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『黒字亡国 対米黒字が日本経済を殺す』 三國陽夫(文春新書)より。
「植民地時代のインドは英国との貿易で常に黒字だった」。アナリストの三国陽夫氏はこう指摘する。
インドは香辛料などを輸出して宗主国の英国から大幅な黒字を稼いだが、支払いは英国通貨
のポンドで、ロンドンの銀行に預けられた。インド人の汗と涙で稼ぎ出した貿易黒字は帳簿の
上だけだった。英国企業に融資され、宗主国の投資や消費を活発にした。英国人はインドの
産物と資金で一段と豊かな暮らしを実現した、という。
三国さんは近著「黒字亡国」で、いまの日米関係が植民地時代のインドと英国の関係に酷似
していることを丹念に描き、対米黒字が日本にデフレを引き起こしている」と説いている。
楯民地インドと同様に、曰本は稼いだカネを米国に置いてきている。
米経済戦略研究所のクライド・プレスズトウィッツ所長はかって私に言った。
「レクサスはいいクルマだ。トヨタは米国人に売っていると思っているが、我々は日本のクルマ
を日本人のカネで買っている。米国にとってこんなうれしいことはないが、こんなことがいつまで
可能なのか」
こんな日米関係を、米政府内では「日本は米国のクライアントカントリー(保護領)」と呼ぶ人が
いる、という。
国際収支が黒字になっても「勝ち」ではない。資金を自国で使えないなら「貢いでいる」のと
同じである。
経済の血液が米国に流れれば、その分日本は消費や生産に回るマネーを失い、経済は停滞
する。代わりに得ているのが米国の政府が発行する国債だ。ドル建ての米国債は円高に
なれば減価する。しかも勝手に売れない。日本が資金を引き揚げたら、それこそドル暴落が
起こりかねない。
「わたし貢ぐ人、あなた使う人」の曰米関係でプッシュ政権は、減税をしながらイラクに大量の
兵士を送るという芸当が可能になる。
小泉・ブッシュの友好は「対米黒字」が支える同盟関係だ。
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