08/06/08 17:55:04 0
スタンダール『赤と黒』 新訳めぐり対立 「誤訳博覧会」「些末な論争」
「まるで誤訳博覧会」-。光文社古典新訳文庫から昨年刊行されたスタンダールの『赤と黒』に
ついて、誤訳が数百カ所にのぼり、全面的な改訳が必要だと批判する書評が、スタンダールを研究する
専門家でつくる日本スタンダール研究会の会報に掲載された。
新訳文庫の訳者は東京大学大学院准教授の野崎歓氏で、これを手厳しく批判したのは
立命館大学教授の下川茂氏。
「『赤と黒』の新訳について」と題した下川氏の書評は「前代未聞の欠陥翻訳で、日本における
スタンダール受容史・研究史に載せることも憚(はばか)られる駄本」と同書を断じ、
「訳し忘れ、改行の無視、原文にない改行、簡単な名詞の誤りといった、不注意による単純な
ミスから、単語・成句の意味の誤解、時制の理解不足によるものまで誤訳の種類も多種多様であり、
まるで誤訳博覧会」と書いた上で、「生まれてこのかた」という成句になっている
「Delavie」を「人生上の問題について」とするなどの具体例も列挙している。
また、今年3月15日付で発行された同書の第3刷で19カ所が訂正されたことについて、
「2月末に誤訳個所のリストの一部が(訳者に)伝わっている。そこで指摘された箇所だけを
訂正したものと思われる」と指摘。改版とせずに、初版第3刷として訂正したことを
「隠蔽(いんぺい)」だと非難している。
産経新聞の取材に下川氏は「野崎氏に会報と絶版を勧告する文書を郵送しました。学者としての
良心がおありなら、いったん絶版にしたうえで全面的に改訳すべきだと思います」と語った。
一方、光文社文芸編集部の駒井稔編集長は「『赤と黒』につきましては、読者からの反応はほとんど
すべてが好意的ですし、読みやすく瑞々しい新訳でスタンダールの魅力がわかったという
喜びの声だけが届いております。当編集部としましては些末な誤訳論争に与(くみ)する気は
まったくありません。もし野崎先生の訳に異論がおありなら、ご自分で新訳をなさったら
いかがかというのが、正直な気持ちです」と文書でコメントした。(桑原聡)
6月8日12時24分配信 産経新聞
URLリンク(headlines.yahoo.co.jp)