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発信箱:一般論はけっこう怖い=藤原章生(ローマ支局)
「イタリアの男って、変なのよ」。コロンビア女性(32)は夫がトイレに立ったすきにそう言った。
ローマのピザ屋。イタリア人の夫(60)はメニューやウエーターの挙動に小言を言い、
落ち着きがなく、彼女が余ったピザを持ち帰ろうとすると「みっともないから、やめよう」と懇願した。
強迫観念のように、周囲の目を気にするというのがその女性のイタリア男性評だ。
別の日。新婚のブルガリア女性(32)たちと語学学校で談笑していたら、10分おきに
イタリア人の夫(52)から電話が入った。ついに彼女は電話を放り出し「イタリア男!」と
顔をしかめた。妻の浮気を異常なほど心配すると言うのだ。
二つの話をローマの女性(29)にしてみると「何よ、それ! 外国の女でしょ。
お金のために結婚したくせに」とずいぶんむきになった。
いずれの発言も一般論で、あまり当てにならない。人は外国に暮らすと、文化比較をしたくなるが、
次第に大枠でものを語らなくなる。幾らでも例外がおり、ひとくくりにはできないと気づくからだ。
一般論は単刀直入で耳に残りやすいが、長く反すうしていると、それを語った側の方に思いが至る。
2人の外国女性は夫への不満を国籍の問題にすり替え、留飲を下げる。
「そんな相手と暮らす自分は偉い」といった自慢やのろけもあるのだろうが、
底には夫婦の日々の確執が隠されている。
ローマ女性からは彼女の金銭への強い思いがうかがえる。一般論は集団を語るという
本来の目的より、時に個人の心理、経験をさらけ出す点で優れている。「○○人は」と語る時は注意した方がいい。
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