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記者の目:船場吉兆前社長ら書類送検=久木田照子(大阪社会部)
◇崩れた「料亭文化」への思い--業界の信頼回復、難しい
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賞味・消費期限切れ商品の販売、牛肉の産地偽装……。日本料理を代表するブランドが本当にこんなにひどいのか。
どうしても自分の目でそれを確かめたかった。今春、料亭「船場(せんば)吉兆」(大阪市中央区、破産手続き中)の
偽装事件の担当になり、実際に客として、本店を訪ねた。そこには、料理の味、盛りつけの美しさ、店を大切に思う仲居さんや
料理人の心意気があった。まさに日本の料理界で長年培われてきた料亭の文化。「やり直すことができるかもしれない」と思った。
だがそんな淡い期待はもろくも崩れ去った。
船場吉兆ではその後、料理の使い回しが発覚し、店は廃業、先月にはついに湯木(ゆき)正徳・前社長(74)と長男の
喜久郎・前専務(45)が大阪府警から不正競争防止法違反容疑で書類送検された。もう船場吉兆がよみがえることはないだろう。
そしてその行為は、ブランドの失墜や、客への裏切りだけでなく、多くの人たちが築き上げてきた日本料理の文化すら危うくしたのだ。
船場吉兆は、1930年に創業した吉兆グループの一つ。創業者の故・湯木貞一(ていいち)氏は調理技術のほか、もてなしに
心を尽くした。法事の弁当には、ふたを開けた時に湯気が立つ状態の炊きたてご飯を詰めた。夏場には利休箸(ばし)を水で
湿らせ涼感を伝えた。吉兆が日本料理を代表するブランドになったのは何も料理の味だけではない。貞一氏が追求したきめ細かな
心遣いがあったからだ。
船場吉兆の数々の不祥事は、こうした伝統の対極にあるように思えた。「偽装は従業員の判断」などと姑息(こそく)な責任回避に
終始した正徳前社長の対応も許せなかった。だからこそ、「吉兆はあこがれ。頑張ってほしい」といった常連客らの激励の声に
違和感を覚えた。一方で「本当は、伝えられるほどいいかげんな店ではないかもしれない」といった気持ちも芽生えてきた。
その疑問を解消したかったのが、客として行ってみようと思った理由だ。
>>2以降に続く