08/08/28 15:51:31 Fi/v9SSl0
俺は物心ついた時にはオヤジはいなかった
何故オヤジがいないのか？幼い頃母親に聞いた事はあったが
悲しそうな顔をしたのが幼心に焼き付いてそれ以来聞かなくなった
母親、俺、イッコ下の弟と貧乏だったがそれなりに楽しく暮らしてた
そんな母親がある日一人の男を家に連れてきた
なんだか母親が嬉しそうに振舞ってるのが俺にはとても腹が立った
弟も遊んでくれる人ができて嬉しいのかはしゃいでた
俺だけ家の中で独りぼっちになった気分だった
その男は数ヶ月に一度、月に一度、週に一度と頻繁に家に来るようになった
俺は我慢した 母親と弟の嬉しそうな顔を見ると嫌々だったけどその男といるのも
我慢できた 遊びに連れて行ってくれたり玩具も買ってくれたけど好きにはなれなかった
小6のある日家に帰ると母親が泣いていた 母親の前にはあの男がいる
俺は男に向かって殴りかかった ケンカもしたことない俺がデカイ大人に向かって殴りかかった
どんなに殴っても拳は男の分厚い胸までしか届かないそれでもひたすら殴り続けた
どれくらい時間が経ったのだろう
「ごめんな」 男が言った
「今までごめんな 〇〇〇（俺の名前）」 男が財布から一枚の写真を出して言った
「父さんは一度もお前達のことを忘れた事なかったよ」
クシャクシャになってるセピア色の写真を見ると若い男とお腹の大きい母親が小さな赤ん坊を
抱いて笑っていた その男が誰だか判ったのと同時に涙が溢れて止まらなくなった
テーブルの上に置いてあった紙きれに 婚姻届 の文字を見つけた
さっき以上に涙が止まらなくなった