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【断 イタクラヨシコ】鬱陶しい“オレ様の誇り”
ある種のラーメン店へ行くと、なんでああもくつろがせてもらえないのだろうか。
普通に食事を楽しむ行為を許してもらえないのは、いったい何ゆえか。
だいたいラーメンにありつくまでが大変だ。長蛇の列に並んで店に入ると、
今度は壁際のスツールに座らせられ、順繰りに座席を詰めたりさせられて、
なかなか落ち着けない。ようやくカウンターに座ると、往々にしてメニューが
凝っていてわかりにくく、気後れするばかり。なのに、声もかけてもらえず、
こちらから遠慮がちにお伺いを立てるほかない。肩身がせまいったらない。
かてて加えて鬱陶(うっとう)しいのは、熱のこもった調理の動作や手つきを、
これ見よがしに厨房(ちゅうぼう)から誇示されること。熟練の末の
甲斐甲斐(かいがい)しさがさりげなく感じられる程度なら心地よいが、
演出の匂いを帯びたパフォーマンスにつき合わされるのは、えー、
できれば遠慮したいです。だって、ラーメン食べたいだけなんだもん。
私は、偉そうな人気ラーメン店に出くわす度に、強いコンプレックスを抱えた人が
自信をもったときのありさまをいつも勝手に連想してしまう。
必要以上に、やたらと偉そうになってしまうのだ。
ラーメンは単に腹を満たすものではなく、「オレ様の誇り」なのだろう。人気ラーメン店を愛し、
もてはやすファンやマスコミは、「オレ様の誇り」というシャワーを浴びることに
価値を見いだしているのだろう。こうして人気ラーメン店は、ますます誇り高く、
悪く言えば増長、よく言うなら、意気に燃えるのだ。(文筆業)
産経新聞
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