08/05/18 21:48:55 FyRBjNf50
物語日本史(上) 平泉澄
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終戦の2、3年後でありました。山奥の小さな村の秋祭りのために、私は下駄をはいて山道を
登ってゆきました。日の光はさんさんとして山々を照らし、暑からず寒からず、楽しい眺めであ
りましたが、足が少々疲れてきて、学校帰りの児童3、4人に追付かれました。児童はいかにも
楽しそうに歌を歌いながら登って来ました。いつしか気やすく友達になった私は、ふと尋ねてみ
ました。
★「君が代、知ってるかい」
★「君が代、そんなもの、聞いたことない」
「日本という国、しっているかい」
「日本? そんなもの、聞いたこと無いなあ」
「それでは、アメリカという国、知っているかい」
「アメリカ? それは聞いたことあるなあ」
私は慄然として恐れました。世界には、征服せられ絶滅せしめられて、その民族の運命も、その
文明の様相も、明らかでないものが、いくつもあるが、それが今は他人事ではなくなったのだ、
と痛嘆しました。