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暴走トラックと凶刃の前に、17人が倒れた東京・秋葉原の無差別殺傷事件。
地獄絵のような発生直後の現場で、懸命に応急処置にあたったのは偶然その場に居合わせた医師や通行人だった。
「人の命を奪って自分の欲求を満たす犯人は許せない」。
最初に駆け付けた医師の目には、今も路上に横たわる人々の姿が焼き付いている。
「ドクターいますか」
学会参加のため徳島市から上京し、秋葉原を散策していた産婦人科医、西条良香さん(39)は
8日、助けを求める叫び声を聞いて、思わず声のする方向に走った。
角を曲がると、歩行者天国だったはずの交差点に8人が倒れていた。近くの携帯電話ショップからタオルを借りて、
胸や腹部、背中など、被害者の傷口を衣服をめくって止血した。
次第に応援が増えてきた。
気を失いそうな被害者に「しっかりしろ」と声をかける人、散乱した荷物を持ってくれる人―。
中には、自分のカバンからタオルを取り出して慣れない応急処置にあたる若者もいた。
「どちらかというと『アキバ系』と呼ばれるような見かけの若者たちが、よく助けてくれた」と振り返り、
自身について「もっといい処置ができなかったか、後悔もある」とも。
加藤智大(ともひろ)容疑者(25)が取り押さえられた路地の近くでは、若い女性がうつぶせで倒れ、
背中から流れ出た血がアスファルトに広がっていた。
そこにたまたま居合わせた埼玉県の男性(35)が、女性の傷口の上に両手を強く押し当てて止血しながら、
携帯電話で119番通報した。
男性は医療系大学の学生。
3月には近所の消防署で救命講習を受講し、止血や人工呼吸の方法などを学んでいた。
「自分の弱さから他人をあやめる犯人に怒りを感じる」と話した。
(続く)
(2008年6月11日02時13分 読売新聞)
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