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「 (e) 本件ワゴンRに対する実況見分及び鑑識活動
原判決は,被告人の自白の信用性に疑問を生じる理由の一つとして,本件ワゴンRについて
実施された実況見分結果と矛盾するという事情を挙げる。しかし,この点の原判決の見解に与する
ことはできず,本件ワゴンRの見分結果と被告人の自白との間に実質的な矛盾があるとはいえない。
すなわち,平成14年10月10日付実況見分調書(原審甲68)及び当審証人Y,同Zの各供述によれば,
同年10月1日に実施された本件ワゴンRに対する実況見分及び鑑識活動では,指紋検出や車内の
微物採取のほか,尿や血液反応の有無が調べられたというのであるが,被告人の自白では,
被害児が本件ワゴンRに乗車していた時間はせいぜい20分間程度で,この間,被害児は少しは
ぐずったり泣いたりしたとはいいながらも,おおむねはうつらうつらとしていたというのであるから,
このような態様では,被害児の尿や血液,毛髪などが本件ワゴンRに遺留される可能性は
小さかったといわざるを得ない。また,指紋については,時間の経過とともに,その成分である
水分や脂質が薄れていくものであるし,被告人が,本件ワゴンRを日常的に使用していたことを
考えれば,そのことで指紋,毛髪などの資料が失われていくことは十分に考えられる。そうすると,
事件の発生から2か月余を経て実施された鑑識活動で被害児に結びつく資料が発見される可能性は
もともと極めて小さく,まさに九牛の一毛を探し出すような作業であったと考えられる。それでも,
警察官らがこの時点で本件ワゴンRの実況見分や鑑識活動を行ったのは,それが捜査の常道であるし,
万が一でも被害児と結びつく資料が得られれば,決定的な証拠になると判断したことによるものと
思われる。このように考えると,結局のところ,鑑識活動によって本件ワゴンRから被害児と結びつく
資料が得られなかったとしても,それは当初からある程度予想された事態であって,そのことが
自白の内容に矛盾するとは考えられない。」(控訴審判決)