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>>417の続き
「また,それ以降の捜査官からの取調べに対して,ほんの一時期だけ「黙秘」,「否認」などと言って
供述を拒否する姿勢を見せたとはいえ,おおむねは唯々諾々と自白供述を維持し,あまつさえ
「弁護人から否認や黙秘を勧められた。」などと説明する一方で,弁護人には,そのようなことは
おくびにも出さず,「自白調書にサインさせられた。」などと述べていたことも不審な供述態度と
いわねばならない。すなわち,接見において,否認供述を始めた被告人に対し,丙弁護士は,
これを受け入れた上で「記憶と違う調書には署名押印を拒否しなさい。」,「それができないなら
黙秘しなさい。」,「取調べ状況を手紙に書いて報告しなさい。」などと正当かつ具体的な対策を伝授し,
その後は接見に連日訪れているのであって,無実の嫌疑をかけられた被疑者が弁護人から
このような支援を受ければ,これに勇気づけられ,以後は否認の態度を貫くべく,精一杯の努力を
払うのが通常と思われる。しかるに,被告人の事後の態度は,中途半端なもので,短時間だけ
供述を拒否する姿勢を見せたものの,取調べの主任が替わったというような事情でやすやすと
姿勢を元に戻し,検察官による取調べにおいても自白を維持している。このような被告人の態度は,
無実の嫌疑をかけられた者のそれとして理解することは難しい。仮に百歩譲って,被告人が余りに
気弱で,捜査官からの圧力に対抗し得なかった(そのような見方ができないことは前述のとおりである。)と
いうのであれば,弁護人との接見の際には,自らのふがいなさや取調べの厳しさを泣訴し,さらに強力な
支援を懇願するとか,あるいは一層のこと,自棄的になってしまい,自分のことは放っておいてほしい,
などと投げ出してしまうなどの事態が考えられるが,それらのいずれでもなく,被告人の弁護人への
応対ぶりは奇妙である。しかも,捜査官に対しては,弁護人に唆されて否認に転じたと言わんばかりの
説明をし,弁護人との接見では,捜査官が聞き入れてくれない,と訴え,双方に対して異なる説明をして
いたふしもうかがえる。これらの被告人の態度は,無実の被疑者が自らの潔白を弁護人に訴え出た場合の
それとして合理的に説明することはできない。」(控訴審判決)