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★「日本的経営」の偽善 1/2
池田信夫 blog 2007-10-05 / Books
昨日の記事には、予想どおり「財界の犬」とか「違法行為を擁護するのか」などの批判が
あった。そこでバランスをとって、というわけでもないが、朝日新聞の取材班の書いた
本から、御手洗氏の発言を引用してみよう(pp.97~8)。
「キヤノンは、終身雇用という人事制度をとっている。それは終身雇用という制度が
日本の文化や伝統に根ざしたものであり、日本人の特性を引き出すのにもっとも
適したシステムだからである。」
「アメリカには[・・・]何千、何万という職能分析と給料が地域別に出ており、自分が
どこに行けばいくらで雇われるかがわかるから、安心して職を変えられる。日本では、
そういう仕組みができていないのに、終身雇用をなくせなどと、学者などが軽々しく
いうのは無責任だと思います。」
「セル方式[キヤノン独自の生産方式]で、延べにして2万2000人を減らした計算となるが、
増産もあったので、半分ぐらいが残り、実際に減らしたのは約1万人。[・・・]別にクビを
切ったわけではありません。外部から来ていた人が引き上げて行っただけです。」
(強調は引用者)トヨタやキヤノンは「終身雇用」や「日本的経営」を売り物にしているが、
それは派遣労働者や請負労働者を「外部から来た人」として計算に入れてないことによる
偽装終身雇用にすぎない。一時は世界から賞賛された日本的経営とは、このような
二重構造の中で、派遣労働者や下請けを人間扱いしないで維持されてきたのだ。
このように終身雇用なんて実際には存在しないのだから、それが「日本の文化や伝統に
根ざしたもの」だという御手洗氏の話も嘘である。「文化と伝統」を持ち出すのは、
現状維持したい人々のありふれたレトリックだが、戦前の日本には終身雇用なんかなく、
職人が腕一本で多くの会社を渡り歩くのが当たり前だった。現在のような雇用慣行が
できたのは、1960年代以降である。