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「(3) 捜査段階の中途での自白と否認の交錯の経緯とその意味
まず,本件では,被告人は,捜査段階の途中において,否認供述に転じた時期があることが
明らかであるため,そのことが捜査段階の自白の信用性を左右する事情になるかを検討する。
被告人が否認供述に転じた経緯とその後の経過は,(1)項の(r)ないし(w)に記載のとおりで,
その契機が平成15年4月29日の丙弁護士との接見にあることは明らかである。その際の
接見状況は,当初は,被告人は,略取及び殺人の犯行について認める旨を述べていたのに,
同弁護士から詳しい犯行状況についての説明を求められると,「忘れた。」などと曖昧な供述をし,
さらに追及されると「やっていない。」と言い出し,当日は,同僚との待ち合わせのために
午前2時30分ころに本件駐車場に赴いたと説明をしたというのである。このうち,被告人が
否認供述を始めた場面だけをとらえれば,それまで何らかの事情で不本意な虚偽自白を
していた者が,弁護人からの問いかけをきっかけに呪縛から解放され,真実の告白をしたと
解する余地があるように思われるが,そうであるならば,その時点で弁護人に当日の行動について
明らかに虚偽の説明をした事情が理解できない。」(控訴審判決)