スーパー戦隊 バトルロワイアル Part2at SFX
スーパー戦隊 バトルロワイアル Part2 - 暇つぶし2ch200:名無しより愛をこめて
08/06/20 11:02:18 lL6hQbxQ0
>>198
遅ればせながらGJ!
熱き冒険魂を抑えられない明石。
ヒカルの気持ちの微妙なズレが心配なところです。
そして深雪の死を知らない彼らの今後は……
サーガインと裕作、二人の魅力を引き立てるやり取り、テンポよく読ませる構成力。
もう一度GJ!

ひとつだけ指摘させていただくと、>>190ヒカルのせりふの
「彼は気になることがあると言って、一人で向こうに行ってしまったうよ」

「彼は気になることがあると言って、一人で向こうに行ってしまったよ」
ではないでしょうか?






201:名無しより愛をこめて
08/06/21 00:14:56 VafjvlZS0
裕作さんが鱗持ってるのにーーーーー

まさか魔法のほうが不便だとは

202: ◆i1BeVxv./w
08/06/21 02:55:59 ScA+YyXS0
ご感想ありがとうございます。

>>200
ご指摘感謝です。
まとめサイト更新と合わせまして修正しました。

203:名無しより愛をこめて
08/06/21 11:16:17 TtlrAqmC0
投下乙です。
サーガインと裕作のコンビのやり取りが面白かったです。和みましたw
ヒカルとの合流ですが、放送が怖いグループですね。
明石とのすれ違い、今後どうなるか楽しみです。
GJ!

204: ◆MGy4jd.pxY
08/06/23 21:19:29 dfVG917vO
本文は9割完成、ですがタイトルと状態表が手付かずです。
頑張ったのですが、推考にかかる時間も入れるとおそらく今日中の投下は無理かと……
大変申し訳ありませんが延長させて下さい。

205:名無しより愛をこめて
08/06/23 21:34:53 qemrvbvp0
了解しました。
明日の投下を心待ちにしております。

206: ◆MGy4jd.pxY
08/06/24 23:58:50 BwcbRh4R0
遅くなりまして申し訳ありませんでした。
只今から投下します。


207: ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 00:02:37 XQ2+ROsE0
「ヤバイよ~これからどうしよう。早くインフェルシアに帰りたいよ」
「……」
「あ~もう!ン・マ様が復活してたらあんな奴、ギッタンギッタンのメッタメタにしちゃうのに。ねぇ、メア」
「……」

いつもなら、メアの相槌が入る。
なのに、メアは黙ったまま。
バンキュリアが寂しさから身を二つに分けて以来、それぞれをナイとメアと呼び合い幾多の時を重ねて来た。
メアが返事を返さないのは、初めての事だった。

「メア?」

ナイはメアの顔を覗き込んだ。
メアは大きな目をギラつかせ、月明かりの下では漆黒に見える唇を噛んでいる。

「メア……」

ナイはそっとメアの肩を抱き寄せた。
ナイはメアで、メアはナイ、元々身体一つのバンキュリアなのだから、メアの抱いている不安はナイの本心。
ナイも同じ不安を抱いている。
でも不安に震えていても、状況は何一つ変わらない。
ナイは考えた。自分に与えられた称号の意味を。


208:名無しより愛をこめて
08/06/25 00:03:21 hguAVJwV0
 

209: ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 00:03:51 XQ2+ROsE0
クイーンバンパイアーーーーそれが人々に畏怖され、自らのプライドの証でもある称号。

(そうよ、ワタシたちはクイーンバンパイア、妖幻密使バンキュリア)

気を奮い立たせたナイは、メアの手を握り無理矢理はしゃいだ声を出した。

「大丈夫だよ~アタシたち、不死身のクイーンバンパイアじゃん?」
「……だよね」

返事を返してくれた物の、メアの声はまだ沈んだまま。
ナイはメアの瞳を見つめ宥めた。
いつも通りの声で。

「ねぇナイ、さっき殺されたアイツいたじゃん」
「さっきの……あの黒いヤツ」
「そう、アイツの首輪取っちゃお!」
「……アイツの首輪~」
「そう、アイツの首輪取っちゃって~」
「取っちゃって~?」
「それを囮に、バカな参加者に味方のふりして近づいて」
「うん、うん」
「首輪を外す方法を探さして、こ~んな首輪、さっさと外しちゃお!」
「だね~。さっさと外しちゃお~、外しちゃお」
「だって、ワタシたちは妖幻密使!味方のふりなんて簡単」
「間単だよね~」

密使、それは密かに任務を遂行する使者。

210: ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 00:04:33 XQ2+ROsE0
妖幻密使、それがバンキュリアに与えられたもう一つの称号だった。


ナイはメアの手を握り、二人寄り添いながら来た道を戻る。
真澄の骸に残る首輪を奪う為に。
ロンの片腕であるサンヨ、それに広間にいた憎たらしい魔法使い達、素のバンキュリアでさえも手強い者達。
制限下に於いてなら、なおの事『強敵』と呼べる存在。
それに打ち勝つ為に……
いや、それよりも何よりも自分自身の身を守る為に、まず首輪を外さなければならない。
これが首に有る限り、自分の生死はロンに左右される。

(ロン、アイツはヤバイ。もしかしたら、ン・マ様と同じぐらい……)

笑顔を浮かべながらも、ナイは背筋を走る悪寒を抑えられなかった。
ふと、メイは立ち止まり、慈しむようにそっとナイの首輪を擦った。
どうすればいい?
ナイは自分自身であるメアに問う。

「メア。首輪外した後、どうする?いつまでも、味方のふりするのもムカつくよね」
「ムカつく、ムカつく」
「そうだ、ロンに使えちゃうってのは?ハハハ……」
「アハハハ……」

ロンは、勝ち残った者の願いを叶えると言った。

211: ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 00:05:18 XQ2+ROsE0
吸い付きたくなる、甘い蜜。
だが、甘い蜜には罠がある。
蜜で飼い慣らされても、首輪を嵌められたままであれば、生殺与奪はロン握られたまま。
最後の一人まで生き残れたとしても『元の世界に帰る』その願いさえ、叶えてくれる保証など皆無。
皆、蜜には寄ってくる。だが、その味が苦ければ離れて行くのが世の常。
ナイは視線を泳がせた後、首輪を擦るメアの手に手を重ね言った。

「なんてね。アイツ自分の仲間のサンヨってヤツにも首輪嵌めてたぐらいだし…あっ、もしかして」
「もしかして、サンヨが~」
「いらなくなっちゃったとか?」
「「ザマーミロ~」」

笑顔のメアにナイは満面の笑顔で答えた。

「アタシたちを吹っ飛ばしたサンヨ、もし今度あったら~」
「「やっちゃおうか!」」

バンキュリアはサンヨを嘲笑い、ロンに感じた恐怖を振り払った。

212:名無しより愛をこめて
08/06/25 00:06:02 ze+Kdw+O0
 

213: ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 00:06:03 XQ2+ROsE0


『今度あったら』
今度とお化けは滅多に遭遇できない物。
そう言った観点から見ればナイとメアは非常に運が良い。
だが、真澄の屍体のある場所まで戻った二人は、実際に遭遇した『今度』という奴に目を剥いた。

「げ、ちょっとアイツ、まだいるよ?」
「まじ?」
「ねぇ、アイツもワタシたちと同じで、まだ制限解けてないよね……」
「解けてない。解けてない」
「良い事思い付いちゃったよ。メアがアイツ目掛けて催涙弾を打って~」
「うん、うん」
「アイツが泣いてる間にアタシが首輪を取って、メイが止めを刺す」
「それ、いいね~」

メアは銃弾を催涙弾に詰めかえた。
後一時間は、サンヨも制限時間内。
力が使えないならば、武器を持つ自分たちにも勝気はある。
残弾は銃弾が11発、催涙弾が5発、消滅の緋色と説明書のある弾が1発あった。
制限下の相手ならば催涙弾で視界を奪い、銃口の先端に光るナイフで刺し殺すのは難しくないように思う。
限りある予備の銃弾は出来るだけ取って置きたい。
一発たりとも無駄にはしたくなかった。

「完璧だよね」
「だよね~」

ナイとメアは木の影からサンヨの様子を伺う。

214:名無しより愛をこめて
08/06/25 00:06:27 ze+Kdw+O0
  

215: ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 00:07:29 XQ2+ROsE0
闇の中で、こちらに気付いたサンヨの頭が動くのがわかった。

「やっちゃいな!」

サンヨが立ち上がった、ナイがそう思った時、メイがライフルの弾金を引いた。
ーーパン!
銃声と火花が闇の中に散った。
サンヨは一瞬仰け反り、打たれた胸を抑え低く呻き声をあげる。
白い煙がサンヨの上半身を包む。
そして煙の中で、のた打ち回りながら激しく咳込みはじめた。

「「やったね!」」

ナイとメアの歓声がハモる。
よろめきながら闇の中へ消えて行こうとするサンヨの大柄なシルエットを逃さず、メアは突進し先端のナイフで袈裟がけに切り付ける。
ナイフは刃を煌めかせ、本能的に顔を庇ったサンヨの右手を切り裂いた。
次の攻撃を避けようと後退したサンヨは、真澄の頭であった血溜まりに足を取られよろけた。

「前…ガ、見えな……いヨ」

サンヨはぎくしゃくと腕を動かし、じゃくじゃくと骨を砕き、血に滑る足取りで奇妙なピエロのダンスを踏んでいる。
ナイとメアは可笑しくて笑い転げた。

「キャハハハハ。大成功やったね!」
「早く首輪さがしちゃお!」
「オッケー!何これ、キモ~イ」

メアはサンヨを突き飛ばし、暗がりにしゃがんで、血溜まりの中の首輪を探す。

216:名無しより愛をこめて
08/06/25 00:08:04 ze+Kdw+O0
   

217:名無しより愛をこめて
08/06/25 00:08:26 hguAVJwV0
 

218: ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 00:09:12 XQ2+ROsE0
横で、ザシュッザシュッとリズムを刻みながら、メアはサンヨの腕、肩、体へと執拗にナイフを突き立てる。
その度に催涙弾で焼かれた喉からサンヨの掠れた声が漏れた。

「あったあった、メア!あったよ!」
「おっ、やったね」
「ついでにサンヨの支給品も、貰っちゃお」

メアはサンヨのデイバックに手を伸ばした。
一瞬、真澄の防弾チョッキを思い出し手を伸ばしかけたが、血をたっぷり吸ったそれを着たいと思わなかった。

「なになに?『マジカルチェーン』と『デュエルボンドソード』……剣によって勝負が決した時にのみ、チェーンは解消する。だって」
「何、それ?」

メアは右手で剣を持ち、両側に腕輪が着けられた数メートルほどの長さの古びた鎖を左手でシャラシャラと振り回した。
ナイの視線が鎖に動き、ナイフの切っ先がサンヨから一瞬離れる。
その隙を突いたサンヨは蜥蜴のように地を這い、必死にそこから逃げようとした。
だが、行く手をナイが先回りし塞く。
遅れてメアがマジカルチェーンの片輪をサンヨの右腕に嵌めた。
メアが血で汚れた手を黒いスカートで拭いながら、ナイが銃口を向けながら、言った。

「おっと、逃がさないよ~」
「逃がさないよ~」
「さっきは、よくもふっ飛ばしてくれたよね」
「「せーの」」

ナイとメアは鎖の反対側を力任せに引っ張った。
つんのめるようにサンヨが立ち上がると、ぐるぐると真澄の周囲を回り勢いづいた所でパッと鎖を離す。
サンヨの身体はそのまま突進し、止まる事なく大木に叩き付けられた。

219:名無しより愛をこめて
08/06/25 00:09:41 hguAVJwV0
 

220:名無しより愛をこめて
08/06/25 00:09:48 qXpJ6jlK0
真澄じゃなくて、真墨では
支援

221: ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 00:10:01 XQ2+ROsE0
サンヨは「グェッ」と、かえるのような一声を発し、そのまま仰向けに倒れた。
数メートル後ろから、ナイとメアはその姿に腹を抱えて笑っている。

「アハハ、弱っち~。だからロンにも見切られるんだよ」
「だよね~」

サンヨは倒れたまま、未だ掠れた声を搾り反論した。

「ロ…ン…がサンヨを、見……切るはずな…いヨ」

その言葉に二人は堪えきれずピョンピョンと跳ねた。

「まだ気付いてないよ、コイツ。おっかし~。じゃあなんでアンタも首輪を嵌められてんの?」
「そうそう」
「違うヨ……これは、ハンデヨ~」

サンヨはムクリと上体を起こした。
立ち上がろうと膝を突き、崩れ、手を突き、崩れ、そして四つん這いになりながらナイとメアから顔を背けず、起き上がろうとしている。

「サンヨは…何故だか死なない……不死身ヨ~」

酷くおどけた口調だった。
メアは自分の心が震えるのを誤魔化すよう、歪んだ笑みをサンヨに向けた。
ナイはライフルの催涙弾を黒い銃弾に詰め換えサンヨに狙いを定めた。

「アハハ、そんなの首輪がなければの話だって。
それに不死身なのは、アタシたちだけでいいよ!」
「「逝っちまいな~」」

メアがライフルの引金に指を掛けた。

222: ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 00:11:01 XQ2+ROsE0
その時、右後方から誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえた。

「誰?!……まさか、またロンが来たんじゃないよね」
「ないよね」

ナイとメアはライフルをそちらに向け、足音を追って走り進んだ。
後ろで鎖がジャランと音を立てた。
方向転換したナイとメアは顔を見合わせた。

「「何?!」」

四つん這いになったサンヨの手首の鎖がピンと張った。
サンヨの体がナイとメアが進んだ真逆、左後ろへ引きずられて行く。

「「え?」」

足音が遠ざかって行く。
繋がった鎖の先を持つのは背の高い男。
あちらはフェイント。
自分たちが真澄に仕掛けたような単純な手に嵌められたのだ。
ナイとメアは唇を噛んだ。

「ブクラテスさんが注意を引いて、俺が助ける。単純だけど引っ掛かってくれたね」


223:名無しより愛をこめて
08/06/25 00:11:45 ze+Kdw+O0
    

224: ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 00:12:17 XQ2+ROsE0



「何コイツ~、ムカつく!」
「ムカつく!」
「で、アンタ変身もしないで助けにきたってわけ?変身しないの」
「しないの~」

二人は武器を手にニヤニヤと笑いながら挑むような視線を投げつける。
センは構えたままで、タクトのように人差し指を振る。

「それは君達だっておなじだろ?何か特殊な能力が在るはずだろうに、それを使わず武器で攻撃している。すなわち、一度能力を発揮して今は制限されている」
「さぁ、どうかな?ワタシたち、もうそろそろ2時間経つし~」
「経つしね~」
「2時間……へぇ、制限時間は2時間なんだ。思ったより短かったな。なら、俺はもう変身できるって訳だ」
「あっマズイ!言っちゃったよ」
「言っちゃったよ~」
「殺し合いに乗った上に、笑いながら嬲り殺しにしようなんて、宇宙警察地球署、江成仙一が許さない!」

センはSPライセンスを握り締めナイとメアに吼える。
形勢が不利と分かった途端、ナイとメアは違う違うとばかりに手を振った。

「ま、ま、待ってよ。何か勘違いしてない?ワタシたちはこの黒い奴の首輪を貰おうとしただけで~」
「殺したのはソイツ~」
「ソイツは広間にいたロンの片腕サンヨだよ。ほら、よく見てよ」
「何だって、ロンの片腕?」

センの傍らでうずくまっていたサンヨの体がぐらりと揺れた。次の瞬間サンヨはセンに襲い掛かる。
ナイが二人に向けてライフルを打った。
銃弾はサンヨの振り上げた腕に当たり、そのまま後ろへ昏倒した。

225:名無しより愛をこめて
08/06/25 00:13:28 hguAVJwV0
 

226: ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 00:14:24 XQ2+ROsE0
こそこそと、ナイが近づいてマジカルチェーンの片側をセンの左腕に嵌める。
メアはデュエルボンドソードを右腕に握らせ、傍らにあったセンのデイバックを担いだ。

「ワタシたちは、まだ制限時間中だから~ソイツの事はアンタに」
「任せるよ~」
「剣によって勝負が決した時にのみ、チェーンは解消するんだって。さっさと~」
「「殺しちゃいな~」」

待て!センがそう言いかけたとき、サンヨがナイとメアに向かって駆けだしていた。
踏み止まろうとセンは踏ん張る。
SPライセンスのスイッチをチェンジモードにセット。
エマージェンシーを発声。その寸前、振り向きざまに放ったサンヨの回し蹴りがセンの側頭部を捕らえた。
ズンと脳天を突き抜ける衝撃、継いで背中に鈍く重い打撃。
SPライセンスがセンの手から滑り落ち、サンヨそれを蹴りで弾き飛ばす。
センはふらつく頭を押さえ、体制を立て直し、SPライセンスを取り戻そうとサンヨから距離をとる。
サンヨは鎖を腕に巻き付け距離を縮めてきた。
センが身を捩り、鎖を引き返した瞬間。腕がもぎ取られるかと思う力で強引に引っ張られる。
だが、この時を待っていたセンは身体の力を抜いた。
絶対的に力が上回っているのはサンヨ、同じ力で対抗しようとしても無理な話。
センが優っているのは洞察力と集中力。隙をついた一瞬の逆転を狙う。
引き寄せられる力を助走代わりに地面を蹴り上げる。
センの身体が空中で前方に回転し、重さとスピードを乗せた剣がサンヨの上腕を撫で斬る。
一拍置いて、ドサリとサンヨの腕が地に転がった。
その瞬間、二人をつなぐ鎖もシャンと音を立てて砕け散った。

227:名無しより愛をこめて
08/06/25 00:16:44 ze+Kdw+O0
    

228:◇MGy4jd.pxYさんの代理投下
08/06/25 00:21:46 hguAVJwV0
大きく息を吐き出し、呼吸を整えたセンは草むらに投げ出されたSPライセンスを探し始めた。
後でサンヨ斬られた片手を押さえ、ズズッと前に進んだ。

「……なんで、サンヨを殺さないヨ」
「警察官だから、人殺しはしない。まだ、裁かれていない者をデリートするのは僕の仕事じゃない」
「馬鹿な、男ネ~!!」

サンヨが猛った。力強く走り寄る足音に身をかわしたが遅い。
肩と右脚の内側を抱え上げられ、頭からその場に投げ落とされた。
鎖の繋がれていた方の肘を、全体重と恨みを乗せたサンヨの足が砕く。
そのまま坂道を転げ落ちるように体中に絶え間なく激痛が走る。
サンヨが一蹴り一蹴り毎に力を込め、加えながら蹴る、蹴る、蹴る、蹴る。

「そろそろ、オシマイにするヨ」
「ぐっ……残念ながら、打た…れ……強い…んだよ、俺は」
「ソイツと同じに頭を踏み潰してやるヨ」

言葉とは真逆に動きの止まったセンの頭蓋骨にサンヨの足が掛かる。

「そこまでじゃ!!センから離れねば貴様の命はない!!」

ブクラテスの声が響いた。
声だけだと強そうなんですね。ブクラテスさん。まさか助けに来てくれるとは……
沈みそうな意識の中でセンは思った。

「命びろいしたネ。その腕は、ロンに治して貰うといいヨ~。サンヨは、早くロンに首輪、外シテモラウネ」

サンヨが囁いた。とてもじゃないが良い夢は見られそうもなかった。


229:◇MGy4jd.pxYさんの代理投下
08/06/25 00:22:19 hguAVJwV0



「あのまま、都市へ向かうべきだったか……」

胎児のように体を丸め、口元から鮮血を流すセンの姿を目にしたブクラテスは心の底から後悔していた。
ブクラテスの切断された右腕の治療の為、二人は都市で病院を探すつもりでいた。
エリアの外れで見付けた探知機の反応は4つ。
4人とも全員が殺し合いに乗ったとは思えなかった。
様子を見に行くというセンに従いブクラテスは暗く見通しのきかない森へ反応を追って走りだした。
いくらか走り、木々ばかりの視界の先に揺れている人影が見えた。
銃声と共に、花火でも上がったような歓声が沸いた。
ダンスを躍るように揺れている大柄な影と、銃口を向ける女と俯せに倒れ頭の潰れた死体をまさぐる女がいた。
センは突然逆立ちし、また突然元に戻ると、大柄な者を助ける手筈と囮となった後、落ち合う場所をブクラテスに耳打ちした。
ブクラテスはその場所へは行かず、付かず離れずセンの反応を見失わぬよう距離をとった。
離れすぎれば、ブクラテスに近づく探知機の反応がセンの物かどうか判断が付かなくなる。
やがて反応は2つ別れ、戻ってきてみればセンの頭が、助けようとした者に砕かれようとしていたのだ。

「セン……誰か人を呼んで来よう。動くでないぞ」
「腕…一本…ぐら……い、大丈夫です。ブク…ラテスさんだって……」

センはそれだけ言うと目を閉じた。
ブクラテスは溜息と共に立ち上がり、草叢からSPライセンスを拾い上げセンの手へ握らせた。
弱々しくSPライセンスを握ったセンの姿に、ブクラテスは『センはもう利用できない』と思い至った。
今のセンは最初に出会った女と同じ、利用するどころか足手まといにすぎない。
だが、センのおかげで利用できそうな人物のあてはできた。
センの仲間、顔は知らずともセンと同じ着衣に身を包んだ人物ならば利用できる。
悪く、思わんでくれ。
これ以上ここに居るのはブクラテスにとって、最早時間の無駄でしかなかった。

230:◇MGy4jd.pxYさんの代理投下
08/06/25 00:25:28 hguAVJwV0


その気配に理央が気付いたのは、砂漠を抜け森に続く道を独り歩いていた時だった。
森の奥から怯えた女の気配を微かに、だが、確かに感じ取った。

「……まさか」

ドクドクと心臓を打つ鼓動の一拍ごとに、スワンに焼かれた亡骸、広間で無残に散った名も知らぬ男、バックを手にした美希、それをほくそ笑むロンの姿が沸き上がる。
最後に浮かんだのは門の向こうへ消えるメレの横顔と細い肩。
もし、メレに何かあれば……
理央の胸に、親を殺され、己の半生を狂わされた怒りをも越える熱く激しい怒りが渦をなし逆巻く。
理央は五感を研ぎ澄ませ気配を目指して駆け出した。

森の奥から二人の少女が何者かに追われるように生きを切らし、こちらに向かって駆けてくる。
理央の姿を見た二人は竦み上がり立ちすくんだ。
逡巡しているような二人に、理央が声をかけようとした時。
「た、助けて、ワタシたちサンヨってヤツに襲われて……」
「ヤツはどこにいる!」
「待って、アイツならもうどっか行っちゃったし……それより」
「ワタシたち~」
「味方になってくれる人を捜してて」
「貴様、何者だ?」
「アナタは、広間でロンに向かって行ってた。理央……様、ですよね」
「ですよね」

頼りなく自分に助けを求める二人の女。理央は不審な眼で少女を睨み据えた。
だが、理央の、その眼の奥に敵意はなかった。

231:名無しより愛をこめて
08/06/25 00:25:59 ze+Kdw+O0
  

232:◇MGy4jd.pxYさんの代理投下
08/06/25 00:26:35 hguAVJwV0


フゥ、上手くいったね、メア。
あの変な背の高い男に、制限時間のハッタリは効かないし、ばらしちゃうしでどうなるかと思ったけど上手く行って良かったよ~
森を出てすぐ、広間でロンとやり合ってた理央ってヤツ会ったのはびっくりしたけど……
とりあえずワタシたちを受け入れそうな感じだけど。
でも、いざという時は、あの背の高いヤツから奪った支給品のサイコマッシュで~メッロメロのフッニャフニャにしちゃって~
思い通りに動かせばいいよね、ねぇ?メア。




【名前】サンヨ@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:ロンと一緒
[現在地]:B-8森林 1日目 黎明
[状態]:全身打撲、無数の刺し傷
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
第一行動方針:ロンの指示に従い、しばらく様子見。
第二行動方針:首輪を外してもらう。
備考
・伊能真墨の支給品はスワン製防弾チョッキ@特捜戦隊デカレンジャーでした。
・真墨のディパック、アクセルラー、その他諸々は真墨の死体と共に置き去りにされています。
・サンヨの支給品はデュエルボンドソード、マジカルチェーン@魔法戦隊マジレンジャーでした。
・制限が2時間であることを知っています。

233:◇MGy4jd.pxYさんの代理投下
08/06/25 00:28:23 hguAVJwV0
【名前】バンキュリア@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:Stage18(ブランケン死亡)後
[現在地]:D-8森林 1日目 黎明
[状態]:多少の打撲。ナイとメアに分離中。
[装備]:一つ目のライフル銃@魔法戦隊マジレンジャー
[道具]:予備弾装(銃弾10発、催涙弾5発、消滅の緋色1発)サイコマッシュ@特捜戦隊デカレンジャー支給品一式。
[思考]
第一行動方針:ロンから距離を取る。その後の行動については特に定めていません。
備考
・バンキュリアは首輪の制限を知りました。
・予備弾装に催涙弾や消滅の緋色が含まれているかは後の方にお任せします。
・制限が2時間であることを知っています。

【名前】江成仙一@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:Episode.12後
[現在地]:C-8森林 1日目 黎明
[状態]:左肘複雑骨折、全身打撲。
[装備]:SPライセンス
[道具]:なし
[思考]
第一行動方針:仲間たちと合流する
第二行動方針:気絶中。
備考
・センの支給品、バーツロイド@特捜戦隊デカレンジャーは破壊されました。サイコマッシュはバンキュリアの元へ
・制限が2時間であることを知っています。


234:◇MGy4jd.pxYさんの代理投下
08/06/25 00:29:17 hguAVJwV0
【名前】理央@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:修行その47 幻気を解き放った瞬間
[現在地]:D-8森林 1日目 黎明
[状態]:健康。ロンへの怒り
[装備]:不明
[道具]:不明
[思考]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗った相手には容赦しない。
第一行動方針:メレと合流する。
第二行動方針:この二人は……


【名前】ブクラテス@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第12章(サンバッシュ敗北)後
[現在地]:C-7森林 1日目 黎明
[状態]:右腕切断。簡単な応急処置済み。
[装備]:めがね
[道具]:首輪探知機。毒薬。切断された右腕。基本支給品とディパック
[思考]
第一行動方針:利用できる相手を捜す。
第二行動方針:センは足手まといになる。


235:◇MGy4jd.pxYさんの代理投下
08/06/25 00:29:54 hguAVJwV0
以上、代理投下完了です。

236: ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 00:31:57 XQ2+ROsE0
代理投下ありがとうございました。


237:Nightmare ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 00:32:55 XQ2+ROsE0
以上です。誤字脱字、矛盾指摘感想いただければありがたいです。
タイトルは Nightmare でお願いします。


238:名無しより愛をこめて
08/06/25 00:34:08 ze+Kdw+O0
投下乙です。
ナイとメアの狡猾さがうまかったです。
センちゃんピンチ。リオも今後の行方が不安になるような結末でした。
面白かったです。

239:名無しより愛をこめて
08/06/25 00:43:06 qXpJ6jlK0
投下&代理乙です。
ナイ・メアがさりげなく極悪な事をしているのが、いい感じです。
センちゃん、このままあっけなくやられてしまうかのか!?
ブクラテスの出方が気になります。

240:名無しより愛をこめて
08/06/25 01:06:45 hguAVJwV0
GJ!
制限に絡めとられ、傷を負ったサンヨとセンちゃん。
まともに戦えば決してひけをとらない二人がナイとメアに翻弄される様はロワならではでした。
同時にナイとメアと出会った理央にも暗雲が立ち込めている気がしてなりません。

ひとつ指摘ですが、バンキュリアの状態表の備考に予備弾の記載は不要かと思います。

241: ◆i1BeVxv./w
08/06/25 02:08:20 hguAVJwV0
さるさん規制が怖いですが、投下します。

242:ウメコはどこへ消えた? ◆i1BeVxv./w
08/06/25 02:08:58 hguAVJwV0
 高岡映士が様子を見に行くと言って、小梅の元を離れ、10分の時が流れた。
 小梅は岩場から顔を覗かせ、辺りを確認するが、映士が帰ってくる様子はない。
「う~~ん」
 映士は20分経って自分が戻らなければ、小梅にこの場から逃げろとも言っていた。
 しかし、ふと考えてみる。
 寝惚けていたため、ついつい『いってらっしゃい』と送り出してしまったが、危険が迫れば向かうべきは自分。百歩譲っても一緒に行くべきだったのではないか。
 なぜなら自分は地球署のスペシャルポリス。一方の映士は冒険者とは聞いたが、あくまで民間人だ。
「よし、追いかけよう!」
 決意すれば行動が早いのが小梅の長所だ。小梅は素早く身支度を整えると、映士を追い、走り出した。
 だが、それから一分も経たない内に―
「痛い!」
 足首に感じる鈍い痛み。
 小梅は失念していたが、彼女の足は捻挫中だ。再発した痛みに足を取られ、ディパックの中身をぶちまけながら盛大にすっ転ぶ。
「げふっ」
 砂浜に顔を突っ伏し、蛙を潰したような声を上げる小梅。
(そういえば、高丘さん……映士さんと初めて会った時も同じように転んだんだっけ……)
 小梅の脳裏に浮かぶのは映士との出会い。そして、今までの動向。
 わずかな時間であったが、映士が殺し合いに乗らない、強く、そして、優しい男だということは小梅にはもうわかっていた。
 彼のような男を死なせるわけにはいかない。
「小梅ちゃん、良い子強い子めげない子!」
 自分に喝を入れ、小梅は立ち上がる。足は相変わらず痛むが、気合を入れれば歩けないほどではない。
「待っててね、映士さん!」
 しかし、気合を入れて踏み出そうとした足は、眼前に広がる現実にピタリと止まった。
 ぶちまけた支給品があちらこちらに散らばっている。放っておくという手もあるが、ゴミのポイ捨てを放置して進むのはポリスとしての良心が咎めた。
「ま、待っててね、映士さん」
 もう一度、今度は少し弱気に同じ台詞を呟き、小梅は散らばった支給品の回収を始めた。
 時計に地図に名簿。ジャムパンにピザパンにコロッケパン。ペンとメモ帳に……
「あとは、あっ、あった」


243:ウメコはどこへ消えた? ◆i1BeVxv./w
08/06/25 02:09:22 hguAVJwV0
 それは小梅だけに支給された特別な支給品。小梅はそれを手に取った。



 一方、映士は微かに聞こえてきた声を頼りに、声の主が視認できる距離まで歩を進めていた。
 相手に気づかれぬよう、大きな岩の陰からわずかに顔を覗かせ、その姿を確認する。
 そこにいたのは一組の男女。白いオーバーコートを着た長髪の男性と、赤いツナギを着た短髪の女性だ。
「おーい!アンキロベイルス~!聞こえる~!」
「駄目キロ!聞こえないキロ!」
 ようやくはっきりと聞こえた声に、映士は不思議そうに首を傾げる。
 最初の声は赤いツナギの女性だ。それは口元を見ればはっきりと分かる。
 だが、次に聞こえた少年のような声はどこから聞こえてきたのだろうか。
 白いコートの男性は喋ったように見えないし、外面のイメージとは声が合わない。
(腹話術……?いや、あれはブレスから聞こえてくるのか?)
 女性の右手首に付けられたブレスには爬虫類を模したような細工が施されている。
 自分の手に着けられたゴーゴーチェンジャーが、この場で通信できないのは既に確認済みだ。
 そうなると、あれは意思を持ったプレシャスなのだろうか。
(もっと近くに……)
 より詳細に確認しようと、映士はその場からの移動を試みる。
「……菜摘、ゲキファンをよこせ」
 突然、男性は声を上げたかと思うと、女性のディパックから何かを取り出した。直前の言葉から考えると、それがゲキファンと呼ばれるものなのだろう。
 ゲキファンは男性が軽く振るとたちまち扇状に広がる。
(なんだありゃ?扇子みたいだが)
 不意にゲキファンを物珍しげに見詰める映士と男性の眼が合った。男性の眼にははっきりとした敵意が浮かんでいる。
「やべっ!」
「ふん!」
 男性は振りかぶると、映士がいる方向へとゲキファンを放った。映士目掛け、持ち手を軸に回転しながら真っ直ぐに飛んでいくゲキファン。
 映士は素早く岩陰から飛び出すと、身を低くして、地面へと転がった。
 ザシュっと、映士の上で何かを切り裂くような音がした。見れば岩肌の一部がゲキファンによって、見事に削りとられていた。
 その威力に唖然とする映士の視線を横切り、ゲキファンはまるで操られるかのように男性の手元へと戻っていく。


244:ウメコはどこへ消えた? ◆i1BeVxv./w
08/06/25 02:09:43 hguAVJwV0
「ふっ、中々便利な道具だ」
 嘲るように男性は呟くと、次は外さないと言わんばかりにゲキファンを再び構える。
「ちょっと待て、俺様は戦うつもりはねぇ!」
「信用できるか」
 話にならない。
 映士はボウケンシルバーへと変身するため、ゴーゴーチェンジャーに手を添えた。
「こら、やめなさい!」
 まるで行司が軍配で相撲取りを裁くようにゲキファンを持ち、火花散らす二人の間に女性が入る。
 先程、男性に菜摘と呼ばれた女性だ。
「壬琴、戦う気がない相手にこちらから仕掛けてどういうつもり?」
「そうキロ、短気キロ!」
「ちっ、うるさい奴等だ」
 憎まれ口を叩きながらも、壬琴と呼ばれた男性は渋々といった様子でゲキファンを懐に納めた。
 その様を見て、映士はホッと胸を撫で下ろす。どうやら菜摘は話が通じそうだ。
「あんた、助かったぜ。俺様は高丘映士。宜しくな」
「私は、イエローレーサー。志乃原菜摘っていうの。宜しくね!」
「イエロー……レー……サー?」
 聞きなれない単語に映士は顔をしかめる。だが、そんな映二の困惑を余所に菜摘は紹介を続けていく。
「あなたを襲ったのはアバレーサーの仲代壬琴。顔はちょっと悪人っぽく見えるけど、意外とお茶目な人よ。そして、この子が……」
「アンキロベイルスだキロ!」
 上顎の部分が動くと共に、ブレスから聞こえてくる少年のような声。まるで生きているかのようだ。
「これ、やっぱり生きてるのか?」
「ううん、これはただの通信機よ。他の仲間たちとは通信できないんだけど、アンキロベイルスとは通信できるみたいなの。
 私たちはこの海岸のどこかにいるアンキロベイルスを探しているところ。ねぇ、あなたも一緒に探してくれないかしら?」
「一緒に探せキロ!」
「ああ、いいぜ……と言いたいところだが、俺様の仲間と相談してからだな」
 ふと時計を確認すれば、岩場を離れてから20分近い時間が経っていた。
 あとわずかで小梅に逃げろと指示した時間になろうとしている。
「30分にしとけばよかったか?」
 映士はぼやくと、菜摘たちを連れて、小梅がいる場所を目指した。


245:ウメコはどこへ消えた? ◆i1BeVxv./w
08/06/25 02:10:11 hguAVJwV0
 歩くというよりは走るという速度での会話というのに、壬琴と菜摘は、映士と同じく息ひとつ乱さない。
(どうやら2人ともただの一般人というわけじゃなさそうだな)
 映士はまだ2人を信用していない。特に仲代壬琴は要注意だと考えていた。
 ゲキファンを投げた時に向けられた敵意は、常人が向けるそれとは明らかに違う。
 本当なら小梅との合流前に敵か味方なのかはっきりとさせておきたかったが、生憎、小梅には戻って来なかったら逃げろと伝えている。
 小梅を一人で逃がすことと仲代たちと合流させること、どちらが危険かを天秤に掛けた時、映士は自分の眼の届かない場所に行かれる方が危険だと判断した。
(まあ、仲代はともかく、菜摘の方に害はなさそうだし、大丈夫だろう)
 しかし、小梅といた岩場まであとわずかというところで、映士は異変に気づいた。
「!?、これは……」
 映士が眼にしたのは散乱した支給品。
 時計に地図に名簿。ジャムパンにピザパンにコロッケパン。ペンとメモ帳に、そして、悪魔をデフォルメした人形。
「なにこれ?」
 その光景に菜摘も訝しげな声を上げる。
 映士は直接確認したわけではなかったが、それらの支給品が小梅のものであると半ば確信めいた予感を抱いていた。
 ならば、肝心の小梅はどこにいったのか。
「ウメコー!どこにいるウメコーー!!返事をしやがれ!!!」
 もし近くに敵がいれば、相当に目立つ行為だが、今はそんなことに構っていられない。
 映士は咽喉が張り裂けんばかりに、小梅のニックネームを叫ぶ。
「ふっ、白々しいな」
 声を張り上げる映士の姿を見て、壬琴が不意に呟いた。
「なにぃ、どういう意味だ!」
「そのウメコとかいう女、お前が殺して、海にでも沈めたんじゃないのか?」
「壬琴!」
 菜摘が壬琴を制するが、壬琴は止まらない。
「ゲームに乗ってないことを証明する一番手っ取り早い方法は仲間を作ることだ。女、子供だとなおいい。
 ゲームに乗っている奴が弱そうな奴をそのまま放置している道理はないからな。
 だが、わざわざ行動を共にしなくてもそう思わせることもできる。今まで一緒に行動していたという嘘を吐けばいい。
 俺たちへの不意討ちに失敗したお前はそう考えたんじゃないのか?」

246:ウメコはどこへ消えた? ◆i1BeVxv./w
08/06/25 02:13:58 hguAVJwV0
「……ああ、そうかもな。だが、そりゃあテメェのことだろう!」
 襟首を掴み、映士は壬琴へと詰め寄る。怒りに血走る映士の視線を、壬琴は口元に笑みを浮かべながら、蔑むような眼で受け止める。
 一触即発。そんな空気が場に流れた。
 そんな中、先に眼を反らしたのは映士だった。
「どうした、怖気づいたか」
「うるせぇ!お前にどんなに挑発されようが、俺様は殺し合いには乗ってねぇ!
 それにこんな有様じゃあ、ウメコに何かあったのは確かだ。俺様はウメコを探す。お前と遊んでいる暇はねぇ」
 映士は踵を返すと、散らばった支給品を自分のディパックに詰め、一人で歩き出す。
「壬琴、いくらなんでも言いすぎよ!」
「そうキロ!」
 その後を菜摘が追う。壬琴はその後ろ姿を見つつ、辺りに気を配った。
(こちらを見ている奴は……いないか)
 映士と同じく、壬琴もまだ映士を信用していない。だが、小梅の行方不明の原因が映士にあるとは最初から思っていなかった。
 壬琴には今までの経験から善人と悪人の区別には自信がある。映士は多少ひねくれてはいるが善人の類に入る男だ。
 勿論、善人だろうと、我が身可愛さに殺し合いに乗るのが人間というものだが、そういう奴は大なり小なり『狂い』を眼に宿しているものだ。映士にはそれがない。
 壬琴の挑発は潜んでいるかも知れない誰かへのカマ掛け。
 争う様を見せれば、何らかの行動を起こすかと思ったのだが、どうやらそれはハズレだったようだ。
(何にせよ、ようやく面白くなりそうだ)
 壬琴はディパックを持ち直し、わずかな期待を胸にゆっくりと映士の後を追った。



(ビビィィィィィ~~!上手くいったデビ!)
 彼は暗闇の中でほくそ笑む。彼は自分の策略が上手くいったことがたまらなく愉快だった。
 小梅を自らの転送能力で飛ばし、映士に濡れ衣を着せる。
 映士が戻ってくるかどうかは多少ギャンブルだったが、見事仲間割れを起こすことに成功。結果オーライだ。

247:ウメコはどこへ消えた? ◆i1BeVxv./w
08/06/25 02:16:59 hguAVJwV0
(ビビィ~!この調子でどんどん殺し合いをさせるデビ!上手くいったらネジレジアを再興できるデビ!)
 彼がロンとした約束は特殊なものだった。支給品扱いである彼は最後の一人になり得ない。
 だが、もしこの催しをロンが望む形で終了させることに協力すれば、彼には願いを叶える権利が与えられる。
 そして、ロンの望む形とは殺し合いの果てに、誰かの優勝で終わること。
 必然なのか、偶然なのか、彼が優勝を望む者は参加者の中に一人もいない。
 彼はただ殺し合いが円滑に進むよう邪魔をすればいい。それで願いが叶うなら安いものだ。
(ビビィ~!頑張るデビ!)
 彼の名はビビデビ。Dr.ヒネラーが悪魔科学により作り出した生命体。そして、彼は映士のディパックの中で人知れず揺られていた。


【名前】胡堂小梅@特捜戦隊デカレンジャー
[時間軸]:最終回後
[現在地]:マップ上のどこか 1日目 黎明
[状態]:右足首を捻挫、手に軽い打撲。
[装備]:SPライセンス、拳銃(シグザウエル)、映士のジャケット
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ロンを倒す。
第一行動方針:?

【名前】高丘映士@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task42以降
[現在地]:J-6海岸 1日目 黎明
[状態]:健康
[装備]:ゴーゴーチェンジャー
[道具]:ボウケンチップ、ビビデビ@電磁戦隊メガレンジャー、不明(確認済) 、基本支給品一式(映士、小梅)
[思考]
基本行動方針:仲間と合流し、ロンを倒す。
第一行動方針:ウメコを探す。
第二行動方針:ガイと決着を着ける。
備考:ウメコの支給品はビビデビでした。


248:◇i1BeVxv./w氏の代理投下
08/06/25 11:06:59 6hnslon30
【名前】ビビデビ@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:聖獣戦隊ギンガマンVSメガレンジャー後
[現在地]:映士のディパックの中
[状態]:健康。2時間の間、能力発揮不可。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ロンに協力し、ネジレジアの復興。
第一行動方針:チャンスが来るまで人形のフリ。

【名前】仲代壬琴@爆竜戦隊アバレンジャー
[時間軸]:ファイナルアバレゲーム 死亡後
[現在地]:J-6海岸 1日目 黎明
[状態]:健康。菜摘に振り回され、若干調子が出ない?
[装備]:ダイノマインダー、ゲキファン@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本方針:コイン占いにより殺し合いには乗らないと決める。ロンを倒し、このゲームを破壊する。
第一行動方針:高岡映士に起こったことに興味。
第二行動方針:アンキロベイルスを探す。
第三行動方針:志乃原菜摘と共に行動。


249:◇i1BeVxv./w氏の代理投下
08/06/25 11:07:51 6hnslon30
投下終了。
誤字、脱字、矛盾点、他指摘事項、感想などがありましたら、宜しくお願いします。


250:名無しより愛をこめて
08/06/25 11:21:19 6hnslon30
投下乙&代理投下終了!遅くなって申し訳ありませんでした。

ウメコどこ行った!
そして、ウメコを思う映士が良かったです!
新たに登場したロンの刺客ビビデビ。
いやらしさがロンのミニチュア版のようで今後が楽しみです。
アバレーサーが定着した壬琴、菜摘の「意外とお茶目な人よ」には笑いました。
GJ!



251:名無しより愛をこめて
08/06/25 19:23:02 qD4emHao0
投下&代理投下 GJです!
遅くなりましたが、感想と疑問点をば
◆MGy4jd.pxY氏
圧倒的な力を持たないが故のナイメアの狡猾さが魅力的でした。
デュエルポンドでの戦い方は、頭脳派のセンちゃんならでは。
迫力のあるバトル描写にハラハラドキドキしました。
ナイメアの会話シーンは、別の意味でドキドキしましたw

疑問点ですが、センちゃんと戦った際に、サンヨの腕が地面に転がったと思ったのですが、状態表の記載にはないようでした。
もし、私の読み間違いだったら、申し訳ありません。

◆i1BeVxv./w氏
相変わらずの速筆、お見それしました。
本当にウメコはいったいどこへ!?
頑張るウメコがかわいらしかったです。
すっかり馴染んだアンキロベイルスと菜摘に和みました。
アバレーサー訂正する気は無いのね。仲代先生w
菜摘に振り回されつつも、冷静な仲代先生はかっこよかったです。

すみません。一点気付いた点を。
菜摘の状態表が抜けてしまっているようです。


252: ◆MGy4jd.pxY
08/06/25 21:46:10 9ADf8aQwO
感想そして指摘感謝致します。
いつもありがとうございます。
昨日受けた指摘はしたらばにて訂正しております。
そして確かにサンヨの右腕切断を記載しておりませんでした。
詰めが甘すぎました。失礼致しました。

253: ◆MGy4jd.pxY
08/06/26 12:14:27 9HvQ1FHX0
先ほど指摘箇所と状態表、誤字を訂正したものを仮投下スレに投下しました。
よろしくお願いいたします。

254:名無しより愛をこめて
08/07/01 12:05:36 2GV7cWGDO
まとめ氏更新おつかれさまです

255:名無しより愛をこめて
08/07/02 16:13:48 zwIch99W0
更新乙です!


256: ◆MGy4jd.pxY
08/07/06 14:17:13 NY/YHrDKO
大変申し訳ありませんが、延長をお願いできますでしょうか?

257:名無しより愛をこめて
08/07/06 15:03:12 IzMLIqseO
>>256
了解しました。
楽しみにお待ちしております。

258:名無しより愛をこめて
08/07/06 22:26:10 b9fy1R7J0
最近の戦隊が多いな

259:名無しより愛をこめて
08/07/06 23:01:53 1uBXp3oi0
あんまり古いの多くすると書ける人がいなくなっちゃうんで

260: ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:11:59 eDwjc/u70
投下します。

261:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:13:03 eDwjc/u70
「おーーーい!ローーーン!」
 日が昇り、光に照らされる森にサンヨの声が響き渡る。
 もう幾度同じ言葉を吐いただろうか。
 首輪を外してもらうため、懸命に声を張り上げても、一向にロンは反応を返さない。
 制限時間の2時間は過ぎ、当面の不安はなくなったとはいえ、また力を使えば、同じ不安に苛まれる。
 そうならないためにも、一刻も早く、ロンに首輪を外してもらわなければならないのだが。
「もしかして、あいつらの言ってた通り、サンヨ、ロンに見切られたのかヨ」
 ふと脳裏に不安がよぎる。サンヨを強襲したナイとメアが言った言葉。

―アハハ、弱っち~。だからロンにも見切られるんだよ―

 自分はロンの不死身の部分を司っている。だから、ロンに見切られるわけない。そう考えていた。
 だが、逆にロンが不死身に興味をなくしたとしたらどうだろうか?
 ロンは常日頃から退屈であることに辟易していた。
 もし、不死身でなくなる方法を見つけたのなら、サンヨを見切る理由にならないだろうか
「……そんなわけないネ。また、誰かにちょっかいかけてるに違いないヨ」
 サンヨは首を横に振り、自分の考えを振り払う。
 ロンの悪癖は知っている。ゲームの途中であっても、より楽しくなる方法を見つけたのなら、参加者への介入も厭わない。
 きっと今頃は誰かを駒にするために甘言を囁いているのだろう。だから、反応がないのだ。
 サンヨが知っている情報を総合すれば、そう考えるのが最も現実的だ。
「慌てることはないヨ。ロンが気づくまで、ゆるりと待つとするヨ」
 不安を押し殺し、手近な場所へと腰を下ろす。次の瞬間、聞き覚えのある声がサンヨの耳に届いた。
「その必要はありません」
 サンヨが声の聞こえた方を向くと、眼に映ったのはフードを身に纏った金髪の男の姿。
 紛れもないロンの姿だ。
「ロン、待ってたヨ~!さあ、早く首輪を外すヨ~!」
 捲くし立てるように喋り、ロンへと詰め寄るサンヨ。だが、そんなサンヨとは対照的に、ロンはゆっくりと言葉を返す。
「首輪を?何故ですか?」
 その態度に、ロンがナイとメアとのやり取りを聞いていなかったのだと、サンヨは判断した。
 サンヨはその時のことを簡単にまとめて話すと、首輪を外すように迫る。

262:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:13:53 eDwjc/u70
「ロン、とにかく首輪を外すヨ。サンヨにハンデは必要ないヨ。サンヨなら外しても大丈夫のはずだヨ」
「大丈夫なら、自分で外せばいいじゃないですか」
「何言ってるヨ。これはロンじゃなきゃ外せないはずヨ。サンヨが無理矢理外そうとしたら爆発しちゃうヨ」
 この首輪はロンが用意したもの。サンヨが外し方などわかるはずがないと言うことは分かっているはずだ。
 一体、ロンは何を言っているのか。長い眠りの影響で、まだ、寝惚けているとでもいうのか。
「……ふっ、冗談ですよ。少しからかってみただけです。ただ、やはり今は外すことは出来ません。あなたが言った通り、ハンデは必要ですからね」
 ニヤリと笑うロン。その表情を見て、サンヨはこれ以上の議論は無駄だと悟った。
 考えても見れば、ロンが自分の進言を聞いて、予定を変えるなどありえない話だ。
 しかし、どうしても確認をしておかなければならないことがひとつだけある。
「じゃあ首輪は外さなくていいヨ。でも、一個だけ確認ネ」
「なんですか?」
「ロンは不死身でいることをやめたいわけじゃないヨネ」
 サンヨにとっては核心に迫る質問。
 首輪は厄介だが、いざとなれば無理矢理引っこ抜くことも出来ないわけじゃない。
 凄く痛いだろうが、サンヨは不死身なのだから死にはしない。
 だが、この首輪が不死身を無効化するとしたら、その方法は執れないのだ。
「不死身?……な、何を言ってるのですか。大体、不死身でなくなる方法なんてあるんですか?」
「サンヨはロンの不死身の部分を司っているヨ。だから、サンヨを殺すことが出来れば、ロンは不死身じゃなくなるはずヨ。
 ロンはサンヨを殺す方法を見つけたんじゃないかヨ?例えばこの首輪とか怪しいネ」
 サンヨの言葉に、ロンは彼らしくもなく、動揺した姿を見せる。俯き、何事かブツブツと呟いている。
「どうかしたのかヨ?」
「い、いえ、なんでもありません。それより、今のことはあなたの考えすぎです。首輪はただのハンデキャップ。それだけです」
「ン………」
 サンヨはロンの眼を覗きこむ。ロンらしからぬ行動は自分の推測が当たっている証拠なのではないかと。
「………」
「………」
「そうネ。サンヨの考えすぎネ」

263:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:14:42 eDwjc/u70
 眼なんて覗いたところで、ロンの本音などわかりようもない。
 それに、ロンのことだ、サンヨの反応を楽しむために動揺しているように見せかけたのかも知れない。
 ロンの思惑が何にせよ、所詮、自分はロンのバックアップ。ロンの指示に従うしかないのだ。
(考えるだけ時間の無駄だヨ)
 諦めに似たサンヨの結論に、ロンは安堵したかのような溜息を吐いた。
「それじゃあ、サンヨはこれからどうすればいいヨ?まだ、様子見かヨ?」
「それなんですが、あなたのために一緒に行動する仲間を用意しました。今後は彼の指示に従って行動しなさい」
「ナ~カ~マ?」
「ええ、その名はシュリケンジャー。覚えていませんか。緑色をしたパワフルな男のことを」
「忘れたヨ~。でも、ロンは緑が好きネ」
 メレとシュリケンジャーを重ねるサンヨ。ロンはサンヨの指摘に少々顔を歪め、話を続ける。
「まあいいです。どの道、彼は常時変身した姿でいるわけではありませんからね。今は広間にいた時とはまったく異なる姿になってますよ。
 ですから、シュリケンジャーには、彼の方からあなたに話しかけるよう言っておきました。
 ラッキーなことに、シュリケンジャーはこの近くまで来ています。まもなく会えることでしょう」
 ロンは「とぅ」っと、掛け声を上げると、高くそびえる木の枝へとその身を移した。
「それでは私は帰らせてもらいますよ。サンヨ、あなたの健闘を祈ります」
 ロンは手で敬礼のようなサインを送ると、踵を返し、木々の枝を渡りながら、何処かへと姿を消した。
「ロンにしては珍しい帰り方ネ……まあいいかヨ。ロンの言うとおり、シュリケンジャーを探すヨ」
 不安が解消されたサンヨはどことなく晴れやかな顔で、西へとのっそりと歩き出した。



「不死身……まさか、そんな存在が……しかし、御前様の例も……」
 サンヨから数メートル離れた後、ロンは木陰へとその身を隠した。
 いや、既にその口から発せられる声はロンのそれではない。
 姿こそロンだが、その声は二十の顔を自在に使い分ける男の声。
 そう今までサンヨと話していたロンは天空忍者シュリケンジャーが変装していたものであった。
 目的はロンの手先であるサンヨから情報を引き出すため。

264:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:15:45 eDwjc/u70
 ロンの隣に鎮座し、名簿順に呼ばれなかったサンヨがロンの手先であることは最初から明らかだった。
 優勝を目指すシュリケンジャーにとっても、主催者の情報は仕入れておきたいところ。
 そのためのロンへの変装だったが、結果は予想を超えたものだった。
 シュリケンジャーはサンヨとの会話で得た情報を反芻する。
 まずは首輪の情報。無理矢理外せば爆発し、ロンしか外すことができない。
 また、サンヨにはこれが何らかのハンデを与えている。
 多少サンヨの言い回しが妙であったが、今は特に気にすることではないだろう。
 優勝を目指している限り、首輪はただの飾り。冷凍剣なら外せるかも知れないが、危険を侵してまで試す必要はない。
 次にロンは常に参加者たちを監視しているということ。
 サンヨは大声でロンの名前を叫んでいた。
 最初は広間へと通じる道が近くにあるのかと思ったが、サンヨの動きは一定せず、適当に歩いているようだった。
 そして、サンヨは自分の現状を話す時、その時の様子を「聞いてなかったのか」と訊ねていた。
 おそらく、常時盗聴していて、必要があれば好きな場所に出てこれるといったところではないだろうか。
 考えてみれば、不特定多数を動かそうというのに、まったく監視しないわけがない。
 それに参加者を様々な場所に飛ばせたのだ。好きな場所に移動するなど朝飯前だろう。
 だが、この情報も優勝を目指す限りシュリケンジャーにはあまり関係ない。
 問題は3つ目、サンヨが不死身であり、ロンもまたその恩恵で不死身であるということ。
 本来なら情報を引き出した後、サンヨは始末するつもりだった
 だが、もしこの情報が真実なら、この殺し合いは優勝という餌をぶら下げているだけのデキレースということになる。
 倒そうとしたところで返り討ちに合う可能性が高い。
 しかし、サンヨはこうも言っていた。

―ロンはサンヨを殺す方法を見つけたんじゃないかヨ?―

 少なくともサンヨにはデキレースということは知らされていないということがわかる。
 そして、同時にふたつの疑問が浮かんだ。

265:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:16:27 eDwjc/u70
 仮にデキレースだとすると、サンヨに知らせていないのは何故?
 仮にデキレースではないとすると、不死身でなくなる危険を侵してまでサンヨを参加させているのは何故?
 どちらにせよロンの真意がわかるまで、優勝を目指すのは保留にして置いた方がいいだろう。
 だが、シュリケンジャーも真意がわかるまで座するつもりはない。
 確認する方法は単純にして難解。サンヨを殺せるか試すことだ。
 自らの手で実行するのは止めたほうがいいだろう。
 どちらに転んでもいいようにサンヨは第三者。出来れば敵対する第三者に殺させるのが最適な手段だ。
 差し当たって重要なのはロンがサンヨと自分の合流を許すかどうかだ。
(もし、ロンが優勝したときの約束を守る気があるなら、サンヨをどう扱おうとも放っておくはずだ。
 逆にデキレースになることを望むなら、何らかの手を打ってくる可能性が高い)
 それはシュリケンジャーにとって一種の賭け。真相に近づき過ぎれば待っているのは死。
 だが、優勝を目指すにしても、ロンを打破するにしても、そのことはどうしても確認せざる得ない。
「さて、次はどの顔にしようかな?」
 もう充分時間は置いた。もうサンヨと合流しても疑われることはないだろう。
 優勝を目指す可能性がある以上、もはや鷹介の顔を借りる必要はない。
 むしろ、おぼろを殺さなければならないのなら、知り合い以外の顔で殺してやるのがせめてもの情けだ。
「……この顔にさせてもらうか」
 数十分後、シュリケンジャーはサンヨとの合流を果たす。
 サンヨはあっさりとシュリケンジャーを仲間と認め、一緒に行動することを了承した。


266:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:18:24 eDwjc/u70
【名前】サンヨ@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:ロンと一緒
[現在地]:B-8森林 1日目 早朝
[状態]:全身打撲、無数の刺し傷
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ロンの指示に従う。
第一行動方針:ロンの指示に従い、シュリケンジャーに協力する。
備考
・サンヨの支給品はデュエルボンドソード、マジカルチェーン@魔法戦隊マジレンジャーでした。
・制限が2時間であることを知っています。

【名前】シュリケンジャー@忍風戦隊ハリケンジャー
[時間軸]:巻之四十三後
[現在地]:B-8森林 1日目 早朝
[状態]:健康。顔は柿生太郎です
[装備]:シュリケンボール
[道具]:確認済み
[思考]
基本方針:殺し合いに乗る(一時的に保留)
第一行動方針:七海とおぼろを五体満足で帰還させる。
第二行動方針:それがだめならアレの消滅を願う。
第三行動方針:サンヨが殺せるか試す。できれば敵対する誰か。その後、方針を再決定。
備考
・シュリケンジャーは変身に制限があることに気付きましたが、具体的な時間は気づいていません。
・シュリケンジャーはロンが何らかの方法で監視していることに気づきました。

267:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:19:15 eDwjc/u70
【名前】サンヨ@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:ロンと一緒
[現在地]:B-8森林 1日目 早朝
[状態]:全身打撲、無数の刺し傷、右腕切断。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ロンの指示に従う。
第一行動方針:ロンの指示に従い、シュリケンジャーに協力する。
備考
・サンヨの支給品はデュエルボンドソード、マジカルチェーン@魔法戦隊マジレンジャーでした。
・制限が2時間であることを知っています。

【名前】シュリケンジャー@忍風戦隊ハリケンジャー
[時間軸]:巻之四十三後
[現在地]:B-8森林 1日目 早朝
[状態]:健康。顔は柿生太郎です
[装備]:シュリケンボール
[道具]:確認済み
[思考]
基本方針:殺し合いに乗る(一時的に保留)
第一行動方針:七海とおぼろを五体満足で帰還させる。
第二行動方針:それがだめならアレの消滅を願う。
第三行動方針:サンヨが殺せるか試す。できれば敵対する誰か。その後、方針を再決定。
備考
・シュリケンジャーは変身に制限があることに気付きましたが、具体的な時間は気づいていません。
・シュリケンジャーはロンが何らかの方法で監視していることに気づきました。


268:策略と疑問 ◆i1BeVxv./w
08/07/07 21:21:04 eDwjc/u70
投下終了。
状態表が修正前の方を参照してましたので、再度投下いたしました。
誤字、脱字、矛盾点、ご感想、他指摘事項などありましたら、宜しくお願いします。

ドギーにギャバン隊長とか言わせるため、烈堂にしようとも思ったけど、戦隊じゃないので自重。

269:名無しより愛をこめて
08/07/07 21:35:53 xLobRrct0
投下乙
シュリケンジャーの変装技能をこう活かすとは。
新たな情報を手に入れた彼はどう動くか。
GJ!

270:名無しより愛をこめて
08/07/07 22:38:52 D97MgwUOO
GJです。
ああ、なんだかサンヨが気の毒になってきたw
サンヨを上手く騙したシュリケンジャーの運命やいかに!?
重ねてGJでした。

271:名無しより愛をこめて
08/07/08 03:38:52 TFEJPoBSO
GJ!
シュリケンジャーが、まさかロンに変身するとは!
サンヨ同様すっかり騙されました。
面白かったです!


272:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:45:33 pk3D7anR0
いつもながらの延長。誠に申し訳ありませんでした。
ただいまより投下します。

273:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:46:58 pk3D7anR0
A―1エリア中央。そこにはメモの通り他の木と違う色、血のように赤い葉を付けた一本の木があった。
その木の下、不自然に盛られた枯葉の前で二人は顔を見合わせた。
「ここやな。ロンの姿が見当たらんけど……まさか?」
枯れ草に、とばかりに傍にあった枝で草むらを突く。
「僕が調べますよ。おぼろさんは休憩して下さい。女性にはキツいコースだったでしょう」
「そや、ほんまキッツイコースやったわ~って……。休憩やったら蒼太くんが取るべきやで。うちは、ただ乗せて貰ってただけやし」
ニコッと笑っておぼろを座らせる蒼太。その笑顔が失笑なのか、それとも微笑なのかと、少し複雑な思いが胸を突く。
確かにキツいコースだった。スーパートライアル・エンデューロ・inA―1森と呼んでもいいくらい。
ツーリングなんて生易しい物には程遠い。
見渡す限りの自然林。その中にもちろん舗装された道路など無い。
ジェットコースターさながらのアップダウンコース、振り落とされないように必死で蒼太にしがみつくのがおぼろには精一杯。
『ひゃぁ~』だの『ぎゃー』だの、女らしさ等とはかけ離れた叫び声を上げ続け、辿り着いた頃には、顔面蒼白で声を発するのもやっとだった。
我ながら百年の恋も冷めるわ、おぼろは苦笑いを浮かべる。
「帰りは飛ばす必要もありませんから、ゆっくり帰りましょう」
蒼太は山盛りの枯葉と積もる土を払いのけた。
そこには一畳程度大きさの所々錆び付いた扉があった。
「地下へ続く扉。入って来いって事ですね」
冷静でそっけない声と裏腹に、蒼太の表情は生き生きとして、まるで秘密基地へ急ぐ少年のようだった。
「この中でロンが待ってるちゅうんかな……」
蒼太はおぼろの言葉に頷き、鉄錆た円形の取手に手を掛け勢いよく引いた。
ギィーッと、錆び付いた音が鼓膜を震わせ、カビの臭いが鼻を掠める。
先を行く蒼太が、アクセルラーをライトがわりに奥を照らす。
二人は一段一段、足元を確かめ、ゆっくりと降りて行った。

十段、二十段、その先も階段は続く。
前後は闇に包まれ、閉塞感とカビの臭いで胸がいっぱいになる。
もう戻ろう、蒼太に切り出しかけた時、ライトの先で石造りの重厚な扉が二人を待ち構えていた。

「開けますよ」
蒼太が扉に手を掛け、おぼろは固唾を呑んで見守る。

274:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:48:12 pk3D7anR0
この奥でロンが最高のアイテムを用意して待っている。
すぐ近くに、ロンがいる。
得体の知れないロン。殺し合いの為の最高のアイテム。
怖い。薄い胸を打つ心臓の音が速くなる。
蒼太は体重を乗せ重い扉を押し開けていく。
コゴッと重い音を立て扉が開いた。
おぼろはその先にある物を見るのが怖くて思わず目を閉じた。

扉の向こうは静寂に包まれている。
(……あれ?てっきりロンが「ようこそ」とか言うてくるかと思ったんやけど)
おぼろの耳に飛び込んだのはロンの声ではなく、蒼太の怪訝な声。
「ここは……」
ようやく、おぼろは目を開け辺りを見回す。
広い部屋、縦横の長さは有に30メートル近くある。いや、部屋と言うには奇妙な空間。
扉の前に床は四畳程しか無く、その先は切り取られたように底が見えない闇の世界が広がっている。
部屋の中央に闇の中からテーブル状に台座が伸びており、台座の上にはストーンサークルのように石柱が数十本並ぶ。
石柱は赤褐色の一本だけを除き、後は墓石のように黒く磨かれていた。
こちらの床から台座までは、30センチ四方のブロック状に形の整った石が連なる。
部屋の反対側には、こちらと同じく石造りの扉と炎の灯る燭台がある。
向こうの扉まで行くには、ブロックを連ねた石橋を渡り、石柱の間を通り抜けるしか無い。

「何でしょう、あれ」
蒼太が頭上を指した。ひらひらと一枚の紙が落ちて来る。
二人は床の端まで走り寄り、紙を掴もうとした。その時……
ゴドンッ!
背後で足元を震わす音を立て扉が閉まった。
「何!何やの!」
おぼろは悲鳴を上げた。
だが蒼太は冷静だった。手にした紙にサッと目を通しおぼろに差し出す。

275:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:49:34 pk3D7anR0
「おぼろさん、これを」
そこにはメモと同じ筆跡で、こう書かれてあった。

――ようこそいらっしゃいました。ここに、あなたにふさわしい最高のアイテムをご用意しました。
私があなたの為に選んだアイテムです。
ですが、そのような素晴らしい物を、ただ渡したのではあまりにも不公平すぎると思いませんか?
最高のアイテムを手に入れるにあたり、あなたにはゲームをしていただきます。
ルールは至って簡単。あなたは駒の一つとなり、空所へ移動し他の駒を一つ飛び越し消す事が出来る。
ただし一度移動した場所へ戻る事は出来ず、後方へ移動は出来ない。
空所から通路を通り盤上を移動できるのは5秒間だけです。
5秒経って、空所中心のボタンを押さなければ、または通路にいた場合、あなたは駒と同じように盤上から消えて頂かなければなりません。
制限時間は、扉が閉まってから10分。
そしてゲームをクリアしなければ出口へは辿り着けません。
一つだけ色の違う駒、それを最後に飛び越えれば、最高のアイテムはあなたの物です――

おぼろはチェスのような盤の上に、所々乱立された駒を眺め溜息をついた。
「なぁ、蒼太くん。やっぱりやめとこ?」
怖気事いたおぼろは、精一杯可愛らしく言って見た。
「こんなもん、手詰まりになるように作ってあるに決まってる。消えて頂くやなんて、命賭けてまでやる必要ないわ。肝心のロンもおらんのやし」
蒼太は扉に手を当て、困ったような笑顔を作った。
「……残念ですけど。この扉、中からは開かないみたいです」
「え!そんならゲームをやるしかない、っちゅうわけ?」
「そうなりますね」
蒼太は手を差し出す。
「せやかて、こんな細いとこ……」
戻れないとあれば進むより他に道は無い。
ぶつくさ言いながらも、おぼろは慎重に足を進める。
おぼろの足元を気遣いながら蒼太が言った。

276:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:50:59 pk3D7anR0
「だけど、消えて頂きますと言うのは脅しじゃないかな?僕とおぼろさんの二人で命を賭けて競い合うなら解りますが……
ロンの狙いは、参加者に殺し合いをさせる事です。もしかしたら、狙いは他にあるかも知れませんね」

盤全体を縁どる通路は細く幅20センチ程だが、移動する為の通路幅は1メートルある。
十字に区切られたマスの大きさは一辺1.2メートルの正方形、移動するのに与えられた5秒は充分な時間。
「よっしゃ!いくで」
まず盤の下方に点在する駒を消すべく左端の空所へ進み、中心のボタンを踏み付ける。
ガコン!何かが落ちる音はしたもの得に何も変わらない。
だが、次に進むべく通路に出た時。
ボタンから亀裂が走り、床は扉のように開き外れ落ちた。
そして、二人が渡って来たブロックも手前から一つ、同じように闇に消えて行った。
「こう言う事……」
「ですね。一個進むごとに、一個退路が塞がれる。進むしか道は無い」
「……ほんま、嫌らしい仕掛けやな」
「ですね」

一手。二手。その後も順調に進み、駒は残り10個となった。
そして駒を一つ落とす度、出口へ続くブロックが一つ押し出される。
「……結構時間はかかったけど、わりかし順調やな」
扉が閉じてから既に7.8分経過している。
「急ごか?」
駆け出そうとした足がふらつき、よろけた身体を蒼太が支えてくれた。
「大丈夫ですか?おぼろさん、随分疲れているみたいですけど……」
「うん。まぁ、それはそうやねんけど。もう時間も無いしな」
「後は僕一人でやります。おぼろさんは出口に続くブロックの上で休んでいて下さい。どこへ動けはいいか、指示して貰えれば……」
正直、息も上がっていた。蒼太の申し出は有り難かった。
駒を落とす変わりに、向こうへ伸びるブロックは、随分出来上がっていたので落ちる心配は無い。
残り時間も少ない。自分が足手まといになるよりは……
おぼろは素直に頷いた。

277:名無しより愛をこめて
08/07/09 21:51:09 7N/BVBkL0
 

278:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:53:00 pk3D7anR0
「ありがとう。じゃあ、うちは少し休ませて貰うわ。次はちょうど通路の前の空いた場所へ行けばいいし」
「了解しました。では」
蒼太に手を引かれおぼろは胸の中でカウントを取りながら出口へ向かう通路へ急ぐ。
5秒、4秒、3秒。
数えた所でおぼろは通路へ足を踏み入れる。
「蒼太さん、急いで」
手を離した時、通路の中心から一本の線がツーッと走った。
「え?」
蒼太の足元の床が真っ二つに開く。
足場を失った蒼太の身体が沈む。
咄嗟に伸ばしたおぼろの右手が蒼太の袖を掴み、間一髪で蒼太が握り返し、二人の手は繋がった。
おぼろは両足で通路を挟み、左手でへりを掴み身体を支える。
「なんで?まだ5秒経ってなかったやん。うちが休もうなんて思ったばっかりに、ごめんやで」
「ルール違反は許されないか。迂闊でした」
蒼太はポケットからアクセルラーを取り出そうと身体をよじった。
少し動かれただけでも、体が持って行かれそうになり腕が軋む。
滲み出る汗で手が滑る。
おぼろは再度腕に力を篭めた。
「頑張って!」
その時、おぼろの背後で声がした。

「その手を離しなさい。そうすれば、これはあなたに差し上げます。ほら、帰り道も作ってあげましょう」
その声を合図にしたかのように、盤の上の駒が轟然と一斉に下へ落ちた。
出口まで繋がった橋を、ロンが悠々と歩いてくる。
天空の花を燭台の明かりに翳し、水晶のようにキラキラと輝く光りを楽しみながら……
「さぁ、その手を振り解きなさい。」
おぼろは答えなかった。ただ全力で、ありったけの力で蒼太を引き上げようとした。
「これは『天空の花』と言い伝えられてきた物。天空の花は10年に一度人間の愛を凍らせる秘宝。
人の心など、脆く弱い。愛を亡くした参加者たちは、我先にと殺しあうでしょう。
今、最上蒼太の手を離し、私の前で殺し合いに乗ったと証明すれば、これはあなたにお渡しします。
決心が着かないのであれば、他の誰かに渡すとしましょう。殺し合いに乗った誰かに……ね。 」

279:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:54:46 pk3D7anR0
蒼太はおぼろを見つめた。
「そんな物、殺し合いに乗るようなヤツに渡しちゃダメですよ。おぼろさん……」
言い終えた蒼太は、笑いながら握っていた手を離した。
最初におぼろに向けた笑顔と同じ笑顔で、彼の姿がどこまでも続く闇に取り込まれていく。
「あかん!蒼太く……!」
蒼太の名を言い終えない内に、床が扉のように閉じられ、蒼太は視界から消えた。
おぼろは元に戻った通路に突っ伏し、そのまま、息を吐くことさえ躊躇っていた。
握っていた蒼太の手の感触がまだ右手に残っている。

「では改めて、ようこそバトルロワイヤルの宴に……」
ロンが楽しげにおぼろに語りかける。
「どうしたのです?そんな悲しい顔をして。 最高のアイテムを求めて来たのでしょう」
天空の花を、そっと握らせた。
「罠かどうか確かめに来た、とでも言いたいのですか?いいえ、あなたは心の何処かで勝ち残りたいと思っていた。
だから最高のアイテムを求めて来たのです。ここに来るのを決めた時、心の奥底であなたは殺し合いに乗ったのです」
おぼろはうつろな眼をしたまま、首を横に振り否定の意を示す。
「認めたく無い。それは解ります。でもそれがあなたの本心なのですよ。そして、最上蒼太は殺し合いに乗ったあなたに、天空の花を託し落ちた」
蒼太の名を聞いた瞬間、おぼろの瞳から大粒の涙がこぼれた。
「今だ本当の愛を掴もうとしないおぼろさん。あなたの選択は正しいのです。愛など不必要なのです。
この天空の花、これこそ、あなたにとって最高のアイテム。
あなたは愚かな参加者たちの見物を楽しんだ後、止めを刺しに行けばいい。
さぁ、日向おぼろさん。日付が変わるまでに天空の花を持ってのJ-10エリア『叫びの塔』へ行くのです」

ダンッ!
ロンの言葉を遮るように、おぼろは拳で床を叩き付けた。

280:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:55:18 pk3D7anR0
自分をこんな状況へ追い込んだロンに対する怒り、蒼太を助けられなかった自分への憤りを込め叩き付けた。
「いつまで、あほな事を喋ってんねん……うちは、そんな所いかへん」

(しっかりしいや)
おぼろの後輩であるハリケンジャーたちに、何度も発破を掛けてきた。
その言葉を、今は自分の胸に刻む。
そして震える足を腕で抑え、立ち上がりロンを睨んだ。
たとえここで首輪を発動させられても、ロンに屈するのだけは嫌だった。
「首輪を外し、ここから脱出して、ロンを倒す。それが、うちらのミッション……
蒼太くんが託した最後のミッション。 うちは、うちは絶対に完了させる!」
ロンは口元に手を当て、哀れみを含んだ眼差しをおぼろに向けた。
「首輪を外す、脱出、私を倒す?クックククッ。まぁ今の所、あなたはそう思っていた方が幸せでしょうね」
「どういう、意味や?」
「時機に、わかりますよ……」
金色のもやになり、ロンは掻き消えた。

おぼろは重い足取りで扉へと向かった。
扉を押し開け、地上へ続く階段へと進む。
「蒼太くん……」
振り返り、蒼太の名を一度だけ呼んだ。
声は空しく、深淵に吸い込まれた。
惨めに泣き崩れぬうちに、おぼろは階段を駆け上がる。
必ずミッションを完了させると心に硬く誓いながら……


281:名無しより愛をこめて
08/07/09 21:55:20 7N/BVBkL0
   

282:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:55:56 pk3D7anR0




「まったく、ほんまに冗談や無いでぇ!」
「落下途中でボウケンブルーに変身したんです。後はブロウナックルの風圧で落下を防いで……」
自分でもすごい剣幕だとは思う。
蒼太が困って、必死になだめようとしてくれているのも分かるが、今は止められなかった。
てっきりもうだめだと思っていたおぼろは、ひょっこり顔を出した蒼太に顎が外れるほど驚いた。
何事も無かったように、バリサンダーを走らせる蒼太の背で無事を喜び。
ほっとした後は、沸々と怒りが込み上げて来て、街の手前でバリサンダーを止めさせた。
そして今、二人は事の顛末を話しているのだ。
一頻り捲し立て、少しすっきりした所で、蒼太がバツ悪そうに切り返す。
「自分から接触して殺すつもりなら、最初からこんな殺し合いを仕組む必要はない。僕が手を離せば、あの場でおぼろさんに何かされる事は無いと確信していましたし…
ああでもしないと、ね。天空の花を殺し合いに乗るような奴には渡せないでしょう?」
「それは、そうやったかもしれんけどな」
「落ちる前に笑ってたでしょう。一応合図のつもりだったんですよ」
「合図やったら、もっと解りやすくやってもらわな」
「すみません。おぼろさん」
「もし、変身するのが間に合えへんかったらどうするつもりやったん?」
「その事で、ちょっと……」

蒼太は崖を上がる最中、後一歩の所で強制的に変身前の姿に戻ったと言う。
そして、おぼろを助けたフック型のショットアンカーを使い、何とか上って来のだと。
「変身できる時間は、およそ10分。それが解っただけでも、収穫でしたよ」
「この首輪、そんな力も制限してるってわけやな。どこまでやらしい奴やねん!」
おぼろは怒り心頭だった。
「首輪を外す、脱出、私を倒す?クックククッ。まぁ今の所、あなたはそう思っていた方が幸せでしょうね。やて。うちがこんな首輪、絶対外したる!」
「おぼろさんに、そんな事を?」
蒼太の表情が微かに翳った。
「蒼太くん?」

283:ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 21:56:58 pk3D7anR0
「いえ、なんでもありません」
そう言って、蒼太が見せたのは、悟られまいと作ったような笑顔だった。
「うちが出て行った後、なんかあったん?」
それ以上、追求して欲しくないのか、蒼太は聞こえていないようにおぼろがずっと握っていたままの天空の花に視線を移す。
「でも、信じられませんね。そんな綺麗な物が、愛を凍らせてしまうなんて」
おぼろは、改めて天空の花を良く見た。
儚い硝子細工のようで無造作にデイバックに突っ込む事が出来ず、つい包むように持っていた。
頭上に掲げクルクルと回す。月の光を反射して花びら一枚一枚が青く煌いた。
「J-10エリアの『叫びの塔』へ持って行けやて。愛を凍らせる、か。信じられないちゅうより信じたくないな」
フーッと長いため息を落とした。
その後ろで。
「信じられねぇ……信じたくねぇよな」
何者かの声が聞こえ、おぼろは蒼太と共にハッとそちらを振り返った。
「よぉ、ボウケンジャー」
蒼太は、何者だという不審に眉をひそめ身構えた。
「そんなに、苦労して手に入れた天空の花を、俺に奪われちまうなんてよ!」
ドン!地響きと共に振動波が地を走る。
「グッ!」
「うわっ!」
二人左右に弾かれた。
「くっそ!痛ってぇな~」
痛いのはこっちや!と思いながら、おぼろは衝撃で飛ばされてしまった天空の花に手を伸ばす。
その男は蒼太の後ろにあるバリサンダーを見やりチッと舌打ちした。
蒼太はスコープショットを構える。
「悪いな。今は相手にしてやれねえんだよ!愛を凍らせた後で、ゆっくり遊んでやるぜ」

284:名無しより愛をこめて
08/07/09 21:57:38 7N/BVBkL0
   

285:名無しより愛をこめて
08/07/09 21:59:31 7N/BVBkL0
      

286: ◆MGy4jd.pxY
08/07/09 22:18:13 NPqd0F2vO
さるさん規制のため、残りはしたらばに投下致しました。

287:ミッションスタート!最高のアイテムを追え!代理投下
08/07/09 22:23:16 7N/BVBkL0
ドン!もう一度クエイクハンマーを地に叩きつけた。
衝撃に二人は再度弾かれる。
天空の花を手に、その男は都市の方向へ駆けて行った。

どこかへ身を隠したか、遠くへ行ってしまったか?
二人は男の姿を見失ってしまった。
「あいつ、クエイクハンマー使った後、痛いって言っとったな」
「クエイクハンマー?」
「そう、あれは吼太の武器や。その後、痛いって言ってたやろ?」
その言葉に頷いて、悔しげに男の消えた方を見ながら蒼太は言った。
「えぇ、今は相手にしてやれないとも……。それに、僕がボウケンジャーと知っていましたね」
蒼太は名簿を取り出す。広間で自分の名を呼ばれるまでに、参加者ほとんどの名前と顔を記憶したらしい。
「最初の方で、名前を呼ばれていた。これだ!」
指した名は、クエスター・ガイ。蒼太には心当たりがないようだった。
「蒼太くんのことを知ってるヤツ。あれが変身した姿なんか、あのままの姿かどうかは、わからんけど……」
おぼろは考えを整理するため、一呼吸置いた。
「見るからに粗野で好戦的なヤツ。なのに、戦わず逃げた。おそらく、ごっつい傷を負うてるんやわ」
次の言葉を蒼太が繋ぐ。
「戦える状態であれば、天空の花を奪うついでに、僕らを倒してバリサンダーを奪うはずだ」
「そうや。そんな手負いの状態なら、J-10エリアまで行くのもしんどいんちゃう?だから焦らんでも良いと思う。先回りして、二人であいつから天空の花を取り戻そ!」
「……おぼろさん?」
俄然やる気を出したおぼろに、蒼太が戸惑う。
おぼろはキリッと、ひどく厳しい顔を作った。
「そう、うちも蒼太くんをサポートする。この、一鍬ちゃんのイカヅチ丸でな。愛を凍らせるやなんて絶対に阻止したる。さぁ、ミッションスタートや!」
「了解!天空の花を回収する。ですね」
「ほな、蒼太くん行くでぇ~」

その時から、おぼろの中でイカヅチ丸が『身を守るための武装』ではなく『愛を守るための武装』となった。


288:ミッションスタート!最高のアイテムを追え!代理投下
08/07/09 22:23:59 7N/BVBkL0

【日向おぼろ@忍風戦隊ハリケンジャー】
[時間軸]:巻之三十、後
[現在地]:C-4森 1日目 黎明
[状態]:全身に軽い火傷、打撲。応急処置済み
[装備]:イカヅチ丸@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:蒼太と共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第二行動方針:首輪を何とかする
※首輪の制限に気が付きました。


【最上蒼太@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.3、後
[現在地]:C-4森 1日目 黎明
[状態]:良好。1時間半ボウケンブルーに変身できません。
[装備]:アクセルラー@轟轟戦隊ボウケンジャー、スコープショット@轟轟戦隊ボウケンジャー、バリサンダー@忍風戦隊ハリケンジャー
[道具]:ヒュプノピアス@未来戦隊タイムレンジャー、スタッグブレイカー@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式
[思考]
基本行動方針:ミッションの達成(首輪解除・脱出・ロンの打倒)
第一行動方針:おぼろと共にJ-10エリア『叫びの塔』へ(ガイは手負いだと思っています)
第二行動方針:おぼろを守る
※首輪の制限に気が付きました。



289:ミッションスタート!最高のアイテムを追え!代理投下
08/07/09 22:24:20 7N/BVBkL0


【クエスター ガイ@轟轟戦隊ボウケンジャー】
[時間軸]:Task.23以降
[現在地]:C-4森 1日目 黎明
[状態]:全身に裂傷。かなりの重症のため時間制限に関わらず戦闘不能。要回復アイテム。
    ただし、精神的には高揚感あり。戦いを心底楽しんでいます。
[装備]:グレイブラスター@轟轟戦隊ボウケンジャー、釵一本@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[道具]:クエイクハンマー@忍風戦隊ハリケンジャー、支給品一式(麗のものは全て搾取済み) 天空の花
[思考]
基本方針:ロンやボウケンジャーを倒すついでにゲームに乗る
第一行動方針:天空の花を持って、J-10エリア『叫びの塔』へ
第二行動方針:気に入らない奴を殺す。一人殺しました。
参考:1本目のペットボトルを半分消費しました。




290:ミッションスタート!最高のアイテムを追え!代理投下
08/07/09 22:24:52 7N/BVBkL0



171 :ミッションスタート!最高のアイテムを追え! ◆MGy4jd.pxY:2008/07/09(水) 22:01:20
以上です。誤字脱字、指摘、感想等よろしくお願いします。



代理投下終了

291:名無しより愛をこめて
08/07/09 22:30:29 7N/BVBkL0
読了。
投下乙!
ロンの干渉を撥ね退けるおぼろさんと蒼太。
決意も新たにですが、クエスターガイがそうはさせない。
いいところでの引き、今後が楽しみです。GJ!

292:名無しより愛をこめて
08/07/10 01:40:02 sS0mL83A0
蒼太のアクセルラーは恐らくネオパラレルエンジンの換装が済んでないから
ガイと戦うのは辛そうですね。いくら、相手が手負いだとはいえ。
しかも時間軸的に彼はクエスターを知らない。

293:名無しより愛をこめて
08/07/10 11:38:19 lAQHBLJrO
投下&代理投下GJです。
手負いの身で、おぼろさん達から天空の花を奪うとは、流石クエスター。
考えがあったとはいえ、自ら蒼太が手を離す時や、おぼろさんがロンに誘惑された時は、ハラハラしました。
おぼろさんの決意をせせら笑うロンの言葉に、これからのロワの行方が気にかかりました。
相変わらず心理描写がお見事です。GJ!

294:名無しより愛をこめて
08/07/12 21:04:37 mrgJGRVGO
まとめ更新乙です。いつもありがとうごさいます。

295:名無しより愛をこめて
08/07/16 08:16:10 u5Wb0E3sO
保守です

296:名無しより愛をこめて
08/07/17 01:59:26 T/g6x+l20
もう終わりかね

297: ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 02:44:51 l276KCGdO
保守がてら、進行報告を。
9割書き上がりました。
明日の夜には、投下できると思います。

298:名無しより愛をこめて
08/07/17 09:34:20 4a/hTks/0
>>297
了解。楽しみにしています

299:名無しより愛をこめて
08/07/17 10:38:39 25K9MbGN0
>>297
楽しみにしております。

300: ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 17:22:02 Bfm2oN6d0
すみません。もう、午前まわっていましたね。
本日の夜に投下いたします。
まぎらわしくて申し訳ありません。

301: ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 23:06:38 ZhSaeQJO0
ただ今から投下いたします

302: ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 23:07:15 ZhSaeQJO0
「なあ、疲れてニャイのか?黄色いの」
「平気だよ。猫さん疲れた?」
「黄色いのが持って歩いてるのに、俺様が疲れるわけないニャ」
なんとか合流を果たした竜也達一行は、一路南へと向かっていた。
「もう少し歩けば都市部に入るから、屋根のある所を探して休もうか」
「菜月は大丈夫だよ、それより竜也さんとシグナルマンさんは休まなくて大丈夫?」
明るく振舞ってはいても時折暗い表情を覗かせる菜月を気遣った竜也だったが、逆に彼女に気遣われてしまった。
取り付く島のなかったメレにさんざん振り回された竜也は苦笑しつつ、気遣われたもう一人、シグナルマンの様子を窺った。
「本官は、取り返しのつかない事を……」
初めて顔をあわせた時からずっと、シグナルマンは自省を繰り返していた。
「えーい、いつまで落ち込んでるニャ、いい加減立ち直るニャ」
「いっぱい謝ったらきっとメレさんも許してくれるよ。わざとじゃないんだもん」
(いや、それはどうかな?)
竜也は内心で呟く。あの様子では、まず聞く耳は持ってないだろう。
下手をすれば、出会い頭にシグナルマンに殴りかかってきそうだ。
「いーや、本官の注意が足りなかったんだ。もっと注意深く生きている可能性を考えるべきだった」
シグナルマンの気持ちは分からなくもない。脈も鼓動も無かった時点で、手遅れだったと考えるのが普通だ。
それでも息を吹き返したのは、一時的に仮死状態にでも陥っていたのか、それとも特殊な種族――例えばシオンのような異星人――だったのか。
だが、その前に……
「本官はどうやって彼女に謝ればーーー!!」
「「「しーっっっ!!」」」
……ところかまわず叫びだすのはやめて欲しいところだった。

303:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:07:38 4a/hTks/0
 

304:一時の休息 ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 23:08:03 ZhSaeQJO0


都市部に入って最初に目に付いたのは、ずいぶんとバトルロワイアルにはそぐわない建物だった。
立てかけられた看板には、『24時間営業』『天然湯掛け流し』のうたい文句が並ぶ。
「「「健康ランド?」」」
「また、のん気な物が……まあいいや。休憩するにはちょうど良いし。お邪魔します、と」
閉じていた自動ドアをこじ開けると中に滑り込む。
「真っ暗だね」
「とりあえず俺とシグナルマンで中を見て回ってくるから、菜月ちゃん、ここで待っててくれる?」
「うん、分かった」
こくりと頷くと一段高くなった場所に腰掛け、じっと外を見つめる。
その後ろ姿はひどく頼りなげに見えた。
「スモーキー、頼んだな」
「おう、俺様に任せとけニャ」

305:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:08:34 4a/hTks/0
   

306:一時の休息 ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 23:08:39 ZhSaeQJO0


ちょうどロビーを境目に左右に別れ、竜也は建物の中を見て回った。
事務所らしき場所にあったブレーカーを下ろすと、虫の羽音のようなとともに明かりが灯る。
どうやら電気は通っているようだ。少し迷うが、照明関係のブレーカーは再度あげておく。
窓から差し込む街灯に光と非常灯で手元は見える。周囲のビルに明かりらしい明かりが見えない以上、ここだけ煌々としていては不自然だ。
最後に裏手にあった従業員用と思わしきドアの施錠を確認すると、いくつか見つけ出した非常用の懐中電灯を手にロビーへ戻る。
折り良くシグナルマンも戻ってきたところだった。目で尋ねると首を振る。
「菜月ちゃん、お待たせ。誰もいないみたいだしここで休憩しようか」
ずらりと並んだ下駄箱の鍵の一つをいじくっていた菜月は、ぱっと顔を上げて笑みを見せる。
「お帰りなさい。じゃあ菜月このままスモーキーと見張ってるから、二人ともお風呂行ってきていいよ」
自分達を気遣ったのか、強気に振舞う菜月に竜也は笑いかけると首を振る。
「今度は、俺が見張るよ。後から入るから」
「でも……」
「いいから、ね。菜月ちゃんより先に入ったりしたら、ユウリに怒られそうだ」
おどけたように手を顔の前で合わせて促す。
「……うん。ありがとう竜也さん。じゃあ猫さん一緒に入ろう」
「おう!!」「ちょっと待った!!」
威勢よく応じたスモーキーだったが、シグナルマンに止められ菜月の手を離れた。
「君は、オスじゃないのか?」
スモーキーは身をすくませると、おずおずとシグナルマンを見上げた。
「本官の職務はチーキュの交通安全を守ることだが、痴漢を働く不埒物を逮捕するのも職務のうちと考えている」
「き、黄色いの、俺様、急に見張りがしたくなったから一人で入ってこいニャ」
「えー」
二人と一匹のやりとりを見て、竜也は肩をすくめた。

307:一時の休息 ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 23:09:10 ZhSaeQJO0


浴場の扉を開けると、たちこめた湯煙で視界が霞む。
思わず湯船に駆け込みたくなるが、このままでは湯を汚す事になってしまう。
まずは、蛇口をひねると湯で手桶を満たす。
肩口からゆっくりとかけていくと熱い湯が全身を伝い、薄汚れてはっきりしなくなっていた身体を元の青い色に戻していく。
すでに湯船に肩まで浸かっていた竜也は、その光景を見ながら呟いた。
「錆びないのかな……」



暖かい湯に身体をすべり込ませると、張り詰めていた気持ちが緩んでいく。
自分以外誰もいない湯船の中はひどく広く感じて、菜月は膝を抱え込んだ。
一人になるのはまだ怖い。
天井から水滴の落ちる音にびくりと肩を震わせる。
(早くみんなに会いたいな……)
さくらさんに。チーフに。蒼太さんに。――真墨に。
早く会って無事を確かめたい。そうすればきっと、この震えも収まる。恐ろしさも消えてなくなってくれる。
目元を熱く感じて、菜月は掌に湯を掬うとぱしゃりと顔にかけた。
もう、上がろう。湯船の縁に手を掛けバスタオルを巻き付けると、垂らしたままだった髪からぱたぱたと雫が落ちた。
脱衣所に足を向けようとしたその時、微かに物の触れ合う音がした。
「……露天風呂、の方?」
足音を忍ばせると、そっと露天風呂の扉に手をかけた。

308:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:09:55 4a/hTks/0
   

309:一時の休息 ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 23:10:09 ZhSaeQJO0


一般に、女性よりも男性の方が風呂から上がる時間は早いという。
竜也とシグナルマンも御多分に洩れず、菜月が湯から上がった時には既に身支度を整えていた。
「ああ、いいお湯だった。これであれがあれば最高なんだが」
「あれ?」
「コーヒー牛乳」
「探せばあるんじゃないかな」
電気の切れている状態で、どれほど放置されていたか分からない。飲めるかどうかは微妙なところだが。
「本官、今、持ち合わせがないからなー」
勝手に入浴している以上、今更ではあるのだが、妙なところで生真面目らしい。

『きゃーーーーーー!!』
『なんじゃ、お主は!!』

突如、菜月の悲鳴と男の声が響き渡る。
二人は一瞬顔を見合わせると、女湯の脱衣所へ駆け込む。
シグナルマンが扉の前で僅かに逡巡するが、竜也はそれにかまわず浴場に飛び込んだ。
勢いのままたたらを踏んだ竜也と、続けて飛び込んだシグナルマンが目にしたのは、
「これ!娘、手桶を投げつけるでない!ワシは何もせん。落ち着けーーー!!」
「菜月ちゃん。ストップ、ストップ!!」
菜月に盛大に手桶をぶつけられる異星人と思わしき片腕の男の姿だった。

310:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:10:26 iA6t3PaAO



311:一時の休息 ◆Z5wk4/jklI
08/07/17 23:11:23 ZhSaeQJO0


「やれやれ、酷い目におうたわい」
休憩室らしい広間の畳に座り込むと、ブクラテスと名乗った男は溜息をついた。
怒っているのか、警戒しているのか、怯えているのか、スモーキーを抱きしめたまま、ブクラテスから大きく距離をとった位置に菜月が座り込む。
二人の間に割り込む形で竜也が座った。
「えっと、何から聞けばいいのか。ドアにこじ開けた跡は無かったけどどうやって中に?」
「裏口が開いておったから、普通に入っただけじゃが?」
「でも、鍵が。あ、入った後で閉めたのか
そうじゃと頷く。傷に障ったのか顔を顰めた。
「その腕は?」
「飛ばされてそうそう殺し合いにのった奴に遭遇しての。命からがら逃げ出して病院を探しておったんじゃが、なかなか見つからんのであそこで痛みを癒しておったんじゃ」
「だからってなんで女湯に。せめて、シグナルマンが入った時に出てきてくれてれば」
こんな騒ぎにならなかったのに。言外に非難を込めると、ブクラテスが首を捻った。
「誰も来んかったぞ」
そんな、まさか。と先程から自販機をいじっているシグナルマンに、目を向ける。
「すまない。女湯を覗くのはいけないと思って、浴場には入らなかった」
――全員に盛大に突っ込まれたのは言うまでもない。

312:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:12:29 4a/hTks/0
    

313:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:12:54 iA6t3PaAO



314:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:14:09 iA6t3PaAO



315:一時の休息 代理
08/07/17 23:21:58 4a/hTks/0


「コーラで良かったかな?」
「お、どうも。持ち合わせないいんじゃ?」
「非常時だから勘弁してもらった……少し反省した……」
受け取るとひやりとした感触が手に伝わる。少なくとも数日放置されていたという事はなさそうだ。
プルタブを開け、胃に流し込む。口の中で炭酸が弾けた。
「すまない事をしてしまった」
スモーキーを胸に抱えこんだまま眠る菜月に目をやると、シグナルマンは深い溜息を吐いた。
「まあ、菜月ちゃんに何も無くて良かったよ。俺もうっかりしてた」
もし、ブクラテスに彼女に危害を加える気があったらと思うと、ぞっとしなかったが。
「さて、これからどうする?」
「本官はペガサスの一般市民を保護しなければ。できればメレさんにも謝りたいんだが」
「俺は仲間を探したい。それに菜月ちゃんの仲間も探してあげなきゃな」
「だが、怪我人を放ってはおけない。あの傷はきちんと手当しなくては」
頷くと竜也は地図を広げ、中央を指し示した。
「とりあえず、朝になったら街の中心部に行こう。病院なんかはだいたい中心街にあるはずだから。それに人も集まりやすい」
「了解した」

316:一時の休息 代理
08/07/17 23:23:18 4a/hTks/0


どうやら、上手くいったようじゃな。
寝たふりをしながら二人の会話に聞き耳を立てていたブクラテスは、内心でひとりごちた。
彼らに話した事にほとんど嘘はない。だが、伏せておいた事もある。
実のところ、ブクラテスは竜也達が建物の中に足を踏み込んだ時から、首輪探知機によってその存在に気付いていた。
それでも逃げ出さずデイバックの底に探知機を隠してあそこに潜んでいたのは、センの代わりになる者が必要だったから。
戦う力を持たず、怪我を負った自分がいつまでも単独行動をしていては、遠からず殺し合いに乗った者の餌食になる。
センと同じ着衣の者を探したが、そんなに簡単に見つかるわけもなかった。
それ故にとどまった。
そして、あの場で菜月の姿を垣間見たブクラテスは賭けにでた。
ああまで怯えていた娘がのん気にも風呂に入ろうなどと考えるとは思えない。
大方、先程までの自分のようにお人よしの人間を見つけて、守られているのだろう。
あの娘は足手まといにしかならないだろうが、その連れは利用できるかも知れない。
そう考えるとブクラテスは菜月の注意をひくために、そっと物音を立てた。



そして、今に至る。
思ったとおり、娘の連れはお人よしそうな人間だった。
あまり抵抗も無く自分を受け入れ、あまつ、病院へ連れていこうとさえしている。
とりあえずは、信用しても良さそうだった。
だが、首輪探知機の事、そして置き去りにしてしまったセンの事は伏せておく事にした。
もう、先程のような危うい場に首を突っ込みたくはなかった。
センの事は考えると気がとがめたが、これ以上、足手まといは増やせない。
――恨むでないぞ、セン――
心の中で小さく詫びると、ブクラテスは身体を休めるために睡魔に身を委ねた。


317:一時の休息 代理
08/07/17 23:23:40 4a/hTks/0
【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:D-5 都市 1日目 早朝
[状態]:健康。湯上り。
[装備]:Vコマンダー
[道具]:メレの支給品(中身は不明)
[思考]
基本行動方針:仲間を探す
第一行動方針:ブクラテスを病院へ連れて行く
第二行動方針:仲間を探し、ユウリとアヤセの安否を確認する
第三行動方針:菜月の仲間と理央を探す
備考:クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。他の参加者のバックの中か、どこかに隠されているかは不明です。

【名前】間宮菜月@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task14後
[現在地]:D-5 都市 1日目 早朝
[状態]:健康。まだ僅かに怯えあり。湯上り。就寝中。
[装備]:アクセルラー、スコープショット、マジランプ+スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー
[道具]:未確認、竜也のペットボトル1本
[思考]
基本行動方針:仲間たちを探す
第一行動方針:竜也の仲間を探す

【名前】スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:ボウケンジャーVSスーパー戦隊後
[現在地]:D-5 都市 1日目 早朝
[状態]:健康。マジランプの中。就寝中。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本行動方針:ヒカルと麗を探す
第一行動方針:菜月を守る

318:一時の休息 代理
08/07/17 23:24:28 4a/hTks/0

【シグナルマン・ポリス・コバーン@激走戦隊カーレンジャー】
[時間軸]:第36話以降
[現在地]:D-5 都市 1日目 早朝
[状態]:健康。少し凹み気味。湯上り。
[装備]:シグナイザー
[道具]:けむり玉(1個使用済み)数は不明、その他は不明。メレの釵。
[思考]
基本行動方針:ペガサスの一般市民を保護。戦っている者がいれば、出来る限り止める。
第一行動方針:ブクラテスを病院へ連れて行く
第二行動方針:乙女(メレ)に謝りたい。
第三行動方針:黒い襲撃者(ガイ)を逮捕する。

【名前】ブクラテス@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第12章(サンバッシュ敗北)後
[現在地]:D-5 都市 1日目 早朝
[状態]:右腕切断。簡単な応急処置済み。湯上り。
[装備]:めがね
[道具]:首輪探知機。毒薬。切断された右腕。基本支給品とディパック
[思考]
第一行動方針:竜也とシグナルマンは利用できそうだ。
第二行動方針:首輪探知機とセンの伏せて置く。
備考
・センと同じ着衣の者は利用できると考えています。




319:一時の休息 代理
08/07/17 23:24:56 4a/hTks/0


176 : ◆Z5wk4/jklI:2008/07/17(木) 23:20:32
以上です。
誤字脱字、矛盾点の指摘、ご感想などよろしくお願いいたします。


----------------------------------------------------

代理投下終了します。

320:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:29:39 4a/hTks/0
読了。

温泉での遭遇に和みましたw
ブクラテス、ある意味自業自得。
GJ!

321:名無しより愛をこめて
08/07/17 23:33:56 iA6t3PaAO
投下、代理投下乙でした。
なかなか順調だな。ブクラテス。最初に菜月と出会ったのが良い具合に転びましたね。しかし癒しチームだなぁ。シグナルマン、竜也、スモーキーのやり取りが微笑ましい!
良繋ぎでしたGJ!

322:名無しより愛をこめて
08/07/18 00:25:23 VAZ/lKFU0
GJ!
終始和やかなムードの中に潜むブクラテスの知略が光ります。
癒しとこれからに対する危機感がいいバランスでした。
しかし、浴場を用意するとは一体ロンは何を考えているのか。

323: ◆Z5wk4/jklI
08/07/20 17:04:38 Xi9c+LZmO
支援&代理投下&ご感想ありがとうございました。
したらば避難所に、挿し絵スレを立てられたらと思っているのですが、
皆さんのご意見をお伺いできますでしょうか?

324:悲願は我が胸に有り ◆MGy4jd.pxY
08/07/22 21:27:49 8ldzuWH30
挿絵スレ楽しみにしております。
では投下させて頂きます。


325:悲願は我が胸に有り ◆MGy4jd.pxY
08/07/22 21:29:32 8ldzuWH30
細身のギラサメに比べ幅広の刀身、日本刀よりも柳葉刀に酷似した一振り。
黒く磨き上げられた柄から刀へ渡り、蒼く彩る鮮やかな鮫の意匠を施した剣。
左右対成す双剣を合わせ一本の剛剣とした『ゲキセイバー』それが、ブドーの支給品の一つであった。

おおよそ扱いの難しい性質を主催者が考慮したのであろうか。
ゲキセイバーに添えられたように入っていたのが『逞しき匠の技を托す薬』
詳細によれば、一度この薬を手に掛けると、如何様に未熟な者でも優れた技術が身に付く薬……との事。
二刀から一刀流、変幻自在の攻撃を鍛錬もせず操れるとあらば、配られた支給品の中でも上等の部類だろう。
だが、ブドーにとって妖刀ギラサメは己が半身ともいえる程の代物。それ以外の刀を、振るう気は毛頭ない。
己の腕を極限まで磨く為、妖刀ギラサメ一振りを手に、戦いに身を投じる所存。

もし、これから出合う者の中に、このゲキセイバーの使い手がいるとしたなら、その者に渡し、悔いなき勝負を挑むつもりであった。


  *  *  *


セン、ブラクテスと別れ一時間余り。
ブドーの歩は進み、鬱蒼とした巨木群に囲まれるC―6エリアへ。
一向に姿を表さぬ他の参加者に業を煮やしたブドーは、木々の梢から差し込む光を忌々しげに踏み付けるように歩く。

「誰もおらぬのか!こうも参加者と出会わぬのでは……」

苛立ち紛れに、ギラサメを振るった。
が……。重い。愛刀が、ギラサメを持つ腕が鉛のように重い。
何故だ?しばし、眉をひそめ逡巡した後、はっと思い辺り首輪に触れた。
ブドーはブクラテスのような戦闘に向かぬ者が呼ばれたかが、先刻から頭の片隅で気にはなっていた。

326:悲願は我が胸に有り ◆MGy4jd.pxY
08/07/22 21:30:20 8ldzuWH30
広間にはブクラテス同然、どう贔屓目に見ても戦いようのない女、女ならまだしも子供までいた。
ブクラテスとて、たまたまセンに助けられたが、あのままセンが来なければ『殺し合い』と言うに及ばず、ただ無惨に殺されるのみ。
力のある者と力なき者。両者が行う、一方的な殺戮では無い殺し合い。
圧倒的な戦闘能力の違いを埋めるからくりに、ようやく合点がいった。
首輪により力を封じ、弱者が強者を斬り屠る。
合点はいったが、釈然としない思いが首を擡る。

「おのれ……。ギラサメを思うように扱えぬとは。だが、これも再び蘇った拙者に課せられた試練!」

幸か不幸か、辺りに参加者は見受けられない。
ならば、今はただ、鍛え上げるのみ。
ブドーは己を奮い立たせ、ギラサメを構えた。

その時、不意にブドー心の内の弱さに付け込むのかのように、胸の奥からメドウメドウの言葉が沸上がって来た。

―― あんたは見限られたのよ。バルバンにも、運にも ――

一瞬、ブドーの焦点が揺れた。
とはいえ、ブドーが狼狽えたのは、その一瞬だけであった。

(戯言であったな。メドウメドウ。拙者は運に見限られてなどおらぬ。
拙者は、死して尚、もう一度この世に舞い戻った。
お主は違う。運に見限られていたのは、お主の方でござる!)

327:悲願は我が胸に有り ◆MGy4jd.pxY
08/07/22 21:30:57 8ldzuWH30
虚空を見据えギラサメを握り直し構えた。
ブドーは内心のメドウメドウへ向け一喝した。

「もはや、ダイタニクスの復活は、バルバンの為ではない!今は亡き、我らブドー軍団が悲願!!」
拙者はその為に再び生を受けたのだと、悲願を達成こそ魔人衆へのせめてもの手向けだと。
その思いを強く身体に刻み付ける為、虚空へ向けギラサメを振った。
真一文字に煌めく閃光。
心の内からメドウメドウが霧散し、ブドーは己の弱さに打ち勝ったと感じた。
そして、次に眼前に浮かぶは、ギンガレッドの姿。
我が身を貫いた閃光と赤い牙。その幻影を一刀両断に切捨てる。
最後に新たなる敵、センを思い浮かべる。
昼行灯のような風体。目に物見せてくれると横一閃にギラサメを払う。

「ゼヤァーッ!」

掛け声と共に、ビュッと風を切る鈍い音を鳴らし、ギラサメは紺碧の鞘へ納められた。
ブドーの背後にて、ドウと若木が倒れた。
一拍遅れて、舞い落ちる緑葉が四散する。

「この若木の如く、参加者全員、必ずや倒して見せる!」

ズシリと腕に重いギラサメが、ブドーの気概に答えるかのように、月光を刀身に受け煌めいた。

―― 御大将!せめて……。最後のご奉公を! ――

魔人衆達の声が、幾度も蘇っては耳朶を打った。

328:悲願は我が胸に有り ◆MGy4jd.pxY
08/07/22 21:32:00 8ldzuWH30
眼の奥に、一人また一人、魔人衆が戦いに散った日。最後の光景が、鮮やかに蘇っていた。
ブドーはギラサメ掲げ、空を仰いだ。

「ブドー軍団の者たちよ。務め、ご苦労であった。お前達は静かに眠っておれ。
ダイタニクス復活は、必ずや拙者が成し遂げてくれようぞ!
我らが悲願のため、拙者、後はもう存分に戦うのみ!」

声高らかに、ブドーは空へ宣誓した。
ようやく傾きかけた月が、ブドーの顔を蒼白く照らす。
ダイタニクス復活、ブドー軍団の悲願を達成する。
何物にも代え難き、決意を浮かべたその顔を。



329:悲願は我が胸に有り ◆MGy4jd.pxY
08/07/22 21:33:38 8ldzuWH30
【名前】剣将ブドー@星獣戦隊ギンガマン
[時間軸]:第24章(ギンガマンに敗れた)後
[現在地]:C-6森林 1日目 黎明
[状態]:健康。能力発揮済。30分程度戦闘不能。
[装備]:妖刀ギラサメ、ゲキセイバー @獣拳戦隊ゲキレンジャー
[道具]:筆と紙、逞しき匠の技を托す薬@魔法戦隊マジレンジャー
[思考]
基本方針:戦う。
第一行動方針:優勝を目指す。
第二行動方針:仙一と再会時には必ず殺す。
第三行動方針:ゲキセイバーの持ち主がいれば渡し、戦う。


330:名無しより愛をこめて
08/07/22 21:34:14 lL19Q6fg0
 

331:悲願は我が胸に有り ◆MGy4jd.pxY
08/07/22 21:36:43 8ldzuWH30
※首輪の制限に気が付きました。



短文です。以上です。指摘、矛盾、感想等よろしくお願いいたします。

332:名無しより愛をこめて
08/07/22 21:43:27 lL19Q6fg0
投下乙です。
剣将ブドーの決意がこの上なくかっこよかったです。
覚悟が決まったマーダーの彼の行く末が楽しみです。GJ!

333:名無しより愛をこめて
08/07/22 22:38:04 BeHf9gLd0
GJ!
制限に気付き、今までの戦いの日々を思い出すブドー。
刀を振りながら迷いを文字通り振り切り、恐るべきマーダーに変貌する様子が鬼気迫り、これからのブドーに期待が持てました。

334:名無しより愛をこめて
08/07/22 22:58:42 Hw60wLd/0
マーダー役を託されたガイ、グレイ、ブドーそれぞれにドラマがあるのがいいですね。
まぁ、意外なお方が殺る気マンマンだったりもしますが…

335: ◆Z5wk4/jklI
08/07/23 08:26:22 76GcpdDCO
投下乙です。
魔人衆の事を思い、心の中のメドウメドウ達と対峙するブドーがかっこ良かったです。
GJ!


挿し絵、支援絵スレを立てました。
ご入り用の方はお使い下さい。

336: ◆i1BeVxv./w
08/07/25 00:22:49 xISC03ux0
ただいまより投下いたします。


337:ポジティブ ◆i1BeVxv./w
08/07/25 00:23:30 xISC03ux0
「ハァハァ、どーうやらまいたみたいだな」
 荒い息を吐きつつ、ガイは路地裏へと身を潜める。そして、ボウケンブルーから奪取したアイテムを見て、ニヤリと笑った。
「へへっ、天空の花か。いいもん手に入れたぜ」
 次なる獲物を求め、彷徨った末に聞こえた声。その声に耳を澄ませば、愛を凍らせるという素敵なプレシャスの情報。
 ガイは迷わず行動し、プレシャス―天空の花を手に入れることに成功した。
「しかし、使うためにはJ-10エリア、よりにもよってマップの一番端まで持っていかなきゃいけないなんてよ。
 一応、傷は洗ったが、乗り物か、回復アイテムか、どーうにかして手に入れないと無理があるぜ。
 畜生、あの時バイクまで手に入れることが出来てたら」
 ガイの身体に刻まれた傷が疼く。
 青い女に全身に刻まれた傷。人間より強力な生命力を持つアシュでなければ、既に事切れていてもおかしくないほどの傷だ。
 ボウケンブルーを強襲したとき、ガイは天空の花だけではなく、ボウケンブルーの全て、その命までも奪うつもりだった。
 だが、傷の痛みはガイの高揚した精神を強制的に落ち着かせ、撤退という選択肢をとるに至った。
「まっ、考えてみりゃあ、あの場で下手に戦ったら、返り討ちにあってたかも知れないしな。ツキはまだ落ちちゃいねーぜ」
 ガイの辞書に凹むという文字はない。ポジティブシンキング。ガイの特長のひとつだ。



 痛む身体を引き摺りつつ、常人の徒歩よりは少し早い速度でガイは東へと進んでいた。
 犬も歩けばなんとやら。傷を癒すために休むより、ガイは事態が動くことを期待し、移動することを選んだ。
 風景が変わっていく内に、ガイは自分の選択が間違っていないと確信する。
 そこは都市エリアと記載されるだけあって、無人ではあるが商店の類が散在していた。
 わざわざ支給品を用意している以上、回収されている可能性もあるが、探せば乗り物や傷薬もあるかも知れない。
「よっしゃ、ちょいと調べてみるか」
 ガイはいくつかある商店の中から、どことなく古びた感じのする建物を選び、その戸を開けた。

338:ポジティブ ◆i1BeVxv./w
08/07/25 00:24:08 xISC03ux0
「邪魔するぜー」
「ふっ!」
 敷居を跨いだ瞬間、ガイの顔面に何者かの足が現れる。
 ガイがそれを自分に放たれた蹴りだと知覚すると同時に、ガイの顔は中身のないアルミ缶程にへこんだ。
 悲鳴を上げる間もなく、その勢いでガイの身体は後方へと吹き飛ばされていく。
 しかし、ガイも然る者、大地に倒れはしたものの、瞬時に体制を建て直し、建物内にいるであろう敵に向かって構えをとった。
 脳が揺らされ、軽い脳震盪を起こしてはいるが、気にしている場合ではない。
「奇遇ね」
「誰だ!」
「あら、たった数時間前の出来事も忘れたの?それとも知能は未開の原始人レベルなのかしら」
 挑発的な言葉を発しながら、ゆっくりとその姿を現す敵。ガイはその姿に見覚えがあった。
「お前!?あのときの女ぁ~」
 それはガイがこのゲームを始まって、最初に出会った女。幻獣フェニックス拳のメレだった。
「まさか、また会えるとはね。しかも……」
 メレはガイの傷だらけの身体を見遣り、不敵な笑みを浮かべた。
「随分といい格好になったじゃない」
「うっせぇ!貴様程度に遅れをとるガイ様じゃねーんだよ」
 口では威勢のいいことを言ったものの、以前に戦った時の感触ではメレとの腕はほぼ互角。
 見れば左肩に刺し傷の痕こそあるものの、それ以外は最初に出会った時と遜色のない格好をしている。
(こいつ、あの後からまったく戦ってねぇみたいだな)
 武器は豊富にあるが、今の状況ではどう考えてもガイの方が不利。
(こりゃあ適当に相手して逃げるのが一番だな)
 ガイは腰に携えていた釵を手に取り、そのままメレに向かって放り投げた。
 ジャムの可能性があるグレイブラスターを除けば、ガイにとっては唯一の飛び道具。
「喰らいやがれ!」
 ガイとしてはこれに当たるなり、避けるなりした隙を狙って、逃亡を計るつもりだった。
「あら、返してくれるの?」
「ゲッ!?」
 しかし、ガイの予想は裏切られる。メレは飛ぶ釵の柄を握ると、それを反転させ、そのままガイに斬りかかっていった。
(やっべ!思ったより、技のキレが落ちてやがる)

339:ポジティブ ◆i1BeVxv./w
08/07/25 00:24:41 xISC03ux0
 動揺するガイ。そのせいか、回避行動をとるのが数秒遅れる。だが、真剣勝負の場においてそれは命取り。
「あんたのせいでね!」
 左の肩口からガイは胸を切り裂かれ―
「あの後、私がどんな目にあったと思っているのよ!」
 腹に真一文字の斬撃が走り―
「あんな屈辱、許せない!」
 そして、柄尻の部分でこめかみを打ち据えられる。
「っ、がぁ」
 流石のガイも、2度も脳を揺らされる攻撃には耐えられず、今度は完全に意識を飛ばされ、地面へと倒れこむ。
 数秒して、ガイは胸の痛みに意識を覚醒させた。見れば、メレの足が仰向けに倒れるガイの胸に食い込んでいる。
(本格的にやばいな、こりゃ)
 次々と罵詈雑言をガイにぶつけるメレ。その声はどこか遠くに聞こえた。脳を揺らされたのだから、当然であろう。
 しかし、それでもなお、ガイの脳は休むことを知らなかった。
(あの時、きっちりとどめを刺しておきゃあな。っと、今はそれどころじゃねぇな。打開策を考えねぇと)
 揺らされたことで逆に活性化されたのか、ガイは現状を打開するための策を考え、考え、考える。
「あんた、聞いてるの!?」
 反応を示さないガイに苛立ったのか、メレは再び蹴りを放った。
 その拍子でガイの身体が横に向き、偶然にもガイの耳は大地へと付けられる。
(うん!?これは)
 何かに気づくガイ。そして、自分が何をすべきか、ガイは答えを見つけた。
「どうやら話す気力もないようね。いいわ、止めを刺してあげる」
 その言葉の通り、釵を振り上げるメレ。
(こうなりゃ、一か八かだ)
「ジャムるなよ!」
 ガイはグレイブラスターを取り出すと、急ぎ、その引き金を引いた。
 すると、青の女と戦っていた時が嘘のようにグレイブラスターの口径から無数の弾丸が発射される。
「よっしゃあ、制限は終わってたみたいだな」
「何?あんた、どこに撃ってるの?」
 ガイの行動に、思わず呆気にとられ、手を止めるメレ。
 何故なら、逆転の一手と思われたグレイブラスターの銃口がメレとは全然違う方向に向けられていたからだ。


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