08/10/02 16:14:40 p0Ty94yB0
>>449の続き
「もっとも,これが自白の信用性を全く失わせるものであるかどうかについては更なる検討が必要である。
そもそも,本件の略取,殺人については,事件が発生した直後から「犯人の動機が分からない事件」として
報道されており(原審弁32,35,36等),確かに一件記録を通覧しても,被告人の自白以外の資料で,
犯人の動機を推測させるに足るものはないといってよい。事件の態様や結果からすれば,被害児の親に
対する何らかの反感,憎しみあるいは怨恨が最も疑われるとはいえ,被害児の父母には子を連れ去られて
殺害されるほどの激しい恨みを買う覚えはない(原審甲25,26,30)ことがうかがわれ,被告人の自白が
ない以上,他には通常人が納得できるような動機を示すよすがはない。そうすると,本件が全くの理不尽な
行きずりの犯行で,犯人の動機が唖然とするような類のものであったとしても,それはこの事件の性質から
みるとあり得ないことともいえない。
また,真実の犯人が責任軽減のため,真の動機を隠し,より社会に受け入れられやすい動機を説明する
ことは往々にして認められ,動機の説明が嘘であるとしても,それが犯人性に関する自白の信用性には
影響しないという事例は枚挙に暇がない。
そうすると,自白中の動機に十分な説得力がなく,被告人が動機に関して一定の思惑から恣意的な
供述をしている可能性があるという点は,それだけで自白の信用性を全面的に失わせるに足る決定的な
事情になるとはいい難く,この点は,あくまで自白の信用性を判断するに当たっての一つの考慮要素に
留まると考えるべきである。」(控訴審判決)