08/06/25 12:22:04 Dt69PGYF0
(>>576>>620のつづき)
X氏は救助開始から約3時間半後に目を開けたが話はできなかった。
開眼したことを添乗員に伝えたところ,客室乗務員が酸素を持って来て吸入が開始され,
その約30分後目的地の空港に到着した。到着後,Y氏は最前方のビジネスクラスを担当
していた唯一の日本人客室乗務員と始めて言葉を交わしたが,彼女は後方での様子につ
いて詳しくは知らなかった。また飛行機から降りる際にY氏は,最後方にAEDが設置され
ているのを見つけた。
X氏とY氏は荷物搬送用車両の荷台に乗って救急車まで搬送されたが,その際初めてX氏が
言葉を発して,呂律が回らない口調で「どうして寝ているんだ?」とY氏に尋ねた。X氏を
救急隊に引継いだ所で,Y氏の4時間に渡る救命活動は終わった。
X氏は現地の病院に入院し,手指の軽度の運動障害が残ったのみで退院した。
日本に帰国後,精密検査を受けるも心肺停止の原因となる疾患は見つからず,頭部MRIにて
微小な脳梗塞巣を指摘されて生活習慣に注意するよう指示されたのみであった。
その後X氏は通院・服薬することなく会社に復帰して,通常の社会生活を送っている。
尚,X氏は旅行傷害保険に入っていなかったため,入院した病院から数百万円の支払い請求が
来たとのことであった。
一方,Y氏は通常の体位を維持できないほどの強い筋肉痛が約10日間続き,枯葉剤についての
調査は不十分なまま予定より早い5日の滞在で帰国し,帰国後高熱で寝込むこととなった。
X氏と妻は名前,住所,日本赤十字社救急法指導員との情報からY氏を探し出して,お礼の電話
を入れた。その際,実際に会って礼を言うことを申し出たが,Y氏は「電話を掛けて頂いただけで
も十分です。」と返答し,宮城県南部と福島県北部に居住する両者が会うことはなかった。
(つづく)