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・あの事件が起きなければ、教諭は今も罪を重ねていただろう。
昨秋のある夜、大阪府柏原市の小学校。警備員の男(30)は男性教諭(53)の机やロッカーを
物色した。盗んだのはビデオテープと写真。プール授業の着替えや身体測定の際に盗撮された
女児の裸や下着姿だった。警備員はDVDに複写し、メモを添えて教諭の引き出しに入れた。
「一人デミテクダサイ。カンソウハ」
翌朝、教諭が記されたアドレスにメールを送ると「いくら準備できますか。今までと変わらず
良い夫、良い父、良い先生でいられるんですよ」と返信が来た。教諭から相談を受けた大阪府警は
警備員を恐喝未遂容疑で逮捕した。
府警は警備員宅などの捜索でビデオ6巻と写真約500枚を押収。教諭による児童買春・
児童ポルノ禁止法違反を視野に捜査を始めた。教諭は調べに、約20年前から盗撮していた
ことを認め「盗撮投稿本を見て、この程度なら自分でもできると思った」と供述した。
指導熱心と評価は高く、香港の日本人学校にも派遣された。授業で児童にパソコンの使い方を
教え、行事では撮影係。その技術を悪用、盗撮と画像整理に興奮を覚えた。発覚1カ月前にも
授業で児童に水鉄砲を使わせ、教室でぬれた服を着替えるよう指示。隠しカメラは隣室の
ビデオデッキに接続されていた。
だが、捜査は行き詰まる。教諭は既にパソコンから画像を消し、他人に提供した形跡もない。
現行法は自分で見るための単純所持は禁止されていない。単純製造罪は児童に性的なポーズを
取らせた画像に限られ、適用できない。結局、軽犯罪法違反容疑などで書類送検、1万円未満の
科料処分で終わった。捜査員は「法律の不備だ」と悔しそうに話す。
その後、教諭は懲戒免職となり教員免許を返納し、姿を消した。
柏原市教委は児童に動揺が広がらぬようカウンセラーを派遣。教職員は校内を総点検し、安心
して登校するよう呼びかけた。ある母親は言う。「うちの娘が被害者でない保証はないんです。
いつかネット上に出回り、本人が見つけてしまったらと思うと…」。誰が写されていたのかは、
明らかにされていない。(一部略)
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