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★農林中金 5800億円の資産カサ上げ
●時価会計緩和を活用
「公的資金は不要」と言い続ける「ノーチュウ」の“ヤセ我慢”はいつまで続くか。国
内最大の機関投資家「農林中金」が公表した08年9月中間期決算の内容は予想以上に
ヒドかった。保有する証券化商品関連の含み損が1兆5737億円に達し、経常利益は
前年同期比9割減の205億円となった。
農林中金は早速、当初予定していた3000億円規模の増資計画を見直し、1兆円の
資本増強を行うと発表。財務体質の健全性をアピールするのに躍起だが、これで本当に
大丈夫なのか。
「実は今回の決算には“カラクリ”があります。有価証券の評価基準で、農林中金は今
中間期から認められた『時価会計の緩和』を適用。それによって、有価証券の評価額は
市場価格よりも5759億円高くなった。違法ではないが、帳簿価格の“カサ上げ”で
す」(経済ジャーナリスト)
時価会計の一部緩和は、米欧が相次ぎ運用や基準を見直したことに伴う対応で、国内
でもメガバンクや地銀などで適用が相次いでいる。だが、その“改善額”は「三菱UF
Jフィナンシャル・グループ」で約1200億円、「三井住友」で約1480億円。農
林中金の額は突出しているのだ。
金融庁の佐藤隆文長官は3日に都内で開いた会議で、「企業の財政状態を公正、正確
に示し、損失が発生すれば迅速かつ正確に開示すべき」と強調した。行き過ぎた時価会
計の停止や緩和を求める声に懸念を示した格好だ。その流れに逆行したかのような今回
の決算。当の農林中金は「有価証券の評価は、会計ルールにのっとったもの。これを『
カサ上げ』というなら、ルールって一体何なのかということになる」(広報部)と反論
する。
それにしても決算書で「経営者の合理的な見積もりに基づいて……」と、4行の追加
情報を記しただけで、6000億円近くの「改善」って……。やっぱり何かヘンじゃな
いか。
(日刊ゲンダイ2008年12月9日掲載)
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