08/04/23 20:31:30 MalFaKYg0
>>173
教育の第一の危険は、心理学上の根本的な誤診に基いていることなのである。
すなわち、教科書の暗誦が知力を発達させると信じこんでいることである。
青年は小学校から博士の学位や教授資格を得るまで、ただ教科書の内容を
鵜呑みにするだけで、決して自分の判断力や創意を働かせないのである。
文部大臣ジュール・シモン氏が、こう書いている。「課目を習い、文法や綱要を
暗記し、むやみに反覆し、むやみに模倣する。これは、滑稽な教育法であって、
そこでは、一切の努力が、教師には絶対に誤りがないと盲信することであり、
結局、その努力が、我々の知能をかえって減退させ、無力ならしめるのだ」
もしこういう教育法が、単に無用であるというに過ぎないならば、多くの必要な
事柄の代わりに動物学上の分類などを教えこまれる不幸な児童たちに同情
するだけで済まされるかも知れない。ところが、それよりも遥かに重大な危険
がある。その危険とは、この教育を受けた者に、生れながらの身分に対する
激しい嫌悪の念と、そこから逃れ出ようとする強烈な欲望を吹きこむことである。
労働者は、もう労働者として留まることを望まず、農夫は、もう農夫である
ことを望まず、そして、中流人の末輩も、その息子たちのために、国家から
俸給を受ける官職以外のどんな職業をも眼中におかないのだ。
フランスの学校は、実生活に適応するように人々を仕込むのではなくて、
成功の為には何の創意のひらめきも要しない官界を目あてに、人々を
仕込むにすぎない。
この学校は、社会階級の下層においては、自分の境遇に不満をいだき、
ともすれば反抗しようとするあのプロレタリアの群を生み出し、社会階級の
上層においては、わが国のような軽佻浮薄な有産階級を生み出す。
この有産階級は、懐疑的であると同時に物事を軽率に信じやすく、たえず
国家に食ってかかって、自分の過失を常に政府に転嫁し、そのくせ当局の
仲介がなくては何事をも企てることができないのである。