08/08/21 18:08:03 v1U3sluJO
もうすぐ潰れる派遣会社の話。
「あんたさぁ…雇ってあげんだから、有り難く思ってくれんと。あんたの年齢じゃこの仕事しかないんだよ」
派遣会社の営業職にある二十代後半の男が、煙草の煙を吐き出しながら言った。
言われているのは、四十になったばかりの中年の男だ。
この中年男性は、昨年勤めていた会社が倒産してしまい、ハローワークからこの派遣会社を紹介されたと言う。
「しかし…職安の求人票と内容が違うじゃないですか。時給も500円も低いし…」
「だから!おめぇの歳じゃあよ!仕事なんかねぇんだっての!早く名前書けや!」
激しく机を叩きながら巻くしたてる営業の男。
机の上に置かれた契約書には、時給700円と大きく書かれていた。
中年男性には、現在入院中の妻と中学2年生の娘がいる。
失業保険がもうじき切れてしまう彼は、仕方なく職安の薦められるまま、この派遣会社を受ける事になったのだ。
『時給700円』
これで妻と娘を養わなくてはならないのか。たぶん、いや確実に娘は高校には進学出来ないだろう。
この一家を助けてくれる人間は誰もいない。市も県も国も…全てグルなのかと思う程だ。
「早くサインしろや!!」
怒鳴る営業の男の前で、中年男性は俯きながら、拳を握りしめていた。
何を言われても…少しでも働いて治療費や学費を稼がないと…。
震える手でボールペンを握り、契約書にサインする男性の眼には、うっすらと涙が滲んでいた。
「手間かけさせやがって…」
また煙草に火をつけ、男性を見る営業。その顔は勝ち誇った、醜く侮蔑されるべき外道の顔をしていた。
これが山形県の派遣の実態である。