08/07/10 02:16:38 kuL2u0kd0
体力のあるうちはドカタでもなんでもやって食っていくことは出来た。
だが、50過ぎたときに現場で重機に腕を挟まれて骨折、
以来、現場の作業も出来ず、たくわえもさっさと食いつぶし、
いつしか俺は刑務所を宿代わりにするクズに成り果てた。
あるとき所内での健康診断で、俺は医者から聞きたくない話を聞かされた。
若いころからの無茶な暮らしがたたって、肝臓にガンができているんだと。
そして、もはや治る見込みもないんだと。
出所したが、入院する当てもない。もちろん金だってない。
このまま腹の中がどんどん腐って、野垂れ死にか、そう思いながら
俺は神社に入っていった。
こんな薄汚れた俺でも、神様は受け入れてくれるだろうか?
ふと境内を除くと、男女が言い争う声がした。
一人は巫女、一人は職員風の男だった。
痴話げんかかと思ったが、どうも様子がおかしい。
どうやら二人はお互いに好きなのに、素直になれず罵り合っているようだった。
俺は、そんな二人を見て、なぜか、二人の力になりたいと思った。
神様、そこから見てなさるんだろ? 俺の心をこんなにしたのは、あんたの仕業かい?
汚れきった、消え行く命のこの俺に出来る、最初で最後の人助け。
どうか邪魔をしないでくれよ。
ほどなく俺の手に握られた21円。その俺を協力し合って追いかける若い二人。
さあ、捕まえてみろ。俺だけじゃなく、あんたらの幸せな未来も一緒に…。