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物語日本史(上) 平泉澄
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序
人生は短く、芸術は長しといい、また豹は死して皮を留め、人は死して名を残すといいます。
しかるにその芸術功業の長く伝わり、名声栄誉の万世に不朽なるは、その精神功業の、子
孫後世に理解せられるがためであって、もし子孫にしてこれを理解せず、後世にしてこれを
継承することがないならば、すべてはその人と共に消滅してしまい、人生はすべて一瞬の泡
沫、死と共に雲散霧消するでありましょう。古来、家に庭訓を厳しくし、国に教育を重んずるは、
そのためであって、教育の要諦は実にここに存するのであります。
しかるに明治以来、西洋文明の輸入追随を急務としたために、本義はしばらくこれを不問に附
するもやむおえずとした上に、昭和20年以降は、占領政策のために抑圧せられて、父祖の精
神を継承し、その功業を顕彰することは不可能となりました。その痛ましい傷跡を、私は当時
の可憐なる小学生に見ました。