
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点、感想などありましたら、ご指摘お願いします。

ついでの備考ですが、ガイと他の3人とは状態表に記載された時間が1時間違います。

345:名無しより愛をこめて
08/07/25 01:21:18 CCBIbHWVO
>>344
投下乙です!
この男、ノリノリであるw
ひたすら楽観的でノリノリなガイ。
まともに戦えない状態でメレと口先で渡り合ったのは、流石はマーダー有望株、クエスターだと思いました。
またもや誤解で敵を増やしそうなメレの運命やいかに。
流石、臨獣殿の騙され夫婦ですw
思いがけず、メレと対峙する事になりそうなおぼろさん達の事も含めて、今後の展開の気になる、楽しい作品でした。
GJです!

346:名無しより愛をこめて
08/07/25 10:39:49 9smGyyQJ0
GJ!
なんというポジティブw
戦闘不能でありながら危機感をまったく感じさせない。
誰よりもロワを楽しんでいる。さすがはクエスター!
ガイの魅力を120%引き出した良作でした。
もう一度GJ!




347:名無しより愛をこめて
08/07/25 22:12:48 xfDegY1Z0
っていうか、所持品増えたなー、ガイw
考えてみればクエスターというかアシュ的には最高の感情なんだよな。
殺りたい放題だ!
面白かったです。

348: ◆MGy4jd.pxY
08/07/27 04:55:19 Sk6eTxDjO
まとめ更新乙です!

349: ◆Z5wk4/jklI
08/07/29 09:23:17 U3DnCVwR0
まとめ更新乙です。
お絵かき掲示板をご用意できました。
ご入用の方はお使い下さい。
URLリンク(www2.atpaint.jp)

350:名無しより愛をこめて
08/08/01 18:18:55 DuncU2za0
保守

351: ◆MGy4jd.pxY
08/08/04 22:35:33 HQjpkM3dO
大変申し訳ございません。
今日が延長後の期限ですが今回は期限内に投下することが出来ないかもしれません。

ですがもし日付が変わるまでに完成したら投下させていただければ、と思っています。
間に合わなければ、予約破棄が妥当かと考えております。
長期間のキャラ拘束、心からお詫び致します。







352:名無しより愛をこめて
08/08/05 16:38:42 6ovHbmLt0
了解しました。楽しみにお待ちしております。

353: ◆MGy4jd.pxY
08/08/05 17:47:20 wMmU+oqOO
遅レスを重ねてお詫び申し上げます。
やはり期日に間に合いませんでした。
けじめとして予約を破棄します。
度重なる延長と今回の期限切れを鑑み、次回以降は延長しない事と致します。
また書き手として受け入れて頂ければありがたいです。

354:名無しより愛をこめて
08/08/05 18:22:54 PwkYixha0
>>353
了解いたしました。
次回のご予約を楽しみにお待ちしております。

355: ◆MGy4jd.pxY
08/08/05 18:37:47 wMmU+oqOO
>>352、354
暖かいお言葉ありがとうごさいます。


356: ◆i1BeVxv./w
08/08/06 23:36:00 4c687ghx0
遅くなりましたが、投下いたします。

357:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/06 23:37:13 4c687ghx0
「もう少しで街に着きそうですね、理央様」
「目的の方が見つかるといいですね、理央様」
 ナイとメアは理央を伴い、市街地エリアへを目指し、道なき道を進んでいた。
 理央との交渉は思いの他、順調に進んだ。
 サンヨに襲われながらも、なんとか応戦し、命からがら逃げてきたと伝えると、理央はあっさりとふたりの同行を許可したのだ。 
 支給品のライフルも護身用に持っていていいと言われ、どうやって篭絡してやろうかと考えていたナイとメアにとって、拍子抜けもいいところだ。
 もし殺し合いに乗っていれば容赦はしないと一応の釘は刺されたが、ナイとメアの中で理央に対する認識は確固たるものになった。
 ロンと対峙していたことといい、人をあっさりと信じることといい、インフェルシアに刃向かう魔法使いたちのような甘ちゃん。
 仲間にするには虫唾が走るが、利用するにはこれ以上適した人物はいない。
 ナイとメアは理央が戦闘不能に陥るまで、骨の髄まで利用しつくすつもりだった。
 もっとも、理央には理央なりの思惑がある。
 理央は殺し合いの場でありながら、初対面であるスワンを信じた。結果、裏切られたわけだが、そのことは理央にとっていい教訓になった。
 千言万語を尽くしたとしても、この殺し合いの場において、敵か味方かを見極める材料にはなり得ない。
 それならば、選ぶべき道はふたつ。誰とも合流せず、ひとりだけで行動するか、同行する相手に隙を見せず、決して信じないか。
 理央は後者を選んだ。
 助けを求める者が寝首をかかんとする獅子身中の虫である可能性もあるが、同時に、炎に巻かれ焼死した哀れな参加者のように、弱者である可能性も捨てきれないからだ。
(強き者はいついかなる時も隙を見せない。猛き者は弱き者を決して見捨てない)
 臨獣拳使いとしての荒々しさは残しつつも、幻気を解き放った理央の信念は確かに変わっていた。



「理央様はさっき聞きましたけど、メレって方を探してるんですよね」

358:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/06 23:38:38 4c687ghx0
「ですよね」
 街を目指す道すがら、暇を持て余したのか理央に質問を投げかける。
「そうだ。メレと合流し、ここからの脱出方法を見つけ出し、ロンを倒す。それでこの馬鹿げた遊びは終わりだ」
「でもでも理央様~、首輪はどうするつもりなんですか?」
「そうですよ。これが填められている限り、ロンと戦うことすら出来ませんよ?」
 首輪がもたらす効果。10分戦えば2時間の制限を与え、無理矢理外そうとすれば爆発し、ロンに逆らっても爆発する。
 この首輪を何とかしない限り、ロンに逆らおうなど、夢のまた夢だ。
「首輪か……俺も気になっていた。どうしてロンは俺に首輪など填めたのかと」
「え?それは理央様のお力を封じるためじゃないんですか?」 
「ですか?」
「俺はその気になれば首輪など、いつでも外せる」
「「!?」」
 ナイとメアのふたりは揃って絶句した。この殺し合いを乗り切る上で最も大きな障害として立ちはだかる物。それが首輪だ。
 それを理央は外せるというのだ。
「首輪を外すって」
「どうやるんですか、理央様」
 当然、ナイとメアは理央に答えを求める。それがわかれば、ナイとメアの目的は達成され、生き残る可能性もぐんと上がる。
「簡単なことだ。例えこの首輪がどんな爆発を起こそうが、それを上回る臨気で防御すればいい」
「えっ?」
「はっ?」
 ナイとメアは呆けた顔をするが、理央は自分の考えに絶対の自信があった。
 理央は自分に填められた首輪が幻獣ケルベロス拳ゲンギ『迅愚流』のようなものだろうと予想していた。
 ゲンギで作られた首輪と仮定するならば、通常ならば解除はロン以外には不可能。
 だが、この首輪は無理矢理外そうとすれば、爆発するという特性を持っている。
 ならば、臨獣ジェリーフィッシュ拳リンギ『羅封掌握』を破った時のように、幻気の爆発に負けない強い臨気をぶつければ無効化できるはずだ。
「しかし、ロンなら俺が首輪を外せることなど、わかっているはずだ。それなのになお俺に首輪を填めるとは、俺の考えが間違っているのか。あるいは……」

359:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/06 23:39:17 4c687ghx0
 真剣な顔でロンの裏を考える理央。その横でナイとメアの呆けた顔は不満の顔へと変化を遂げていた。
 『臨気』と言われても、その単語に聞き覚えのないナイとメアにとっては何を指しているのかわからない。
 よしんば、それが理解できたとしても、自分が実行できない解除方法など、ふたりにはどうでもいいことだった。
(理央様って案外……)
(使えないかもね……)
 ナイとメアは落胆し、理央を追い越し、先へと進んだ。
「っ!」
 突然、理央はナイとメアの前へと出ると、ディパックを振り回す。
「と、突然どうしたんですか」
 理央はその問いかけにディパックを見せることで応える。
 ディパックには鋭利な手裏剣がふたつ刺さっていた。
「誰だ、出て来い!」
「ふふっ、ようやく骨のありそうな奴に出会えたようだ」
 声の主は木陰からゆっくりと姿を現す。
 青白い皮膚に鋭い白眼。腰に刀を携え、その武士の如き風貌から発せられる殺気は彼が殺し合いに乗っていることを如実に示していた。
「それはほんの挨拶代わりでござる」
「貴様、何者だ」
「拙者の名は剣将ブドー。散っていった我がブドー軍団の悲願のため、お命頂戴つかまつる」
「ふっ、殺し合いに乗っている奴に……俺は容赦しない」
 理央はナイとメアへとディパックを投げる。そして、ふたりに下がっているよう促す。
 それに従ったナイとメアは理央たちから幾許かの距離を取った。
「戦う前にふたつ。お主、この武器を知っているか」
 ブドーはディパックから腰に携えたものとは形状も種別も違う剣を取り出す。
 それは理央が見覚えのある武器であった。
「ゲキセイバー。何故、お前がそれを」
「拙者の支給品だ。だが、拙者には不要の物。もし、これの持ち主が殺し合いに参加しているのなら、返却の後、是非とも勝負を挑みたい」
「残念だが、それの持ち主はこの殺し合いには参加していない」
「左様か。ならば、お主はどうだ?見たところ丸腰の様子」
「不要だ。お前を倒すのに武器は必要ない。この拳があれば充分だ」


360:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/06 23:39:54 4c687ghx0
 理央の力強い言葉にブドーは不適な笑みを浮かべた。
 話せば話すほど、眼の前の相手が自分と戦うに相応しい骨のある漢だと分かっていくのが嬉しかった。
 早く戦いたい。ブドーの身体は来たるべき時に向けて打ち震えていた。
「もうひとつ。拙者の剣の錆になる、お主の名前を聞いておこう」
 ブドーは鞘から妖刀ギラサメを抜き、構える。
「臨獣ライオン拳使い、黒獅子リオ」
 対して理央も臨獣拳の構えをとった。
「リオ。その名前、覚えておこう……蘇った拙者の最初の相手として」
 ブドーは大地を蹴ると、理央との間合いを一瞬の内に詰める。そして、理央の首目掛け、ギラサメを振り下ろす。
「てぇぇぇい」
 だが、理央はギラサメが振り下ろされるより早くブドーの外側へと回りこみ斬撃を避ける。
 しかし、ブドーも一撃が外れた程度で隙は見せない。直ぐに体制を建て直し、ニ撃目を横薙ぎに振るった。
「ふっ」
 理央はそれも跳躍し避けると、そのままブドーの顔を目掛け、蹴りを放つ。
「ぐっ」
 怯んだブドーに続けざまに上段蹴り、右正拳突き、左正拳突きを放つ理央。そして、止めとばかりに回し蹴りをブドーの腹へと叩き込む。
「ぐぉ」
 溝に入り、苦しそうな呻き声を上げるブドー。
「どうしたこの程度か」
 その様子に早くも理央は勝利を確信し始めていた。
「ふっふっふっふっ、そう来なくては戦い甲斐がない」
「ほざけ」
 理央は腹から足を抜くと、次は顔面に向けて、蹴りを放った。ブドーはそれを正面から受け止める。
「ふっふっふっふっ、浅いな。この程度の攻撃では、このブドーには蚊ほどのダメージも与えられん!」
 ブドーは一度顔を引くと、理央の足へと頭突きを見舞う。その予想以上の破壊力に理央の足に痺れが走った。
「せぇぇぇい!」
 袈裟切りに振るわれるギラサメ。理央は後ろに跳び、避けるが、足の痺れが理央の動きを一瞬遅くする。
「理央様!」
「ちっ」

361:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/06 23:40:41 4c687ghx0
 理央の肩から脇の下に掛けて、袈裟切りの名の通り、袈裟懸けを着たかのような切り傷が理央の体へと刻まれる。
 致命傷ではないもののその傷からは血がたらりと流れ落ちた。
「確かにお主の拳法は大したものだ。だが、所詮それは人間レベル。拙者を倒すには決定的に殺傷力が足りん。
 今からでも遅くない。ゲキセイバーを握るがいい。さすればその差は埋められよう」
 ブドーを睨みつける理央。対してブドーからは余裕の笑みを浮かべている。
 その様を見て、ナイとメアは小声で相談を始めた。
「ねぇねぇ、どうしようメア。なんか理央様負けそうな感じ」
「だよね~。期待はずれもいいところ。どうするあのブドーって奴に取り入っちゃおうか?」
「でもー、結構頭固そうだよ」
「じゃあいざって時はふたりとも」
 それ以上ナイとメアは口に出さなかったが、彼女達の腹は決まった。
「さあ、どうする。ゲキセイバーで拙者との戦いに勝機を見出すか、それともそのまま意地を貫き通すか」
「………ふっ、考えるまでもない。無論、後者だ」
「そうか。己の意地を貫き通し、そのまま死ぬのもよかろう」
「何を言っている。死ぬのはお前だ」
 理央は右手を翳すとギュッと拳を握り締める。すると、理央の身体からたちまち黄金色の闘気が立ち昇っていく。
 やがて、闘気は獣の姿を形づくる。彼の獣拳の名前通り、ライオンの姿を。
「ぬぅ、なんだそれは」
「なるほど、制限は2、3時間というところらしいな」
「制限?まさか、お主、制限された状態で戦っていたというのか」
 理央はブドーの問いに行動で応じる。
「臨気凱装」
 理央の背中に浮かんだ獅子が分離し、装甲となり、理央の身体へと次々と装着していく。
 そして、獅子の頭部が理央の頭部と合わさった時、理央は黒獅子リオへと変身を終えた。
「猛きこと獅子の如く。強きことまた獅子の如く。剣を断ちし者。我が名は黒獅子リオ」
「!!!」
 黒獅子になりより一層激しく、強くなっていく闘気。ブドーは気圧され、無意識の内に一歩、後ろへと下がっていた。
「ブドー、お前の腕は見せてもらった。今度は逆に俺が言おう。俺を倒すには決定的に実力が足りん。
 もしお前がこの殺し合いで誰もその手に掛けていないなら、今すぐ剣を折れ。そうすれば命だけは助けよう」


362:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/06 23:41:48 4c687ghx0
「ふん、このブドーには無用の情け。それにまだ拙者よりお主が強いと決まったわけではない」
 リオへと特攻をかけるブドー。先程までの小手調べとは違い、渾身の力を込めた最速の一撃をブドーは見舞った。
 だが、リオの身体は刃が届く寸前でまるで軟体生物の如く、形を変え、その一撃を受け流した。
「なに!?」
 その光景が信じられず、ブドーは続けて斬撃を放つ。しかし、その全てが最初の一刀と同じく、受け流されていく。
「臨獣ジェリー拳……ふん!」
 幾度目かの斬撃。リオは避けるのを止め、その一閃を握り締めた。
「くっ、放せ」
 ブドーが押せど、引けど、リオの手からギラサメは離れない。
「はっ」
 お返しとばかりに今度はリオが拳を打ち込んでいく。ただブドーの時とは異なり、リオの拳は確実にブドーへと当たり、その体力を奪っていく。 
「剣を放さぬとは大した執念だ。だが、それすらも俺には無意味……ハァァァ!」
 リオの拳に集まっていく臨気。それが極限にまで高まったとき、リオの握力はギラサメの硬度を超え、その刀身を粉々にする。
「馬鹿な、一度ならず二度までも」
 ギンガレッドとの戦いの時と同じく刀を砕かれた動揺。それが勝負の分かれ目となった。
「リンギ・烈蹴拳!」
 臨気の込められた蹴りが、黄金色の弧を描き、ブドーの胸へと打ち込まれる。
「のわぁぁぁ」
 その威力にブドーの身体は宙に舞い、その勢いのまま、木へと叩きつけられた。
 勝負は決した。
「理央様、大丈夫ですか?」
「ですか?」
 リオへと駆け寄るナイとメア。
 先程まで纏っていた不穏当な空気は最初からなかったかのように霧散している。
「心配は無用だ」
「それにしても流石理央様ですね。まさか温存したまま戦っているなんて思わなかったです」
「だよね~。変身した後は圧倒的な強さ。私たち理央様に会えて本当に良かったです」
 その心とは裏腹にリオをおだてるふたり。だが、リオの視界にはナイとメアは入っていなかった。
「ぐっ、ううっ」
 呻き声を上げるブドー。まだ彼の命は絶たれてはいなかった。


363:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/06 23:42:33 4c687ghx0
「きゃっ、理央様。あいつまだ生きてますよ」
「さっさととどめ刺しちゃいましょうよ」
「………」
 息も絶え絶えにリオを睨みつけるブドー。その視線を正面から受けるリオ。
「っぅ!」
 ブドーは勢いよく立ち上がると、踵を返し、森の中へと逃げていく。
「あっ、理央様、あいつ逃げちゃいますよ」
「早く、追っかけましょう」
「放っておけ」
 急かすナイとメアにリオは態度で示した。臨気凱装を解き、人間の姿へと戻ると、森へと背を向ける。
「えっ、どうしてですか理央様~」
「理央様~」
「奴の剣は断った。あの場で向かって来れない臆病者は既に戦士ではない」
 最初に視線を交わしたときと最後に視線を交わしたときとでは、ブドーの眼は明らかに違っていた。
 最初は強い意志を感じさせる戦士の眼をブドーは見せた。だからこそ、理央は戦士として戦いに応じ、情けさえも掛けた。
 だが、最後に見たブドーの眼は自分に怯えていた。ブドーの言葉を借りるのなら、自分の意地を貫けない相手は殺すに値しない。
 それでも誰かを殺していたなら、話は別だが、ブドーは『蘇った拙者の最初の相手』と言っていた。
 少なくともこの場ではまだ誰も殺していないのだろう。そして、あの様ではもうブドーは誰も殺せない。
 既に理央はブドーへの興味を失っていた。それより、今憂慮すべきは別のこと。
(さあ、このふたり、どうでる?)
 ナイとメアにとって、制限を受けている今の自分は絶好の獲物のはずだ。
 殺し合いに乗っているのならば、この機を逃すとは思えない。
 理央は自分のディパックを横目で確認する。彼のディパックに入っているのは武器だ。
 それもひとつで五つの役割を果たす変幻自在の武器。
(こいつらの支給品は飛び道具だったな。もしもの時は使わせてもらうとするか)
 ナイとメアを警戒しつつ、街への道を再び歩き出す理央。
 その理央の後ろで、ナイとメアは内緒話を始めた。
「ねぇ、メアどうする?」
「どうしようか、ナイ?」
「今、制限中だよね」


364:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/06 23:43:21 4c687ghx0
「制限中は2時間、全力を出せないし、絶好のチャンスだよね」
「それじゃあやっちゃう?」
「「やっちゃおうか」」
 元々ひとつであるナイとメアの論議は早い。あっさりと結論を出し、計画の実行へと動き出す。
「「理央様」」
「なんだ」
 理央が不審な眼を向ける。だが、その視線の意味を知ってか知らずか、ナイとメアはあっけらかんと応えた。
「わたしたち~」
「ちょっと失礼しますね」
 理央から離れ、森へと行こうとするふたり。当然ながら、理央はより一層視線を強くする。
「待て、何処へ行く」
 それでもナイとメアはペースを崩さない。
 少し、照れくさそうに明るい声で理央へと告げた。
「やだ、理央様。女の子がちょっと失礼するって言ったんなら察してくださいよ~」
「くださいよ~」
「?」
 理央は基本的に鈍い。
「もう~、はっきり言わなきゃわからないんですか~?」
「トイレですよ、トイレ」
「本当は街まで我慢しようと思ったんですけど~」
「さっきので緊張の糸が切れたみたいで~」
「そ……そうか。なら、さっさと行け」
 動揺を押し殺し、ナイとメアを促す理央。ナイとメアはそれに従い、森へと進んでいく。
「ここで理央を殺すのは簡単だけど」
「あんな奴がごろごろいるんなら、今は早いよね」
「でも、刈り取れる芽は~」
「早めに刈らないと~」
 木々がナイとメアの姿を隠す。理央からは完全に見えなくなったことを確認すると、ふたりは頬をすり合わせた。
 たちまちふたりの身体は溶け合い、ひとつの身体を創造する。
「ほほほっ、待ってなさい。ブドー」


365:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/06 23:44:05 4c687ghx0
 バンキュリアは翼を広げると、ブドーを追った。



「………」
 無言のままブドーは森の中を歩いていた。
 胸の傷の痛みに歯を食いしばり耐えながら、ひたすらに歩く。
 だが、胸の傷より鋭く、激しく痛むのは敗北し、逃亡したという事実であった
(拙者は何故逃げたのだ)
 その答えは分かりきっている。あのまま立ち向かっても負けは確実。だから、逃げたのだ。
(しかし、拙者は戦うと決めたはずだ。悲願を果たすために戦うと。だが、あの時の拙者は……)
 今まで敬愛するゼイハブにすら抱いたことのない感情。
 絶対的な強者への恐怖。
 ブドーが逃げたのは状況的に不利だったからでも、負けることが怖かったからでもない。
 ただ命が惜しく、死にたくなかったから逃げたのだ。
 それは例え、負けることがわかっていたとしても、忠義のため、自らの命を散らしていたブドー軍団の将としてあるまじき行為。
「くっ」
 憤りを手近にある木で晴らそうと、ブドーはギラサメを抜いた。
 だが、既にギラサメの刀身は理央に砕かれ、見るも無残な姿へと変わり果てている。
 ブドーは自分の半身とも言えるその刀の有様に、頭を垂れた。
 その瞬間、銃声がブドーの耳に届いた。見ると地面には弾丸の痕が刻まれている。
「あらら、外しちゃったわね」
 ブドーが振り向けば、上空には翼を広げた黒い襲撃者―バンキュリアの姿があった。
「何者!」
「ふふっ、さっき会ったじゃない。もっとも、さっきはこの姿じゃなかったけど」
 その言い回しに、ブドーは相手が何者かを判断する。
「貴様、先程の女か」
「そうよ。わかったら、さっさと死ぬがいいわ」
 バンキュリアはライフルを構えると、ブドーを狙った。
「くっ」


366:名無しより愛をこめて
08/08/06 23:57:20 K3PWx+qH0
sien

367:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/07 00:00:12 4c687ghx0
 ブドーは一目散に逃げ出す。ギラサメもなく、制限が掛かっている今、勝ち目はない。
「はぁはぁ、はぁはぁ」
 場所は森の中。高くそびえ立つ木々が自分を守ってくれるはずと、ブドーは懸命に森の奥へと進んでいく。
 ところが―
「無駄よ」
 何時の間にかブドーの眼前へとバンキュリアは移動していた。
 そして、即座にライフルの引き金が引かれる。
「ぬぅわ」
 放たれた銃弾がブドーの肩を貫通した。白装束が彼の身体から流れ出た血に染まる。
「確かに上空から狙うのは木が邪魔くさいけど、こうやって正面からだったら、思い通りに狙えるわ。
 気づいてる?あんたの乱れた呼吸。凄く聞き取りやすいわ」
 ナイとメアの時ならいざ知らず、今ならば、相手の気配を探ることは容易い。
「き、貴様」
「あなたは終わりよ、ブドー」
 バンキュリアの姿が、ブドーの記憶の中にいる女と重なった。

―― あんたは見限られたのよ。バルバンにも、運にも ――

(メドウメドウ……)
 ライフルより銃弾が放たれる。その銃弾はまっすぐにブドーの額へと向かい、砕いた音を轟かせた。



「ふふっ、軽いわね。さて、あんまり遅くなっても不審がられるし、さっさと理央の下に戻ろうかしら」
 ブドーの死体に背を向け、ディパックにライフルを収めようとするバンキュリア。


368:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/07 00:01:50 4c687ghx0
「獲物を追う猟師は前後不覚に陥りやすい。なるほど、客観的に見れば、あの時の拙者がどれだけ愚かだったかよくわかる」
 だが、死んだはずのその男の声が森へと響いた。
 バンキュリアは急いで後ろを振り向く。そこには死んだはずのブドーが雄々しく立っていた。
「あんた死んだはずじゃ」
「どうやら拙者には運が味方しているらしい」
 ブドーの手からギラサメの破片が滑り落ちる。
 相手に止めを刺すなら、頭部か胸を狙うはず。そして、最初の一撃はブドーの後頭部を狙ったものだった。
 ブドーはバンキュリアがライフルを構えた瞬間、反射的に右手に持ったギラサメで頭部を庇った。
 その結果、先にギラサメへと命中した銃弾は弾道を変え、ブドーの頭部への着弾を防いだのだ。
「拙者は終わらぬ。汚名を返上せずに死んでは、それこそ散っていった配下の者たちに顔向けできん」
 いつの間にかブドーの左手にはビンが握られていた。
「そのためなら、信念など不要。手段など選ばぬ」
 ブドーは両手で拍手するように叩き、ビンを割ると、その中の液体を手へと染み込ませた。
「なに格好つけてるのかしら」
 生きていたことには驚いたが、所詮ブドーは制限内。恐れるに足りずとバンキュリアは再度、ライフルを構えた。
「今度こそ死にな」
 だが、銃弾はブドーには届かず、弾かれることになる。
「ゲキセイバー」
 ブドーの両手にしっかりと握られた一対の剣。
 薄刃ならではの柔軟性と高い強度を併せ持つ必殺の剣ゲキセイバー。
 ブドーはまるでオールを漕ぐように振るい、ライフルの玉を弾いたのだ。
「そんな馬鹿な。あんた、制限中でしょう」
「逞しき匠の技を托す薬。貴様のライフルと同じく、支給品によって得られた力は輝きを失わぬようだな」
「くっ」
 バンキュリアは状況の悪化を悟りながらも、逃げずにライフルを構える。一方のブドーはゲキセイバーを合身させ、一対から一本の刀にする。
「双剣合身」

369:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/07 00:02:25 4c687ghx0
 バンキュリアへと迫るブドー。だが、ライフルの引き金は一瞬早く引かれた。

―カチャ

「弾切―」
「ゲキセイバー残酷剣!」
 一閃するブドーの刃。
「貴様程度の首を落とすことなど、制限があろうとも……容易い」 
 悲鳴を上げる間もなく、バンキュリアの首はポロリと落ちた。
 それと同時に主を失った身体も力なく崩れ落ちる。
「ゲキセイバー……中々悪くのない刀だ」
 ブドーはゲキセイバーから血を振り払うと、ピクピクと小刻みに動くバンキュリアの手からライフルとディパックを奪った。
「これも使いこなしてみせよう。拙者の勝利のためにな」
 ブドーは短冊と筆を取り出し、句を記すと、それをバンキュリアの身体へと置き、その場から去っていった。

―悲願への 道程長く まず一首―



(んんっ……あれ?私は一体)
 一時間程の時が流れ、バンキュリアは意識を取り戻した。
(そ、そうだ私はブドーに首を斬られて)
 意識すれば見開かれたままの眼から自分の身体が見えた。
 首のない自分の身体に息を呑んだが、それより重要な事実にバンキュリアは考えを移す。
(首を落とされたのに生きてる。それに結構時間が経っているはずなのに分離していない)
 木々の間から差しこむ光が時間の流れを示す。
 それはバンキュリアが首輪の制限から解き放たれたことを示していた。
(ほほほっ、やはりクイーンバンパイアの私を滅ぼすなんて、無理だったようね。
 こんなことなら、最初から首輪を外しちゃえばよかったわ) 
 そんな時、バンキュリアの視界に何者かの足が映った。


370:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/07 00:02:59 4c687ghx0
 その何者かは身体を屈めると、その顔をバンキュリアの瞳へと映す。
「どうも」
(ロン!)
「そろそろ放送を行う時間ですので、死人のチェックへと参りました」
(死人?私はまだ死んでないわよ)
「厳密にはあなたはまだ死んでいません。いえ、不死身のあなたを殺すことなど誰にも出来ないでしょう。
 でも、首輪が外れた時点であなたはこのゲームから脱落したのです」
(調子に乗ってんじゃないわ。今すぐあなたを殺してあげる)
「何か反抗的なことを考えているようですが……無・駄・ですよ。だって、あなた動けないでしょ?」
 ロンの言う通り、その意識とは裏腹にバンキュリアの頭は何の反応も返さない。
(そういえば口も動かせないし、瞬きもできない)
 瞳さえも動かせない現状にようやくバンキュリアは何かおかしいことに気付く。
「あなただけにこの首輪の本当の性能を教えてあげます。内緒ですよ?」
 そんな焦りを知ってか知らずか、淡々としゃべり続けた。
「首輪の性能は5つ。まずは首輪は形状を自在に変えられます。
 これを小さくすることで小津勇を絞殺し、二つに分けることで、あなたのような特異な参加者に対応しました。
 2つ目に無理矢理外そうとすると爆発します。これはメモに書いてある通りです。
 3つ目にこの首輪の位置を私は常に知ることができます。
 ブクラテスという参加者にはその仕組みを利用した支給品を与えていますので、範囲は限定されますが、彼も知ることが出来ますよ。
 4つ目にこの首輪は音声を私に伝えてくれます。つまり、あなたたちの会話は筒抜けというわけです。
 ここまではいいですね?」
 ロンはわざわざ大地に伏すと、横になっているバンキュリアから見て、下から上へと舐めるようにバンキュリアの顔を見た。
「さて、肝心の5つ目ですが、この首輪はあなたたちへのゲンギの影響を最小限に抑え、10分間だけ一切の制限なくあなたたちの能力を使えるようにしてくれます」
(どういうことよ、それ?)

371:名無しより愛をこめて
08/08/07 00:03:24 qOBIw6mZ0
 

372:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/07 00:03:32 V5TiUR2j0
「わかりませんか。この首輪は酸素ボンベのような役割を果たしています。酸素ボンベなしに、海に長時間潜ることはできないでしょ?
 実際にあなたたちの能力を抑えているのは私がゲンギで作り出したこの空間。首輪は空間の効果をコントロールしてるに過ぎないということです。
 つまりぃ、首輪が外れたあなたはその影響をまとめに受けているということですよ」
(!!!)
 ようやくバンキュリアは自らが置かれている状況を理解した。
 バンキュリアはこの首輪を外せば自分の力は戻るものだと思っていた。だからこそ、生き続けられている自分は制限から開放されたものだと思っていた。
 だが、実際は違う。
「この空間には幻気を持つもの以外を拒み、排除しようとする瘴気が敷き詰められているのです。まあ毒みたいなものですね。
 よって、この首輪なしでは、多少の個人差はありますが、この空間では生きることは出来ない。
 ただ、あなたは幸運なことに不死身でしたので、こうして私の話を聞くことが出来ているというわけです」
(何が幸運よ。それなら死んだ方がマシじゃない!)
「苦しいでしょうね~、不死身であるが故に意識だけが自由になる今の状況は。
 そうですね、差し詰めその状況は圧縮冷凍のような状態でしょうか?」
 嘲るようなロンの声。バンキュリアはロンの例えの意味はわからなかったが、このままだと自分は一生この状態で生き続けることは嫌でもわかった。
 そして、この状況を何とかすることが出来るのが、目の前のこの男しかないことも。
(ロン、私を解放して。脱落したのなら、もう私は必要ないでしょ?)
 ロンに通じているかは定かではないが、必死に助勢を願うバンキュリア。ロンはにやりと笑うと徐に立ち上がった。
「まあ、数日待っていなさい。優勝者が決まれば、この空間は閉じられます。その時にはっきりしますよ。
 あなたがこの空間と共に消滅するか。はたまた、生き続けるかがね……ご武運を」
(待ちなさい、ロン!待ちなさいよ!)
 ロンは黄金色のもやになるとその場から消えていく。
(待って!助けて!ロン!ロン!!)
 バンキュリアは何もできず。ただ、心の中で叫び続けるしかなかった。

【バンキュリア 脱落】
残り36名

373:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/07 00:04:03 4c687ghx0
【名前】バンキュリア@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:Stage18(ブランケン死亡)後
[現在地]:C-7森林 1日目 早朝
[状態]:首だけでなにも出来ず。不死身が故に意識だけはあり。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:なし


【名前】剣将ブドー@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第24章(ギンガマンに敗れた)後
[現在地]:C-7森林 1日目 早朝
[状態]:胸と腹に中程度のダメージ。肩に銃弾による傷。能力発揮済。2時間戦闘不能。
[装備]:ゲキセイバー@獣拳戦隊ゲキレンジャー、一つ目のライフル銃@魔法戦隊マジレンジャー、手裏剣少々@星獣戦隊ギンガマン
[道具]:筆と短冊。サイコマッシュ@特捜戦隊デカレンジャー。予備弾装(銃弾7発、催涙弾5発、消滅の緋色1発)。支給品一式(ブドー&バンキュリア)。真墨の首輪。
[思考]
基本方針:戦い、勝利する。
第一行動方針:リオを倒せるほどに強くなる。
第二行動方針:優勝を目指す。
第三行動方針:仙一と再会時には必ず殺す。
※首輪の制限に気が付きました。


374:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/07 00:05:31 4c687ghx0
【名前】理央@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:修行その47 幻気を解き放った瞬間
[現在地]:D-7市街地 1日目 早朝
[状態]:健康。肩から脇の下にかけて浅い切り傷。ロンへの怒り。2時間変身不能。
[装備]:なし
[道具]:変幻自在剣・機刃、支給品一式。
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗った相手には容赦しない。
第一行動方針:メレと合流する。
第二行動方針:ナイとメアを待つ。


375:断 ◆i1BeVxv./w
08/08/07 00:06:22 V5TiUR2j0
投下終了。

誤字、脱字、矛盾点、感想などあればお願いします。
二点ほど、セルフ突っ込み。

>(強き者はいついかなる時も隙を見せない。猛き者は弱き者を決して見捨てない)
強き者と猛き者が逆になってました。
あと、ブドーの至急品の筆と紙ですが、筆と短冊に訂正いたします。
ご迷惑おかけして申し訳ありません。

376:名無しより愛をこめて
08/08/07 00:22:27 CIYAmjB00
投下乙!
リオとブドーの戦い、そしてブドーのゲキセイバーを使った技量の勝利が見事!
ロンの正確の悪さも出ていました。ロンこえぇぇぇぇ!!
首輪が生存装置……その発想はなかった! GJ!


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