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時代の風 2008年7月13日
ネット時代の危機管理 自己に厳しい姿勢を 坂村健(東京大学教授)
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「信用が命」という業界の不祥事が最近、本当に多いような気がする。昔はモラルが高かったから不祥事自体が少なかった-
と考えるよりはむしろ情報通信技術が社会の風通しを良くしたため、問題が表に出やすく、かつ広がりやすく、
記憶に残りやすくなったと考えた方が自然だろう。人間の本質というのはそう変わらないが、科学技術は確実に時代を変えるのだ。
船場吉兆の女将が記者会見でのヒソヒソ話がテレビで流れた後、「マイクがあんなに性能がいい物だとは思いませんでした…」
と釈明(?)していた。それがある意味象徴的な出来事だ。
昔なら耳にとまらず消えてしまっただろう情報を科学技術がピックアップし、それがテレビで全国に流れる。
テレビが超えたのは空間の壁だけだったが、今のインターネットは時間の壁を超え、不特定多数への情報流布を可能にした。
面白いニュースならすぐにデータ化してネットの動画サイトにあげる人が出てくる。そして、多くの人がブログなどで
その話題を取り上げる。興味を持ってその「ヒソヒソ声」を聞きたいと思った時、そこには動画のアドレスが張られている。
ずっと後になってからも-いつでも・どこでも・誰もがクリック一つで過去のニュースを見られるのが今の時代だ。
しかし、ネットが弱いのは「信頼性」。新聞などオールドメディアは、その背景にある「組織」を個々の記事の信頼性の担保としてきた。
コストのかかる組織維持を長く行っていることが信頼の証しというわけだ。そして、何十年も現実世界で信頼を築いたブランドは強い。
だからこそオールドメディアである新聞のニュースサイトが多くの人を引き付け、そこでは広告による組織維持が可能になる。
一方、インターネットの中では、まずは疑うのが正しい姿勢であり、その上で過去の履歴まで見て評価して信じる信じないを読者が判断する。
同定可能で過去も信頼性の高い行動をしている主体は、たとえ個人でネット名でも、それがブランドとなり一定の信頼性を得る。
つまりいつでも過去ログや動画や他サイトからの評価などに簡単にアクセスできるという「技術」をベースにするのがネットの新しい信頼性担保メカニズムだ。
>>2-10辺りに続く