08/08/29 23:55:37 3Ss7AFdB0
>>907 >>916 >>918
だから、3世紀の時点では絶対に「日」と「火」は近くないんだよ。
まず、上代特殊仮名遣いは奈良時代においてこそ消滅に向かっていたが、
それよりも遡れば奈良時代よりはずっと厳密なものだと考えられる。
意味の区別にも関わっていた。単なる漢字の使い分けの問題でもなく、
文字を全く知らない下層民まで、全然発音が別の単語として使い分けていたということ。
例えば沖縄本島では、本土方言のイ段とエ段、ウ段とオ段が合流している。
だが、それを元にして、沖縄の人が、「日と屁、湯と世、靴と言には何か関係があるのだろう」
と推測するのは全然的外れだよね。それと同じ。
3世紀の「ヒ甲」と「ヒ乙」が近いというのは、現代語で「ヒ」と「ヘ」が近いというのと同じ。
それに、奈良時代に見られる母音交替の形から、やはり「日」の古形は「ピ」、「火」の古形は「ポ」だと
考えられる。>>216に書いたような母音交替で、単独の形は「露出形」、複合語の形は「被覆形」と
言われるんだが、露出形というのは、被覆形に名詞化接尾辞イが付いて母音融合を起こしたものと考えられている。
奈良時代には「ア」「イ甲」「イ乙」「ウ」「エ甲」「エ乙」「オ甲」「オ乙」の8母音が区別されていたわけだが、
それは恐らくもっと遡ると「ア」「イ甲」「ウ」「オ乙」の4母音が母音融合を起こして成立したものと考えられる。
この母音融合による8母音体系の成立、露出形と被覆形の成立は3世紀以前に遡らない可能性もある。
つまり、3世紀には「火」は「ホ」という形のみで、「ヒ乙」という形は存在しなかった可能性もあるわけだ。