09/01/05 07:21:07 0
大みそかは大阪市の地下鉄天下茶屋駅周辺を徘徊していたという。人出が多く、
駅で寝るのは恥ずかしかったからだ。「早く夜が明けてくれ」と願いながらひたすら歩き続けた。
途中、前年の大みそかのことが頭をよぎった。恋人と友人ら4人で出かけた伊勢神宮への初詣で。
そこで見た、まばゆい初日の出が忘れられないという。あれから、わずか1年。
「(今年の元日は)陽が昇ったことさえ気付かなかった。まさに天国と地獄です」
たどり着いた西成区の公園で、ベンチにあった新聞を手にした。扇町公園で炊き出しを
おこなっていることを伝える記事が目に飛び込んだ。迷うことなく地下鉄に乗って同公園へ。
所持金は1000円を切っていた。
そしてすぐに、ボランティア団体が設営したテント暮らしが始まった。しかし、そのテントも5日朝に撤収される。
「早く仕事を見つけて、母親に元気な声を聞かせたい」。視線は遠くに向けられていた。
扇町公園には先月下旬に建設業の仕事を解雇されたという男性(30)の姿もあった。
「大阪なら何とかなるだろう」と大みそかに神戸からやってきた。だが、仕事は見つからず、
若者らでにぎわう道頓堀に歩き着いた。将来への不安に押しつぶされそうになりながら、
グリコのネオン看板をぼんやり眺めていると、新年を迎えるカウントダウンが始まった。
「5、4、3、2、1!」。着飾った同世代のカップルらが楽しそうにはしゃぐ姿をみて急に
孤独感に襲われた。「もう死のうかな」。故郷の宮崎を思い、涙がこぼれたという。(おわり)