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【コラム・断】評価が一変したビジネス
職業安定法違反の幇助容疑で、派遣業務のグッドウィルの幹部が逮捕された。港湾作業に労働者を
二重派遣したということだ。
テレビのニュースで見ると、逮捕された幹部ははやりのスーツの似合う童顔の37歳。この映像を見て、
納得したことがある。こういう年齢では、人材派遣業務に対する心理的抵抗感がまったくないのだろうと
いうことだ。
わたしが人材派遣という言葉から連想するのは、まず寄せ場の手配師である。さらに手配師のような
仕事というのは、ひとさまの労働からピンハネする不道徳な職業と、頭に刷り込まれている。ましてや
港湾労働者の派遣となると、あちらの世界のひとたちのしのぎそのものだという感覚がある。
たとえば昭和40年代の映画『仁義なき戦い』シリーズは、当時の市民のそのような道徳観、
常識抜きには成立しえなかったものだ。シリーズ第1作で、広能昌三が主人公として
受け入れられたのは、呉の港でじっさいに荷役作業に就く男、という設定だったからだ。彼は
他人さまの労働の上がりを取る男ではなかった。そうでなければ、観客は彼に共感しなかったし、
拍手も送らなかったろう。
労働者の手配なんてことは、手を染めたら人間としてさげすまれる。そういう感覚が、ある時代から
なくなってしまったようだ。いまの人材派遣業界が、これほど違法、脱法行為を繰り返しているので
なければ、わたしもいまやそれはきちんとした近代ビジネス、と認めてもよいのだが。(作家・佐々木譲)
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