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「(量刑の事情)
本件は,被告人が,深夜,駐車場に駐車中の車内から幼児を略取し,その後,同児を海中に投棄して
殺害したという略取及び殺人の事案である。
本件の犯行に至る経緯や動機については,被告人の自白の当該部分を全面的に信用することはできず,
かつ,被告人が公判では否認しているため,明かということはできないのであるが,理由はどうあれ,
抵抗する術を持たぬいたいけな幼児を連れ出して殺害することが理不尽で卑劣な犯罪であることに
変わりはなく,酌むべき事情があるとは考え難い。
被害児は,被害に遭うその日まで周囲の愛情を受け,すくすくと成長する途上であったのに,突然に
その命の芽を摘まれ,人生の結実を味わうことなく死を迎えたもので,その結果が大きいことは
いうまでもない。被害児の両親は,行方不明となった被害児を必死で探し回った末,変わり果てた姿の
同児との対面を余儀なくされた上,その後はなかなか進展しない捜査に心を痛め,被告人が検挙,起訴
された後も迷走する公判に翻弄され続けてきたものであり,その悲しみや心労はいかばかりかと察せられる。
これに対して,被告人は,捜査段階では一旦自白しながら,公判に至るやこれを翻し,責任を免れようと
しているのであり,被害児の遺族に対して弁償はおろか,謝罪すらしていない。また,このような態度は,
被告人の反省心のなさや卑劣な考え方を示すものであるといわねばならない。
本件は,幼児を標的にした理不尽で卑劣な凶悪犯罪として広く社会にも報道され,地域住民の関心を
集めた事案であり,このような社会的影響をも量刑においては考慮すべきである。
これらの事情からすると,本件の犯情は誠に悪く,被告人の責任は著しく重いというべきであり,
これに対して,被告人のために酌むべき事情としては,被告人には服役に至った前科がないこと,
職を転々と変えており,勤務態度が真面目であったともいい難いが,正業に就いていて,犯行以前には
家族を有していたことなどが挙げられる程度であり,これらをしん酌したとしても主文程度の刑は
やむを得ないところである。
よって,主文のとおり判決する。」