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(前半部略)それにしても、なぜ80年も前の小説が読まれるのか。批評家の大澤信亮(のぶ
あき)さん(32)は「貧困の現実に迫る言葉を持つ小説が『蟹工船』しかなかったから」と解説
する。大澤さんによれば、戦後、労働や貧困を主題とした文学作品はほとんどなく、評論で
も貧困は現実の「外の問題」としてしか扱われなかった。「貧困をとらえる言葉がなかった
からこそ、若者の貧困問題は数年前まで『自己責任』のひと言で片づけられてきたのでは」
(大澤さん)
興味深いのは、左翼文学の古典を読んでいるのが、小泉純一郎元首相の靖国参拝に熱狂
したのと同じ世代でもあることだ。04年に東京で始まったフリーターらのメーデーに、かつて
右翼団体にいた雨宮さんも加わり、今年は全国14都市へ広がった。年長者の中には、この
世代が右から左へ極端に流れたと危惧(きぐ)する人もいるようだ。だが、この見方には、同
じ世代の人間として違和感がある。
赤木さんは「私たちは、共感できるなら右翼でも左翼でもいいと思っている」と話す。そもそ
もこの世代は直接の左翼体験が、まずない。大半は浅間山荘事件(72年)の後に生まれ、
自民党と社会党の「55年体制」の記憶すら怪しい人もいる。マルクスなどの思想もほとんど
知らない。
一回り年上の苅部直(かるべ・ただし)・東京大教授(43)も「彼らは、上の世代が自分たち
の抑圧感を理解せずに、きれい事を並べることへの反感をイデオロギーに結びつけてきた。
その意味で、前に小林よしのり氏の漫画『戦争論』がはやったことと『蟹工船』のブームは
近い」と見る。ただ、今の「左傾化」は「実際の悲惨な生活がある点が、歴史教科書問題の
時と違う」と評価する。
(略)
貧困や雇用を社会全体で考えることは、どの世代にも有益なはずだ。一部が「団塊ジュニ
ア」と重なり人数も多いこの世代の動向は、今後の日本の行方に大きく影響するだろうから。
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