08/11/21 00:17:48 vjC5sseoO
803:差別バリバリぽい :2008/11/20(木) 23:35:42 ID:J9Qd74q8
両足は膝から下がない。事故で失ったか病気か。
髪の毛はおかっぱ風に短く、いつもＴシャツと短パン姿だ。
足が無いのを通行人に見せるために、ジーンズをたくし上げていることもある。
右手に牛乳瓶を持ち、信号を渡ってくる通行人に向かって差し出す。
わたしはそれを、毎日のように車の中から見ている。
角を曲がるとき、イヤでも目に入る。
ショートレッグさん、おはよう。今日も元気そうね？
一度も牛乳瓶にお金を入れたことはない。
最初のころ、どうして公安は排除しないのだろうと不思議に思った。
そのうち追い立てられてしまうだろうと。
だが巧妙に公安の車から身を隠しているのか、わたしが自宅から本店に出勤する時刻には、彼女もせっせと仕事をしている。
上海の中心地、ヨーロッパのブランドがひしめき合っているこの場所で、ショートレッグさんが仕事可能ということは…やはり上海だなあ…緩いなあ。
何でもありなんで、咎（とが）めようがないし、咎めても咎めても溢（あふ）れ出してくる、それが上海。
公安という二文字も、日本の警察という二文字より、ずっとひろやかで安らかな気がしてくるから不思議。彼女を見て、なぜかほっとする。
物乞いに安らぐなんて、わたし、どうかしているのかな、それとも上海が変なのかな。
日本経済新聞朝刊 2008年11月19日付け
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